説明

温度センサ

【課題】チューブの先端寄り部位で、その先端までの先後方向の所定範囲にわたり、そのチューブの外径が相対的に小さい小径部をなすように形成され、温度センサ素子がこの小径部内の先端又は先端寄り部位に存在するように配置されてなる温度センサで、ガスの温度上昇又は温度低下のいずれにおいてもその応答性能を高める。
【解決手段】チューブ11の小径部13の外周面のうち、素子21の後端P1よりも後方に位置する部位にのみ、外方に突出する金属製の凸部81を設けた。素子21の側部のチューブの肉厚増大を招かず、受熱面積の増大が図られるため、ガス温度上昇時の測定応答性が高められる。また、素子21より後方に凸部81を設けたため、ガス温度低下に追随して、素子21の側部のチューブ11の部位の温度の低下がし易いので、温度下降時の測定応答性も高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスなどの流体の温度を測定するための温度センサに関する。詳しくは、排気ガス温度を測定するため、金属製で先端が閉じられたチューブ(有底チューブ)又は有底筒状のキャップ(以下、金属製のチューブ又は単にチューブともいう)の内部の先端部分に、サーミスタなどの温度センサ素子(以下、センサ素子又は単に素子とも言う)が配置され、そのチューブの先端が排気ガスに晒されるように排気マニホルド(排気ガス管)系統部位に取り付けられて使用される温度センサ(以下、単にセンサともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の温度センサとしては種々のものが知られている(特許文献1〜3)。このうち、排気ガスの温度測定に使用される温度センサでは、センサ素子は、例えばガラスで封止されて金属製のチューブ内の先端又は先端寄り部位に配置されるのが普通である。このようなセンサでは、その素子から延びる電極線を、チューブ内に配置された絶縁体によって電気的な絶縁を確保させつつ、チューブの後端から外部に引き出される信号取り出し用のリード線(以下、単にリード線とも言う)に接続した構成を有している。ここに、配線用絶縁体としては、例えば、軸方向に延びる2つの穴を有する構造の絶縁管(2穴絶縁管)などが用いられる。これにより、ガラス封止された素子は、その配線用絶縁体(絶縁管)の先端側に、素子支持体をなすセラミック部材などを介して配置され、素子から延びる電極線、この電極線に接続されてチューブの後端から外部に引き出されるリード線、又はこの両者をつなぐ中継線がこの絶縁管内を通されて構成される(特許文献1)。
【0003】
このような構成の温度センサにおいて、チューブには耐熱性及び熱伝導性に優れるSUS(ステンレス鋼)などからなる金属製のチューブが使用される。また、その測定応答性能を高めるためには、素子が位置しているチューブの先端部分(底部付近)の肉厚は薄い方がよい。したがって、その先端部分の肉厚は、0.2〜0.3mmと、近時は、益々その薄肉化が図られている。さらに、その測定応答性能を高めるためには、測定対象ガスと素子との距離は小さいほうがよい。
【0004】
ところで、近時は、ガス温度の測定応答性能を高めることの要請が、さらに一層高まってきている。こうしたさらなる要請に応えるため、温度センサ素子を包囲するチューブの先端(閉じられた部分)寄り部位の外周面に、凹凸(或いは外方に相対的に突出する形の複数の凸部。以下、凹凸ともいう)を設けるという技術も提案されている(特許文献2,3)。これらは、このような凹凸を設けることで、チューブの外周面における素子近傍の受熱部の受熱面積が増大することから、ガス温度の上昇時の素子への熱伝導性を高め、ガス温度の測定応答性能を高めるという技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−140012号公報
【特許文献2】特開平07−294338号公報
【特許文献3】特開平11−271150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来技術のチューブに設けられている凹凸のうちの凸部は、チューブの先後方向のうち、その内部に配置された温度センサ素子に対応する位置(先後寸法が、0.2〜0.3mm)に重なるように設けられているか、又はその位置を先後に跨ぐ形態で、複数の凸部が存在するように設けられている。他方、本願発明者において、チューブにこのような凹凸のあるセンサを、排気ガス管に取り付けて、そのチューブの先端が同ガス管内に突出するようにし、そのガス温度の測定応答性能の確認をしてみたところ、次のようなことが判明した。というのは、このようなセンサでは、素子に対する熱伝達速度は必ずしも高くない、ということである。
