説明

温度測定システム

【課題】光ファイバを高精度に配置でき、展開および折り畳みが容易に行える温度測定システムを提供する。
【解決手段】開口を有する固定形状の2個以上の支持部材13と、2個以上の支持部材を回動可能に連結する連結部材15aと、2個以上の支持部材に配設された光ファイバ12と、光ファイバからの後方散乱光を受信して光ファイバの温度分布を測定する温度測定部17と、を備える温度測定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止技術の開発が強く望まれており、社会のあらゆる分野での省エネルギが求められている。例えば、ブロードバンド・インターネット環境の急速な普及に応じて、インターネットデータセンタ(IDC)は、その数を急激に増加させている。データセンタのサーバルーム内では、多数のサーバが稼動しており、1箇所のデータセンタで稼動するサーバの台数も増大しており、稼動サーバ数の増加によって消費電力は急激に増加している。サーバの稼動時には、サーバの消費電力に相当するエネルギの発熱が生じる。サーバの発熱による温度上昇を抑制するためサーバルーム内の冷却が行われるが、現状では冷却にサーバの消費電力と同程度の膨大な空調電力を必要としている。このため、データセンタのサーバルーム内における空調電力の削減は、大きな省エネルギ効果が期待でき、空調の効率化が求められている。
【0003】
データセンタ、オフィスビル、大規模工場など、比較的大面積の空間を効率的に空調制御して省エネルギを図るためには、その空間内の温度分布を詳細にかつ正確に測定する必要がある。例えば、データセンタのサーバルーム等では、所定の範囲内のすべての箇所で所定温度以下であることが求められ、そのような条件を満たすように空調制御が行われる。ここで局所的に温度が高い部分が存在すると、その部分の温度を所定温度以下に低下させるように空調制御が行われ、他の箇所は必要以上に低温とすることになり、その分空調の効率が低下する。
【0004】
そこで、サーバルーム内の空間の温度分布を細かく精度良く測定して、上述したような局所的な熱交換の状態を把握した上で、室内の空調を設計することが好ましい。例えば、サーバルーム内の空間の温度分布を、数cm程度の距離分解能で測定することが望まれている。
【0005】
室内の空間の温度分布を測定するための温度センサとしては、例えば、熱電対やサーミスターが従来から用いられている。また、最近では、各センサにインターネットプロトコル(Internet Protocol:IP)を付与したインテリジェント温度センサも開発されているが、これらの温度センサは高価である。
【0006】
上記のように、室内の温度分布を精密に測定するには、多数の温度センサを所定の測定位置に正確に配置する必要がある。そのため、高価な温度センサを多数使用する必要があると共に、複雑な配置機構を用いる必要があり、温度測定システムが高価になるという問題がある。
【0007】
そこで、光ファイバの後方散乱光を用いて、空間の温度分布を測定することが提案されている。これは、光ファイバの後方散乱光強度の温度依存性を利用するもので、光ファイバの長手方向に沿った任意の位置での温度分布を測定することができる。
【0008】
図1は、光ファイバの後方散乱光を用いた温度測定システムの構成例を示す図である。
図1に示す温度測定システム10は、シート11と、シート11上に配設された光ファイバ12と、光ファイバ12からの後方散乱光を受信して光ファイバ12の温度分布を測定する温度測定部17と、を備える。
【0009】
温度測定システム10は、光ファイバ12の後方散乱光を利用して、空間の温度分布を測定するものである。温度測定部17から、光ファイバ12にポンプ光を入射すると、光ファイバ12の長手方向における各部位において後方散乱光が発生する。この後方散乱光の強度は光ファイバ12内の後方散乱を生じた部位の温度に依存する。光ファイバ12で生じる後方散乱光の種類としては、例えば、ブルリアン散乱光、ラマン散乱光又はレイリー散乱光を用いることができる。温度測定部17は、光ファイバ12からの後方散乱光を受信して、その光強度を解析することにより、後方散乱が生じた光ファイバ12の各部位の温度を測定する。このようにして、温度測定システム10は、光ファイバ12の長手方向に沿った各部位の温度に基づいて、高い距離分解能で空間の温度分布を測定する。
【0010】
温度測定部17は、光ファイバ12に入射するパルス状のポンプ光を発生し且つ受信した後方散乱光を解析する光学部17aと、光学部17aを制御する制御部17bと、測定結果等を表示するモニタ17cと、を有する。
【0011】
