説明

温度センサ

【目的】 金属チューブ内にサーミスタ素子を収納した温度センサにおいて、更なる応答性の向上を図る。
【構成】 先端側が閉塞した筒状の金属チューブ3の内部に、サーミスタ素子2が接続されたシース部材8を収納した温度センサ1であって、金属チューブ3は、先端側に位置し、全体がシース部材8の外径よりも小さい内径の小径部33と、小径部33の後端側に位置し、小径部33の外径よりも大径の大径部36と備え、サーミスタ焼結体21は小径部33に収納されると共に、サーミスタ焼結体21の後端面よりも先端側であって、サーミスタ焼結体21の先端と金属チューブ3の内壁先端との間には、セメント10が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物などの半導体からなるサーミスタ焼結体や金属抵抗体等の感温部を有する感温素子を、有底筒状の金属チューブの内部に収納してなる温度センサに関する。更に詳しくは、自動車の排気ガス浄化装置の触媒コンバータ内部や排気管内等といった被測定流体(例えば、排気ガス)が流通する流通路内に感温素子を配置して、被測定流体の温度検出を行う温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の排気ガス浄化装置の触媒コンバータ内部や排気管内等といった排気ガス流路を流れる排気ガスの温度を、感温素子であるサーミスタ素子によって検出する、いわゆる排気温センサが知られている。この種の温度センサとしては、サーミスタ素子の電極線と接続される金属芯線をシースパイプ内に絶縁保持してなるシース部材を、有底筒状の金属チューブ内に挿入しつつ、サーミスタ素子を金属チューブの先端側内部に配置させた構造の温度センサが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このような温度センサでは、排気ガスの熱が金属チューブによって受熱され、その後、金属チューブからサーミスタ素子へと熱が伝達されることによって、温度の検出が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−162051号公報(図1)
【特許文献2】特開2002−350241号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような温度センサにおいては、応答性の更なる向上(高応答化)が要望されている。しかしながら、上記特許文献1に示された温度センサでは、金属チューブとサーミスタ素子との間に空隙が存在しているため、この空隙によって金属チューブからサーミスタ素子への熱の伝達が妨げられてしまう。このため、このような構造を有した温度センサでは、応答性の更なる向上を図ることが困難であった。
【0005】
一方、上記特許文献2に示された温度センサでは、金属チューブの内壁側面とサーミスタ素子の側面とがガラス層を介して互いに接しているため、上記特許文献1に示された温度センサよりも高応答性は期待できる。しかしながら、上記特許文献2に示された温度センサでは、金属チューブの内壁先端とサーミスタ素子の先端との間に空隙が存在しているため、金属チューブの先端側からの受熱に対しては、上記特許文献1の場合と同様、空隙によって金属チューブからサーミスタ素子への熱の伝達が妨げられてしまう。このため、このような構造を有した温度センサにおいても、応答性の更なる向上を図ることが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、更なる高応答化を実現することができる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その解決手段は、先端側が閉塞した軸線方向に延びる筒状の金属チューブと、上記金属チューブの内部に収納され、温度によって電気的特性が変化する感温部とこれに設けられ上記金属チューブの後端側に延びる一対の電極線とを有した感温素子と、上記金属チューブの内部に収納され、上記感温素子の上記一対の電極線と接続される一対の金属芯線をシースパイプ内に絶縁保持してなるシース部材と、を備える温度センサであって、上記金属チューブは、先端側に位置し、全体が上記シース部材の外径よりも小さい内径の小径部と、上記小径部の後端側に位置し、上記小径部の外径よりも大径の大径部とを備え、上記感温部は上記小径部に収納されると共に、少なくとも上記感温部の先端と上記金属チューブの内壁先端との間には絶縁部材が充填されている温度センサである。
【0008】
本発明の温度センサでは、感温部の先端と金属チューブの内壁先端との間に絶縁部材が充填されている。このように、感温部の先端と金属チューブの内壁先端との間に絶縁部材が充填され、感温部の先端と金属チューブの内壁先端とが絶縁部材を介して互いに接している構成とすることで、金属チューブの先端に伝わった排気ガス等の熱が金属チューブから感温部まで速やかに伝達される。従って、応答性の良い温度センサとすることができる。
【0009】
また、本発明の温度センサでは、金属チューブが、先端側に位置し全体がシース部材の外径よりも小さい内径の小径部と、小径部の後端側に位置し小径部の外径よりも大径の大径部とを備え、感温部は小径部に収納される構成となっている。このように、金属チューブの小径部に感温部を収納することで、感温部と金属チューブとの間の距離が短くなり、金属チューブから感温部まで熱を速やかに伝達することができるようになる。更に、金属チューブに小径部を設けることで、この部分の熱容積が小さくなり、応答性を向上させることができる。
【0010】
また、上記の温度センサであって、前記感温部の先端と前記金属チューブの内壁先端との最大距離Hは、2.0mm以下である温度センサとすると良い。
【0011】