【0007】
この原因について本願発明者は次のように推論した。すなわち、チューブの先端寄り部位に、上記のように凸部が存在するように設けられている場合には、その凸部の部位ではそのチューブの肉厚は相対的に厚くなり、上記した薄肉化による効果と相反するものとなる。このため、チューブの先端寄り部位に接する(吹き付けられる形で接する)ガスによる熱は、そのチューブの外周面の凸部のある部位では、その凸部を加熱し、チューブ壁に熱伝導してから、その内壁面に至り、その内壁面の熱が内側に位置する素子に伝達されることになる。すなわち、チューブの外周面の先後方向のうち、その内部に配置された温度センサ素子に対応する位置に凸部があると、ガスの熱はその凸部を通過ないし伝導することになる分、素子への熱伝達距離が増することになる。したがって、チューブの先端寄り部位の受熱面積は増大するとしても、素子への熱伝達速度はむしろ低くなる。
【0008】
また、上記凸部が、チューブの外周面の先後方向のうち、素子に対応する部位又は素子の先端よりも先端側に設けられていると、その凸部がないとした場合に比べて、ガス管内を流れるガスがチューブの先端に吹き付けられにくくなり、そのことが素子への熱伝達性を阻害している可能性がある。その理由は次のように考えられる。排気ガス管内を流れるそのガスは、センサをなすチューブのうち、そのガス管内に突出している部位の上流側(ガスの流れの上流側)の側面(正面)に衝突して下流側に流れる。このとき、衝突したガスは、その下流側に位置するチューブの側面(ガス流の背面となる部位)では渦流となるなど、その流れ性状が乱される。一方、チューブの先端では、その先端から後端側に向かうようなガスの対流(ガスの吹き寄せ)も生じる。したがって、仮に、チューブの先端寄り位置に凸部がないとすれば、ガス流は、凸部の存在による影響を受けることなく、チューブの先端では、その先端から後端側に向かうようなガスの吹き寄せを受けるため、その分、ガスの熱は素子に伝達され易いと考えられる。
【0009】
しかし、チューブの外周面における先後方向のうち、素子に対応する部位又は素子の先端よりも先端側に凸部が設けられている場合には、その凸部がチューブの先端から後端側に向かうようなガスの吹き寄せを妨げる壁又は傘の役割を果たすことになる。すなわち、このような凸部があると、チューブの先端から後端側に向かうようなガスの吹き寄せにより得られる筈の熱が得られにくくなる。このため、その分、チューブ内の素子に対する熱伝導性が悪くなる。以上のように、チューブの先端寄り部位の外周面に凸部が形成されている場合には、受熱面積の増大は図られるが、その凸部が、チューブの外周面の先後方向のうち、素子に対応する部位又は素子の先端よりも先端側に設けられている場合には、チューブ内の素子に対する熱伝達性が妨げられることがある、と考えられる。
【0010】
しかも、このようにチューブの外周面に凸部があり、これがチューブの先後方向において素子のある位置、又はその素子の位置より先端側に設けられている場合には、ガスの温度が低下しても、その低下したガス温度の測定応答性能に遅れがでやすいという課題もある。すなわち、上記凸部が、チューブの外周面における先後方向のうち、素子に対応する部位又は素子の先端よりも先端側に設けられている場合には、ガスの温度が低下したとき、素子の位置のチューブの温度の低下は、凸部がない場合に比べると、その凸部の熱引きに時間がかかり、凸部の温度低下が遅れるという課題の存在である。その結果、ガスの温度低下時においては、測定されるべきガスの温度以上の温度を測定しているといった応答性能の遅れの問題がある。
【0011】
本願発明者は、こうした推論等を基に、凸部の配置位置など、その設置条件を種々変更して、鋭意、試験、研究を繰り返した結果、チューブの先端寄り部位の小径部において、凸部を設けるとしても、温度センサ素子の後端より先端側に設けず、素子の後端より後方に設けることで、次のような効果が得られることを知った。第1に、凸部をこのような位置に設けることでも、それを設けた分、受熱面積の増大が確保されると共に、チューブの先後方向における素子が位置する部位のチューブ壁面の肉厚増加を招かないことから、ガス温度の上昇時の測定応答性能を高めることができること。第2には、凸部をこのように設けることで、チューブの先端から後方に向けて吹き寄せるガスは、その凸部による影響を受けにくくなるため、凸部を上記従来のように、センサ素子の位置又はそれより先方に設けた場合に比べると、そのガスによるチューブの先端の加熱による熱伝導性が高められること。第3には、凸部をこのように設けることで、ガスの温度低下時におけるチューブの先端側の温度低下が速くなること。以上である。
