説明

温度ヒューズおよび温度ヒューズの製造方法

【課題】温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金が溶断する際に、一対のリード導体間の低融点可溶合金の溶断不良を防止し得る構成とし、信頼性、安全性を向上させた温度ヒューズを提供することにある。
【手段】一対のリード導体1、1の各対向端部11、11に低融点可溶合金2を溶接して一対のリード導体を接合した接合部3を有し、接合部3または接合部3を含む前記一対のリード導体1、1の中央部近傍の位置において厚さ方向に貫通し開口部7を形成している。そして、開口部7の長手方向の大きさPが、接合部3の長手方向全体の大きさQと同等に設定しているかまたは接合部3の長手方向全体の大きさQより大きくなるように設定している。このため、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって一対のリード導体1、1間の低融点可溶合金2が溶断不良する虞がなく、リード導体1上において幅方向一方に偏在する虞がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度ヒューズおよび温度ヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格以上の大電流から電気回路を保護、あるいは加熱や発火といった事故を防止する部品としてヒューズが知られている。ヒューズは電気回路内に置かれ、普段は導体として振る舞う。しかし何らかの異常によって電気回路に定格以上の電流が流れると、自らを流れる電流によって発生したジュール熱が自らを溶かし、自らが置かれる回路を切断して電気回路に流れる電流を断つ。
【0003】
温度ヒューズは内部抵抗が非常に低いので、温度ヒューズを備える機器の電気回路を流れる電流による自己発熱は殆どなく、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって可溶体(低融点可溶合金)が溶断し、温度ヒューズのリード導体間の導通が遮断されて、機器の電気回路が開路する構成になっている。
【0004】
温度ヒューズは、例えば、モバイル機器や車両部品の電源である二次電池等に使用されている。最近では、携帯電話等のモバイル機器の高性能化に伴い、各種機器の電源である二次電池、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池の小型・高容量化が進み、それらの電池の安全保護対策が重要となっている。このような中、二次電池の過熱保護に最適な小形・薄形化した温度ヒューズが望まれている。
【0005】
このようなリチウム電池等の電機部品に内蔵される温度ヒューズとしては、例えば、特許文献1に挙げられる温度ヒューズ等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−210207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている薄型温度ヒューズでは、一対のニッケル板を所要の間隔を設けて金型内に載置し、その板間に低融点可溶合金を鋳込んでヒューズ板を製作している。そして、ヒューズ板を短冊状に切断するとともに、図9に示すように、低融点可溶合金部分からなるヒューズ素子5の中程に透孔6を形成してヒューズ素子切断部5bを2条としている。
【0008】
しかしながら、図9に示すような従来の温度ヒューズでは、当該温度ヒューズを設置した機器に対する温度ヒューズの設置方向や温度勾配によっては、図10に示すように、低融点可溶合金からなるヒューズ素子5が溶融したときに設置方向や勾配のいずれか一方側に偏在し、分断可能な通常の体積を超える危険がある。つまり、偏在し溶融しきれなかったヒューズ素子5により一対のリード導体1、1間の導通が遮断されないために、当該温度ヒューズを備える機器が動作不良を起こすといった問題があった。この傾向は温度ヒューズが大型化するほど増加するため、温度ヒューズの高容量化の妨げとなっていた。