シート11は、その上に配設された光ファイバ12を支持する。シート11は、温度測定与える影響を小さくするように、熱伝導性が低く且つ熱容量が小さいことが望ましい。さらに、光ファイバ12を支持する部材は、配設された光ファイバ12と、光ファイバ12が配置される空間との間の熱の移動に対して影響を与えないことが望ましい。そこで、図1に示した例では、周囲の気流を妨げないように、繊維を網目状に配設した大きな開口部を有するメッシュシートを使用しているが、光ファイバ12を支持する部材として、例えば、パンチングされた多数の開口を有するシートを用いる場合もある。
【0012】
図1に示すように、光ファイバ12は、シート11上に、光ファイバ12の一部分が捲回されて形成された複数のコイル部12aを形成するように配設され、接着材を用いてシート11に固定される。
【0013】
コイル部12aを形成する光ファイバ12の所定の長さの部分は、コイル部12aが位置する空間の温度を有するので、略同一の温度となる。そのため、同一のコイル部12aを形成する光ファイバ12の部分の後方散乱光を測定することにより、コイル部12aが位置する空間の温度に対して、コイル部12aを形成する光ファイバ12の所定の長さの部分の平均化された温度が得られることになる。このように、コイル部12aを設けることによって、温度測定に対するノイズの影響を低減することができる。
【0014】
温度測定を行う場合には、コイル部12aが測定点に位置するように、シート11を温度測定する空間に展開して保持し、測定を行う。
光ファイバ12を支持するシート11は、可撓性を有するので、配管の周囲など、所望の位置に配置することが可能である。
しかし、光ファイバ12を支持するシートが可撓性を有する場合、そのようなシートを保持するのが難しく、光ファイバ12のコイル部12aを所望の位置に正確に配置するのが難しいという問題がある。
【0015】
前述のように、データセンタのサーバルーム内の空間の温度を測定する場合、数cm程度の距離分解能で測定することが望まれており、光ファイバ12のコイル部12aを1cm程度の誤差で配置する必要がある。
一方、サーバルーム内は空調されるため、空調用の気流を妨げないことが要求される。そこで、図1の例のように、光ファイバ12を支持するシートとして、繊維を網目状に配設したメッシュシートまたは多数の開口を有するシートを使用することが望ましいが、そのようなシートは正確に配置するのは難しい。
【0016】
また、シート11は、温度分布測定時のみ測定する空間に展開され、測定終了後は小さくまとめられるが、展開した時の保持が難しく、また回収時に小さくまとめる場合の操作が煩雑で、光ファイバ12を損傷することも起き得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平3−210440号公報
【特許文献2】特開平4−174331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
実施形態によれば、気流への影響の小さいシートに係止された光ファイバを正確に配置でき、展開および回収が容易に行える温度測定システムが実現される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の第1の観点によれば、開口を有する固定形状の2個以上の支持部材と、2個以上の支持部材を回動可能に連結する連結部材と、2個以上の支持部材に配設された光ファイバと、光ファイバからの後方散乱光を受信して光ファイバの温度分布を測定する温度測定部と、を備えることを特徴とする温度測定システムが提供される。
【発明の効果】
【0020】
実施形態の温度測定システムによれば、気流への影響の小さい支持部材は固定形状であるから、支持部材に係止された光ファイバを正確に配置でき、測定精度を向上できる。
また、支持部材の展開および回収が容易に行え、展開および回収時の光ファイバの損傷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、光ファイバの後方散乱光を用いた温度測定システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態において、光ファイバ12を支持する部材を示す図である。
【図3】図3は、支持部材の1つを示す図である。
【図4】図4は、図2に示した光ファイバ保護部材を拡大して示す図である。
【図5】図5は、連結した複数の支持部材の形態を示す図である。
【図6】図6は、第1実施形態における連結角度設定機構の支持部材側の構成を示す図である。
【図7】図7は、連結角度設定部材および連結角度設定部材を支持部材に取り付けた状態を示す図である。
【図8】図8は、連結部材の変形例を示す図である。
【図9】図9は、隣接する支持部材に配設された光ファイバを、光コネクタで光学的に接続する例を示す図である。
【図10】図10は、隣接する支持部材に配設された光ファイバを、光コネクタで光学的に接続する例を示す図である。
