温度ヒューズおよび温度ヒューズの製造方法
【課題】温度ヒューズの周囲の温度上昇によって当該低融点可溶合金が溶断する際に、一対のリード導体間の低融点可溶合金の溶断不良を防止し得る構成とし、信頼性、安全性を向上させた温度ヒューズを提供することにある。
【手段】長手方向に間隔Dを隔てて対向する一対のリード導体1、1の対向端部11、11それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝7、7と、一対の切欠溝7、7の幅方向両方に位置するリード導体の対向端部11、11に低融点可溶合金2、2を溶接し、一対のリード導体1、1を接合する接合部3と、を有し、切欠溝7の長手方向の大きさPが、接合部3の長手方向の大きさQと同等に設定しているかまたは接合部3の長手方向の大きさQより大きくなるように設定している。このため、溶融状態の可溶合金が温度ヒューズ上の一部箇所に偏在して溶断不可能な体積を形成するといった不具合を防止できる。
【手段】長手方向に間隔Dを隔てて対向する一対のリード導体1、1の対向端部11、11それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝7、7と、一対の切欠溝7、7の幅方向両方に位置するリード導体の対向端部11、11に低融点可溶合金2、2を溶接し、一対のリード導体1、1を接合する接合部3と、を有し、切欠溝7の長手方向の大きさPが、接合部3の長手方向の大きさQと同等に設定しているかまたは接合部3の長手方向の大きさQより大きくなるように設定している。このため、溶融状態の可溶合金が温度ヒューズ上の一部箇所に偏在して溶断不可能な体積を形成するといった不具合を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度ヒューズおよび温度ヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格以上の大電流から電気回路を保護、あるいは加熱や発火といった事故を防止する部品としてヒューズが知られている。ヒューズは電気回路内に置かれ、普段は導体として振る舞う。しかし何らかの異常によって電気回路に定格以上の電流が流れると、自らを流れる電流によって発生したジュール熱が自らを溶かし、自らが置かれる回路を切断して電気回路に流れる電流を断つ。
【0003】
温度ヒューズは内部抵抗が非常に低いので、温度ヒューズを備える機器の電気回路を流れる電流による自己発熱は殆どなく、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって可溶体(低融点可溶合金)が溶断し、温度ヒューズのリード導体間の導通が遮断されて、機器の電気回路が開路する構成になっている。
【0004】
例えば、温度ヒューズは、モバイル機器や車両部品の電源である二次電池等に使用されている。最近では、携帯電話等のモバイル機器の高性能化に伴い、各種機器の電源である二次電池、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池の小型・高容量化が進み、それらの電池の安全保護対策が重要となっている。このような中、二次電池の過熱保護に最適な小形・薄形化した温度ヒューズが望まれている。
【0005】
例えば、特許文献1のように、薄型の温度ヒューズに関する技術が開示されている。特許文献1では、ニッケル板を所要の間隔を設けて、その間に低融点合金62を鋳込んでヒューズ板を制作している。そして、当該ヒューズ板を、短冊状に切断するとともに、図12(a)、(b)に示すように、両リード片64にそれぞれ別々に低融点合金62を渡らしてヒューズ素子65を形成し、切断部65aを複数条とし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−210207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図12に示すような従来の温度ヒューズにおいて、リード片64上にメッキ膜が施している場合があり、当該メッキ膜と低融点可溶合金62(ヒューズ素子65)の構成材料によっては、溶融状態の可溶合金がそのメッキ膜上を移動する(いわゆる濡れた状態にある)場合がある。このような場合、溶融状態の可溶合金自体の重量や温度ヒューズを設置した電気機器の傾き等の要因で、図13(a)、(b)に示すように、溶融状態の可溶合金が移動し偏在してリード導体上に部分的に凝固する虞がある。そのような場合で、リード導体(両リード片64、64)間に可溶合金が再度偏在して固まり接合した状態になるとリード導体間の導通が遮断されないために、当該温度ヒューズを備える機器が動作不良を起こす問題があった。この傾向は温度ヒューズが大型化するほど増加するため、温度ヒューズの高容量化の妨げとなっていた。
また、当該温度ヒューズを備えた電気機器に高電流を通電する場合、最後に分断する可溶合金条(偏在した箇所の可溶合金条)に負荷が集中する事により、温度ヒューズを内装する外装体(例えば耐熱フィルム)に損傷を生じる場合があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたもので、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって当該低融点可溶合金が溶断する際に、一対のリード導体間の低融点可溶合金の溶断不良を防止し得る構成とし、信頼性、安全性を向上させた温度ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝と、一対の切欠溝の幅方向両方に位置するリード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接し、一対のリード導体を接合する接合部と、を有し、切欠溝の長手方向の大きさが、接合部の長手方向の大きさと同等に設定しているかまたは接合部の長手方向の大きさより大きくなるように設定している。さらに、リード導体の対向端部は、一対のリード導体の各対向面部と、各対向面部に連続した面である各上面部および/または各下面部と、を含んでなる温度ヒューズである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る温度ヒューズは、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金が溶断した後、凝固前の溶融状態の移動可能な低融点可溶合金が幅方向に移動しようとしても、低融点可溶合金条と低融点可溶合金条との幅方向の間に、各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝のために、幅方向に移動することはできず、リード導体上において幅方向一方もしくは他方に偏在する虞がない。よって、溶融状態の可溶合金が温度ヒューズ上の一部箇所に偏在し、溶断不可能な体積を形成するといった不具合を防止することができる。よって、所定の過電流が流れたときにこの過電流で回路を遮断させるように構成することにより、より一層の安全性を高めることが可能となる。
また、接合部を含む低融点可溶合金の量や接合部の面積に対して十分な幅の切欠溝を設定することについても、同様の効果を奏することができる。
また、一対のリード導体の対向端部の間隔(対向面部の間隔)にも低融点可溶合金を充填することで、従来の温度ヒューズの構成に比べて、より高い定格電圧、定格電流に対応することができる。それと共に、温度ヒューズの小型化、高容量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】作業台上に一対の長尺状条材を所定の間隔を空けて配置した斜視図である。
【図2】一対の長尺状条材の対向端部に切欠溝を形成した図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図3】一対の長尺状条材の対向端部上で、かつ、切欠溝と切欠溝との幅方向両方に低融点可溶合金を配置した図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図4】図3の二点鎖線に従って短冊状に切断された本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図5】切欠溝の長手方向の大きさが、接合部の長手方向の大きさよりも大きい場合の上面図である。
【図6】本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金が正常動作し、リード導体間が溶断されていることを示す上面図である。
【図7】低融点可溶合金の幅方向両端部に切欠部を形成した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【図8】低融点可溶合金の上面およびリード導体の下面にフラックスを塗布した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【図9】本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金を有した温度ヒューズを示す斜視図である。
【図10】図9のC−C断面図である。
【図11】他の実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図12】従来例におけるリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図13】従来例において溶断後の状態を示す図であり、可溶合金が偏在した状態のリード導体付き低融点可溶合金図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
