説明

温度サイクルシステム

本発明は、PCR、特に、リアルタイムPCRを、速いスピードおよび高い特異性で実施するためのシステムを提供する。このシステムは、液体組成物を含有する加熱ブロックを活用して、反応槽へおよび反応槽から、熱を迅速に伝達する。このシステムは、液体金属の反射性を利用して、PCRからのシグナルを、槽内へも上部からも反射させる。このようにして、シグナルを、槽を加熱ブロックから取り外すことなく、光学的アセンブリによってリアルタイムで測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2006年5月17日に出願の米国仮特許出願第60/801178号、2006年7月22日出願の同第60/832492号、2006年12月6日出願の同第60/873084号、および2006年12月6日出願の同第60/873172号の利益を主張し、これらの出願は、参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
1983年にKary Mullisによって発明されたPCRは、20世紀における最も重要な科学的発展の1つとして認められている。PCRは、DNA等の遺伝物質を同定および複製する性能を大幅に拡大することを通して、分子生物学に大変革を起こした。現在では、PCRは、医学および生物学を研究する実験室において、遺伝性疾患の検出、遺伝子指紋鑑定、感染症の診断、遺伝子クローニング、親子鑑定およびDNAコンピューティング等の多様な作業のために日常的に実行されている。この方法は、熱に対して安定なDNAポリメラーゼおよび「温度サイクラー」と通常呼ばれている機械の使用によって自動化されている。
【0003】
従来の温度サイクラー(thermal cycler)は、いくつかの内因性の限界を有する。典型的には、従来の温度サイクラーは、反応試料の温度をサイクルさせる金属製の加熱ブロックを含有する。この装置は大きな熱質量を有し、試料槽(sample vessel)は低い熱伝導率を有することから、温度を要求されるレベルでサイクルさせるには効率が悪い。従来の温度サイクラーの立ち上げ時間は、一般に、十分には迅速でなく、その結果、必然的に、標的配列の望まれない非特異的な増幅が生じた。また、従来の温度サイクラーの準最適の性能は、当技術分野で広く認められている、温度の均一性を欠くことにもよる。さらに、従来のリアルタイム温度サイクラーのシステムは、嵩高くかつ高価な光学的検出成分を携えてもいる。Mitsuhashiらは、液体金属製のPCR温度サイクラーを開示している(米国特許第6,533,255号)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来とは異なる温度サイクラーを設計する必要性が多分に残されている。望ましい装置とは、(a)迅速かつ均一な熱伝達が、核酸のより特異的な増幅反応を生じさせること、および/または(b)増幅反応のリアルタイムの進行を、リアルタイムでモニターすることを可能にするものであろう。本発明は、これらの必要性を満たし、それに伴う利点もまた提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、PCRを実施する方法を提供し、これは、a)PCRを試料槽中で実施し、PCRの経過を指し示すシグナルを試料槽中で発生させるステップであって、実質的に全ての前記シグナルが、反射して前記試料槽中に戻り、実質的に全てのシグナルが前記試料槽の別の場所から検出されるステップと;b)試料槽の別の場所から放出されたシグナルを測定するステップとを含む。一実施形態では、この方法は、シグナルを、複数のPCRサイクルにわたりリアルタイムで測定するステップを含む。別の実施形態では、試料槽は、シグナルを透過する壁を含み、壁の少なくとも一部が、液体組成物に当たった実質的に全てのシグナルを反射する液体組成物中に浸漬されている。別の実施形態では、液体組成物は、金属または金属合金を含む。別の実施形態では、シグナルは、標識または色素によって発生する。別の実施形態では、前記試料槽は、前記試料中の実質的に全ての前記シグナルを反射する材料を含む。別の実施形態では、前記試料槽は、金属からなる。別の実施形態では、前記試料槽は、反射性材料を含む。別の実施形態では、前記試料槽は、前記液体組成物からレセプタクルによって分離されている。
【0006】
別の態様では、本発明は、PCRを実施する方法を提供し、これは、a)反応混合物中の標的ヌクレオチド配列のPCRを実施するステップであって、(i)プライマー伸長と二本鎖解離の間およびプライマーアニーリングとプライマー伸長の間の温度変化の速度が、1秒あたり10.5℃超であり、(ii)前記PCRが、0.5℃未満の試料槽内の温度の変動を含む試料槽を含む、加熱ブロック中で遂行される、条件下でPCRを実施するステップと;b)標的ヌクレオチド配列の増幅をリアルタイムでモニターするステップとを含む。一実施形態では、前記加熱ブロックは、液体組成物を含む。別の実施形態では、前記PCRを実施する方法は、前記加熱ブロック中の2つ以上のウエル間で測定した場合、0.5℃未満の温度の変動をさらに含む。別の実施形態では、前記の温度の変動は、前記加熱ブロック中の2つ以上のウエル間で測定した場合、0.01℃である。別の実施形態では、前記加熱ブロックは、交換型ブロック(swap block)である。別の実施形態では、温度変化の速度は、(1)反応混合物を含有する試料槽を、少なくとも0.1W/MKの熱伝達係数を有する液体組成物と熱的に接触させることによって生じ、液体組成物の温度が、反応混合物の温度を制御する。別の実施形態では、温度の均一性が、液体組成物の運動を引き起こすことによって維持される。
【0007】
別の態様では、本発明は、PCRを実施する方法を提供し、これは、試料温度を1秒あたり5℃超ずつ調節する温度サイクラー中でPCRを遂行するステップを含み;前記の温度サイクラーの温度が、液密に密閉されている加熱ブロック中の液体組成物によって調整され;前記液体組成物は、少なくとも0.1W/MKの熱伝達係数を含む。一実施形態では、前記温度サイクラーは、1秒あたり少なくとも約10℃の立ち上げ速度を提供する。別の実施形態では、前記温度サイクラーは、少なくとも約0.01から0.1℃の、ウエル間および試料の温度均一性を提供する。別の実施形態では、前記加熱ブロックは、前記加熱ブロック中の2つ以上のウエル間で測定した場合、0.01℃の温度の変動を有する。別の実施形態では、前記液体組成物は、加熱ブロック内に含有される。別の実施形態では、前記加熱ブロックは、交換型ブロックである。
【0008】
別の態様では、本発明は、PCRを実施する方法を提供し、これは、増幅を少なくとも3のシグナル指数でリアルタイムで検出することができるように、試料温度を十分に調節する温度サイクラー中で、PCRを遂行するステップを含み、前記検出は、非特異的な核酸標識を介し、前記温度サイクラーは、試料温度を1秒あたり10℃超調節する。
【0009】
別の態様では、本発明は、リアルタイムPCRを実施するための方法を提供し、これは:a)反応混合物中の標的ヌクレオチド配列のPCR反応を、反応混合物中での、プライマー伸長と二本鎖解離の間およびプライマーアニーリングとプライマー伸長の間の温度変化の速度が、1秒あたり少なくとも5℃である条件下で実施するステップであって、前記PCR反応が、少なくとも0.1W/mKの熱伝達係数を有する液体組成物と熱的に接触しているステップと;b)PCRを、リアルタイムでモニターするステップとを含む。一実施形態では、前記のモニターするステップは:a)PCRを試料槽中で実施し、PCRの経過を指し示すシグナルを試料槽中で発生させるステップであって、シグナルは、試料槽の実質的に別の場所から放出されるステップと;b)試料槽の別の場所から放出されたシグナルを測定するステップとを含む。別の実施形態では、反応混合物中の前記の温度上昇の速度は、1秒あたり少なくとも40℃である。別の実施形態では、前記温度変化は、ペルチェ素子(Peltier element)によって調整される。
【0010】
別の態様では、本発明は、リアルタイムPCRを実施するための方法を提供し、これは:a)PCR反応混合物の温度を、二本鎖の解離、プライマーアニーリングおよびプライマー伸長のための温度間で、複数のサイクルにわたりサイクルさせるステップであって、各サイクルは、5秒以下であり;前記温度は、温度サイクラー中に密閉されている液体組成物によって調節されるステップと;b)試料槽中のPCRの経過を、複数のサイクルにわたりリアルタイムでモニターするステップとを含む。一実施形態では、請求項28に記載の方法は、ステップ(a)の前に、1)PCR反応混合物を含有する試料槽の閉鎖端部を、60℃超で液体であり、かつ少なくとも0.1ワット/メートル−ケルビン度の熱伝達係数を有する液体組成物と熱的に接触させるステップであって、それによって、液体組成物の温度が、PCR反応混合物 30 の温度を制御するステップをさらに含む。別の実施形態では、前記液体組成物は、試料槽内部の実質的に全ての光を反射する。別の実施形態では、前記のモニターするステップは、試料槽の上部または下部から放出されたシグナルを測定することによって実施される。別の実施形態では、各サイクルは、3秒以下である。別の実施形態では、前記試料槽は、反射性表面を含む。別の実施形態では、前記試料槽は、キャップでさらに覆われる。別の実施形態では、前記キャップが前記液体組成物から熱を吸収すること、または前記キャップを前記液体組成物が冷却することができる。
【0011】
別の態様では、本発明は:リアルタイムPCRを遂行するための方法を提供し、これは、PCR試料槽と熱的に接触している液体組成物を含む温度サイクラーを提供するステップであって;前記液体組成物は、温度を調節し、したがって、試料槽中の反応温度を調整し、ここで、検出可能なシグナルが、前記試料槽から放出されるステップと;前記シグナルを、発光体および光学的検出器を含む光学的アセンブリを介して検出するステップと含む。一実施形態では、光学的アセンブリは、ピン型フォトダイオードCCD撮像装置、CMOS撮像装置、線スキャナ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオードを含む。別の実施形態では、前記試料槽は、キャップでさらに覆われる。別の実施形態では、前記キャップが前記液体組成物から熱を吸収すること、または前記キャップを前記液体組成物が冷却することができる。
【0012】
別の態様では、本発明は、a)60℃超で液体であり、かつ少なくとも0.1ワット/メートル−ケルビン度の熱伝導率を有する液体組成物を含有する容器を含む温度制御アセンブリであって、前記容器は、少なくとも1つの開口部を有し、各開口部が、試料槽の閉鎖端部を受けるように適合され、ここで、開口部内に受けられた試料槽は、液体組成物と熱的に接触しており、それによって、液体組成物の温度が、試料槽中の液体試料の温度を制御し、かつここで、液体組成物は、試料槽内部の実質的に全ての光を反射することができる温度制御アセンブリと;b)試料槽内部の前記光を、前記試料槽上の別の場所から検出することができる光学的アセンブリと;c)液体組成物の温度および光学的アセンブリの動作を制御する制御アセンブリとを含む装置を提供する。一実施形態では、液体組成物は、ガリウム、ガリウム−インジウム合金、またはガリウム、インジウム、ロジウム、銀、亜鉛、スズもしくは第一スズを含む合金を含む。別の実施形態では、前記温度制御器は、ペルチェ素子を含む。別の実施形態では、前記温度制御器は、液体組成物と熱的に接触している抵抗線を含む。別の実施形態では、前記温度制御器は、PCRに適した、二本鎖の解離、プライマーアニーリングおよびプライマー伸長のための温度間で、液体組成物の温度をサイクルさせるための手段を含む。別の実施形態では、前記温度サイクラーは、液体組成物中に流れを循環させるための手段をさらに含む。別の実施形態では、前記光学的アセンブリは、発光体および光学的検出器を含む。別の実施形態では、前記装置は、試薬を試料槽に添加するための手段を含む試料調製ステーションをさらに含む。別の実施形態では、前記装置は、試料槽を開口部内に動かすための手段をさらに含む。別の実施形態では、前記装置は、温度サイクラー、光学的アセンブリおよび試料調製ステーションを制御するデジタルコンピュータをさらに含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、リアルタイムPCRを実施するためのシステムを提供し、これは、a)液体組成物、および試料槽を係合して(engage)前記槽を組成物と熱的に接触させるための手段を含む温度サイクラーと;b)発光体、および光を係合試料槽内に導き、係合試料槽から放出された光を検出する光学的検出器を含む光学的アセンブリとを含む。一実施形態では、前記液体組成物は、金属または金属合金を含む。別の実施形態では、前記液体組成物は、ガリウムを含む。別の実施形態では、放出された前記シグナルは、前記試料槽の取り外し可能なキャップからである。別の実施形態では、前記液体組成物は、前記試料槽からレセプタクルによって分離されている。別の実施形態では、前記レセプタクルは、透明または半透明である。別の実施形態では、前記システムは、ペルチェ素子を含む。別の実施形態では、前記温度サイクラーは、ファンおよび撹拌棒に動作可能に接続しているモーターをさらに含む。別の実施形態では、前記のファンおよび撹拌棒は、前記モーターに同軸上で接続している。別の実施形態では、前記温度サイクラーは、前記液体組成物の温度調整のための抵抗線をさらに含む。別の実施形態では、前記液体組成物は、閉鎖バリア中に密閉され、前記バリアは、その中に前記試料槽が置かれるレセプタクルを有する表面を含む。別の実施形態では、前記液体組成物は、前記試料槽と直接接触する。別の実施形態では、前記光学的アセンブリは、PIN型フォトダイオード、CCD撮像装置(imager)、CMOS撮像装置、線スキャナ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオードを含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、a)加熱シンクと;b)加熱シンクと熱的に接触している加熱成分と;c)上部表面および下部表面を有する壁を含むバリアであって、下部表面は前記加熱成分に対して密閉され、密閉されたバリアと前記加熱成分が液体組成物を含有する容器を形成するバリアと;d)バリアの上部表面に対して密閉され、複数のウエルを含む第1ピースであって、ウエルは容器内に延ぶ第1ピースと;e)それぞれが開口端部を有する複数の試料槽を含む第2ピースであって、試料槽はウエル内に取り外し可能に挿入される第2ピースと;f)複数の突出部を含む第3ピースであって、突出部は試料槽の開口端部内に取り外し可能に挿入される第3ピースとを含む装置を提供する。一実施形態では、前記液体組成物は、60℃超で液体であり、かつ少なくとも0.1M/W/Kの熱伝達係数を有する金属を含む。別の実施形態では、前記液体金属は、体積を約0.1から6.0%増加させることができる。別の実施形態では、前記の可能な温度上昇は、10.5℃/秒超である。別の実施形態では、e)中の前記ウエルが、柔軟性を有するように適合し、その結果、前記ウエルは、f)中の前記試料槽と熱的または光学的な接触を形成することができる。別の実施形態では、前記適合化は、前記ウエルにおける幾何学的な形状および/または変形可能な材料を利用することを含む。別の実施形態では、前記の幾何学的な形状は、多角形、楕円形または円形である。別の実施形態では、前記ウエルは、前記液体組成物中に、初期レベルまで浸漬される。別の実施形態では、前記突出部は、前記初期レベルの上まで、前記初期レベルまで、または前記初期レベルの下まで延びる。別の実施形態では、前記第3ピースが前記液体組成物から熱を吸収すること、または前記第3ピースを前記液体組成物が冷却することができる。別の実施形態では、第1ピースの前記ウエルは透明かつ柔軟であり、第2ピースの試料槽は透明であり、それによって、前記ウエル上の増加した圧力が、前記容器中の前記液体を、前記試料槽中の試料と熱的および光学的に接触させる。別の実施形態では、第3ピースの前記突出部は、透明である。別の実施形態では、前記バリアは、熱分散器および第1ピースのそれぞれに対して、ガスケットによって密閉される。別の実施形態では、前記の第1ピースまたは第2ピースは、反射性表面を含む。別の実施形態では、バリアは、熱分散器および第1ピースのそれぞれに対して、留め具で密閉される。別の実施形態では、前記装置は、前記加熱成分と接触している熱分散器をさらに含む。別の実施形態では、前記加熱成分は、ペルチェ素子、ワイヤー素子、またはその組合せである。別の実施形態では、前記装置は、第2加熱成分をさらに含み、前記バリアは、前記加熱成分と前記第2加熱成分との間に配置される。別の実施形態では、前記の複数のウエルは、4、8、16、32、48、96、196、384または1536個のウエルを含む。別の実施形態では、前記装置は、ファンと撹拌棒とをさらに含み、前記のファンおよび撹拌棒は、場合により、単一のモーターに動作可能に接続している。別の実施形態では、前記装置は、電池によって電力供給される。別の実施形態では、前記ファンは、前記装置に動作可能に接続している制御器成分によって、自動的にスイッチが入ったり、切れたりする。別の実施形態では、前記装置は、金属製熱分散器をさらに含む。別の実施形態では、前記分散器は、銅を含む。別の実施形態では、前記加熱成分は、勾配PCRのために構成される。
【0015】
別の態様では、本発明は、連続フロー(continuous flow)PCRシステムを提供し、これは、試料調製モジュールと;前記試料中の温度を調節するための液体組成物を含む温度サイクラーと;前記試料からの放出シグナルを検出するための光学的アセンブリとを含む。一実施形態では、前記システムは、試料採取器と廃棄物回収部とをさらに含む。
【0016】
参照による組み込み
本明細書で言及する全ての刊行物および特許出願は、参照により、個々の刊行物または特許出願のそれぞれが、特異的かつ個別に参照により組み込まれていると示されるかのように、本明細書に組み込まれる。
【0017】
本発明の新規な特色を、付随の特許請求の範囲に詳細に記載する。本発明の特色および利点は、本発明の原理を利用する、説明のための実施形態を記載する以下の詳細な説明、および付随の図を参照することによって、理解がさらに深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】液体組成物の交換型加熱ブロックと共に使用するための温度サイクラーの本体を示す図である。(A)48個のウエルの「交換型ブロック」装置を、滑りレール上に図示する。ブロックが、滑り出て、試料槽ウエルプレートおよび試料ウエルプレートのキャップが搭載され、次いで、温度サイクラー内に滑って入ると、ドアが閉じる。温度サイクラーの本体は、光学的アセンブリ、制御電子機器、ファンおよび場合により電源を含むことができる。
【図1B】(B)「交換型ブロック」を有する温度サイクラー本体が、動作位置に滑って入る。
【図2】48個の試料槽ウエルを含む交換型ブロックの実施形態を示す図である。この実施形態では、交換型ブロックは、上から下に:48個の透明なキャップとして役立つ単一ピース;48個の試料槽ウエルを生み出す単一ピース;液体金属の容器の天井を形成する、48個の反応ウエルを有する単一レセプタクルピース;液体金属の容器の、ハウジングを形成するプラスチック製の壁;液体金属の容器の下部の床を形成する金属製のプレート;加熱および冷却のためのペルチェ素子(Peltier device);ならびにペルチェ素子から熱を取り除くための金属製の加熱シンクを含む。
【図3】交換型ブロックの実施形態を示す分解組立図である。この実施形態では、交換型ブロックは、上から下に、48個の透明な蓋として役立つ単一ピース。48個の透明なキャップとして役立つ単一ピース;48個の試料槽ウエルを生み出す単一ピース;48個の反応ウエルを有する単一のレセプタクルピース;液体金属を含有するために液密に密閉を形成するゴム製またはプラスチック製のガスケットまたはリング;液体金属の容器の、ハウジングを形成するプラスチック製の壁;液体金属を含有するために液密に密閉を形成するゴム製またはプラスチック製のガスケットまたはリング;ならびに場合によっては、液体金属のチャンバーの下部の床を形成する金属製のプレート;加熱および冷却のためのペルチェ素子;ならびにペルチェ素子から熱を取り除くための金属製の加熱シンクを含む。
【図4】交換型ブロックの実施形態を示す第2の図である。この実施形態では、交換型ブロックは、上から下に、48個の透明なキャップとして役立つ単一ピース;48個の試料槽ウエルを生み出す単一ピース;48個の反応ウエルを有する単一のレセプタクルピース;液体金属を含有するために液密に密閉を形成するゴム製またはプラスチック製のガスケットまたはリング;液体金属の容器の、ハウジングを形成するプラスチック製の壁;液体金属を含有するために液密に密閉を形成するゴム製またはプラスチック製のガスケットまたはリング;液体金属のチャンバーの下部の床を形成する金属製のプレート;加熱および冷却のためのペルチェ素子;ならびにペルチェ素子から熱を取り除くための金属製の加熱シンクを含む。
【図5A】液体金属を含む加熱ブロックを含む温度サイクル成分のサンドイッチ型の実施形態を示す図である。(A)液体金属のチャンバーが、2つのペルチェ素子(2つの大きな壁)と、正方形のプラスチック製のリングとして構築された褐色のプラスチック製ピース(4つの狭い壁)との間に形成されていることを示す図である。液体金属のチャンバーは、試料用毛細管のための穴部を含む。さらに、各ペルチェ素子は、加熱シンクに熱的に連結しており、この加熱シンクは、次いで、ファンに接続している。
【図5B】(B)ペルチェ素子間に差し挟まれている加熱ブロックの中心部分を詳細に示す図である。
【図5C】(C)液体金属のチャンバーは、試料用毛細管のための穴部を含む。毛細管は、穴部に滑って入り、温度サイクルのための液体金属組成物中に直接浸漬される。ペルチェ素子は、液体金属のリザーバの両側上に位置し、迅速な加熱および冷却を可能にする。
【図6】液体金属組成物を含む加熱ブロック中でサイクルされる試料槽からのシグナルを検出するための実施形態を示す図である。LEDを使用して、試料槽内に含有される試料を励起し、何らかの発生したシグナルを、PIN型フォトダイオードによって検出する。
【図7】HBVウイルスに特異的なプライマーおよび患者の血液試料を使用したPCR増幅を示す図である。PCRは、Roche Lightcycler上で実行された。融解曲線の陽性のピーク(緑色)は、HBV+試験を指し示しているが、陰性対照のピーク(褐色)もまた明確である。
【図8】図7で使用したものと同一のプライマーおよび試料を使用したPCR増幅を示す図である。液体金属製の加熱ブロックを含む温度サイクラーを使用して、PCRを行った。陽性のピーク(緑色)は、HBV+試験を指し示しているが、陰性対照のピーク(褐色、桃色)は、図7中に比べはるかに明確さを欠いている。これは、より正確なHBV+試験結果を指し示す。
【図9】Roche Lightcyclerからの結果と比較した、液体金属製の加熱ブロックを含む温度サイクラー中で実施したPCRからの結果を示す図である。融解曲線を、2つの試料を用いて同時に求めた:1つは、Roche Lightcycler中でPCRを実施し(緑色)、1つは、我々の発明中でPCRを実施した(褐色)。RocheのPCRは、余分なピークを、プライマー−ダイマーの形成を指し示す温度において生じさせ、これは、Rocheの機械中で実施したPCRは、液体金属製の加熱ブロックを含む温度サイクラー中で実施したPCRよりも正確さを欠くことを指し示す。
【図10】液体組成物を加熱するために抵抗加熱線(resistive heating wire)を使用する液体組成物加熱ブロックの実施形態を示す図である。平面図は、均一な加熱を提供するために配列したワイヤーを示し、ワイヤーは、液体組成物のチャンバーの縁部付近では、より高い密度で、中心付近では、より低い密度で置かれている。この配置が、従来の温度サイクラーの設計においては熱の損失によって生じる、任意かの可能性ある周辺効果を埋め合わせる。側面図に示すように、ワイヤーを、下部の上に置くかわりに、液体組成物中に浮遊させて、液体金属がワイヤーの全側面上で接触するようにする。これによって、熱伝達の均一性の最大化が可能になる。
