説明

渦電流を使用した薄膜基板信号分離のためのシステム、方法、および装置

基板に起因する渦電流センサ(ECS)信号の成分を決定するシステムおよび方法は、ECSに対して、ECSから第一の距離にある第一の位置に基板を設置するステップを含む。基板は、基板の第一の表面上に導電膜を含むことができる。第一のECS信号は、基板が第一の位置にある状態で検出できる。基板は、次に、ECSに対して、ECSから第二の距離にある第二の位置に基板が存在するように、ECSに対して反転させることができる。第二の距離は、ほぼ基板の厚さを除いた第一の距離に等しい。第二のECS信号は、基板が第二の位置にある状態で検出される。差分信号が決定される。差分信号は、ECSの較正グラフ上の第一の信号レベルと第二の信号レベルとの間の差に等しい。第二の信号レベルは、基板の厚さにほぼ等しい距離だけシフトされている。第一のECS信号の第一の基板成分を計算する。第一のECS信号の第一の基板成分は、第一の距離と差分信号との積を、基板の厚さで除算したものに等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセスにおいて薄膜の厚さを決定するシステムおよび方法に関し、特に、基板の薄膜が誘発した信号から、基板が誘発した渦電流センサ信号を区別するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ECS(渦電流センサ)は、電磁場(EMF)を生成および投射し、EMFが生成された空間内に導電材料(例えば、ワイヤ、導電膜、その他)が置かれた時にEMFの変化を検出することで、導電材料を検出する。導電材料がEMF内に置かれた時、導電材料内では、渦電流が誘導され、導電材料の体積に侵入する電場が補償される。渦電流は、それ自体のEMFを生成し、このEMFは一次EMFと相互作用し、結果として、EMFの補償的な変化が生じる。EMFの変化は、ECSによって検出される。導体から公知の距離にあるECSは、様々な較正手法を介して、導体がEMFに及ぼす影響に基づいて、導体の特定の態様を決定できる。EMFの変化の大きさは、導電材料の抵抗と、ECSに対する導電材料の近接性とに依存する。様々な較正手法と組み合わせて、いくつかの変数を不変にすることで、このECSの特性を使用して、導電材料の特性の様々な態様と、ECSに対する近接性とを決定できる。
【0003】
一例として、ECSは、1メガヘルツ(MHz)信号で構成されたEMFを生成する。シリコン基板上の導電膜(例えば、銅、アルミニウム、その他)をEMFに通過させる。EMFは、導電膜内で渦電流を誘導し、誘導された渦電流はEMFに干渉する。ECSは、渦電流によって生じた干渉の結果であるECS信号を検出する。
【0004】
図1は、代表的なECS110を示している。基板120は、上に導電膜130または層を有し、更に、ECS110から放射されたEMF112を受けている(縮尺は一定ではない)。通常、EMF112は、「侵入度」と呼ばれる深度量で、事実上、導体を貫通すると考えられる。侵入度は、ターゲット(例えば、導体)内でEMF波の初期値の約1/e(約37%)までEMF波が減衰する距離である。侵入度は、EMF112の周波数と、導電材料の種類と、その他の要素との関数である。導体が導電膜130であり、導電膜が銅である場合、侵入度は、1MHzで約220,000オングストロームとなる。銅膜130が侵入度より薄い場合(例えば、5000オングストローム)、EMF112は、銅膜130および基板120の両方において渦電流を誘導する。
【0005】
ECS110によって検出された結果的な信号は、基板120において誘導された渦電流と、銅膜130において誘導された渦電流との両方に起因する成分を含む。しかしながら、導体130が侵入度より厚い場合でも、EMFの少なくとも一部(例えば、約37%)は導体130を更に越えて(例えば、基板120と基板120を越えた環境とへ)侵入するため、EMFは、実際には、侵入度において侵入を停止する訳ではない。この例においては、導体130が侵入度より薄く、EMFの大部分は、侵入距離114だけ、基板120に侵入し、更には、これを貫通する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基板120は大きな抵抗率を有するため、基板120においては非常に小さな渦電流が誘導される。結果として、検出ECS信号の大部分(例えば、90ないし95%)は、導体130内で誘導された渦電流によるものとなる。検出ECS信号の約5ないし10%のみが、基板120において誘導された渦電流によるものとなる。