【0013】
まず、図1から図4に基づいて、本実施形態に係る温度ヒューズ用のリード導体付き低融点可溶合金5(以下、「リード導体付き低融点可溶合金」を単に「リード片付きヒューズ素子」と称する)の構成および製造方法の一例について説明する。
図1は、作業台上に一対の長尺状条材を所定の間隔を空けて配置した斜視図である。図2は、一対の長尺状条材の対向端部に切欠溝を形成した図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。図3は、一対の長尺状条材の対向端部上で、かつ、切欠溝と切欠溝との幅方向両方に低融点可溶合金を配置した図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。図4は、図3の二点鎖線に従って短冊状に切断された本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【0014】
なお、以下の説明において、アルファベットの付いていない各構成部材の数字は、各数字に付いているアルファベット群の総称である。
また、「一対の構成部材」の「一対」は「一方方向」と「他方方向」とからなるとし、ここで、アルファベットaの付いている各構成部材を「一方方向」の構成部材とし、アルファベットbの付いている各構成部材を「他方方向」の構成部材としている。
以上を例えるならば、図2において、一方の長尺状条材を10a、他方の長尺状条材を10bとしている。その長尺状条材10a、10bの総称を長尺状条材10とする。
【0015】
始めに、図1に示すように、低融点可溶合金2に対し離型性かつ耐熱性を有する作業台A(例えばステンレス台等)上に、リード導体1としての機能性を有する長尺状条材10、10を所定の間隔Dを隔てて配置する。なお、ここでいう「所定の間隔D」の「間隔D」とは、対向し合う長尺状条材10、10の対向端部11、11間の寸法のことであり、詳細は後述するが温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金2が溶断した後において、一対のリード導体1、1間の絶縁性能を十分に確保できる程度の距離である。このとき、長尺状条材10、10が所定の間隔Dを介して配列している方向を「長手方向」とし、長手方向に垂直な方向、例えば、所定の間隔Dに沿った方向を「幅方向」とする。
【0016】
本実施形態では、帯状リード導体1(長尺状条材10)の母材としてはニッケル導体を使用している。低融点可溶合金に対し離型性かつ耐熱性を有する作業台A(例えばステンレス台等)上に、リード導体1としての機能を有する長尺状条材10、10を所定の間隔Dを隔てて配置する。
【0017】
本実施形態で用いるリード導体1としては一般的に温度ヒューズに使用されている帯状リード導体でよく、リード導体1の母材である長尺状条材10としては、電気伝導性の有る材料であり、色々な金属や合金等を用いることができる。具体的には、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、金、銀、スズから選ばれる少なくとも一つの単体材料もしくはそれら金属材料の合金、或いは前述の材料グループから選ばれる少なくとも一つの単体もしくは合金に材料グループ以外の元素を含有させた金属材料等が使用できる。
可溶合金との溶接性の良好な材料、例えば、ニッケル導体の場合には、その表面には、Sn、Au、Cu、Ag等がメッキ処理またはクラッド処理等を施してその表面に溶接性の良い金属膜を設けることによって溶接面の範囲を制御することができる。
また、溶接性の良くない材料、例えば、銅導体の場合には、全面または低融点可溶合金エレメントが溶接される部分以外に、銅移行阻止膜として、可溶合金との溶接性が劣るNi等の縞状メッキ処理またはクラッド処理を施し、さらにNiの上にSn、Au、Cu、Ag等をメッキ処理する事ができる。
【0018】
なお、リード導体1(長尺状条材10)の対向する端面から一定距離の範囲に非メッキ層領域を設けてある。非メッキ層が存在することで、後述する低融点可溶合金2のはみ出し部分の形成をより確実に防止することができるようになる。なお、非メッキ層が無い場合であってもよく、リード導体1(長尺状条材10)の対向する端部の表面上にメッキ層が存在する場合でもよい。
また、メッキ層の代わりに、銀ペーストのような金属ペーストの塗布などを用いてもよく、金属蒸着、スパッタなどでもよい。またメッキは電界メッキであっても非電解メッキでもよく、非電解メッキ層の上に電界メッキ層を施して形成してもよい。またメッキ層は単層でもよく二層以上の複数の層から形成されてもよい。メッキ層を複数の層とすることで、低融点可溶合金2との溶接力が高まり、強度が確保されるなどのメリットがある。また、低融点可溶合金2の素材と溶接上の相性のよい素材を選択することが好適である。
【0019】
次に、図2に示すように、間隔Dを隔てて対向する長尺状条材10a、10bの対向端部11a、11bそれぞれから長手方向外方へ必要な寸法Pだけ切り欠いて、一対の切欠溝7a、7bを形成する。なお、切欠溝7は、長尺状条材10の対向端部11に切り欠かれ、切削、研磨等によって長尺状条材10を厚さ方向に貫通している。
ここでいう「必要な寸法P」とは、溶融状態の低融点可溶合金が幅方向に移動しようとしても切欠溝7があるために幅方向に移動できない位置程度まで対向端部11から長手方向に切り欠かれていることを意味する。
【0020】
そして、長尺状条材10、10の対向端部11、11において、幅方向に亘って複数組(本実施形態では3組)の切欠溝7、7を幅方向に間隔を空けて並列にそれぞれ設ける。この「間隔」が位置する箇所は、詳細は後述するが低融点可溶合金条23の端部22が溶接し、接合部3が形成される箇所である。
なお、幅方向における切欠溝7の間隔は等間隔でも不等間隔でもよい。
【0021】
次に、図3に示すように、長尺状条材10上に可溶体からなる低融点可溶合金2が載せる。低融点可溶合金2はここでは直方体形状となっている。低融点可溶合金2はメッキ層の上面にその端面が来るように載せることで、後述する溶接が容易となるようにする。もちろん、低融点可溶合金2がメッキ層を越える範囲で載せられてもよい。この工程の後において、低融点可溶合金2がメッキ層に溶接される。メッキ層に溶接されることで、長尺状条材10と低融点可溶合金2が電気的に接続され、ヒューズとしての動作が可能となる。3は接合部であり、本実施形態においては、リード導体端部11と低融点可溶合金2との溶接部分のことを指す。接合部3によって低融点可溶合金2がメッキ層に確実に接続される。なお、必要に応じてフィルムカバーやケースへの封入も行われる。また、低融点可溶合金2は直方体形状以外に、楕円形状や線状であってもよい。
【0022】
低融点可溶合金2は一定の融点を持つ可溶体であり、導電体である金属などから形成されている。このため、長尺状条材10を通じて低融点可溶合金2を電流が流れる。低融点可溶合金2の材質としては、In−Bi系、Sn−In−Bi系、これらの合金系に機械的強度の向上や温度特性の調整のためのCu、Ag、Sb、Zn等の元素を0.1〜4.0%質量%添加したものを使用することができる。
【0023】
なお、低融点可溶合金2の融点は保護すべき電子・電気機器、例えば二次電池の上限温度(許容温度)に応じて設定している。温度ヒューズが装着された電子機器や電池パック等が異常発熱して温度上昇した場合に低融点可溶合金2が溶断する。結果として電子機器や電池パック等への通電が遮断される。
【0024】
次に、低融点可溶合金2の端部22、22を加熱し、メッキ層もしくは長尺状条材10と溶接する。低融点可溶合金2の端部22、22の加熱方法としては、長尺状条材10をヒーターで加熱する方法や、長尺状条材10単独に電気を流すことで、長尺状条材10自体を発熱させて加熱する方法や、赤外線によって長尺状条材10及び低融点可溶合金2の端部22、22を直接加熱する方法が可能である。
また、低融点可溶合金2の端部22、22に対して上方からそれぞれに対して近赤外線レーザー光を照射し過熱する方法も適用可能である。
【0025】
以上のスポット抵抗溶接、レーザー溶接等の工程を経て、低融点可溶合金2がメッキ層もしくは長尺状条材10と溶接され、長尺状条材10と低融点可溶合金2が電気的に接続される。
【0026】
しかる後、長尺状の状態から、適宜所望する定格電流に対応した温度ヒューズを構成することができる寸法のリード片付きヒューズ素子5の寸法となるように、短冊状にカットする。図3の二点鎖線の通りにカットすることで、3個のリード片付きヒューズ素子5が得られる。カットした後の状態を図4(a)、(b)に示す。リード導体端部11と低融点可溶合金2部分からなる接合部3の中程に、切欠溝7a、7bおよび間隔Dを含む透孔15を構成して、その低融点可溶合金条を2条(図中では23a、23bと図示している)とする。その透孔15はリード片付きヒューズ素子5の切断と同時でなくてもよく、切断前または切断後に形成し得る。
【0027】
以上より、長手方向に間隔Dを隔てて対向する一対のリード導体1、1と、各リード導体1、1の対向端部11、11それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝7、7と、一対の切欠溝7、7の幅方向両方に位置するリード導体1、1の対向端部11、11に低融点可溶合金2(低融点可溶合金条23、23)を溶接し、一対のリード導体1、1を接合する接合部3と、を有するリード片付きヒューズ素子5が得られる。
【0028】