【0012】
本発明は、前記知見に基づいてなされたもので、チューブの先端寄り部位において、チューブの先端までの先後方向の所定範囲にわたり、そのチューブの外径が相対的に小さい小径部をなすように形成され、温度センサ素子がこの小径部内の先端又は先端寄り部位に存在するように配置されてなる温度センサにおいて、ガスの温度上昇又は温度低下のいずれにおいてもその測定応答性能の向上に有効な温度センサを提供することにあり、その手段は次の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、先端が閉じられた金属製のチューブと、このチューブ内の先端又は先端寄り部位に配置された温度センサ素子と、このチューブ内において該温度センサ素子の後方に配置された配線用絶縁体とを備えてなる温度センサであって、
前記チューブは、その先端寄り部位であって前記配線用絶縁体の先端よりも先から該チューブの先端までの先後方向の所定範囲にわたり、外径が、前記配線用絶縁体を包囲する部位の外径より小さい小径部をなすように形成され、前記温度センサ素子がこの小径部内の先端又は先端寄り部位に存在するように配置されてなる温度センサにおいて、
前記チューブの前記小径部の外周面のうち、前記温度センサ素子の後端よりも後方に位置する部位にのみ、外方に突出する1又は複数の金属製の凸部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記凸部は、前記チューブの周方向に連なる環状のフランジであることを特徴とする請求項1に記載の温度センサである。
請求項3に記載の発明は、前記凸部は、前記チューブの周方向に連なる環状の1つのフランジであることを特徴とする請求項1に記載の温度センサである。
請求項4に記載の発明は、前記フランジは、前記チューブの軸線に垂直な平面に沿って突出するものであることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の温度センサである。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、チューブの先端寄り部位に小径部が形成されてなる温度センサにおいて、その小径部に、上記構成のように凸部が形成されているため、凸部がある分、それがないものに比べると、チューブの先端寄り部位の受熱面積の増大は確保されている。したがって、ガス温度の上昇時においては、内部の温度センサ素子への熱伝導性及び測定応答性能が高められる。そして、本発明では、前記チューブの前記小径部の外周面のうち、前記温度センサ素子の後端よりも先方には凸部はないから、ガスの熱は、チューブの先後方向のうち、素子が位置する部位の凸部のない薄い壁に直接、伝達され、その内部に伝わるから素子に対する熱伝導性がよく、温度センサ素子をチューブのうちで配線用絶縁体を包囲する部位の外径より小さい小径部の内側に配置して当該素子と当該チューブとの間の距離を近づけた構成と相俟って、温度センサの測定応答性能を高めることができる。
【0016】
しかも、本発明では、前記チューブの外周面のうち、素子の後端より先端側に凸部は無いから、チューブの先端に吹き寄せられる高温のガスは、そこに凸部がある場合に比べると、その先端から後方に円滑に流れやすくなる。したがって、その分、ガスの吹き寄せによる先端の熱伝導性が高められる。さらに、凸部は、チューブの小径部の外周面のうち、素子の後端より後方にあるから、ガスの温度が低下したときはその凸部より先端側に位置するチューブ先端側の温度低下を早めることができる。例えば、温度センサがその先端を排気ガス管中に突出させて同管に取り付けられている場合、凸部の熱は素子の後端より後方において、チューブの基端(後端)側から排気管へ熱引き性良く熱伝導され。したがって、チューブの先後方向のうち素子の存在する部位の温度低下を早めることができるから、その分、ガス温度の低下時における測定応答性能をも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の温度センサを具体化した実施形態の断面図、及びその要部の拡大図。
【図2】図1においてチューブを先端側から見た図。
【図3】図1の第1変形例の要部の拡大図。
