説明

温度センサ

【課題】 三方に並列に配置された複数の測定対象物の温度を測定可能であると共に複数の配線設置が不要な温度センサを提供すること。
【解決手段】 三方に並列に配置された3つの測定対象物Cの隙間に設置される温度センサ1であって、3つの外周面を有する三角柱状又は三角筒状のセンサ本体2と、該センサ本体2の各外周面に設けられ測定対象物Cから放射される赤外線を受光して温度を検出する3つのセンサ素子3と、センサ素子3に接続されセンサ本体2内を挿通されたリード線4と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三方に並列に配置された複数の測定対象物(電池セル等)の温度を同時に測定することができる温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組電池などの電池セルの温度監視が必要な装置において、複数の電池セルの温度を測定するために、複数の温度センサを設置している。例えば、特許文献1には、直列又は並列に接続された複数の二次電池と、二次電池の温度を検出するため二次電池に接近して配設される温度検出素子を有する複数の温度検出回路と、を備えるバッテリーパックが提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、電池を直線状に連結している複数本の電池モジュールと、電池モジュールの温度を検出する複数の温度センサと、を備えた車両用の電源装置が提案されている。
さらに、測定対象物の表面を面として捉えて温度を測定する方法としては、赤外線イメージセンサなどの光学手法を用いて、測定対象物の表面から放射される輻射による赤外線を受けて温度測定する方法も知られている。例えば、特許文献3には、測定対象物であるヒートローラの表面温度を非接触で測定する温度センサであって、ヒートローラの表面に近接して非接触で保持される赤外線透過性フィルム上に赤外線吸収ガラスで溶封されたサーミスタ素子を有する非接触温度センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−126780号公報
【特許文献2】特開2006−74869号公報
【特許文献3】特開2004−205417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、複数の電池セル等の温度を測定するために、複数の温度センサを配置するには、温度センサの設置数に応じて取付工数が増大すると共に複数の配線及びハーネスが必要になり、設置コスト及び部材コストが増えてしまう不都合があった。また、温度センサの設置数に応じて配線等の本数が増え、重量増加や線材の耐振動に対する信頼性低下などが生じる問題があった。さらに、並列に並べられた複数の電池セルの隙間に複数の温度センサを設置する場合、設置スペースが狭いと共に組立が複雑になって工数が増加するため、設置作業や電池交換等のメンテナンスの作業性に不都合があった。また、通気のための空間が多数の配線や取付治具などにより占有されてしまい、電池セルの放熱の妨げになるおそれもあった。
また、赤外線イメージセンサなどにより温度分布を測定する場合、画像処理などの演算コストが膨大であり、組電池などの温度監視に使用することは不適である。さらに、測定対象物の全体を赤外線の視野角に入れる必要があり、取付場所に制限があり、狭い設置スペースでは利用困難な場合がある。
さらに、三方に並列に配置された3つの電池セルの隙間に赤外線センサを設置する場合、三方に電池セルが配置されているため、少なくとも3つの赤外線センサを互いに異なる方向の電池セルに向けて設定する必要があり、設置位置の確保が難しいと共に設置作業に手間がかかってしまう問題があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、三方に並列に配置された複数の測定対象物の温度を測定可能であると共に複数の配線設置が不要な温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の温度センサは、三方に並列に配置された3つの測定対象物の隙間に設置される温度センサであって、3つの外周面を有する三角柱状又は三角筒状のセンサ本体と、該センサ本体の各外周面に設けられ前記測定対象物から放射される赤外線を受光して温度を検出する3つのセンサ素子と、前記センサ素子に接続され前記センサ本体内を挿通されたリード線と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
すなわち、この温度センサでは、三角柱状又は三角筒状のセンサ本体の各外周面に設けられ測定対象物から放射される赤外線を受光して温度を検出する3つのセンサ素子と、センサ素子に接続されセンサ本体内を挿通されたリード線と、を備えているので、3つの測定対象物の隙間に挿入、設置するだけで3つのセンサ素子を三方の測定対象物に向けて同時に設置でき、3つの測定対象物の温度を非接触で同時に測定することができる。
また、測定対象物に対して非接触で温度を測定可能であるため、直接測定対象物の表面に取り付ける必要が無く、電池セル等の測定対象物への冷却空気の流れを阻害し難く、良好な冷却効果を得ることができる。なお、センサ本体を三角筒状にすれば、内部を冷却空気が流通可能になるため、より良好な冷却空気の流通が得られる。
さらに、3つのセンサ素子に接続されたリード線がセンサ本体内を挿通されているので、センサ素子毎に個別の配線を別途配設する必要が無く、配線コスト及び部材コストを削減可能であると共に設置やメンテナンス等の作業性にも優れている。また、配線スペースを極力省くことができ、狭い設置スペースでも容易に設置可能で通気性も確保可能である。
【0009】
また、本発明の温度センサは、複数の前記センサ本体が、その軸線方向に連結されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、複数のセンサ本体が、その軸線方向に連結されているので、複数の電池セル等の測定対象物が直列に連結されて3本の直線状の測定対象物とされている場合、これらの直線状の測定対象物の隙間にこれらに沿って容易に挿入配置することができると共に、連結された複数の測定対象物を測定することが可能になる。
