説明

温度検出ウェハ

【課題】熱電対の破損や断線を防ぎ、しかも全体の厚さの均一化を可能にした温度検出ウェハを提供する。
【解決手段】ウェハ貼り合わせ装置の温度モニタ用の温度検出ウェハであって、2枚のダミーウェハの間に温度測定用の熱電対を挟み込んでダミーウェハ同士を接着することにより熱電対をダミーウェハに固着するようにした温度検出ウェハにおいて、前記熱電対を、シース管22aの内部に絶縁材22bを介して熱電対素線22cが配置されたシース熱電対20により構成し、2枚のダミーウェハ11,12によって挟まれるシース熱電対20の一部を、ダミーウェハ11,12の表面に直交する方向の厚さがほぼ一定である扁平部22とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造設備における温度モニタ用に使用される温度検出ウェハに関し、詳しくは、SOI(Silicon on Insulator)基板等を製造するためのウェハ貼り合わせ装置におけるステージ温度等を熱電対により検出するための温度検出ウェハに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉などの半導体製造設備において、ウェハの温度管理は必要不可欠である。このため、従来では、ウェハの温度モニタ用に、例えば特許文献1に示されるような温度検出ウェハ(測温ウェハ)が使用されている。
この温度検出ウェハでは、実ウェハと同径同材料のダミーウェハの表面に多数の凹部が形成されており、これらの凹部に、熱電対の感温部が耐熱性接着剤によって固着されている。
【0003】
また、特許文献2にも、ダミーウェハの表面に形成された大径の凹部に多数の熱電対を固着した温度検出ウェハが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3663035号公報(段落[0017]〜[0024]、図1,図2等)。
【特許文献2】特許第4099511号公報(段落[0037]〜[0039]、図6,図7等)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、SOI基板やSi−Si基板のように2枚のウェハを貼り合わせる製造プロセスでは、ウェハ貼り合わせ装置のステージ上の温度を厳密に管理する必要があり、2枚の実ウェハを貼り合わせたものに相当する温度検出ウェハを使用して温度をモニタすることが行われている。
この場合、従来の温度検出ウェハは、2枚のダミーウェハの間に特許文献1,2に記載されているような熱電対を単に挟み込んで接着するだけの構造であり、熱電対自体の脆さによって熱電対の破損や断線が発生しやすいという問題があった。
また、熱電対が比較的、嵩高いため、2枚のダミーウェハの間に充填される耐熱性接着剤も厚くなり、その厚さの不均一さが温度検出ウェハ全体の厚さを不均一にする結果、貼り合わせ時の圧力が一部に集中してウェハ割れが発生しやすいという問題もあった。
【0006】
そこで本発明の解決課題は、熱電対の破損や断線を防ぎ、しかも全体的な厚さを均一化してウェハ割れを防止可能な温度検出ウェハを提供することにある。また、本発明の他の解決課題は、簡単な構造によって低コストにて製造可能な温度検出ウェハを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る温度検出ウェハは、ウェハ貼り合わせ装置の温度モニタ用の温度検出ウェハであって、2枚のダミーウェハの間に温度測定用の熱電対を挟み込んで前記ダミーウェハ同士を接着することにより前記熱電対を前記ダミーウェハに固着する温度検出ウェハにおいて、
前記熱電対を、シース管の内部に絶縁材を介して熱電対素線が配置されたシース熱電対により構成し、
2枚のダミーウェハの間に挟み込まれる前記シース熱電対の一部を、前記ダミーウェハの表面に直交する方向の厚さがほぼ一定である扁平部としたものである。
【0008】
請求項2に記載した温度検出ウェハは、請求項1に記載した温度検出ウェハにおいて、前記シース熱電対を複数備え、各シース熱電対の、前記ダミーウェハの外側に位置する前記扁平部の一端を補強材によって互いに連結したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シース熱電対に設けられた扁平部を挟むように2枚のダミーウェハを貼り合わせて温度検出ウェハが形成されるため、複数のシース熱電対の扁平部をすべて等しい厚さに構成することにより、扁平部を挟んで2枚のダミーウェハが接着される温度検出ウェハの厚さを全体的に均一にすることができる。これにより、ウェハ貼り合わせ装置のステージ温度を管理するために温度検出ウェハによって温度を検出する場合等に、ダミーウェハに加わる外力が一部に集中するのを防いでウェハ割れを防止することができる。
また、各シース熱電対の扁平部の一端(シース熱電対の円筒部との境界部)を補強材によって互いに連結すれば、前記境界部に加わる外力を分散させてシース熱電対の破損や断線を防ぐことができる。
更に、シース熱電対の一部を扁平部とする加工は容易であるから、温度検出ウェハを低コストにて製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る温度検出ウェハの全体構成図である。
【図2】図2(a)は図1におけるA部のB−B断面図、図2(b)は図2(a)のC−C断面図、図2(c)は図2(b)の扁平部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は、本実施形態に係る温度検出ウェハの全体構成図である。この温度検出ウェハは、大別すると、ウェハ部10及びシース熱電対20から構成されている。
【0012】
