説明

温室用谷樋構造及び被覆フィルム固定部材

【課題】温室内に形成される影の面積を小さくできると共に、水漏れを防止できる温室用谷樋構造を提供する。
【解決手段】谷底部と、谷底部を挟んだ両側に位置する谷傾斜部10a,11aとを被覆する谷用透明フィルム1を備えると共に、谷傾斜部10a,11aを構成する骨組み材10,11に、谷用透明フィルム1を押し付けるため、谷部の長手方向に沿って所定間隔毎に配設される略V字状のバネ部材2とを備えてなる。これにより、谷部は、谷用透明フィルム1によって被覆されることになるため、太陽光の遮りが抑制され、従来の金属板からなる谷樋のように温室内に大きな影が生じることがなく、日照条件が改善される。また、複数枚の金属板を接合して構成されるわけではないため、従来のように金属板間のつなぎ目から漏水が生じるようなこともない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連棟式温室に形成される温室用谷樋構造、並びに、温室の骨組み材に張られる被覆フィルムを固定するための固定部材であって、特に温室用谷樋構造に用いるのに好適な被覆フィルム固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、連棟式温室の谷部に配設される谷樋が開示されている。これらの谷樋は、いずれも、全長5〜6m程度の長さを有する金属板を断面略V字状に加工し、これを谷部の長手方向に沿って配設している。谷部の長手方向は、数十mに及ぶため、これらの金属板は谷部の長手方向に沿って複数枚配設される。
【特許文献1】WO2003/077639号公報
【特許文献2】意匠登録第1236141号公報(使用状態を示す参考図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したように従来の谷樋は、所定長の金属板を用いている。このため、谷部においては日射が遮られ、その分、温室内の影の面積が大きくなるという問題がある。また、上記のように、谷部の長手方向に沿って複数枚連接するため、経年変化によりそのつなぎ目から水漏れが生じることもあった。また、谷樋の一端部には、金属製の集水部材が連接されるが、集水部材と谷樋との間からも水漏れが生じることがあった。一方、谷樋を経由して集水部材にたまる水は、温室の骨組み材に張られる被覆フィルムの外側を通過する雨水が主であるが、被覆フィルム内面に生じる結露水を、谷樋に流すことができることができれば、温室内の温度、湿度などの栽培環境をより適切に維持できるため望ましい。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、温室内に形成される影の面積を小さくできると共に、水漏れを防止できる温室用谷樋構造を提供することを課題とする。また、本発明は、被覆フィルムの内面に生じる結露水も集水可能な温室用谷樋構造を提供することを課題とする。また、本発明は、被覆フィルム内面に生じる結露水を谷樋に排水することができる被覆フィルム固定部材を備えた温室用谷樋構造、並びに、該温室用谷樋構造に用いるのに適すると共に、結露水の外部への排水機能を備え、谷樋部以外の部位においても、複数枚の被覆フィルムを張る際に好適に使用できる被覆フィルム固定部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、連棟式温室の谷部に設けられる温室用谷樋構造であって、
谷底部と、谷底部を挟んだ両側に位置し、谷部の谷傾斜部を構成する骨組み材とを被覆し、谷部の長手方向に沿って配設される谷用透明フィルムと、
前記谷傾斜部を構成する骨組み材に、前記谷用透明フィルムを押し付けるため、谷部の長手方向に沿って所定間隔毎に配設される略V字状のバネ部材と
を備えてなることを特徴とする温室用谷樋構造を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記骨組み材の各谷傾斜部の上端には、骨組み材の天井部を被覆している被覆フィルムの下端を支持する被覆フィルム固定部材が固定されており、前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が、それぞれ前記被覆フィルム固定部材に固定されていることを特徴とする請求項1記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記被覆フィルム固定部材は、所定の幅で谷部の長手方向に略平行に配設される板状部材と、前記板状部材に積層され、板状部材に対して、水分が通過可能な隙間を有して固定される被覆フィルム止め材とを備えてなり、前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が、前記板状部材のうち、被覆フィルム止め材の固定位置よりも谷傾斜部の傾斜方向に沿って