説明

渦巻形ガスケット

【課題】より小さい締付力で安定したシール性を得ることのできる渦巻形ガスケットを提供すること。
【解決手段】シール本体部が上下方向に押圧されて、そのシール本体部が外周側に膨出するように変形するとともに、その内周面の側端部が倒れ込むように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、シール本体部の外周面の先端部と溝を構成する面との間に隙間が形成されており、且つ、シール本体部の内周面の側端部と内輪の外周面との間に隙間が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ面間に装着されて締め付けられることでフランジ面間をシールする渦巻形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
渦巻形ガスケットは、各種配管のフランジ面間に装着されて、管内を流れる流体の漏洩を防ぐ目的で使用される。渦巻形ガスケットは高いシール性を備えており、特に高温・高圧の流体が管内を流れる、例えば火力・原子力発電所や石油精製・石油化学工場における配管ラインなどにおいて広く使用されている。
【0003】
このような渦巻形ガスケット100は、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、以下のように構成されている。すなわち、図9の部分断面図に示したように、テープ状の金属性のフープ材112と膨張黒鉛や無機質紙、樹脂などからなるフィラー材114とが重ね合わされたシール本体部110を有している。このシール本体部110は、各1条のフープ材112とフィラー材114とが重ね合わされ、渦巻き状に巻回されることで環状に形成されている。
【0004】
また、フープ材112およびフィラー材114は、図9に示したように、その断面略中央部に屈曲部112a,114aが形成されており、屈曲部112a,114aから側端部に向けて湾曲状に拡がるように延伸した断面略くの字状に形成されている。
【0005】
また、フープ材112およびフィラー材114は、その屈曲部112a,114aが外周側に突出するように配向されている。このため、図9に示したように、シール本体部110の外周面110aは断面略凸状に、内周面110bは断面略凹状に形成されている。
【0006】
また、シール本体部110の外周面110aには金属製の外輪120が装着されている。この外輪120の内周面120bは、図9に示したように断面略凹状に形成されており、この外輪120の内周面120bと、シール本体部110の外周面110aとが嵌合することで、シール本体部110の外周面110aに外輪120が装着されている。
【0007】
また、シール本体部110の内周側には金属製の内輪130が装着されている。この内輪130の外周面130aは、図9に示したように断面略凸状に形成されており、この内輪130の外周面130aと、シール本体部110の内周面110bとが嵌合することで、シール本体部110の内周面110bに内輪130が装着されている。
【0008】
このように構成されている渦巻形ガスケット100は、図10に示したように、フランジ面140a,140bの間に装着される。そして、フランジを締め付けることで、図中の矢印Pで示したように上下方向に押圧され、フープ材112およびフィラー材114が変形し、フランジ面140a,140bの間をシールするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−72425号公報
【特許文献2】特開平11−13888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、例えば工場などの配管ラインにおいてガスケットを更新する際、これまでシートガスケットが使用されていた箇所に、シートガスケットよりも高いシール性を備える渦巻形ガスケットを使用する場合がある。
【0011】
しかしながら、上述した渦巻形ガスケット100は、安定したシール性を得るために大きな締付力が必要となる。したがって、シートガスケットが使用されていた配管ラインのフランジではフランジ剛性やボルト強度が不足し、ガスケットだけでなくフランジ全体を交換する必要があった。このため、シートガスケットが装着されていたフランジにも使用できるように、小さい締付力で安定したシール性を得ることのできる渦巻形ガスケットの開発が望まれていた。
【0012】
本発明は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、従来の渦巻形ガスケットと比べてより小さい締付力で安定したシール性を得ることのできる渦巻形ガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために発明されたものであって、