図1において、ウェハ部10は、実ウェハ(図示せず)に相当する径の2枚のダミーウェハ11,12を備え、これらのダミーウェハ11,12の間に後述するシース熱電対20の扁平部22を挟んで貼り合わせることにより形成されている。なお、図1では、理解を容易にするために、紙面手前側のダミーウェハ11のほぼ半分を切り欠いて奥側のダミーウェハ12を部分的に露出させてある。また、2枚のダミーウェハ11,12を貼り合わせるための耐熱性接着剤は、便宜上、図示を省略する。
【0013】
一方、シース熱電対20は、ステンレス製のシース管の内部に絶縁材を介して一対の熱電対素線を収容することにより各1本が構成されており、ダミーウェハ11,12の間に挟み込まれる扁平部22と、この扁平部22以外の円筒部21とからなっている。なお、シース熱電対20はウェハ部10の温度検出点の数に応じて複数本を束ねて用いられるものであり、扁平部22及び円筒部21等の具体的構造は後述する。
【0014】
また、ウェハ部10の周囲には、円筒部21と扁平部22との境界である境界部23(すなわち扁平部22の一端)同士を連結するように円環状の補強材30が配置されている。この補強材30は、境界部23に加わる外力を分散させて境界部23でのシース熱電対20の折損を防止するためのものであり、所定の強度と耐熱性を有していれば、補強材30の材質は問わない。補強材30を境界部23に固定する方法としては、針金による締結や接着等を用いることができる。
なお、図1において、25はシース熱電対20を外部の温度測定回路に接続するためのスリーブである。
【0015】
次に、図2は、シース熱電対20の扁平部22及び円筒部21とウェハ部10(ダミーウェハ11,12等)との位置関係を示したものであり、図2(a)は図1におけるA部のB−B断面図、図2(b)は図2(a)のC−C断面図、図2(c)は図2(b)における扁平部22の拡大図である。
【0016】
図2(c)に示すように、シース熱電対20の扁平部22は、ステンレス製のシース管22aの内部に絶縁材22bを介して一対の熱電対素線22cを収容してなるものである。このように、シース熱電対20では、シース管22a及び絶縁材22bによって熱電対素線22cが保護されているので、外力によって熱電対素線22cが断線するおそれはほとんどない。
【0017】
また、扁平部22は円筒部21の一端部を加圧して形成されるため、円筒部21の内部構造はその断面形状を除いて扁平部22と同様であることは言うまでもない。
なお、図2(a)からは明らかではないが、図1に示したごとく、扁平部22は円筒部21に対してほぼ直交するように屈曲されてウェハ部10の中心に向けて配置され、ダミーウェハ11,12の間に充填された耐熱性接着剤13によりダミーウェハ11,12と一体的に固着される。
【0018】
扁平部22の厚さ(ダミーウェハ11,12の表面に直交する方向の厚さ)は、例えば250[μm]であり、この厚さは扁平部22の長手方向に沿って等しく形成されている。また、円筒部21の外径は例えば500[μm]である。
ここで、扁平部22の先端には感温部(熱電対素線22cの一部である感温接点)が内蔵されているので、ウェハ部10の所定の温度検出点に上記感温部が配置されるように、扁平部22の長さを決定することが必要である。
【0019】
以上のように、この実施形態によれば、扁平部22を挟むように2枚のダミーウェハ11,12を貼り合わせてあるため、複数のシース熱電対20の扁平部22の厚さをすべて等しく形成することにより、温度検出ウェハの厚さを全体的に均一にすることができる。従って、この温度検出ウェハを用いてウェハ貼り合わせ装置のステージ温度をモニタする場合等に、ダミーウェハ11,12の表裏から加わる外力が一部に集中するのを防止してウェハ割れを防止することができる。
【0020】
また、扁平部22と円筒部21との境界である境界部23を補強材30によって互いに連結すれば、境界部23に加わる外力を分散させてシース熱電対20の破損や断線を防ぐ効果もある。更に、扁平部22はプレス加工等によって容易に形成可能であるから、温度検出ウェハを低コストにて提供することができる。
【符号の説明】
【0021】
10:ウェハ部
11,12:ダミーウェハ
13:耐熱性接着剤
20:シース熱電対
21:円筒部
22:扁平部
22a:シース管
22b:絶縁材
22c:熱電対素線
23:境界部
25:スリーブ
30:補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ貼り合わせ装置の温度モニタ用の温度検出ウェハであって、2枚のダミーウェハの間に温度測定用の熱電対を挟み込んで前記ダミーウェハ同士を接着することにより前記熱電対を前記ダミーウェハに固着するようにした温度検出ウェハにおいて、
前記熱電対を、シース管の内部に絶縁材を介して熱電対素線が配置されたシース熱電対により構成し、
2枚のダミーウェハによって挟まれる前記シース熱電対の一部を、前記ダミーウェハの表面に直交する方向の厚さがほぼ一定である扁平部としたことを特徴とする温度検出ウェハ。
【請求項2】
請求項1に記載した温度検出ウェハにおいて、
前記シース熱電対を複数備え、
各シース熱電対の、前記ダミーウェハの外側に位置する前記扁平部の一端を補強材によって互いに連結したことを特徴とする温度検出ウェハ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−242227(P2012−242227A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112178(P2011−112178)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(511122293)ヒューグルインターナショナル株式会社 (1)
【出願人】(511122307)株式会社日本熱電機製作所 (1)
【Fターム(参考)】