なお、図4に示すように、リード片付きヒューズ素子5において、切欠溝7の長手方向の大きさPは、リード導体1上に位置する接合部3の長手方向の大きさQと同等に設定している。ここでいう「同等」は、各大きさP、Qの互いの値の公差の範囲を逸脱しない程度の寸法を含む。完全同等値ではなく、多少大きいまたは少ない寸法である場合も含む。もしくは、図5に示すように、リード導体1において切欠溝7の長手方向の大きさPが、リード導体1上の長手方向の接合部3の大きさQより大きくなるように設定することも可能である。
【0029】
切欠溝7の大きさおよび形状は、低融点可溶合金2が溶融状態のときに、幅方向一方側の低融点可溶合金2がリード導体1上を伝って幅方向他方側に移動できない程度の切欠溝7の長手方向および/または幅方向の大きさ、および/または形状であればよい。
また、切欠溝7がなす上面視の形状は、矩形状、つづみ状、真円状、長円状、正方形、菱形などの種々のものを採用することができる。
【0030】
以上のような構成にしたことにより、本実施形態に係る温度ヒューズは、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金2が溶断した後、再凝固前の溶融状態の移動可能な低融点可溶合金2が幅方向に移動しようとしても、低融点可溶合金条23aと低融点可溶合金条23bとの幅方向の間に、長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝7、7のために、幅方向に移動することはできず、リード導体1上において幅方向一方に偏在する虞がない(図6参照)。よって、溶融状態の可溶合金2が温度ヒューズ上の一部箇所に偏在し、溶断不可能な体積を形成するといった不具合を防止することができる。よって、所定の過電流が流れたときにこの過電流で回路を遮断させるように構成することにより、より一層の信頼性と安全性を高めることが可能となる。
また、接合部3を含む低融点可溶合金2の量や接合部3の面積に対して十分な幅の切欠溝7を設定することについても、同様の効果を奏することができる。
【0031】
また、従来においては、切断したリード片付きヒューズ素子を一つ一つ貼着テープ等で並列させて温度ヒューズを得ていた。この従来の技術においては、リード片付きヒューズ素子を並列させた場合、それぞれの間隔が一定ではない不具合が生じる可能性があり、出来上がる温度ヒューズを構成するリード片付きヒューズ素子の位置関係に不具合が生じ、精度にばらつきに出る場合があった。
これに対し、本実施形態では、予めリード導体1となる長尺状条材10の対向端部11の幅方向に亘って、3個切欠溝7を設けてからその各切欠溝7の両端に低融点可溶合金条23、23を間欠的に溶接し、それから短冊状に切断してリード片付きヒューズ素子5aを製造している。
このような構成にしたことにより、従来の温度ヒューズに比べて、精度や品質等といった信頼性、安全性、またはコスト面においても向上させることができる。
したがって、それぞれの本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5を有する温度ヒューズの動作は一定のもの、安定したものを得ることができ、信頼性は高くなる。
また、複数個の切欠溝7を設けることで、低融点可溶合金2の数を調節し、あらゆる電気容量に対応させることができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、リード片付きヒューズ素子5における低融点可溶合金2の断面視の形状を、ほぼ同一厚みの平面状の低融点可溶合金を溶接する方法を用いたが、低融点可溶合金2の長手方向の形状が、一対のリード導体1、1の間隔Dの中央近傍位置において、突部が最大となる断面視曲面状となる形状でもよい。この場合、例えば、長尺状条材10、10間に低融点可溶合金線材を供給しつつ、半田ごてを押し当てて当該低融点可溶合金線材を溶融させて低融点可溶合金の溶湯にする。続けて、半田ごてを一方向に連続的に移動させながらその低融点可溶合金の溶湯を、長尺状条材10、10の間隔Dおよび対向端部11、11にまたがって供給し、表面張力で定まる曲面状に凝固させる。もしくは、溶融低融点可溶合金の溶湯を走行ノズルで供給し、表面張力で定まる曲面状に凝固させる。なお、条材10の溶接面には予め溶接用フラックスを塗布する事が望ましい。
いずれにしても、温度ヒューズにおける低融点可溶合金2としての機能を奏しさせすればどのような形状でも構わない。
また、本実施形態では、低融点可溶合金2は略直方体であるものを用いたが、円盤状のものや円柱状のもの或いは線状のもの等であっても良い。
【0033】
図7は、低融点可溶合金2の幅方向両端部に切欠部25、25を形成した本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5の斜視図である。
本実施形態では、対向するリード導体先端端面間への入り込みを行った低融点可溶合金部分でもあり、接合部3の長手方向中央部近傍(一対のリード導体1、1の間隔D近傍)において、低融点可溶合金2の幅方向両端部に2カ所、幅方向内側に切り欠いた切欠部25を設けている。切欠部25は、低融点可溶合金2の幅方向の少なくとも一方に設けることが好ましい。
このような構成にすることにより、低融点可溶合金2の球状化分断が生じ易くなり、リード導体1、1間の低融点可溶合金2の溶断不良を防止することができる。
また、詳細は後述するが、切欠部25、25を設けたことにより、フラックス4が当該切欠部25、25に入り込み、幅方向での温度ヒューズ全体の大きさを、切欠部がない状態と比較して小さくすることができ、結果として、幅方向端部におけるフラックス4の突出を防ぎ、温度ヒューズの幅方向の拡がりを抑え、当該切欠部25、25が温度ヒューズの小型化に貢献することができる。
なお、低融点可溶合金2と封着剤9とが直接接触していると、可溶合金が溶融しても封着剤が糊のように可溶合金に着いているために、可溶合金を溶断することができない。そこで、低融点可溶合金2と封着剤9との間にフラックス4を設けている。このとき、温度ヒューズの幅方向の大きさを小さくするために、切欠部25、25は幅方向両端部に設けていることが望ましい。また、外装体8の大きさが大きくてもいい場合は切欠部25、25を設けない構成にしてもよい。
【0034】
リード片付きヒューズ素子5を用いて本実施形態に係る温度ヒューズ50を製造方法について、図8に基づいて説明する。図8は、低融点可溶合金2の上面およびリード導体1の下面にフラックス4を塗布した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金5の斜視図である。
【0035】
溶接用フラックスは、リード導体1と低融点可溶合金2とを電気的に接続するための補助剤であり、リード導体1の材料と低融点可溶合金2の材料の相性を確認した上で選定できる。例えば、溶接用フラックスとして、ロジン系を主成分とし、活性剤、例えば、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸等)を添加したものを使用する。
【0036】
フラックスを低融点可溶合金2の上面側に符号41で示すように塗布し、帯状リード導体1下面部分に符号42で示すようにフラックスを塗布している。
上側フラックス41は、帯状リード導体1の端部上面に溶接された低融点可溶合金2を100%覆うように塗布されている。上面側フラックス41の塗布厚みは、帯状リード導体の端部上面に溶接された低融点可溶合金部分の平均厚みの70〜100%とすることが好ましい。
下側フラックス42の塗布厚みは、温度ヒューズ本体の下面側から低融点可溶合金への熱伝達性(感温性)を保証するために、下面側絶縁体厚み(下側フィルムと下側接着剤との総厚み)の50%以下とすることが好ましい。
【0037】
続いて、図9および図10に示すように、図8の状態の温度ヒューズに、上下方向から外装体8、8を挟み、上下外装体8、8間の空間を封着剤9で埋めて、上側フラックス41、下側フラックス42が封着剤9を介して挟持されている。なお、図9は、本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金5を有した温度ヒューズ50を示す斜視図であり、図10は図9のC−C断面図である。
【0038】
外装体8としては、絶縁体であり耐熱性を有するものであり、PET、PC、PEN等のエンジニアリングプラスチックフィルム、ガラスクロス基材エポキシ樹脂フィルム、セラミック等を使用する。なお、一枚物で上下から挟むようにして使用することも可能である。
【0039】
封着剤9としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂、シリコン樹脂等を使用することができる。一般的に常温硬化性の接着剤が用いられる。外装体に予め塗布することや、外装体で挟んだ後に注入する等の方法で温度ヒューズに封着剤を供給することができ、固定化させることができる。
【0040】
低融点可溶合金2の各端と封着剤9の各内端とを一致させて、合金端部の封着剤界面への食い込みを排除、または、合金端と封着剤内端との間に間隔が生じるのを排除しているが、不一致でも、その間の距離が±0.3mm以下であれば、実質上、支障をきたさない。
【0041】
本実施形態に係る温度ヒューズを製造するには、(1)作業台上において、リード導体付きフラックス塗布低融点可溶合金を下側外装体上に配置し、下側塗布フラックスの粘着力でその配置位置への固定状態を担保し、次いで未硬化接着剤塗布外装体を接着剤面を下側にして前記下側配置外装体上に配置し、この上側の配置外装体を治具で押さえた状態で接着剤を硬化させる方法がある。または、(2)として、作業台上に、未硬化接着剤塗布外装体を接着剤面を上側にして配置し、フラックス塗布低融点可溶合金接続リード導体を下側外装体上に配置し、未硬化接着剤の粘着力でその配置位置への固定状態を担保し、次いで未硬化接着剤塗布外装体を接着剤面を下側にして前記下側配置外装体上に配置し、この上側の配置外装体を治具で押さえた状態で接着剤を硬化させる方法を使用することができる。