【図11】連続PCR装置のための液体組成物加熱ブロックの使用を示す図である。複数の試料が、前記装置を通って、連続して移動して、病原体または生物学的混入物質等の、1つまたは複数の特異的な生物学的検体を検出する。
【図12A】従来のガラス製毛細管と比較した、ステンレス鋼製の試料槽の内部でPCR増幅を実施した試料からの融解曲線を示す図である。融解曲線は、両方の反応について、ほぼ同一であり、これは、良好な増幅を指し示す。(A)金属製の試料槽を使用する従来の温度サイクラー中で実施したPCR反応からの結果。PCRを、40サイクル行い、次いで、SYBR greenを使用して、PCRアンプリコンの産生を検出した。
【図12B】(B)市販の試料槽を使用する従来の温度サイクラー中で実施したPCR反応からの結果。PCRを、40サイクル行い、次いで、SYBR greenを使用して、PCRアンプリコンの産生を検出した。
【図13】金属製の試料槽のための製造方法を示す図である。この方法は、引き伸ばした金属原料を1回の動きで切断しかつ圧着することによって、試料槽を迅速かつ安価に作製することができる。溝を使用して、試料槽の壁が外側に反るのを阻止する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、反応混合物を含有する試料槽の温度をサイクルさせるための温度サイクラーと、試料槽からのシグナルを検出するための光学的アセンブリと、温度サイクラーおよび光学的アセンブリの動作を制御するための制御手段とを含む装置を提供する。特定の実施形態では、温度サイクラーは、高い熱伝導率を有する(液体金属または熱伝導性の流体等の)液体組成物を含む加熱ブロックを活用して、試料槽中の温度を迅速にサイクルさせる。液体金属の使用は、2つの主な利点を提供する。第1点は、金属は、高い熱伝導率を有するので、迅速な熱の伝達を提供する。第2点は、液体は、熱伝導性材料と試料槽との間のより堅固な接触を提供して、より均一な熱の伝達を提供する。その結果、試料槽内の温度は、著しく均一である。迅速な立ち上げ速度と温度の均一性との組合せによって、非特異的なハイブリダイゼーションが減少し、個々の試料槽内において、ならびに同一の加熱ブロック中に位置する複数の試料槽にわたって、PCRの増幅の特異性(例えば、シグナル対ノイズの比)が顕著に増加する。別の実施形態では、試料槽は、単独でまたは温度サイクラーと組み合さって、試料槽で発生したシグナルのうちの実質的に全てを、試料槽の別の部分、例えば、槽の上部を通して外部に放出し、それによって、放出された光は、光学的アセンブリによって収集することができる。さらに別の実施形態では、光検出器が、試料槽から放出された光のうちの実質的に全てを検出する。特定の実施形態では、液体金属または試料槽は、反射性が高く、透明な試料槽の壁を通して送信された光を反射して試料槽中に戻す。このようにして、試料槽内部で発生した光シグナルのうちのより大きな割合が、試料槽の別の部分から放出され、それによって、その光シグナルを、光学的アセンブリによって収集することができる。より多くの光を反応から収集する能力は、より安価な光学機器を装置中で活用し、それによりコストを低減することができることを意味する。さらに、光を槽の別の場所から収集することによって、リアルタイムPCRを実施する場合に、槽を加熱ブロックから取り外す必要性が排除される。したがって、この加熱ブロックの構成によって、迅速な立ち上げ時間および均一な温度が可能になり、槽を加熱ブロックから取り外すことなく、反射された光を、槽の上部から光学的アセンブリによって収集することによって、リアルタイムPCRがより急速に進行することが可能になる。したがって、本発明の装置は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、逆転写PCRおよびリアルタイムPCRを実施するのに特に適合している。液体金属製の加熱ブロックを含む温度サイクラーは、PCRを、現在市場で入手可能な装置より、迅速かつ安価に実施するであろう。一実施形態では、液体組成物を含む加熱ブロックを含む温度サイクラーは、電池によって電力供給される。別の実施形態では、液体組成物を含む加熱ブロックを含む温度サイクラーは、AC電流またはDC電流によって電力供給される。
【0020】
PCRのための加熱ブロックに加えて、本発明の液体金属製の加熱ブロックは、バイオテクノロジーおよび化学の分野において広範に使用することができる。例として、これらに限定されないが、制限酵素等の酵素反応のインキュベーション、生化学アッセイおよびポリメラーゼ反応;細胞培養および形質転換;ハイブリダイゼーション;ならびに緻密な温度制御が要求される、任意の処理が挙げられる。本開示に基づいて、当業者であれば、この液体金属技術を、正確な温度制御が要求される、生物学的/化学的な試料の種々の分析に容易に適合させることができる。
【0021】
温度サイクラー
液体金属または熱伝導性の流体等の液体組成物を、加熱ブロックのための加熱および冷却の媒体として使用すると、固体金属製の加熱ブロックより、均一な熱の伝達ならびに加熱および冷却の迅速なサイクルを得る。液体金属製の加熱ブロックを温度サイクラーとして使用する実施形態では、迅速な加熱の立ち上げおよび優れた温度均一性によって、従来の温度サイクラーを使用する場合より、DNAポリメラーゼによるエラー率が低い(図7〜9)。これは、PCR試料が準最適の温度で過ごす時間が短縮したことによる。さらに、増強された温度均一性によって、長い増幅、SNPの同定および配列決定反応の間のエラー率も低下する。
【0022】
一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体が、加熱ブロックのための加熱および冷却の媒体として使用され、加熱ブロックは、液体金属または熱伝導性の流体を含有するために、少なくとも基部と壁とを含む。液体金属または熱伝導性の流体は、従来の加熱ブロックより、均一な温度を加熱ブロックの全体にわたって提供する。これは、液体金属内または熱伝導性の流体内のより迅速な熱伝達、および熱を分配するために対流または撹拌を使用することが可能であることによる。
【0023】
別の実施形態では、加熱ブロックは、試料槽と直接接触している液体金属または熱伝導性の流体を含む。この実施形態では、試料槽との完全な接触を達成することができ、その結果、試料槽の型、大きさおよび形状にかかわらず、均一な熱の伝達を得る。あらかじめ形成されたウエルは必要でない。さらに、液体金属または熱伝導性の流体は、加熱ブロック中で、対流によって、またはこれらに限定されないが、撹拌棒、ポンプ、振動装置もしくは磁気流体学的な(MHD)力などの外力によって、容易に循環させることができることから、加熱ブロック内の温度の均一性を達成することができる。
【0024】
さらに別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体は、加熱ブロック内に完全に含有され、試料槽とは接触しない。この実施形態では、容器は、所望の形状および大きさの試料槽を受容するように設計されたレセプタクルを有する。これらのレセプタクルは、ウエル中に置かれた試料槽に密接にはまるように設計される。一実施形態では、これらのレセプタクルは、それらの中に送信された光が、液体金属から反射して試料槽中に戻ることを可能にする、実質的に透明な材料から作製される。代替の実施形態では、レセプタクルは、入射する光またはレセプタクルのウエル中の試料槽中で生み出された光のうちの実質的に全てを反射して前記試料槽中に戻す、反射性材料から作製される。別の実施形態では、レセプタクルは、透明でも、実質的に反射性でもない不透明な材料から作製する場合がある。
【0025】
一実施形態では、レセプタクルは、柔軟な材料から製造され、その結果、レセプタクルのウエルは、試料槽に密接にはまるように順応する。加熱ブロックの温度が上昇し、液体金属または熱伝導性の流体の体積が膨張するにつれて、レセプタクルの壁と試料槽との間の接触の密接さは増加する。レセプタクルは、不透明、透明、準透明(semi-transparent)または半透明(translucent)な材料から製造してよい。
【0026】
開放型または閉鎖型のいずれかの実施形態では、加熱ブロックは、液体金属または熱伝導性の流体のリザーバを場合により包含してよく、このリザーバは、加熱ブロックの一部、例として、加熱ブロックの下部もしくは側壁におけるくぼみもしくは隆起であっても、または加熱ブロックにコネクタ、例えば、管(tube)によって接続している分離したリザーバとして存在してもよい。リザーバは、加熱ブロックにポンプによって場合により接続することができる。その設計に応じて、リザーバは、何らかの液体金属または熱伝導性の流体が加熱ブロックの容量限界を超えて膨張する場合、それを捕獲するための排水口として、密閉もしくは閉鎖された加熱ブロック中の内圧を維持もしくは変化させるために、または使用の間に失われる液体金属のためのリザーバとして役立つことができる。
【0027】
一実施形態では、リザーバは、液体金属または熱伝導性の流体を、加熱ブロックの動作の間に補給するために使用される。追加の液体金属または熱伝導性の流体を含有するリザーバを、損失が生じる毎に、それを補給するように提供することができる。補給システムは、液体金属を、所望のレベルで維持してもよいし、または閉鎖型の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体を、所望の圧力に保ってもよい。一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体のレベルを電気的にモニターして、そのレベルが低い場合に、操作者に警告する検出システムが提供される。この補給システムは、液体金属または熱伝導性の流体を置き換えるためのプランジャーまたはポンプ、プランジャーまたはポンプを操作するための制御器およびセンサーを取り付けた、側面または下面の第2のリザーバ等、任意の好都合な形態をとってよい。例えば、センサーは、規定の高さに位置付けられたワイヤーを含んでよく、このワイヤーは、液体金属が所望の高さで存在する場合には、液体金属との回路を完了する。別の実施形態では、センサーは、光学的ビームを含んでよく、それによって、光学的ビームが、液体金属を含有する空洞の上部を水平に照らし、液体のレベルが低過ぎる場合に、センサーを光らせる。別の実施形態では、センサーは、2つの光学的ビームを、上下に含み、下のビームが、低いレベルを、上のビームが、高いレベルを指し示す。シグナルは、操作者または制御装置に中継することができ、この制御装置は、液体金属または熱伝導性の流体のレベルを指し示すであろう。シグナルは、操作者に対して、(液体金属または熱伝導性の流体のレベルを上げるかまたは下げることによる)修正措置をとるべきか否かを指し示すことができる。別の実施形態では、制御システムは、所望のレベルに達するように液体金属または熱伝導性の流体のレベルを自動的に調整する。さらに別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、使用者がアクセス可能なチャンバーを含み、このチャンバーに、必要に応じて、使用者が液体金属または熱伝導性の流体を補給することができる。一実施形態では、使用者がアクセス可能なチャンバーは、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックのチャンバーに下部で接続しており、上部から充填することができる。
【0028】
交換型ブロック
一実施形態では、温度サイクラー本体(101;105)は、ファン(103;153)および取り外し可能な加熱ブロックアセンブリまたは交換型ブロック(105;155)を含む(図1)。交換型ブロック(105;155)は、滑りレール(113;163)上で交換型加熱ブロックを場合により滑らせることによって、温度サイクラー本体(103;153)内に挿入またはそこから取り外される。交換型ブロック(105;155)が、温度サイクラー本体(103;153)内に挿入されたら、温度サイクラー(115;165)のドアを閉じることができる。交換型加熱ブロック(105;155)は、液体組成物容器(111;161)および加熱シンク(107;157)を含み、キャップで覆われた試料(109;159)を場合により含む。一実施形態では、交換型加熱ブロック(図2)は、ウエルを有するレセプタクルを含み、このレセプタクルは、液体組成物を密閉し、その結果、試料槽は、液体(金属、金属合金または金属スラリー)とは接触しない。別の実施形態では、交換型ブロック(105;155)は、ウエル(307;407)を有するレセプタクルのバリアを含み、このレセプタクルのバリアは、液体組成物容器のハウジング(311;411)に対して密閉され、この密閉は、液密であり、ガスケット(309;409)を場合により含んでよい(図3および4)。さらに、液体組成物容器のハウジング(311;411)は、基板(313;413)に対して密閉され、この基板は、金属製プレート(銅またはアルミニウム等)であってよく、この密閉は、液密であり、ガスケット(312;412)を場合により含んでよい。基板(313;413)は、次いで、ペルチェ素子(315;415)に熱的に連結しており、液体組成物を加熱および冷却し、次いで、加熱シンク(417)に連結している。熱分散器(銅、アルミニウム、または高い熱伝導率を有するその他の金属もしくは金属合金)が、基板(313;413)とペルチェ素子(315;415)との間に場合により差し挟まれる。いくつかの実施形態では、交換型ブロック(105;155)は、ねじ(301;401)等の留め具によって一緒に保持される。一実施形態では、交換型ブロックは、第1ピース、例として、48個のウエル(307;407)を有するレセプタクルを含み、この第1ピースは、第2ピース、例として、これらに限定されないが、試料プレート(305;405)単一の試料槽または一連の試料槽などの、試料槽によって占有され、この第2ピース内に、第3ピース、例として、透明なキャッププレート(303;403)、すなわち、単一のキャップまたは一連のキャップが挿入される。一実施形態では、透明なキャッププレート(303;403)、すなわち、単一のキャップまたは一連のキャップは、光ガイド等の突出部を場合により含む。
【0029】
別の実施形態では、試料槽は、液体内に直接置かれる。さらに別の実施形態では、液体から取り出されつつある試料槽をきれいに拭くためのスキージとして機能するリングであって、液体金属を閉じ込めるために、場合により閉じるリング(例えば、Oリング)を、レセプタクルが提供する。別の実施形態では、レセプタクルは、その中に試料槽が置かれるスリーブ(例えば、成型しやすいプラスチック製の膜でできているスリーブ)を提供する。すなわち、このスリーブは、試料槽と液体金属または熱伝導性の流体との間のバリアとして機能する。
【0030】
(液体金属または熱伝導性の流体等の)液体組成物の加熱ブロックは、均一な温度をブロックの全体にわたって維持する。一実施形態では、これは、対流による流れ等の受動的な力または液体金属中もしくは熱伝導性の流体中の受動的な伝導を通して達成される。代替の実施形態では、温度の均一性は、液体金属または熱伝導性の流体を、撹拌棒等の方法またはポンプもしくはMHD力を使用する循環システムを使用して能動的に混合することによって増強される。
【0031】
一実施形態では、ポンプが、加熱ブロック中の液体金属または熱伝導性の流体を循環させるために使用される。(これらに限定されないが、ロータリー式ポンプ、往復式ポンプ、ルーツ型ポンプ、注射器ポンプ、Wendelkolbenポンプもしくはらせん状にねじれたルーツ型ポンプを含む)移送式ポンプ、遠心力ポンプ、MHDポンプまたはキネティックポンプ等、液体金属または熱伝導性の流体を置き換えることができる任意のポンプの設計が適切である。この実施形態では、ポンプは、温度差および/または液体金属もしくは熱伝導性の流体に伴う腐食の問題に耐えることができる材料から製造されるであろう。
【0032】
別の実施形態では、ポンプは、液体を循環させるため、および/または液体金属もしくは熱伝導性の流体(例えば、リザーバのチャンバー中の増加した圧力)を、温度サイクラーの構成に応じて(例えば、開放型対閉鎖型)、レセプタクルの壁または試料の壁に押し付けるために利用される。例えば、閉鎖型システムにおいては、圧力が増加すると、液体が、レセプタクルの壁に圧力をかけ、したがって、そのような壁が試料槽に密接に押し付けられるようになって、接点(junction)を形成する。そのような接点は、熱伝導率および/または光学的な伝送を増強する。開放型システムが使用される(例えば、試料槽が、液体組成物と直接接触している)実施形態では、ポンプが、液体金属または熱伝導性の流体のレベルを上昇させ、それによって、液体金属または熱伝導性の流体は、レセプタクルの壁のより大きな表面積に接触する。
【0033】
試料が、液体(金属、金属合金または金属スラリー)内に直接置かれる、本発明の別の態様では、そのような試料槽は、当然、置換された液体に等しい浮力の支配を受けるであろう。種々の実施形態では、クリップ、蓋、留め具、おもり、ばね製の締め具、ねじ板またはそのような手段が利用されて、試料槽が適所にしっかり保たれる。
【0034】
代替の実施形態では、MHD力が、液体金属を循環させるために使用される。液体金属が、1つの方向を形成する磁場および磁場方向に直行する方向を形成する電場にさらされる。こうすると、液体金属は、磁場方向および電場方向の両方に直行する方向に流れる。磁場および電場の両方を使用することによって、液体金属を、指定された方向に、ポンプによる制御等の物理的な制御なしに流すことが可能になる。これらの場の特徴を使用して、均一な温度を維持するため、または液体金属を加熱ブロック、例えば、リザーバ内に導入するかまたはそこから排出するために、加熱ブロック中に流れを導入することができる。関連の実施形態では、電場は、DC電流またはAC電流によって形成され、周波数を調節すると、液体金属の流れが、周波数の変化に対応して振動し、それによって、加熱ブロックの全体にわたって非常に均一な温度を達成する。
【0035】
別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体は、撹拌棒によって循環することができる。撹拌棒は、それを活動させるモーターに連結されていても、または磁気的に応答性として、磁場の変化に応答して活動させてもよい。一実施形態では、撹拌棒は、迅速な温度変化に対して抵抗性となっているか、迅速な温度変化に対して抵抗性である被覆でコートされている。一実施形態では、撹拌棒は、単純な水平の棒である。代替の実施形態では、撹拌棒は、ファンの形状をとっても、または液体金属もしくは熱伝導性の流体を撹拌するのに役立つ、複数(3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個)の突起を有してもよい。一実施形態では、温度サイクラー(101)は、ファン(103)および撹拌棒に動作可能に連結しているモーターを含む。別の実施形態では、ファンおよび撹拌棒は、同一のモーターに同軸上で接続し、場合により同時に回転する。
【0036】
さらに別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体は、振動装置によって循環させることができる。振動装置は、温度サイクラーもしくは加熱ブロック構造と一体化していても、または加熱ブロックもしくは温度サイクラーと接触している、二次的な装置であってもよい。振動装置は、振動波を、液体金属または熱伝導性の流体を通して伝達して、液体金属または熱伝導性の流体が対流するのを支援し、金属が均一な温度に達するのに要する時間を短縮するであろう。一実施形態では、ピエゾミキサー、超音速の振動装置、音速以下の振動装置またはその他の音速の装置等の音響学的装置が、液体金属または熱伝導性の流体を振動させるために使用される。振動装置は、スピーカーコイルもしくは圧力、または機械的なモーターを含んでよい。また、振動装置は、試料槽中の試料およびPCR試薬を振とうすることもでき、したがって、内容物を混合して、反応がより効率よく生じるのを可能にする。
【0037】
液体金属または熱伝導性の流体は、温度サイクラーの動作の間は流動性を有し、動作温度より高い沸点を有する。さらに、液体金属または熱伝導性の流体は、動作条件下では、毒性がないことが好ましい。液体金属は、熱伝導率および電気伝導率が高く、したがって、加熱および冷却のパターン/サイクルに対して良好に応答することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)においては、加熱速度および冷却速度が迅速であることが好ましく、これは、液体金属または熱伝導性の流体が満たすことができる。
【0038】
サンドイッチ型加熱ブロック
本発明の別の態様では、温度サイクラーは、サンドイッチ型の液体組成物の加熱ブロックを含む(図5)。ある実施形態では、サンドイッチ型加熱ブロックは、加熱および冷却のペルチェ素子(503;553;573)に熱的に連結している液体組成物容器(501;551;571)を含み、次いで、この素子は、加熱シンク(505;555;575)に熱的に連結しており、側面にあるファン(507;557)に場合により連結している。この実施形態では、液体組成物容器(501;551;571)は、毛細管(581)等、試料槽(559;579)のための開口を含む。一実施形態では、試料槽は、液体組成物と間接的に接触している。代替の実施形態では、試料は、液体組成物から、熱伝導性の変形可能な管によって物理的に分離されている。一実施形態では、加熱シンクは、加熱シンクの放射表面を増加させるための管またはファンを含む。別の実施形態では、試料槽(559;579)のための開口は、ゴム製またはプラスチック製のOリングを含み、このOリングは、液体組成物内に開口を通して置かれた試料槽の周囲に密閉を形成するために、および試料槽を加熱ブロックから引き出す際に試料槽に付着する場合がある液体組成物を拭き取るために、作用する。サンドイッチ型加熱ブロックの実施形態は、少なくとも1個の試料槽、例として、2、3、4、5、6、7、8、10、12、16、20、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、192または384個の試料槽のための開口を含むことができる。
【0039】
別の実施形態では、穴部が、試料槽の上部および下部が見えるように両側に提供される。そのような実施形態では、液体は、プラスチック製のバリアを通り抜ける穴部を有するプラスチック製のバリア中に包み入れられ(例えば、マルチウエルの構成)、したがって、試料槽は、ウエル中に座す。この構成では、フォトダイオードと光学的検出器とは、所与のウエルの対側に配列することができる。これによって、リアルタイムPCRまたは定量的PCRを、光シグナルを試料槽の一方(例えば、上部)へ誘導し、何らかの放射するシグナルをブロックの他方側(例えば、下部)から検出することによって、またはその逆のやり方で実施することが可能になる。
【0040】
一実施形態では、Cool Polymers(Inc.、333 Strawberry Field Rd.、Warwick、ロードアイランド州、02886、米国;http://www.coolpolymers.com)から入手可能なもの等、熱伝導性プラスチック製の1本または複数の毛細管(581)が、液体金属(501;551;571)を含む加熱ブロック内に挿入される。一実施形態では、毛細管(581)は、前記加熱ブロックの対側を通って貫通することができ、該管の上部および下部の両方への光学的アクセスを提供する。この実施形態では、該管(581)内の試料は、一端で励起させることができ、何らかの得られたシグナルは、他端で検出することができる。一実施形態では、該管(581)は、液体金属と直接接触している。代替の実施形態では、該管(581)は、加熱ブロック内に含まれる液体金属内の熱伝導性の高い、変形可能な管(プラスチック製管等)内に挿入される。この実施形態では、試料槽を、熱伝導性の高い、変形可能な管内に挿入することができる。次いで、液体金属は、ポンプを使用することによって加圧することができ、圧力によって、熱伝導性プラスチック製の管が圧迫されて、試料槽と堅固な接触を形成するであろう。