応答性を向上させるためには、金属チューブのできるだけ先端側に感温部を配置すると良い。そこで、本発明の温度センサでは、感温部の先端と金属チューブの内壁先端との最大距離Hを2.0mm以下としている。このように、最大距離Hを2.0mm以下とすることで、感温部の先端と金属チューブの内壁先端との間の距離が短くなり、金属チューブの先端に伝わった熱を金属チューブから感温部まで速やかに伝達することが可能となる。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0012】
更に、上記何れかの温度センサであって、前記感温部と前記金属チューブとの最短距離Lが0≦L≦0.3mmであり、且つ、前記小径部の外径が3.5mm以下である温度センサとすると良い。
【0013】
応答性を向上させるためには、感温部と金属チューブとの距離を極力近づけると共に、小径部の容積を小さくすれば良い。そこで、本発明の温度センサでは、感温部と金属チューブとの最短距離Lを0≦L≦0.3mmとし、且つ、小径部の外径を3.5mm以下としている。このように、感温部と金属チューブとの最短距離Lを0≦L≦0.3mmとすることで、感温部と金属チューブとの間の距離が短くなり、金属チューブに伝わった熱を金属チューブから感温部まで速やかに伝達することが可能となる。また、小径部の外径を3.5mm以下とすることで、感温部が収納される小径部の熱容量を小さくすることができる。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0014】
更に、上記何れかの温度センサであって、前記絶縁部材の平均充填率は、75%以上である温度センサとすると良い。
【0015】
本発明の温度センサでは、絶縁部材の平均充填率が75%以上となっている。このため、絶縁部材の構造が密な構造となり絶縁部材の熱伝導性を高めることができ、金属チューブに伝わった熱を金属チューブから感温部まで速やかに伝達することが可能となる。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0016】
更に、上記何れかの温度センサであって、前記絶縁部材の熱伝導率は、1.2W/m・K以上である温度センサとすると良い。
【0017】
本発明の温度センサでは、絶縁部材の熱伝導率が1.2W/m・K以上となっている。このように、1.2W/m・K以上の熱伝導率を有した絶縁部材を用いることで、絶縁部材の熱伝導性を高めることができ、金属チューブに伝わった熱を金属チューブから感温部まで速やかに伝達することが可能となる。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0018】
更に、上記何れかの温度センサであって、前記絶縁部材は、アルミナを主成分とする材料である温度センサとすると良い。
【0019】
感温部と金属チューブとの間に充填される絶縁部材としては、高温においても優れた絶縁性を有する共に、優れた熱伝導性を備えた材料であることが好ましい。そこで、本発明の温度センサでは、絶縁部材をアルミナを主成分とする材料としている。アルミナは、高温において化学的に安定しており、高温において優れた電気絶縁性を有すると共に、優れた熱伝導性を有した材料である。従って、このアルミナを絶縁部材に適用することで、耐久性及び応答性の良い温度センサとすることができる。
【0020】
更に、上記何れかの温度センサであって、前記絶縁部材は、少なくとも前記金属チューブの先端から前記感温部の後端までの空間全体に充填されている温度センサとすると良い。
【0021】
本発明の温度センサでは、金属チューブの先端から感温部の後端までの空間全体に絶縁部材が充填されている。このように、感温部と金属チューブとの間に、絶縁部材が隙間なく充填されるため、金属チューブの先端や小径部の側面に伝わった熱を金属チューブから感温部まで速やかに伝達することが可能となる。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0022】
更に、上記何れかの温度センサであって、前記絶縁部材は、少なくとも前記小径部全体に充填されている温度センサとすると良い。
【0023】
本発明の温度センサでは、金属チューブの小径部全体に絶縁部材が充填されている。このように、感温部と金属チューブとの間に、絶縁部材が隙間なく充填されるため、金属チューブの先端や小径部の側面に伝わった熱を金属チューブから感温部まで速やかに伝達することが可能となる。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0024】
更に、上記何れかの温度センサであって、前記絶縁部材の後端は、前記シースパイプの先端よりも先端側に位置する温度センサとすると良い。
【0025】
本発明の温度センサでは、絶縁部材の後端はシースパイプの先端よりも先端側に位置しており、絶縁部材とシースパイプとの間には空隙が形成されている。このため、絶縁部材とシースパイプとを熱的に絶縁にすることができ、排気ガス等の熱が、金属チューブから絶縁部材及びシースパイプを介して、温度センサの基端側へと伝達されること(熱引き)が低減される。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0026】
更に、上記の何れかに記載の温度センサであって、前記絶縁部材の後端と前記シースパイプの先端と間には、断熱部材が設けられると良い。
【0027】
本発明の温度センサでは、絶縁部材の後端とシースパイプの先端との間に断熱部材が設けられている。このため、絶縁部材とシースパイプとを熱的に絶縁にすることができ、排気ガス等の熱が、金属チューブから絶縁部材及びシースパイプを介して、温度センサの基端側へと伝達されること(熱引き)が低減される。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0028】