【0042】
本実施形態に係る温度ヒューズにおいては、ヒートサイクル時に発生する低融点可溶合金の熱膨張力が、対向するリード導体先端端面間に入り込んだ低融点可溶合金部分とリード導体先端端面との接触面でも支持されるから、前記熱膨張力に対し、低融点可溶合金とリード導体先端部との溶接箇所に作用する反力が低減される。したがって、低融点可溶合金とリード導体先端部との溶接箇所の対ヒートサイクル安定性を向上できる。
また、温度ヒューズ本体の下面側からの熱伝達に対し、低融点可溶合金の入り込み厚みだけ低熱伝達物(フラックス)の厚みを薄くできるから、下面側からの感熱性をそれだけアップできる。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0044】
なお、低融点可溶合金2の中間部21の一部は、間隔Dを隔てて対向する長尺状条材10、10の対向端部11、11間に図11に示すように入り込んで接合している。なお、入り込み部分21の下面と長尺状条材10、10の下面とをほぼ面一にすることもできる。他方、低融点可溶合金2の長手方向の両端部近傍22、22それぞれは、各リード導体端部11、11の上面に溶接している。低融点可溶合金2の対向するリード導体対向面部11、11間への入り込み体積は低融点可溶合金全体積の10〜20%程度である。
なお、上側フラックス41を低融点可溶合金2の上面側に塗布し、低融点可溶合金2の入り込み部21の下面および当該下面に隣在する帯状リード導体1下面部分に下側フラックス42を塗布している。
このような構成にしたことにより、溶断を生じ易くするために低融点可溶合金2の中央部両側に切欠部25、25を設けたとしても、リード導体先端端面11、11間に入り込んだ低融点可溶合金部分21のために、低融点可溶合金2の中央部における断面積を十分に確保でき、電流容量を確保することができる。
また、一対のリード導体1、1の対向端部11、11の間隔D(対向面部111、111の間隔D)にも低融点可溶合金2を充填することで、従来の温度ヒューズの構成に比べて、より高い定格電圧、定格電流に対応することができる。それと共に、温度ヒューズの小型化、高容量化を図ることができる。
【0045】
接合部3は、一対のリード導体1、1それぞれの対向端部11、11に低融点可溶合金2を溶接して一対のリード導体1、1を接合している。詳しくは、一対のリード導体1、1の対向端部11、11は、一対のリード導体1、1の各対向面部111、111と、各対向面部111、111に連続した面である各上面部112、112および各下面部113、113と、を含んでなり、それぞれに低融点可溶合金2が溶接されている。なお、上記実施形態では、対向面部111、111の間隔Dまたは下面部113の溶接を省略している。つまり、一対のリード導体1、1を各上面部112、112に低融点可溶合金2を溶接することで一対のリード導体1、1を接合することも可能である。
また、一対の長尺状条材10、10の対向面部111、111(対向端部11、11)の間隔Dに溶接する低融点可溶合金2の量を調節することで、一対の長尺状条材10、10の対向面部111、111(対向端部11、11)の間隔Dに低融点可溶合金2を充填することも可能である。
【0046】
図示していないが、低融点可溶合金の長手方向の寸法が、幅方向に亘って不均一であってもよい。そして、切欠溝の長手方向の寸法が、接合部を含む低融点可溶合金の長手方向全体の寸法よりも大きくなるように設定することも可能である。
低融点可溶合金の幅に変化を持たせることによって、最終的に溶断することで負荷が集中する可溶合金を指定することができ、外装体の部分強化等の対策を施すことが可能となる。動作電流が流れているときにアークが発生するため、最後に動作する箇所の低融点可溶合金の幅が最大であることが望ましい。
【0047】
また、図示していないが、外装体が樹脂フィルムの場合、封着剤を用いずに温度ヒューズを製造することも可能である。詳しくは、一対のリード導体の対向端部上面間に接合していると共にフラックスが塗着している低融点可溶合金を、上下からそれぞれ樹脂フィルムで挟む。このとき、上側樹脂フィルムの下側樹脂フィルムへの融着封止は、例えば、超音波融着、高周波誘電加熱融着、ヒートプレート接触融着等により行なうことができる。なお、この場合における樹脂フィルムとしては、厚み100μm〜500μm程度のプラスチックフィルムを使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、家庭電気製品、OA機器、AV機器(オーディオ・ビジュアル機器)、コンピュータ、通信機器、計測機器および、パーソナル機器の他、モバイル機器や車両部品の電源である二次電池等に利用することができる。最近では、携帯電話等のモバイル機器の高性能化に伴い、各種機器の電源である二次電池、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池の小型・高容量化が進み、それらの電池の安全保護対策が重要となっている。このような中、本発明は、繰返し充放電が可能な電池、すなわち二次電池の過熱保護に最適な小形・薄形化した保護部品として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 リード導体
10、10a、10b 長尺状条材
11、11a、11b 対向端部
111 対向面部
112 上面部
113 下面部
15 透孔
2、2a、2b 低融点可溶合金
21 入り込み部分
22 低融点可溶合金の長手方向の端部
25 切欠部
3、3a、3b 接合部
4 フラックス
41 上側フラックス
42 下側フラックス
5 リード導体付き低融点可溶合金(リード片付きヒューズ素子)
50 温度ヒューズ
7、7a、7b 切欠溝
8 外装体
9 封着剤
A 作業台
D 一対のリード導体(長尺状条材)の長手方向の間隔
P 切欠溝の長手方向の大きさ
Q 接合部の長手方向の大きさ
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度ヒューズおよび温度ヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格以上の大電流から電気回路を保護、あるいは加熱や発火といった事故を防止する部品としてヒューズが知られている。ヒューズは電気回路内に置かれ、普段は導体として振る舞う。しかし何らかの異常によって電気回路に定格以上の電流が流れると、自らを流れる電流によって発生したジュール熱が自らを溶かし、自らが置かれる回路を切断して電気回路に流れる電流を断つ。
【0003】
温度ヒューズは内部抵抗が非常に低いので、温度ヒューズを備える機器の電気回路を流れる電流による自己発熱は殆どなく、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって可溶体(低融点可溶合金)が溶断し、温度ヒューズのリード導体間の導通が遮断されて、機器の電気回路が開路する構成になっている。
【0004】
例えば、温度ヒューズは、モバイル機器や車両部品の電源である二次電池等に使用されている。最近では、携帯電話等のモバイル機器の高性能化に伴い、各種機器の電源である二次電池、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池の小型・高容量化が進み、それらの電池の安全保護対策が重要となっている。このような中、二次電池の過熱保護に最適な小形・薄形化した温度ヒューズが望まれている。
【0005】
例えば、特許文献1のように、薄型の温度ヒューズに関する技術が開示されている。特許文献1では、ニッケル板を所要の間隔を設けて、その間に低融点合金62を鋳込んでヒューズ板を制作している。そして、当該ヒューズ板を、短冊状に切断するとともに、図12(a)、(b)に示すように、両リード片64にそれぞれ別々に低融点合金62を渡らしてヒューズ素子65を形成し、切断部65aを複数条とし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−210207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図12に示すような従来の温度ヒューズにおいて、リード片64上にメッキ膜が施している場合があり、当該メッキ膜と低融点可溶合金62(ヒューズ素子65)の構成材料によっては、溶融状態の可溶合金がそのメッキ膜上を移動する(いわゆる濡れた状態にある)場合がある。このような場合、溶融状態の可溶合金自体の重量や温度ヒューズを設置した電気機器の傾き等の要因で、図13(a)、(b)に示すように、溶融状態の可溶合金が移動し偏在してリード導体上に部分的に凝固する虞がある。そのような場合で、リード導体(両リード片64、64)間に可溶合金が再度偏在して固まり接合した状態になるとリード導体間の導通が遮断されないために、当該温度ヒューズを備える機器が動作不良を起こす問題があった。この傾向は温度ヒューズが大型化するほど増加するため、温度ヒューズの高容量化の妨げとなっていた。