【0041】
連続フロー加熱ブロック
代替の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、連続PCR温度サイクラー中で使用することができる。連続PCR温度サイクラーは、高感度PCRまたはハイスループットPCRが望まれる場合に使用することができる。空気、血液、水またはその他の媒体を、高感度PCRアッセイで連続的に試料採取する必要がある多くの状況が存在する。このアッセイは、インフルエンザ、細菌性病原体および多数のウイルス性または細菌性の病原体を含む、多様な生物学的混入物質を探すために使用することができる。連続PCRによって、PCRをヒトとの相互作用の必要性なしに自動的に実行することが可能になる。また、連続的に試料採取するPCRシステムは、建物、飛行機、バスおよびその他の車両のHVACシステムにおける早期警告システムとしても役立つことができ、血液、水およびその他の汚染される可能性のある源をモニターする場合においても使用することができる。
【0042】
一実施形態では、連続PCRシステムは、空気採取器、流体採取器またはその他の採取器等の収集装置、(1101)から試料を取る(図11)。その他の実施形態では、空調システムの凝集器ユニット上で収集した凝集流体(condensate fluid)を出発試料として使用するか、または、直接充てん(direct impaction)を介して作動する、特殊化したガス採取装置を使用して試料を得る。試料が調製され(1103)、これは、いくつかの実施形態では、細胞溶解、DNAもしくはRNAの精製、ろ過および/または逆転写を包含する。次いで、PCR試薬(少なくとも1種のDNAポリメラーゼ、dNTP、緩衝液および塩等)ならびにプライマー(アッセイに特異的なプライマーまたは複数の標的病原体に対する広域に適用可能なプライマー等)に試料を添加することによって、試料をPCRのために調製する(1105)。これらのプライマーは、特異的な病原体(カビ、ウイルス、細菌、寄生体もしくはアメーバ等)、遺伝子、その他の所望の核酸またはそれらの任意の組合せから単離されたDNAまたはcDNAを選択的に増幅するように選択することができる。
【0043】
次いで、PCR試料/試薬のカクテル(1107)が、管を通って、温度サイクルユニット(1109)に流れる。いくつかの実施形態では、管は、視界を遮るものがない(clear)、または透明である。別の実施形態では、管は不透明である。一実施形態では、管は、円筒である。別の実施形態では、管の横断面は、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形またはその他の多角形等の形状を形成する1つまたは複数の面を含む。一実施形態では、試料の体積は(1107)、試料槽中で小さい個別の長さの空間を占め、残りの試料槽は、空気、ガスまたは鉱油等の非反応性の液体によって占有されるようになっている。圧縮されたガスまたは液体を使用して、試料を、温度サイクラーの加熱ブロック内に押す。一実施形態では、加熱ブロックは、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックであり、この加熱ブロックは、これらに限定されないが、熱電対ペルチェ熱電モジュール、従来の熱電モジュール、熱風またはホットライトなどを含む、多様な装置によって加熱および冷却することができる。一実施形態では、温度サイクラーは、管の外部のペルチェ熱電モジュールを使用して、所望により試料を加熱および冷却する。
【0044】
所望の回数の温度サイクルが完了したら、圧縮されたガスまたは液体を使用して、試料は、管の下方にさらに押されて、温度サイクル領域から抜け出て、蛍光測定、吸光度測定またはその他の反応測定をすることができる検出領域(1113)へ移行する。一実施形態では、管は、検出領域以外は不透明であり、検出領域は、視界を遮るものがない、または実質的に透明である。検出領域では、光源(これに限定されないが、レーザーを含む、コヒーレントな光等)を使用して、PCR試料中の蛍光色素(これらに限定されないが、臭化エチジウムまたはSyber greenおよび関連の色素を含む、挿入色素等)を励起し、励起光は、光検出器(CCD,CMOSまたはその他の光学的検出器)で察知される。検出電子機器(1115)が、検出領域(1113)から送られたシグナルを評価する。陽性のPCR試験は、陰性のPCR試験より、検出蛍光量が多くなるであろう。
【0045】
次に、試料は、管の下方にさらに押されて、最終的に、廃棄物として、廃棄物回収器(1117)中に回収されることになる。一実施形態では、管は、使い捨てとして使用され、処分される。代替の実施形態では、管は、複数の試料について、増幅して、増幅産物の有無を検出するために使用することができる。試料は間隔を置いて負荷し、その間隔をガスまたは液体のバリアで満たして、相互混合を阻止する。試料は、輸送管中で相隔たり、各試料が、個々にサイクルおよび検出されるのを可能にする。一実施形態では、試料は相隔たり、1つの試料が温度サイクルを経ている際に、もう1つの試料は検出領域で反応測定を経ているようになされる。別の実施形態では、複数の管を併行して使用して、試料の処理能力を増加させることができる。さらに別の実施形態では、システムが、増幅が生じた場合(陽性の結果)に、使用者に注意を喚起して、標的配列が存在することを指し示すことができる。
【0046】
勾配加熱ブロック
代替の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、異なる温度を、加熱ブロックの異なるゾーンで維持することができるように設計される。これによって、勾配PCRの間等、異なるゾーン中のウエル中に位置する異なる試料槽を、異なる温度で同時にサイクルすることが可能になる。一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、2個以上のゾーン、例として、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個のゾーンにわたり、温度勾配を維持することができる。ある実施形態では、加熱ブロックは、各温度ゾーンに1個または複数の試料槽ウエル、例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個のウエルを有するレセプタクルを含む。一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックにわたり、0.1℃から20℃を超過する温度勾配を達成することができる。
【0047】
一実施形態では、温度勾配は、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックの単一の次元(水平または垂直)にわたり、線形に変化する。例えば、48個のウエル(307;407)を有するレセプタクルを含む加熱ブロックにおいて、6個のウエルが、ブロックにわたり等しく隔たって8列をなす。8℃の温度勾配が、加熱ブロックの上部にわたり水平に形成される場合、試料ウエルの各列は、温度が、約1℃ずつ異なるであろう。
【0048】
いくつかの実施形態では、加熱ブロックは、液体金属または熱伝導性の流体の異なるゾーンを、その他のゾーンから分離するように作用する内部バッフルまたは断熱された壁を含有するであろう。各ゾーンが、個別の加熱混合器(ポンプ、撹拌棒またはMHD等)をさらに含んでも、または加熱ブロック全体が、MHD等の単一の加熱混合器もしくは振動装置につながっていてもよい。さらに、加熱ブロックの各ゾーンは、熱伝導要素(ワイヤー、管)、薄箔型の加熱器、ペルチェ素子または冷却ユニット等の個別の加熱および/または冷却の要素を含んでもよい。
【0049】
代替の実施形態では、加熱ブロックは、複数の加熱装置および冷却装置を含む場合があり、これらのうちには、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ゾーンの全てにわたり全体的に作用するもの、および単一のゾーン内のみで作用するものがある。例えば、加熱ブロックは、加熱ブロック中の各ゾーンに隣接した、追加の加熱および/または冷却の装置を活用して、ブロックの全長および全幅にわたり、均一に加熱することができる。そのような配置によって、各ゾーン中の液体金属または熱伝導性の流体の温度および前記ゾーン内の関連する試料槽の反応温度を緻密に合わせるための、より優れた的確さを提供することができる。
【0050】
熱伝導率
液体金属または熱伝導性の流体を含有する液体組成物の加熱ブロックは、固体金属製の加熱ブロックと比較して、より均一な温度をブロックにわたり維持する。固体製の加熱ブロックは、ブロックにわたって、および試料間の変動の両方で、温度の顕著な変動を示す(Schoderら、J.Clin.Micro Biol.2005,43 2724−2728)。従来の固体金属製の温度サイクラーの場合、加熱装置中の任意の所与の点における温度のばらつきが、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックの場合より大きい。+/−3.3℃の大きなばらつきが、従来の温度サイクラーを用いた場合に観察されているが、一方、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックを用いた場合の最も大きなばらつきは、はるかに小さい。一実施形態では、加熱ブロックは、0.1ワット/メートル−ケルビン(W/mK)超の熱伝達係数、例として、これらに限定されないが、0.25W/MK、0.5W/MK、0.75W/MK、1W/MK、1.5W/MK、2W/MK、2.5W/MK、3W/MK、3.5W/MK、4W/MK、4.5W/MK、5W/MK、5.5W/MK、6W/MK、6.5W/MK、7W/MK、7.5W/MK、8W/MK、8.5W/MK、9W/MK、9.5W/MK、10W/MK、11W/MK、12W/MK、13W/MK、14W/MK、15W/MK、16W/MK、17W/MK、18W/MK、19W/MK、20W/MK、21W/MK、22W/MK、23W/MK、24W/MK、25W/MK、26W/MK、27W/MK、28W/MK、29W/MK、30W/MK、32W/MK、35W/MK、37W/MK、40W/MK、42W/MK、45W/MK、47W/MK、50W/MK、55W/MK、60W/MK、65W/MK、70W/MK、75W/MK、80W/MK、85W/MKを含む、0.25W/MK〜85W/MKの熱伝達係数を有する液体金属を含む。
【0051】
一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、加熱ブロック全体にわたり実質的な温度均一性を有する温度サイクラーの成分であり、加熱ブロック中の任意の2個の試料槽間の温度が、+/−0.6℃以下、例として、+/−0.59℃、+/−、0.58℃、+/−0.57℃、+/−0.56℃、+/−0.55℃、+/−0.54℃、+/−0.53℃、+/−0.52℃、+/−0.51℃、+/−0.5℃、+/−0.49℃、+/−、0.48℃、+/−0.47℃、+/−0.46℃、+/−0.45℃、+/−0.44℃、+/−0.43℃、+/−0.42℃、+/−0.41℃、+/−0.4℃、+/−0.39℃、+/−0.38℃、+/−0.37℃、+/−0.36℃、+/−0.35℃、+/−0.34℃、+/−0.32℃、+/−0.31℃、+/−0.3℃、+/−0.29℃、+/−0.28℃、+/−0.27℃、+/−0.26℃、+/−0.25℃、+/−0.24℃、+/−0.23℃、+/−0.22℃、+/−0.21℃、+/−0.2℃、+/−0.19℃、+/−0.18℃、+/−0.17℃、+/−0.16℃、+/−0.15℃、0.14℃、+/−0.13℃、+/−0.12℃、+/−0.11℃、+/−0.1℃、+/−0.09℃、+/−0.08℃、+/−0.07℃、+/−0.06℃、+/−0.05℃、+/−0.04℃、+/−0.03℃、+/−0.02℃、+/−0.01℃、+/−0.009℃、+/−0.008℃、+/−0.007℃、+/−0.006℃、+/−0.005℃、+/−0.004℃、+/−0.003℃、+/−0.002℃、または+/−0.001℃以下等の分散を有する。別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、加熱ブロックのレセプタクル中の任意の2個のウエル間で、所望の温度から、+/−0.6℃以下、例として、+/−0.59℃、+/−、0.58℃、+/−0.57℃、+/−0.56℃、+/−0.55℃、+/−0.54℃、+/−0.53℃、+/−0.52℃、+/−0.51℃、+/−0.5℃、+/−0.49℃、+/−、0.48℃、+/−0.47℃、+/−0.46℃、+/−0.45℃、+/−0.44℃、+/−0.43℃、+/−0.42℃、+/−0.41℃、+/−0.4℃、+/−0.39℃、+/−0.38℃、+/−0.37℃、+/−0.36℃、+/−0.35℃、+/−0.34℃、+/−0.32℃、+/−0.31℃、+/−0.3℃、+/−0.29℃、+/−0.28℃、+/−0.27℃、+/−0.26℃、+/−0.25℃、+/−0.24℃、+/−0.23℃、+/−0.22℃、+/−0.21℃、+/−0.2℃、+/−0.19℃、+/−0.18℃、+/−0.17℃、+/−0.16℃、+/−0.15℃、0.14℃、+/−0.13℃、+/−0.12℃、+/−0.11℃、+/−0.1℃、+/−0.09℃、+/−0.08℃、+/−0.07℃、+/−0.06℃、+/−0.05℃、+/−0.04℃、+/−0.03℃、+/−0.02℃、+/−0.01℃、+/−0.009℃、+/−0.008℃、+/−0.007℃、+/−0.006℃、+/−0.005℃、+/−0.004℃、+/−0.003℃、+/−0.002℃、または+/−0.001℃以下等の分散を有する、実質的に均一な温度を有する。さらに別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロック中の試料槽は、試料槽内で、所望の温度から、+/−0.6℃以下、例として、+/−0.59℃、+/−、0.58℃、+/−0.57℃、+/−0.56℃、+/−0.55℃、+/−0.54℃、+/−0.53℃、+/−0.52℃、+/−0.51℃、+/−0.5℃、+/−0.49℃、+/−、0.48℃、+/−0.47℃、+/−0.46℃、+/−0.45℃、+/−0.44℃、+/−0.43℃、+/−0.42℃、+/−0.41℃、+/−0.4℃、+/−0.39℃、+/−0.38℃、+/−0.37℃、+/−0.36℃、+/−0.35℃、+/−0.34℃、+/−0.32℃、+/−0.31℃、+/−0.3℃、+/−0.29℃、+/−0.28℃、+/−0.27℃、+/−0.26℃、+/−0.25℃、+/−0.24℃、+/−0.23℃、+/−0.22℃、+/−0.21℃、+/−0.2℃、+/−0.19℃、+/−0.18℃、+/−0.17℃、+/−0.16℃、+/−0.15℃、0.14℃、+/−0.13℃、+/−0.12℃、+/−0.11℃、+/−0.1℃、+/−0.09℃、+/−0.08℃、+/−0.07℃、+/−0.06℃、+/−0.05℃、+/−0.04℃、+/−0.03℃、+/−0.02℃、+/−0.01℃、+/−0.009℃、+/−0.008℃、+/−0.007℃、+/−0.006℃、+/−0.005℃、+/−0.004℃、+/−0.003℃、+/−0.002℃、または+/−0.001℃以下等の分散を有する、実質的に均一な温度を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックの温度の均一性は、ブロック中で液体金属または熱伝導性の流体を循環させることによって調整される。液体金属または熱伝導性の流体の循環は、自然の対流または強制的な対流によって生み出すことができる。強制的な対流の例として、これらに限定されないが、撹拌棒、ポンプもしくはMHD力を含む、装置の介入によるものもあれば、物理的な力による振動、またはDC電流もしくはAC電流を用いたMHD力によるもの等もある。
【0053】
いくつかの実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、従来の金属製の加熱ブロックより、実質的に迅速な立ち上げ速度を有するか、温度を、従来の金属製の加熱ブロックより、実質的に迅速な速度で変化させることができ、その速度は、例として、1秒あたり少なくとも5〜50.5℃、これに限定されないが、1秒あたり少なくとも10〜40℃の範囲を含み、より具体的には、1秒あたり少なくとも5℃、5.5℃、6℃、6.5℃、7℃、7.5℃、8℃、8.5℃、9℃、9.5℃、10℃、10.5℃、11℃、11.5℃、12℃、12.5℃、13℃、13.5℃、14℃、14.5℃、15℃、15.5℃、16℃、16.5℃、17℃、17.5℃、18℃、18.5℃、19℃、19.5℃、20℃、20.5℃、21℃、21.5℃、22℃、22.5℃、23℃、23.5℃、24℃、24.5℃、25℃、25.5℃、26℃、26.5℃、27℃、27.5℃、28℃、28.5℃、29℃、29.5℃、30℃、30.5℃、31℃、31.5℃、32℃、32.5℃、33℃、33.5℃、34℃、34.5℃、35℃、35.5℃、36℃、36.5℃、37℃、37.5℃、38℃、38.5℃、39℃、39.5℃、40℃、40.5℃、41℃、41.5℃、42℃、43.5℃、44℃、44.5℃、45℃、45.5℃、46℃、46.5℃、47℃、47.5℃、48℃、48.5℃、49℃、49.5℃、50℃、および50.5℃を含む。関連の実施形態では、前記の液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、温度を、従来の金属製の加熱ブロックより、実質的に迅速な速度で変化させ、同時に、均一な温度を、加熱ブロックにわたり、かつ/または前記加熱ブロック内の試料内で維持することもできる。一実施形態では、液体金属製の加熱ブロックは、温度を、1秒あたり少なくとも44℃の速度で上昇させることができる。別の実施形態では、液体金属製の加熱ブロックは、温度を、1秒あたり少なくとも17℃の速度で低下させることができる。一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の温度は、ガラスビーズ製のサーミスタ(Betatherm)を用いて測定される。別の実施形態では、赤外線カメラを使用して、液体金属もしくは熱伝導性の流体の温度、または加熱ブロックの上部を覆う液密なレセプタクルの温度、または試料槽の温度を測定する。別の実施形態では、液体金属もしくは熱伝導性の流体の温度は、外部プローブを用いて測定される。さらに別の実施形態では、液体金属もしくは熱伝導性の流体の温度は、ガラスビーズ製の熱電対(thermocouple)を用いて測定される。別の実施形態では、少なくとも1個の試料槽の温度は、プローブを用いて測定される。
【0054】
液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックが温度サイクラー中で使用される、いくつかの実施形態では、一連のPCRサイクルは、従来の固体の温度サイクラーより、迅速に実施することができる。単純なPCRの単一サイクルは、通常、変性工程と、ハイブリダイゼーション工程と、伸長工程とを包含し、それぞれが、特異的な温度で実施される。いくつかの実施形態では、一連のPCRの30サイクル(PCR運転)は、1から20分、例として、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分等で完了することができる。しかし、PCR運転時間の長さは、温度サイクラーのスピードおよび温度均一性のみによって決まるわけではない。PCR運転時間の長さは、所望のPCR産物の特徴によって変化させることができることは、当業者に明らかであろう。
【0055】
組成物
PCRが実施される温度で液体である熱伝導性の材料によって、いずれの形状の試料槽も温度制御材料内に浸すこと、および熱の伝達のために良好な熱的接触を維持することが可能になる。したがって、組成物は、少なくとも、プライマーアニーリングと二本鎖の解離との間の範囲において液体であることが好ましい。プライマーアニーリングは、典型的には、約55℃で起こるが、約70℃の高さで、または約45℃の低さで起こり得る。二本鎖の解離は、典型的には、94℃で起こるが、長さおよびアンプリコン中のグアニン−シトシンの塩基対の割合(GC含有量)等の要因に左右されて、より低い温度でも起こり得る。したがって、一実施形態では、液体組成物は、70℃以下の融点(すなわち、固体から液体に変化する温度)を有する。代替の実施形態では、液体組成物は、60℃以下の融点を有する。代替の実施形態では、液体組成物は、50℃以下の融点を有する。さらに別の実施形態では、液体組成物は、40℃以下の融点を有する。
【0056】
多様な液体金属の組成物を、請求の本発明を実行するのに使用することができる。一実施形態では、液体金属の組成物は、ガリウムであっても、またはガリウムを含有する組成物であってもよい。また、いくつかの組成物は、インジウム、銅、ロジウム、銀、第一スズ、ビスマス、スズおよび/または亜鉛を含んでもよい。一実施形態では、液体金属は、Coollaboratory(Http://coolaboratory.com)から入手する。いくつかの実施形態では、液体金属は、40〜80%のガリウムおよび10〜50%のインジウムを含有することができる。いくつかの実施形態では、液体金属合金は、1〜40%の銅、ロジウム、銀、第一スズ、ビスマス、スズ、亜鉛またはそれらの組合せを含有することができる。いくつかの実施形態では、液体金属合金は、約60%のガリウム/約25.0%のインジウム/約14.0%のSn/約1.0%のZn;約62%のガリウム/22%のインジウム/約16.0%のSn;約75%のガリウム/約25%のインジウム;約95%のガリウム/約5%のインジウム;または100%のガリウムを含むことができる。別の実施形態では、組成物は、60〜99%のガリウムを、インジウムと組み合せて、例として、約75%のガリウムおよび約25%のインジウムを含有することができる。約75%のガリウムおよび約25%のインジウムを有する合金は、約15.7℃で液体となり、約2,000℃の沸点を有する。そのような合金は、PCR温度サイクルの間では、液体の状態で存在し、気化を起こすのに十分な高い温度に達することは決してない。したがって、液体金属が、試料槽と直接接触する実施形態においてさえ、液体金属の気化による毒性は、問題にはならない。
【0057】
別の実施形態では、水銀、水銀合金またはウッド合金(Woods Metal)等の毒性のある液体金属を、本発明において使用する場合がある。約50%のBi、約25%のPb、約12.5%のSn、約12.5%のCdを含むウッド合金は、高い使用温度範囲(70〜350℃)を有する。ウッド合金等の液体金属を含む加熱ブロックは、生物学的試料を沸騰させるために、または安定な高温の加熱ブロックを必要とする何らかのその他の実験室の技法において使用することができる。
【0058】
種々の実施形態では、液体組成物は、液体金属、液体の金属合金またはスラリーを含有する金属である。液体金属の膨張係数は、本発明の温度サイクラーでの使用のために意図される液体金属、液体の金属合金またはスラリーの的確な成分によって変化するであろう。種々の実施形態において、液体金属、液体の金属合金または金属スラリーは、PCRの間に、PCR開始前と比較して、体積が、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.5、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0%膨張する。
【0059】
一実施形態では、液体金属、液体の金属合金または金属を含有するスラリーは、容器のレセプタクルと試料槽との接点を圧縮するのに十分な量で膨張し、堅固な接触を形成するように設計される。この接触は、増強された熱伝導率および光学的な伝送(例えば、試料槽に戻る光の反射率)を提供する。この堅固な接触は、レセプタクルを試料槽から分離する空隙を減少させることによって、液体金属と試料槽との間の熱伝導率を増加させる。1つの例として、ガリウムは、かなり均一な膨張を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