【図11】図11は、第2実施形態の温度測定システムの支持部材の1つを示す図である。
【図12】図12は、第3実施形態の温度測定システムにおいて、連結した複数の支持部材を示す図である。
【図13】図13は、第4実施形態の温度測定システムにおいて、連結した複数の支持部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本明細書で開示する温度測定システムの好ましい実施形態を、図を参照して説明する。
第1実施形態の温度測定システムは、図1に示した温度測定システムの基本構成と類似した基本構成を有する。第1実施形態の温度測定システムは、データセンタのサーバルーム内の空間など空調用の気流がある空間の温度分布を、気流の妨害を最小限にして、高い位置精度で測定する場合などに適している。
【0023】
第1実施形態の温度測定システムは、図1に示したように、光ファイバ12と、光ファイバ12を支持する部材と、光ファイバ12からの後方散乱光を受信して光ファイバ12の温度分布を測定する温度測定部17と、を備える。温度測定システム10は、光ファイバ12の後方散乱光を利用して、光ファイバ12の長手方向に沿った各部位の温度に基づいて、高い距離分解能で空間の温度分布、すなわち空間の温度分布を測定するものである。温度測定部17は、光ファイバ12に入射するパルス状のポンプ光を発生し且つ受信した後方散乱光を解析する光学部17aと、光学部18aを制御する制御部17bと、測定結果等を表示するモニタ17cとを有する。
【0024】
第1実施形態の温度測定システムは、光ファイバ12を支持する部材が、図1に示したシート11と異なっている。
図2は、第1実施形態において、光ファイバ12を支持する部材を示す図である。
図2に示すように、光ファイバ12を支持する部材は、2個以上(ここでは8個)の支持部材13と、隣接する支持部材13を回動可能に連結する連結部材15aと、光ファイバ保護部材18と、を有する。光ファイバ保護部材18は、隣接する支持部材13に亘って配設される光ファイバ12の部分を保護する。
【0025】
図3は、支持部材13の1つを示す図である。
図3に示すように、支持部材13は、長方形の枠(フレーム)13aと、フレーム13aの長手方向にわたって張られた複数のワイヤ13bと、連結部材15aと、を有する。ワイヤ13bは、フレーム13aの幅方向(長手方向と直交する方向)に間隔をあけて配置される。フレーム13aとワイヤ13bの間の部分は、開口となる。
【0026】
フレーム13aは、剛性を有する材料を用いて形成されることが好ましい。フレーム13aの形成材料としては、例えば、アルミ等の金属、木材、又は合成樹脂等を用いることができる。ワイヤ13bは、配設された光ファイバ12を支持できる程度の機械的強度を有する材料を用いて形成されることが好ましい。ワイヤ13bの形成材料としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、合成樹脂製繊維などを用いることが好ましいが、ステンレス等の金属繊維又は植物由来の繊維等を用いることができる。
【0027】
合成樹脂製繊維としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン等)、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、セルロース(再生セルロース、セルロース誘導体を含む)、ポリウレタンなどを材料とする繊維が使用できる。また、金属繊維としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、黄銅などを材料とする繊維が使用できる。
【0028】
なお、ここでは、ワイヤ13bは、長手方向のみに伸びるように設けられたが、それと垂直な方向にも伸びるように設けてメッシュ状にしてもよい。また、多数の開口が形成されたシートを用いることも可能である。シートの材料としては、上記のワイヤ13bの形成材料が使用可能である。
【0029】
光ファイバ12は、複数の支持部材13を連結した状態で配設される。光ファイバ12は、光ファイバ12の一部分が捲回されて形成された複数のコイル部12aを有しており、コイル部12aが隣接するワイヤ13b間に固定されて、支持部材13上に配設されている。前述のように、コイル部12aを設けることによって、温度測定に対するノイズの影響を低減することができる。複数のコイル部12aの寸法及び間隔は、求められる温度分布の距離分解能等に応じて、適宜設定され得る。
【0030】
連結部材15aの一方は、支持部材13のフレーム13aの側辺に固定され、他方は連結する他の支持部材13のフレーム13aに固定される。ここでは、2個の連結部材15aで、2個の支持部材13を連結している。連結部材15aは、例えば、ちょうつがいを用いることができ、2個の支持部材13を回動可能に連結する。これにより、2個以上の支持部材13は、面状に展開した状態と折り畳んだ状態の間で容易に状態を変えることができる。
