渦動排砂装置及びこの渦動排砂装置を用いた排砂方法
【課題】渦動排砂管周辺に堆積した土砂等を排砂するとともに、水力発電所の発電機を稼働させた状態で排砂することが可能な渦動排砂管及び渦動排砂装置並びに排砂方法を提供する。
【解決手段】水力発電所用の沈砂池1に堆積する土砂等2を排出する渦動排砂装置3は、沈砂池1の底部に設置され、土砂等2を流入させるスリット5を複数有する渦動排砂管7と、渦動排砂管7内に摺動可能に挿通され、スリット5を開閉自在とする開閉材9と、スリット5が開閉自在となるように開閉材9を渦動排砂管7に対して摺動させる制御装置11とを備える。
【解決手段】水力発電所用の沈砂池1に堆積する土砂等2を排出する渦動排砂装置3は、沈砂池1の底部に設置され、土砂等2を流入させるスリット5を複数有する渦動排砂管7と、渦動排砂管7内に摺動可能に挿通され、スリット5を開閉自在とする開閉材9と、スリット5が開閉自在となるように開閉材9を渦動排砂管7に対して摺動させる制御装置11とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈砂池の底部に堆積する土砂等を排出するための渦動排砂装置及びこの渦動排砂装置を用いた排砂方法に関し、特に、水路内を断水することなく渦動排砂管周辺の土砂等を確実に排出することが可能な渦動排砂装置及び排砂方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川水を水力発電所に供給する水路には土砂等が流入するために、水路の途中に水路の一部分を拡幅して水の流速を低下させ、流水中の土砂等を沈下させるための沈砂池が設けられている。この沈砂池の底部に堆積した土砂等を排出するための排砂技術として、本発明者らは、例えば、特許文献1にて、スリットを有する渦動排砂管を沈砂池の底部に設置する方法を開示した。これは、沈砂池の底部に設置した渦動排砂管に所定の配置間隔で複数のスリットを設け、このスリットを介して渦動排砂管上に堆積した土砂等を渦動排砂管内に吸い込み、管下流へ排出するものである。このとき、渦動排砂管上に堆積した土砂は図12に示すように、水中の安息角θにしたがってすり鉢状に排砂される。
【特許文献1】特開2005−146603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1に記載の渦動排砂管を水力発電所用等の広大な沈砂池に設置する場合においては、有効渦動管長を長くするために、スリットの配置間隔を長くすることが望ましい。しかし、スリットの配置間隔を長くすると、渦動排砂管上におけるスリット間の土砂等が排砂されずに渦動排砂管上に残留してしまうという問題点があった。
【0004】
そして、このスリット間に残留した土砂等を排砂するためには、水路内を断水し、人が水路内に入って人力にて残った土砂等を排出していた。したがって、多大な労力及び時間を要するという問題点があった。
【0005】
さらに、人が水路内で排砂作業を行う場合は、水路内の水をすべて排水するために、この水路に接続されている発電機へ水を供給することができなくなる。したがって、沈砂池の土砂等を排出する際は発電機を停止しなければならず、発電機の稼働率が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、渦動排砂管周辺に堆積した土砂等を排砂するとともに、水力発電所の発電機を稼働させた状態で排砂することが可能な渦動排砂管及び渦動排砂装置並びに排砂方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決する本発明の渦動排砂装置は、沈砂池に堆積する土砂等を排出する渦動排砂装置であって、前記沈砂池の底部に設置され、前記土砂等を流入させるスリットを複数有する渦動排砂管と、前記渦動排砂管内に配設され、前記スリットを開閉する開閉材と、前記開閉材の開閉動作を制御する制御装置とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記土砂等を前記渦動排砂管内に吸引するとともに、前記渦動排砂管外に排出する排出処理部をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記開閉材として、前記渦動排砂管のスリットと形状が略同一で、配置間隔が異なるスリットを有する円筒管を用いることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1又は2の発明において、前記開閉材として、前記渦動排砂管のスリットと形状が略同一で、配置パターンが異なるスリットを有する円筒管を用いることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明において、前記開閉材は、前記渦動排砂管の軸方向又は周方向に摺動可能であることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1〜5のいずれかの発明において、前記制御装置は、前記開閉材を摺動させて前記スリットを開閉する摺動手段と、該摺動手段を駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第7の発明の排砂方法は、沈砂池の底部に設置され、土砂等を流入させるスリットを複数有する渦動排砂管と、前記渦動排砂管内に配設され、前記スリットを開閉する開閉材と、前記開閉材の開閉動作を制御する制御装置とを備えた渦動排砂装置を用いる前記沈砂池に堆積する前記土砂等を排出する排砂方法において、前記スリットを所定の順番で開閉することにより前記土砂等を前記渦動排砂管内に流入させて排出することを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第7の発明において、前記土砂等を前記渦動排砂管内に吸引するとともに、前記渦動排砂管外に排出する排出処理部をさらに備えた前記渦動排砂装置を用いる前記沈砂池に堆積する前記土砂等を排出する排砂方法において、前記土砂等を吸引することにより前記渦動排砂管内に流入させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、渦動排砂管内に開閉材を配設し、この開閉材の開閉動作を制御する制御装置を備えることにより、スリットを選択して開閉を行うことが可能となる。したがって、土砂等の堆積状況にて応じて適宜開放するスリットを選択し、効率良く土砂を排砂することが可能となる。
【0016】
そして、本発明によれば、渦動排砂管内に、渦動排砂管のスリットと同一形状で、配置間隔や配置パターンが異なるスリットを有する円筒形状の開閉材を配設し、制御装置にて開閉材を渦動排砂管に対して軸方向又は周方向に摺動させることにより、複数のスリットを同時に開閉することが可能となる。
【0017】