下側に固定されていることを特徴とする請求項2記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記被覆フィルム止め材は、前記板状部材に対してねじ止めにより固定されていることを特徴とする請求項3記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項5記載の本発明では、前記被覆フィルム止め材は、前記板状部材の長手方向に沿って適宜間隔毎に積層されるスペーサ板を介してねじ止めにより固定されていることを特徴とする請求項4記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項6記載の本発明では、前記被覆フィルム固定部材の板状部材のうち、谷傾斜部の傾斜方向に沿った上端縁が、温室の骨組み材から離間する方向に屈曲されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1に記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が、前記板状部材の表面に密着固定されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項8記載の本発明では、前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が、前記板状部材の表面に両面テープを介して密着されていることを特徴とする請求項7記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項9記載の本発明では、前記被覆フィルム固定部材の板状部材は、谷傾斜部の傾斜方向に沿った下端縁側が、該谷傾斜部の傾斜方向に沿う平板部と、該平板部から離間する方向に屈曲された屈曲片との二股に分かれ、該平板部と屈曲片とにより形成された、開口部を傾斜方向下側とする断面略V字状溝を備えており、該断面略V字状溝内に、前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が固定されることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項10記載の本発明では、前記板状部材の断面略V字状溝内に係合可能な係合部材を備え、前記谷用透明フィルムの上端縁を断面略V字状溝内に挿入し、該係合部材により、断面略V字状溝の内面に該上端縁を押し付けて固定することを特徴とする請求項9記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項11記載の本発明では、長手方向の少なくとも一端部に、排水孔を備えると共に、該排水孔に至るまで前記谷用透明フィルムにより表面が被覆された集水部材が連接されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1に記載の温室用谷樋構造を提供する。
請求項12記載の本発明では、温室を形成するために、適宜位置に隣接する状態で配設される複数枚の被覆フィルムを固定するために設けられる被覆フィルム固定部材であって、
所定の長さと幅を備え、隣接する2枚の被覆フィルムの境界付近に配設される板状部材と、
前記板状部材に積層され、板状部材に対して、水分が通過可能な隙間を有して固定される被覆フィルム止め材とを備えてなり、
一方の被覆フィルムは、前記被覆フィルム止め材に固定され、他方の被覆フィルムは、その一端縁が、前記板状部材のうち、被覆フィルム止め材の固定位置よりも、該他方の被覆フィルムによる被覆面の傾斜方向に沿った下側に固定されることを特徴とする被覆フィルム固定部材を提供する。
請求項13記載の本発明では、前記被覆フィルム固定部材の板状部材は、前記他方の被覆フィルムによる被覆面の傾斜方向に沿った下端縁側が、該被覆面の傾斜方向に沿う平板部と、該平板部から離間する方向に屈曲された屈曲片との二股に分かれ、該平板部と屈曲片とにより形成された、開口部を傾斜方向下側とする断面略V字状溝を備えており、該断面略V字状溝内に、前記他方の被覆フィルムの一端縁が固定されることを特徴とする請求項12記載の被覆フィルム固定部材を提供する。
請求項14記載の本発明では、前記板状部材の断面略V字状溝内に係合可能な係合部材を備え、前記他方の被覆フィルムの一端縁を断面略V字状溝内に挿入し、該係合部材により、断面略V字状溝の内面に該一端縁を押し付けて固定することを特徴とする請求項13記載の被覆フィルム固定部材を提供する。