本発明の渦巻形ガスケットは、
フランジ面間に装着されて上下方向に押圧されることで、フランジ面間をシールする渦巻形ガスケットであって、
テープ状のフープ材とフィラー材とが重ね合わされ、渦巻き状に巻回されてなる環状のシール部を有するシール本体部と、
前記シール本体部の外周面に装着された環状の外輪と、を備え、
前記フープ材およびフィラー材は、断面略V字状に形成されるとともにその屈曲部が外周側に突出するように配向され、これにより、前記シール本体部の外周面は断面略凸状に形成されており、
前記外輪の内周面には溝が形成されていて、当該溝の開口端と前記シール本体部の外周面とが当接するとともに、前記シール本体部の外周面の先端部が当該溝の中に位置しており、
前記シール本体部が上下方向に押圧されて外周側に膨出するように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、前記シール本体部の外周面の先端部と前記溝を構成する面との間に隙間が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の渦巻形ガスケットは、
フランジ面間に装着されて上下方向に押圧されることで、フランジ面間をシールする渦巻形ガスケットであって、
テープ状のフープ材とフィラー材とが重ね合わされ、渦巻き状に巻回されてなる環状のシール部を有するシール本体部と、
前記シール本体部の内周面に装着された環状の内輪と、を備え、
前記フープ材およびフィラー材は、断面略V字状に形成されるとともにその屈曲部が外周側に突出するように配向され、これにより、前記シール本体部の内周面は断面略凹状に形成されており、
前記内輪の外周面は断面略凸状に形成されていて、その外周面の先端部が前記シール本体部の内周面の凹部と当接しており、
前記シール本体部が上下方向に押圧されてその内周面の側端部が倒れ込むように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、前記シール本体部の内周面の側端部と前記内輪の外周面との間に隙間が形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の渦巻形ガスケットは、
フランジ面間に装着されて上下方向に押圧されることで、フランジ面間をシールする渦巻形ガスケットであって、
テープ状のフープ材とフィラー材とが重ね合わされ、渦巻き状に巻回されてなる環状のシール部を有するシール本体部と、
前記シール本体部の外周面に装着された環状の外輪と、
前記シール本体部の内周面に装着された環状の内輪と、を備え、
前記フープ材およびフィラー材は、断面略V字状に形成されるとともにその屈曲部が外周側に突出するように配向され、これにより、前記シール本体部の外周面は断面略凸状に、その内周面は断面略凹状に形成されており、
前記外輪の内周面には溝が形成されていて、当該溝の開口端と前記シール本体部の外周面とが当接するとともに、前記シール本体部の外周面の先端部が当該溝の中に位置しており、
前記内輪の外周面は断面略凸状に形成されていて、その外周面の先端部が前記シール本体部の内周面の凹部と当接しており、
前記シール本体部が上下方向に押圧されて、そのシール本体部が外周側に膨出するように変形するとともに、その内周面の側端部が倒れ込むように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、前記シール本体部の外周面の先端部と前記溝を構成する面との間に隙間が形成されており、且つ、前記シール本体部の内周面の側端部と前記内輪の外周面との間に隙間が形成されていることを特徴とする。
【0016】
このように、外輪の内周面に溝が形成されているとともに、シール本体部が上下方向に押圧されて外周側に膨出するように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、シール本体部の外周面の先端部と溝を構成する面との間に隙間が形成されているため、上下方向に押圧された際に、シール本体部が変形し易くなっている。したがって、従来の渦巻形ガスケットと比べてより小さい締付力で安定したシール性を得ることができるようになっている。
【0017】
また、内輪の外周面が断面略凸状に形成されており、シール本体部が上下方向に押圧されてその内周面の側端部が倒れ込むように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、シール本体部の内周面の側端部と内輪の外周面との間に隙間が形成されているため、上下方向に押圧された際に、シール本体部が変形し易くなっている。したがって、従来の渦巻形ガスケットと比べてより小さい締付力で安定したシール性を得ることができるようになっている。
【0018】
上記発明において、