また、開閉材を摺動させることにより、渦動排砂管の開放するスリットの数は所定の数のままで、開閉するスリットの位置を変更することができるために、渦動排砂管のスリットの配置間隔を所定の間隔よりも短くすることが可能となる。したがって、渦動排砂管周辺の土砂等を短い間隔で、効率良く排砂することが可能となる。つまり、渦動排砂管周辺に堆積している土砂等を確実に排出することが可能となるために、水路内を断水し、人が水路内に入って土砂等を排出する必要がなくなる。
【0018】
そして、水路内の水をすべて排水する必要がなくなり、水路内に水を流水させた状態にて土砂等を排出することが可能となる。したがって、土砂等を排出すると同時に水路内に水を流水させて発電機に水を供給することが可能となり、土砂等の排出時も発電機を稼働させることが可能となる。
【0019】
さらに、土砂等を吸引するとともに、渦動排砂管外に排出する排出処理部を備えることにより、堆積した土砂等を効率良く渦動排砂管内に流入させ、かつ、渦動排砂管外へ排出することが可能となる。
【0020】
本発明による渦動排砂装置を用いることにより、渦動排砂管周辺に堆積した土砂等を効率良く排出するとともに、水力発電所の発電機を稼働させることが可能となる。また、渦動排砂管周辺に堆積する土砂を確実に排出することができるために、人が水路内に入って土砂等の排出作業を行う必要がなくなり、手間及びコストを削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第一実施形態に係る渦動排砂装置を示す平面図であり、図2は、図1のA−A’矢視図である。また、図3は、本実施形態に係る渦動排砂管を示す図であり、図4は、本実施形態に係る開閉材を示す図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、水力発電所用の沈砂池1に堆積する土砂等2を排出する渦動排砂装置3は、沈砂池1の底部に設置され、土砂等2を流入させるスリット5を複数有する渦動排砂管7と、渦動排砂管7内に摺動可能に挿通され、スリット5を開閉自在とする開閉材9と、スリット5が開閉自在となるように開閉材9を渦動排砂管7に対して摺動させる制御装置11とを備える。
【0024】
図3に示すように、渦動排砂管7は軸方向に複数のスリット5を有する円筒管であり、本実施形態においては、例えば、鋼管を用いる。本実施形態において、渦動排砂管7のスリット5は予め設計により算出された、例えば、所定の幅Wの5cm、所定の長さLの20cm、中心間の距離は所定の間隔P(後述する)の半分の100cm、所定の直径Dの20cmとする。
【0025】
図4に示すように、開閉材9は軸方向に複数のスリット10を有する円筒管であり、本実施形態においては、例えば、鋼管を用いる。本実施形態において、開閉材9のスリット10の長さ及び幅は渦動排砂管7のスリット5と同一であり、中心間の距離は所定の間隔Pの200cmとする。
【0026】
渦動排砂管7及び開閉材9の各スリット5、10の所定の長さL、所定の幅W、及び所定の間隔Pは、渦動排砂管7の直径、排砂可能な土砂流量、土砂等2の粒径等に基づいて予め設計により算出され、各現場条件に応じて適宜変更される。
【0027】
制御装置11は、一端が開閉材9の端部に接続され、この開閉材9を渦動排砂管7に対して軸方向に摺動する摺動手段13と、摺動手段13を駆動する駆動手段15とを備える。本実施形態において、摺動手段13は油圧にて伸縮可能なシリンダを用い、駆動手段15はこのシリンダの作動圧を発生させる油圧ポンプを用いる。
【0028】
そして、開閉材9を軸方向に摺動し、開閉材9のスリット10の位置と渦動排砂管7のスリット5の位置とを一致させて、渦動排砂管7周辺に堆積した土砂等2を渦動排砂管7内に流入させて排出する。
【0029】
次に、上述した渦動排砂装置3を用いた排砂方法について説明する。
図5は、本実施形態に係る排砂方法を示す図である。図5に示すように、本実施形態において、例えば、延長は10m、幅は2m、水深は2mの沈砂池1に厚さ30cmの土砂等2が堆積し、排砂する土砂の平均粒径を1mmとした場合について説明する。
【0030】
まず、有効渦動管長を次の算定式により算出する。
連続の式より、
dQ/dx=q ・・・(式1)
運動方程式より、
β/gA2・dQ2/dx+d(p/w+z)/dx
−U/gA・dQ/dx+fQ2/2gDA2=0 ・・・(式2)
ここで、Q:渦動管内の流量(m3/s)、q:渦動管内へ流入する単位長さ当たりの流入量(m2/s)、U:渦動管内の断面平均流速(m/s)、A:渦動管の断面積(m2)、x:渦動排砂管7軸に沿った流下方向の距離(m)、g:重力加速度(m2/s)、P:管中心の圧力(Pa)、w:流体の単位体積重量(kg/m3)、z:基準面から管中心軸の高さ(m)、D:管の直径(m)、f:摩擦係数である。
【0031】
式1及び式2より算出された本実施形態における有効渦動管長は8.2mとなり、スリットは所定の長さL、所定の間隔Pに基づいて、渦動排砂管7、開閉材9にそれぞれ9個、5個ずつ設けられる。
【0032】
次に、制御装置11を作動させて開閉材9を軸方向に摺動させ、開閉材9のスリット10の位置と渦動排砂管7のスリット5aの位置とを一致させる。このとき、開放されたスリット5aに隣接するスリット5bはすべて閉鎖された状態となる。そして、スリット5aの上方の土砂等2は渦動排砂管7内に排砂される。この1回目の排砂により、スリット上向きで水中安息角θが30°〜40°のすり鉢状の範囲の土砂等2が約0.25m3排砂される。
【0033】
図6は、本実施形態に係る排砂方法を示す図である。図6に示すように、再び、制御装置11を作動させて開閉材9を軸方向(図中右方向)に摺動させ、開閉材9のスリット10の位置と上述した1回目の排砂にて開放した渦動排砂管7のスリット5aの位置に隣接するスリット5bの位置とを一致させる。このとき、1回目の排砂時に開放した渦動排砂管7のスリット5aはすべて閉鎖された状態となる。そして、今回開放されたスリット5bの上方の土砂等2は渦動排砂管7内に排砂される。この2回目の排砂により、1回目と同様に、スリット上向きで水中安息角θが30°〜40°のすり鉢状の範囲の土砂等2が排砂され、1回目と2回目との排砂量の合計は約0.5m3となる。これら2回の排砂にて、渦動排砂管7の上方に堆積した土砂等2のほとんどがスリット5、10を介して渦動排砂管7内に流入し、排砂される。
【0034】