請求項15記載の本発明では、前記被覆フィルム固定部材の板状部材のうち、前記他方の被覆フィルムによる被覆面の傾斜方向に沿った上端縁が、温室の骨組み材から離間する方向に屈曲されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1に記載の被覆フィルム固定部材を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の谷樋構造は、谷底部と、谷底部を挟んだ両側に位置する谷傾斜部とを被覆する谷用透明フィルムを備えると共に、谷傾斜部を構成する骨組み材に、谷用透明フィルムを押し付けるため、谷部の長手方向に沿って所定間隔毎に配設される略V字状のバネ部材とを備えてなる。これにより、谷部は、谷用透明フィルムによって被覆されることになるため、太陽光の遮りが抑制され、従来の金属板からなる谷樋のように温室内に大きな影が生じることがなく、日照条件が改善される。また、複数枚の金属板を接合して構成されているわけではないため、従来のように金属板間のつなぎ目から漏水が生じるようなこともない。また、長手方向の少なくとも一端部に集水部材を連接すると共に、集水部材の表面も、上記谷用透明フィルムによって被覆した構成とすれば、谷底部と集水部材との連結部からの漏水も防止される。
【0007】
また、骨組み材の天井部を被覆している被覆フィルムの下端を支持する被覆フィルム固定部材に、谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁を固定することにより、簡易な構造でありながら、被覆フィルムの内面に生じる結露水を、谷樋を形成する谷用透明フィルムに集水することができる。被覆フィルム固定部材は、板状部材と、該板状部材に、水分が通過可能な隙間を有して固定される被覆フィルム止め材とを備えてなり、被覆フィルム止め材の固定位置よりも、傾斜方向下側に谷用透明フィルムが固定される。このため、被覆フィルム止め材によって固定される被覆フィルムの内面に生じた結露水は、板状部材と被覆フィルム止め材との隙間を通り、谷用透明フィルムの外面を伝って集水されることになる。なお、この被覆フィルム固定部材は、被覆フィルムと谷用透明フィルムとの固定に用いるだけでなく、複数の被覆フィルム間に位置させて用いることで、一方の被覆フィルムの内面に生じる結露水を、他方の被覆フィルムの外面を通じて排水させる部材として温室の種々の部位で用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本実施形態の谷樋構造の一部を示す図である。この図に示したように、本実施形態の谷樋構造は、連棟になっている隣接する2つの温室A,B間に設けられる。2つの温室A,Bは、天井部がアーチ形等の骨組み材10,11によって形成され、両者の間には、温室A,Bの長手方向(奥行き方向)に沿って梁部材12が設けられている。従って、谷部は、梁部材12の位置が谷底部となり、該谷底部を挟んで両側に位置する骨組み材10,11のうちの下方部分が谷傾斜部10a,11aとなって形成されている。より具体的には、該骨組み材10,11は、天井付近を覆う被覆フィルム20,21によって被覆されているが、この天井部を形成する被覆フィルム20,21における谷部の傾斜方向に沿った下端縁20a,21aを固定する被覆フィルム止め材22,23の設定位置までが谷傾斜部10a,11aとなっている。
【0009】
本実施形態の谷樋構造は、谷部を形成する梁部材12の上面、骨組み材10,11の谷傾斜部10a,11aを被覆する谷用透明フィルム1と、略V字状に形成されたバネ部材2とを備えて構成される。略V字状のバネ部材2は、図1に示したように、谷用透明フィルム1を間に挟んで、骨組み材10,11の谷傾斜部10a,11a上に位置するように、谷部の長手方向に沿って所定間隔毎に設けられ、谷用透明フィルム1を上面から谷傾斜部10a,11a及び梁部材12に押し付ける機能を果たす。バネ部材2は、その端部2a,2bが、谷用透明フィルム1の上面(外面)側から、ねじ2cにより骨組み材10,11に固定される。なお、谷用透明フィルム1は、できるだけ太陽光を遮光しない素材であることが好ましく、透明又は半透明のプラスチックフィルムが用いられる。
【0010】
ここで、被覆フィルム止め材22,23は、図2及び図3に示したように、上面開口の略山形に形成されており、その底面22a,23aが板状部材24,25上に積層されて固定される。板状部材24,25は、所定の幅を有する長尺板からなり、谷部の長手方向に略平行に配設されており、被覆フィルム止め材22,23は、このようにして配設された板状部材24,25において、谷部の傾斜方向の上側に位置するように固定される。この際、被覆フィルム止め材22,23と板状部材24,25とは、液密に密着固定されるのではなく、両者間の僅かな隙間を通じて水分が伝わるように固定される。好ましくは、図3に示したように、ねじ26を、被覆フィルム止め材22,23の底面22a,23a及び板状部材24,25を厚み方向に貫通させて固定される。このねじ26は、さらに、骨組み材10,11にねじ込まれ、これにより、被覆フィルム止め材22,23と板状部材24,25とからなる被覆フィルム固定部材が骨組み材10,11に固定されるようになっている。