前記外輪の内周面に形成されている溝が、断面略V字状に形成されていることが望ましく、
この場合、
前記外輪の内周面に形成されている断面略V字状の溝の屈曲角度(α)が、
上下方向に押圧されて変形する前の前記シール本体部の外周面の屈曲角度(γ)よりも小さく形成されている。
このように構成することで、溝の形状が断面略V字状であり、溝の加工が容易であるため、本発明の渦巻形ガスケットを容易に製造することができる。
【0019】
上記発明において、
前記外輪の内周面に形成されている断面略V字状の溝の屈曲角度(α)が、
前記渦巻形ガスケットがフランジ面間をシールした状態における前記シール本体部の外周面の屈曲角度(γ´)と略同一に形成されていることが望ましい。
【0020】
このように構成することで、渦巻形ガスケットがフランジ面間をシールした状態において、シール本体部の外周面と、溝を構成する面とが当接するため、シール本体部が動いたりすることがなく、安定したシール性を得ることができる。
【0021】
また、上記発明において、
前記内輪の外周面が、断面略三角形状に形成されていることが望ましく、
この場合、
断面略三角形状に形成されている前記内輪の外周面の屈曲角度(β)が、
上下方向に押圧されて変形する前の前記シール本体部の内周面の屈曲角度(δ)よりも小さく形成されている。
【0022】
このように構成することで、内輪の外周面の形状が断面略三角形状であり、内輪の外周面の加工が容易であるため、本発明の渦巻形ガスケットを容易に製造することができる。
また、上記発明において、
断面略三角形状に形成されている前記内輪の外周面の屈曲角度(β)が、
前記渦巻形ガスケットがフランジ面間をシールした状態における前記シール本体部の内周面の屈曲角度(δ´)と略同一に形成されていることが望ましい。
【0023】
このように構成することで、渦巻形ガスケットがフランジ面間をシールした状態において、シール本体部の内周面と内輪の外周面とが当接するため、シール本体部が動いたりすることがなく、安定したシール性を得ることができる。
【0024】
また、上記発明において、
断面略三角形状に形成されている前記内輪の外周面の先端部に平坦面が形成されていることが望ましい。
【0025】
このように構成することで、シール本体部の内周面に内輪を容易に装着することが可能となる。
また、上記発明において、
前記シール本体部のフィラー材が、
複数条のテープ状のフィラー材が重ね合わされて形成されていることが望ましい。
【0026】
このように、シール本体部のフィラー材が複数条のテープ状のフィラー材が重ね合わされて形成されていれば、より小さい締付力で安定したシール性を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、従来の渦巻形ガスケットと比べてより小さい締付力で安定したシール性を得ることのできる渦巻形ガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の渦巻形ガスケットを示した平面図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態の渦巻形ガスケットを示した平面図である。
【図3】図3は、図1のA−A線における断面図である。
【図4】図4は、本発明の渦巻形ガスケットが、フランジ面間に装着された、締め付けられる前の状態を示した図である。
【図5】図5は、本発明の渦巻形ガスケットが、フランジ面間に装着され、締め付けられてシール本体部が変形している状態を示した図である。
【図6】図6は、本発明の渦巻形ガスケットが、フランジ面間に装着され、締め付けられてシール本体部が変形し、フランジ面間をシールしている状態を示した図である。
【図7】図7は、本発明の渦巻形ガスケットの外輪の変形例を示した断面図である。
【図8】図8は、本発明の渦巻形ガスケットの内輪の変形例を示した断面図である。
【図9】図9は、従来の渦巻形ガスケットを示した部分断面図である。
【図10】図10は、従来の渦巻形ガスケットがフランジ面間をシールしている状態を示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の渦巻形ガスケットを示した平面図である。図2は、本発明の別の実施形態の渦巻形ガスケットを示した平面図である。図3は、図1のA−A線における断面図である。
【0030】
本発明の渦巻形ガスケット1は、フランジ面間に装着されて締め付けられることでフランジ面間をシールするものであり、図1に示したように、平面視で環状をなしている。そして、環状のシール本体部10の外周面10aには、環状の外輪20が装着されており、環状のシール本体部10の内周面10bには、環状の内輪30が装着されている。
【0031】