また、当該温度ヒューズを備えた電気機器に高電流を通電する場合、最後に分断する可溶合金条(偏在した箇所の可溶合金条)に負荷が集中する事により、温度ヒューズを内装する外装体(例えば耐熱フィルム)に損傷を生じる場合があった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたもので、その目的とするところは、十分な絶縁間隔を隔てて配置した一対のリード導体の各対向端部を含んで低融点可溶合金により溶接された接合部を有する温度ヒューズにおいて、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって当該低融点可溶合金が溶断する際に、一対のリード導体間の低融点可溶合金の溶断不良を防止し得る構成とし、信頼性、安全性を向上させた温度ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、各リード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接して一対のリード導体を接合した接合部と、接合部または接合部を含む一対のリード導体の中央部近傍の位置において厚さ方向に貫通した開口部と、を有し、開口部の長手方向の大きさが、接合部の長手方向全体の大きさと同等に設定しているかまたは接合部の長手方向全体の大きさより大きくなるように設定している。さらに、リード導体の対向端部は、一対のリード導体の各対向面部と、各対向面部に連続した面である各上面部および/または各下面部と、を含んでなる温度ヒューズである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る温度ヒューズは、高電圧通電時の可溶合金溶断の際の一対のリード導体間の絶縁を十分なものとするための絶縁距離を確保することができる。温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金が溶断した後、凝固前の溶融状態の移動可能な低融点可溶合金が幅方向に移動しようとしても開口部が開口しているため幅方向に移動することはできず、リード導体上において幅方向一方に偏在する虞がない。よって、溶融状態の可溶合金が温度ヒューズ上の一部箇所に偏在し、溶断不可能な体積を形成するといった不具合を防止することができる。よって、所定の過電流が流れたときにこの過電流で回路を遮断させるように構成することにより、より一層の安全性を高めることが可能となる。
また、接合部を含む低融点可溶合金の量や接合部の面積に対して十分な幅の開口部を設定することについても、同様の効果を奏することができる。
また、一対のリード導体の対向端部の間隔(対向面部の間隔)にも低融点可溶合金を充填することで、従来の温度ヒューズの構成に比べて、より高い定格電圧、定格電流に対応することができる。それと共に、温度ヒューズの小型化、高容量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の製造方法の一例を示す斜視図である。
【図2】短冊状に切断された本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【図3】開口部が開口した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図4】幅方向両端部に切欠部を形成した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【図5】接合部および低融点可溶合金の上下面にフラックスを塗布した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【図6】本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金を有した温度ヒューズを示す斜視図である。
【図7】図6のC−C断面図である。
【図8】他の実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図9】従来例におけるリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【図10】従来例において可溶合金が偏在した状態のリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
【0014】
まず、図1に基づいて、本実施形態に係る温度ヒューズ用のリード導体付き低融点可溶合金5(以下、「リード導体付き低融点可溶合金」を単に「リード片付きヒューズ素子」と称する)の製造方法について説明する。図1は、本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子の製造方法の一例を示す斜視図である。
【0015】
始めに、低融点可溶合金に対し離型性かつ耐熱性を有する作業台A(例えばステンレス台等)上に、リード導体1としての機能を有する長尺状条材10、10を所定の間隔Dを隔てて配置する。なお、ここでいう「所定の間隔D」の「D」とは、対向し合う長尺状条材10、10の対向端部11、11間の寸法のことであり、このとき、長尺状条材10、10が所定の間隔Dを介して配列している方向を「長手方向」とし、長手方向に垂直な方向、例えば、所定の間隔Dに沿った方向を「幅方向」とする。
【0016】