【0007】
残念なことに、基板120がシリコン基板である場合、シリコン基板120の抵抗率は、基板が切断された結晶の物理的特性の変化(例えば、結晶構造、ドーパント濃度、およびその他の物理的特性の変化)のため、縁部と中心部とで変化する可能性がある。抵抗率が変化することから、シリコン基板120内の渦電流も、基板120の中心部と縁部との間において、比例した量で変化する可能性がある。
【0008】
代表的なシリコン基板は、「平均抵抗」値を有するものとして特定される。平均抵抗値は、基板120の縁部での抵抗率が基板120の中心部での抵抗率の半分になる可能性があり、結果として、抵抗率に100%以上の変化が生じることを示す。一例として、あるウェーハが、1.0オーム/cmの平均抵抗率を有するものとして表示されうるものとする。その1.0オーム/cmの抵抗率というのは、ウェーハの縁部で抵抗率が0.5オーム/cmであることを許容し、ウェーハの中心部で抵抗率が1.5オーム/cm以上であることを許容するかもしれず、縁部と中心部との間で300%以上の変化が生じうる。シリコン基板に、ウェーハの任意の場所での抵抗率が記載範囲に入ることを示す抵抗率範囲(例えば、0.008ないし0.020オーム/cm)を表示することも可能である。0.008ないし0.020オーム/cmの範囲では、250%の抵抗率の変化が許容される。したがって、検出ECS信号の約5ないし10%のみが基板120において誘導された渦電流によるものであるとしても、その5ないし10%は、大幅に変化する可能性がある。例えば、約2%と約6%との間、或いは約4%と約10%との間になる可能性がある。
【0009】
こうした基板120による検出ECS信号における変化は、導電薄膜130に起因する検出ECS信号の成分を正確に検出するのを困難にする。必要なものは、基板において誘導された渦電流に由来する検出ECS信号の成分を最小化または除去するシステムおよび方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
大まかに言って、本発明は、ECS信号を測定する改良されたシステムおよび方法を提供することで、こうした必要性を満たす。本発明は、プロセス、装置、システム、コンピュータ読み取り可能な媒体、またはデバイスを含む、無数の方法で実施できると理解されたい。本発明のいくつかの発明実施形態について、下で説明する。
【0011】
一実施形態は、基板に起因する渦電流センサ(ECS)信号の成分を決定する方法を含む。方法は、ECSに対して、ECSから第一の距離にある第一の位置に基板を設置する工程を含む。基板は、基板の第一の表面上に導電膜を含むことができる。第一のECS信号は、基板が第一の位置にある状態で検出できる。基板は、次に、ECSに対して、ECSから第二の距離にある第二の位置に基板が存在するように、ECSに対して反転させることができる。第二の距離は、第一の距離からほぼ基板の厚さを除いた距離に等しい。第二のECS信号は、基板が第二の位置にある状態で検出される。差分信号が決定される。差分信号は、ECSの較正グラフ上の第一の信号レベルと第二の信号レベルとの間の差に等しい。第二の信号レベルは、基板の厚さにほぼ等しい距離だけシフトされている。第一のECS信号の第一の基板成分を計算する。第一のECS信号の第一の基板成分は、第一の距離と差分信号との積を、基板の厚さで除算したものに等しい。
【0012】
導電膜は、約10ないし約20,000オングストロームの厚さを有する。導電膜は、膜残留物である。
【0013】
ECSは、第一の位置および第二の位置の両方において、第一の点に向けて配することが可能であり、第一の点は、基板の第一の表面上に存在する。
【0014】
導電膜は、第一の位置において、基板とECSとの間に並置する。
【0015】
基板を反転する工程は、ECSを移動させる工程を含むことができる。
【0016】
基板を反転する工程は、基板を移動させる工程を含むことができる。
【0017】
基板を反転する工程は、ほぼ導電膜の厚さに等しい量だけ、基板の位置を調整する工程を含むことができる。
【0018】
方法は、更に、第二のECS信号の第二の基板成分を計算する工程を含むことができる。第二のECS信号の第二の基板成分は、第二の距離と差分信号との積を、基板の厚さで除算したものに等しい。
【0019】