外輪20は、図3に示したように、その内周面20bに屈曲角度αの断面略V字状の溝22が形成されている。この外輪20は金属製であり、例えばステンレスや炭素鋼などの金属から形成されている。なお、この外輪20は、渦巻形ガスケット1をフランジ間に装着する際のセンタリングを容易にするとともに、ガスケットの補強と締付量を規制する目安としての役割を有するものである。
【0032】
内輪30は、図3に示したように、その外周面30aが屈曲角度βの断面略三角形状に形成されている。また、その先端部32には平坦面が形成されている。この内輪30も金属性であり、上述した外輪20と同様に、例えばステンレスや炭素鋼などの金属から形成されている。なお、この内輪30は、主としてガスケットの補強のために装着されるものである。
【0033】
また、外輪20および内輪30は、図3に示したように、略同一の高さに形成されている。これに対して、後述するシール本体部10は、外輪20および内輪30よりも高く形成されており、シール本体部10を構成するフープ材12およびフィラー材14の両側端部が、外輪20および内輪30よりも上下方向に突出する形態となっている。
【0034】
なお、これら外輪20および内輪30は、渦巻形ガスケット1の用途および使用環境などに応じて適宜装着されるものである。したがって、その用途および使用環境によっては、本発明の渦巻形ガスケット1を、図2の(a)に示したように、シール本体部10に外輪20だけが装着されている渦巻形ガスケット1として構成することも可能である。また、図2の(b)に示したように、シール本体部10に内輪30だけが装着されている渦巻形ガスケット1として構成することも可能である。
【0035】
シール本体部10は、図3に示したように、その外周部分にはフープ材12だけが渦巻き状に巻回されたフープ外輪部11aが形成されている。また、その内周部分には、フープ材12だけが渦巻き状に巻回されたフープ内輪部11bが形成されている。また、これらフープ外輪部11aとフープ内輪部11bとの間には、シール部11cが形成されている。
【0036】
シール部11cは、図3に示したように、1条のフープ材12と、2条のフィラー材14,14とが重ね合わされ、渦巻き状に巻回されて形成されている。フィラー材14は、フープ材12よりも幅広に形成されており、これにより、フープ材12とフィラー材14とが重ね合わされた際に、フィラー材14の両側端部がフープ材12の両側端部から突出するようになっている。なお、この2条のフィラー材14,14は、接着剤などで一体的に接着されているのではなく、単に重ね合わされているだけとなっている。
【0037】
また、図3に示したように、フープ材12およびフィラー材14は、その略中心位置で屈曲し、側端部に向けて直線的に拡がるように延伸した断面略V字状に形成されるとともに、その屈曲部が外周側に突出するように配向されている。これにより、シール本体部10の外周面10aは断面略凸状に形成され、内周面10bは断面略凹状に形成されている。
【0038】
また、図3に示したように、このシール本体部10の外周面10aの屈曲角度γは、上述した外輪20の内周面20bの溝22の屈曲角度αよりも大きくなっている。また、シール本体部10の内周面10bの屈曲角度δは、上述した内輪30の外周面30aの屈曲角度βよりも大きくなっている。
【0039】
また、上述したように、シール本体部10の外周面10aには外輪20が装着されている。外輪20は、環状のシール本体部10の外周側に嵌装されることで、シール本体部10の外周面10aの先端部16が外輪20の溝22の中に位置し、シール本体部10の外周面10aと外輪20の溝22の開口端とが当接した状態で、シール本体部10の外周面10aに装着される。そして、図3に示したように、シール本体部10の外周面10aの先端部16と、外輪20の溝22を構成する面22a,22bとの間には隙間が形成されている。
【0040】
また、上述したように、シール本体部10の内周面10bには、内輪30が装着されている。内輪30は、環状のシール本体部10の内周側に嵌装されることで、シール本体部10の内周面10bの凹部18に、内輪30の外周面30aの先端部32が当接した状態で、シール本体部10の内周面10bに装着される。そして、図3に示したように、シール本体部10の内周面10bの両側端部10bs,10bsと内輪30の外周面30aの間には隙間が形成されている。
【0041】
なお、本実施形態の渦巻形ガスケット1では、内輪30の先端部32とシール本体部10のフープ内輪部11bとは、溶接により固定されている。この溶接位置は、全周にわたって溶接されていても良く、間隔をあけて複数個所が溶接されていてもよい。また、本発明の渦巻形ガスケット1においては、内輪30の先端部32とシール本体部10とは、必ずしも溶接により固定されている必要はなく、単に内輪30の先端部32がシール本体部10の内周面10bの凹部18と当接している状態で嵌装されることで、内輪30がシール本体部10の内周面10bに装着されていてもよい。