次に、長尺状条材10、10間に低融点可溶合金線材を供給しつつ、半田ごてBを押し当てて当該低融点可溶合金線材を溶融させて低融点可溶合金の溶湯20にする。続けて、半田ごてBを図中の矢印の方向に連続的に移動させながらその低融点可溶合金の溶湯20を、長尺状条材10、10の間隔Dおよび対向端部11、11にまたがって供給し、表面張力で定まる曲面状に凝固させる。もしくは、溶融低融点可溶合金の溶湯20を走行ノズルで供給し、表面張力で定まる曲面状に凝固させる。なお、条材10の溶接面には予め溶接用フラックス4を塗布する事が望ましい。
【0017】
しかる後、長尺状の状態から、適宜所望する定格電流に対応した温度ヒューズを構成することができる寸法のリード片付きヒューズ素子5の寸法となるように、短冊状にカットする(図2参照)。
【0018】
以上より、長手方向に間隔Dを隔てて対向する一対のリード導体1、1と、各リード導体1、1の対向端部11、11に低融点可溶合金2を溶接して前記一対のリード導体1、1を接合した接合部3と、を有するリード片付きヒューズ素子5が得られる。
【0019】
次に、本実施形態で使用するリード導体1の条材10および低融点可溶合金2について説明する。
【0020】
本実施形態で用いるリード導体1としては一般的に温度ヒューズに使用されている帯状リード導体でよく、リード導体用の条材10(母材)としては、長尺状の色々な金属や合金等を用いることができる。例えば、本実施例において、帯状リード導体1の母材としてはニッケル導体または銅導体等を使用している。可溶合金との溶接性の良好な材料、例えば、ニッケル導体の場合には、その表面には、Sn、Au、Cu、Ag等がメッキ処理またはクラッド処理等を施してその表面に溶接性の良い金属膜を設けることによって溶接面の範囲を制御することができる。また、溶接性の良くない材料、例えば、銅導体の場合には、全面または低融点可溶合金エレメントが溶接される部分以外に、銅移行阻止膜として、可溶合金との溶接性が劣るNi等の縞状メッキ処理またはクラッド処理を施し、さらにNiの上にSn、Au、Cu、Ag等をメッキ処理する事ができる。
【0021】
低融点可溶合金2の材質としては、In−Bi系、Sn−In−Bi系、これらの合金系に機械的強度の向上や温度特性の調整のためのCu、Ag、Sb、Zn等の元素を0.1〜4.0%質量%添加したものを使用することができる。
【0022】
なお、低融点可溶合金2の融点は保護すべき電子・電気機器、例えば二次電池の上限温度(許容温度)に応じて設定してあり、機器が何らかの原因で上限温度に達すると低融点可溶合金2が溶融され、既に溶融されたフラックス4の活性作用や濡れ促進作用等により溶融合金の球状化分断が促され、その分断により機器への通電が遮断される。
【0023】
リード片付きヒューズ素子5における低融点可溶合金2の形状は、図2に示すように、低融点可溶合金2の長手方向の形状は、一対のリード導体1、1の間隔Dの中央近傍位置において、突部が最大となる断面視曲面状であり、低融点可溶合金2の中間部21の一部が、間隔Dを隔てて対向するリード導体1、1の対向端部11、11間に図2に示すように入り込んで接合している。なお、図2に示すように、入り込み部分21の下面と帯状リード導体1、1の下面とをほぼ面一にすることもできる。他方、低融点可溶合金2の長手方向の両端部近傍22、22それぞれは、各リード導体端部11、11の上面に接合している。低融点可溶合金2の対向するリード導体対向端部11、11間への入り込み体積は低融点可溶合金全体積の10〜20%程度である。
【0024】
また、接合部3は、一対のリード導体1、1それぞれの対向端部11、11に低融点可溶合金2を溶接して一対のリード導体1、1を接合している。詳しくは、一対のリード導体1、1の対向端部11、11は、一対のリード導体1、1の各対向面部111、111と、各対向面部111、111に連続した面である各上面部112、112および各下面部113、113と、を含んでなり、それぞれに低融点可溶合金2が溶接されている。なお、対向面部111、111の間隔Dまたは下面部113の溶接を省略することも可能である。つまり、一対のリード導体1、1を各上面部112、112に低融点可溶合金2を溶接することで一対のリード導体1、1を接合することも可能である。
また、一対のリード導体1、1の対向面部111、111(対向端部11、11)の間隔Dに溶接する低融点可溶合金2の量を調節することで、一対のリード導体1、1の対向面部111、111(対向端部11、11)の間隔Dに低融点可溶合金2を充填することも可能である。
【0025】