別の実施形態では、加熱ブロックは、熱伝導性の流体である液体組成物を含む。多様な熱伝導性の流体を、請求の本発明において使用することができる。熱伝導性の流体という用語は、温度サイクラーにおける使用に適した作業温度範囲を有するロウおよび油を包含する。すなわち、ロウおよび油は、30〜55℃の範囲の比較的低い融点を有し、かつ、安定性を少なくとも30〜110℃の範囲の温度で維持する必要がある。これらに限定されないが、炭化水素およびケイ素化合物、ならびにそれらの混合物等の化合物を含む、多様なロウおよび油が、熱伝導性の流体としての使用に適する。例として、シリコーン油、カルボキシ修飾シリコーン油、鉱油、ジブチルフタレート、ポリジエチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、テトラアルコキシシロキサン、シラ炭化水素、ポリアルファオレフィン、ナフテン油、水添異性化油(hydroisomerized oil)、パラフィン油、パラフィンロウ、パラフィンロウ、窒化ホウ素と混合したパラフィンロウ、トリコサンパラフィンロウ、ポリオルガノシロキサンポリマー、ポリオレフィンロウ、ポリエチレンロウまたはポリプロピレンロウ、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに、熱伝導性の流体は、安定性、粘度、膨張係数、不透明性および/または反射性を改変するために作用する添加剤を含んでもよい。そのような添加剤として、これらに限定されないが、プラスチック、鉱物、水溶性の流体、凍結防止剤または金属が挙げられる。
【0062】
反射性
一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体が受け取る光のうちの実質的に全てを反射する液体金属または熱伝導性の流体が使用される。別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体は、試料槽中の分子を励起して、シグナルを検出することができる光学的アセンブリに接続している温度サイクラーの加熱ブロック中の成分である。試料槽は、加熱ブロックの液体金属または熱伝導性の流体の中に直接浸漬しても、または液体金属もしくは熱伝導性の流体から、熱伝導性であるレセプタクルによって分離してもよい。レセプタクルを含む実施形態では、レセプタクルは、実質的に透明な材料または反射性の材料を用いて製造することができる。これらの実施形態では、液体金属もしくは熱伝導性の流体、または反射性の試料槽の表面が、それが受け取った光のうちの実質的に全てを反射して戻し、次いで、それを、これらに限定されないが、CCD装置、CMOS装置、LED装置、PN型フォトダイオード、PIN型フォトダイオードまたは光電池を含む、光検出装置によって検出することができる。さらに、透明なレセプタクルが使用される実施形態では、レセプタクルと同一のプラスチックからなるか、またはレセプタクルと類似する屈折率を有する透明な材料から製造された透明な試料槽を使用することができる。
【0063】
一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体のレベルが、試料槽中の試料のレベルより高い。すなわち、側面から眺めると、試料槽中の試料とPCR反応カクテルとの体積が、液体金属または熱伝導性の流体のレベルを下回る。そうなると、液体金属または熱伝導性の流体は、入射光または試料槽中で生み出された、いずれの光も実質的に反射するであろう。一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、複数のPIN型ダイオード等の多重チャネル検出装置を含む光学的アセンブリを含む、リアルタイム温度サイクラーの成分である。例えば、装置は、レセプタクル中の個々のウエルからの光の検出に専念する、複数の単一チャネルを含むことができる。この実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体は、第1試料槽から送信された光が、第2試料槽に関連する検出チャネルによって検出されるのを実質的に阻止する光学的バッファーとして作用する。
【0064】
試料槽
「試料槽」という用語は、多様な形状および構成の反応槽を包含する。ある実施形態では、試料槽は、PCR反応混合物、逆転写反応混合物、リアルタイムPCR反応混合物、または加熱、冷却もしくは安定した均一な温度を必要とする任意のその他の反応混合物等の反応混合物を含有するよう使用することができる。一実施形態では、試料槽は、形状が円形または管状の槽である。代替の実施形態では、試料槽は、形状が楕円形の槽である。別の実施形態では、試料槽は、形状が長方形または正方形の槽である。任意の先行する実施形態は、先細の、丸められた、または平坦な、下部をさらに用いることもできる。さらに別の実施形態では、試料槽は、視界を遮るものがないガラス製の毛細管またはコートされた毛細管等の毛細管であり、ここで、コーティング(例えば、金属)が内部反射率を増加させる。追加の実施形態では、試料槽は、ガラス製のスライド等のスライドである。別の実施形態では、試料槽は、下部で密閉される。一実施形態では、試料槽は、液体金属または熱伝導性の流体等の液体組成物の付着を軽減するように、テフロン(登録商標)またはシラン等の抗付着性のコーティングで、少なくとも外部がコートされる。別の実施形態では、試料槽は、フッ素化ポリマーまたはBSA等、アンプリコンが、試料槽の壁に貼り付くのを阻止するための材料で、少なくとも内部がコートされる。
【0065】
一実施形態では、試料槽は、個別の槽として製造され、使用される。別の実施形態では、試料槽は、2、4、6、10、12、14または16個の管等、複数の個別の試料槽を含む、水平の一組として一緒になって連結されている。さらに別の実施形態では、試料槽は、一緒になって連結されて、温度サイクラーの加熱ブロックの上部にはまるように設計された槽のシート、プレートまたはトレイを形成し、それによって、一部または全部の利用可能な反応ウエルを占有する。一実施形態では、トレイまたはシートは、少なくとも6個のウエル、12個のウエル、24個のウエル、36個のウエル、48個のウエル、54個のウエル、60個のウエル、66個のウエル、72個のウエル、78個のウエル、84個のウエル、90個のウエル、または96個のウエル、144個のウエル、192個のウエル、384個のウエル、768個のウエル、または1536個のウエルを含むことができる。
【0066】
一実施形態では、試料槽は、場合によりヒンジで動く、プラスチック片等の連結要素によって、開口端部につながったキャップを有する。別の実施形態では、試料槽は、つながったキャップを欠く。一実施形態では、試料槽は、10μl、20μl、30μl、40μl、50μl、60μl、70μl、80μl、90μl、100μl、200μl、250μl、500μl、750μl、1000μl、1500μl、2000μl、5mLまたは10mL等の最大試料体積を保持するように設計される。
【0067】
いくつかの実施形態では、光学的な透明度により、およびガラスまたはプラスチック等の反応物質とは反応しないことが知られていることにより選択された材料から製造された試料槽中で、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が実施される。一実施形態では、試料槽は、光が、試料槽の上部を通して、入射して戻るように設計され、試料槽の上部は、光を伝送することができるキャップで覆う場合がある。別の実施形態では、試料槽は、光が、試料槽の下部を通って、試料槽に入射して試料槽から戻るように設計される。一実施形態では、試料槽は、光を伝送することができる透明または半透明な材料から製造される。一実施形態では、試料槽は、上部または下部等の単一の表面を通って抜け出るように光を導くように設計される。
【0068】
その他の実施形態では、試料槽は、反射性プラスチック、(金属もしくはその他の反射性物質等で)コートされたプラスチック、(金属もしくはその他の反射性物質等で)コートされたガラス、(ガラスの反射率を増加させる分子を添加して製造された)ドープガラス、またはこれらに限定されないが、ステンレス鋼、クロムもしくはその他の実質的に非反応性の金属を含む金属等の、実質的に内部で反射する材料から製造される。金属は、高い強度を有し、それよって、ガラスまたはプラスチックよりはるかに薄い側壁が可能になる。これによって、反応物質と外部の熱源/冷却源との間の熱的なバリアが減少し、より良好な温度制御、より均一な空間温度、およびより迅速な温度変化が可能になり、これらの全てが、より迅速で、より効率的なポリメラーゼ連鎖反応を起こすことができる。リアルタイムに蛍光をモニターするために、落射蛍光(epifluorescence)が使用される実施形態では、金属製の内部表面の高い反射率が、蛍光の収集を支援する。一実施形態では、金属製の試料槽の内部が、研磨または電解研磨されている。
【0069】
一実施形態では、金属製の試料槽は、より大きな円筒形または長方形の原料から製造される。最初に、原料を、所望の直径まで引き伸ばす。別法として、注射器の生産の標準的な方法を使用してもよい。連続した管(長方形または円筒形の管等)が生じ、これは、約1cM、2cM、3cM、4cM、5cM、6cM、7cM、8cm、9cM、10cMまたはそれらの間の任意の長さ等の所望の長さの小片を産生するために、切断および密閉の両方がなされなければならない。一実施形態では、密閉された端部の直径は、管自体の直径を上回らない。この実施形態では、次に、管が、切断および密閉される。管(1301)は、金属製ブロック(1305)中の溝(1303)を通して供給することができる(図13)。一実施形態では、溝の幅は、金属製管の外径の大きさに非常に近い。管(1301)が、金属製ブロック(1305)を抜け出ると、切断刃(1307)を、その縁部が金属製ブロックと同一面にあり溝に直行した状態で下げる。一実施形態では、刃(1307)は、先細の縁部(1309)の形状を有する。別の実施形態では、刃の形状は、切断および圧着(crimp)の両方をなして金属製管の端部を閉じるような縁部を有し、溝の壁は、密閉が外側に反るのを阻止して、その直径を、バルク管の直径に近い状態に、力を加えて留まらせる。圧着後、試料槽は、さらなる密閉を必要とする場合がある。一実施形態では、これは、小規模の溶接、ロウ付けまたははんだ付けを用いて達成することができる。別の実施形態では、切断および圧着は、金属製のプラグを使用することによって避けることができる。必要であれば、直径を減らすため、およびザラザラした縁部を除去するために、最終的な密閉された端部を磨くことができる。
【0070】
代替の形態では、金属製の試料槽は、所望の直径まで引き伸ばしてから、所望の長さに切断することができる。次いで、力を加えて、各小片の一端を、管自体に類似する直径を有する半球状のカップとなす。この動きによって、金属製管を丸め、圧着して閉鎖することができる。関連の実施形態では、ピンを、金属製の管の開放した上部を通して挿入して、管の密閉端部を押しつぶして、受容カップとなすのを支援する。PCRに適した1つの閉鎖端部と1つの開放端部とを有する槽を生み出すために、管は、圧着して密閉することができる。
【0071】
試料槽キャップ
一般に、PCR温度サイクルの間の蒸発を予防するために試料槽の上部を覆うのが望ましい。これは、試料槽の上部に、鉱油等の非反応性の液体を層状に重ねた後、試料槽を密閉する(毛細管を熱により密閉する等)ことによって、または試料槽をキャップで閉鎖することによって達成することができる。
【0072】
一実施形態では、キャップが使用される。キャップは、試料槽と密閉を形成して、蒸発バリアとして作用する、任意の適切な材料(ガラスまたはプラスチック等)を使用して製造することができる。一実施形態では、キャップは、プラスチック製キャップである。このキャップは、不透明、半透明または実質的に透明であってよい。一実施形態では、キャップは、光学的に透明であり、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックと光学的アセンブリとを含む温度サイクラーとの使用に適している。別の実施形態では、キャップは、不透明のコーティングで部分的または完全にコートされている。さらに別の実施形態では、キャップは、ミラーコーティング等の反射性コーティングで部分的または完全にコートされている。
【0073】
励起波長を送り込まれた場合に蛍光を発する材料を含有する試料槽または槽から光の抽出を達成するのは、特に、加熱ブロックが槽を塞いでいる場合には困難である。試料槽キャップ(303;304)は、プラスチックまたはガラス等の透明な材料で作製され、光ガイドを場合により含み、この光ガイドは、(レンズ、フィルター、ビーム分割器とともに;例えば、図3)光源(発光体等)および検出器に光学的に連結することができ、光ガイドの存在によって、検出器に送達される光の量が増加する。発光体は、レーザー等のコヒーレントな源であっても、またはLED等のコヒーレントでない源であってもよい。
【0074】
さらに、本発明の典型的な実施形態のうちの1つの利点は、試料槽中の標識/色素から放出された光が、液体金属もしくは熱伝導性の流体、液体の金属合金、または金属スラリーの反射特性に基づいて、反射して試料槽中に戻る点である。さらなる実施形態では、反射量は、試料槽とレセプタクルのウエルとの間に、より良好な接触を形成することによって(例えば、体積の膨張を使用して、堅固な接点を形成するか、またはチャンバーを含有する液体内部の圧力を上昇させるためにポンプを使用し、その結果、液体がレセプタクルのウエルの壁上に追加の圧力をかけて、試料槽と堅固な接点を形成することによって)、さらに増強される。
【0075】
別の実施形態では、光の反射の同様の効果が、本発明の特殊化した試料槽を利用することによって生じ、試料槽は、不透明な組成物(例えば、ステンレス鋼)からなるか、反射性である不透明なフィルム(例えば、アルミニウム)で(内部/外部が)コートされている。一実施形態では、試料槽は、ミラーコートされている。試料槽が金属を含む実施形態では、金属は、その反射率を増加させるために、研磨されていても、または電解研磨されていてもよい。
【0076】
いずれの場合でも、種々の実施形態では、本発明のキャップ用具(cap implenment)は、光学的に透明であり、自己蛍光が低いかまたは全くないことを特徴とし、試料槽と良好な密閉を形成する材料からなる。さらに、いくつかの実施形態では、キャップは、特定の長さを試料槽中に突き出す突出部(例えば、光ガイド)を提供する。キャップを構成するのに利用することができる材料の例として、これらに限定されないが、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンブロックコポリマー(SBC)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ABS、ポリスルホン、熱可塑性ポリエステル(PET等)、ポリプロピレン、アクリル−スチレンコポリマー(SMMA)、PVC、ナイロン、セルロース樹脂、環状オレフィンコポリマー(COC),アリルジグリコールカーボネート(ADC)、環状オレフィン(TOPAS、ZEONORおよびZEONEX等)、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
種々の実施形態では、キャップおよび/または突出部は、これらに限定されないが、多角形、楕円形、円形、正方形、長方形、三角形、または(当技術分野で知られている)射出成型を通して得られる任意の形状を含む、幾何学的な形状であることができる。さらに、試料槽およびレセプタクルのウエルもまた、所望の形状の任意のものであることができることが認識されるであろう。一実施形態では、キャップ、試料槽およびレセプタクルが、同一の幾何学的な形状である。さらなる実施形態では、幾何学的形状は、長方形である。一実施形態では、幾何学的形状は、キャップ、試料槽およびレセプタクルの壁のうちのそれぞれにおいて使用される材料に基づいて選択されて、試料の壁とレセプタクルの壁との間に増強された接触を提供し、試料槽からの光の最適な伝達を提供する。さらに別の実施形態では、試料槽の壁の屈折率とレセプタクルの壁の屈折率とが、等しいかまたはほぼ等しい。
【0078】
一実施形態では、キャップおよびキャップの突出部は、同一の材料からなる。一実施形態では、キャップ、キャップの突出部、試料槽およびレセプタクルはそれぞれ、本明細書に開示する同一の材料または異なる材料からなる。
【0079】
いくつかの実施形態では、キャップの突出部は、試料槽中で、液体金属もしくは熱伝導性の流体、液体の金属合金、または金属スラリー(まとめて、「液体」)が位置付けられているレベル(例えば、線)を上回るか、それと同じか、またはそれを下回るレベルまで突き出す。
【0080】
一実施形態では、光は、突出部を移動して試料槽内に入り、試料中の標識/色素から放出されたシグナルが得られ、これは、突出部を移動して戻る。この光は、キャップの実質的に別の部分から放出され、これは、フォトダイオード等の光検出器によって検出される(例えば、図6)。
【0081】
一実施形態では、キャップの先端部は、液体金属または熱伝導性の流体の表面レベルを下回る。側面から眺めると、キャップの先端部が、液体金属または熱伝導性の流体のレベルを下回って位置し、この液体金属または熱伝導性の流体中に、試料槽が位置し、それによって、試料槽は光のうちの実質的に全てを収集することが明らかであろう。これは、試料槽が、液体金属または熱伝導性の流体の中に直接浸漬される実施形態にも、試料槽が、レセプタクルのウエルの内部に置かれる実施形態にも当てはまる。
【0082】
キャップの形状および表面の質を、キャップから液体への光学的な連結を最大化するように設計することができる。別の実施形態では、キャップは、ファイバーの束を用いて、または自由空間ソリューション(free space solution)によって、光らせることができる。自由空間システムは、組みレンズ(coupling lenses)および/またはビーム分割器を包含する。光学システムは、同時に、蛍光を発する液体を励起し、かつ蛍光を検出することができる。
【0083】
一実施形態では、プラスチック製のキャップは、プラスチックのキャスティングまたは射出成型のいずれかによって加工することができる。
【0084】
一実施形態では、温度サイクラー/液体から放出される熱をキャップが容易に吸収し、それによって、キャップは、凝縮が減少するかまたは排除される温度まで、加熱される。しばしば、先行技術のPCR法を用いると、試料槽の上方の領域/キャップは、試料槽の下方の部分よりも温度が低い状態にあり、したがって、反応液がより冷たい表面上に凝縮し、それによって、反応の化学に変化(例えば、効率の悪い反応または誤った結果に至らせる濃度変化)が生じる恐れがある。別の実施形態では、試料槽が、液体の表面レベルの十分はるか下に及ぶように設計され、その結果、試料槽の上部の入口が、試料/PCRカクテルの表面から十分に遠いので、凝縮が阻止される。さらに別の実施形態では、蓋によって、またはキャップ上の下向きの圧力によって、試料槽がレセプタクルと、より堅固に接触し、これによって、蒸発を妨害することができる。
【0085】
組成物を加熱および冷却する手段
液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、当業者に知られている多様な技法を使用することによって加熱および冷却することができる。一実施形態では、加熱ブロックの加熱成分は、ペルチェ素子、抵抗加熱器および放射加熱器から選択される。一実施形態では、加熱ブロックの冷却成分は、ペルチェ素子、加熱シンク、冷却装置、蒸発冷却器、加熱パイプ、加熱ポンプおよび相変化物質から選択される。一実施形態では、加熱要素は、管を加熱ブロック内に延長することによって提供することができる。熱いまたは冷たい流体を送り込むことができる管を取り付けることができる。いくつかの代替の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックには、周辺効果を阻止するために、加熱および/もしくは冷却用のコイル、または電気的な抵抗加熱器を取り付けることができる。別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、ペルチェ効果の熱電素子に熱的に連結することができる。
【0086】
一実施形態では、加熱ブロックは、液体金属または熱伝導性の流体が、ブロックの全体にわたって均一な温度を維持するように設計される。
【0087】
複数ゾーンの加熱装置
一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、複数ゾーンの加熱器等の加熱成分とバイアス冷却システムとに、熱的に連結している。一実施形態では、バイアス冷却システムは、加熱ブロックの基部または側面につながっているバイアス冷却通路を通る、冷やした冷却剤の小さな一定の流れを提供する。これによって、加熱ブロックから一定の少量の熱損失が生じ、これは、複数ゾーンの加熱器によって埋め合わせられる。加熱器は、インキュベーション区分のための試料ブロックに熱的に連結しており、この区分では、試料ブロックの温度は、決まった値に維持される。バイアス冷却流によって生じる一定の少量の熱損失によって、制御システムが、上方および下方の両方で釣り合うように、温度を少しずつ制御することが可能になる。これは、温度制御システムは、ブロック温度のエラーを矯正するために、加熱および冷却の両方を、制御された、予測可能な小さな速度で行うことが可能であることを意味する。複数ゾーンの加熱器は、CPUによって制御することができる。
【0088】
一実施形態では、加熱要素は、加熱コイル等の1本または複数のワイヤー成分からなる(図10)。そのようなワイヤー成分は、最適な加熱を提供し、周辺効果を減少させるかまたは排除するように配置される。例えば、ワイヤー要素は、加熱ブロックの周辺に配置される。さらに、複数のワイヤー要素が利用される場合、それらは、等距離に間隔をあけるか、中から外周に向けて距離がしだいに増加/減少して、最適な加熱を提供し、周辺効果を減少させるかまたは排除する。一実施形態では、ワイヤーは、加熱ブロックの下部において、格子状のパターンで配置される。代替の実施形態では、ワイヤーは、加熱ブロックの下部に沿って、同心の円または楕円で配置される。別の実施形態では、ワイヤーは、加熱ブロックの基部および側面に沿って配置される。さらに別の実施形態では、ワイヤーは、液体金属がワイヤーの全側面の周囲を流れるのを可能にするパターンで、例えば、2つ以上の格子状の層を含む、ぶらさがり配置、積み重ね配置または3次元配置で、配置される。さらに別の実施形態では、ワイヤーは、加熱ブロックの内部で(例えば様々な間隔で)よりも、加熱ブロックの縁部付近で、加熱ブロックの外側縁部が、内部より迅速に冷却される傾向を相殺するよう、より密接に一緒になって位置する(図10)。周辺効果によって、通常、温度ユニットの外側の周囲で、温度の均一性に不整合が生じることが当技術分野では知られている。
【0089】
一実施形態では、冷却剤制御システムが、自動車用不凍液と水との混合物等、冷やした液体の冷却剤を、加熱ブロックに流入管および流出管を介してつながっているバイアス冷却通路を通して、連続的に循環させる。また、冷却剤制御システムは、加熱ブロック中のより大きな容量の冷却流体の出入の流路を通る流体の流れも制御する。出入の(ramp)冷却通路は、大きな容量の冷やした液体の冷却剤を送り込んで、比較的速い流速でブロックに通すことによって、加熱ブロックの温度を迅速に変化させるために使用される。
【0090】