【0042】
なお、上述したフープ外輪部11aおよびフープ内輪部11bは、シール部11cを保護するために設けられるものである。
また、フープ材12は、ステンレス、アルミニウム、チタン、ニッケルなどの金属製薄帯から形成することができる。また、フィラー材14は、膨張黒鉛テープや無機質紙、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)テープなどから形成することができる。
【0043】
次に、本発明の渦巻形ガスケット1が、フランジ面間に装着されて締め付けられた場合について説明する。図4〜図6は、本発明の渦巻形ガスケット1が、フランジ面間に装着された状態を示した図であり、図4は締め付けられる前の状態、図5は締め付けられてシール本体部が変形している状態、図6は締め付けられてシール本体部が変形し、フランジ面間をシールしている状態を示した図である。
【0044】
本発明の渦巻形ガスケット1は、図4に示したように、フランジ面40a,40bの間に装着される。そして、この図4に示した状態から、フランジを締め付けると、図5の矢印Pに示したように、シール本体部10に上下方向の力が作用する。そして、シール本体部10が上下方向に圧縮されるように変形し、その外周面10aが膨出するように変形するとともに、内周面10bの両側端部10bs,10bsが倒れ込むように変形して、図5に示した状態となる。
【0045】
この図5に示した状態では、図4に示した状態と比べて、膨出するように変形したシール本体部10の外周面10aの先端部16が、外輪20の溝22の、より内側に位置している。また、シール本体部10の外周面10aの屈曲角度γaは、図4に示した状態の屈曲角度γよりも小さくなっている。なお、この屈曲角度γaは、外輪20の溝22の屈曲角度αよりは大きくなっている。
【0046】
また、この図5に示した状態では、図4に示した状態と比べて、倒れ込むように変形したシール本体部10の内周面10bの両側端部10bs,10bsが、内輪30の外周面30aに、より近づいた位置にある。また、シール本体部10の内周面10bの屈曲角度δaは、図4に示した状態の屈曲角度δよりも小さくなっている。なお、この屈曲角度δaは、内輪30の外周面30aの屈曲角度βよりは大きくなっている。
【0047】
そして、さらにフランジを締め付け、フランジ面40a,40bの間がシールされた状態になると、図6の矢印Pに示したように、さらにシール本体部10に上下方向の力が作用する。そして、シール本体部10がさらに上下方向に圧縮されるように変形し、その外周面10aがさらに膨出するように変形するとともに、シール本体部10の内周面10bの両側端部10bs,10bsがさらに倒れ込むように変形して、図6に示した状態となる。
【0048】
この図6に示した状態では、図5に示した状態と比べて、膨出するように変形したシール本体部10の外周面10aの先端部16が、外輪20の溝22のさらに内側に位置している。そして、シール本体部10の外周面10aの先端部16と、外輪20の溝22を構成する面22a,22bとの間に形成されていた隙間が殆どなくなり、先端部16がこれ以上の溝22の内側へ移動できないようになっている。
【0049】
また、シール本体部10の外周面10aの屈曲角度γ´は、図5に示した状態の屈曲角度γaよりも小さくなっている。そして、この屈曲角度γ´は、外輪20の溝22の屈曲角度αと略同一の角度となっており、シール本体部10の外周面10aと、外輪20の溝22を構成する面22a,22bとが当接している。
【0050】
また、この図6に示した状態では、図5に示した状態と比べて、倒れ込むように変形したシール本体部10の内周面10bの両側端部10bs,10bsが、内輪30の外周面30aと当接した状態になっている。したがって、シール本体部10の内周面10bは、その両側端部10bs,10bsが倒れ込むように、これ以上変形することができない状態になっている。また、シール本体部10の内周面10bの屈曲角度δ´は、図5に示した状態の屈曲角度δaよりも小さくなっており、内輪30の外周面30aの屈曲角度βと略同一の角度となっている。
【0051】
このように、本発明の渦巻形ガスケット1は、外輪20の内周面20bに溝22が形成されているとともに、シール本体部10の外周面10aの先端部16と外輪20の溝22を構成する面22a,22bとの間に隙間が形成されている。そして、フランジ面40a,40bの間に装着されてフランジが締め付けられ、シール本体部10が上下方向に押圧されて、その外周面10aが膨出するように変形した際に、フランジ面40a,40bの間がシールされた状態となるまでの間、その外周面10aの先端部16が、溝22を構成する面22a,22bと当接しないように構成されている。