また、当該温度ヒューズを備えた電気機器に高電流を通電する場合、最後に分断する可溶合金条(偏在した箇所の可溶合金条)に負荷が集中する事により、温度ヒューズを内装する外装体(例えば耐熱フィルム)に損傷を生じる場合があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み提案されたもので、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって当該低融点可溶合金が溶断する際に、一対のリード導体間の低融点可溶合金の溶断不良を防止し得る構成とし、信頼性、安全性を向上させた温度ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝と、一対の切欠溝の幅方向両方に位置するリード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接し、一対のリード導体を接合する接合部と、を有し、切欠溝の長手方向の大きさが、接合部の長手方向の大きさと同等に設定しているかまたは接合部の長手方向の大きさより大きくなるように設定している。さらに、リード導体の対向端部は、一対のリード導体の各対向面部と、各対向面部に連続した面である各上面部および/または各下面部と、を含んでなる温度ヒューズである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る温度ヒューズは、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金が溶断した後、凝固前の溶融状態の移動可能な低融点可溶合金が幅方向に移動しようとしても、低融点可溶合金条と低融点可溶合金条との幅方向の間に、各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝のために、幅方向に移動することはできず、リード導体上において幅方向一方もしくは他方に偏在する虞がない。よって、溶融状態の可溶合金が温度ヒューズ上の一部箇所に偏在し、溶断不可能な体積を形成するといった不具合を防止することができる。よって、所定の過電流が流れたときにこの過電流で回路を遮断させるように構成することにより、より一層の安全性を高めることが可能となる。
また、接合部を含む低融点可溶合金の量や接合部の面積に対して十分な幅の切欠溝を設定することについても、同様の効果を奏することができる。
また、一対のリード導体の対向端部の間隔(対向面部の間隔)にも低融点可溶合金を充填することで、従来の温度ヒューズの構成に比べて、より高い定格電圧、定格電流に対応することができる。それと共に、温度ヒューズの小型化、高容量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】作業台上に一対の長尺状条材を所定の間隔を空けて配置した斜視図である。
【図2】一対の長尺状条材の対向端部に切欠溝を形成した図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図3】一対の長尺状条材の対向端部上で、かつ、切欠溝と切欠溝との幅方向両方に低融点可溶合金を配置した図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図4】図3の二点鎖線に従って短冊状に切断された本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図5】切欠溝の長手方向の大きさが、接合部の長手方向の大きさよりも大きい場合の上面図である。
【図6】本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金が正常動作し、リード導体間が溶断されていることを示す上面図である。
【図7】低融点可溶合金の幅方向両端部に切欠部を形成した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【図8】低融点可溶合金の上面およびリード導体の下面にフラックスを塗布した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の斜視図である。
【図9】本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金を有した温度ヒューズを示す斜視図である。
【図10】図9のC−C断面図である。
【図11】他の実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図12】従来例におけるリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【図13】従来例において溶断後の状態を示す図であり、可溶合金が偏在した状態のリード導体付き低融点可溶合金図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。
【0013】
まず、図1から図4に基づいて、本実施形態に係る温度ヒューズ用のリード導体付き低融点可溶合金5(以下、「リード導体付き低融点可溶合金」を単に「リード片付きヒューズ素子」と称する)の構成および製造方法の一例について説明する。
図1は、作業台上に一対の長尺状条材を所定の間隔を空けて配置した斜視図である。図2は、一対の長尺状条材の対向端部に切欠溝を形成した図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。図3は、一対の長尺状条材の対向端部上で、かつ、切欠溝と切欠溝との幅方向両方に低融点可溶合金を配置した図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。図4は、図3の二点鎖線に従って短冊状に切断された本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金の図面で、(a)は斜視図で、(b)は上面図である。
【0014】
なお、以下の説明において、アルファベットの付いていない各構成部材の数字は、各数字に付いているアルファベット群の総称である。
また、「一対の構成部材」の「一対」は「一方方向」と「他方方向」とからなるとし、ここで、アルファベットaの付いている各構成部材を「一方方向」の構成部材とし、アルファベットbの付いている各構成部材を「他方方向」の構成部材としている。
以上を例えるならば、図2において、一方の長尺状条材を10a、他方の長尺状条材を10bとしている。その長尺状条材10a、10bの総称を長尺状条材10とする。
【0015】
始めに、図1に示すように、低融点可溶合金2に対し離型性かつ耐熱性を有する作業台A(例えばステンレス台等)上に、リード導体1としての機能性を有する長尺状条材10、10を所定の間隔Dを隔てて配置する。なお、ここでいう「所定の間隔D」の「間隔D」とは、対向し合う長尺状条材10、10の対向端部11、11間の寸法のことであり、詳細は後述するが温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金2が溶断した後において、一対のリード導体1、1間の絶縁性能を十分に確保できる程度の距離である。このとき、長尺状条材10、10が所定の間隔Dを介して配列している方向を「長手方向」とし、長手方向に垂直な方向、例えば、所定の間隔Dに沿った方向を「幅方向」とする。
【0016】
本実施形態では、帯状リード導体1(長尺状条材10)の母材としてはニッケル導体を使用している。低融点可溶合金に対し離型性かつ耐熱性を有する作業台A(例えばステンレス台等)上に、リード導体1としての機能を有する長尺状条材10、10を所定の間隔Dを隔てて配置する。
【0017】
本実施形態で用いるリード導体1としては一般的に温度ヒューズに使用されている帯状リード導体でよく、リード導体1の母材である長尺状条材10としては、電気伝導性の有る材料であり、色々な金属や合金等を用いることができる。具体的には、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、金、銀、スズから選ばれる少なくとも一つの単体材料もしくはそれら金属材料の合金、或いは前述の材料グループから選ばれる少なくとも一つの単体もしくは合金に材料グループ以外の元素を含有させた金属材料等が使用できる。
可溶合金との溶接性の良好な材料、例えば、ニッケル導体の場合には、その表面には、Sn、Au、Cu、Ag等がメッキ処理またはクラッド処理等を施してその表面に溶接性の良い金属膜を設けることによって溶接面の範囲を制御することができる。
また、溶接性の良くない材料、例えば、銅導体の場合には、全面または低融点可溶合金エレメントが溶接される部分以外に、銅移行阻止膜として、可溶合金との溶接性が劣るNi等の縞状メッキ処理またはクラッド処理を施し、さらにNiの上にSn、Au、Cu、Ag等をメッキ処理する事ができる。
【0018】
なお、リード導体1(長尺状条材10)の対向する端面から一定距離の範囲に非メッキ層領域を設けてある。非メッキ層が存在することで、後述する低融点可溶合金2のはみ出し部分の形成をより確実に防止することができるようになる。なお、非メッキ層が無い場合であってもよく、リード導体1(長尺状条材10)の対向する端部の表面上にメッキ層が存在する場合でもよい。
また、メッキ層の代わりに、銀ペーストのような金属ペーストの塗布などを用いてもよく、金属蒸着、スパッタなどでもよい。またメッキは電界メッキであっても非電解メッキでもよく、非電解メッキ層の上に電界メッキ層を施して形成してもよい。またメッキ層は単層でもよく二層以上の複数の層から形成されてもよい。メッキ層を複数の層とすることで、低融点可溶合金2との溶接力が高まり、強度が確保されるなどのメリットがある。また、低融点可溶合金2の素材と溶接上の相性のよい素材を選択することが好適である。
【0019】
次に、図2に示すように、間隔Dを隔てて対向する長尺状条材10a、10bの対向端部11a、11bそれぞれから長手方向外方へ必要な寸法Pだけ切り欠いて、一対の切欠溝7a、7bを形成する。なお、切欠溝7は、長尺状条材10の対向端部11に切り欠かれ、切削、研磨等によって長尺状条材10を厚さ方向に貫通している。
