説明

温度検知装置及びこれを搭載した定着装置

【課題】 部材の表面温度を検知する非接触式の温度検知装置に対し、トナーや紙粉のような埃やゴミが飛散して温度検知部に付着することを防止し、適正な温度検知を行う。
【解決手段】 定着装置1の定着部材である熱ローラ2の上方に、温度検知装置10を備える。温度検知装置10は、温度センサ11、送風手段12、及びガイド部材13を備える。温度センサ11は、赤外線を検知する温度検知部11aを底面に備え、熱ローラ2上方に所定の間隙を設けて配置される。送風手段12は温度センサ11の上方に配置され、この送風手段12の底面の箇所から、温度センサ11を内側にすっぽりとカバーする形で、ガイド部材13が熱ローラ2の表面近傍まで延びている。これにより、送風手段12からの空気流によって、温度検知部11aの箇所にトナーや紙粉のような埃やゴミが飛散して来ないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の表面温度を検知する温度検知装置、特に非接触式の温度検知装置に関する。また、この温度検知装置を、定着部材及び/または加圧部材の温度制御のために搭載した定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタに代表される電子写真方式の画像形成装置においては、転写部で用紙に転写された未定着トナー像を定着させる方法として、熱定着方式が広く用いられている。この熱定着方式とは、ローラやベルトで構成される2個の回転部材を互いに圧接させてニップを形成して、これらの回転部材のうち一方、或いは両方の近傍に加熱手段を配置して回転部材を加熱し、ニップに未定着トナー像を担持した用紙を挿通することにより、用紙にトナーを定着するものである。
【0003】
熱定着方式の定着装置としては、互いに圧接し合うローラ対を構成する2個のローラのうち、用紙上の未定着トナー像に直接接触するローラを熱ローラ(定着部材)とし、この熱ローラにハロゲンランプ等の加熱手段を内蔵したものが一般的である。安定した定着性を得るためには、サーミスタ等の温度センサを備えた温度検知装置によって熱ローラの表面温度を監視し、ハロゲンランプ等の加熱手段の発熱量を制御することで熱ローラの表面温度を適温に維持する。
【0004】
熱ローラの表面温度は、従来、その表面に接触する接触式の温度検知装置によって検知していた。すなわち、サーミスタ等の温度センサを熱ローラ表面の非通紙域に接触させ、この非通紙域の表面温度に基づいて、加熱手段による熱ローラの温度制御を行っていた。しかしながら、温度センサを熱ローラ表面に接触させることにより、熱ローラ表面が傷付いたり、温度検知装置周辺に残留するトナーや紙粉がセンサの温度検知部に付着したりして、適正な温度検知を行うことできなくなるという問題があった。そこで、このような問題を解決すべく、熱ローラ表面から僅かに離れた位置に設けてその表面温度を検知する非接触式の温度センサを備えた温度検知装置が提案され、その一例を特許文献1に見ることができる。
【特許文献1】特開平6−194994号公報(第3−5頁、図1−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、熱ローラの表面近傍では、熱ローラの回転によってその周方向に僅かな空気流が発生することが知られている。そして、この空気流によって温度検知装置周辺に残留するトナーや紙粉が飛散し、温度検知装置の温度検知部に到達する恐れがある。温度検知部にトナーや紙粉のような埃やゴミが付着すると、熱ローラ表面から熱エネルギーを得るに際し障害となり、熱ローラ表面の温度検知に悪影響を及ぼす可能性があることが懸念されている。
【0006】
特許文献1に記載の定着装置では、温度検知装置にサーミスタカバーを設けるとともに、このサーミスタカバーに熱ローラ表面に当接するコロを取り付けて、熱ローラ表面との所定の間隙を保持している。しかしながら、サーミスタカバーと熱ローラ表面との間の間隙から、カバー内側のサーミスタ(温度センサ)の箇所にトナーや紙粉が入り込む可能性を否定できない。さらに、コロにトナーや紙粉が付着して堆積することにより、サーミスタカバーと熱ローラ表面との間の間隙が広くなり、サーミスタカバーの内側にトナーや紙粉が入り込み易い状態になる恐れも考えられる。したがって、上記サーミスタの箇所のような温度検知部に、温度検知装置周辺に残留するトナーや紙粉が飛散して付着することを積極的に防止する温度検知装置が求められている。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、部材の表面温度を検知する非接触式の温度検知装置に対し、定着装置における温度検知装置周辺に残留するトナーや紙粉のような、埃やゴミが飛散して温度検知部に付着することを防止し、適正な温度検知を行うことが可能な温度検知装置を提供することを目的とする。また、このような温度検知装置を搭載した定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、部材の表面温度を検知する非接触式の温度検知装置において、送風手段と、この送風手段によって得られる空気流を温度検知部に案内するガイド部材とを備えることとした。