なお、上記実施形態では、低融点可溶合金2の上面の形状を、断面視曲面状であると記載したが、曲面状に限らずほぼ同一厚みの平面状でもよい。半田ごてや走行ノズルではなくプレス加工等で平面状に形成してもよい。いずれにしても、温度ヒューズにおける低融点可溶合金2としての機能を奏しさせすればどのような形状でも構わない。
【0026】
また、図2に示す実施例では、低融点可溶合金2の幅方向の寸法と、帯状リード導体1の幅方向の寸法とを等しくしてあるが、低融点可溶合金2の寸法を帯状リード導体1の寸法よりも狭くすることができる。この場合、必要に応じて帯状リード導体1の先端の一部を低融点可溶合金2の幅に合わせて切除することもできる。
【0027】
次に、本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5の開口部7について、図3(a)、(b)に基づいて説明する。図3は開口部7が開口した本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5の図面で、(a)は斜視図であり、(b)は上面図である。
【0028】
本実施形態では、開口部7が1つだけ開口している場合について説明する。
【0029】
まず、上述したように、接合部3は、一対のリード導体1、1それぞれの対向端部11、11に低融点可溶合金2を溶接して一対のリード導体1、1を接合している。本実施形態では、図3に示すように、その接合部3を含む一対のリード導体1、1の中央部近傍の位置において厚さ方向に開口部7を貫通する。このとき、開口部7の長手方向の大きさPは、接合部3の長手方向全体の大きさQより大きくなるように設定している。
【0030】
なお、開口部7は、低融点可溶合金2、リード導体端部11と低融点可溶合金2との接合部分である接合部3それぞれにおいて必要な寸法だけ打ち抜き、切削、研磨等により厚さ方向に貫通させている。
【0031】
以上のような構成にしたことにより、本実施形態に係る温度ヒューズは、高電圧通電時の可溶合金溶断の際の一対のリード導体1、1間の絶縁を十分なものとするための絶縁距離を確保することができる。温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金2が溶断した後、凝固前の溶融状態の移動可能な低融点可溶合金が幅方向に移動しようとしても開口部が開口しているため幅方向に移動することはできず、リード導体1上において幅方向一方に偏在する虞がない。よって、溶融状態の可溶合金が温度ヒューズ上の一部箇所に偏在し、溶断不可能な体積を形成するといった不具合を防止することができる。よって、所定の過電流が流れたときにこの過電流で回路を遮断させるように構成することにより、より一層の安全性を高めることが可能となる。
また、接合部2を含む低融点可溶合金3の量や接合部3の面積に対して十分な幅の開口部7を設定することについても、同様の効果を奏することができる。
また、一対のリード導体1、1の対向端部11、11の間隔D(対向面部111、111の間隔D)にも低融点可溶合金2を充填することで、従来の温度ヒューズの構成に比べて、より高い定格電圧、定格電流に対応することができる。それと共に、温度ヒューズの小型化、高容量化を図ることができる。
【0032】
また、例えば、特許文献1に記載されたような温度ヒューズの製造方法では、短冊状に切断したヒューズ片を貼着テープ等の上に並べた後、その各リード片付きヒューズ素子表裏にフラックスを塗布し、耐熱フィルム片でもって、両リード片の接合部に亘り、被覆する。このとき、フィルム片の両側縁部間には接着剤を介在して密封する。次に、ヒューズ片の両側で耐熱フィルム片を溶断して、切断と共に両フィルム片を接合密封して温度ヒューズを得ていた。つまり、貼着テープ上にヒューズ片を間隔を空けて一つ一つ並列させていた。これに対して本実施形態に係る温度ヒューズは、一体物ととして、長尺状条材10、10を所定の間隔Dを空けて配置し、低融点可溶合金2を半田ごてBで溶湯20させて凝固させたものを短冊状にカットしてリード片付きヒューズ素子5を得ている。一つ一つ並列させてヒューズ片を製造する方法と、一体物からリード片付きヒューズ素子5を製造する方法から得られるリード片付きヒューズ素子は、製造するときの精度のばらつきに大きく差が出、本実施形態に係る温度ヒューズは、特許文献1記載のような製造方法の温度ヒューズに比べて精度や品質等の信頼性の面でも大きく異なり、向上したものである。
また、並列させた場合、それぞれの間隔が一定ではない不具合が生じる可能性があり、出来上がる温度ヒューズを構成するヒューズ片の位置関係に不具合が生じる。その点で、工場におけるライン単位となると本発明のほうが経済的にも優れている。
【0033】