【0011】
一方、板状部材24,25において、谷傾斜部10a,11aの傾斜方向に沿った被覆フィルム止め材22,23の固定位置よりも下側には、谷用透明フィルム1における谷傾斜部10a,11aに沿った上端縁1a,1bが固定される。上端縁1a,1bは、板状部材24,25の表面に対して、両者間の隙間から水分が伝わらないように液密に密着固定されている。本実施形態では、両面テープ3を介して密着固定されている。また、上端縁1a,1bをこのようにして固定した後、該上端縁1a,1bの表面には、長尺な押さえ金具4を被覆フィルム止め材22,23と略平行に配設し、ねじ5を、該押さえ金具4、上端縁1a,1b、両面テープ3及び板状部材24,25の厚み方向に貫通させ、骨組み材10,11に固定している。
【0012】
また、板状部材24,25のうち、谷傾斜部10a,11aの傾斜方向に沿った上端縁24a,25aは、骨組み材10,11から離間する方向にやや屈曲されて起こされている。被覆フィルム20,21の下端縁20a,21aは、被覆フィルム止め材22,23の上面開口から挿入され、その内部で固定用のバネ部材(図示せず)により固定される。従って、被覆フィルム20,21の下端縁20a,21a付近は、上記板状部材24,25の上端縁24a,25aの上方に位置している。このため、被覆フィルム20,21の内面に生じる結露水は傾斜方向に沿って流れてきた後、やや屈曲された上端縁24a,25aと被覆フィルム止め材22,23の側壁部との間に一時的にたまることになる。一時的にたまった結露水は、板状部材24,25と被覆フィルム止め材22,23の底面とが密着されているわけではないため、僅かな隙間を通じて傾斜方向に沿って下方に伝わる。これに対し、被覆フィルム止め材22,23の下側では、両面テープ3によって谷用透明フィルム1の上端縁1a,1bが密着固定されているため、被覆フィルム止め材22,23の下側を伝わってきた結露水は、谷用透明フィルム1の内側には浸入せず、その外面に沿って流下し、梁部材12上に位置する谷用透明フィルム1の谷底部に集水されていくことになる。
【0013】
谷用透明フィルム1によって形成される谷樋構造の少なくとも一端部には、図4〜図6に示した集水部材8が連接される。集水部材8は、梁部材12の端部及び温室の長手方向端部に配設される骨組み材10,11に連結されて支持され、谷用透明フィルム1の谷底部を流れてくる雨水、上記した結露水等の水を受け止めると共に、底面を貫通するように設けた排水孔8aを通じて外部へ排出する。排水孔8aには図示しない排水パイプが接続される。ここで、本実施形態では、集水部材8の表面も、排水孔8aの周囲に至るまで谷用透明フィルム1により被覆している。これにより、集水部材8と梁部材12等との連結部分からの水漏れを防止している。
【0014】
本実施形態によれば、谷樋構造が、谷用透明フィルム1を主体として構成され、該谷用透明フィルム1を押さえるバネ部材2も所定間隔毎に配設されている。従って、従来の金属板と比較し、温室内に形成される影面積が小さくなり、日照条件を改善できる。また、谷用透明フィルム1を少なくとも一端部に設ける集水部材8の表面も覆って配設する構成であるため、集水部材8の連結部からの水漏れも防止できる。さらに、谷用透明フィルム1の上端縁1a,1bを被覆フィルム固定部材に対して上記のように固定することにより、被覆フィルム20,21の内面に生じる結露水も簡易な構成で排水することができる。
【0015】
図7〜図9は、本発明の他の実施形態を説明するための図である。本実施形態においては、被覆フィルム固定部材の構造が上記実施形態と異なり、被覆フィルム固定部材は、被覆フィルム止め材220,230、板状部材240,241、及び係合部材300,310を有して構成される。具体的には、図8に示したように、板状部材240,241は、谷傾斜部10a,11aの傾斜方向に沿った下端縁側に、谷傾斜部の傾斜方向に沿う平板部240a,241aと、該平板部240a,241aから離間する方向に屈曲された屈曲片240b,241bとの二股に分かれた構造を備えている。そして、平板部240a,241aと屈曲片240b,241bとにより、開口部を傾斜方向下側とする断面略V字状溝240c,241cが形成されている。なお、屈曲片240b,241bの先端縁240d,241dは、下方に向けて折り曲げられており、後述のように、結露水の排水を行いやすくなっている。また、板状部材240,241の上端縁240e,241eは、上記実施形態と同様に、骨組み材10,11から離間する方向にやや屈曲されて起こされている。
【0016】