【図4】図1の第2変形例の断面図、及びその要部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を具体化した温度センサの実施の形態について、図1及び図2に基づいて詳細に説明する。図1中、101は、温度センサであって、先端10が閉じられた金属製(例えば、SUS製)のチューブ11と、このチューブ11内の先端10又は先端寄り部位に配置された温度センサ素子21と、このチューブ11内において温度センサ素子21の後方(図1上方)に配置された配線用絶縁体(絶縁管)41等から、次のように構成されている。すなわち、本例では、センサ素子21は、ガラス20でくるまれる形で封止され、セラミック製の2穴管からなる配線用絶縁体(以下、絶縁管ともいう)41の先端43に、素子支持体(セラミック部材)31を介して配置されている。そして、素子21から延びる2本の電極線23は素子支持体31中を通され、例えば、中継線25を介して絶縁管41の各穴内を通されて後方に引き出されるように形成されている。なお、これらの各部品は、図1に示したように、先端10が閉じられたチューブ11内に、先端側から、素子21、素子支持体31、及び絶縁管41の配置で内挿されている。
【0019】
一方、このチューブ11は、本例では、先端10から後端(図1上端)に向けて、同軸で、順次、大径をなす、異径同心の円筒状に形成されている。そして、その先端寄り部位であって、先端10から後方に向かう所定範囲L1が小径部13をなしているが、本例では、この小径部13は、先端10に向けて2段階で、テーパを介して細くなるように形成され、先端側の第1小径部13aと、それより太い第2小径部13bとからなっている。また、このような小径部13の後方には、それより大径をなす第1中径部15aと、この第1中径部15aより大径をなす第2中径部15bとを有しており、この第2中径部15bの後方にはそれよりさらに大径をなす大径部17を備えている。
【0020】
本例では、絶縁管41は、その先端43を第1中径部15aにおける先端寄り部位に位置させ、後端45を大径部17の中間部位に位置させて、第1中径部15aの内面で保持されるようにしてチューブ11内に配置されている。一方、絶縁管41の先端43には、円柱状の素子支持体31の後端35が当接状に配置され、その素子支持体31の先端33を第1小径部13aと第2小径部13bの間のテーパ部に位置させている。そして、素子支持体31の先端33には、内部の先端寄り部位にセンサ素子21をくるんで封止してなるガラス20が当接状に配置され、そのガラス20の先端をチューブ11の先端10の内面に当接させている。なお、このガラス20は、第1小径部13aの内周面にて拘束されている。なお、ガラス20で封止された素子21からは、2本の電極線23が後端に向けて延びており、それぞれが素子支持体31中を通され、絶縁管41の各孔にその先端43から通され、接続されている中継線25を介して、絶縁管41の後端45から引き出されており、後述するように各リード線51に接続されている。
【0021】
このように、本形態では、チューブ11は、その先端寄り部位であって配線用絶縁体(絶縁管41)41の先端43よりも先から、そのチューブ11の先端10までの先後方向の所定範囲L1にわたり、外径が、絶縁管41を包囲する第1中径部15aの外径より相対的に小さい小径部13をなしている。本例では、この小径部13は、第1小径部13aと第2小径部13bとからなっており、温度センサ素子21は、この第1小径部13a内の先端寄り部位に存在するように配置されている。そして、この第1小径部13aの外周面のうち、先後方向において、センサ素子21の後端P1よりも所定寸法S、後方に位置する部位に、チューブ11をその先端10側(軸線G方向)から見て、円形をなすフランジ状の凸部81が1つ設けられている。なお、この凸部81についてはさらに後述する。
【0022】
また、本形態のセンサ101では、このチューブ11のうち、第2中径部15bの外周には、センサ101を排気マニホールド部位の取り付け穴(ネジ穴)にねじ込み方式で固定するため、外周面にネジ60を備えた円筒状のねじ込み部材61が同心状に外嵌されて固定されている。ただし、その固定は、ねじ込み部材61の内周面と第2中径部15bの外周面との間を、例えばロウ付けすることによっている。また、このねじ込み部材61は、外周面にねじ60を備えたねじ筒部63と、その後端側において一体で外方に突出状に設けられたねじ込み用多角形部66を備えており、このねじ込み用多角形部66の内周面67と後端面68とのなす角が、チューブ11の大径部17の先端に係止されている。なお、ねじ込み用多角形部66の先端面と、ねじ筒部63の外周面(ネジ60の基端)には、ねじ込み時におけるシール保持用の環状ワッシャ69が配置されている。また、ねじ筒部63の先端は第2中径部15bの先端寄り部位に位置するように設定されており、ねじ筒部63の外周面の先端寄り部位(ネジ60の先端部)は先細り状(テーパ)に形成されている。