一実施形態では、加熱ブロックを冷やすために使用される液体の冷却剤は、主として、水とエチレングリコールとの混合物からなる。液体の冷却剤は、熱交換器によって冷やされる。液体の冷却剤が、熱を、試料ブロックから流入管を介して抽出すると、熱交換器が、液体の冷却剤を受け取る。熱交換器は、圧縮された液体の冷媒(フレオンまたはエタノール等)を、冷却ユニットからの流入管を介して受け取る。この冷却ユニットは、一般に、コンプレッサー、ファンおよびフィンチューブ(fin tube)放熱器を包含する。冷却ユニットが、熱交換器から受け取った冷媒を圧縮する。加熱された冷媒が、フィンチューブ冷却器中で冷却され、液体に凝集する。冷媒の圧力は、フィンチューブ冷却器中では、その蒸気圧を上回るように、流量制限器の毛細管によって維持される。この毛細管の流出量は、熱交換器の流入量と連結している。熱交換器中では、冷媒の圧力を、その蒸気圧を下回るまで低下させて、冷媒を膨張させる。この膨張の過程において、熱が、熱交換器中で循環する温まった液体の冷却剤から吸収され、この熱は、冷媒に伝達され、それによって、冷媒が沸騰する。次いで、温まった冷媒が、熱交換器から抽出され、圧縮され、フィンチューブ冷却器を通って再度循環する。ファンが、フィンチューブ冷却器を通して空気を吹き飛ばすと、チューブからの熱が、冷媒中で周囲の空気と交換される。一実施形態では、冷却は、液体の冷却剤から、30℃においては、少なくとも400ワットの熱を、および10℃においては、少なくとも100ワットの熱を抽出して、迅速な温度サイクルを支持することができる。
【0091】
代替の実施形態では、バイアス冷却は、除外してもよいし、またはその他の手段、例えば試料ブロックの金属中に形成された冷却用ファンおよび冷却用フィンの使用、ペルチェ接点、または常時循環する水(例えば、蒸留水もしくは水道水)によって供給されてもよい。
【0092】
ペルチェ効果熱電素子
ペルチェ素子(Peltier deviceまたはPeltier element)は、熱電(TE)モジュールとしてもまた知られており、加熱ポンプとして機能する、小型の固体の状態の素子である。典型的なペルチェユニットは、厚さが数ミリメートル、縦横が数ミリメートルから数センチメートルの正方形である。これは、2枚のセラミック製のプレートによって形成され、小さなテルル化ビスマス(BiTe)の立方体(カップル)のアレイがその間に差し挟まれている。DC電流を適用すると、熱が、素子の一方から他方へ動き、そこで、その熱は、加熱シンクによって取り出すことができる。「冷たい」側は、マイクロプロセッサまたは光検出器等の電子デバイスを冷却するために使用することができる。電流を逆転させると、素子は、熱が動く方向を変える。ペルチェ素子は、可動部がなく、冷媒を必要とせず、騒音も振動も発生させず、小型であり、寿命が長く、緻密な温度制御が可能である。温度制御は、温度センサーフィードバック(サーミスタまたは固体の状態のセンサー等)と閉ループ制御回路とを使用することによって提供することができ、これは、一般目的のプログラム可能なコンピュータを利用することができる。
【0093】
代替の実施形態では、温度サイクラーは、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロック中で所望の温度プロフィール(規定された時間間隔の間の温度曲線)を得るために、ペルチェ素子である加熱成分に熱的に連結している液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックを含む(図1〜4)。この実施形態では、ペルチェ素子は、得ようとする温度に応じて、温度プロフィールの範囲内で冷却要素または加熱要素として使用される。
【0094】
別の実施形態では、温度サイクラーは、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロック中での要求される温度変化のスピードおよび要求される的確かつ均質な温度分布を得るために、組み合せて使用される電気抵抗加熱器とペルチェ素子とをさらに含んでもよい。
【0095】
一実施形態では、温度サイクラーは、少なくとも1つのペルチェ素子を含有し、これは、液体組成物を含む加熱ブロックの温度を循環させて変化させるために、温度サイクラーの一部を形成する。ペルチェ素子の少なくとも一方の熱伝達表面が、液体金属、加熱ブロックプレートまたは熱分散器の下部表面と大きな面積にわたり熱的に接触しており、他方の熱伝達表面が、熱の消散のための冷却部材と大きな面積にわたり接触している。冷却部材は、アルミニウムまたは銅等の金属であってよい。温度サイクラーは、場合により切り換え可能であることができる、熱の消散のためのファンをさらに含んでもよい。代替の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックと、ペルチェ素子とが合わさって、温度サイクラー本体から取り外すことができる、別のユニット(交換型ブロック)を形成する。交換型ブロックは、ペルチェ素子および/またはファンに連結している加熱シンクをさらに含んでもよい。この交換型ブロックは、修理のため、または異なる機能を有する要素、例として、以前の交換型ブロックとは異なる大きさもしくは形状の試料槽を保持するように設計されたレセプタクルを有する交換型ブロックと取り換えるために、温度サイクラーから取り外すことができる。さらに、技術の進歩に合わせて、交換型ブロックは、新しい温度サイクラー全体を購入せずとも、機能を高めることができる。
【0096】
別の実施形態では、液体組成物を含む加熱ブロックは、前記加熱ブロックの第1側面上で互いに隣接している、複数のペルチェ素子に熱的に連結している。代替の実施形態では、液体組成物を含む加熱ブロック(501;551;571)は、複数のペルチェ素子(503;553;573)に熱的に連結しており、少なくとも1つのペルチェ素子が、前記リザーバの第1側面上に存在し、少なくとも第2のペルチェ素子が、前記リザーバの第2側面上に存在する。一実施形態では、Marlow IndustrriesまたはNextreme Thermal Solutions等の市販の入手可能な供給元からの少なくとも1つのペルチェ素子が、液体組成物を含む加熱ブロックに連結している(Nextreme Thermal Solutions;3040 Cornwallis Road、P.O.Box 13981、Research Triangle Park、ノースカロライナ州、27709−39810)。
【0097】
一実施形態では、ペルチェ素子は、熱力学的な機械的張力ピークから、ばねを利用した中央における固定手段によって保護され、この手段は、ペルチェ素子を加熱ブロックに対して押し付けて保持する。ペルチェ素子は、加熱ブロックと冷却部材との熱伝達表面間に弾性的にクランプで締めることができる。冷却部材の接触表面は、例えば、圧力ばねまたは同様のデバイスによって、ペルチェ素子に対して押し付けることができる。一実施形態では、ばねの張力は、ねじ、ばね座金および玉継ぎ手を介して調整することができ、これによって、冷却部材の自由度がさらに増加する。
【0098】
代替の実施形態では、ペルチェ素子は、もっぱら低温発生(熱除去)要素として使用される。すなわち、ペルチェ素子は、加熱ユニットを冷却するためだけに使用される。これによって、ペルチェ素子の耐用年数が延長されるであろう。
【0099】
別の実施形態では、温度サイクラーは、加熱ブロックの周囲におよび加熱ブロックの外壁の外面に沿って配置された電気抵抗加熱器を組み込むことができる。この実施形態では、ペルチェ素子は、冷却のためのみに使用することができる。このことは、ペルチェ素子を、機械的な温度ストレスから解放し、したがって、温度サイクラーにおけるペルチェ素子の耐用年数を延長するのに寄与する。
【0100】

いくつかの実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、ヒンジで動く蓋等の蓋を場合により包含する温度サイクラーの一部である。種々の実施形態では、蓋は、ブロックに、種々の手段(例えば、クリップ、ばね、ねじ等)によって留めることができる。一実施形態では、蓋は、密閉した試料槽を、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックのレセプタクル中に位置を決めて固定するために閉鎖および押し付けを行うデバイスを含有する。代替の実施形態では、蓋は、試料槽を、蓋が閉じた時に密閉することができる。蓋は、ばねによって保持される圧力プレートを有する場合があり、これは、各試料槽を、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックのレセプタクルのウエル内に規定された力で押し付ける。蓋は、キャップ形状の蓋を有する試料槽を保持するためのくぼみおよび/または試料槽と同軸上で、圧力プレート中にピペット操作のための針を貫通させるための開口部をさらに含んでもよい。ばね要素は、波形の座金を含んでよい。一実施形態では、安全リングが、ヒンジで動く蓋を開けた際に、圧力プレートが落ちるのを阻止する。
【0101】
別の実施形態では、蓋は、加熱要素を含む。代替の実施形態では、温度サイクラーの蓋は、光を検出することができる検出機構を組み込む。この蓋は、加熱要素をさらに含むことができる。PCR等、いくつかの分析の場合には、レセプタクルを、制御温度まで温める必要がある。上昇した温度では、試料槽の内容物が、より大きな速度で蒸発する傾向にある。材料のレセプタクルからの蒸発およびその結果としての損失を減少させるために、材料を、レセプタクルが含有する試料槽中の試料の温度を上回るまで加熱される覆いで覆うことができる。一実施形態では、覆いの温度は、試料槽の温度より少なくとも5℃高い温度まで加熱される。
【0102】
一実施形態では、加熱された蓋は、レセプタクルの上部面積全体を覆う大きさである覆いを含む。蓋は、セラミックス、ガラスまたはシリコンゴム等の硬い、耐熱性の材料で作製された、少なくとも2枚の薄いプレートを有することができる。プレート間に差し挟まれるのは、電気抵抗加熱要素であり、これは、一実施形態では、小さな直径のニクロム線の形態であっても、またはニクロムまたは酸化第一スズ等の抵抗物質をプレートのうちの1枚の上に堆積させることによって形成してもよい。例えば、1フィートあたり12オームの抵抗率を有する36ゲージのニクロム線を使用して、十分な加熱を覆いに提供することができる。加熱要素は、均一な加熱を覆い全体に提供するように、プレート面積全体にわたり蛇行させて構成することができる。プレートを固定するため、およびプレート間の間隙を充填するためにエポキシ等の充填材を使用することができる。
【0103】
関連の実施形態では、加熱要素は、変動し得る電源に接続され、この電源を制御して、覆いを所望の温度まで加熱するための電流を提供することができる。電源と加熱要素との間のリード線は、覆いを制限なく動かすことができるように、柔軟性を有し、リード線中のストレスを避けるように、例えば、自動化された実験室のワークステーション中のロボットによる手段によって構成することができる。温度センサーを覆い上に提供して、温度を測定して、所望の温度を得る目的で電源を制御するためにフィードバックを提供することができる。
【0104】
代替の実施形態では、試料槽の温度が周囲温度を下回る場合には、望ましくは、覆いを、周囲温度を下回るが、物質の蒸気の温度を上回る温度まで冷却することが意図される。こうすることによって、覆いと物質との間で最小の温度差を維持し、それによって、覆いの温度は、レセプタクル中の物質の制御された温度に影響しないであろう。
【0105】
光学的アセンブリ
本発明の種々の態様では、本発明の装置は、反応(例えば、リアルタイムPCR)を含む試料槽中の検出可能な標識を測定する手段を提供するように構成される。本発明の装置の種々の実施形態は、検出のための光学機器と完全に適合し、それによって、迅速な核酸の増幅/検出を行うことができる。PCRまたは関連の過程の間に、均一な温度、迅速な温度および増加したシグナルの反射性を提供することによって、本発明の温度サイクラーは、より正確な増幅、検出および測定を可能にする。したがって、1つの利点は、本発明の温度サイクラーを用いれば、より安価な光学的アセンブリを利用し、それでも、同等に正確なまたはより正確なリアルタイムの測定結果を得ることができる点である。したがって、本発明の温度サイクラーによって、迅速で、正確な、および信頼できるDNAの増幅および検出が、より安価な光学機器および従来の光学的アセンブリを用いて可能となる。
【0106】
光学的な測定装置は、当技術分野において知られている。一般に、測定のための光学機器は、光源を包含し、この光源は、例えば、発光ダイオードによって形成される。光源は、測定する領域(例えば、試料槽/管)に直接向けられる。光源は、評価および測定の回路によって制御され、この回路は、コンピュータに動作可能に連結することができ、このコンピュータは、光学的な測定を制御するために、コンピュータが実行可能なロジックを含有する。測定光学機器は、検出器をさらに包含し、この検出器は、測定する領域全体から光を受け取ることができる。検出器は、評価回路/コンピュータに接続されている。
【0107】
本発明の種々の実施形態において有用な光学的アセンブリは、CCD撮像装置、CMOS撮像装置、線スキャナ、少なくとも1つのフォトダイオード、少なくとも1つのフォトトランジスタ、少なくとも1つの光電子増倍管、少なくとも1つのアバランシェフォトダイオード、マイクロレーザーまたはQスイッチレーザーを有するものを含む。種々の実施形態では、読取り機は、試料管から検出しようとするシグナルに応じて、反射率、送信信号、落射蛍光/蛍光、化学−生物発光、磁気もしくは電流測定を利用する読取り機(または2種以上の組合せ)、PIN型ダイオード、または当技術分野で既知のその他の読取り機であることができる。
【0108】
種々の実施形態では、本発明の光学的アセンブリ中に連結することができる光源は、LED、レーザーダイオード、VCSELレーザー、VECSELレーザー、DPSSレーザー、または大型のレーザーシステム、レーザーダイオードもしくはレーザーランプ等の光源に続いて連結することができる光ファイバー接続を包含する。別の実施形態では、ダイオードは、レーザーダイオードである。レーザーダイオードは、照明のために使用することができ、フォトダイオード検出器は、優れた感度を有し、大部分の材料は、関連するスペクトルの領域では、最小の自己蛍光を有する。Pacific Silicon Sensors(5700 Corsa Avenue、Westlake Village、カリフォルニア州、91362)製のPIN型フォトダイオード等、いずれの従来のLEDまたはフォトダイオードも利用することができる。
【0109】
本発明の種々の実施形態では、光学的アセンブリは、365/460、470/510、530/555、585/610、625/660、680/712nm等の波長において励起(光源)/発光(検出器)を提供するように構成される。さらに、いくつかの実施形態では、種々のフィルターの窓が±5〜20nmにおいて利用される。単一または複数の標識蛍光のための色素に特異的なフィルターを含む、種々の蛍光フィルターのセットが、市販されている(例えば、Omega Filter;Omega Optical,Inc.;またはINTORR)。
【0110】
いくつかの実施形態では、光学的アセンブリは、表1に提供する仕様を有する光源を用いて構成される。
【0111】
【表2】

【0112】
図3は、光学的アセンブリの1つの例を提供し、この場合、PIN型フォトダイオードが、光学的検出器である。例えば、蛍光を検出するための光学的アセンブリは、光を提供する光源603を含み、光は、励起フィルター605を通過した後、二色性反射体/ミラー611によって試料槽内へ導かれ、対物レンズ609を通ると、このレンズが光線を試料槽中に集める。同一のレンズが、試料の構成成分(例えば、SYBR GreenまたはCy5;本明細書に開示する挿入色素)によって発生した蛍光を収集し、試料の構成成分からの発光が、二色性フィルター611を通過した後、ろ過フィルター613、焦点レンズ615を通って上昇して戻り、検出器モジュールであるPIN型フォトダイオード617中に入る。出力は、デジタル化されて、電子的にグラフとして表示されるか、紙上に表示または記録される619。さらに、落射蛍光の使用は、大きさの制約がなく、したがって、ある開口数の非球面レンズまたは球型レンズを収集光学機器として使用することができるという追加の利点が得られる。
【0113】
さらなる実施形態では、追加の励起フィルターを、スペクトルの状態の調節を向上させるために、位置させることができる。一実施形態では、光源は、Cree XLampであり、光学的検出器は、T5および/またはT18のPIN型ダイオードである。
【0114】
一実施形態では、光学的アセンブリは、試料槽の同一の部分(例えば、キャップ)を通して、光を放出および検出する。別の実施形態では、光学的アセンブリの光源は、試料槽の1つの部分から光を(例えば、PCR反応中に)放出し、一方、発光は、試料槽の別の部分から検出される(例えば、光源が下部にあり、検出器が上部にある場合、またはその逆の場合)。
【0115】
一実施形態では、読取り機は、蛍光シグナルを検出するLED読取り機である。蛍光シグナルは、光学スペクトルの領域中で、かつシグナルの吸収ピークの範囲内で発光する発光ダイオードによって励起される(例えば、蛍光標識)。放出された蛍光シグナルは、フォトダイオードによって検出される。さらに、検出されるシグナルの波長は、散在する放出光を遮断して、蛍光放出標識の発光のピーク発光波長以上の波長を有する光を送信するロングパスフィルターを使用して制限することができる。その他の実施形態では、ロングパスフィルターは、バンドパスフィルターで置き換えることができる。さらに、励起光を、バンドパスフィルターによって制限することもできる。
【0116】
いくつかの実施形態では、励起源と検出器とは、試料管中で発生した蛍光シグナルの読取りを簡素化するために、(温度サイクラーの本体等の)単一の機械中に搭載され、ブロックに成型される(例えば、図1〜2)。
【0117】
例えば、Cy5は、非常に高い減衰係数を有する、よく知られている赤色に発光するフルオロフォアである。そのようなフルオロフォアの通常の形態は、Cy5.5のN−ヒドロキシスクシンイミドのエステルまたは関連の色素を包含する。これらの色素は、インドジカルボシアニン色素であり、通常、フローサイトメトリーおよび自動化された蛍光による配列決定装置において使用され、Amersham(Pittsburg、ペンシルベニア州)から入手できる。Cy5は、オリゴヌクレオチドへの直接的な、自動化された取込みのために、アミダイトとして市販されている。一実施形態では、Cy5で標識した試料が、本発明の装置を利用して処理される。例えば、計測手段のための光学的成分を選択する場合には、スペクトルの赤色/赤外領域で作業するのが好都合である。
【0118】
別の例では、PCR増幅のリアルタイム測定を、SYBR Greenを利用して行うことができる。しかし、所望により、いくつかの実施形態では、当技術分野において既知であるか、または本明細書に開示する種々の標識/色素のうちの任意のものを、本発明の温度サイクラーにおいて利用することができることに留意されたい(例えば、SYBR Green、Q−dot等)。
【0119】
本発明の種々の実施形態では、本発明のサイクラーを含むシステムは、一連の光検出器をさらに含み、各光検出器が、出力シグナルを提供する。また、このシステムは、少なくとも1つの光源も含む。光源は、放出光が、マルチウエルプレート(305;405)中に保持されるかもしくはそうでなければそれによって提供される、対応するウエル、または一連の試料槽を通過して、対応する光検出器または一連の光検出器に達するように、位置付けられる。また、このシステムは、複数の光検出器からの出力シグナルを分析するために、プロセッサまたはその他の手段も包含する。代替の実施形態では、本発明の装置は、システム上の大型の一体化された光源と検出光学機器とを必要とする高価な蛍光色素または色素マーカーを利用する必要性を取り除く。例えば、一体型のリアルタイムPCRシステムは、90,000ドルかかる場合があり(Applied Biosystems ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System)、それに対して、非リアルタイムPCRシステムは、7,500ドルである(GeneAmp 9700)。両方のシステムが、96ウエルプレートに対してPCR増幅を実施するが、GeneAmp 9700は、DNA濃度の測定のためには、別の分光光度計または蛍光ウエルプレート読取り機を必要とする。
【0120】
LEDまたはレーザーダイオードのフットプリントは、非常に小さいので、非常にわずかな間隔をあけるだけでよい、単一のパッケージまたはいくつかのパッケージのLED/レーザーに、異なる波長の複数のLEDまたはレーザーを一体化して、1個のウエル/試料管を励起させることができるであろう。
【0121】
いくつかの実施形態では、LEDは、実際には、異なる波長を有するいくつかのLEDであるが、非常にわずかな間隔をあけてある。したがって、さらなる実施形態では、検出器も、同様に構成される。
【0122】
いくつかの実施形態では、本発明の光学機器の構成のための光源は、LEDまたはレーザーダイオードであることができる。その他の光源も利用することができる。さらに、各ウエルに付随して使用される光源の数は変化してよい。本発明の装置を使用する、1つの非限定的な例では、LEDが活性化されて、第1の波長または第1のセットの波長の光を放出し、これが、試料中の色素または標識を励起させて、シグナルを放出させる。シグナルは、適切な光検出器によって検出され、次いでまたは同時的に、第2のLEDが活性化されて、第1のLEDとは異なる波長またはセットの波長を放出する。この光が、試料中の異なる色素または標識を励起させて、シグナルを放出させ、このシグナルは、適切な光検出器によって検出される。第2のLEDが、非活性化され、次いでまたは同時的に、第3のLEDが活性化される。第3のLEDは、第1のLEDおよび第2のLEDとは異なる波長またはセットの波長を放出する。この光が、試料中の異なる色素または標識を励起させて、シグナルを放出させ、このシグナルは、適切な光検出器によって検出される。これらの測定は、非常に迅速に実施され、コンピュータが作り出す表示によって処理される。一連の非常にわずかな間隔をあけた光源は、記載するように、光を順を追って放出するように構成することができる。
【0123】
その他の実施形態では、異なる光源が、光学的アセンブリ中に構成され、光学的検出器を使用して個別に検出され、検出は同時に行われる。
【0124】
一実施形態では、本発明の装置は、光源および光検出器のアレイを用いて構成される。光源のアレイは、適切な基板または取り付け成分の上に配置されて、典型的には格子のパターンである、特定の構成に配置された、複数の光源を包含することを理解されたい。ウエルのアレイは、複数の試料ウエルを含み(図1、2)、これもまた、適切な保持基板の上または内部に支持されて、位置付けられている。光検出器のアレイは、試料槽のアレイ(305;405)から、試料槽キャップ(303;403)を通して等、放出された光を受けるために同様に搭載および配置された、複数の光検出器を包含する(図3)。
【0125】
いくつかの実施形態では、複数の列に配置されているうちのある列の試料にわたって、対応する数の検出器を伴って、(同一または複数の異なる波長の)複数の別々の光源を含むレールシステムを構成することができる。例えば、光源および対応する検出器の数は、おそらく複数の波長の8個の別々の光源であることができ、これらの光源は、8個の異なる検出器によって検出され、これらの検出器はそれぞれ、励起された試料から放出された複数の波長を検出できるように設定されている。したがって、レールシステムを動作して、試料槽の連続する列を反応測定しながら、前後に動かすことができる。種々の市販の入手可能なフィルターを、本明細書における上記の記載に従って利用することができる。一実施形態では、検出器は、射出成型によって安価に作製された光学機器を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、より高出力のLEDを使用することができる。また、アバランシェフォトダイオード、例えば、SiC、GaN、GaAsもしくはSi、または青色増強(blue enhance)Siフォトダイオードも使用することができる。アバランシェフォトダイオードの感度は、シグナルがアバランシェ過程によって増幅されるので、単純なフォトダイオードよりはるかに高い。アバランシェフォトダイオードは、典型的には、10と10000との間の増幅率を有し、このことは、シグナルが10から10000倍増幅されることを意味する。また、ロックイン増幅器のような改良された測定技法の使用によって、測定のダイナミックレンジを拡大することもできる。