以上説明した本実施形態の渦動排砂装置3によれば、渦動排砂管7内に、渦動排砂管7のスリット5と同一形状で、配置間隔が異なるスリット10を有する円筒形状の開閉材9を配設し、シリンダ13にて開閉材9を渦動排砂管7に対して軸方向に摺動させることにより、開閉するスリット5の位置を変更することが可能となるとともに、複数のスリット5を同時に開閉することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、開閉材9のスリット10の数、配置間隔をそれぞれ予め設計等により算出された所定の数の5個、所定の間隔Pの200cmにして、開閉材9を軸方向に摺動させることにより、渦動排砂管7の開放するスリット5の数は5個のままで、開放するスリット5の位置を交互にすることができるために、渦動排砂管7のスリット5の配置間隔を所定の間隔Pよりも短く100cmにすることが可能となる。したがって、渦動排砂管7周辺の土砂等2を短い間隔で、効率良く排砂することが可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態によれば、渦動排砂管7周辺に堆積している土砂等2を確実に排出することが可能となるために、水路内を断水し、人が水路内に入って土砂等2を排出する必要がなくなる。したがって、水路内の水をすべて排水する必要がなくなり、水路内に水を流水させた状態にて土砂等2を排出することが可能となる。つまり、土砂等2を排出すると同時に水路内に水を流水させて発電機に水を供給することが可能となり、土砂等2の排出時も発電機を稼働させることが可能となる。また、人が水路内に入って土砂等2の排出作業を行う必要がなくなり、手間及びコストを削減することが可能となる。
【0037】
なお、本実施形態において、開閉材9、渦動排砂管7のスリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ200cmで5個、100cmで9個とし、2回の排砂を行うことにより、有効渦動管長の8.2m分の渦動排砂管7上の土砂等2を排砂する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉材9のスリット数を所定の数の5個のままとすれば、例えば、開閉材9のスリット中心間の距離を400cm、渦動排砂管7のスリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ100cmで18個にし、開閉材9を軸方向に摺動させて、4回の排砂を行うことにより、渦動排砂管7の長さを有効渦動管長の2倍の16.4mとしてもよい。このように排砂回数を増やす方法を用いることにより、渦動排砂管7の長さを長くすることができるために、沈砂池11の底部に堆積する広い範囲の土砂等2を排出することが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態において、摺動手段13としてシリンダを用い、駆動手段15として油圧ポンプを用いる方法について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉材9を摺動させることができるものであれば他の方法を用いてもよい。
【0039】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。下記に示す説明において、第一実施形態と同様の構成を用いたものと対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0040】
図7は、本発明の第二実施形態に係る渦動排砂装置23を示す平面図であり、図8は、図7のB−B’矢視図である。また、図9は、本実施形態に係る開閉材29を示す図である。
【0041】
図7〜図9に示すように、渦動排砂装置23は、第一実施形態にて説明した、軸方向に直線状に配置されたスリット10を有する開閉材29の替わりに軸方向に格子状に配置されたスリット10を有する開閉材29と、シリンダ13及び油圧ポンプ15から構成される摺動装置の替わりに減速機33付きモータ35とを備えたものである。
【0042】
開閉材29は軸方向に格子状に配置された複数のスリット10を有する鋼管であり、第一実施形態と同様に、スリット10の長さ及び幅は渦動排砂管7のスリット5と同一である。また、格子状に配置された複数のスリット10のうち軸方向に直線状に配置された一のスリット群10Aのスリット中心間の距離を所定の間隔Pの200cmとし、この一のスリット群10Aに対して周方向に所定の角度で軸方向に直線状に配置された他のスリット群10Bのスリット中心間の距離も所定の間隔Pの200cmとする。ここで、他のスリット群10Bのスリット10の中心と隣接する一のスリット群10Aのスリット10の中心との軸方向の距離は所定の間隔Pの半分である100cmとする。
【0043】
制御装置31は、一端が開閉材29の端部に接続され、この開閉材29を渦動排砂管7に対して周方向に摺動する摺動手段33と、摺動手段33を駆動する駆動手段35とを備える。本実施形態において、駆動手段35はモータを用い、摺動手段33はこのモータの回転数を減少させる減速機を用いる。
【0044】
そして、開閉材29を周方向に摺動し、開閉材29のスリット10の位置と渦動排砂管7のスリット5の位置とを一致させて、渦動排砂管7周辺に堆積した土砂等2を渦動排砂管7内に流入させて排出する。
【0045】
次に、上述した渦動排砂装置23を用いた排砂方法について説明する。
図10及び図11は、本実施形態に係る排砂方法を示す図である。図10に示すように、本実施形態においても、第一実施形態と同様に、例えば、延長は10m、幅は2m、水深は2mの沈砂池11に厚さ30cmの土砂等2が堆積し、排砂する土砂の平均粒径を1mmとし、有効渦動管長が8.2mの場合について説明する。
【0046】
スリット10は、開閉材9の軸方向に一のスリット群10Aに5個、他のスリット群10Bに5個、合計10個設けられる。
【0047】
そして、制御装置31を作動させて開閉材29を周方向に摺動させ、開閉材29の一のスリット群10Aのスリット10の位置と渦動排砂管7のスリット5aの位置とを一致させる。このとき、開放されたスリット5aに隣接するスリット5bはすべて閉鎖された状態となる。そして、スリット5aの上方の土砂等2は渦動排砂管7内に排砂される。
【0048】
次に、図11に示すように、制御装置31を作動させて開閉材29を所定の角度だけ周方向に摺動させ、開閉材29の他のスリット群10Bのスリット10の位置と上述した1回目の排砂にて開放した渦動排砂管7のスリット5aの位置に隣接するスリット5bの位置とを一致させる。このとき、1回目の排砂時に開放した渦動排砂管7のスリット5aはすべて閉鎖された状態となる。そして、今回開放されたスリット5bの上方の土砂等2は渦動排砂管7内に排砂される。
【0049】