断熱部材は、金属チューブと感温素子の電極線及びシース部材の金属芯線との間、更に、電極線間及び金属芯線間に配置することが好ましい。このようにすることで、金属チューブと電極線及び金属芯線との短絡、及び、電極線間、金属芯線間の短絡を防止することができる。
【0029】
なお、上記断熱部材としては、シリカ及びアルミナを構成材料に含む耐熱繊維(セラミックファイバ)で構成されたもの等を挙げることができる。特に、密度が60〜400kg/m3の繊維集合体(バルクファイバ)であり、1000℃において絶縁性かつ柔軟性を有するものが好ましい。
【0030】
更に、上記何れかの温度センサであって、前記一対の電極線のうち前記感温部の後端よりも後端側に位置する部位全体は、前記大径部に配置されている温度センサとすると良い。
【0031】
金属チューブと感温素子の電極線、或いは、電極線同士が接触して短絡すると、温度の検出が不可能になる。このため、感温素子の電極線は、金属チューブと電極線、或いは、電極線同士が接触しないよう金属チューブの内部に収納する必要がある。ところで、温度センサの応答性を高めるために、感温部は金属チューブの小径部に収納する必要がある。そこで、本発明の温度センサでは、感温素子の一対の電極線のうち、感温部の後端よりも後端側に位置する部位全体が、金属チューブの大径部に配置するようにしている。このように、感温素子の一対の電極線のうち感温部の後端よりも後端側に位置する部位全体を金属チューブの大径部に配置することで、金属チューブと電極線との距離を確保することができ、これに伴って、各電極線間の距離や金属チューブと金属芯線との距離、更には、各金属芯線間の距離を確保することができるようになる。このため、感温部を金属チューブの小径部に収納して温度センサの応答性を確保しつつ、金属チューブと電極線及び金属芯線との絶縁性、電極線同士、或いは、金属芯線同士の絶縁性を確保した温度センサとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施の形態における温度センサ1の全体構造を示す部分破断断面図である。
【図2】図1に示す温度センサにおいて、要部であるサーミスタ素子2近傍の拡大図である。
【図3】第2の実施の形態における温度センサ100において、要部であるサーミスタ素子2近傍の拡大図である。
【図4】試験例1において距離Hと応答時間との関係を調査した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施形態1)
本発明の第1の実施の形態である温度センサ1について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態の温度センサ1の構造を示す部分破断断面図である。また、図2は、図1に示した温度センサ1の要部であるサーミスタ素子2近傍の拡大図である。この温度センサ1は、サーミスタ素子2を感温素子として用いたものであり、同温度センサ1を自動車の排気管に装着することにより、サーミスタ素子2を排気ガスが流れる排気管内に配置させて、排気ガスの温度検出に使用するものである。
【0034】
金属チューブ3は、先端側(図1における下側)が閉塞した有底筒状に形成されており、この先端側の内部にサーミスタ素子2を収納している。この金属チューブ3は、先端側が閉塞する一方で後端側が開口する有底筒状の第1筒状部31と、両端が開口する筒状の第2筒状部32とが、軸線方向に隣接配置される形態で構成されている。より具体的には、第2筒状部32の先端部の外周面を取り囲むように第1筒状部31が配置され、周方向にわたって形成される加締め部39によって加締め固定されると共に、その加締め部39に全周レーザー溶接されることによって一体化されている。なお、この第1筒状部31、第2筒状部32は、略同等の肉厚を有しており、後述するようにステンレス合金から形成されている。
【0035】
第1筒状部31は、サーミスタ素子2の感温部であるサーミスタ焼結体21を内部に収納している。なお、第1筒状部31のうちで第2筒状部32の先端部の外側面との間で重なり部37を生ずる部位(後端部36)よりも先端側には、第2筒状部32の外径よりも内径が小さく形成された中径部34と、後述するシースパイプ9の外径よりも内径が小さく且つ中径部34の外径よりも外径が小さく形成された小径部33とが後端側から順に形成されている。ここで、第1の筒状部31の後端部36及び中径部34と第2の筒状部32とが特許請求の範囲における大径部にあたる。また、第1筒状部31には、小径部33と中径部34及び中径部34と後端部36とを繋ぐ段部35、38が形成されている。このうち、この段部38の内面に第2筒状部32の先端を当接させることで、第2筒状部32に対する第1筒状部31の軸線方向における位置決めを行っている。
【0036】
第1筒状部31の小径部33の内部には、感温部であるサーミスタ焼結体21の全体が収納される。そして、この小径部33の内部全体には、絶縁部材であるセメント10が充填されている。より具体的には、サーミスタ焼結体21の後端面よりも先端側であって、サーミスタ焼結体21の外表面と第1筒状部31(詳細には小径部33)の内壁表面との間にセメント10が介在するように、小径部33の内部全体にセメント10が充填されている。従って、サーミスタ焼結体21の先端と小径部33の内壁先端との間には、セメント10が充填されている。そして、本実施の形態では、セメント10が、自身の後端面とサーミスタ焼結体21の後端面とが略面一となるように充填されている。このため、セメント10の後端面と後述するシースパイプ9の先端面との間には、空隙(空気層)101が存在している。
【0037】