【0009】
また本発明では、上記温度検知装置を、定着部材及び/または加圧部材の表面温度を検知するために定着装置に搭載することとした。
【0010】
また、上記構成の定着装置において、前記温度検知装置を、前記定着部材及び/または前記加圧部材の上方に配置することとした。
【0011】
また、上記構成の定着装置において、前記温度検知装置の前記ガイド部材は、前記定着部材または前記加圧部材に近づくに従って、前記空気流が定着部材または加圧部材の回転方向下流側を指向することとなる形状をなすこととした。
【0012】
また、上記構成の定着装置において、前記温度検知装置の前記送風手段を、前記定着部材または前記加圧部材の回転時に駆動することとした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、部材の表面温度を検知する非接触式の温度検知装置において、送風手段と、この送風手段によって得られる空気流を温度検知部に案内するガイド部材とを備えることとしたので、送風手段からの空気流によって、温度検知部の箇所に埃やゴミが飛散して来ないようにすることができる。これにより、部材の表面温度を検知するために必要な部材表面の熱エネルギーは、埃やゴミの影響を受けることなく温度検知部に到達する。したがって、より適正な温度検知を行うことが可能な温度検知装置を得ることができる。
【0014】
また本発明では、上記温度検知装置を、定着部材及び/または加圧部材の表面温度を検知するために定着装置に搭載することとしたので、トナーや紙粉のような埃やゴミが飛散して温度検知部に付着することを防止し、適正な温度検知を行うことが可能な温度検知装置を備えた高性能な定着装置を得ることができる。
【0015】
また、上記構成の定着装置において、温度検知装置を、定着部材及び/または加圧部材の上方に配置することとしたので、温度検知装置周辺に残留するトナーや紙粉は、送風手段からの空気流に加えてそれら自体の重みが作用し、さらに温度検知部に到達し難くなる。これにより、温度検知装置による温度検知の精度が高められるので、定着装置においてより正確な温度制御を行うことが可能となる。
【0016】
また、上記構成の定着装置において、温度検知装置のガイド部材は、定着部材または加圧部材に近づくに従って、空気流が定着部材または加圧部材の回転方向下流側を指向することとなる形状をなすこととしたので、これらの部材の回転によって生じる表面近傍の周方向の僅かな空気流に逆らわずに、送風手段から空気流を送り出すことができる。これにより、温度検知装置周辺に残留するトナーや紙粉は、乱舞して温度検知部に接近することなく温度検知装置から遠ざけられる。
【0017】
また、上記構成の定着装置において、温度検知装置の送風手段を、定着部材または加圧部材の回転時に駆動することとしたので、これらの部材の回転で生じる空気流によってトナーや紙粉が飛散し易くなるのを抑制することができる。このようにしてトナーや紙粉が飛散し易くなる時にだけ送風手段を駆動することにより、温度検知の精度を高めることができるのに加えて、定着装置の低消費電力化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1、及び図2に基づき説明する。
【0019】
最初に、本発明の第1の実施形態に係る温度検知装置を搭載した定着装置について、図1を用いてその詳細な構成を説明する。図1は、温度検知装置を搭載した定着装置の模型的垂直断面正面図である。図中、実線矢印は熱ローラ、及び加圧ローラの回転方向を、白抜き矢印は空気の移動方向を示している。
【0020】
図1に示すように、定着装置1には、定着部材である熱ローラ2、及び加圧部材である加圧ローラ3が備えられている。熱ローラ2と加圧ローラ3とは、所定の圧力で互いに圧接せしめられ、用紙搬送方向に所定幅の定着ニップを形成する。この定着ニップを、未定着トナー像を担持した用紙が通過する。用紙上の未定着トナー像には、熱ローラ2が直接接触する。
【0021】
熱ローラ2は、図示しない駆動手段により回転駆動せしめられる。加圧ローラ3は、熱ローラ2に接触していることにより、熱ローラ2の回転に従って回転する。通常の定着動作では、用紙を図1において下方から上方に搬送しつつ用紙の表面の未定着トナーを定着するように、熱ローラ2は時計方向に、加圧ローラ3は反時計方向に回転する。
【0022】