以上説明した本実施形態の渦動排砂装置23によれば、渦動排砂管7内に、渦動排砂管7のスリット5と同一形状で、配置間隔が異なるスリット10を有する円筒形状の開閉材29を配設し、減速機33付きモータ35にて開閉材29を渦動排砂管7に対して周方向に摺動させることにより、開閉するスリット5の位置を変更することが可能となるとともに、複数のスリット5を同時に開閉することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態によれば、開閉材29のスリット10の配置間隔、スリット群のスリット10の数をそれぞれ予め設計等により算出された所定の間隔Pの200cm、所定の数の5個にして、開閉材29を周方向に摺動させることにより、渦動排砂管7の開放するスリット5の数は5個のままで、開放するスリット5の位置を交互にすることができるために、渦動排砂管7のスリット5の配置間隔を所定の間隔Pよりも短く100cmにすることが可能となる。したがって、渦動排砂管7周辺の土砂等2を短い間隔で、効率良く排砂することが可能となる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、渦動排砂管7周辺に堆積している土砂等2を確実に排出することが可能となるために、水路内を断水する必要がなくなり、土砂等2を排出すると同時に水路内に水を流水させて発電機に水を供給することが可能となる。また、人が水路内に入って土砂等2の排出作業を行う必要がなくなり、手間及びコストを削減することが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態において、開閉材29のスリット群数、スリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ2群、200cm、5個とし、渦動排砂管7のスリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ100cm、9個として、2回の排砂を行うことにより、有効渦動管長の8.2m分の渦動排砂管7上の土砂等2を排砂する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉材29のスリット群に設けられるスリット数を所定の数の5個のままとすれば、例えば、開閉材29のスリット群数、スリット中心間の距離をそれぞれ4群、200cmとし、渦動排砂管7のスリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ100cm、18個にして、開閉材29を周方向に摺動させて、4回の排砂を行うことにより、渦動排砂管7の長さを有効渦動管長の2倍の16.4mとしてもよい。このように排砂回数を増やす方法を用いることにより、渦動排砂管7の長さを長くすることができるために、沈砂池11の底部に堆積する広い範囲の土砂等2を排出することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態において、駆動手段35としてモータを用い、摺動手段33として減速機を用いる方法について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉材29を回転させることができるものであれば他の方法を用いてもよい。
【0054】
なお、上述したすべての実施形態において、渦動排砂管7及び開閉材29として鋼管を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、塩ビパイプ等を用いてもよい。
【0055】
また、上述したすべての実施形態において、土砂等2を渦動排砂管7内に吸引するとともに、渦動排砂管7外に排出する排出処理部(図示しない)を設けて排砂する方法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第一実施形態に係る渦動排砂装置を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’矢視図である。
【図3】本実施形態に係る渦動排砂管を示す図である。
【図4】本実施形態に係る開閉材を示す図である。
【図5】本実施形態に係る排砂方法を示す図である。
【図6】本実施形態に係る排砂方法を示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る渦動排砂装置を示す平面図である。
【図8】図7のB−B’矢視図である。
【図9】本実施形態に係る開閉材を示す図である。
【図10】本実施形態に係る排砂方法を示す図である。
【図11】本実施形態に係る排砂方法を示す図である。
【図12】土砂等の排砂状況を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 沈砂池
2 土砂等
3 渦動排砂装置
5 (渦動排砂管の)スリット
7 渦動排砂管
9 開閉材
10 (開閉材の)スリット
10A 一のスリット群
10B 他のスリット群
11 制御装置
13 摺動手段
15 駆動手段
23 渦動排砂装置
29 開閉材
31 制御装置
33 摺動手段
35 駆動手段
W 所定の幅
L 所定の長さ
P 所定の間隔
D 所定の直径
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈砂池の底部に堆積する土砂等を排出するための渦動排砂装置及びこの渦動排砂装置を用いた排砂方法に関し、特に、水路内を断水することなく渦動排砂管周辺の土砂等を確実に排出することが可能な渦動排砂装置及び排砂方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川水を水力発電所に供給する水路には土砂等が流入するために、水路の途中に水路の一部分を拡幅して水の流速を低下させ、流水中の土砂等を沈下させるための沈砂池が設けられている。この沈砂池の底部に堆積した土砂等を排出するための排砂技術として、本発明者らは、例えば、特許文献1にて、スリットを有する渦動排砂管を沈砂池の底部に設置する方法を開示した。これは、沈砂池の底部に設置した渦動排砂管に所定の配置間隔で複数のスリットを設け、このスリットを介して渦動排砂管上に堆積した土砂等を渦動排砂管内に吸い込み、管下流へ排出するものである。このとき、渦動排砂管上に堆積した土砂は図12に示すように、水中の安息角θにしたがってすり鉢状に排砂される。
【特許文献1】特開2005−146603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1に記載の渦動排砂管を水力発電所用等の広大な沈砂池に設置する場合においては、有効渦動管長を長くするために、スリットの配置間隔を長くすることが望ましい。しかし、スリットの配置間隔を長くすると、渦動排砂管上におけるスリット間の土砂等が排砂されずに渦動排砂管上に残留してしまうという問題点があった。
【0004】
そして、このスリット間に残留した土砂等を排砂するためには、水路内を断水し、人が水路内に入って人力にて残った土砂等を排出していた。したがって、多大な労力及び時間を要するという問題点があった。
【0005】