【0010】
また、本発明の温度センサは、前記センサ本体に、設置状態で前記測定対象物に当接可能に突出した支持体が複数設けられていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、センサ本体に、設置状態で測定対象物に当接可能に突出した支持体が複数設けられているので、温度センサと測定対象物との距離及び隙間を支持体によって一定に保ち、電池セル等の測定対象物の場合、冷却空気の流路を一定に保つことができる。
【0011】
また、本発明の温度センサは、前記センサ素子が、薄膜サーミスタであることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、センサ素子が、薄膜サーミスタであるので、センサ本体の外周面に所望の受光面積で容易に設置又は形成可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、三角柱状又は三角筒状のセンサ本体の各外周面に設けられ測定対象物から放射される赤外線を受光して温度を検出する3つのセンサ素子と、センサ素子に接続されセンサ本体内を挿通されたリード線と、を備えているので、3つの測定対象物の隙間に挿入、設置するだけで3つのセンサ素子を三方の測定対象物に向けて同時に設置でき、3つの測定対象物の温度を非接触で同時に測定することができる。
また、電池セル等の測定対象物への冷却空気の流れを阻害し難く、高い通気性によって良好な冷却効果を得ることができると共に、配線コスト及び部材コストを削減可能であり、設置やメンテナンス等の作業性にも優れている。
したがって、本発明の温度センサは、組電池を構成する電池セルの隙間に設置して周囲の複数の電池セルの温度監視を行う温度センサとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る温度センサの第1実施形態において、温度センサを示す斜視図である。
【図2】第1実施形態において、複数の測定対象物(電池セル)の隙間に設置された温度センサを示す正面図である。
【図3】本発明に係る温度センサの第2実施形態において、温度センサを示す斜視図である。
【図4】第2実施形態において、連結されたセンサ本体のうち中央のセンサ本体を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態において、複数の測定対象物(電池セル)の隙間に設置された温度センサを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る温度センサの第1実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
本実施形態の温度センサ1は、図1及び図2に示すように、例えば円柱状の測定対象物Cとして直列に並んで接続された複数の電池セルの列を3列、三方に並列に並べて構成された組電池の温度監視を行うために測定対象物Cの隙間に設置される非接触温度センサである。この温度センサ1は、3つの外周面を有する三角柱状のセンサ本体2と、該センサ本体2の各外周面に設けられ測定対象物Cから放射される赤外線を受光して温度を検出する3つのセンサ素子3と、各センサ素子3に接続されセンサ本体2内を挿通された複数のリード線4と、を備えている。
【0016】
上記センサ素子3は、長方形状の受光面が形成された薄膜サーミスタである。この薄膜サーミスタとして、NTC型、PTC型、CTR型等のサーミスタがあるが、本実施形態では、NTC型サーミスタを採用している。このサーミスタ素子は、Mn−Co−Cu系材料、Mn−Co−Fe系材料等のサーミスタ材料で形成されている。
【0017】
上記センサ本体2は、断面正三角形状の三角柱に、例えばエンジニアリング・プラスチック又はスーパーエンジニアリング・プラスチックで形成されている。エンジニアリング・プラスチックとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(ナイロン)(PA)等が採用可能である。また、スーパーエンジニアリング・プラスチックとしては、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)等が採用可能である。
【0018】
上記各リード線4は、対応するセンサ素子3の電極(図示略)に接続され、センサ本体2内に挿通された配線管5に通されてそれぞれ一端が外部に引き出されている。これらリード線4のうち、1本は全てのセンサ素子3の一方の電極に接続されたコモン線とされ、他のリード線4は、対応するセンサ素子3の他方の電極に接続された個別測定線とされている。
【0019】
この温度センサ1は、三方に並列に配置された3つの測定対象物Cの隙間に挿入すると共に各センサ素子3がそれぞれ一つの測定対象物Cに対向するようにして設置される。この状態で、測定したい測定対象物Cに対向したセンサ素子3に対応するリード線4(コモン線及び対応する個別測定線)によって当該センサ素子3の電気抵抗を測定することで、各測定対象物Cの温度を測定することができる。
【0020】
このように本実施形態の温度センサ1では、三角柱状のセンサ本体2の各外周面に設けられ測定対象物Cから放射される赤外線を受光して温度を検出する3つのセンサ素子3と、センサ素子3に接続されセンサ本体2内を挿通されたリード線4と、を備えているので、3つの測定対象物Cの隙間に挿入、設置するだけで3つのセンサ素子3を三方の測定対象物Cに向けて同時に設置でき、3つの測定対象物Cの温度を非接触で同時に測定することができる。
【0021】
また、測定対象物Cに対して非接触で温度を測定可能であるため、直接測定対象物Cの表面に取り付ける必要が無く、電池セル等の測定対象物Cへの冷却空気の流れを阻害し難く、良好な冷却効果を得ることができる。
