説明

温度制御方式

【課題】半導体検査装置などの低温温度制御、高温/低温温度制御を効率的且つ安定的に行う温度制御方式を提供する。
【解決手段】低温に設定された低温環境領域内において、加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行う。この際、低温環境領域内の低温の設定は冷凍庫のスイッチをオンすることにより行い、冷凍庫のスイッチをオンにした状態で、加熱器、温度センサ及び制御器を用いた局所的な加熱制御を実施する。また、常温に設定された常温環境領域内において、加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行って高温温度制御を行い、低温に設定された低温環境領域内において、加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行って低温温度制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御方式に関し、特に、ヒータ機構を備えるDUT(Device Under
Test:被試験デバイス)ソケットを用いた低温温度制御方式、及び、低温/高温温度制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに対し、試験又は測定のための恒温環境を提供するため、図4(1)に示すように、従来はサーモストリーマや恒温槽等の全体加熱装置が用いられた。しかしながら、これらは、一般的に、高価であり、長期の占有使用が制限される等の短所がある。厳格な温度管理が要求される試験では、図4(2)に示されるように個々のDUTソケット毎に、温度センサとヒータまたはクーラーを組み込み、直接的にデバイスを加熱する部分加熱方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ICパッケージに熱的に接触するように配置された温度センサとICパッケージと直接接触するように配置されたヒータまたはクーラーと温度センサ及びヒータまたはクーラーに接続された電子制御装置とをICソケットの蓋に含み、温度制御装置が温度センサに応じて前記ICパッケージの温度を制御する発明が記載されている。また、特許文献2には、半導体パッケージの温度を設定する半導体検査用ソケットであって、半導体パッケージを受け入れ可能なソケット本体、PTCサーミスタ、熱伝導機構、及び熱伝導機構をソケット本体内の半導体パッケージに密着させるテンション機構を含む半導体検査用ソケットの発明が記載されている。
【特許文献1】特開2007−525672号公報
【特許文献2】特開2007−24702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低温温度制御を行う場合には、恒温槽では低温温度を正確に設定することが困難であり、また、特許文献1に示されるように温度制御にヒータまたはクーラーを用いる方式では、低温と高温で異なる温度制御機構が必要となり、効率的な温度制御が困難であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、半導体検査装置などの温度制御を効率的且つ安定的に行う温度制御方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の低温温度制御方式は、低温に設定された冷凍庫等の低温環境領域内において、加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行って低温温度制御を行うことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の高温/低温温度制御方式は、常温に設定された常温環境領域内において、前記加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行って高温温度制御を行い、低温に設定された低温環境領域内において、前記加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行って低温温度制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体検査装置などの高温/低温温度制御を安定的且つ効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の温度制御方式の全体構成図を示している。図1において、1は冷凍庫、2はソケットボード、3はソケットを示す。複数のソケット3を備えた複数のソケットボード2が、冷凍庫内の低温環境領域内に位置するように配置される。冷蔵庫内の低温に設定された低温環境領域内に配置された複数のソケット3に、それぞれ、被検査対象装置(DUT:Device Under Test)が装着されて、個々のDUT毎に、厳格な低温温度制御がなされて、DUTの特性試験等を行うことができる。
【0011】
図2は、本発明の温度制御方式の部分拡大図である。図2において、ソケットボード2の各ソケット3には、温度センサ4、加熱器5、電流調整器6、制御器7が配置されている。温度センサ4は、各ソケット3に装着されたDUTの温度を検出し、検出信号を制御器7に出力する。制御器7は入力された検出信号に対応した制御信号を出力し、調整器6が制御信号を調整し、加熱器5がDUTを加熱するソケット温度調整を行う。なお、調整器6を省略し、制御器7から直接に加熱器5を制御することもできる。また、加熱温度制御の具体的な構成は、図2の構成に限定されることなく、種々の構成を採用することができる。
【0012】
複数のソケット3を含む複数のソケットボード2が冷凍庫1の冷凍庫内の低温環境領域内に位置するように配置されているので、冷凍庫内の温度設定はラフであっても、それぞれの、温度センサ4と加熱器5を制御器7により制御することにより、複数のDUTの温度をそれぞれ異なる低温温度で、厳密に一定に制御することができる。なお、実施例1では、低温環境領域を設定する装置として冷凍庫を用いる例について説明したが、冷凍庫に限定されず、低温環境領域を設定することのできるサーモストリーマや恒温槽等を用いることができる。
【実施例2】
【0013】
図3は、本発明の実施例2の温度制御方式の温度制御の遷移図である。図3において、右軸は時間的推移を示し、縦軸はDUTの温度を示している。初期状態、例えば、常温の+25℃に温度制御を開始すると、まず、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いてソケット温度調整を実施する。DUTの温度が上昇し、高温温度制御状態(例えば、+150℃)に移行する。一定期間、高温温度制御状態(例えば、+150℃)を持続し、安定的な高温状態で、DUT試験を行うことができる。個々のDUTには、それぞれ、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7が備えられているので、個々のDUTについて、異なる高温温度でDUT試験を行うことも可能である。
【0014】
高温温度制御状態から低温温度制御状態に移行する際には、冷凍庫のスイッチをオンにし、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いたソケット3の温度調整を停止する。冷凍庫1の温度が低下し、DUTの温度が下降する。冷凍庫1の温度がラフに設定された、例えば、〜−50℃になると、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いた加熱制御を行う。冷凍庫1の温度がラフに設定されていても、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いた加熱制御により、厳密な、例えば、−40℃の低温温度制御を行うことができる。一定期間、低温温度制御状態(例えば、−40℃)を持続し、安定的な低温状態で、DUT試験を行うことができる。個々のDUTには、それぞれ、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7が備えられているので、個々のDUTについて、異なる低温温度でDUT試験を行うことも可能である。