さらに、人が水路内で排砂作業を行う場合は、水路内の水をすべて排水するために、この水路に接続されている発電機へ水を供給することができなくなる。したがって、沈砂池の土砂等を排出する際は発電機を停止しなければならず、発電機の稼働率が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、渦動排砂管周辺に堆積した土砂等を排砂するとともに、水力発電所の発電機を稼働させた状態で排砂することが可能な渦動排砂管及び渦動排砂装置並びに排砂方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決する本発明の渦動排砂装置は、沈砂池に堆積する土砂等を排出する渦動排砂装置であって、前記沈砂池の底部に設置され、前記土砂等を流入させるスリットを複数有する渦動排砂管と、前記渦動排砂管内に配設され、前記スリットを開閉する開閉材と、前記開閉材の開閉動作を制御する制御装置とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記土砂等を前記渦動排砂管内に吸引するとともに、前記渦動排砂管外に排出する排出処理部をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記開閉材として、前記渦動排砂管のスリットと形状が略同一で、配置間隔が異なるスリットを有する円筒管を用いることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1又は2の発明において、前記開閉材として、前記渦動排砂管のスリットと形状が略同一で、配置パターンが異なるスリットを有する円筒管を用いることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明において、前記開閉材は、前記渦動排砂管の軸方向又は周方向に摺動可能であることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第1〜5のいずれかの発明において、前記制御装置は、前記開閉材を摺動させて前記スリットを開閉する摺動手段と、該摺動手段を駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第7の発明の排砂方法は、沈砂池の底部に設置され、土砂等を流入させるスリットを複数有する渦動排砂管と、前記渦動排砂管内に配設され、前記スリットを開閉する開閉材と、前記開閉材の開閉動作を制御する制御装置とを備えた渦動排砂装置を用いる前記沈砂池に堆積する前記土砂等を排出する排砂方法において、前記スリットを所定の順番で開閉することにより前記土砂等を前記渦動排砂管内に流入させて排出することを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、第7の発明において、前記土砂等を前記渦動排砂管内に吸引するとともに、前記渦動排砂管外に排出する排出処理部をさらに備えた前記渦動排砂装置を用いる前記沈砂池に堆積する前記土砂等を排出する排砂方法において、前記土砂等を吸引することにより前記渦動排砂管内に流入させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、渦動排砂管内に開閉材を配設し、この開閉材の開閉動作を制御する制御装置を備えることにより、スリットを選択して開閉を行うことが可能となる。したがって、土砂等の堆積状況にて応じて適宜開放するスリットを選択し、効率良く土砂を排砂することが可能となる。
【0016】
そして、本発明によれば、渦動排砂管内に、渦動排砂管のスリットと同一形状で、配置間隔や配置パターンが異なるスリットを有する円筒形状の開閉材を配設し、制御装置にて開閉材を渦動排砂管に対して軸方向又は周方向に摺動させることにより、複数のスリットを同時に開閉することが可能となる。
【0017】
また、開閉材を摺動させることにより、渦動排砂管の開放するスリットの数は所定の数のままで、開閉するスリットの位置を変更することができるために、渦動排砂管のスリットの配置間隔を所定の間隔よりも短くすることが可能となる。したがって、渦動排砂管周辺の土砂等を短い間隔で、効率良く排砂することが可能となる。つまり、渦動排砂管周辺に堆積している土砂等を確実に排出することが可能となるために、水路内を断水し、人が水路内に入って土砂等を排出する必要がなくなる。
【0018】
そして、水路内の水をすべて排水する必要がなくなり、水路内に水を流水させた状態にて土砂等を排出することが可能となる。したがって、土砂等を排出すると同時に水路内に水を流水させて発電機に水を供給することが可能となり、土砂等の排出時も発電機を稼働させることが可能となる。
【0019】
さらに、土砂等を吸引するとともに、渦動排砂管外に排出する排出処理部を備えることにより、堆積した土砂等を効率良く渦動排砂管内に流入させ、かつ、渦動排砂管外へ排出することが可能となる。
【0020】
本発明による渦動排砂装置を用いることにより、渦動排砂管周辺に堆積した土砂等を効率良く排出するとともに、水力発電所の発電機を稼働させることが可能となる。また、渦動排砂管周辺に堆積する土砂を確実に排出することができるために、人が水路内に入って土砂等の排出作業を行う必要がなくなり、手間及びコストを削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第一実施形態に係る渦動排砂装置を示す平面図であり、図2は、図1のA−A’矢視図である。また、図3は、本実施形態に係る渦動排砂管を示す図であり、図4は、本実施形態に係る開閉材を示す図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、水力発電所用の沈砂池1に堆積する土砂等2を排出する渦動排砂装置3は、沈砂池1の底部に設置され、土砂等2を流入させるスリット5を複数有する渦動排砂管7と、渦動排砂管7内に摺動可能に挿通され、スリット5を開閉自在とする開閉材9と、スリット5が開閉自在となるように開閉材9を渦動排砂管7に対して摺動させる制御装置11とを備える。
【0024】
図3に示すように、渦動排砂管7は軸方向に複数のスリット5を有する円筒管であり、本実施形態においては、例えば、鋼管を用いる。本実施形態において、渦動排砂管7のスリット5は予め設計により算出された、例えば、所定の幅Wの5cm、所定の長さLの20cm、中心間の距離は所定の間隔P(後述する)の半分の100cm、所定の直径Dの20cmとする。
【0025】
図4に示すように、開閉材9は軸方向に複数のスリット10を有する円筒管であり、本実施形態においては、例えば、鋼管を用いる。本実施形態において、開閉材9のスリット10の長さ及び幅は渦動排砂管7のスリット5と同一であり、中心間の距離は所定の間隔Pの200cmとする。
【0026】
渦動排砂管7及び開閉材9の各スリット5、10の所定の長さL、所定の幅W、及び所定の間隔Pは、渦動排砂管7の直径、排砂可能な土砂流量、土砂等2の粒径等に基づいて予め設計により算出され、各現場条件に応じて適宜変更される。
【0027】