さらに、3つのセンサ素子3に接続されたリード線4がセンサ本体2内を挿通されているので、センサ素子3毎に個別の配線を別途配設する必要が無く、配線コスト及び部材コストを削減可能であると共に設置やメンテナンス等の作業性にも優れている。
【0022】
また、配線スペースを極力省くことができ、狭い設置スペースでも容易に設置可能で通気性も確保可能である。
また、センサ素子3が、薄膜サーミスタであるので、センサ本体2の外周面に所望の受光面積で容易に設置又は形成可能である。
【0023】
次に、本発明に係る温度センサの第2実施形態について、図3から図5を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0024】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、センサ本体2が一つだけであるのに対し、第2実施形態の温度センサ21では、図3から図5に示すように、複数(3つ)のセンサ本体2が、その軸線方向に連結されている点である。また、第2実施形態の温度センサ21では、真ん中のセンサ本体2に、設置状態で測定対象物Cに当接可能に突出した支持体27が複数設けられている点でも第1実施形態と異なっている。
【0025】
すなわち、第2実施形態では、3つのセンサ本体2が挿通された配線管5で接続されて直線状に連結されている。また、各センサ本体2のセンサ素子3に接続されたリード線4は、それぞれ配線管5を挿通されて外部に一端が引き出されている。
【0026】
また、連結された3つのセンサ本体2のうち中央のセンサ本体2には、各外周面にそれぞれ2本の円柱状の支持体27が外周面の対抗方向に向けて一定の突出量で突出している。各支持体27は、振動を吸収可能なある程度の柔軟性を有したゴム材等の材料で形成することが好ましい。なお、第2実施形態では、3つのセンサ本体2のうち中央のものに、上記支持体27を設けているが、他のセンサ本体2にも同様に支持体27を設けても構わない。
【0027】
したがって、測定対象物Cとして3つの電池セルが直列に並んで接続されて三方に並列に配置されている場合、これらの測定対象物Cの中央の隙間に温度センサ21を挿入し、各外周面のセンサ素子3を各測定対象物Cに向けて設置することで、連結されたセンサ本体2毎に3つの測定対象物Cに対応するセンサ素子3をそれぞれ向けることができる。したがって、一つの温度センサ21で、全部で9つの測定対象物Cを同時に測定可能になる。
【0028】
このように第2実施形態の温度センサ21では、複数のセンサ本体2が、その軸線方向に連結されているので、複数の電池セル等の測定対象物Cが直列に連結されて3本の直線状の測定対象物Cとされている場合、これらの直線状の測定対象物Cの隙間にこれらに沿って容易に挿入配置することができると共に、連結された複数の測定対象物Cを測定することが可能になる。
【0029】
また、センサ本体2に、設置状態で測定対象物Cに当接可能に突出した支持体27が複数設けられているので、温度センサ21と測定対象物Cとの距離及び隙間を支持体27によって一定に保ち、電池セル等の測定対象物Cの場合、冷却空気の流路を一定に保つことができる。
【0030】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
例えば、上記各実施形態では、センサ本体の一つの外周面に一つのセンサ素子が設けられているが、複数のセンサ素子を設けても構わない。例えば、センサ素子を、外周面毎に軸線方向に複数設けることにより、複数の測定対象物が軸線方向に沿って連結されている場合に、これら測定対象物に同一の外周面内の各センサ素子をそれぞれ対向させて設置でき、これら測定対象物を同時に測定することが可能になる。したがって、一つのセンサ本体で軸線方向に連結された複数の測定対象物も同時に測定することが可能になる。
【0032】
また、上記各実施形態では、三角柱状のセンサ本体を採用しているが、三角筒状のセンサ本体を採用しても構わない。このようにセンサ本体を三角筒状にすれば、内部を冷却空気が流通可能になるため、より良好な冷却空気の流通が得られる。
また、上述したように上記センサ素子として薄膜サーミスタを採用することが好ましいが、他のセンサ素子として、例えばチップ型のサーミスタ素子を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0033】
1,21…温度センサ、2…センサ本体、3…センサ素子、4…リード線、27…支持体、C…測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三方に並列に配置された3つの測定対象物の隙間に設置される温度センサであって、
3つの外周面を有する三角柱状又は三角筒状のセンサ本体と、
該センサ本体の各外周面に設けられ前記測定対象物から放射される赤外線を受光して温度を検出する3つのセンサ素子と、
前記センサ素子に接続され前記センサ本体内を挿通されたリード線と、を備えていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
複数の前記センサ本体が、その軸線方向に連結されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記センサ本体に、設置状態で前記測定対象物に当接可能に突出した支持体が複数設けられていることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の温度センサにおいて、
前記センサ素子が、薄膜サーミスタであることを特徴とする温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33480(P2011−33480A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180095(P2009−180095)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】