なお、図示していないが、接合部3の中央部近傍の位置において、または接合部3を含む一対のリード導体1、1の中央部近傍の位置において、厚さ方向に開口部7を貫通する。開口部7の長手方向の大きさPが、接合部3の長手方向全体の大きさQと同等に設定することも可能である。ここでいう「同等」は、各大きさP、Qの互いの値の公差の範囲を逸脱しない程度の寸法を含む。完全同等値ではなく、多少大きいまたは少ない寸法である場合も含む。
【0034】
開口部7の大きさおよび形状は、低融点可溶合金2が溶融状態のときに、幅方向一方側の低融点可溶合金2がリード導体1上を伝って幅方向他方側に移動できない開口部7の長手方向および/または幅方向の大きさ、および/または形状であることが望ましい。
また、開口部7がなす上面視の形状は、矩形状、つづみ状、真円状、長円状、正方形、菱形などの種々のものを採用することができる。
【0035】
また、図4に示すように、低融点可溶合金2の幅方向の少なくとも一方に切欠部25を設けることが好ましい。図4は、低融点可溶合金2の幅方向両端部に切欠部25、25を形成した本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5の斜視図である。
本実施形態では、対向するリード導体先端端面間への入り込みを行った低融点可溶合金部分でもあり、接合部3の長手方向中央部近傍(一対のリード導体1、1の間隔D近傍)において、低融点可溶合金2の幅方向両端部に2カ所、幅方向内側に切り欠いた切欠部25を設けている。
このような構成にすることにより、低融点可溶合金2の球状化分断が生じ易くなり、リード導体1、1間の低融点可溶合金2の溶断不良を防止することができる。
また、詳細は図5で後述するが、切欠部25、25を設けたことにより、フラックス4が当該切欠部25、25に入り込み、幅方向での温度ヒューズ全体の大きさを、切欠部がない状態と比較して小さくすることができ、結果として、幅方向端部におけるフラックス4の突出を防ぎ、温度ヒューズの幅方向の拡がりを抑え、当該切欠部25、25が温度ヒューズの小型化に貢献することができる。
また、溶断を生じ易くするために低融点可溶合金2の中央部両側に切欠部25、25を設けたとしても、リード導体先端端面11、11間に入り込んだ低融点可溶合金部分21のために、低融点可溶合金2の中央部における断面積を十分に確保でき、電流容量を確保することができる。
なお、低融点可溶合金2と封着剤9とが直接接触していると、可溶合金が溶融しても封着剤が糊のように可溶合金に着いているために、可溶合金を溶断することができない。そこで、低融点可溶合金2と封着剤9との間にフラックス4を設けている。このとき、温度ヒューズの幅方向の大きさを小さくするために、切欠部25、25は幅方向両端部に設けていることが望ましい。また、耐熱フィルム8の大きさが大きくてもいい場合は切欠部25、25を設けない構成にしてもよい。
【0036】
リード片付きヒューズ素子5を用いて本実施形態に係る温度ヒューズ50を製造方法について、図5に基づいて説明する。図5は、接合部および低融点可溶合金の上下面にフラックスを塗布した本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5の斜視図である。
【0037】
フラックスを低融点可溶合金2の上面側に符号41で示すように塗布し、低融点可溶合金2の入り込み部20の下面および当該下面に隣在する帯状リード導体1下面部分に符号42で示すようにフラックスを塗布している。
上側フラックス41は、帯状リード導体1の端部上面に溶接された低融点可溶合金2を100%覆うように塗布されている。上面側フラックス31の塗布厚みは、帯状リード導体の端部上面に溶接された低融点可溶合金部分の平均厚みの70〜100%とすることが好ましい。
下側フラックス42の塗布厚みは、温度ヒューズ本体の下面側から低融点可溶合金への熱伝達性(感温性)を保証するために、下面側絶縁体厚み(下側フィルムと下側接着剤との総厚み)の50%以下とすることが好ましい。
フラックス4には、ロジン系を主成分とし、活性剤、例えば、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸等)を添加したものを使用する。
【0038】
続いて、図5および図6に示すように、図4の状態の温度ヒューズ50に、上下方向から耐熱フィルム8、8を挟み、上下耐熱フィルム8、8間の空間を封着剤9で埋めて、上側フラックス41、下側フラックス42が封着剤9を介して挟持されている。なお、図6は、リード片付きヒューズ素子5を有した本実施形態に係る温度ヒューズ50を示す斜視図であり、図7は図6のC−C断面図である。
【0039】
耐熱フィルム8には、PET、PC、PEN等のエンジニアリングプラスチックフィルム、ガラスクロス基材エポキシ耐熱フィルム、セラミック、樹脂フィルム等を使用する。なお、一枚物で上下から挟むようにして使用することも可能である。
