説明

渦電流の発生・抑制を利用した科学玩具

【課題】本発明の目的は、学習者に対して渦電流の発生と抑制を同一器具によって認識させることができる学習用教具であり、さらに科学的な疑問をもたせることができる興趣性の高い科学的玩具としても使用できる装置を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る渦電流発生・抑制認識装置は、本発明で考案した構造、すなわち、非磁性体かつ電気的に導体の板と薄い絶縁物とを積層した構成の立方体ブロックから構成される。ブロック上方に吊るされた磁石の振り子運動が、ブロックの配置方向によって磁石の挙動が異なることを観察することにより、渦電流の発生および抑制を認識することができる教具であり、かつ科学的な疑問をもたせることができる興趣性の高い玩具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流、変圧器、誘導機を学習する高等学校生徒、高等専門学校および大学の初年度程度の学生を対象とした渦電流の発生と抑制を理解させるための学習用の教具、および物理的興味を持たせるためのミステリアスな要素を合わせ持つ玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般には前記渦電流に関連した教具は、単に、吊り下げられた導体板をU型磁石で振動させる方式のもの(特許文献1参照)、回転可能な導体板をその外周の一部分に導体板を非接触で挟む位置に置かれた永久磁石円盤を手動で回転させることで導体板を回転させる方式のもの(特許文献2参照)、回転軸上に設置した永久磁石を手動で回転させ、その間に非接触で設置された釣鐘の形状をしたアルミキャップ回転させる方式のもの(非特許文献1参照)である。
【特許文献1】実開昭59−192172号公報
【特許文献2】実開昭56−170469号公報
【非特許文献1】中村理科カタログNo.B10−4850、誘導電動機原理説明器CL−450、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の教材では同じ渦電流に関連したものでありながら、その渦電流の利用(モータ)と渦電流の抑制(変圧器のケイ素鋼板やフェライトコア)の原理を同時に同一装置を用いて教えることはできない。
【0004】
そこで、本発明の目的は、渦電流の発生と抑制を同一装置によって認識させることができる学習教材および科学的玩具として使用できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る渦電流発生・抑制認識装置は、非磁性体かつ電気的に導体の板と薄い絶縁物とを積層した構成の立方体ブロックを考案した。ブロック上方に吊るされた磁石の振り子運動が、ブロックの配置方向によって磁石の挙動が異なることを観察することにより、体験的に渦電流の発生および抑制を認識することで、それらの原理を実感し理解することができる装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブロックの上部で振り子運動する磁石の挙動ブロックの配置方向によって著しく異なるので物理的な疑問と興味とを呼び起こすための玩具および教具として使用できる。
【0007】
さらに、渦電流を既に学習した者に対しては、その原理と応用を理解させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための最良の形態例を図1〜図4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は立方体ブロック本体の構成例である。ブロック本体は非磁性体かつ電気的に導体の板、例えば銅、アルミなどの金属板もしくはそれらを含んだ合金の導体板1および電気的絶縁物として導体板1と同一面積の紙もしくは非導体の高分子フィルム2を交互に積層して構成される。なお、導体の板厚は1mm以下が適している。それら導体板と絶縁物とは接着剤等で接合することで図2の立方体のブロックを形成している。なお、導体板1の表面を絶縁物でコーティング加工や窒化、酸化処理等により導体板1の表面を絶縁物に改質したものを用いた場合は、紙もしくは非導体の高分子フィルム2を必要としない。
【実施例2】
【0010】
本発明の一実施形態の構成例を図3および図4の概略図に示す。立方体ブロック3、永久磁石4、糸5、装置台6、糸固定棒7から構成される。
【実施例3】
【0011】
図3の実施例における構成の詳細を以下に述べる。糸5は固定棒7の端で固定され、その糸のもう一端に永久磁石4(ネオジウム磁石等)が接続されている。なお、磁石4の極性の配置は立方体ブロックに鎖交する磁束を多くするために、ブロック方向にN極またはS極の面が表出するように糸5に接続している。
【0012】
図3のように立方体ブロックを装置台6の上に設置した場合、使用者の手で保持していた磁石4を手離し、磁石4がブロック1の上部に達するとブロックの導体面と鎖交する磁束によって渦電流が各層の導体面に発生する。その結果、磁石4との間の電磁誘導作用によって磁石は制動を受け、急激に静止する。
【実施例4】
【0013】
一方、立方体ブロックを図4のように設置した場合、図3と同様な操作を行うと、磁石4がブロック1の上部に達するとブロックの各層の導体面に鎖交磁束によって渦電流が発生する。しかし、その電流量は方向図3のようにブロックを設置した場合よりも著しく小さい。従って、この場合、磁石へ働く制動力は小さく、磁石は単振動を繰り返すこととなる。以上の観察から学習者は視覚的に渦電流の発生と抑制を認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】導体板と絶縁シートの積層構造
【図2】導体板と絶縁シートの積層し立方体ブロック概観図
【図3】本発明の一実施形態(その1)
【図4】本発明の一実施形態(その2)
【符号の説明】
【0015】
1:導体板
2:紙もしくは非導体の高分子フィルム
3:立方体ブロック
4:永久磁石
5:糸
6:装置台
7:糸固定棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦電流の発生と抑制を同一装置で体験的に理解させるため教具であり、装置を置く方向により異なるミステリアスな動作を見て楽しむ玩具的要素を合わせ持つ装置。
【請求項2】
前記教具の一形態は非磁性かつ電気的導体の板と絶縁物を交互に接着、もしくは、表面のみ絶縁物である導体を積層してあることを特徴とする請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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