ここで、本実施の形態の温度センサ1では、サーミスタ焼結体21の先端と小径部33の内壁先端との間の最大距離Hが2.0mm以下(本実施の形態では、距離Hが0.3mm)となるように構成されている。また、サーミスタ焼結体21と小径部33の内壁表面との最短距離Lが0≦L≦0.3mm以下であり、且つ小径部33の外径が3.5mm以下(本実施の形態では、最短距離Lが0.01mm、小径部の外径が2.3mm)となるように構成されている。
【0038】
また、本実施の形態に使用されるセメント10はアルミナを主成分とする材料で構成されており、より具体的には、アルミナ粉末を主成分とする骨材と、Siを含むガラス成分とからなる。ここで、本実施の形態の温度センサ1では、セメント10の平均充填率が75%以上(本実施の形態では、充填率が85%)となるように構成されている。ここで、セメントの平均充填率とは、セメントが充填されている部分におけるセメントの平均充填率を意味する。また、セメント10の熱伝導率が1.2W/m・K以上(本実施の形態では、熱伝導率が1.8W/m・K)となるように構成されている。
【0039】
一方、第2筒状部32は、図1に示すように、後端側がステンレス合金製のフランジ4の内側に挿通される形態で、同フランジ4に固定される。この第2筒状部32は、内部に後述するシース部材8の先端側を配置している。なお、第2筒状部32の軸線方向における離間した位置(部位)には、自身の外側からシース部材8(詳細には、後述するシース部材8のシースパイプ9の外周面)に向けて加締めることによって形成された先端側加締め部30aと、後端側加締め部30bとが備えられている。この先端側加締め部30aと後端側加締め部30bによって、第2筒状部32とシース部材8とは固定(加締め固定)されている。なお、シース部材8は第2筒状部32に対して両加締め部30a、30bにより固定されるものであるが、両加締め部30a、30bを除く第2筒状部32の内周面とシース部材8のシースパイプ9の外周面との間には、金属チューブ3の後端側から先端側に向かって空気を導く通気経路を形成するための隙間が形成されている。
【0040】
フランジ4は、軸線方向に延びる鞘部42と、この鞘部42の先端側に位置し、径方向外側に向かって突出する突出部41とを有している。突出部41は、先端側に図示しない排気管の取付部のテーパ部に対応したテーパ形状を有する座面45を有する環状に形成されており、座面45が上記取付部のテーパ部に密着することで、排気ガスが排気管外部へ漏出するのを防止するようになっている。また、鞘部42は環状に形成される一方、先端側に位置する先端側段部44と先端側段部44よりも小さい外径を有する後端側段部43とを備える二段形状をなしている。
【0041】
第2筒状部32は、自身の先端側からフランジ4の後端側より挿入され、鞘部42の内側に圧入固定されている。そして、第2筒状部32の外周面と鞘部42の後端側段部43の内周面との重なり合う部分が、周方向にわたってレーザー溶接されている。
【0042】
フランジ4の周囲には、六角ナット部51及びネジ部52を有するナット5が回動自在に嵌挿されている。温度センサ1は、排気管の取付部にフランジ4の突出部41の座面45を当接させ、ナット5により固定される。また、フランジ4の内で鞘部42の先端側段部44の径方向外側には、筒状の継手6が気密状態で接合されている。具体的には、鞘部42の先端側段部44の外周面に継手6の内周面が重なり合うように、同継手6が鞘部42の先端側段部44に圧入され、継手6と先端側段部44とが周方向にわたってレーザー溶接されている。
【0043】
金属チューブ3における第2筒状部32、フランジ4及び継手6の内部には、一対の金属芯線7をシースパイプ9内に絶縁保持してなるシース部材8が配置される。シース部材8は、第2筒状部32に対し、上記したように先端側加締め部30a、後端側加締め部30bにより加締め固定されている。このシース部材8の先端側から突出する金属芯線7は、サーミスタ素子2を構成する一対のPt/Rh合金製の電極線22に互いに抵抗溶接されることで接続されている。なお、一対の電極線22は、自身の先端部が軸断面六角形状をなすサーミスタ焼結体21の内部に埋設されており、サーミスタ焼結体21と同時に焼成されて形成されている。また、電極線22のうちサーミスタ焼結体21の後端面よりも後端側に位置する部位は中径部34内に配置されている。更に、シース部材8は、SUS310Sからなるシースパイプ9と、SUS310Sからなる導電性の一対の金属芯線7と、シースパイプ9と各金属芯線7の間に充填される絶縁粉末とから形成され、金属芯線7が絶縁状態でシースパイプ9に保持されている。
【0044】
継手6の内部にてシース部材8の後端側へ突き出す金属芯線7は、加締め端子11を介して一対の外部回路(例えば車両のECU等)接続用のリード線12に接続されている。ここで、リード線12は、中央に配置されたステンレス線と、この周囲を取り囲むニッケルメッキ軟銅線とを、四フッ化エチレン樹脂からなる絶縁性の被覆部材にて被覆したものである。一対の金属芯線7及び一対の加締め端子11は、絶縁チューブ15により互いに絶縁される。リード線12は、継手6の後端側開口に備えられる耐熱ゴム製の補助リング13に挿通される。補助リング13は、継手6の上から丸加締め或いは多角加締めされることにより、両者13、6が気密性を保ちながら互いに固定される。そして、排気ガスの温度変化に応じたサーミスタ焼結体21からの電気的出力は、電極線22、シース部材8の金属芯線7、リード線12を介して図示しない外部回路に取り出され、排気ガスの温度検出に用いられる。
【0045】
なお、この排気ガスの温度を検出する温度センサ1は、1000℃にも達する高温環境下で使用されるため、各々の構成部材は十分な耐熱性を有している必要がある。このため、金属チューブ3を構成する第1筒状部31及び第2筒状部32、フランジ4、金属芯線7は、Feを主成分とし、C、Si、Mn、P、S、Ni及びCrを含有する耐熱合金であるSUS310Sにより形成されている。また、継手6は、SUS304により形成されている。