方法は、更に、導電膜に起因する第一のECS信号の成分を計算する工程を含むことができる。導電膜に起因する第一のECS信号の成分は、第一のECS信号と、第一のECS信号の第一の基板成分との差に等しい。更に、導電膜の厚さを決定できる。
【0020】
別の実施形態は、基板の抵抗率をマッピングする方法を含む。方法は、基板の表面上の第一の点および第二の点に対して、基板に起因する渦電流センサ(ECS)信号の成分を決定する工程を含む。第一の抵抗率は、第一の点について計算され、第二の抵抗率は、第二の点について計算される。抵抗率曲線は、第一の点および第二の点における抵抗率から外挿できる。
【0021】
別の実施形態は、基板に起因する渦電流センサ(ECS)信号の成分を決定するシステムを含む。システムは、基板に向けて配置されたECSを含む。基板は、ECSに対して、ECSから第一の距離にある第一の位置に存在する。基板は、基板の第一の表面上に導電膜を含む。更に、基板反転部が含まれる。基板反転部は、ECSに対して、ECSから第二の距離にある第二の位置に基板が存在するように、ECSに対して基板を反転させることができる。第二の距離は、ほぼ基板の厚さを除いた第一の距離に等しい。制御システムが、ECSに結合される。制御システムは、基板が第一の位置にある状態で第一のECS信号を検出するロジックと、基板が第二の位置にある状態で第二のECS信号を検出するロジックとを含む。制御システムは、更に、ECSに対する較正グラフ上の第一の信号レベルと第二の信号レベルとの間の差に等しい差分信号を決定するロジックを含む。第二の信号レベルは、基板の厚さにほぼ等しい距離だけシフトされている。制御システムは、更に、第一の距離と差分信号との積を、基板の厚さで除算したものに等しい第一のECS信号の第一の基板成分を計算するロジックを含む。
【0022】
システムは、更に、基板を第一の位置および第二の位置で支持するためのステージを含む。ステージは、導電膜の厚さを補うために調整可能にできる。
【0023】
基板反転部は、基板を反転可能なエンドエフェクタを含むことができる。基板反転部は、ECSを移動させるアクチュエータを含む。
【0024】
ECSは、更に、第一のECSおよび第二のECSを含むことが可能であり、基板は第一のECSに対する第一の位置に存在し、基板は第二のECSに対する第二の位置に存在する。第一のECSおよび第二のECSは、実質的に同じ点に向けられている。
【0025】
第一の距離は、第二の距離に実質的に等しい。
【0026】
第一のECSと第二のECSとは、位相を180度ずらして動作される。
【0027】
[発明の効果]
本発明は、基板上において、基板の抵抗率を正確に決定することで、より正確な導電膜の測定および検出を提供する。
【0028】
本発明の他の態様および利点は、本発明の原理を例示する添付図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、同様の参照符号が同様の構造要素を示す添付図面と併せて、以下の詳細な説明から容易に理解されよう。
【0030】
改良された渦電流センサシステムと、渦電流センサを使用する改良された方法とのいくつかの例示的実施形態について説明する。本明細書で述べる特定の詳細の一部または全部がなくとも、本発明を実施し得ることは、当業者にとって明白であろう。
【0031】
導電薄膜(例えば、銅膜)を正確に測定することは、半導体における層のように、導電膜の使用が増加したことから重要になっている。薄膜の堆積と、その後の薄膜の測定とは、非常に一般的になっている。半導体ウェーハは、通常、半導体製造プロセスの少なくとも一点において、化学機械平坦化(CMP)を受ける。CMP工程後には、非常に薄い導電膜残留物(例えば、1200オングストローム未満)が残る場合が多い。非常に薄い膜残留物は、残留膜の下から過剰な材料を除去することなく残留膜を除去するために、適切な追加CMP工程を決定および利用できるように、位置および厚さの両方において正確に測定される必要がある。
【0032】
導電膜の正確な測定には、基板における渦電流に起因するECS信号の成分を実質的に除去、最小化、または補正する必要がある。本明細書では、基板に起因するECS信号を実質的に除去、最小化、または補正する様々なアプローチを説明する。
【0033】