【0127】
そのような光を放出させる目的で、光源、特に、LEDを使用するPCRシステムの一実施形態は、新しい可能性および適用例を提供する。一実施形態では、意図されるLED光源は、GaNに基づく紫外線LEDである。別の実施形態では、光源は、cree xlamp 750mwatt ultra bright LEDである。一実施形態では、単一波長の発光が利用される。所望の波長を選択して光を集めるために、追加の回折格子も、フィルターも、複雑な光学機器も必要としない。このことは、実験設定を顕著に簡素化し、アセンブリのコストを低減する。別の利点は、LEDの低コストである。半導体LEDは、大量生産して、極めて安価に作製することができる。現在のGaNに基づく紫色、青色および緑色のLEDのコストは、素子1パッケージあたり約10から50セントであり、同様な価格範囲が、将来の大量生産されるGaNに基づくLEDについても期待される。複数の波長のLEDは、LEDチップのハイブリッドとして一体化することもでき、または発光を2つ以上の波長間で切り換えることができる、特殊なLEDとして開発することもできるであろう。
【0128】
さらに別の利点は、LEDの高出力に関する。10mWの範囲のLEDの高い出力のレベルが、近い将来、実現可能である。さらに、LEDの典型的なフットプリントは、200μm×200μmであり、このことは、光の強度を、より小さな面積に集中させることができ、光を集中させるために必要となる追加の光学機器(例えば、レンズ)の量が減少することを意味する。これは、各プレートに多数のウエル(48、96、384または1536個のウエル)を有する高スループットPCRシステムの場合、従って、より少数のウエルの場合も、かなりの利点となる。48、96または384個のウエルの場合であっても、ウエルの寸法は、いくつかのLEDがウエルプレート中の単一のウエルの領域内に納まるのに十分に大きい。
【0129】
さらに、別の利点は、LEDアレイに関する。複数のLEDは、一次元または二次元のLEDアレイにもまた配置することができる。これによって、複数のウエル中の蛍光の同時測定が可能になる。大量の並列処理により、測定時間が顕著に短縮され、処理能力が加速される。このことは、PCRシステムの動作においては、特に、ウエルプレートの密度がより高くなる傾向にある中、顕著なコスト/時間の要因であり得る。
【0130】
さらに、LEDの別の利点は、これらの光源は、パルス化させることができる点である。退色したり、またはDNA分子が加熱したりするのを避けるために、短いが強いパルスを、LEDによって発生させることができる。LEDの設計、大きさおよびパッケージングに応じて、LEDは、非常に短い時間のスケール(約1ナノ秒から100ナノ秒)でスイッチを入れたり、切ったりすることができる。また、LEDのパルスは、光検出器の読出しと、一般的なロックインの技法を使用して同調させて、より良好なシグナル対ノイズの比およびより高い感度の範囲を達成することもできる。その上、LEDは、安定な光出力を達成する前のウォームアップ時間を何ら必要としない。これは、安定した動作に達する前に少なくとも数分のウォームアップ時間を必要とする重水素ランプおよびキセノンランプとは対照的である。
【0131】
LED発光源を使用するさらに別の利点は、そのような成分の比較的長い動作寿命である。LEDの動作寿命は、10,000時間以上にまで及び得ると考えられている。これらの光源を使用することによって、大部分のシステムにおいてLEDの交換が排除されるであろう。
【0132】
一実施形態では、蛍光検出を用いてポリメラーゼ連鎖反応アッセイを実施する方法が提供される。この方法は、マルチウエルプレートと、温度サイクラーと、出力シグナルを提供する光検出器と、光がマルチウエルプレートを通過して光検出器に達するように位置付けられた少なくとも1つの光源と、光検出器の出力シグナルを分析する手段とを包含するシステムを提供するステップを含む。また、この方法は、ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを実施しようとする試料を得るステップも含む。さらに、この方法は、試料をマルチウエルプレート中に置くステップも含む。さらに、この方法は、試料中でポリメラーゼ連鎖反応を実施するステップも含む。この方法は、光が試料を通過して光検出器に達するように、光源から光を放出させるステップを包含する。さらに、この方法は、光検出器の出力を分析して、放出された蛍光の吸光度およびポリメラーゼ連鎖反応の指標となる情報を決定するステップも含む。
【0133】
別の実施形態では、液体組成物を含む加熱ブロックを含む温度サイクラー中でPCRを実施した後に試料によって放出された蛍光は、大まかな検出を使用して検出される。ある実施形態では、大まかな検出は、増幅産物またはアンプリコンの量を定量化せず、その代わり、前記増幅産物の有無を検出するに過ぎない。大まかな検出は、フィルターおよび/またはプラスチック製のレンズはほとんどまたは全くなしで、安価な光学機器または検出器を使用して実施することができる。一実施形態では、フォトダイオードまたはLEDの検出器のみが使用される。別の実施形態では、蛍光は、時間分解蛍光(TRF)等のフィルターのないシステムを使用して検出される。一態様では、光源(LEDまたはレーザーダイオード)を切っても、蛍光分子は、短い間ではあるが、測定可能な時間にわたり光を放出し続ける。この放出された光は、LED/レーザーの光をフィルターで除去する必要なしに測定することができる。
【0134】
さらに別の実施形態では、検出システムは、FRETに基づいたプローブと共に使用される。ある実施形態では、検出システムは、2つの異なる波長を、ほぼ同時に検出することができる。FRETプローブの場合、2つのフルオロフォアが、プローブ上に位置する。プローブを含む試料は、単一の励起光源で刺激される。光源の波長は、第1のフルオロフォアを刺激し、これが光を放出し、この光の大部分は、第2の隣接したフルオロフォアによって吸収される。第2のフルオロフォアは、第1のフルオロファとは異なる波長で光を放出する。次いで、これらのシグナルの両方が検出される。
【0135】
現在の典型的な実施形態のさらに別の態様によれば、ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを実施する方法が提供される。この方法は、以下のように、光を使用することに基づく。この方法は、(i)複数の試料を保持するためのマルチウエルプレートと、(ii)温度サイクラーと、(iii)出力シグナルを提供する光検出器と、(iv)放出された光がマルチウエルプレートを通過して光検出器に達するように位置付けられた複数の光源と、(v)紫外線光を検出して、光検出器の出力シグナルを分析するための手段とを包含するシステムを提供するステップを包含する。また、この方法は、ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを実施しようとする試料を得るステップも含む。この方法は、試料をマルチウエルプレート中に置くステップもさらに含む。また、この方法は、試料中でポリメラーゼ連鎖反応を実施するステップも含む。この方法は、光が試料を通過して光検出器に達するように、複数の光源から光を放出させるステップもさらに含む。また、この方法は、光検出器の出力シグナルを分析するステップも包含する。
【0136】
種々の実施形態では、LEDのスイッチの入/切の時間は、典型的には、約数ナノ秒または数十ナノ秒である。その他の実施形態では、レーザーダイオードは、ナノ秒より短い(sub nanosecond)スイッチ時間を有し、さらより迅速である。
【0137】
代替の実施形態では、フルオロフォアおよび関連の検出光源およびそうでなければ要求される光学機器を必要としない、PCRシステムおよび関連のアッセイおよび技法が提供される。例えば、LEDは、260nm LEDおよび280nm LEDを含有することができるであろう。吸光度測定を実施するために、最初に、260nm LEDのスイッチを入れ、260nmで吸収された光を、光検出器で検出するであろう。260nm LEDのスイッチを切り、次いで、280nmのスイッチを入れ、280nmで吸収された光を、光検出器で検出するであろう。これらの測定は、何ら、試料を物理的に動かす必要がないので、連続して、非常に素早く実施することができるであろう。LEDのスイッチは、非常に素早く入れたり、切ったりすることができる。したがって、1つの代替形態では、光学的な構成は、多くのリアルタイムPCRシステムで利用される蛍光プライマーおよびTaqmanプローブのコストを低減させることができる。
【0138】
一実施形態では、260nmおよび280nmの波長の光を放出する、安価な紫外線LEDのアレイが、液体の媒体(例えば、液体金属または熱的な流体)と(直接的/間接的に)熱的に接触しているウエルプレートのフォーマットを有するPCRシステム中に組み込まれる。発光体および検出器のアレイは、例えば、図3中の試料槽(305;405)のように、温度サイクラーの液体組成物の加熱ブロック中の試料槽の配列に対応することができる構成を有する。したがって、LED等の複数の紫外線発光ユニットは、複数のウエルに対して位置付けられ(図1)、それによって、各LEDから放出された光が、対応するウエル(およびその中に含有される試料)を通って移動して、対応する光受容器または光検出器によって受け取られる。光学フィルターを使用して、光検出器の入力時もしくはLED/レーザーの出力時のいずれか、または両方に置いて、何らかの望まれない光(例えば、波長の中心ピーク以外のLEDから放出された光)を抑制してもよい(図3)。例えば、LEDは、時々、LEDの活性領域中の欠陥による再結合、またはLEDの活性領域外の担体の再結合から、より長い波長におけるルミネセンスを示す。この望まれないルミネセンスは、典型的には、主要なルミネセンスのピークより、3から4桁小さい。にもかかわらず、このルミネセンスを、光学的なバンドパスフィルターを使用することによって、その上さらに抑制するのが望ましい場合がある。
【0139】
種々の実施形態では、当技術分野で既知の光学的アセンブリのシステムを、本発明の温度サイクラーと共に使用するために構成することができる。そのような光学的アセンブリおよび反応産物を検出するのに有用な試薬の例が、米国特許出願第2006/0134644号、第2006/0014200号、第2005/0255516号、第2005/0237524号、第2005/0136448号、第2004/0133724号、第2003/0059822号、第2002/0034746号、ならびに米国特許第7101509号、第6942971号、第6940598号、第6911327号、第6783934号、第6713297号、第6403037号、第6369893号、第7122799号、第7113624号、第6037130号、第5792610号、第5440388号、第6873417号、第6998598号、第6437345号、第53011059号および第6388799号に記載されており、これらはそれぞれ、その全開示が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0140】
制御アセンブリ
種々の実施形態では、制御アセンブリは、本発明の温度サイクラーに動作可能に連結している。そのような制御アセンブリは、例えば、本発明の装置、方法および/またはシステムの何らかの態様を動作させるために機能する、コンピュータが実行可能なロジックを含むプログラム可能なコンピュータを含む。例えば、制御アセンブリは、モーター、ファン、加熱成分、撹拌棒、連続フロー装置および光学的アセンブリのスイッチを入れたり/切ったりすることができる。制御アセンブリは、自動的に、試料を処理する、複数のPCRサイクルを運転する、測定値を得る、測定値をデータにデジタル化する、データをチャート/グラフおよび報告書に変換するようにプログラムすることができる。
【0141】
計測手段を制御する、シグナルを記録する、シグナルまたはデータを処理および分析するためのコンピュータは、パーソナルコンピュータ(PC)、デジタルコンピュータ、マイクロプロセッサに基づくコンピュータ、ポータブルコンピュータまたはその他の型の処理装置のうちの任意のものであることができる。一般に、コンピュータは、中央演算処理装置、情報およびプログラムを、コンピュータが読取り可能な記憶媒体を使用して記録することおよび読み取ることができる保存または記憶装置、有線通信装置または無線通信装置等の通信端末、ディスプレイ末端等の出力装置、ならびにキーボード等の入力装置を含む。ディスプレイ端末は、タッチスクリーンディスプレイであることができ、この場合には、これは、表示装置および入力装置の両方として機能することができる。異なるおよび/または追加の入力装置、例として、マウスまたはジョイスティック等の指示装置が存在することもでき、異なるまたは追加の出力装置、例として、信号表示機器、例えば、スピーカー、第2のディスプレイまたはプリンターが存在することもできる。コンピュータは、例えば、Windows(登録商標)またはMacOSまたはUnix(登録商標)またはLinuxのいくつかのバージョンのうちのいずれか1つ等、多様なオペレーティングシステムのうちのいずれか1つを実行することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、制御アセンブリは、必要なプログラムを実行して、反応槽から検出および測定されたシグナルをデジタル化し、データを読取り可能な形態(例えば、表、チャート、格子、グラフまたは当技術分野で既知のその他の出力)に処理する。そのような形態は、電子的に表示または記録するか、紙の形態で提供することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、制御アセンブリは、本発明の温度サイクラーのサイクル温度を調整/制御するように、温度要素に連結している回路を制御する。
【0144】
さらなる実施形態では、制御アセンブリは、光学的アセンブリの試料採取ストローブを発生させ、その速度は自動的に運転されるようにプログラムされる。もちろん、そのようなタイミングが、光源を光らせ、シグナル(例えば、蛍光)を検出および測定するための検出器を動作させるために調整可能であることは明らかであろう。
【0145】
別の実施形態では、制御アセンブリを含む装置が、試料槽を、液体組成物を含む加熱ブロックのレセプタクル中のウエル等の開口部内に動かすための手段をさらに含む。ある実施形態では、前記手段は、モーター、滑車、クランプおよび試料槽を動かすために必要なその他の構造を含むロボットによるシステムであることができるであろう。
【0146】
試料調製ステーション。本発明のいくつかの態様では、本発明の装置/システムが、ロボットによる試料調製および/または試料処理のユニットに動作可能に連結している。例えば、制御アセンブリは、自動的に、試料を収集する、試薬を収集管に添加する、核酸を前記管から処理/抽出する、場合により試料を新しい管に移動させる、その後の反応(例えば、PCRまたは配列決定)のために必要な試薬を添加する、ならびに本明細書に記載する温度サイクラーに試料を移動させるためのプログラムを提供することができる。種々の実施形態では、試料調製は、本明細書に記載する連続フローPCRシステム(図11)、または非連続式システム(図1、5)において行うことができる。
【0147】
PCRを実施する方法
液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックを含む温度サイクラーは、とりわけ、疾患の診断、薬物スクリーニング、個人の遺伝子型同定、系統学的な分類、環境監視、親子鑑定および法鑑定のために使用することができる。さらに、核酸を、実験のために何らの供給源から、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックを使用して得ることができる。例えば、試験試料は、生物学的なおよび/または環境からの試料であることができる。生物学的試料は、ヒト、その他の動物、または植物、体液、固形組織試料、組織培養物もしくはそれに由来する細胞およびその子孫、これらの供給源のうちの任意のものから調製した切片もしくは塗抹、または標的核酸を含有することが疑われる、任意のその他の試料に由来することができる。典型的な生物学的試料は、これらに限定されないが、血液、尿、脊髄液、脳脊髄液、滑液、アンモニア性液、精液および唾液を含む、体液である。その他の型の生物学的試料は、食品の生産物および材料、例として、野菜、乳製品、肉、肉の副産物および廃棄物を包含することができる。環境からの試料は、これらに限定されないが、土壌、水、下水、化粧品試料、農業試料、工業試料、エアフィルターからの試料および空調からの試料を含む、環境物質に由来する。
【0148】
液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックを含む温度サイクラーは、温度サイクルまたは均一なある温度を正確に維持することができる加熱ブロックのいずれかを必要とする、いずれのプロトコールまたは実験においても使用することができる。例えば、前記温度サイクラーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、核酸配列決定、リガーゼ連鎖ポリメラーゼ連鎖反応(LCR−PCR)、逆転写PCR反応(RT−PCR)、一塩基伸長反応(SBE)、多重一塩基伸長反応(MSBE)、逆転写および核酸連結のために使用することができる。
【0149】
本発明の装置は、PCRを、特に、リアルタイムPCRの状況で、より速いスピードおよびより高い特異性で実施することを可能にする。液体金属等の高い熱伝導率を有する組成物の使用は、温度の立ち上げ(上昇および下降の両方)を、従来のPCRよりも、さらにより迅速に実施することを可能にする。これは、PCRを行う潜在的なスピードを速めるのみならず、プライマーの非特異的なハイブリダイゼーションの発生率を減少させることによってPCRの特異性もまた高める。さらに、リアルタイムPCRの状況では、試験レセプタクルの個別の部分、例として、上部からのシグナルの測定は、試料槽を加熱成分から測定のために取り外す必要性を取り除く。また、これは、温度制御を保存し、加熱サイクルを用いたリアルタイムの測定を行うことを可能にする。シグナルが前記の別の場所以外から漏れるのを阻止する反射性材料の使用により、より多くの光を測定のために収集することができるので、感度のより低い検出器を使用することが可能になる。
【0150】
PCR反応の条件は、典型的には、2工程または3工程のいずれかのサイクルを含む。2工程サイクルは、変性工程と、それに続くハイブリダイゼーション/伸長工程とを有する。3工程サイクルは、変性工程と、それに続くハイブリダイゼーション工程であって、この間にプライマーがDNA鎖にハイブリダイズする工程と、それに続く別の伸長工程とを含む。ポリメラーゼ反応は、プライマーが、標的配列にハイブリダイズして、ポリメラーゼによって伸長される条件下でインキュベートされる。増幅反応サイクルの条件は、プライマーが、標的配列に特異的にハイブリダイズして、伸長されるように選択される。
【0151】
良好なPCRによる増幅には、高い収率、高い選択性、および各工程における制御された反応速度が要求される。収率、選択性および反応速度は、一般に、温度によって決まり、最適温度は、ポリヌクレオチドの組成および長さ、酵素、ならびに反応系のその他の成分によって決まる。さらに、異なる温度が、異なる工程での最適温度である場合がある。最適な反応条件は、標的配列およびプライマーの組成に応じて変化することができる。温度サイクラーを、維持しようとする温度、各サイクルの持続時間、サイクルの数、温度変化の速度およびその他を選択することによってプログラムすることができる。
【0152】
増幅反応のためのプライマーは、既知のアルゴリズムに従って設計することができる。例えば、市販または特注のソフトウエア中で実行されるアルゴリズムを使用して、所望の標的配列を増幅するためにプライマーを設計することができる。典型的には、プライマーの長さは、少なくとも12個の塩基、より頻繁には、15、18もしくは20個の塩基の範囲であることができるが、最長50個+の塩基に及ぶ場合もある。プライマーは、典型的には、特定の反応に関与するプライマーの全てが、少なくとも5℃以内で、より典型的には2℃以内で相互に異なる融解温度を有するように設計される。プライマーは、さらに、それ自体上へのまたはプライマー間でのプライミングを避けるように設計される。プライマーの濃度は、増幅された配列の分量を正確に評価できるように、増幅される標的配列の量に結合するのに十分である必要がある。当業者であれば、プライマー濃度は、プライマーの結合親和性および結合するはずの配列の分量に従って変化することを認識するであろう。典型的なプライマーの濃度は、0.01μMから0.5μMまでの範囲であろう。
【0153】
一実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックを、PCRのために、温度サイクラーの一部または単一の温度を維持するために使用される加熱ブロックのいずれかとして使用することができる。典型的なPCRサイクルでは、DNAポリヌクレオチドおよびPCR反応のカクテルを含む試料を、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロック中で、約90〜98℃で10〜90秒間処理することによって変性させる。次いで、変性したポリヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドのプライマーと、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロック中で、約30〜65℃の温度で1〜2分間処理することによってハイブリダイズさせる。次いで、鎖の伸長を、オリゴヌクレオチドのプライマーにアニールしたポリヌクレオチド上でのDNAポリメラーゼの作用によって起こす。この反応は、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロック中で、約70〜75℃の温度で30秒から5分かけて起こす。これらに限定されないが、最初のDNAポリヌクレオチドの量、所望の産物の長さおよびプライマーの厳密度を含む変数に応じて、任意の所望の数のPCRサイクルを行うことができる。
【0154】
別の実施形態では、PCRサイクルは、94℃の温度で約1分にわたるDNAポリヌクレオチドの変性を含む。オリゴヌクレオチドの変性ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは、約37〜65℃の温度で約1分かけて起こす。ポリメラーゼ反応は、約72℃で約1分かけて行われる。全ての反応が、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロック中のレセプタクルのウエル内に挿入された、マルチウエルプレート中で行われる。約30PCRサイクルが行われる。上記の温度範囲およびその他の数には、本発明の範囲を限定する意図はない。これらの範囲は、酵素の種類、容器またはプレートの型、生物学的試料の種類、試料の大きさ等のその他の要因に依存する。当業者であれば、温度、持続時間およびサイクルの数は、必要に応じて容易に改変することができることを認識するであろう。
【0155】
逆転写PCR