【0052】
したがって、本発明の渦巻形ガスケット1は、上下方向に押圧された際に、シール本体部10が変形し易くなっており、従来の渦巻形ガスケットと比べてより小さい締付力で安定したシール性を得ることができるようになっている。
【0053】
また、本発明の渦巻形ガスケット1は、内輪30の外周面30aが断面略凸状に形成されているとともに、シール本体部10の内周面10bの側端部10bsと内輪30の外周面30aとの間に隙間が形成されている。そして、フランジ面40a,40bの間に装着されてフランジが締め付けられ、シール本体部10が上下方向に押圧されて、その内周面10bの側端部10bsが倒れ込むように変形した際に、フランジ面40a,40bの間がシールされた状態となるまでの間、その内周面10bの側端部10bsが内輪30の外周面30aと当接しないように構成されている。
【0054】
したがって、本発明の渦巻形ガスケット1は、上下方向に押圧された際に、シール本体部10が変形し易くなっており、従来の渦巻形ガスケットと比べてより小さい締付力で安定したシール性を得ることができるようになっている。
【0055】
また、本発明の渦巻形ガスケット1は、上述したように、シール本体部10を構成するフープ材12およびフィラー材14が、その略中心位置で屈曲し、側端部に向けて直線的に拡がるように延伸した断面略V字状に形成されている。
【0056】
したがって、図9に示した、側端部に向けて湾曲状に拡がるように延伸した断面略くの字状に形成されている従来の渦巻形ガスケット100のフープ材112およびフィラー材114と比べてより変形し易くなっている。
【0057】
また、本発明の渦巻形ガスケット1は、上述したように、外輪20の内周面20bに形成されている断面略V字状の溝22の屈曲角度αが、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態におけるシール本体部10の外周面10aの屈曲角度γ´と略同一に形成されている。
【0058】
したがって、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態において、シール本体部10の外周面10aと溝22を構成する面22a,22bとが当接するため、シール本体部10が動いたりすることがなく、安定したシール性を得ることができるようになっている。
【0059】
また、本発明の渦巻形ガスケット1は、上述したように、断面略三角形状に形成されている内輪30の外周面30aの屈曲角度βが、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態におけるシール本体部10の内周面10bの屈曲角度δ´と略同一に形成されている。
【0060】
したがって、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態において、シール本体部10の内周面10bと内輪30の外周面30aとが当接するため、シール本体部10が動いたりすることがなく、安定したシール性を得ることができるようになっている。
【0061】
また、本発明の渦巻形ガスケット1は、上述したように、シール本体部10を構成するフィラー材が、2条のテープ状のフィラー材14,14が重ね合わされて形成されている。そして、この2条のフィラー材14,14は、接着剤などで一体的に接着されているのではなく、単に重ね合わされているだけとなっている。
【0062】
したがって、シール本体部10におけるフィラー材14の占める割合が、従来の渦巻形ガスケットと比べて大きいとともに、重ね合わされたフィラー材14,14同士が相互に摺動可能となっており、シール本体部10がより変形し易くなっていることから、従来の渦巻形ガスケットと比べてより小さい締付力で安定したシール性を得ることができるようになっている。
【0063】
なお、上述した実施形態では、2条のテープ状のフィラー材14,14が重ね合わされているが、本発明の渦巻形ガスケット1はこれに限定されず、少なくとも複数条のテープ状のフィラー材14が重ね合わされていればよい。また、重ね合わされる複数条のフィラー材14は、同一の厚みのものであっても、異なる厚みのものであっても構わない。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、外輪20の内周面20bのる溝22は、断面略V字状に形成されていたが、本発明の渦巻形ガスケット1はこれに限定されない。例えば、図7の(a)に示したように断面略湾曲状に形成されていてもよく、また、図7の(b)に示したように断面略矩形状に形成されていてもよい。また、図7の(c)に示したように、断面略台形状に形成されていてもよいものである。
【0065】