制御装置11は、一端が開閉材9の端部に接続され、この開閉材9を渦動排砂管7に対して軸方向に摺動する摺動手段13と、摺動手段13を駆動する駆動手段15とを備える。本実施形態において、摺動手段13は油圧にて伸縮可能なシリンダを用い、駆動手段15はこのシリンダの作動圧を発生させる油圧ポンプを用いる。
【0028】
そして、開閉材9を軸方向に摺動し、開閉材9のスリット10の位置と渦動排砂管7のスリット5の位置とを一致させて、渦動排砂管7周辺に堆積した土砂等2を渦動排砂管7内に流入させて排出する。
【0029】
次に、上述した渦動排砂装置3を用いた排砂方法について説明する。
図5は、本実施形態に係る排砂方法を示す図である。図5に示すように、本実施形態において、例えば、延長は10m、幅は2m、水深は2mの沈砂池1に厚さ30cmの土砂等2が堆積し、排砂する土砂の平均粒径を1mmとした場合について説明する。
【0030】
まず、有効渦動管長を次の算定式により算出する。
連続の式より、
dQ/dx=q ・・・(式1)
運動方程式より、
β/gA2・dQ2/dx+d(p/w+z)/dx
−U/gA・dQ/dx+fQ2/2gDA2=0 ・・・(式2)
ここで、Q:渦動管内の流量(m3/s)、q:渦動管内へ流入する単位長さ当たりの流入量(m2/s)、U:渦動管内の断面平均流速(m/s)、A:渦動管の断面積(m2)、x:渦動排砂管7軸に沿った流下方向の距離(m)、g:重力加速度(m2/s)、P:管中心の圧力(Pa)、w:流体の単位体積重量(kg/m3)、z:基準面から管中心軸の高さ(m)、D:管の直径(m)、f:摩擦係数である。
【0031】
式1及び式2より算出された本実施形態における有効渦動管長は8.2mとなり、スリットは所定の長さL、所定の間隔Pに基づいて、渦動排砂管7、開閉材9にそれぞれ9個、5個ずつ設けられる。
【0032】
次に、制御装置11を作動させて開閉材9を軸方向に摺動させ、開閉材9のスリット10の位置と渦動排砂管7のスリット5aの位置とを一致させる。このとき、開放されたスリット5aに隣接するスリット5bはすべて閉鎖された状態となる。そして、スリット5aの上方の土砂等2は渦動排砂管7内に排砂される。この1回目の排砂により、スリット上向きで水中安息角θが30°〜40°のすり鉢状の範囲の土砂等2が約0.25m3排砂される。
【0033】
図6は、本実施形態に係る排砂方法を示す図である。図6に示すように、再び、制御装置11を作動させて開閉材9を軸方向(図中右方向)に摺動させ、開閉材9のスリット10の位置と上述した1回目の排砂にて開放した渦動排砂管7のスリット5aの位置に隣接するスリット5bの位置とを一致させる。このとき、1回目の排砂時に開放した渦動排砂管7のスリット5aはすべて閉鎖された状態となる。そして、今回開放されたスリット5bの上方の土砂等2は渦動排砂管7内に排砂される。この2回目の排砂により、1回目と同様に、スリット上向きで水中安息角θが30°〜40°のすり鉢状の範囲の土砂等2が排砂され、1回目と2回目との排砂量の合計は約0.5m3となる。これら2回の排砂にて、渦動排砂管7の上方に堆積した土砂等2のほとんどがスリット5、10を介して渦動排砂管7内に流入し、排砂される。
【0034】
以上説明した本実施形態の渦動排砂装置3によれば、渦動排砂管7内に、渦動排砂管7のスリット5と同一形状で、配置間隔が異なるスリット10を有する円筒形状の開閉材9を配設し、シリンダ13にて開閉材9を渦動排砂管7に対して軸方向に摺動させることにより、開閉するスリット5の位置を変更することが可能となるとともに、複数のスリット5を同時に開閉することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、開閉材9のスリット10の数、配置間隔をそれぞれ予め設計等により算出された所定の数の5個、所定の間隔Pの200cmにして、開閉材9を軸方向に摺動させることにより、渦動排砂管7の開放するスリット5の数は5個のままで、開放するスリット5の位置を交互にすることができるために、渦動排砂管7のスリット5の配置間隔を所定の間隔Pよりも短く100cmにすることが可能となる。したがって、渦動排砂管7周辺の土砂等2を短い間隔で、効率良く排砂することが可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態によれば、渦動排砂管7周辺に堆積している土砂等2を確実に排出することが可能となるために、水路内を断水し、人が水路内に入って土砂等2を排出する必要がなくなる。したがって、水路内の水をすべて排水する必要がなくなり、水路内に水を流水させた状態にて土砂等2を排出することが可能となる。つまり、土砂等2を排出すると同時に水路内に水を流水させて発電機に水を供給することが可能となり、土砂等2の排出時も発電機を稼働させることが可能となる。また、人が水路内に入って土砂等2の排出作業を行う必要がなくなり、手間及びコストを削減することが可能となる。
【0037】
なお、本実施形態において、開閉材9、渦動排砂管7のスリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ200cmで5個、100cmで9個とし、2回の排砂を行うことにより、有効渦動管長の8.2m分の渦動排砂管7上の土砂等2を排砂する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉材9のスリット数を所定の数の5個のままとすれば、例えば、開閉材9のスリット中心間の距離を400cm、渦動排砂管7のスリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ100cmで18個にし、開閉材9を軸方向に摺動させて、4回の排砂を行うことにより、渦動排砂管7の長さを有効渦動管長の2倍の16.4mとしてもよい。このように排砂回数を増やす方法を用いることにより、渦動排砂管7の長さを長くすることができるために、沈砂池11の底部に堆積する広い範囲の土砂等2を排出することが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態において、摺動手段13としてシリンダを用い、駆動手段15として油圧ポンプを用いる方法について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉材9を摺動させることができるものであれば他の方法を用いてもよい。
【0039】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。下記に示す説明において、第一実施形態と同様の構成を用いたものと対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0040】
図7は、本発明の第二実施形態に係る渦動排砂装置23を示す平面図であり、図8は、図7のB−B’矢視図である。また、図9は、本実施形態に係る開閉材29を示す図である。
【0041】