逆転写PCRは、オリゴdTプライマーまたはランダムオリゴマー(ランダムなヘキサマーもしくはオクタマー等)を使用して、mRNAがcDNAに逆転写酵素(モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)転写酵素、またはそれらの変異体等)によってコピーされる過程を指す。リアルタイムPCRでは、典型的には、エンドグリコシダーゼH(endo H)活性を有する逆転写酵素が使用される。これは、DNAの第2の鎖が形成されるのを可能にするmRNAを除去する。逆転写は、典型的には、PCR前の単一工程として起こす。一実施形態では、RT反応は、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロック中で、RNA試料、逆転写酵素、必要な緩衝液および成分を、約37℃で約1時間インキュベートし、その後、約45℃で約15分インキュベートし、さらに、約95℃でインキュベートすることによって実施される。次いで、cDNA産物を、取り出し、PCRのための鋳型として使用する。代替の実施形態では、RT工程の後に、例えば、1工程PCRプロトコールにおけるPCR工程が続く。この実施形態では、反応成分の全てが、RT工程およびPCR工程のために試料槽中に存在する。しかし、DNAポリメラーゼの活性は、95℃で5〜10分にわたる長期間のインキュベーションによって活性化されるまで遮断されている。一実施形態では、DNAポリメラーゼの活性は、95℃でのインキュベーション工程の間に恒久的に不活性化される阻止抗体の存在によって遮断されている。
【0156】
リアルタイムPCR
分子生物学においては、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QRT−PCR)または動態学的ポリメラーゼ連鎖反応とも呼ばれ、所与のDNA分子の特異的な部分を同時に定量かつ増幅するために使用される。これは、特異的な配列が、試料中に存在するか否かを、さらに、特異的な配列が存在する場合には、試料中のコピー数を決定するために使用される。これは、それ自体がポリメラーゼ連鎖反応の改変形態である、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)のリアルタイムの変形形態である。
【0157】
手順は、ポリメラーゼ連鎖反応の一般的なパターンに従うが、DNAが、増幅のラウンドの度に定量化され、この点が、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応が「リアルタイム」たる所以である。一実施形態では、DNAは、二本鎖DNAにインターカレートする蛍光色素の使用によって定量化される。代替の実施形態では、相補的なDNAとハイブリダイズすると蛍光を発する、改変されたDNAオリゴヌクレオチドプローブを使用して、DNAを定量化する。
【0158】
別の実施形態では、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応と組み合せて、存在量の低いメッセンジャーRNA(mRNA)を定量化して、研究者が特定の時期における、または特定の細胞型もしくは組織型中での相対的な遺伝子発現を定量化するのを可能にする。
【0159】
特定の実施形態では、増幅産物は、DNA結合蛍光色素等の検出可能な標識を用いて可視化される。一実施形態では、増幅産物は、これらに限定されないが、SYBR green、SYBR blue、DAPI、ヨウ化プロピジウム、Hoeste、SYBR gold、臭化エチジウム、アクリジン、プロフラビン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、蛍光クマリン、エリプチシン、ダウノマイシン、クロロキン、ジスタマイシンD、クロモマイシン、ホミジウム、ミトラマイシン、ルテニウム、ポリピリジル、アントラマイシンを含む、挿入色素を使用して定量化される。例えば、SYBR green等のDNA結合色素は、全ての二本鎖(ds)DNAに結合するので、蛍光強度の増加を測定し、したがって、初期の濃度を決定することができる。標準的なPCRカクテルを通常通り調製した後、蛍光dsDNA色素を添加して、試料に添加する。次いで、反応を、液体の加熱ブロックの温度サイクラー中で実行し、各サイクル後に、蛍光のレベルを、カメラを用いて測定する。色素は、dsDNA(すなわち、PCR産物)に結合すると、さらにより強力に蛍光を発する。二本鎖DNA分子内にインターカレートした色素の量は、典型的には、増幅DNA産物の量に比例するので、インターカレートした色素の蛍光を、本発明の光学的システムまたはその他の当技術分野の適切な計器を使用して定量化することによって好都合に決定することができる。標準的な希釈を参照して、PCR中のdsDNAの濃度を決定することができる。いくつかの実施形態では、対象とする配列に関して得られた結果を、アクチン、GAPDHまたは18sのrRNA等の安定に発現する遺伝子(「ハウスキーピング遺伝子」)に対して規準化することができる。
【0160】
種々の実施形態では、標識/色素は、本発明のシステムまたは装置によって検出される。「標識」または「色素」という用語は、視覚的なまたは計測器による手段によって検出可能なシグナルを発生させることができる、任意の物質を指す。本発明における使用に適した種々の標識は、シグナルを化学的手段または物理的手段のいずれかによって発生させる標識を包含し、例として、蛍光色素、発色団、電気化学的な部分、酵素、放射活性を有する部分、リン光を発する基、蛍光を発する部分、化学発光する部分または量子ドットを包含する。より具体的には、放射標識、フルオロフォア標識、量子ドット標識、発色団標識、酵素標識、親和性リガンド標識、電磁スピン、重元素標識、ナノ粒子光散乱標識もしくはその他のナノ粒子で標識したプローブ、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、TRITC、ローダミン、テトラメチルローダミン、R−フィコエリトリン、Cy−3、Cy−5、Cy−7、Texas Red、Phar−Red、アロフィコシアニン(APC)、Taqmanプローブ、TaqMan Tamaraプローブ、TaqMan MGBプローブもしくはLionプローブ(Biotools)等のプローブ、Sybr Green I、Sybr Green II、Sybr gold、CellTracker Green、7−AAD、エチジウムホモダイマーI、エチジウムホモダイマーII、エチジウムホモダイマーIIIもしくは臭化エチジウム等の蛍光色素、FLAGエピトープもしくはHAエピトープ等のエピトープタグ、およびアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、I−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼもしくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素タグ、ジゴキシゲニンもしくはジニトロフェニル等のハプテン複合体、またはストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビオチンのような複合体もしくは例えば、ウサギIgGと抗ウサギIgGを含む抗原/抗体複合体等の複合体を形成することができる結合対のメンバー;フルオロフォア、例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、緑色蛍光タンパク質、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、Cascade Blue、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、フィコエリトリン、ユーロピウムおよびテルビウムを包含するもの等の蛍光ランタノイド複合体、Cy3、Cy5、分子ビーコンおよびそれらの蛍光誘導体、ルミノール等のルミネセンス材料;金粒子もしくは銀粒子もしくは量子ドット等の光散乱材料もしくはプラズモン共鳴材料;14C、123I、124I、125I、131I、Tc99m、35SもしくはHを含む放射活性を有する材料;または球面シェル、ならびに当業者に知られている、任意のその他のシグナル発生標識で標識したプローブが挙げられる。例えば、検出可能な分子は、これらに限定されないが、フルオロフォアならびに例えば、Principles of Fluorescence Spectroscopy、Joseph R.Lakowicz(編集)、Plenum Pub Corp、2nd edition(July 1999)およびthe 6th Edition of the Molecular Probes Handbook、Richard P.Hoagland著に記載されている当技術分野で知られているその他のものを包含する。
【0161】
本発明の装置を使用して検出される挿入色素は、これらに限定されないが、フェナントリジンおよびアクリジン(例えば、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、ヨウ化ヘキシジウム、ジヒドロエチジウム、エチジウムホモダイマー−1および−2、エチジウムモノアジド、ならびにACMA);インドールおよびイミダゾール等のいくつかのマイナーグルーブ結合体(例えば、Hoechst 33258、Hoechst 33342、Hoechst 34580およびDAPI);ならびにアクリジンオレンジ(インターカレートすることもまた可能である)、7−AAD、アクチノマイシンD、LDS751およびヒドロキシスチルバミジン等の多岐にわたる核酸染色剤を包含する。上記の核酸染色剤の全てが、Molecular Probes,Inc.等の供給業者から市販され入手可能である。
【0162】
核酸染色剤のさらにその他の例は、Molecular Probes製の以下の色素を包含する:シアニン色素、例として、SYTOX Blue、SYTOX Green、SYTOX Orange、POPO−1、POPO−3、YOYO−1、YOYO−3、TOTO−1、TOTO−3、JOJO−1、LOLO−1、BOBO−1、BOBO−3、PO−PRO−1、PO−PRO−3、BO−PRO−1、BO−PRO−3、TO−PRO−1、TO−PRO−3、TO−PRO−5、JO−PRO−1、LO−PRO−1、YO−PRO−1、YO−PRO−3、PicoGreen、OliGreen、RiboGreen、SYBR Gold、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR DX、SYTO−40、−41、−42、−43、−44、−45(青色)、SYTO−13、−16、−24、−21、−23、−12、−11、−20、−22、−15、−14、−25(緑色)、SYTO−81、−80、−82、−83、−84、−85(橙色)、SYTO−64、−17、−59、−61、−62、−60、−63(赤色)。その他の検出可能なマーカーは、化学発光分子および色素産生性分子、光学的または電子密度によるマーカー等を包含する。
【0163】
特定の実施形態では、上記で注目したように、標識は、米国特許第6207392号に記載されている量子ドット(すなわち、Qdot)等の半導体ナノ結晶を含む。Qdotは、Quantum Dot Corporationから市販され入手可能である。本発明を実行するにあたって有用な半導体ナノ結晶は、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSeおよびHgTeならびにそれらの混合組成物等の第II〜VI族の半導体;さらに、GaAs、InGaAs、InPおよびInAsならびにそれらの混合組成物等の第III〜V族の半導体を包含する。また、ゲルマニウムもしくはケイ素等の第IV族の半導体の使用、または有機半導体の使用も、特定の条件下では実現可能な場合がある。また、半導体ナノ結晶は、上記の第III〜V族の化合物、第II〜VI族の化合物、第IV族の元素およびそれらの組合せからなる群から選択された2種以上の半導体を含む合金も包含することができる。
【0164】
種々の種類のDNA結合蛍光色素に加えて、配列特異的プローブ等のその他のルミネセンス標識も、増幅反応において利用して、増幅産物の検出および定量化を促進することができる。プローブに基づく定量的増幅は、所望の増幅産物の配列特異的な検出を利用する。これは、色素に基づく定量化の方法とは異なり、ルミネセンスを発する、標的に特異的なプローブ(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ)を利用し、その結果、特異性および感度が増加する。プローブに基づく定量的増幅を実施するための方法は、当技術分野において十分に確立されており、米国特許第5210015号に教示されている。
【0165】
別の実施形態では、蛍光オリゴヌクレオチドプローブが、DNAを定量化するために使用される。塩基に連結しているかまたは末端に連結している蛍光とクエンチャーとを含有する蛍光オリゴヌクレオチド(プライマーまたはプローブ)が、当技術分野ではよく知られている。これらは、例えば、Life Technologies(Gaithersburg、メリーランド州)、Sigma−Genosys(The Woodlands、テキサス州)、Genset Corp.(La Jolla、カリフォルニア州)、またはSynthetic Genetics(San Diego、カリフォルニア州)から得ることができる。塩基に連結する蛍光は、塩基に連結している反応性の基を用いて合成するオリゴヌクレオチドの合成後に修飾することによって、オリゴヌクレオチド中に組み込まれる。当業者であれば、Molecular Probes、Eugene、オレゴン州等の市販の供給元からのものを含む、多数の異なるフルオロフォアが利用可能であることを認識するであろうし、その他のフルオロフォアも、当業者に知られている。有用なフルオロフォアは、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、カルボキシテトラクロロフルオレセイン(TET)、NHS−フルオレセイン、5および/または6−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−または6−)ヨードアセトアミドフルオレセイン、5−{[2(および3)−5−(アセチルメルカプト)−スクシニル]アミノ}フルオレセイン(SAMSA−フルオレセイン)、ならびにその他のフルオレセイン誘導体、ローダミン、リサミンローダミンBスルホニルクロライド、Texas redスルホニルクロライド、5および/または6カルボキシローダミン(ROX)、ならびにその他のローダミン誘導体、クマリン、7−アミノ−メチル−クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、ならびにその他のクマリン誘導体、BODIPY(商標)フルオロフォア、Cascade Blue(商標)フルオロフォア、例として8−メトキシピレン−1,3,6−三スルホン酸三ナトリウム塩、Lucifer yellowフルオロファア、例として、3,6−ジスルホネート−4−アミノ−ナフタルイミド、フィコビリタンパク質誘導体、Alexa蛍光色素(Molecular Probes、Eugene、オレゴン州から入手可能)、さらに、当業者に知られているその他のフルオロフォアを包含する。有用なフルオロフォアの一般的な一覧表については、Hermanson,G.T.、BIOCONJUGATE TECHNIQUES(Academic Press、San Diego、1996)もまた参照されたい。
【0166】
蛍光レポータープローブを使用する実施形態は、正確かつ信頼できる結果をもたらす。配列特異的なRNAまたはDNAに基づくプローブは、全ての二本鎖DNAではなく、プローブ配列を特異的に定量化するために使用される。これはまた、異なる色に発色する標識を有する特異的なプローブを使用することによって、同一の反応中のいくつかの遺伝子に関する多重アッセイも可能にする。
【0167】
一実施形態では、PCRは、液体組成物を含む、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックを含む温度サイクラー中で行われる。ある実施形態では、温度サイクラーは、光学的アセンブリもさらに含む。別の実施形態では、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、試料槽内に含有される試料の温度を急速かつ均一に調節して、増幅産物のリアルタイムでの検出を可能にする。別の実施形態では、検出は、挿入色素等の非特異的核酸標識を介し、この場合のシグナル指数、または特異的な増幅産物によって発生する陽性の蛍光強度シグナルは、PCR対照試料によって発生する蛍光強度の少なくとも3倍、例として、約3.5、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5または11倍である。ある実施形態では、温度サイクラーは、試料温度を、1秒あたり10℃超、例として、1秒あたり10.5℃ずつ調節することができる。
【0168】
一実施形態では、蛍光レポーターとクエンチャーとを隣接した位置に保持する、RNAに基づくプローブが使用される。レポーターがクエンチャーに近接していると、レポーターの蛍光が阻止され、蛍光が検出されるのは、プローブが分解されてからに限られる。この過程は、PCR反応カクテル中で使用されるポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性に依存する。
【0169】
典型的には、反応を通常通りに調製し、配列特異的標識されたプローブを添加して、反応を開始する。DNAが変性すると、標識されたプローブが、鋳型DNAの対象とする領域中のそれに相補的な配列に結合することができる。PCR反応が、適切な伸長温度まで、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックによって加熱されると、ポリメラーゼが活性化されて、DNAの伸長が進行する。重合が続くと、重合は、DNAの相補的な配列に結合している標識されたプローブに達する。ポリメラーゼが、RNAプローブを別々のヌクレオチドに分解し、蛍光レポーターをクエンチャーから分離する。この結果、光学的アセンブリによって検出される蛍光が増加する。PCRが進行するにつれて、蛍光レポーターが、そのクエンチャーからますます遊離し、その結果、蛍光の十分に規定された幾何学的な増加を得る。これによって、最終および初期のDNAの分量を正確に決定することができる。
【0170】
診断における使用
種々の適用例では、本発明の装置は、感染性物質または病原性物質の検出等、in vitroでの診断のために使用することができる。一実施形態では、PCRが、種々のそのような物質を検出するために、本発明の装置を使用して実施される。それらの物質は、任意の病原体であることができ、これらに限定されないが、細菌、酵母、真菌、ウイルス、真核細胞の寄生体等;インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、A、B、C、D、E型等の肝炎ウイルス、HIV、エンテロウイルス、パピローマウイルス、コクサッキーウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはエプスタイン・バーウイルスを含む感染性物質;マイコバクテリウム属、連鎖球菌属、サルモネラ属、赤痢菌属、ブドウ球菌属、ナイセリア属、シュードモナス属、クロストリジウム属または大腸菌を含む細菌を包含する。当業者には、何らかの感染性物質を検出するための使用に向けて、本発明の装置へのPCR、配列決定反応および関連の過程の適合が容易であることが明らかであろう。
【0171】
本発明の装置の1つの利点は、極めて迅速なPCRを実施する能力にあり、これによって、診断が、比較的短い期間で行われる。いくつかの適用例(例えば、生物学的脅威をもたらす物質の検出、手術中の診断試験)では、迅速なPCRは、好都合である。迅速なリアルタイムPCRのための1つの重要な要件は、迅速な加熱、冷却および熱伝達を可能にする温度サイクラー、ならびに迅速なPCRに伴う短いサイクル時間に適合したシグナル発生システムである。本明細書に記載したように、本発明の温度サイクラーは、迅速な冷却(例えば、5〜17℃/秒)および迅速な加熱(例えば、10〜44℃/秒)を提供することができる。例えば、本発明の装置は、所望により、約2秒という短いサイクル時間を提供することができる。
【0172】
さらに、そのような極めて迅速なPCRの過程は、本発明の装置を当技術分野で既知の試薬と結び付けることによって実施して、増幅および検出可能なシグナルを発生させるのに必要な時間の両方において、より迅速な結果を促進することができる。そのような試薬は、米国特許出願第2005/0164219号に開示されているもの等、当技術分野で知られており、我々が使用した、これらの試薬のうちの1つが、KOD等のより迅速なポリメラーゼである。
【0173】
例えば、特殊化した標識プライマーは、即時にシグナルを発生することができる。(2005/0164219)。前回のサイクルで伸長される反応は、内部の再構成を受け、伸長温度に達するとすぐに、シグナルが発生する。緩慢なサイクル条件を有する標準的なPCR反応では、このシグナル発生の差は、重要ではない。しかし、迅速なPCRにおいて、伸長時間が短縮されると、この特色が、利点となり、迅速なPCRをもたらす。本発明の装置を用いると、単一コピーの細菌の配列を、15分未満で検出することができる。1つの例が、低いレベルのバチルス属の菌種の、Scorpionsプライマーおよび迅速なPCR機械を使用した迅速な検出である。さらに、入力したDNAの量に応じて、感染性物質を、10分未満で検出することもでき、低いレベルでさえ、14分未満で検出することもできるであろう。
【実施例1】
【0174】
ステンレス鋼製PCR試料槽
ステンレス鋼製のPCR反応試料槽が、その中でポリメラーゼ連鎖反応を遂行するのに適切な槽であることが実証されている。最初の試験のために使用する槽を、ステンレス鋼製の管から製造し、最終的な外径は、0.061インチであった。2インチの長さの試料槽の一端を、ステンレス鋼製の圧入プラグを用いて閉鎖した。
【0175】
SYBR Green挿入色素を指示薬として使用するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応のための、同一の20μLの調製物を、市販のガラス製PCR毛細管および上記の金属製試料槽の両方の中に置いた。次いで、各槽において、20μLの鉱油を上部流体層として浮かべることによって、試薬を外部の空気から密閉した。これらの槽を一緒にして、市販のリアルタイムPCR機械中で、40サイクルにわたり温度サイクルを行い、その後、金属製試料槽の内容物を、市販のガラス製PCR毛細管に移した。融解曲線を、両方の試料から求めたところ、結果は、PCRが、ガラス製および金属製の両方の槽中で、良好に進行したことを指し示している、図12。
【実施例2】
【0176】
リアルタイムPCR
液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックは、リアルタイムPCR反応に非常に適している。これは、液体金属または熱伝導性の流体の迅速な温度の立ち上げ、温度の均一性および反射性による。
【0177】
PCR反応成分を試料槽中に置き、溢流または相互汚染を阻止するために槽を密閉することによって、試料槽を調製する。反応成分は、緩衝液、標的核酸、適切なプライマーおよびプローブ、ヌクレオチド、ポリメラーゼ、ならびに場合によっては追加の成分を包含する。一実施形態では、4種の蛍光プローブを包含し、それぞれが、異なる標的配列を検出するように適合され、特定の反応槽は、蛍光プローブのうちの1種または複数を包含してよい。各プローブは、異なる入射波長の光に対して好都合に応答して、異なる波長の光を放出する。
【0178】
検出モジュールを、加熱ブロックの上に搭載する。検出モジュールは、4つの検出チャネルを包含する。各チャネルを、試料槽中に包含されている蛍光プローブのうちの異なる1種に対して最適化する。試料槽を、加熱ブロックのレセプタクルのウエル内に置く。蓋アセンブリを閉じて、加熱ブロックの上に位置付ける。
【0179】
検出モジュールの各チャネルを較正する。較正は、ステッピングモーターを動作して、検出モジュールをそのチャネルのうちの少なくとも1つが較正地点と光学的に通信状態にあるように位置付けることによって実施する。各較正地点は、既知の蛍光応答を提供する。したがって、較正の測定値を使用して、その後の試料の測定値を、検出器の応答の変動または上下について修正することができる。多数の較正技法が、当技術分野において知られている。複数のチャネルを有する検出モジュールを使用する場合には、各チャネルを独立に較正することができる。