図2Aおよび2Bは、本発明の一実施形態による、導電膜230において誘導された渦電流を測定するシステム200を示している。システム200は、ECS110を含み、ECS110は、ECS110を制御するコントローラ250に結合される。公知の位置において基板220を支持するために、更に、ステージまたは基板支持部252が含まれる。基板220を移動および反転させるために、更に、エンドエフェクタまたはその他の基板ハンドリングシステムを含むことができる。システム200は、更に、ECS110を移動させることができるアクチュエータを含むことができる。最初に図2Aを参照すると、半導体ウェーハ220は、上に導電膜230を備え、第一の位置において、導電膜230がECS110に最も近くなるような向きに配置される。導電膜230は、数オングストロームないし20,000オングストローム以上までのいずれかの間にできる。導電膜230は、不完全なCMPプロセス後に残留し得るもののような、非常に薄い膜残留物(例えば、1200オングストローム未満)にできる。半導体基板220は、通常、厚さ約750μm(7,500,000オングストローム)である。ECS110は、基板220の中心線222から距離Ds1で配向される。距離Ds1は、中心線222からの公知の距離である。距離Ds1は、膜の表面との間の実際の距離を測定し、375μmを追加することで決定可能であり、375μmは、代表的な半導体基板220の代表的な厚さである約750μmの半分に等しい。
【0034】
図3は、基板220内で誘導された渦電流によるECS信号の成分を決定する方法のステップ300のフローチャートである。ステップ305において、基板220は、第一の位置に配置される。ステップ310において、ECS110は、導電膜230および基板220内で渦電流を誘導し、第一のECS信号S1を受ける。
【0035】
第一のECS信号S1は、二つの成分信号Ss1およびSfの合計である。Ss1は、第一の位置にある基板220内で誘導された渦電流による成分である。Sfは、導電膜230内で誘導された渦電流によるECS成分である。
【0036】
ステップ315において、基板220は、図2Bに示したように第二の位置へ移動される。第二の位置において、導電膜230は、ECS110に対して、第一の位置と実質的に同じ位置に存在するが、しかしながら、半導体基板220は、導電膜230とECS110との間に並置される。簡単に言えば、第二の位置において、基板220は、第一の位置と比較して、ECS110に対して反転される。導電膜230はある程度の厚さ(例えば、約20,000オングストローム以上まで)を有するため、基板を単純に反転すると、基板は、ECSに向かって、基板220および導電膜230の両方の厚さの合計(即ち、750μm+20,000オングストローム=752μm)に等しい距離だけシフトされる。一実施形態において、基板230の位置は、導電膜によるシフト(即ち、2μm)を修正するように調整できる。このような方法に代えて、基板220に起因するECS信号の成分は合計ECS信号の非常に小さな部分(例えば、5ないし10%)のみであるため、基板230は、調整しなくてもよい。下で更に詳細に説明するように、基板220とECS110との間の距離Ds2の10%までの誤差は許容できる。
【0037】
導電膜230は、ECS110に対して、第一の位置と実質的に同じ位置に存在するが、しかしながら、半導体基板220は、導電膜230とECS110との間に並置される。ウェーハを反転させることの代替として、基板220がECS110に対して反転されるように、ECS110を基板220の反対側へ移動させることができる。距離Ds2は、基板220が第二の位置にある状態での、中心線222とECS110との間の距離である。ECS110は、更に、第一の位置および第二の位置の両方において、基板220の表面上の点(X,Y)と相対的に同じ位置において配向される。
【0038】
再び図3を参照すると、ステップ320において、ECS110は、導電膜230および基板220内で渦電流を誘導し、第二のECS信号S2を受ける。第二のECS信号S2は、二つの成分信号Ss2およびSfの合計である。Ss2は、第二の位置にある基板220内で誘導された渦電流によるECS成分である。Sfは、導電膜230内で誘導された渦電流によるECS成分である。
【0039】
ESC信号はECS110と基板220との間の距離Ds2の関数であるため、Ss1とSs2とは異なる。距離Ds2は、距離Ds1より短い。Ds1とDs2との間の違いは、ほぼ基板220の厚さ(即ち、約750μm)に等しい。反対に、導電膜230とECS110との間の距離Dfは、第一の位置および第二の位置の両方において実質的に同じであるため、したがって、Sfは、S1およびS2の両方において、実質的に同じとなる。以下の分析のようになる。
2−S1=ΔS および S2=(Ss2+Sf) および S1=(Ss1+Sf