【0046】
この温度センサ1は、以下のようにして製造される。まず、SUS310S製の鋼板に深絞り加工を行って、肉厚0.3mm、内径2.7mm、外径3.3mm、全長(軸線方向における寸法)54mmをなし、両端が開口した第2筒状部32と、肉厚0.3mm、全長(軸線方向における寸法)13mmをなす有底筒状の第1筒状部31とを形成する。なお、第1筒状部31については、内径1.7mm、外径2.3mmの小径部33と、内径2.4mm、外径3.0mmの中径部34と、内径3.4mm、外径4.0mmの後端部36と、小径部33と中径部34及び中径部34と後端部36とを繋ぐテーパ形状を有する段部35、38とが形成されるように加工を施した。また、別途SUS310Sの金属体に対して冷間鍛造又は/及び切削加工を施して、第2筒状部32を圧入固定するための内孔と、先端側段部44と後端側段部43とを有する二段形状をなす鞘部42と、この鞘部42の先端側に位置し、径方向外側に向かって突出する突出部41とを有するフランジ4を形成する。
【0047】
そして、第1工程として、サーミスタ素子2の電極線22とシース部材8の金属芯線7とを所定寸法だけ重なるように重ね合わせ、互いを抵抗溶接することによって、シース部材8にサーミスタ素子2が接続された感温素子組立体を作製する。
【0048】
なお、シース部材8を構成するシースパイプ9の先端側の所定領域には、後工程において、第1筒状部31と第2筒状部32とを加締め固定した際に形成される加締め部39が自身の外周面に接触しないように、径方向内側に向かって窪む凹部81を形成している。また、このシースパイプ9は、上記凹部81を除く部分の肉厚が0.3mm、外径が2.5mmとなるように形成されている。ついで、第2筒状部32をフランジ4の内孔に圧入固定し、第2筒状部32の外周面と鞘部42の後端側段部43の内周面との重なり合う部分を、周方向にわたってレーザー溶接する。
【0049】
そして、第2工程として、フランジ4にレーザー溶接された第2筒状部32内に感温素子組立体を挿入する。このとき、感温素子組立体のサーミスタ素子2が配置される側から、第2筒状部32の後端側の開口への挿入を開始する。そして、第2筒状部32の先端側からサーミスタ素子2のサーミスタ焼結体21を所定寸法だけ突き出させ、サーミスタ焼結体21が所定寸法突き出た時点で、感温素子組立体の第2筒状部32への挿入を終了する。その後、第2筒状部32の先端側から突き出した状態にある電極線22と金属芯線7との接続部に異常がないかどうか、更には電極線22同士、金属芯線7同士が接触していないかを確認する。この確認作業にて感温素子組立体に異常無しと判断されると、続いて第2筒状部32と感温素子組立体とを固定する作業を行う。
【0050】
第2筒状部32と感温素子組立体との固定については、以下の手順により行う。まず、第2筒状部32のうちで、フランジ4よりも先端側に突き出た部位であって、且つフランジ4の先端に近接した部位を、シース部材8のシースパイプ9の外周面に向けて加締める。この加締め工程は、加締め型を用いて、第2筒状部32の外側から周方向において対向する2点を加締めるようにして行う。これにより、2点の後端側加締め部30bを形成する。
【0051】
ついで、後端側加締め部30bよりも軸線方向先端側に離間した部位であって且つ凹部81よりも後端側の部位を、シース部材8のシースパイプ9の外周面に向かって加締める。この加締め工程についても、上記と同様の加締め型を用い、第2筒状部32の外側から周方向において対向する2点を加締めるようにした。これにより、2点の先端側加締め部30aを形成し、上記後端側加締め部30bと共にシース部材8(感温素子組立体)と第2筒状部32とを加締め固定する。このようにして、第2筒状部32の先端側からサーミスタ焼結体21を所定寸法だけ突き出させた形態で、感温素子組立体と第2筒状部32とを一体的に組み付ける。
【0052】
なお、本実施の形態では、先端側加締め部30aおよび後端側加締め部30bが、軸線方向に沿った軸線長さが加締め幅よりも長い寸法を有するように形成されている。具体的に、両加締め部30a、30bのそれぞれは、軸線長さを4.0mm、加締め幅を0.4mmとなるように形成した。
【0053】
ついで、感温素子組立体を組み付けた第2筒状部32に対して、第1筒状部31を組み付けてサーミスタ素子2を有底筒状の金属チューブ3の内部に収納させる第3工程を行う。まず、第2筒状部32の先端側から所定寸法だけ突き出たサーミスタ焼結体21の周囲(但し、サーミスタ焼結体21の後端面は除く)を覆うように、セメント10となる絶縁性ペーストを塗布する。ついで、第2筒状部32の先端側から第1筒状部31を遊嵌状に且つ同軸状に挿入し、第1筒状部31の後端部36が第2筒状部32の先端部の外側面を取り囲むように、第2筒状部32に対して第1筒状部31を隣接配置させる。このとき、第2筒状部32の先端部に遊嵌状態で所定寸法の重なり部37を生ずるように、且つサーミスタ素子2のサーミスタ焼結体21が絶縁性ペーストと共に第1筒状部31の小径部33に収納されるように、第1筒状部31を第2筒状部32に対して配置させる。
【0054】
ここで、本実施の形態では、第1筒状部31を第2筒状部32に挿入するにあたって、第1筒状部31の中径部34の後端側に連結する段部38の内面に第2筒状部32の先端が当接するまで挿入を行うことで、第2筒状部32に対する第1筒状部31の軸線方向における位置決めを行っている。つまり、本実施の形態では、第1筒状部31を第2筒状部32に遊嵌状且つ同軸状に挿入していき、第2筒状部32の先端が第1筒状部31の段部38の内面に当接した時点で、所定寸法の重なり部37が生ずるように、第1筒状部31の各寸法を予め調整しているのである。これにより、本実施の形態では、第1筒状部31の各寸法を適宜調整し、第2筒状部32の先端が第1筒状部31の段部38の内面に当接するように挿入を行うことで、第2筒状部32に対する第1筒状部31の軸線方向における重なり寸法を一義的に決めることができる。その結果、サーミスタ焼結体21を第1筒状部31の狙い位置に確実に配置させることが可能となる。