【0180】
PCRサイクルを実施する。温度サイクラーが、液体金属または熱伝導性の流体の加熱ブロックを制御して、試料槽の温度を調整し、それによって、試料槽を所望の温度に所望の長さの時間にわたり保持して、2工程または3工程のPCRサイクルを完了させる。光学的アセンブリが、試料槽を走査して、反応測定する。各チャネルのためのLEDまたはその他の光源(レーザー等)を作動させて(短い間点灯させて)、蛍光を刺激する。一実施形態では、異なるチャネルのLEDを、併行して動作する。ある代替の実施形態では、1つのチャネルからの反射LED光が、別のチャネルの光検出器中で誤ったシグナルを発生させるのを避けるように、順を追って動作する。光学的アセンブリの動作は、外部コンピュータまたは温度サイクラー内に設けられた制御器によって制御することができる。測定を温度サイクラーの動作と同調させ、それによって、測定値をPCR過程の特定の時期に対応させて特定することができる。別の実施形態では、温度サイクラーの制御成分は、場合により温度サイクラーにつながっているかまたは1つもしくは複数の加熱シンクに連結している、1つまたは複数のファンのスイッチを自動的に入れたり、切ったりすることができる。
【0181】
発生した蛍光を、チャネルの対応するフォトダイオードまたはその他の検出器によって検出し、検出器を、外部コンピュータによって読み出す。検出器は、種々の方法によって読み出すことができる。例えば、ピークシグナルを検出してもよく、シグナルを、ある時間間隔にわたり統合してもよく、またはLEDの作動が停止されてからの蛍光シグナルの減衰を測定してもよい。
【0182】
これらの工程を、毎回検出モジュールの位置を変化させて繰り返して、検出モジュールのそれぞれのチャネルが、最終的には、試料槽のそれぞれを反応測定するようにする。一実施形態では、96個の試料ウエルのそれぞれについて、4つのチャネルを走査および反応測定するのに、約15秒を要する。外部コンピュータは、測定データが収集されるにつれて、それらをグラフおよび/または表の形態で使用者が眺めることを可能にするプログラムを実行することができる。
【0183】
過程からのリアルタイムの蛍光測定値を、各標的配列の存在を検出および定量化するために使用する。また、そのような測定値は、反応速度を決定する、および効率を向上させるために反応のパラメータを調整する、さらには特定の実験においては追加の反応サイクルがもはや必要でない時点(例えば、十分な分量の標的配列が産生された時点)を決定する等の目的で使用することもできる。
【0184】
過程は、説明のためのものであること、ならびに変形形態および改変形態が可能であることが理解されるであろう。順を追う工程として記載した工程は、併行して実行してよく、工程の順番は変化してよく、工程を改変または組み合せてもよい。例えば、蛍光測定は、PCRサイクルの間であれば、いずれの点で実施してもよいし、各PCRサイクルの間に複数回実施してもよく(試料ウエルを実質的に連続的に走査することを包含する)、または数回のPCRサイクル後まで実施しなくてもよい。任意の数の区別できる蛍光プローブを、単一の反応槽中で使用することができ、検出モジュールは、使用するプローブの数と少なくとも同じ数のチャネルを包含するようにすることができる。いくつかの実施形態では、検出モジュールは、同一のプローブに対して最適化された複数のチャネルを包含する。これによって、これらのチャネルのうちの1つのみが、特定の試料ウエルを反応測定するために使用する必要があるに過ぎないことから、走査時間を短縮させることができる。
【0185】
本発明の好ましい実施形態を、本明細書において、示して説明してきたが、そのような実施形態は、説明のために限って提供されていることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多数の変形形態、変更形態および置換形態が、今般当業者には思い浮かぶであろう。本明細書に記載した本発明の実施形態に対する種々の代替形態を、本発明を実行するにあたって活用することができることを理解されたい。添付の特許請求の範囲が、本発明の範囲を定義し、この特許請求の範囲およびその等価物に属する方法および構造がこれに包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCRを実施する方法であって:
a)PCRを試料槽中で実施し、PCRの経過を指し示すシグナルを試料槽中で発生させるステップであって、実質的に全ての前記シグナルが、反射して前記試料槽中に戻り、実質的に全てのシグナルが前記試料槽の別の場所から検出されるステップ;および
b)試料槽の別の場所から放出されたシグナルを測定するステップ;
を含む方法。
【請求項2】
シグナルを、複数のPCRサイクルにわたりリアルタイムで測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料槽が、シグナルを透過する壁を含み、壁の少なくとも一部が、液体組成物に当たった実質的に全てのシグナルを反射する液体組成物中に浸漬されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
液体組成物が、金属または金属合金を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
シグナルが、標識または色素によって発生する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記試料槽が、前記試料槽中の実質的に全ての前記シグナルを反射する材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料槽が、金属からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試料槽が、反射性材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記試料槽が、前記液体組成物からレセプタクルによって分離されている、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
PCRを実施する方法であって:
a)反応混合物中の標的ヌクレオチド配列のPCRを、
(i)プライマー伸長と二本鎖解離の間およびプライマーアニーリングとプライマー伸長の間の温度変化の速度が、1秒あたり10.5℃超であり、
(ii)前記PCRが、0.5℃未満の試料槽内の温度の変動を含む試料槽を含む、加熱ブロック中で遂行される
条件下で実施するステップ;ならびに
b)標的ヌクレオチド配列の増幅をリアルタイムでモニターするステップ;
を含む方法。
【請求項11】
前記加熱ブロックが、液体組成物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱ブロック中の2つ以上のウエル間で測定した場合、0.5℃未満の温度の変動をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記の温度の変動が、前記加熱ブロック中の2つ以上のウエル間で測定した場合、0.01℃である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱ブロックが、交換型ブロックである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
温度変化の速度が、
(1)反応混合物を含有する試料槽を、少なくとも0.1W/MKの熱伝達係数を有する液体組成物と熱的に接触させること(ここで、液体組成物の温度が、反応混合物の温度を制御する)
によって生じる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
液体組成物の運動を引き起こすことによって、温度の均一性を維持するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
PCRを実施する方法であって:試料温度を1秒あたり5℃超ずつ調節する温度サイクラー中でPCRを遂行するステップを含み;前記の温度サイクラーの温度が、液密に密閉されている加熱ブロック中の液体組成物によって調整され;前記液体組成物は、少なくとも0.1W/MKの熱伝達係数を含む方法。
【請求項18】
前記温度サイクラーが、1秒あたり少なくとも約10℃の立ち上げ速度を提供する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記温度サイクラーが、少なくとも約0.01から0.1℃のウエル間および試料の温度均一性を提供する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記加熱ブロックが、前記加熱ブロック中の2つ以上のウエル間で測定した場合、0.01℃の温度の変動を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記液体組成物が、加熱ブロック内に含有される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱ブロックが、交換型ブロックである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
PCRを実施する方法であって、増幅を少なくとも3のシグナル指数でリアルタイムで検出することができるように、試料温度を十分に調節する温度サイクラー中で、PCRを遂行するステップを含み、前記検出は、非特異的な核酸標識を介し、前記温度サイクラーは、試料温度を1秒あたり10℃超調節する方法。
【請求項24】
リアルタイムPCRを実施するための方法であって:
a)反応混合物中の標的ヌクレオチド配列のPCR反応を、反応混合物中での、プライマー伸長と二本鎖解離の間およびプライマーアニーリングとプライマー伸長の間の温度変化の速度が、1秒あたり少なくとも15℃である条件下で実施するステップであって、前記PCR反応が、少なくとも0.1W/mKの熱伝達係数を有する液体組成物と熱的に接触しているステップ;ならびに
b)PCRを、リアルタイムでモニターするステップ;
を含む方法。
【請求項25】
モニターするステップが:
a)PCRを試料槽中で実施し、PCRの経過を指し示すシグナルを試料槽中で発生させるステップであって、シグナルは、試料槽の実質的に別の場所から放出されるステップ;および
b)試料槽の別の場所から放出されたシグナルを測定するステップ;
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項26】
反応混合物中の温度上昇の速度が、1秒あたり少なくとも40°である、請求項に記載の方法。
【請求項27】
前記温度変化が、ペルチェ素子によって調整される、請求項に記載の方法。
【請求項28】
リアルタイムPCRを実施するための方法であって:
a)PCR反応混合物の温度を、二本鎖の解離、プライマーアニーリングおよびプライマー伸長のための温度間で、複数のサイクルにわたりサイクルさせるステップであって、各サイクルは、5秒以下であり;前記温度は、温度サイクラー中に密閉されている液体組成物によって調節されるステップ;
b)試料槽中のPCRの経過を、複数のサイクルにわたりリアルタイムでモニターするステップ;
を含む方法。
【請求項29】
ステップ(a)の前に、
1)PCR反応混合物を含有する試料槽の閉鎖端部を、60℃超で液体であり、かつ少なくとも0.1ワット/メートル−ケルビン度の熱伝達係数を有する液体組成物と熱的に接触させるステップであってそれによって、液体組成物の温度が、PCR反応混合物の温度を制御するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
液体組成物が、試料槽内部の実質的に全ての光を反射する、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
モニターするステップが、試料槽の上部または下部から放出されたシグナルを測定することによって実施される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
各サイクルが、3秒以下である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記試料槽が、反射性表面を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記試料槽が、キャップでさらに覆われる、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記キャップが前記液体組成物から熱を吸収すること、または前記キャップを前記液体組成物が冷却することができる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
リアルタイムPCRを遂行するための方法であって、PCR試料槽と熱的に接触している液体組成物を含む温度サイクラーを提供するステップであって;前記液体組成物は、温度を調節し、したがって、試料槽中の反応温度を調整し、ここで、検出可能なシグナルが、前記試料槽から放出されるステップと;前記シグナルを、発光体および光学的検出器を含む光学的アセンブリを介して検出するステップと含む方法。
【請求項37】
前記光学的アセンブリが、ピン型フォトダイオードCCD撮像装置、CMOS撮像装置、線スキャナ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオードを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記試料槽が、キャップでさらに覆われる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記キャップが前記液体組成物から熱を吸収すること、または前記キャップを前記液体組成物が冷却することができる、請求項39に記載の方法。
【請求項40】
a)60℃超で液体であり、かつ少なくとも0.1ワット/メートル−ケルビン度の熱伝導率を有する液体組成物を含有する容器を含む温度制御アセンブリであって、前記容器は、少なくとも1つの開口部を有し、各開口部が、試料槽の閉鎖端部を受けるように適合され、ここで、開口部内に受けられた試料槽は、液体組成物と熱的に接触しており、それによって、液体組成物の温度が、試料槽中の液体試料の温度を制御し、かつここで、液体組成物は、試料槽内部の実質的に全ての光を反射することができる温度制御アセンブリ;
b)試料槽内部の前記光を、前記試料槽上の別の場所から検出することができる光学的アセンブリ;ならびに
c)液体組成物の温度および光学的アセンブリの動作を制御する制御アセンブリ;
を含む装置。
【請求項41】
液体組成物が、ガリウム、ガリウム−インジウム合金、またはガリウム、インジウム、ロジウム、銀、亜鉛、スズもしくは第一スズを含む合金を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
温度制御器が、ペルチェ素子を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項43】
温度制御器が、液体組成物と熱的に接触している抵抗線を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項44】
温度制御器が、PCRに適した、二本鎖の解離、プライマーアニーリングおよびプライマー伸長のための温度間で、液体組成物の温度をサイクルさせるための手段を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項45】
温度サイクラーが、液体組成物中に流れを循環させるための手段をさらに含む、請求項40に記載の装置。
【請求項46】
光学的アセンブリが、発光体および光学的検出器を含む、請求項40に記載の装置。
【請求項47】
試薬を試料槽に添加するための手段を含む試料調製ステーション
をさらに含む、請求項40に記載の装置。
【請求項48】
試料槽を開口部内に動かすための手段をさらに含む、請求項40に記載の装置。
【請求項49】
温度サイクラー、光学的アセンブリおよび試料調製ステーションを制御するデジタルコンピュータをさらに含む、請求項47に記載の装置。
【請求項50】
リアルタイムPCRを実施するためのシステムであって:
a)液体組成物、および試料槽を係合して前記槽を組成物と熱的に接触させるための手段を含む温度サイクラー;ならびに
b)発光体と、光を係合試料槽内に導いて係合試料槽から放出された光を検出する光学的検出器とを含む光学的アセンブリ;
を含むシステム。
【請求項51】
前記液体組成物が、金属または金属合金を含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記液体組成物が、ガリウムを含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項53】
放出された前記シグナルが、前記試料槽の取り外し可能なキャップからである、請求項50に記載のシステム。
【請求項54】
前記液体組成物が、前記試料槽からレセプタクルによって分離されている、請求項50に記載のシステム。
【請求項55】
前記レセプタクルが、透明または半透明である、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
ペルチェ素子を含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項57】
前記温度サイクラーが、ファンおよび撹拌棒に動作可能に接続しているモーターをさらに含む、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記のファンおよび撹拌棒が、前記モーターに同軸上で接続している、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記温度サイクラーが、前記液体組成物の温度調整のための抵抗線をさらに含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項60】
前記液体組成物が、閉鎖バリア中に密閉され、前記バリアは、その中に前記試料槽が置かれるレセプタクルを有する表面を含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項61】
前記液体組成物が、前記試料槽と直接接触する、請求項50に記載のシステム。
【請求項62】
前記光学的アセンブリが、PIN型フォトダイオード、CCD撮像装置、CMOS撮像装置、線スキャナ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオードを含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項63】
a)加熱シンク;
b)加熱シンクと熱的に接触している加熱成分;
c)上部表面および下部表面を有する壁を含むバリアであって、下部表面は前記加熱成分に対して密閉され、密閉されたバリアおよび前記加熱成分は液体組成物を含有する容器を形成するバリア;
d)バリアの上部表面に対して密閉され、複数のウエルを含む第1ピースであって、ウエルは容器内に延ぶ第1ピース;
e)それぞれが開口端部を有する、複数の試料槽を含む第2ピースであって、試料槽はウエル内に取り外し可能に挿入される第2ピース;
f)複数の突出部を含む第3ピースであって、突出部は試料槽の開口端部内に取り外し可能に挿入される第3ピース;
を含む装置。
【請求項64】
前記液体組成物が、60℃超で液体であり、かつ少なくとも0.1M/W/Kの熱伝達係数を有する金属を含む、請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記液体金属が、体積を約0.1から6.0%増加させることができる、請求項63に記載の装置。
【請求項66】
前記の可能な温度上昇が、10.5℃/秒超である、請求項63に記載の装置。
【請求項67】
e)中の前記ウエルが、柔軟性を有するように適合し、その結果、前記ウエルは、f)中の前記試料槽と熱的または光学的な接触を形成することができる、請求項63に記載の装置。
【請求項68】
前記適合が、前記ウエルにおける幾何学的な形状および/または変形可能な材料を利用することを含む、請求項67に記載の装置。
【請求項69】
前記の幾何学的な形状が、多角形、楕円形または円形である、請求項68に記載の装置。
【請求項70】
前記ウエルが、前記液体組成物中に、初期レベルまで浸漬される、請求項63に記載の装置。
【請求項71】
前記突出部が、前記初期レベルの上まで、前記初期レベルまで、または前記初期レベルの下まで延びる、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記第3ピースが前記液体組成物から熱を吸収すること、または前記第3ピースを前記液体組成物が冷却することができる、請求項63に記載の装置。
【請求項73】
第1ピースのウエルが透明かつ柔軟であり、第2ピースの試料槽が透明であり、それによって、前記ウエル上の増加した圧力が、前記容器中の前記液体を、前記試料槽中の試料と熱的および光学的に接触させる、請求項63に記載の装置。
【請求項74】
第3ピースの突出部が、透明である、請求項63に記載の装置。
【請求項75】
バリアが、熱分散器および第1ピースのそれぞれに対して、ガスケットを介して密閉される、請求項63に記載の装置。
【請求項76】
前記の第1ピースまたは第2ピースが、反射性表面を含む、請求項61に記載の装置。
【請求項77】
バリアが、熱分散器および第1ピースのそれぞれに対して、留め具で密閉される、請求項63に記載の装置。
【請求項78】
前記加熱成分と接触している熱分散器をさらに含む、請求項63に記載の装置。
【請求項79】
前記加熱成分が、ペルチェ素子、ワイヤー素子、またはその組合せである、請求項63に記載の装置。
【請求項80】
第2加熱成分をさらに含み、前記バリアが、前記加熱成分と前記第2加熱成分との間に配置される、請求項63に記載の装置。
【請求項81】
前記の複数のウエルが、4、8、16、32、48、96、196、384または1536個のウエルを含む、請求項63または69に記載の装置。
【請求項82】
ファンと撹拌棒とをさらに含み、前記のファンおよび撹拌棒は、場合により、単一のモーターに動作可能に接続している、請求項63または69に記載の装置。
【請求項83】
電池によって電力供給される、請求項82に記載の装置。
【請求項84】
前記ファンが、前記装置に動作可能に接続している制御器成分によって、自動的にスイッチが入ったり、切れたりする、請求項82に記載の装置。
【請求項85】
金属製熱分散器をさらに含む、請求項63に記載の装置。
【請求項86】
前記分散器が、銅を含む、請求項85に記載の装置。
【請求項87】
前記加熱成分が、勾配PCRのために構成される、請求項63に記載の装置。
【請求項88】
試料調製モジュールと;前記試料中の温度を調節するための液体組成物を含む温度サイクラーと;前記試料からの放出シグナルを検出するための光学的アセンブリとを含む、連続フローPCRシステム。
【請求項89】
試料採取器と廃棄物回収部とをさらに含む、請求項88に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−537152(P2009−537152A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511244(P2009−511244)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/069197
【国際公開番号】WO2008/070198
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(506321458)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (5)
【Fターム(参考)】