したがって、
(Ss2+Sf)−(Ss1+Sf)=ΔS
更に簡略化することで、
s2−Ss1=ΔSとなり、これは、ΔS(S2とS1との間の差)が基板220の位置の差の関数であることを示す。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態による、距離と比較したECS110の感度のグラフ400を示す。基板220は、第一の位置410と、その後の第二の位置420とにおいて図示している。ステップ325では、グラフ400を参照することでΔSが決定される。ECS110の感度は、y軸線にプロットされており、ECS110と検出された導体(例えば、基板220)との間の距離は、x軸線にプロットされている。距離が増加すると、ECS信号は、ゼロに近づき、距離がゼロに近づくと、ECSは、最大の信号を検出する。ECSの感度グラフ400は、実質的に直線である、したがって、渦電流ターゲット(例えば、導体230または基板220)がECSから距離Dにある場合、感度は、グラフ400に図示したように、Sd1に等しい。渦電流ターゲットがECS110に750μm接近した場合、感度は、Sd2に等しくなる。ΔSは、Sd1とSd2との間の差である。グラフ400は直線であるため、x軸線に沿った750μmの任意のシフトは、ΔS(即ち、Sd1とSd2との間の差)に等しいECS信号の信号強度におけるシフトを発生させ、したがって、ΔSは較正グラフ400から公知の量となる。
【0041】
動作330では、基板220に起因するECS信号の成分(ECSss)が決定される。上の図2Aおよび2Bにおいて説明したように、厚さ750μmの基板220が第一の位置と比較して第二の位置において750μmだけECS110に接近した場合、較正グラフ400においてΔSを求めることができる。基板220に起因するECS信号の成分(ECSss)は、基板中心線222およびECS110間の距離DとΔSとの積を、基板の厚さによって除算したものに等しい。数学的関係は、次のように記載される。
ECSss=(Dsub)(ΔS)/(基板の厚さ)
【0042】
したがって、基板220に起因する第一のECS信号の成分(Ss1)は、基板中心線222およびECS110間の距離Ds1とΔSとの積を、基板の厚さによって除算したものに等しい。数学的関係は、次のように記載される。
s1=(Ds1)(ΔS)/(基板の厚さ)
【0043】
同様に、第二のECS信号の関係は、次のようになる。
s2=(Ds2)(ΔS)/(基板の厚さ)
【0044】
導電膜230に起因する第一のECS信号の成分(Sf)も計算可能である。Sfは、第一のECS信号と第一のECS信号の第一の基板成分との差に等しい。数学的関係は、次のように記載される。
f=S1−Ss1
【0045】
fが決定されると、導電膜の厚さは、導電膜230と同じ種類の導電膜の厚さと対比してECS信号をプロットする較正テーブルを参照することで、正確に決定できる。
【0046】
図5は、本発明の一実施形態による、基板220内で誘導された渦電流によるECS信号の成分を決定する別のシステム500である。システム500は、基板220の反対側に存在する二つのECS110、210を含む。二つのECS110、210は、更に、基板220の中心線222から実質的に同じ距離(即ち、Ds1'=Ds2')にできる。代替として、二つのECS110、210は、基板220の中心線222から実質的に異なる距離(即ち、Ds1'≠Ds2')にもできる。
【0047】
二つのECS110、210は、更に、互いに実質的に整合される。上の図3において説明したものと同様に、基板220は、第一のECS110に対する第一の位置に存在すると同時に、基板220は、第二のECS110に対する第二の位置に存在する。このシステム500において、第一および第二のECS信号は、非常に短い連続手順において、基板220またはECS110、210を物理的に反転させることなく検出できる。
【0048】
ECS110、210は、更に、ECS110、210を同時に、但し、位相を180度ずらして動作させることで、検出ECS信号の感度を高める形で動作させることができる。これにより、第一のECS110からの第一のEMFは、第二のECS210からの第二のEMFを反射し、検出ECS信号を事実上増幅する。この点は、たとえば、Gotkinsらによる2002年9月25日提出の米国特許出願第10/256,055号「渦電流に基づく測定機能の強化」(所有者は本願と同じ)において説明されている。この出願は、参照により本明細書にあらゆる目的で組み込まれる。