【0055】
ついで、第1筒状部31の後端部36と第2筒状部32の先端部の重なり部37であって、シース部材8のシースパイプ9に形成した凹部81を取り囲む部位において、外側に位置する第1筒状部31を内側に位置する第2筒状部32に向けて周方向に加締め、加締め部39を形成する。なお、この加締めは、八方丸加締めにて行った。このようにして形成される加締め部39は、後述する全周レーザー溶接によるレーザー溶接部形成部位にあたるが、この加締め部39を形成することで、第1筒状部31と第2筒状部32との間の隙間量を減少させることができ、溶接強度に優れる全周レーザー溶接を行うことができる。
【0056】
そして、この重なり部37に形成された加締め部39に対して、レーザー光LBを照射して全周レーザー溶接を行い、第1筒状部31と第2筒状部32とに跨るレーザー溶接部を形成して、両筒状部31、32を一体化する。その後、両筒状部31、32を一体化した組立体を加熱処理することで、絶縁性ペーストを固化させてセメント10を得る。
【0057】
ついで、公知の手法により、加締め端子11を用いてシース部材8の金属芯線7の後端部とリード線12とを電気的に接続する。その後、筒状の継手6を、鞘部42の先端側段部44の径方向外側に圧入して、継手6と先端側段部44を周方向にわたってレーザー溶接する。これにより、フランジ4に対して継手6を気密状態に固定する。そして、補助リング13やナット5等を適宜組み付ける。このようにして、温度センサ1の製造を完了する。
【0058】
このような本実施の形態の温度センサ1においては、サーミスタ焼結体21の後端面よりも先端側であって、サーミスタ焼結体21の外表面と金属チューブ3の第1筒状部31(詳細には小径部33)の内壁表面との間にセメント10が介在するように、小径部33の内部全体にセメント10が充填されている。このように、セメント10が充填されることで、金属チューブ3(第1筒状部31)に伝わった熱を、セメント10を介してサーミスタ素子2に効率良く伝熱することができる。特に、本実施の形態の温度センサ1においては、サーミスタ焼結体21の先端と小径部33の内壁先端との間にセメント10が充填され、サーミスタ焼結体21の先端と小径部33の内壁先端とがセメント10を介して互いに接している。これにより、金属チューブ3の先端に伝わった熱を、サーミスタ素子2に効率良く伝熱することができる。このため、本実施の形態の温度センサ1では、温度検出の高応答化を図ることができる。更には、セメント10により振動等によるサーミスタ素子2の揺動が防止される。また、サーミスタ焼結体21が金属チューブ3の小径部33の内部に収納されているので、この部分の熱容積が小さくなり、応答性を向上させることができる。更には、サーミスタ焼結体21と金属チューブ内壁表面(詳細には、小径部33内壁表面)との距離を短くすることができ、更に応答性を向上させることができる。
【0059】
更に、本実施の形態の温度センサ1では、セメント10の後端面とシースパイプ9の先端面との間には、空隙101が存在している。従って、金属チューブ3に伝わった熱が金属チューブ3からセメント10及びシースパイプ9を介して、温度センサ1の後端側へと伝達されること(熱引き)を低減することができる。また、サーミスタ素子2の電極線22のうちサーミスタ焼結体21の後端面よりも後端側に位置する部位は、サーミスタ焼結体21が配置される第1筒状部32の小径部33よりも大径の中径部34内に配置されている。このため、第1筒状部32と電極線22との距離を確保することができ、これに伴って、各電極線22間の距離や第1筒状部32と金属芯線7との距離、更には、各金属芯線7間の距離を確保することができる。従って、第1筒状部32と電極線22及び金属芯線7との絶縁性や、電極線22同士、或いは、金属芯線7同士の絶縁性を確保することができる。
【0060】
また、本実施の形態の温度センサ1では、サーミスタ焼結体21の先端と小径部33の内壁先端との間の最大距離Hが2.0mm以下となるように構成されている。このように、最大距離Hを設定することで、更に応答性の良い温度センサとすることができる。また、本実施の形態の温度センサ1では、サーミスタ焼結体21と小径部33の内壁表面との最短距離Lが0≦L≦0.3mmとなり、且つ小径部33の外径が3.5mm以下となるように構成している。このように、最短距離L及び小径部33の外径を設定することで、更に応答性の良い温度センサとすることができる。
【0061】
更に、本実施の形態の温度センサ1では、セメント10の平均充填率が75%以上なるように構成されている。このため、セメント10の構造が密な構造となりセメント10の熱伝導性を高めることができ、金属チューブ3に伝わった熱を金属チューブ3からサーミスタ焼結体21まで速やかに伝達することが可能となる。従って、更に応答性の良い温度センサとすることができる。なお、セメント10の平均充填率は、例えば、次のようにして求められる。まず、セメント10の断面像が得られるように、温度センサのセメント10が充填されている部位を切断し、得られた断面を研磨する。次に、走査型電子顕微鏡(日本電子社製 JSM−5410)により、研磨した断面を100倍に拡大した拡大像を取得する。そして、得られた拡大像上において特定の仮想線(例えば、300μm角の正方形状の仮想線)を描き、この仮想線により囲まれた面積に対する仮想線内に存在するセメントの面積割合を求める。拡大像上の異なる複数箇所において面積割合を求め、得られた面積割合の平均値を平均充填率とする。
【0062】