【0023】
一方、チューブ11の後端寄り部位をなす大径部17内においては、絶縁管41の後端45から引き出された中継線25の端部の端子28に、外部取り出し用の各リード線(電気信号取り出し用の電線)51の先端(芯線)がカシメにより接続されている。こうして、そのリード線51はチューブ11の大径部17の後端において外部に引き出されている。なお、その大径部17内には弾性シール材71が配置され、各リード線51はこのシール材71中を通されている。また、大径部17の後端寄り部位17cは、縮径状にカシメられており、これによって、大径部17の後端のシールを保持すると共に、各リード線51をその後端において固定している。
【0024】
さて、このような本例の温度センサ101では、上記もしたように、チューブ11の先端10寄り部位には小径部13が形成されており、センサ素子21が位置する第1小径部13aの外周面のうち、センサ素子21の後端P1よりも所定寸法S後方に位置する部位に、チューブ11をその軸線G方向から見て、円形をなすフランジ状の凸部81が設けられている(図2参照)。ただし、この凸部81は、チューブ11と同素材の環状の一定厚さの板(薄板)からなり、第1小径部13aの外周面に外嵌されて、例えばロウ付けにより固定されている。ただし、この凸部81をなすフランジは、チューブ11の軸線Gに垂直な平面に沿って突出している。なお、この凸部81の外径は、本例では第2中径部15bの外径より小さいが、第1中径部15aの外径より大きくされている。これは、本例では、チューブ11の第1小径部13aに凸部81をロウ付けした後、このチューブ11をねじ込み部材61内に内挿してロウ付けする組立て法を採用したためである。したがって、チューブ11をねじ込み部材61内に内挿してロウ付けした後、又そのロウ付けと同時に、チューブ11に凸部81を設ける(例えば、ロウ付けする)場合には、センサ101を排気管にねじ込むのに支障がない範囲で、その外径を設定すればよい。
【0025】
このような本例の温度センサ101では、これを構成するねじ込み部材61を介して排気管に、ねじ込み方式で取り付けられ、チューブ11の先端10寄り部位を排気管内に突出させ、その使用に供される。このとき、本例の温度センサ101では、チューブ11の先端10寄り部位の小径部13(第1小径部13a)には、上記構成のように凸部81が形成されている。このため、その凸部81がある分、それがないものに比べると、チューブ11の先端10寄り部位の受熱面積が増大している。したがって、ガス温度の上昇時においては、内部の温度センサ素子21への熱伝導性及び測定応答性能が高められる。そしてチューブ11における第1小径部13aの外周面のうち、センサ素子21の後端P1よりも先方には凸部81はない。このため、ガスの熱は、素子21が位置するチューブ11の凸部のない外周面(壁面)すなわち、薄い壁面に直接、伝達されるので、その内部の素子21に対する熱伝導性がよい。
【0026】
しかも、チューブ11の外周面のうち、素子21の後端P1より先端側に凸部がある場合に比べ、それがない分、チューブ11の先端10に吹き寄せられる高温のガスは、チューブ11の先端10から後方に円滑に流れやすい。したがって、その吹き寄せによる先端10の熱伝導性がよい。加えて、凸部81は、チューブ11の第1小径部13aの外周面のうち、素子21の後端P1より後方にあるから、ガスの温度が低下したときはその凸部81の熱は、凸部81より後方のチューブ11の部位、及びねじ込み部材61を介してセンサ101の後方に伝わって逃げやすい。このため、素子21の存在するチューブ11部位の温度低下を早めることができることから、ガス温度の低下時における測定応答性能も高めることができる。すなわち、凸部81の位置が、素子21よりも先端側でなく、後方(排気マニホルドにより近い位置)に設けられているため、その凸部81が保持している熱は、素子21より後方のチューブ11の基端(後端)側から排気マニホルドやセンサ101のうち排気マニホルドの外部に位置する部位へ早く伝わりやすい。このため、ガス温度の低下への追随性能が向上するので、チューブ11の先端10の温度低下を早めることができる。このため、ガス温度低下時の素子21の測定応答性能が高められる。
【0027】