また、上述した実施形態では、内輪30の外周面30aは断面略三角形状に形成され、その先端部32には平坦面が形成されていたが、本発明の渦巻形ガスケット1はこれに限定されない。例えば、図8の(a)に示したように先端部32に平坦面が形成されていなくてもよく、また、図8の(b)に示したように先端部32が湾曲状に形成されていてもよい。さらに、外周面30aの一部に凸部34が形成されている図8の(c)に示した態様のものも、本願発明における断面略凸状に形成された外周面30aに含まれるものである。
【0066】
なお、上述した図8の(b)に示す内輪30にあっては、その外周面30aの先端部32の形状を、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態におけるシール本体部10の内周面10bの凹部18の形状と略同一に形成することが好ましい。このように構成することで、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態において、シール本体部10のフープ材12およびフィラー材14に生じ得る局所的な応力集中を緩和することができる。
【0067】
また、上述した実施形態では、外輪20の内周面20bに形成されている断面略V字状の溝22の屈曲角度αが、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態におけるシール本体部10の外周面10aの屈曲角度γ´と略同一に形成されていたが、本発明の渦巻形ガスケット1はこれに限定されない。すなわち、本発明の渦巻形ガスケット1では、シール本体部10が外周側に膨出するように変形する際に、そのシール本体部10の変形が妨げられないように構成されていればよく、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態において、シール本体部10の外周面10aの屈曲角度γ´が、外輪20の溝22の屈曲角度αよりも大きくなっていてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、断面略三角形状に形成されている内輪30の外周面30aの屈曲角度βが、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態におけるシール本体部10の内周面10bの屈曲角度δ´と略同一に形成されていたが、本発明の渦巻形ガスケット1はこれに限定されない。すなわち、本発明の渦巻形ガスケット1では、シール本体部10の内周面10bの側端部10bsが倒れ込むように変形する際に、そのシール本体部10の変形が妨げられないように構成されていればよく、渦巻形ガスケット1がフランジ面40a,40bの間をシールした状態において、シール本体部10の内周面10bの屈曲角度δ´が、内輪30の外周面30aの屈曲角度βよりも大きくなっていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 渦巻形ガスケット
10 シール本体部
10a 外周面
10b 内周面
10bs 側端部
11a フープ外輪部
11b フープ内輪部
11c シール部
12 フープ材
14 フィラー材
16 先端部
18 凹部
20 外輪
20b 内周面
22 溝
22a,22b 溝を構成する面
30 内輪
30a 外周面
32 先端部
34 凸部
40a,40b フランジ面
100 従来の渦巻形ガスケット
110 シール本体部
110a 外周面
110b 内周面
112 フープ材
112a,114a 屈曲部
114 フィラー材
120 外輪
120b 内周面
130 内輪
130a 外周面
140a,140b フランジ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ面間に装着されて上下方向に押圧されることで、フランジ面間をシールする渦巻形ガスケットであって、
テープ状のフープ材とフィラー材とが重ね合わされ、渦巻き状に巻回されてなる環状のシール部を有するシール本体部と、
前記シール本体部の外周面に装着された環状の外輪と、を備え、
前記フープ材およびフィラー材は、断面略V字状に形成されるとともにその屈曲部が外周側に突出するように配向され、これにより、前記シール本体部の外周面は断面略凸状に形成されており、
前記外輪の内周面には溝が形成されていて、当該溝の開口端と前記シール本体部の外周面とが当接するとともに、前記シール本体部の外周面の先端部が当該溝の中に位置しており、
前記シール本体部が上下方向に押圧されて外周側に膨出するように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、前記シール本体部の外周面の先端部と前記溝を構成する面との間に隙間が形成されていることを特徴とする渦巻形ガスケット。
【請求項2】