【0049】
図6は、本発明の一実施形態による、基板の感度をマッピングする方法のステップ600のフローチャートである。ステップ605では、基板の表面上の第一の点(第一のSs1)に対して、基板220に起因するECS信号の第一の成分が、上記の方法で説明したように決定される。ステップ610では、基板の表面上の第二の点(第二のSs1)に対して、基板220に起因するECS信号の第二の成分が決定される。ステップ615では、第一の抵抗率が、第一の点について計算され、ステップ620では、第二の抵抗率が、第二の点について計算される。ステップ625では、第一の点と第二の点とにおける抵抗率から、抵抗率曲線を推定できる。上記のように、代表的な基板は、半径方向について実質的に線形の抵抗率を有する。したがって、第一の点および第二の点の基板中心からの半径が異なる場合、抵抗率曲線は、二点から推定できる。
【0050】
図7Aおよび7Bは、本発明の一実施形態による、ECS信号のグラフ700、750である。図7Aは、本発明の一実施形態による、基板の寄与について修正していないECS信号データのグラフ700である。図7Bは、本発明の一実施形態による、基板の寄与を修正または補正した同じECS信号データのグラフ750である。「膜のみ」の曲線750は、座標の中心0,0に非常に近い位置で始まっている。容易に確認できるように、ECS信号における基板の寄与を特性および補正することで、真の「薄膜のみ」のデバイスの較正が可能となる。
【0051】
本明細書で使用する場合、「約」および「ほぼ」という用語は、+/−10%を意味する。一例として、「約750μm」という語句は、675μmないし825μmの範囲を示す。上の実施形態を考慮すると、本発明は、コンピュータシステムに格納されたデータに関与する様々なコンピュータ実施動作を利用し得ると理解される。こうした動作は、物理的な量の物理的操作を必要とするものである。通常、必ずではないが、こうした量は、格納、転送、結合、比較、およびその他の操作が可能な電気または磁気信号の形態をとる。更に、実行される操作は、生成、特定、決定、または比較といった用語で呼ばれる場合が多い。
【0052】
本明細書で説明した、本発明の一部を形成する任意の動作は、有用な機械動作である。本発明は、更に、こうした動作を実行するデバイスまたは装置に関する。装置は、必要な目的のために特別に構築してよく、或いは、コンピュータ内に格納されたコンピュータプログラムによって選択的に起動または構成された汎用コンピュータにしてよい。特に、様々な汎用コンピュータを、本明細書の教示内容にしたがって書かれたコンピュータプログラムと共に使用してよく、或いは、必要な動作を実行するために、より特化した装置を構築する方が都合のよい場合もある。
【0053】
本発明は、コンピュータ読み取り可能な媒体上のコンピュータ読み取り可能なコードとしても実施できる。コンピュータ読み取り可能な媒体は、後でコンピュータシステムによって読み取り可能なデータを格納できる任意のデータ記憶デバイスである。コンピュータ読み取り可能な媒体の例には、ハードドライブと、ネットワーク接続ストレージ(NAS)と、読み出し専用メモリと、ランダムアクセスメモリと、CD−ROMと、CD−Rと、CD−RWと、磁気テープと、その他の光学式および非光学式データ記憶デバイスとが含まれる。コンピュータ読み取り可能な媒体は、更に、コンピュータ読み取り可能なコードが分散形式で格納および実行されるように、ネットワーク接続コンピュータシステムに分配可能である。
【0054】
更に、図3および6のステップによって表現された指示は、例示の順序で実行する必要はなく、ステップによって表現された全ての処理は、本発明を実施するために必要ではない場合があると理解されるであろう。更に、図3および6において説明されたプロセスは、RAM、ROM、またはハードディスクドライブのいずれかまたは組み合わせに格納されたソフトウェアにおいても実施可能である。
【0055】
以上、上記の発明について明確な理解の目的からある程度詳細に説明してきたが、添付特許請求の範囲内で、特定の変更および変形を実施し得ることは理解されよう。したがって、本発明は、限定的ではなく例示的なものであると考えられ、本発明は、本明細書に記載の詳細には限定されず、添付特許請求の範囲およびその均等物の範囲で変形し得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】代表的なECSを示す図。