【0031】
光ファイバ保護部材18は、複数の支持部材13が折り畳まれる際に、1つの支持部材13に配設された光ファイバ12と他の支持部材13に配設された光ファイバ12の間の部分が、光ファイバ12の許容最小曲率半径よりも小さな曲率半径で曲げられることを防止する。ここで、光ファイバの許容最小曲率半径は、それよりも小さな曲率半径で光ファイバが曲げられた場合、光ファイバが破壊され得るか又は光の伝送が正常に行われなくなり得る曲率半径を意味する。
【0032】
図4は、図2に示した光ファイバ保護部材18を拡大して示す図である。
光ファイバ保護部材18は、中空で可撓性を有しており、内部に光ファイバ12が挿通されている。光ファイバ保護部材18が、折曲又は破断され得る最小曲率半径は、光ファイバ12の最小曲率半径よりも大きい。従って、複数の支持部材13が折り畳まれた際に、光ファイバ保護部材18内に挿通される光ファイバ12の部分が、その最小曲率半径よりも大きな曲率半径で曲げられることが防止される。なお、光ファイバ12は、光ファイバ保護部材18の外面に配設されていても良い。光ファイバ保護部材18としては、例えば、中空で、蛇腹状に形成された合成樹脂製のチューブを用いることができる。
【0033】
第1実施形態では、連結する支持部材13の個数に応じて、任意の長さの支持部材連結体を形成することができる。ここで、支持部材連結体は、複数の支持部材13を連結して形成されたものである。
第1実施形態の温度測定システムでは、温度分布を測定する際に、連結した複数の支持部材11はいくつかの形態を取り得ることを、以下に説明する。
【0034】
図5(A)は、複数(ここでは5個)の支持部材13を一直線に展開した様子を示す図である。この時、各連結部材15aは、180度に開いた状態になっている。図5(B)は、隣接する支持部材13が所定の角度をなすように展開した状態を、図9(C)は、一部の支持部材13を折り畳み、他の支持部材13を一直線に展開した状態を示す。
第1実施形態では、図5(A)から(C)のいずれの状態でも、光ファイバ12の位置は正確に決定することができるので、いずれの状態で温度分布を測定してもよい。
【0035】
図5(C)のように、複数の支持部材13の内の一部が、折り畳まれた状態で温度分布測定を行うのは、複数の支持部材13が連結して展開された長さよりも、温度測定が行われる空間の長さが短い場合もあるからである。折り畳まれた部分の光ファイバ12から測定された温度測定値は、例えば、測定結果として用いなくても良い。
【0036】
図5(A)から図5(C)に示すように複数の支持部材13が展開された状態が固定されるように、結合部材15aは、折曲の角度が多段階又は連続的に固定される機能を有していることが好ましい。
【0037】
また、支持部材13を任意の角度で結合するために、次に説明する別の連結角度設定機構を用いても良い。
図6に示すように、連結する支持部材13の一方のフレーム13aの上辺に2個の突起16aを、他方のフレーム13aの上辺に1個の突起16aを設ける。
【0038】
図7は、支持部材13に取り付けられる連結角度設定部材16bおよび連結角度設定部材を支持部材13に取り付けた状態を示す図である。図示のように、連結角度設定部材16bは、3個の穴16cを有する板状部材である。図7(A)は、連結する支持部材13を一直線に、すなわち180度の角度で連結する場合の連結角度設定部材16bを示し、図7(B)は図7(A)の連結角度設定部材16bを取り付けた状態を示す。フレーム13aの上辺の突起16aが、連結角度設定部材16bの穴16cに嵌るように、連結角度設定部材16bをフレーム13aの上辺に取り付ける。
【0039】
図7(C)は、連結する支持部材13を逆方向に、すなわち0度の角度で連結する場合の連結角度設定部材16bを示し、図7(D)は図7(C)の連結角度設定部材16bを取り付けた状態を示す。図7(E)は、連結する支持部材13を直角方向に、すなわち90度の角度で連結する場合の連結角度設定部材16bを示し、図7(F)は図7(E)の連結角度設定部材16bを取り付けた状態を示す。図7(G)は、連結する支持部材13を45度の角度で連結する場合の連結角度設定部材16bを示し、図7(H)は図7(G)の連結角度設定部材16bを取り付けた状態を示す。
【0040】
図7に示すように、この連結角度設定機構を用いれば、支持部材13を任意の角度で連結することができ、各支持部材13における光ファイバ12の位置を正確に決定することができる。
【0041】
第1実施形態の温度測定システムで温度分布を測定する時には、温度測定を行う位置に応じて、支持部材13を所望の形状に展開し、コイル部12aが温度測定を行う位置に配置されるように、展開した支持部材13を配置する。