ここでいう「必要な寸法P」とは、溶融状態の低融点可溶合金が幅方向に移動しようとしても切欠溝7があるために幅方向に移動できない位置程度まで対向端部11から長手方向に切り欠かれていることを意味する。
【0020】
そして、長尺状条材10、10の対向端部11、11において、幅方向に亘って複数組(本実施形態では3組)の切欠溝7、7を幅方向に間隔を空けて並列にそれぞれ設ける。この「間隔」が位置する箇所は、詳細は後述するが低融点可溶合金条23の端部22が溶接し、接合部3が形成される箇所である。
なお、幅方向における切欠溝7の間隔は等間隔でも不等間隔でもよい。
【0021】
次に、図3に示すように、長尺状条材10上に可溶体からなる低融点可溶合金2が載せる。低融点可溶合金2はここでは直方体形状となっている。低融点可溶合金2はメッキ層の上面にその端面が来るように載せることで、後述する溶接が容易となるようにする。もちろん、低融点可溶合金2がメッキ層を越える範囲で載せられてもよい。この工程の後において、低融点可溶合金2がメッキ層に溶接される。メッキ層に溶接されることで、長尺状条材10と低融点可溶合金2が電気的に接続され、ヒューズとしての動作が可能となる。3は接合部であり、本実施形態においては、リード導体端部11と低融点可溶合金2との溶接部分のことを指す。接合部3によって低融点可溶合金2がメッキ層に確実に接続される。なお、必要に応じてフィルムカバーやケースへの封入も行われる。また、低融点可溶合金2は直方体形状以外に、楕円形状や線状であってもよい。
【0022】
低融点可溶合金2は一定の融点を持つ可溶体であり、導電体である金属などから形成されている。このため、長尺状条材10を通じて低融点可溶合金2を電流が流れる。低融点可溶合金2の材質としては、In−Bi系、Sn−In−Bi系、これらの合金系に機械的強度の向上や温度特性の調整のためのCu、Ag、Sb、Zn等の元素を0.1〜4.0%質量%添加したものを使用することができる。
【0023】
なお、低融点可溶合金2の融点は保護すべき電子・電気機器、例えば二次電池の上限温度(許容温度)に応じて設定している。温度ヒューズが装着された電子機器や電池パック等が異常発熱して温度上昇した場合に低融点可溶合金2が溶断する。結果として電子機器や電池パック等への通電が遮断される。
【0024】
次に、低融点可溶合金2の端部22、22を加熱し、メッキ層もしくは長尺状条材10と溶接する。低融点可溶合金2の端部22、22の加熱方法としては、長尺状条材10をヒーターで加熱する方法や、長尺状条材10単独に電気を流すことで、長尺状条材10自体を発熱させて加熱する方法や、赤外線によって長尺状条材10及び低融点可溶合金2の端部22、22を直接加熱する方法が可能である。
また、低融点可溶合金2の端部22、22に対して上方からそれぞれに対して近赤外線レーザー光を照射し過熱する方法も適用可能である。
【0025】
以上のスポット抵抗溶接、レーザー溶接等の工程を経て、低融点可溶合金2がメッキ層もしくは長尺状条材10と溶接され、長尺状条材10と低融点可溶合金2が電気的に接続される。
【0026】
しかる後、長尺状の状態から、適宜所望する定格電流に対応した温度ヒューズを構成することができる寸法のリード片付きヒューズ素子5の寸法となるように、短冊状にカットする。図3の二点鎖線の通りにカットすることで、3個のリード片付きヒューズ素子5が得られる。カットした後の状態を図4(a)、(b)に示す。リード導体端部11と低融点可溶合金2部分からなる接合部3の中程に、切欠溝7a、7bおよび間隔Dを含む透孔15を構成して、その低融点可溶合金条を2条(図中では23a、23bと図示している)とする。その透孔15はリード片付きヒューズ素子5の切断と同時でなくてもよく、切断前または切断後に形成し得る。
【0027】
以上より、長手方向に間隔Dを隔てて対向する一対のリード導体1、1と、各リード導体1、1の対向端部11、11それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝7、7と、一対の切欠溝7、7の幅方向両方に位置するリード導体1、1の対向端部11、11に低融点可溶合金2(低融点可溶合金条23、23)を溶接し、一対のリード導体1、1を接合する接合部3と、を有するリード片付きヒューズ素子5が得られる。
【0028】
なお、図4に示すように、リード片付きヒューズ素子5において、切欠溝7の長手方向の大きさPは、リード導体1上に位置する接合部3の長手方向の大きさQと同等に設定している。ここでいう「同等」は、各大きさP、Qの互いの値の公差の範囲を逸脱しない程度の寸法を含む。完全同等値ではなく、多少大きいまたは少ない寸法である場合も含む。もしくは、図5に示すように、リード導体1において切欠溝7の長手方向の大きさPが、リード導体1上の長手方向の接合部3の大きさQより大きくなるように設定することも可能である。
【0029】
切欠溝7の大きさおよび形状は、低融点可溶合金2が溶融状態のときに、幅方向一方側の低融点可溶合金2がリード導体1上を伝って幅方向他方側に移動できない程度の切欠溝7の長手方向および/または幅方向の大きさ、および/または形状であればよい。
また、切欠溝7がなす上面視の形状は、矩形状、つづみ状、真円状、長円状、正方形、菱形などの種々のものを採用することができる。
【0030】
以上のような構成にしたことにより、本実施形態に係る温度ヒューズは、温度ヒューズの周囲の温度上昇によって低融点可溶合金2が溶断した後、再凝固前の溶融状態の移動可能な低融点可溶合金2が幅方向に移動しようとしても、低融点可溶合金条23aと低融点可溶合金条23bとの幅方向の間に、長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝7、7のために、幅方向に移動することはできず、リード導体1上において幅方向一方に偏在する虞がない(図6参照)。よって、溶融状態の可溶合金2が温度ヒューズ上の一部箇所に偏在し、溶断不可能な体積を形成するといった不具合を防止することができる。よって、所定の過電流が流れたときにこの過電流で回路を遮断させるように構成することにより、より一層の信頼性と安全性を高めることが可能となる。
また、接合部3を含む低融点可溶合金2の量や接合部3の面積に対して十分な幅の切欠溝7を設定することについても、同様の効果を奏することができる。
【0031】
また、従来においては、切断したリード片付きヒューズ素子を一つ一つ貼着テープ等で並列させて温度ヒューズを得ていた。この従来の技術においては、リード片付きヒューズ素子を並列させた場合、それぞれの間隔が一定ではない不具合が生じる可能性があり、出来上がる温度ヒューズを構成するリード片付きヒューズ素子の位置関係に不具合が生じ、精度にばらつきに出る場合があった。
これに対し、本実施形態では、予めリード導体1となる長尺状条材10の対向端部11の幅方向に亘って、3個切欠溝7を設けてからその各切欠溝7の両端に低融点可溶合金条23、23を間欠的に溶接し、それから短冊状に切断してリード片付きヒューズ素子5aを製造している。
このような構成にしたことにより、従来の温度ヒューズに比べて、精度や品質等といった信頼性、安全性、またはコスト面においても向上させることができる。
したがって、それぞれの本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5を有する温度ヒューズの動作は一定のもの、安定したものを得ることができ、信頼性は高くなる。
また、複数個の切欠溝7を設けることで、低融点可溶合金2の数を調節し、あらゆる電気容量に対応させることができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、リード片付きヒューズ素子5における低融点可溶合金2の断面視の形状を、ほぼ同一厚みの平面状の低融点可溶合金を溶接する方法を用いたが、低融点可溶合金2の長手方向の形状が、一対のリード導体1、1の間隔Dの中央近傍位置において、突部が最大となる断面視曲面状となる形状でもよい。この場合、例えば、長尺状条材10、10間に低融点可溶合金線材を供給しつつ、半田ごてを押し当てて当該低融点可溶合金線材を溶融させて低融点可溶合金の溶湯にする。続けて、半田ごてを一方向に連続的に移動させながらその低融点可溶合金の溶湯を、長尺状条材10、10の間隔Dおよび対向端部11、11にまたがって供給し、表面張力で定まる曲面状に凝固させる。もしくは、溶融低融点可溶合金の溶湯を走行ノズルで供給し、表面張力で定まる曲面状に凝固させる。なお、条材10の溶接面には予め溶接用フラックスを塗布する事が望ましい。
いずれにしても、温度ヒューズにおける低融点可溶合金2としての機能を奏しさせすればどのような形状でも構わない。
また、本実施形態では、低融点可溶合金2は略直方体であるものを用いたが、円盤状のものや円柱状のもの或いは線状のもの等であっても良い。
【0033】
図7は、低融点可溶合金2の幅方向両端部に切欠部25、25を形成した本実施形態に係るリード片付きヒューズ素子5の斜視図である。
本実施形態では、対向するリード導体先端端面間への入り込みを行った低融点可溶合金部分でもあり、接合部3の長手方向中央部近傍(一対のリード導体1、1の間隔D近傍)において、低融点可溶合金2の幅方向両端部に2カ所、幅方向内側に切り欠いた切欠部25を設けている。切欠部25は、低融点可溶合金2の幅方向の少なくとも一方に設けることが好ましい。
このような構成にすることにより、低融点可溶合金2の球状化分断が生じ易くなり、リード導体1、1間の低融点可溶合金2の溶断不良を防止することができる。