【0040】
封着剤9としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂、シリコン樹脂等を使用することができる。一般的に常温硬化性の接着剤が用いられる。耐熱フィルムに予め塗布することや、耐熱フィルムで挟んだ後に注入する等の方法で温度ヒューズに封着剤を供給することができ、固定化させることができる。
【0041】
低融点可溶合金2の各端と封着剤9の各内端とを一致させて、合金端部の封着剤界面への食い込みを排除したり、合金端と封着剤内端との間に間隔が生じるのを排除しているが、不一致でも、その間の距離が±0.3mm以下であれば、実質上、支障をきたさない。
【0042】
本実施形態に係る温度ヒューズを製造するには、(1)作業台上において、リード導体付きフラックス塗布低融点可溶合金を下側耐熱フィルム上に配置し、下側塗布フラックスの粘着力でその配置位置への固定状態を担保し、次いで未硬化接着剤塗布耐熱フィルムを接着剤面を下側にして前記下側配置耐熱フィルム上に配置し、この上側の配置耐熱フィルムを治具で押さえた状態で接着剤を硬化させる方法がある。または、(2)として、作業台上に、未硬化接着剤塗布耐熱フィルムを接着剤面を上側にして配置し、フラックス塗布低融点可溶合金接続リード導体を下側耐熱フィルム上に配置し、未硬化接着剤の粘着力でその配置位置への固定状態を担保し、次いで未硬化接着剤塗布耐熱フィルムを接着剤面を下側にして前記下側配置耐熱フィルム上に配置し、この上側の配置耐熱フィルムを治具で押さえた状態で接着剤を硬化させる方法を使用することができる。
【0043】
本実施形態に係る温度ヒューズにおいては、ヒートサイクル時に発生する低融点可溶合金の熱膨張力が、対向するリード導体先端端面間に入り込んだ低融点可溶合金部分とリード導体先端端面との接触面でも支持されるから、前記熱膨張力に対し、低融点可溶合金とリード導体先端部との接合箇所に作用する反力が低減される。したがって、低融点可溶合金とリード導体先端部との接合箇所の対ヒートサイクル安定性を向上できる。
また、温度ヒューズ本体の下面側からの熱伝達に対し、低融点可溶合金の入り込み厚みだけ低熱伝達物(フラックス)の厚みを薄くできるから、下面側からの感熱性をそれだけアップできる。
【0044】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、開口部7は1つだけであったが、図8に示すように設けることも可能である。図8は、他の実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5aの図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。この実施形態では、開口部7aが、接合部3の幅方向に亘って、複数個(この実施形態では3個)間隔をおいて並列にそれぞれ設けられている。
このように構成することにより、複数のリード片付きヒューズ素子を並列に用いて高容量化した場合に比べて、低融点可溶合金2またはフラックス4等の接合部材が均一で連続した同一単体のものを使用したこととなり、かつ、均一に塗布されることになるため、それぞれの温度ヒューズの動作は一定のものを得ることができ、信頼性は高くなる。
また、複数個の開口部7aを設けることで、低融点可溶合金2の数を調節し、あらゆる電気容量に対応させることができる。
【0046】
また、図示していないが、低融点可溶合金2の長手方向の寸法が、幅方向に亘って不均一であってもよい。そして、開口部7の長手方向の寸法が、接合部を含む低融点可溶合金の長手方向全体の寸法よりも大きくなるように設定することも可能である。
低融点可溶合金2の幅に変化を持たせることによって、最終的に溶断することで負荷が集中する可溶合金を指定することができ、耐熱フィルムの部分強化等の対策を施すことが可能となる。動作電流が流れているときにアークが発生するため、最後に動作する箇所の低融点可溶合金の幅が最大であることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、家庭電気製品、OA機器、AV機器(オーディオ・ビジュアル機器)、コンピュータ、通信機器、計測機器および、パーソナル機器の他、モバイル機器や車両部品の電源である二次電池等に利用することができる。最近では、携帯電話等のモバイル機器の高性能化に伴い、各種機器の電源である二次電池、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池の小型・高容量化が進み、それらの電池の安全保護対策が重要となっている。このような中、本発明は、繰返し充放電が可能な電池、すなわち二次電池の過熱保護に最適な小形・薄形化した保護部品として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 リード導体