上端縁240e,241eと屈曲片240b,241bとの間には、上記実施形態と同様の略山形の被覆フィルム止め材220,230が配設されるが、本実施形態では、被覆フィルム止め材220,230と板状部材240,241との間に、スペーサ板250を配設している。板状部材240,241は、上記実施形態と同様に、温室の長手方向に沿って所定の長さを有しているが、スペーサ板250は、適宜間隔毎に、具体的には、各骨組み材10,11の配設位置上に位置するように積層されている。被覆フィルム止め材220,230及び板状部材240,241は、上記実施形態と同様に、ねじ260により、骨組み材10,11に対してねじ止めされるが、スペーサ板250を介在させ、スペーサ板250も貫通させてねじ止めすることにより、温室の長手方向に隣接するスペーサ板250,250間において、水分が通過する隙間を確実に確保できる。
【0017】
なお、スペーサ板250は、板状部材240,241の幅方向のほとんど全て、すなわち、上端縁240e,241eから屈曲片240b,241bに至るまで積層できるだけの幅を備え、板状部材240,241の上端縁240e,241eから屈曲片240b,241bに至るまでの断面形状とほぼ同じ断面形状で形成されていることが好ましい(図8及び図9参照)。この結果、結露水は、板状部材240,241と同様に、スペーサ板250の表面を伝わることが可能である。また、板状部材240,241とスペーサ板250との間には、合成樹脂からなるシール部材251が装填されており、ねじ260と板状部材240との間の僅かな隙間を塞いでいる。なお、このスペーサ板250は、上記した図1〜図3に示した実施形態においても、同様に使用することもできる。
【0018】
係合部材300,310は、谷用透明フィルム1の上端縁1a,1bを板状部材240,241に固定するために用いられる。係合部材300,310は、断面方向の長さの短い係合片部301,311と断面方向の長さの長い操作片部302,312を有する断面略J字状に形成されており、温室の長手方向に沿った長さは、板状部材240,241とほぼ同様の長さとなっている。図7、図8及び図9(c)に示したように、係合部材300,310の係合片部301,311は、谷用透明フィルム1の上端縁1a,1bを介して、板状部材240,241の断面略V字状溝240c,241c内に挿入され、断面略V字状溝240c,241cの内面に谷用透明フィルム1の上端縁1a,1bを押し付けるようにして密着固定する。
【0019】
本実施形態では、天井付近を覆う被覆フィルム200,210は、上記実施形態と同様、その下端縁201,211が、被覆フィルム止め材220,230内に挿入され、その内部で固定用のバネ部材(図示せず)によって固定される。一方、谷用透明フィルム1は、まず、図9(a)に示したように、上端縁1a,1bを折り曲げ、その折り曲げ部に係合部材300,310の操作片部302,312の端縁を押し当てて、板状部材240,241の断面略V字状溝240c,241c内に押し込む。
【0020】
次に、係合部材300,310の操作片部302,312を断面略V字状溝240c,241cから引き抜き、今度は、図9(b)に示したように、操作片部302,312を立てた状態で、係合片部301,311を、その端縁が屈曲片240b(241b)の内面に当たるように挿入する。
【0021】
次に、図9(c)に示したように、操作片部302,312を平板部240a,241aに重なるように押し倒す。これにより、谷用透明フィルム1の上端縁1a,1bは、係合片部301,311により屈曲片240b,241bに押し付けられ、操作片部302,312により平板部240a,241aに押し付けられることになり、上記実施形態のようにねじ(図3の符号5の部材)を用いることなく固定できる。
【0022】
上記実施形態のようにねじ(図3の符号5の部材)を用いて固定した場合には、谷用透明フィルム1の上端縁1a,1bに穴が開く。両面テープ3が確実に貼り付いている間はよいが、経年変化により、両面テープ3が劣化してくると、穴の開いた上端縁1a,1bと両面テープ3との僅かな隙間を通じて、結露水が谷用透明フィルム1の内部に浸入するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、谷用透明フィルム1の固定に当たってねじを用いていないため、結露水が浸入するおそれをより低減することができる。
【0023】