図7〜図9に示すように、渦動排砂装置23は、第一実施形態にて説明した、軸方向に直線状に配置されたスリット10を有する開閉材29の替わりに軸方向に格子状に配置されたスリット10を有する開閉材29と、シリンダ13及び油圧ポンプ15から構成される摺動装置の替わりに減速機33付きモータ35とを備えたものである。
【0042】
開閉材29は軸方向に格子状に配置された複数のスリット10を有する鋼管であり、第一実施形態と同様に、スリット10の長さ及び幅は渦動排砂管7のスリット5と同一である。また、格子状に配置された複数のスリット10のうち軸方向に直線状に配置された一のスリット群10Aのスリット中心間の距離を所定の間隔Pの200cmとし、この一のスリット群10Aに対して周方向に所定の角度で軸方向に直線状に配置された他のスリット群10Bのスリット中心間の距離も所定の間隔Pの200cmとする。ここで、他のスリット群10Bのスリット10の中心と隣接する一のスリット群10Aのスリット10の中心との軸方向の距離は所定の間隔Pの半分である100cmとする。
【0043】
制御装置31は、一端が開閉材29の端部に接続され、この開閉材29を渦動排砂管7に対して周方向に摺動する摺動手段33と、摺動手段33を駆動する駆動手段35とを備える。本実施形態において、駆動手段35はモータを用い、摺動手段33はこのモータの回転数を減少させる減速機を用いる。
【0044】
そして、開閉材29を周方向に摺動し、開閉材29のスリット10の位置と渦動排砂管7のスリット5の位置とを一致させて、渦動排砂管7周辺に堆積した土砂等2を渦動排砂管7内に流入させて排出する。
【0045】
次に、上述した渦動排砂装置23を用いた排砂方法について説明する。
図10及び図11は、本実施形態に係る排砂方法を示す図である。図10に示すように、本実施形態においても、第一実施形態と同様に、例えば、延長は10m、幅は2m、水深は2mの沈砂池11に厚さ30cmの土砂等2が堆積し、排砂する土砂の平均粒径を1mmとし、有効渦動管長が8.2mの場合について説明する。
【0046】
スリット10は、開閉材9の軸方向に一のスリット群10Aに5個、他のスリット群10Bに5個、合計10個設けられる。
【0047】
そして、制御装置31を作動させて開閉材29を周方向に摺動させ、開閉材29の一のスリット群10Aのスリット10の位置と渦動排砂管7のスリット5aの位置とを一致させる。このとき、開放されたスリット5aに隣接するスリット5bはすべて閉鎖された状態となる。そして、スリット5aの上方の土砂等2は渦動排砂管7内に排砂される。
【0048】
次に、図11に示すように、制御装置31を作動させて開閉材29を所定の角度だけ周方向に摺動させ、開閉材29の他のスリット群10Bのスリット10の位置と上述した1回目の排砂にて開放した渦動排砂管7のスリット5aの位置に隣接するスリット5bの位置とを一致させる。このとき、1回目の排砂時に開放した渦動排砂管7のスリット5aはすべて閉鎖された状態となる。そして、今回開放されたスリット5bの上方の土砂等2は渦動排砂管7内に排砂される。
【0049】
以上説明した本実施形態の渦動排砂装置23によれば、渦動排砂管7内に、渦動排砂管7のスリット5と同一形状で、配置間隔が異なるスリット10を有する円筒形状の開閉材29を配設し、減速機33付きモータ35にて開閉材29を渦動排砂管7に対して周方向に摺動させることにより、開閉するスリット5の位置を変更することが可能となるとともに、複数のスリット5を同時に開閉することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態によれば、開閉材29のスリット10の配置間隔、スリット群のスリット10の数をそれぞれ予め設計等により算出された所定の間隔Pの200cm、所定の数の5個にして、開閉材29を周方向に摺動させることにより、渦動排砂管7の開放するスリット5の数は5個のままで、開放するスリット5の位置を交互にすることができるために、渦動排砂管7のスリット5の配置間隔を所定の間隔Pよりも短く100cmにすることが可能となる。したがって、渦動排砂管7周辺の土砂等2を短い間隔で、効率良く排砂することが可能となる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、渦動排砂管7周辺に堆積している土砂等2を確実に排出することが可能となるために、水路内を断水する必要がなくなり、土砂等2を排出すると同時に水路内に水を流水させて発電機に水を供給することが可能となる。また、人が水路内に入って土砂等2の排出作業を行う必要がなくなり、手間及びコストを削減することが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態において、開閉材29のスリット群数、スリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ2群、200cm、5個とし、渦動排砂管7のスリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ100cm、9個として、2回の排砂を行うことにより、有効渦動管長の8.2m分の渦動排砂管7上の土砂等2を排砂する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉材29のスリット群に設けられるスリット数を所定の数の5個のままとすれば、例えば、開閉材29のスリット群数、スリット中心間の距離をそれぞれ4群、200cmとし、渦動排砂管7のスリット中心間の距離、スリット数をそれぞれ100cm、18個にして、開閉材29を周方向に摺動させて、4回の排砂を行うことにより、渦動排砂管7の長さを有効渦動管長の2倍の16.4mとしてもよい。このように排砂回数を増やす方法を用いることにより、渦動排砂管7の長さを長くすることができるために、沈砂池11の底部に堆積する広い範囲の土砂等2を排出することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態において、駆動手段35としてモータを用い、摺動手段33として減速機を用いる方法について説明したが、これに限定されるものではなく、開閉材29を回転させることができるものであれば他の方法を用いてもよい。
【0054】
なお、上述したすべての実施形態において、渦動排砂管7及び開閉材29として鋼管を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、塩ビパイプ等を用いてもよい。
【0055】
また、上述したすべての実施形態において、土砂等2を渦動排砂管7内に吸引するとともに、渦動排砂管7外に排出する排出処理部(図示しない)を設けて排砂する方法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第一実施形態に係る渦動排砂装置を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’矢視図である。