また、本実施の形態の温度センサ1では、セメント10の熱伝導率が1.2W/m・K以上となるように構成されている。このようにセメント10を設定することにより、更に応答性の良い温度センサとすることができる。なお、セメント10の熱伝導率は、温度センサから取り出したセメントを、例えば、熱定数測定装置(アルバック理工社製 TC−7000)によって測定することで求められる。
【0063】
また、本実施の形態の温度センサ1では、セメント10の材料として、アルミナを主成分とする材料を用いている。このため、耐久性及び応答性の良い温度センサとすることができる。なお、セメント10の材料成分は、例えば、X線回折装置(リガク社製 ロータフレックスス RU−200)により確認することができる。
【0064】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態である温度センサについて、図3を用いて説明する。上記の実施形態1の温度センサ1では、セメント10の後端面とシースパイプ9の先端面との間に、空隙101が形成されていた。これに対し、本実施形態2の温度センサ100では、セメントの後端面とシースパイプの先端面との間に、断熱部材を設けた点で異なり、他の点は同様である。従って、異なる部分のみを説明し、同様な部分の説明は省略する。
【0065】
図3は、温度センサ100の要部であるサーミスタ素子2近傍の拡大図である。この温度センサ100では、セメント10とシースパイプ9との間に、アルミナ系セラミックファイバからなる断熱部材102が設けられている。この断熱部材102は、金属チューブ3と電極線22及び金属芯線7との間、更に、各電極線22間及び各金属芯線7間に介在するように配置されている。
【0066】
このような温度センサ100の製造方法は、上記の実施形態1の温度センサ1の製造方法に断熱部材102を取り付ける工程が加わったのみである。この断熱部材102の取り付けは、サーミスタ焼結体21の周囲にセメント10となる絶縁性ペーストを塗布した後、電極線22及び金属芯線7の表面を覆うように、電極線22及び金属芯線7に断熱部材102を取り付けることより行われる。その他は上記の実施形態1の温度センサ1と同様な製造方法により製造される。
【0067】
このような本実施の形態の温度センサ100においては、断熱部材102が、金属チューブ3と電極線22及び金属芯線7との間、更に、各電極線22間及び各金属芯線7間に介在するように配置されている。このため、金属チューブ3からセメント10及びシースパイプ9を介して、温度センサ1の後端側へと熱が伝達される熱引きを低減することができる。また、金属チューブ3と電極線22及び金属芯線7との短絡、及び、各電極線22間及び各金属芯線7間の短絡を確実に防止することができる。従って、絶縁性を確実に確保しつつ、応答性の良い温度センサとすることができる。
【0068】
ここで、上記実施形態1及び実施形態2の温度センサの効果を確認する試験を行った。
【0069】
(試験例1)
まず、サーミスタ焼結体21の先端と金属チューブ3(第1筒状体32)の小径部33の内壁先端との距離Hと応答時間との関係を調査した。調査にあたり、実施形態1の同様の構成であって、サーミスタ焼結体21の先端と金属チューブの小径部33の内壁先端との距離Hが異なる数種類の温度センサを作製した。これら各温度センサを、600℃、20m/sの排気ガスが存在する排気管内に、サーミスタ焼結体21が位置するように投入した。そして、温度センサからの信号が室温から600℃の63%(つまり、378℃)になるまでの時間(応答時間)を測定した。ここで、従来の温度センサでは、この応答時間は7秒を超えていた。
【0070】
図4は、距離Hと応答時間との関係を調査した結果を示す図である。距離Hが小さくなるにつれて応答時間は速くなり、距離Hが2.0mm以下である場合、応答時間が7秒以下となった。この結果より、距離Hが2.0mm以下とすれば、高応答化を実現できる温度センサとすることができる。
【0071】
(試験例2)
次に、サーミスタ焼結体2と金属チューブ3の小径部33内壁表面との最短距離L及び小径部33の外径と応答時間との関係を調査した。実施形態1と同様の構成であって、サーミスタ焼結体21と金属チューブ3の小径部33の内壁表面との最短距離L及び小径部33の外径が異なる5種類の温度センサ(試料No.1〜試料No.5)を作製した。これら各温度センサを、上記試験例1と同様に試験を行い、応答時間を測定した。その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
最短距離L及び小径部33の外径が小さくなるにつれて応答時間は速くなり、最短距離Lが0≦L≦0.3mmであり、且つ、小径部33の外径が3.5mm以下である場合(試料No.1〜試料No.3)、応答時間が6.5秒以下となった。特に、小径部33の外径が3.0mm以下(試料No.1、試料No.2)であると、応答時間が6秒以下となった。この結果より、最短距離Lが0≦L≦0.3mmであり、且つ、小径部の外径が3.5mm以下とすれば、更なる高応答化を実現できる温度センサとすることができる。
【0074】
(試験例3)
次に、サーミスタ焼結体21とシースパイプ9との間に、空隙(空気層)101或いはセラミックファイバからなる断熱部材102を設けたことの効果について調査を行った。実施形態1にかかる温度センサ(空隙(空気層)101を設けた温度センサ、試料No.6)と、実施形態2にかかる温度センサ(セラミックファイバからなる断熱部材102を設けた温度センサ、試料No.7)と、実施形態1と同様の構成であって、サーミスタ焼結体21とシースパイプ9との間にセメント10が充填され、サーミスタ焼結体21とシースパイプ9とがセメント10を介して互いに接している温度センサ(試料No.8)の3種類の温度センサを作製した。これら各温度センサを、上記試験例1と同様に試験を行い、応答時間を測定した。その結果、サーミスタ焼結体21とシースパイプ9とがセメント10により接続されている試料No.8の温度センサでは応答時間が6.2秒であった。これに対し、実施形態1及び実施形態2にかかる温度センサ(No.6、No.7)では、応答時間は共に5.4秒であり、応答時間が短くなった。この結果より、サーミスタ焼結体21とシースパイプ9との間に、空隙(空気層)101或いは断熱部材102を設けることで、高応答化を実現できる温度センサとすることができる。