【図2A】本発明の一実施形態による、導電膜において誘導された渦電流を測定するシステムを示す図。
【図2B】本発明の一実施形態による、導電膜において誘導された渦電流を測定するシステムを示す図。
【図3】基板内で誘導された渦電流によるECS信号の成分を決定する方法のステップのフローチャート。
【図4】本発明の一実施形態による、距離に対するECSの感度のグラフ。
【図5】本発明の一実施形態による、基板内で誘導された渦電流によるECS信号の成分を決定する別のシステムを示す図。
【図6】本発明の一実施形態による、基板の感度をマッピングする方法のステップのフローチャート。
【図7A】本発明の一実施形態による、基板の寄与について修正していないECS信号データのグラフ
【図7B】本発明の一実施形態による、基板の寄与を修正または補正した同じECS信号データのグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に起因する渦電流センサ(ECS)信号の成分を決定する方法であって、
ECSに対して、前記ECSから第一の距離にある第一の位置に基板を設置する工程であって、前記基板は、前記基板の第一の表面上に導電膜を含む工程と、
前記基板が前記第一の位置にある状態で第一のECS信号を検出する工程と、
前記ECSに対して、前記ECSから第二の距離にある第二の位置に前記基板が存在するように、前記ECSに対して前記基板を反転させる工程であって、前記第二の距離は、前記第一の距離からほぼ前記基板の厚さを除いた距離に等しい工程と、
前記基板が前記第二の位置にある状態で第二のECS信号を検出する工程と、
前記ECSの較正グラフ上の第一の信号レベルと前記第二の信号レベルとの間の差に等しい差分信号を決定する工程であって、前記第二の信号レベルは、前記基板の前記厚さにほぼ等しい距離だけシフトされている工程と、
前記第一の距離と前記差分信号との積を前記基板の前記厚さで除算したものに等しい前記第一のECS信号の第一の基板成分を計算する工程と、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記導電膜は、約10ないし約20,000オングストロームの厚さを有する、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、
前記導電膜は膜残留物である、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、
前記ECSは、前記第一の位置および前記第二の位置の両方において、第一の点に向けられ、
前記第一の点は、前記基板の前記第一の表面上に存在する、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、
前記導電膜は、前記第一の位置において、前記基板と前記ECSとの間に並置する、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、
前記基板を反転する工程は、前記ECSを移動させる工程を含む、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、
前記基板を反転する工程は、前記基板を移動させる工程を含む、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、
前記基板を反転する工程は、ほぼ前記導電膜の厚さに等しい量だけ、前記基板を調整する工程を含む、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、
更に、前記第二の距離と前記差分信号との積を前記基板の前記厚さで除算したものに等しい前記第二のECS信号の第二の基板成分を計算する工程を備える、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、更に、
前記第一のECS信号と、前記第一のECS信号の前記第一の基板成分と、の差に等しい、前記導電膜に起因する前記第一のECS信号の成分を計算する工程を備える、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、
更に、前記導電膜の厚さを決定する工程を備える、方法。
【請求項12】
基板の抵抗率をマッピングする方法であって、
基板の前記表面上の第一の点に対して、前記基板に起因する渦電流センサ(ECS)信号の成分を決定する工程であって、