また、詳細は後述するが、切欠部25、25を設けたことにより、フラックス4が当該切欠部25、25に入り込み、幅方向での温度ヒューズ全体の大きさを、切欠部がない状態と比較して小さくすることができ、結果として、幅方向端部におけるフラックス4の突出を防ぎ、温度ヒューズの幅方向の拡がりを抑え、当該切欠部25、25が温度ヒューズの小型化に貢献することができる。
なお、低融点可溶合金2と封着剤9とが直接接触していると、可溶合金が溶融しても封着剤が糊のように可溶合金に着いているために、可溶合金を溶断することができない。そこで、低融点可溶合金2と封着剤9との間にフラックス4を設けている。このとき、温度ヒューズの幅方向の大きさを小さくするために、切欠部25、25は幅方向両端部に設けていることが望ましい。また、外装体8の大きさが大きくてもいい場合は切欠部25、25を設けない構成にしてもよい。
【0034】
リード片付きヒューズ素子5を用いて本実施形態に係る温度ヒューズ50を製造方法について、図8に基づいて説明する。図8は、低融点可溶合金2の上面およびリード導体1の下面にフラックス4を塗布した本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金5の斜視図である。
【0035】
溶接用フラックスは、リード導体1と低融点可溶合金2とを電気的に接続するための補助剤であり、リード導体1の材料と低融点可溶合金2の材料の相性を確認した上で選定できる。例えば、溶接用フラックスとして、ロジン系を主成分とし、活性剤、例えば、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸等)を添加したものを使用する。
【0036】
フラックスを低融点可溶合金2の上面側に符号41で示すように塗布し、帯状リード導体1下面部分に符号42で示すようにフラックスを塗布している。
上側フラックス41は、帯状リード導体1の端部上面に溶接された低融点可溶合金2を100%覆うように塗布されている。上面側フラックス41の塗布厚みは、帯状リード導体の端部上面に溶接された低融点可溶合金部分の平均厚みの70〜100%とすることが好ましい。
下側フラックス42の塗布厚みは、温度ヒューズ本体の下面側から低融点可溶合金への熱伝達性(感温性)を保証するために、下面側絶縁体厚み(下側フィルムと下側接着剤との総厚み)の50%以下とすることが好ましい。
【0037】
続いて、図9および図10に示すように、図8の状態の温度ヒューズに、上下方向から外装体8、8を挟み、上下外装体8、8間の空間を封着剤9で埋めて、上側フラックス41、下側フラックス42が封着剤9を介して挟持されている。なお、図9は、本実施形態に係るリード導体付き低融点可溶合金5を有した温度ヒューズ50を示す斜視図であり、図10は図9のC−C断面図である。
【0038】
外装体8としては、絶縁体であり耐熱性を有するものであり、PET、PC、PEN等のエンジニアリングプラスチックフィルム、ガラスクロス基材エポキシ樹脂フィルム、セラミック等を使用する。なお、一枚物で上下から挟むようにして使用することも可能である。
【0039】
封着剤9としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化性樹脂、シリコン樹脂等を使用することができる。一般的に常温硬化性の接着剤が用いられる。外装体に予め塗布することや、外装体で挟んだ後に注入する等の方法で温度ヒューズに封着剤を供給することができ、固定化させることができる。
【0040】
低融点可溶合金2の各端と封着剤9の各内端とを一致させて、合金端部の封着剤界面への食い込みを排除、または、合金端と封着剤内端との間に間隔が生じるのを排除しているが、不一致でも、その間の距離が±0.3mm以下であれば、実質上、支障をきたさない。
【0041】
本実施形態に係る温度ヒューズを製造するには、(1)作業台上において、リード導体付きフラックス塗布低融点可溶合金を下側外装体上に配置し、下側塗布フラックスの粘着力でその配置位置への固定状態を担保し、次いで未硬化接着剤塗布外装体を接着剤面を下側にして前記下側配置外装体上に配置し、この上側の配置外装体を治具で押さえた状態で接着剤を硬化させる方法がある。または、(2)として、作業台上に、未硬化接着剤塗布外装体を接着剤面を上側にして配置し、フラックス塗布低融点可溶合金接続リード導体を下側外装体上に配置し、未硬化接着剤の粘着力でその配置位置への固定状態を担保し、次いで未硬化接着剤塗布外装体を接着剤面を下側にして前記下側配置外装体上に配置し、この上側の配置外装体を治具で押さえた状態で接着剤を硬化させる方法を使用することができる。
【0042】
本実施形態に係る温度ヒューズにおいては、ヒートサイクル時に発生する低融点可溶合金の熱膨張力が、対向するリード導体先端端面間に入り込んだ低融点可溶合金部分とリード導体先端端面との接触面でも支持されるから、前記熱膨張力に対し、低融点可溶合金とリード導体先端部との溶接箇所に作用する反力が低減される。したがって、低融点可溶合金とリード導体先端部との溶接箇所の対ヒートサイクル安定性を向上できる。
また、温度ヒューズ本体の下面側からの熱伝達に対し、低融点可溶合金の入り込み厚みだけ低熱伝達物(フラックス)の厚みを薄くできるから、下面側からの感熱性をそれだけアップできる。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0044】
なお、低融点可溶合金2の中間部21の一部は、間隔Dを隔てて対向する長尺状条材10、10の対向端部11、11間に図11に示すように入り込んで接合している。なお、入り込み部分21の下面と長尺状条材10、10の下面とをほぼ面一にすることもできる。他方、低融点可溶合金2の長手方向の両端部近傍22、22それぞれは、各リード導体端部11、11の上面に溶接している。低融点可溶合金2の対向するリード導体対向面部11、11間への入り込み体積は低融点可溶合金全体積の10〜20%程度である。
なお、上側フラックス41を低融点可溶合金2の上面側に塗布し、低融点可溶合金2の入り込み部21の下面および当該下面に隣在する帯状リード導体1下面部分に下側フラックス42を塗布している。
このような構成にしたことにより、溶断を生じ易くするために低融点可溶合金2の中央部両側に切欠部25、25を設けたとしても、リード導体先端端面11、11間に入り込んだ低融点可溶合金部分21のために、低融点可溶合金2の中央部における断面積を十分に確保でき、電流容量を確保することができる。
また、一対のリード導体1、1の対向端部11、11の間隔D(対向面部111、111の間隔D)にも低融点可溶合金2を充填することで、従来の温度ヒューズの構成に比べて、より高い定格電圧、定格電流に対応することができる。それと共に、温度ヒューズの小型化、高容量化を図ることができる。
【0045】
接合部3は、一対のリード導体1、1それぞれの対向端部11、11に低融点可溶合金2を溶接して一対のリード導体1、1を接合している。詳しくは、一対のリード導体1、1の対向端部11、11は、一対のリード導体1、1の各対向面部111、111と、各対向面部111、111に連続した面である各上面部112、112および各下面部113、113と、を含んでなり、それぞれに低融点可溶合金2が溶接されている。なお、上記実施形態では、対向面部111、111の間隔Dまたは下面部113の溶接を省略している。つまり、一対のリード導体1、1を各上面部112、112に低融点可溶合金2を溶接することで一対のリード導体1、1を接合することも可能である。
また、一対の長尺状条材10、10の対向面部111、111(対向端部11、11)の間隔Dに溶接する低融点可溶合金2の量を調節することで、一対の長尺状条材10、10の対向面部111、111(対向端部11、11)の間隔Dに低融点可溶合金2を充填することも可能である。
【0046】
図示していないが、低融点可溶合金の長手方向の寸法が、幅方向に亘って不均一であってもよい。そして、切欠溝の長手方向の寸法が、接合部を含む低融点可溶合金の長手方向全体の寸法よりも大きくなるように設定することも可能である。
低融点可溶合金の幅に変化を持たせることによって、最終的に溶断することで負荷が集中する可溶合金を指定することができ、外装体の部分強化等の対策を施すことが可能となる。動作電流が流れているときにアークが発生するため、最後に動作する箇所の低融点可溶合金の幅が最大であることが望ましい。
【0047】
また、図示していないが、外装体が樹脂フィルムの場合、封着剤を用いずに温度ヒューズを製造することも可能である。詳しくは、一対のリード導体の対向端部上面間に接合していると共にフラックスが塗着している低融点可溶合金を、上下からそれぞれ樹脂フィルムで挟む。このとき、上側樹脂フィルムの下側樹脂フィルムへの融着封止は、例えば、超音波融着、高周波誘電加熱融着、ヒートプレート接触融着等により行なうことができる。なお、この場合における樹脂フィルムとしては、厚み100μm〜500μm程度のプラスチックフィルムを使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、家庭電気製品、OA機器、AV機器(オーディオ・ビジュアル機器)、コンピュータ、通信機器、計測機器および、パーソナル機器の他、モバイル機器や車両部品の電源である二次電池等に利用することができる。最近では、携帯電話等のモバイル機器の高性能化に伴い、各種機器の電源である二次電池、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池の小型・高容量化が進み、それらの電池の安全保護対策が重要となっている。このような中、本発明は、繰返し充放電が可能な電池、すなわち二次電池の過熱保護に最適な小形・薄形化した保護部品として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 リード導体