10 長尺状条材
11 対向端部
111 対向面部
112 上面部
113 下面部
2 低融点可溶合金
20 溶湯
21 入り込み部分
22 長手方向の端部
25 切欠部
3 接合部
4 フラックス
41 上側フラックス
42 下側フラックス
5 リード導体付き低融点可溶合金(リード片付きヒューズ素子)
50 温度ヒューズ
7 開口部
8 耐熱フィルム
9 封着剤
A 作業台
B 半田ごて
D 一対のリード導体の長手方向の間隔
P 開口部の長手方向の寸法
Q 接合部の長手方向の寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、
前記各リード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接して前記一対のリード導体を接合した接合部と、
前記接合部または前記接合部を含む前記一対のリード導体の中央部近傍の位置において厚さ方向に貫通した開口部と、
を有し、
前記開口部の長手方向の大きさが、前記接合部の長手方向全体の大きさと同等に設定しているかまたは前記接合部の長手方向全体の大きさより大きくなるように設定している温度ヒューズ。
【請求項2】
前記リード導体の対向端部は、
前記一対のリード導体の各対向面部と、
前記各対向面部に連続した面である各上面部および/または各下面部と、
を含んでなる請求項1に記載の温度ヒューズ。
【請求項3】
前記開口部が、
前記接合部の前記長手方向に垂直な方向である幅方向に亘って、
複数個間隔をおいて並列にそれぞれ設けられている請求項1または請求項2に記載の温度ヒューズ。
【請求項4】
前記低融点可溶合金の長手方向の寸法が、幅方向に亘って不均一である請求項1から請求項3のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項5】
前記開口部の前記長手方向の寸法は、前記接合部を含む前記低融点可溶合金の長手方向全体の寸法より大きい請求項1から請求項4のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項6】
前記低融点可溶合金の少なくとも幅方向一方に切欠部を設けた請求項1から請求項5のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項7】
前記接合部の長手方向中央部近傍において、前記低融点可溶合金の幅方向両端部に前記切欠部を設けた請求項6記載の温度ヒューズ。
【請求項8】
前記間隔の長手方向中央部近傍に位置する低融点可溶合金の中央部近傍の厚さ寸法が、前記リード導体の対向面部を含む前記接合部分より厚くなっている請求項1から請求項7のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項9】
前記一対のリード導体と、
前記リード導体間を接続するように接合した低融点可溶合金と、
前記低融点可溶合金の表裏両側から封着剤を介して前記低融点可溶合金を前記リード導体の一部と共に上下方向に挟み込んで互いに密着する耐熱フィルムと、
を備える請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項10】
二次電池に接触して取り付けられる請求項1から請求項9のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項11】
前記低融点可溶合金にフラックスを塗布している請求項1から請求項10のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項12】
長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、
前記各リード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接して前記一対のリード導体を接合した接合部と、
前記接合部または前記接合部を含む前記一対のリード導体の中央部近傍の位置において厚さ方向に貫通した開口部と、
を有し、
前記開口部の長手方向の大きさが、前記接合部の長手方向全体の大きさと同等に設定するかまたは前記接合部の長手方向全体の大きさより大きくなるように設定する温度ヒューズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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