ECSに対して、前記ECSから第一の距離にある第一の位置に基板を設置する工程であって、前記基板は、前記基板の第一の表面上に導電膜を含む工程と、
前記基板が前記第一の位置にある状態で第一のECS信号を検出する工程と、
前記ECSに対して、前記ECSから第二の距離にある第二の位置に前記基板が存在するように、前記ECSに対して前記基板を反転させる工程であって、前記第二の距離は、前記第一の距離からほぼ前記基板の厚さを除いた距離に等しい工程と、
前記基板が前記第二の位置にある状態で第二のECS信号を検出する工程と、
前記ECSの較正グラフ上の第一の信号レベルと前記第二の信号レベルとの間の差に等しい差分信号を決定する工程であって、前記第二の信号レベルは、前記基板の前記厚さにほぼ等しい距離だけシフトされている工程と、
前記第一の距離と前記差分信号との積を前記基板の前記厚さで除算したものに等しい前記第一のECS信号の第一の基板成分を計算する工程と、を含む工程と、
前記基板の前記表面上の第二の点に対して、基板に起因する前記渦電流センサ(ECS)信号の成分を決定する工程と、
前記第一の点における第一の抵抗率を計算する工程と、
前記第二の点における第二の抵抗率を計算する工程と、
前記第一の点および前記第二の点における前記抵抗率から抵抗率曲線を推定する工程と、を備える方法。
【請求項13】
基板に起因する渦電流センサ(ECS)信号の成分を決定するシステムであって、
基板に向けて配置されたECSであって、前記基板は、前記ECSに対して、前記ECSから第一の距離にある第一の位置に存在し、前記基板は、前記基板の第一の表面上に導電膜を含むESCと、
前記ECSに対して、前記ECSから第二の距離にある第二の位置に前記基板が存在するように、前記ECSに対して前記基板を反転させることが可能な基板反転部であって、前記第二の距離は、前記第一の距離からほぼ前記基板の厚さを除いた距離に等しい基板反転部と、
前記ECSに結合された制御システムであって、
前記基板が前記第一の位置にある状態で第一のECS信号を検出するロジックと、
前記基板が前記第二の位置にある状態で第二のECS信号を検出するロジックと、
前記ECSの較正グラフ上の第一の信号レベルと前記第二の信号レベルとの間の差に等しい差分信号を決定するロジックにして、前記第二の信号レベルは、前記基板の前記厚さにほぼ等しい距離だけシフトされているロジックと、
前記第一の距離と前記差分信号との積を前記基板の前記厚さで除算したものに等しい前記第一のECS信号の第一の基板成分を計算するロジックと、
を含む制御システムと、を含む、システム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムであって、更に、
前記基板を前記第一の位置および前記第二の位置で支持するためのステージを備える、システム。
【請求項15】
請求項14記載のシステムであって、
前記ステージは、前記導電膜の厚さを補償するために調整可能である、システム。
【請求項16】
請求項13記載のシステムであって、
前記基板反転部は、前記基板を反転可能なエンドエフェクタを含む、システム。
【請求項17】
請求項13記載のシステムであって、
前記基板反転部は、前記ECSを移動させるアクチュエータを含む、システム。
【請求項18】
請求項13記載のシステムであって、
前記ECSは、第一のECSおよび第二のECSを含み、
前記基板は、前記第一のECSに対して前記第一の位置に存在し、
前記基板は、前記第二のECSに対して前記第二の位置に存在し、
前記第一のECSおよび前記第二のECSは、実質的に同じ点に向けられている、システム。
【請求項19】
請求項18記載のシステムであって、
前記第一の距離は、前記第二の距離に実質的に等しい、システム。
【請求項20】
請求項18記載のシステムであって、
前記第一のECSと前記第二のECSとは、位相を180度ずらして動作される、システム。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公表番号】特表2006−511805(P2006−511805A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563995(P2004−563995)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/041084
【国際公開番号】WO2004/059313
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】