10、10a、10b 長尺状条材
11、11a、11b 対向端部
111 対向面部
112 上面部
113 下面部
15 透孔
2、2a、2b 低融点可溶合金
21 入り込み部分
22 低融点可溶合金の長手方向の端部
25 切欠部
3、3a、3b 接合部
4 フラックス
41 上側フラックス
42 下側フラックス
5 リード導体付き低融点可溶合金(リード片付きヒューズ素子)
50 温度ヒューズ
7、7a、7b 切欠溝
8 外装体
9 封着剤
A 作業台
D 一対のリード導体(長尺状条材)の長手方向の間隔
P 切欠溝の長手方向の大きさ
Q 接合部の長手方向の大きさ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、
前記各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝と、
前記一対の切欠溝の幅方向両方に位置する前記リード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接し、前記一対のリード導体を接合する接合部と、
を有し、
前記切欠溝の長手方向の大きさが、前記接合部の長手方向の大きさと同等に設定しているかまたは前記接合部の長手方向の大きさより大きくなるように設定している温度ヒューズ。
【請求項2】
前記リード導体の対向端部は、
前記一対のリード導体の各対向面部と、
前記各対向面部に連続した面である各上面部および/または各下面部と、
を含んでなる請求項1に記載の温度ヒューズ。
【請求項3】
前記切欠溝が、前記リード導体の対向端部において、幅方向に亘って複数個間隔をおいて切り欠いて形成され、
幅方向に位置する切欠溝と切欠溝との間に、長手方向に延びる接合部が接合されている請求項1または請求項2に記載の温度ヒューズ。
【請求項4】
前記切欠溝が、前記リード導体の対向端部において、幅方向に亘って複数個等間隔をおいて切り欠いて形成され、
幅方向に位置する切欠溝と切欠溝との間に、長手方向に延びる接合部が接合されている請求項3に記載の温度ヒューズ。
【請求項5】
前記低融点可溶合金の長手方向の寸法が、幅方向に亘って不均一である請求項1から請求項4のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項6】
前記低融点可溶合金の少なくとも幅方向一方に切欠部を設けた請求項1から請求項5のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項7】
前記接合部の長手方向中央部近傍において、前記低融点可溶合金の幅方向両端部に前記切欠部を設けた請求項6記載の温度ヒューズ。
【請求項8】
前記間隔の長手方向中央部近傍に位置する低融点可溶合金の中央部近傍の厚さ寸法が、前記リード導体の対向端部を含む前記接合部分より厚くなっている請求項1から請求項7のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項9】
前記一対のリード導体と、
前記各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ同一距離切り欠いて形成された一対の切欠溝と、
前記各リード導体の対向端部および前記間隔を含んで低融点可溶合金により前記一対のリード導体が接合され、前記一対の切欠溝の幅方向両方において長手方向に延びる接合部と、
前記低融点可溶合金を前記リード導体の一部と共に上下方向に挟み込んで互いに密着する外装体と、
を備える請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項10】
二次電池に接触して取り付けられる請求項1から請求項9のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項11】
前記低融点可溶合金にフラックスを塗布している請求項1から請求項10のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項12】
長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、
前記各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝と、
前記一対の切欠溝の幅方向両方に位置する前記リード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接し、前記一対のリード導体を接合する接合部と、
を有し、
前記切欠溝の長手方向の大きさが、前記接合部の長手方向の大きさと同等に設定するかまたは前記接合部の長手方向の大きさより大きくなるように設定する温度ヒューズの製造方法。
【請求項1】
長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、
前記各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝と、
前記一対の切欠溝の幅方向両方に位置する前記リード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接し、前記一対のリード導体を接合する接合部と、
を有し、
前記切欠溝の長手方向の大きさが、前記接合部の長手方向の大きさと同等に設定しているかまたは前記接合部の長手方向の大きさより大きくなるように設定している温度ヒューズ。
【請求項2】
前記リード導体の対向端部は、
前記一対のリード導体の各対向面部と、
前記各対向面部に連続した面である各上面部および/または各下面部と、
を含んでなる請求項1に記載の温度ヒューズ。
【請求項3】
前記切欠溝が、前記リード導体の対向端部において、幅方向に亘って複数個間隔をおいて切り欠いて形成され、
幅方向に位置する切欠溝と切欠溝との間に、長手方向に延びる接合部が接合されている請求項1または請求項2に記載の温度ヒューズ。
【請求項4】
前記切欠溝が、前記リード導体の対向端部において、幅方向に亘って複数個等間隔をおいて切り欠いて形成され、
幅方向に位置する切欠溝と切欠溝との間に、長手方向に延びる接合部が接合されている請求項3に記載の温度ヒューズ。
【請求項5】
前記低融点可溶合金の長手方向の寸法が、幅方向に亘って不均一である請求項1から請求項4のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項6】
前記低融点可溶合金の少なくとも幅方向一方に切欠部を設けた請求項1から請求項5のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項7】
前記接合部の長手方向中央部近傍において、前記低融点可溶合金の幅方向両端部に前記切欠部を設けた請求項6記載の温度ヒューズ。
【請求項8】
前記間隔の長手方向中央部近傍に位置する低融点可溶合金の中央部近傍の厚さ寸法が、前記リード導体の対向端部を含む前記接合部分より厚くなっている請求項1から請求項7のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項9】
前記一対のリード導体と、
前記各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ同一距離切り欠いて形成された一対の切欠溝と、
前記各リード導体の対向端部および前記間隔を含んで低融点可溶合金により前記一対のリード導体が接合され、前記一対の切欠溝の幅方向両方において長手方向に延びる接合部と、
前記低融点可溶合金を前記リード導体の一部と共に上下方向に挟み込んで互いに密着する外装体と、
を備える請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項10】
二次電池に接触して取り付けられる請求項1から請求項9のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項11】
前記低融点可溶合金にフラックスを塗布している請求項1から請求項10のいずれかに記載の温度ヒューズ。
【請求項12】
長手方向に間隔を隔てて対向する一対のリード導体と、
前記各リード導体の対向端部それぞれから長手方向外方へ切り欠いて形成された一対の切欠溝と、
前記一対の切欠溝の幅方向両方に位置する前記リード導体の対向端部に低融点可溶合金を溶接し、前記一対のリード導体を接合する接合部と、
を有し、
前記切欠溝の長手方向の大きさが、前記接合部の長手方向の大きさと同等に設定するかまたは前記接合部の長手方向の大きさより大きくなるように設定する温度ヒューズの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−249128(P2011−249128A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120910(P2010−120910)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000225337)内橋エステック株式会社 (115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000225337)内橋エステック株式会社 (115)
【Fターム(参考)】
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