【図3】本実施形態に係る渦動排砂管を示す図である。
【図4】本実施形態に係る開閉材を示す図である。
【図5】本実施形態に係る排砂方法を示す図である。
【図6】本実施形態に係る排砂方法を示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る渦動排砂装置を示す平面図である。
【図8】図7のB−B’矢視図である。
【図9】本実施形態に係る開閉材を示す図である。
【図10】本実施形態に係る排砂方法を示す図である。
【図11】本実施形態に係る排砂方法を示す図である。
【図12】土砂等の排砂状況を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 沈砂池
2 土砂等
3 渦動排砂装置
5 (渦動排砂管の)スリット
7 渦動排砂管
9 開閉材
10 (開閉材の)スリット
10A 一のスリット群
10B 他のスリット群
11 制御装置
13 摺動手段
15 駆動手段
23 渦動排砂装置
29 開閉材
31 制御装置
33 摺動手段
35 駆動手段
W 所定の幅
L 所定の長さ
P 所定の間隔
D 所定の直径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂池に堆積する土砂等を排出する排砂装置であって、
前記沈砂池の底部に設置され、前記土砂等を流入させるスリットを複数有する渦動排砂管と、
前記渦動排砂管内に配設され、前記スリットを開閉する開閉材と、
前記開閉材の開閉動作を制御する制御装置とを備えることを特徴とする渦動排砂装置。
【請求項2】
前記土砂等を前記渦動排砂管内に吸引するとともに、前記渦動排砂管外に排出する排出処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の渦動排砂装置。
【請求項3】
前記開閉材として、前記渦動排砂管のスリットと形状が略同一で、配置間隔が異なるスリットを有する円筒管を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の渦動排砂装置。
【請求項4】
前記開閉材として、前記渦動排砂管のスリットと形状が略同一で、配置パターンが異なるスリットを有する円筒管を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の渦動排砂装置。
【請求項5】
前記開閉材は、前記渦動排砂管の軸方向又は周方向に摺動可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の渦動排砂装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記開閉材を摺動させて前記スリットを開閉する摺動手段と、該摺動手段を駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の渦動排砂装置。
【請求項7】
沈砂池の底部に設置され、土砂等を流入させるスリットを複数有する渦動排砂管と、前記渦動排砂管内に配設され、前記スリットを開閉する開閉材と、前記開閉材の開閉動作を制御する制御装置とを備えた渦動排砂装置を用いる前記沈砂池に堆積する前記土砂等を排出する排砂方法において、
前記スリットを所定の順番で開閉することにより前記土砂等を前記渦動排砂管内に流入させて排出することを特徴とする排砂方法。
【請求項8】
前記土砂等を前記渦動排砂管内に吸引するとともに、前記渦動排砂管外に排出する排出処理部をさらに備えた前記渦動排砂装置を用いる前記沈砂池に堆積する前記土砂等を排出する排砂方法において、
前記土砂等を吸引することにより前記渦動排砂管内に流入させることを特徴とする請求項7に記載の排砂方法。
【請求項1】
沈砂池に堆積する土砂等を排出する排砂装置であって、
前記沈砂池の底部に設置され、前記土砂等を流入させるスリットを複数有する渦動排砂管と、
前記渦動排砂管内に配設され、前記スリットを開閉する開閉材と、
前記開閉材の開閉動作を制御する制御装置とを備えることを特徴とする渦動排砂装置。
【請求項2】
前記土砂等を前記渦動排砂管内に吸引するとともに、前記渦動排砂管外に排出する排出処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の渦動排砂装置。
【請求項3】
前記開閉材として、前記渦動排砂管のスリットと形状が略同一で、配置間隔が異なるスリットを有する円筒管を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の渦動排砂装置。
【請求項4】
前記開閉材として、前記渦動排砂管のスリットと形状が略同一で、配置パターンが異なるスリットを有する円筒管を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の渦動排砂装置。
【請求項5】
前記開閉材は、前記渦動排砂管の軸方向又は周方向に摺動可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の渦動排砂装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記開閉材を摺動させて前記スリットを開閉する摺動手段と、該摺動手段を駆動する駆動手段とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の渦動排砂装置。
【請求項7】
沈砂池の底部に設置され、土砂等を流入させるスリットを複数有する渦動排砂管と、前記渦動排砂管内に配設され、前記スリットを開閉する開閉材と、前記開閉材の開閉動作を制御する制御装置とを備えた渦動排砂装置を用いる前記沈砂池に堆積する前記土砂等を排出する排砂方法において、
前記スリットを所定の順番で開閉することにより前記土砂等を前記渦動排砂管内に流入させて排出することを特徴とする排砂方法。
【請求項8】
前記土砂等を前記渦動排砂管内に吸引するとともに、前記渦動排砂管外に排出する排出処理部をさらに備えた前記渦動排砂装置を用いる前記沈砂池に堆積する前記土砂等を排出する排砂方法において、
前記土砂等を吸引することにより前記渦動排砂管内に流入させることを特徴とする請求項7に記載の排砂方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−91842(P2009−91842A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264636(P2007−264636)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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