以上のように、本例のセンサ101では、凸部81がある分、受熱面積の増大が図られる。一方、凸部81の設置位置を、第1小径部13aの外周面のうち、センサ素子21の後端P1よりも後方に位置する部位としたため、チューブ11のうち、素子21を包囲する位置に対応する部位における壁厚さの増大を招かない。しかも、この後端P1より後方にのみ凸部81を設けたことから、ガス温度の上昇及び下降に対する優れた測定応答性能が得られるという効果がある。なお、凸部81を設ける位置である、素子21の後端P1からの寸法Sは、ガス温度の上昇による測定応答性能の点では、なるべく小さくするのが好ましく、ガス温度の下降による測定応答性能の点では、なるべく大きくするのが好ましい。センサの用途、特性等に応じて重要視する方を選択して、適宜に設定すればよい。
【0028】
上記例では、フランジ状の凸部81を1つ設けた場合で説明したが、本発明では、図3に示した第1変形例のように、小径部13の外周面のうち、センサ素子21の後端P1よりも後方に位置する部位であれば、先後に2以上設けてもよい。なお、図3ではこの点のみが相違するだけであるため、前例と同一の部位には同一の符号を付すに止める。また、凸部81は、チューブ11の先端10から見て円形のものとしたが、これに限られるものではなく、正方形等の多角形としてもよい。ただし、その外径は、温度センサ101自体の組み立てや、これを排気ガス管に取り付ける際に支障がない範囲で、なるべく大きくするのが、受熱面積の増大のためには好ましい。
【0029】
本発明の温度センサ101は、上記形態のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更して具体化できる。上記例では、小径部13は、先端から、順次、大径をなす第1小径部13a及び第2小径部13bからなる2段構造のものとして具体化したが、図4に示した第2変形例のように、1段階で細くなっている小径部13とし、この小径部13において、その小径部13の外周面のうち、センサ素子21の後端P1よりも先方を除く、その後端P1よりも後方に位置する部位にのみ、外方に突出する金属製の凸部81を設けてもよい。なお、図4では、このような小径部とした点のみが上記例と相違するだけであるため、同一の部位には同一の符号を付すに止める。なお、この場合にも、その凸部は複数としてもよい。本発明の温度センサは、排気ガスの温度測定用のものに限定されるものでもなく、他の用途に使用される温度センサにおいても広く適用できる。
【符号の説明】
【0030】
10 チューブの先端
11 チューブ
13 チューブの小径部
15a,15b,17 チューブの配線用絶縁体を包囲する部位
21 温度センサ素子
41 配線用絶縁体
43 配線用絶縁体の先端
81 凸部
101 温度センサ
L1 先後方向の所定範囲
P1 温度センサ素子の後端
G チューブの軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が閉じられた金属製のチューブと、このチューブ内の先端又は先端寄り部位に配置された温度センサ素子と、このチューブ内において該温度センサ素子の後方に配置された配線用絶縁体とを備えてなる温度センサであって、
前記チューブは、その先端寄り部位であって前記配線用絶縁体の先端よりも先から該チューブの先端までの先後方向の所定範囲にわたり、外径が、前記配線用絶縁体を包囲する部位の外径より小さい小径部をなすように形成され、前記温度センサ素子がこの小径部内の先端又は先端寄り部位に存在するように配置されてなる温度センサにおいて、
前記チューブの前記小径部の外周面のうち、前記温度センサ素子の後端よりも後方に位置する部位にのみ、外方に突出する1又は複数の金属製の凸部が設けられていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記凸部は、前記チューブの周方向に連なる環状のフランジであることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記凸部は、前記チューブの周方向に連なる環状の1つのフランジであることを特徴とする請求項1に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記フランジは、前記チューブの軸線に垂直な平面に沿って突出するものであることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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