【0075】
以上において、本発明を実施の形態に即して説明したが、本発明は上記した具体的な実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、感温部をなすサーミスタ焼結体21の形状は、軸断面において六角形状に限定されず、円形状や楕円形状であっても良い。また、温度センサ1、100は、排気温センサのみならず、被測定流体として水や油等の液体が流れる流通路に取り付けられる温度センサにも適用可能である。更に、上記特許文献1に開示された温度センサのように、シース部材の先端側外表面にサーミスタ素子を収納する有底筒状の金属キャップを溶接した構造の温度センサにも適用可能である。また、金属チューブは、一部材であっても良い。
【符号の説明】
【0076】
1、100・・・温度センサ
2・・・サーミスタ素子
21・・・サーミスタ焼結体
22・・・電極線
3・・・金属チューブ
30a・・・先端側加締め部
30b・・・後端側加締め部
31・・・第1筒状部
32・・・第2筒状部
33・・・小径部
34・・・中径部
35・・・段部
36・・・後端部
38・・・段部
37・・・重なり部
39・・・加締め部
4・・・フランジ
6・・・継手
7・・・金属芯線
8・・・シース部材
9・・・シースパイプ
10・・・セメント
12・・・リード線
101・・・空隙(空気層)
102・・・断熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側が閉塞した軸線方向に延びる筒状の金属チューブと、
上記金属チューブの内部に収納され、温度によって電気的特性が変化する感温部とこれに設けられ上記金属チューブの後端側に延びる一対の電極線とを有した感温素子と、
上記金属チューブの内部に収納され、上記感温素子の上記一対の電極線と接続される一対の金属芯線をシースパイプ内に絶縁保持してなるシース部材と、
を備える温度センサであって、
上記金属チューブは、先端側に位置し、全体が上記シース部材の外径よりも小さい内径の小径部と、上記小径部の後端側に位置し、上記小径部の外径よりも大径の大径部とを備え、
上記感温部は上記小径部に収納されると共に、少なくとも上記感温部の先端と上記金属チューブの内壁先端との間には絶縁部材が充填されている
温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサであって、
前記感温部の先端と前記金属チューブの内壁先端との最大距離Hは、2.0mm以下である
温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサであって、
前記感温部と前記金属チューブとの最短距離Lが0≦L≦0.3mmであり、且つ、前記小径部の外径が3.5mm以下である
温度センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の温度センサであって、
前記絶縁部材の平均充填率は、75%以上である
温度センサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の温度センサであって、
前記絶縁部材の熱伝導率は、1.2W/m・K以上である
温度センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の温度センサであって、
前記絶縁部材は、アルミナを主成分とする材料である
温度センサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の温度センサであって、
前記絶縁部材は、少なくとも前記金属チューブの先端から前記感温部の後端までの空間全体に充填されている
温度センサ。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の温度センサであって、
前記絶縁部材は、少なくとも前記小径部全体に充填されている
温度センサ。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の温度センサであって、
前記絶縁部材の後端は、前記シースパイプの先端よりも先端側に位置する
温度センサ。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の温度センサであって、
前記絶縁部材の後端と前記シースパイプの先端との間には、断熱部材が設けられている
温度センサ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の温度センサであって、
前記一対の電極線のうち前記感温部の後端よりも後端側に位置する部位全体は、前記大径部に配置されている
温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−164578(P2010−164578A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65575(P2010−65575)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2004−79630(P2004−79630)の分割
【原出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】