【0015】
一定期間の低温温度制御状態(例えば、−40℃)を終了すると、冷凍庫1のスイッチをオフにし、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いた加熱制御を行う。冷凍庫1の温度が上昇し、DUTの温度が上昇する。常温の+25℃を超え、更に上昇して高温温度制御状態(例えば、+150℃)に移行すると、再度、一定期間、高温温度制御状態(例えば、+150℃)を持続し、安定的な高温状態で、DUT試験を行うことができる。このサイクルを繰り返すことにより、複数のDUTに対して、個々に、高温試験、低温試験を効率的に実施することが可能である。
【0016】
図4は、本発明の実施例2の温度制御方式のフローチャートである。上述のように、ステップS101において、本発明の温度制御を開始すると、ステップS102において、ソケット温度調整を開始する。温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いてソケット温度調整を実施してDUTの温度を上昇させる。ステップS103において、高温制御を行う。一定期間、高温温度制御状態(例えば、+150℃)を持続し、安定的な高温状態で、DUT試験を行う。個々のDUTには、それぞれ、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7が備えられているので、個々のDUTについて、異なる高温温度でDUT試験を行うことも可能である。
【0017】
次いで、ステップS104において、冷凍庫1のスイッチをオンにし、ステップS105において、ソケット温度調整を停止する。冷凍庫1のスイッチをオンにし、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いたソケット温度調整を停止すると、冷凍庫1の温度が低下し、DUTの温度が下降する。
【0018】
ステップS106において、冷凍庫1の温度が低下し、DUTの温度か下降して、冷凍庫1の低温設定温度(〜−50℃)になると、ステップS107において、ソケット温度調整を開始する。
【0019】
ステップS108において、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いた加熱制御を行う。冷凍庫1の温度がラフに設定されていても、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いた加熱制御により、厳密な、例えば、−40℃の低温温度制御を行うことができる。
【0020】
一定期間の低温温度制御状態(例えば、−40℃)を終了すると、ステップS109において、冷凍庫1のスイッチをオフにし、温度センサ4、加熱器5、及び、制御器7を用いた加熱制御を行う。ステップS110において、低温温度制御状態から高温温度制御状態に移行し、次のサイクルを繰り返し行うことができる。なお、実施例2では、低温環境領域を設定する装置として冷凍庫を用いる例について説明したが、冷凍庫に限定されず、低温環境領域を設定することのできるサーモストリーマや恒温槽等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の低温温度制御方式、高温/低温温度制御方式の発明は、例えば、DUTなどの被検査装置の温度制御に限らず、低温環境において個々の対象物に対して厳格な温度制御を行う際に広く適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施例1の温度制御方式の全体構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1の温度制御方式の部分拡大図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2の温度制御方式の温度制御の遷移図である。
【図4】図4は、本発明の実施例2の温度制御方式のフローチャートである。
【図5】図5は、従来例の全体加熱装置、部分加熱装置を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 冷凍庫
2 ソケットボード
3 ソケット機構
4 温度センサ
5 加熱器
6 電流調整器
7 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温に設定された冷凍庫等の低温環境領域内において、加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行って低温温度制御を行うことを特徴とする低温温度制御方式。
【請求項2】
請求項1に記載の温度制御方式において、前記低温環境領域内の低温の設定は前記冷凍庫等のスイッチをオンすることにより行うことを特徴とする低温温度制御方式。
【請求項3】
請求項1に記載の低温温度制御方式において、前記加熱器、温度センサ及び制御器を用いた局所的な加熱制御は、前記冷凍庫等のスイッチをオンにした状態で実施することを特徴とする低温温度制御方式。
【請求項4】
請求項1に記載の低温温度制御方式において、前記加熱器、温度センサ及び制御器の複数の組を有し、前記局所的な加熱制御による低温温度制御は、前記複数の組に対応した異なる局所的な位置で、異なる低温温度で制御されることを特徴とする低温温度制御方式。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の低温温度制御方式において、前記加熱器、温度センサ及び制御器が被検査装置のソケットに組み込まれていることを特徴とする低温温度制御方式。
【請求項6】
常温に設定された常温環境領域内において、前記加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行って高温温度制御を行い、低温に設定された低温環境領域内において、前記加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御を行って低温温度制御を行うことを特徴とする高温/低温温度制御方式。
【請求項7】
請求項6に記載の温度制御方式において、前記低温環境領域内の低温の設定を冷凍庫等のスイッチをオンすることにより行い、前記常温に設定された常温環境領域への移行を、前記低温に設定された前記冷凍庫等のスイッチをオフすることにより行うことを特徴とする高温/低温温度制御方式。
【請求項8】
請求項6に記載の温度制御方式において、常温状態または低温状態から高温温度制御状態への移行は、冷凍庫等のスイッチをオフした状態で前記加熱器、温度センサ及び制御器を用いて局所的に加熱制御して行い、高温温度制御状態から低温温度制御状態への移行は、前記冷凍庫等のスイッチをオンした状態で前記加熱器、温度センサ及び制御器を用いた局所的な加熱制御をオフして行うことを特徴とする高温/低温温度制御方式。
【請求項9】
請求項6に記載の低温温度制御方式において、前記加熱器、温度センサ及び制御器の複数の組を有し、前記局所的な加熱制御による高温/低温温度制御は、前記複数の組に対応した異なる局所的な位置で、異なる高温/低温温度で制御されることを特徴とする低温温度制御方式。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の高温/低温温度制御方式において、前記加熱器、温度センサ及び制御器が被検査装置のソケットに組み込まれていることを特徴とする高温/低温温度制御方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−145151(P2009−145151A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321686(P2007−321686)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(501358507)株式会社シスウェーブ (17)
【Fターム(参考)】