熱ローラ2は、直径が40mmで、アルミ管等の芯材の表面に弾性部材層を備えている。弾性部材層はシリコンゴムで構成され、その厚さは2mmである。弾性部材層の表面には離型層を密着して設け、平滑性とトナーの離型性を高めている。離型層には、PFA(テトラフルオロエチレン−パー−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素系樹脂が用いられ、塗料の塗布やチューブを被せることによって層が設けられている。PFAチューブであれば60μm、フッ素樹脂塗料であれば25μmの厚さである。
【0023】
加圧ローラ3は、ステンレス鋼からなる芯金の外側に、弾性部材層を構成するスポンジシリコンゴムを備えている。
【0024】
熱ローラ2の内側には、図1に示すように、加熱手段であるハロゲンランプ4が配置されている。加熱手段であるハロゲンランプ4は、熱ローラ2を内側から加熱するものである。ハロゲンランプ4は、熱ローラ2の軸線方向に延びる棒状をなし、2本備えられている。ハロゲンランプ4から発せられた熱は、熱ローラ2の芯材や弾性部材層を伝達して表面に到達し、この熱ローラ2表面の熱により用紙が担持する未定着トナーを溶融する。
【0025】
熱ローラ2の上方には、図1に示すように、温度検知装置10が備えられている。温度検知装置10は、熱ローラ2の表面温度を検知する非接触式の温度検知装置であって、熱ローラ2の軸線方向略中央部に配置されている。温度検知装置10は、温度センサ11、送風手段12、及びガイド部材13を備えている。
【0026】
温度センサ11は、熱ローラ2の上方に、所定の間隙を設けて配置されている。温度センサ11はサーミスタ等により構成され、熱ローラ2表面から発せられる赤外線等を熱エネルギーとして得て、温度を検知するものである。実際に温度を検知する温度検知部11aは、温度センサ11の底面に設けられている。
【0027】
送風手段12は、温度センサ11のさらに上方に配置されている。そして、送風手段12は、ファンにより構成され、その下方に設けられた温度センサ11に向かう空気流が発生するように取り付けられている。なお、この送風手段12は、熱ローラ2の回転時、すなわち定着動作が行われている時に駆動する。
【0028】
ガイド部材13は、送風手段12の下方に配置されている。ガイド部材13は、その上端が送風手段12の底面に密着し、下端が熱ローラ2の表面近傍まで延びる筒状をなしている。そして、温度センサ11が、ガイド部材13の内側にすっぽりとカバーされた形で配置されている。これにより、送風手段12によって得られる空気流は、温度センサ11の下方、すなわち温度センサ11底面に設けられた温度検知部11aの箇所まで案内される。なお、ガイド部材13の、熱ローラ2の回転方向上流側に相当する上流側壁部13aの下端は熱ローラ2の表面近傍まで延び、下流側壁部13bはその下端における熱ローラ2との間隙を上流側壁部13aよりも大きく設けている。したがって、送風手段12によって下方に進む空気流は、温度センサ11の箇所を通って、熱ローラ2の表面近傍において熱ローラ2の回転方向下流側へと流れる。
【0029】
このようにして、部材の表面温度を検知する非接触式の温度検知装置10において、送風手段12と、この送風手段12によって得られる空気流を温度センサ11の温度検知部11aに案内するガイド部材13とを備えたので、送風手段12からの空気流によって、温度検知部11aの箇所に埃やゴミが飛散して来ないようにすることができる。これにより、部材の表面温度を検知するために必要な部材表面の熱エネルギーは、埃やゴミの影響を受けることなく温度検知部11aに到達する。したがって、より適正な温度検知を行うことが可能な温度検知装置10を得ることができる。
【0030】
また本発明では、上記温度検知装置10を、定着部材である熱ローラ2の表面温度を検知するために定着装置1に搭載したので、トナーや紙粉のような埃やゴミが飛散して温度検知部に付着することを防止し、適正な温度検知を行うことが可能な温度検知装置10を備えた高性能な定着装置2を得ることができる。
【0031】
そして、上記構成の定着装置1において、温度検知装置10を、熱ローラ2の上方に配置したので、温度検知装置10周辺に残留するトナーや紙粉は、送風手段12からの空気流に加えてそれら自体の重みが作用し、さらに温度検知部11aに到達し難くなる。これにより、温度検知装置10による温度検知の精度が高められるので、定着装置1においてより正確な温度制御を行うことが可能となる。
【0032】