フランジ面間に装着されて上下方向に押圧されることで、フランジ面間をシールする渦巻形ガスケットであって、
テープ状のフープ材とフィラー材とが重ね合わされ、渦巻き状に巻回されてなる環状のシール部を有するシール本体部と、
前記シール本体部の内周面に装着された環状の内輪と、を備え、
前記フープ材およびフィラー材は、断面略V字状に形成されるとともにその屈曲部が外周側に突出するように配向され、これにより、前記シール本体部の内周面は断面略凹状に形成されており、
前記内輪の外周面は断面略凸状に形成されていて、その外周面の先端部が前記シール本体部の内周面の凹部と当接しており、
前記シール本体部が上下方向に押圧されてその内周面の側端部が倒れ込むように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、前記シール本体部の内周面の側端部と前記内輪の外周面との間に隙間が形成されていることを特徴とする渦巻形ガスケット。
【請求項3】
フランジ面間に装着されて上下方向に押圧されることで、フランジ面間をシールする渦巻形ガスケットであって、
テープ状のフープ材とフィラー材とが重ね合わされ、渦巻き状に巻回されてなる環状のシール部を有するシール本体部と、
前記シール本体部の外周面に装着された環状の外輪と、
前記シール本体部の内周面に装着された環状の内輪と、を備え、
前記フープ材およびフィラー材は、断面略V字状に形成されるとともにその屈曲部が外周側に突出するように配向され、これにより、前記シール本体部の外周面は断面略凸状に、その内周面は断面略凹状に形成されており、
前記外輪の内周面には溝が形成されていて、当該溝の開口端と前記シール本体部の外周面とが当接するとともに、前記シール本体部の外周面の先端部が当該溝の中に位置しており、
前記内輪の外周面は断面略凸状に形成されていて、その外周面の先端部が前記シール本体部の内周面の凹部と当接しており、
前記シール本体部が上下方向に押圧されて、そのシール本体部が外周側に膨出するように変形するとともに、その内周面の側端部が倒れ込むように変形する際に、そのシール本体部の変形が妨げられないように、前記シール本体部の外周面の先端部と前記溝を構成する面との間に隙間が形成されており、且つ、前記シール本体部の内周面の側端部と前記内輪の外周面との間に隙間が形成されていることを特徴とする渦巻形ガスケット。
【請求項4】
前記外輪の内周面に形成されている溝が、断面略V字状に形成されていることを特徴とする請求項1または3に記載の渦巻形ガスケット。
【請求項5】
前記外輪の内周面に形成されている断面略V字状の溝の屈曲角度(α)が、
上下方向に押圧されて変形する前の前記シール本体部の外周面の屈曲角度(γ)よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項4に記載の渦巻形ガスケット。
【請求項6】
前記外輪の内周面に形成されている断面略V字状の溝の屈曲角度(α)が、
前記渦巻形ガスケットがフランジ面間をシールした状態における前記シール本体部の外周面の屈曲角度(γ´)と略同一に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の渦巻形ガスケット。
【請求項7】
前記内輪の外周面が、断面略三角形状に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の渦巻形ガスケット。
【請求項8】
断面略三角形状に形成されている前記内輪の外周面の屈曲角度(β)が、
上下方向に押圧されて変形する前の前記シール本体部の内周面の屈曲角度(δ)よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項7に記載の渦巻形ガスケット。
【請求項9】
断面略三角形状に形成されている前記内輪の外周面の屈曲角度(β)が、
前記渦巻形ガスケットがフランジ面間をシールした状態における前記シール本体部の内周面の屈曲角度(δ´)と略同一に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の渦巻形ガスケット。
【請求項10】
断面略三角形状に形成されている前記内輪の外周面の先端部に平坦面が形成されていることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の渦巻形ガスケット。
【請求項11】
前記シール本体部のフィラー材が、
複数条のテープ状のフィラー材が重ね合わされて形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の渦巻形ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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