本実施形態によれば、図9(c)に示したように、被覆フィルム200,210の内面に生じた結露水は、被覆フィルム200,210の内面に沿って流れ、被覆フィルム止め材220,230の側壁部225,235の上縁に当接する。ここで、結露水は、側壁部225,235の内面には浸入できないため、側壁部225,235の外面を伝って、板状部材240,241の上端縁240e,241eとの間に流れ、さらに、スペーサ板250が配設されている部位では、スペーサ板250と被覆フィルム止め材220,230の底面との僅かな隙間を通じて、並びに、スペーサ板250が配設されていない部位では、板状部材240,241と被覆フィルム止め材220,230の底面との隙間を通じて流れる。結露水は、被覆フィルム止め材220,230の底面下の隙間を通過すると、板状部材240,241の屈曲片240b,241bの上面(又は、スペーサ板250が積層されている部位では、該スペーサ板250のうち屈曲片240b,241bに重なっている部分の上面)を伝わり、さらに、屈曲片240b,241bの先端縁240d,241dを経由して、谷用透明フィルム1の上面を流れて排水される。
【0024】
なお、結露水が、板状部材240,241の屈曲片240b,241bの上面(又は、スペーサ板250が積層されている部位では、該スペーサ板250のうち屈曲片240b,241bに重なっている部分の上面)を伝わる際には、該上面を伝って谷用透明フィルム1側にスムースに流れ、できるだけ滞留しないようにするため、屈曲片240b,241bは、板状部材240を骨組み材10,11に取りつけた際に、水平未満の角度となるように形成しておくことが好ましい。
【0025】
また、本実施形態で用いた被覆フィルム固定部材は、一組の部材により、温室の天井面を形成する被覆フィルム200と谷用透明フィルム1とを固定するものであるが、固定対象となるフィルムは、これらのフィルムに限定されるものではないことはもちろんである。温室の最も外側に張られる外被フィルム、換気用に開閉可能に設けられた換気用フィルム、換気用フィルムと重なるようにその内側に配設される固定張りフィルムなど、温室のいずれかの箇所を被覆している隣接する2枚のフィルム(被覆フィルム)間に配置し、該2枚の被覆フィルムを共に固定する部材として用いることができる。すなわち、一方の被覆フィルムを被覆フィルム止め材220,230に固定し、他方の被覆フィルムの一端縁を、係合部材300,310を用いて上記した断面略V字状溝240c,241c内に押し付けて固定するようにして用いることができる。また、上記した実施形態では、連棟式温室に適用した場合を例にとり説明しているが、この被覆フィルム固定部材は、単棟の温室にも適用可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかる谷樋構造の要部を示す図である。
【図2】図2は、上記実施形態にかかる谷樋構造の概略断面図である。
【図3】図3は、上記実施形態で用いた被覆フィルム固定部材に谷用透明フィルムの上端縁を固定する方法を説明するための図である。
【図4】図4は、集水部材の平面図である。
【図5】図5は、集水部材の正面図である。
【図6】図6は、集水部材の側面図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施形態にかかる谷樋構造の要部を示す図である。
【図8】図8は、上記実施形態で用いた被覆フィルム固定部材の構造を説明するための図である。
【図9】図9は、上記実施形態で用いた被覆フィルム固定部材に谷用透明フィルムの上端縁を固定する方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0027】
1 谷用透明フィルム
1a,1b 上端縁
2 バネ部材
3 両面テープ
8 集水部材
10,11 骨組み材
10a,11a 谷傾斜部
12 梁部材
20,21 被覆フィルム
22,23 被覆フィルム止め材
24,25 板状部材
200,210 被覆フィルム
220,230 被覆フィルム止め材
240,241 板状部材
240a,241a 平板部
240b,241b 屈曲片
240c,241c 断面略V字状溝
250 スペーサ板
300,310 係合部材
301,311 係合片部
302,312 操作片部
A,B 温室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連棟式温室の谷部に設けられる温室用谷樋構造であって、
谷底部と、谷底部を挟んだ両側に位置し、谷部の谷傾斜部を構成する骨組み材とを被覆し、谷部の長手方向に沿って配設される谷用透明フィルムと、
前記谷傾斜部を構成する骨組み材に、前記谷用透明フィルムを押し付けるため、谷部の長手方向に沿って所定間隔毎に配設される略V字状のバネ部材と
を備えてなることを特徴とする温室用谷樋構造。
【請求項2】
前記骨組み材の各谷傾斜部の上端には、骨組み材の天井部を被覆している被覆フィルムの下端を支持する被覆フィルム固定部材が固定されており、前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が、それぞれ前記被覆フィルム固定部材に固定されていることを特徴とする請求項1記載の温室用谷樋構造。
【請求項3】