さらに、上記構成の定着装置1において、温度検知装置10の送風手段12を、熱ローラ2の回転時に駆動したので、熱ローラ2の回転でその表面近傍に生じる空気流によってトナーや紙粉が飛散し易くなるのを抑制することができる。このようにしてトナーや紙粉が飛散し易くなる時にだけ送風手段12を駆動することにより、温度検知の精度を高めることができるのに加えて、定着装置1の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態に係る温度検知装置を搭載した定着装置について、図2を用いてその詳細な構成を説明する。図2は、温度検知装置を搭載した定着装置の模型的垂直断面正面図である。図中、実線矢印は熱ローラ、及び加圧ローラの回転方向を、白抜き矢印は空気の移動方向を示している。なお、この実施形態の基本的な構成は、図1を用いて説明した前記第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と共通する構成要素には前と同じ符号を付し、説明は省略するものとする。
【0034】
第2の実施形態において、温度検知装置10のガイド部材14は、図2に示すように、定着部材である熱ローラ2に近づくに従って、送風手段12によってこの内部を通過する空気流が熱ローラ2の回転方向下流側を指向することとなる形状をなしている。すなわち、図2において、熱ローラ2の上方に位置し、温度センサ11上方に設けられた送風手段12の箇所から下方に延びるガイド部材14は、時計方向に回転する熱ローラ2に近づくに従って右方に湾曲している。
【0035】
このようにして、温度検知装置10のガイド部材14は、熱ローラ2に近づくに従って、空気流が熱ローラ2の回転方向下流側を指向することとなる形状をなすので、熱ローラ2の回転によって生じる表面近傍の周方向の僅かな空気流に逆らわずに、送風手段12から空気流を送り出すことができる。これにより、温度検知装置10周辺に残留するトナーや紙粉は、乱舞して温度検知部11aに接近することなく温度検知装置10から遠ざけられる。
【0036】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0037】
たとえば、温度検知装置10によって温度検知を行う対象としては、定着部材である熱ローラ2に限定されるわけではなく、加圧部材である加圧ローラ3であっても構わない。また、これら両方の部材に対して、各々1個ずつ温度検知装置10を設けても構わない。さらに、温度検知装置10によって温度検知を行う対象部材としては、本実施形態のような定着装置1を構成する部材に限定されるわけではなく、他の装置の構成部材であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、部材の表面温度を検知する非接触式の温度検知装置全般において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る温度検知装置を搭載した定着装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る温度検知装置を搭載した定着装置の模型的垂直断面正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 定着装置
2 熱ローラ(定着部材)
3 加圧ローラ(加圧部材)
4 ハロゲンランプ
10 温度検知装置
11 温度センサ
11a 温度検知部
12 送風手段
13、14 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の表面温度を検知する非接触式の温度検知装置において、
送風手段と、この送風手段によって得られる空気流を温度検知部に案内するガイド部材とを備えたことを特徴とする温度検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度検知装置を、定着部材及び/または加圧部材の表面温度を検知するために搭載したことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
前記温度検知装置を、前記定着部材及び/または前記加圧部材の上方に配置したことを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記温度検知装置の前記ガイド部材は、前記定着部材または前記加圧部材に近づくに従って、前記空気流が定着部材または加圧部材の回転方向下流側を指向することとなる形状をなすことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記温度検知装置の前記送風手段を、前記定着部材または前記加圧部材の回転時に駆動することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−300701(P2006−300701A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122130(P2005−122130)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】