前記被覆フィルム固定部材は、所定の幅で谷部の長手方向に略平行に配設される板状部材と、前記板状部材に積層され、板状部材に対して、水分が通過可能な隙間を有して固定される被覆フィルム止め材とを備えてなり、前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が、前記板状部材のうち、被覆フィルム止め材の固定位置よりも谷傾斜部の傾斜方向に沿って下側に固定されていることを特徴とする請求項2記載の温室用谷樋構造。
【請求項4】
前記被覆フィルム止め材は、前記板状部材に対してねじ止めにより固定されていることを特徴とする請求項3記載の温室用谷樋構造。
【請求項5】
前記被覆フィルム止め材は、前記板状部材の長手方向に沿って適宜間隔毎に積層されるスペーサ板を介してねじ止めにより固定されていることを特徴とする請求項4記載の温室用谷樋構造。
【請求項6】
前記被覆フィルム固定部材の板状部材のうち、谷傾斜部の傾斜方向に沿った上端縁が、温室の骨組み材から離間する方向に屈曲されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1に記載の温室用谷樋構造。
【請求項7】
前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が、前記板状部材の表面に密着固定されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の温室用谷樋構造。
【請求項8】
前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が、前記板状部材の表面に両面テープを介して密着されていることを特徴とする請求項7記載の温室用谷樋構造。
【請求項9】
前記被覆フィルム固定部材の板状部材は、谷傾斜部の傾斜方向に沿った下端縁側が、該谷傾斜部の傾斜方向に沿う平板部と、該平板部から離間する方向に屈曲された屈曲片との二股に分かれ、該平板部と屈曲片とにより形成された、開口部を傾斜方向下側とする断面略V字状溝を備えており、該断面略V字状溝内に、前記谷用透明フィルムの各谷傾斜部に沿った上端縁が固定されることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1に記載の温室用谷樋構造。
【請求項10】
前記板状部材の断面略V字状溝内に係合可能な係合部材を備え、前記谷用透明フィルムの上端縁を断面略V字状溝内に挿入し、該係合部材により、断面略V字状溝の内面に該上端縁を押し付けて固定することを特徴とする請求項9記載の温室用谷樋構造。
【請求項11】
長手方向の少なくとも一端部に、排水孔を備えると共に、該排水孔に至るまで前記谷用透明フィルムにより表面が被覆された集水部材が連接されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1に記載の温室用谷樋構造。
【請求項12】
温室を形成するために、適宜位置に隣接する状態で配設される複数枚の被覆フィルムを固定するために設けられる被覆フィルム固定部材であって、
所定の長さと幅を備え、隣接する2枚の被覆フィルムの境界付近に配設される板状部材と、
前記板状部材に積層され、板状部材に対して、水分が通過可能な隙間を有して固定される被覆フィルム止め材とを備えてなり、
一方の被覆フィルムは、前記被覆フィルム止め材に固定され、他方の被覆フィルムは、その一端縁が、前記板状部材のうち、被覆フィルム止め材の固定位置よりも、該他方の被覆フィルムによる被覆面の傾斜方向に沿った下側に固定されることを特徴とする被覆フィルム固定部材。
【請求項13】
前記被覆フィルム固定部材の板状部材は、前記他方の被覆フィルムによる被覆面の傾斜方向に沿った下端縁側が、該被覆面の傾斜方向に沿う平板部と、該平板部から離間する方向に屈曲された屈曲片との二股に分かれ、該平板部と屈曲片とにより形成された、開口部を傾斜方向下側とする断面略V字状溝を備えており、該断面略V字状溝内に、前記他方の被覆フィルムの一端縁が固定されることを特徴とする請求項12記載の被覆フィルム固定部材。
【請求項14】
前記板状部材の断面略V字状溝内に係合可能な係合部材を備え、前記他方の被覆フィルムの一端縁を断面略V字状溝内に挿入し、該係合部材により、断面略V字状溝の内面に該一端縁を押し付けて固定することを特徴とする請求項13記載の被覆フィルム固定部材。
【請求項15】
前記被覆フィルム固定部材の板状部材のうち、前記他方の被覆フィルムによる被覆面の傾斜方向に沿った上端縁が、温室の骨組み材から離間する方向に屈曲されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1に記載の被覆フィルム固定部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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