例えば、室内の床から垂直な平面における温度分布を測定する場合には、展開した支持部材13の下辺を床上の所定位置に配置して温度測定を行う。さらに、三次元空間の温度分布を測定する場合には、このような温度測定を、床上の位置をずらしながら行う。また、展開した支持部材13を床に対して平行に保持して、室内の床に平行な平面における温度分布を測定することもできる。更に、床に対して斜めの平面における温度分布を測定することもできる。さらに、隣接する支持部材13を任意の角度で連結することにより、途中で屈曲した面上などの所望の位置での温度分布が測定できる。
【0042】
支持部材13の展開は容易に行え、折り畳んだ状態にして回収することも容易に行える。
いずれにしろ、光ファイバ12は、各支持部材13の剛性を有するフレーム13aに張られたワイヤ13bに係止されるので、フレーム13aに対して所定の位置に正確に位置している。さらに、展開された複数の支持部材13の位置関係も正確に決定できるので、光ファイバ12を所望の位置に正確に配置できる。これにより、高い位置精度で温度分布を測定することができる。
【0043】
図8は、連結部材15aの変形例を示す図である。
第1実施形態では、連結部材15aとしてちょうつがいなどを用いたが、他の連結機構を使用することも可能である。図8に示すように、連結する一方の支持部材13のフレーム13aの側辺の上側の部分に延長部21aを設け、延長部21aに回転軸21dを設ける。連結する他方の支持部材13のフレーム13aの側辺の中央部分に延長部21bを設け、回転軸21dが挿入される穴21eを延長部21bの上側設ける。穴21eは、延長部21bの下側にも設けられる。そして、延長部21bの下側にも設けられる穴21eに挿入される回転軸21dを有する軸固定部材21cを用意する。軸固定部材21cは、連結する一方の支持部材13のフレーム13aに固定するためのネジ穴21fを有する。延長部21aの回転軸21dを穴21eに挿入し、さらに軸固定部材21cの回転軸21dを穴21eに挿入し、軸固定部材21cをフレーム13aに固定する。これにより、2個の支持部材13は、回動可能に連結される。なお、図8では、2個のフレーム13aを連結する場合を示したが、3個以上のフレーム13aを連結する場合には、他方の側辺にも同様の連結機構を設ける。
【0044】
第1実施形態では、光ファイバ12は、複数の支持部材13を連結した状態で配設された。言い換えれば、連結されている複数の支持部材13には、1本の光ファイバ12が配設されている。しかし、隣接する支持部材13に配設された光ファイバを、光コネクタで光学的に接続するようにしてもよい。
【0045】
図9は、隣接する支持部材13に配設された光ファイバを、光コネクタで光学的に接続する変形例を示す図である。
図9に示すように、左側の2個の支持部材13の組13cには、第1実施形態で説明したように、2個の支持部材13を連結した状態で1本の子光ファイバ12が配設されている。したがって、2個の支持部材13の組13cは、下側に1個の光ファイバ保護部材18を有する。同様に、右側の3個の支持部材13の組13dには、第1実施形態で説明したように、3個の支持部材13を連結した状態で1本の子光ファイバ12が配設されている。したがって、右側の3個の支持部材13の組13dは、1番目と2番目の支持部材13の上側と2番目と3番目の支持部材13の下側に、2個の光ファイバ保護部材18を有する。左側の組13cに配設された子光ファイバ12の端部には第1光コネクタ19aが設けられている。同様に、右側の組13dに配設された子光ファイバ12の端部には第2光コネクタ19bが設けられている。第1光コネクタ19aと第2光コネクタ19bを接続することにより、左側の組13cに配設された子光ファイバ12と右側の組13dに配設された子光ファイバ12は、光学的に接続された状態になる。これにより、第1実施形態と同様に、実質的に1本の光ファイバ12が配設された状態になる。
【0046】
図9の変形例では、2個の支持部材13を組13cとし、3個の支持部材13を組13dとして、それぞれに子光ファイバを設けて、子光ファイバの両端に光コネクタを設けた。しかし、各支持部材13に子光ファイバを設けて、子光ファイバの両端に光コネクタを設けてもよい。
図9に示した変形例によれば、連結する測定条件に応じて、連結する支持部材13の個数を自由に変更可能である。
【0047】
図10は、図9の変形例において、左側の3個の支持部材13の組13dから引き出す光ファイバ12の引き出す位置を下側にした例を示す。
【0048】
図11は、第2実施形態の温度測定システムの1個の支持部材13を示す図である。
第2実施形態の支持部材13は、第1実施形態の支持部材13の下部にキャスタ30を設けたことが異なり、他の部分は第1実施形態と同じである。キャスタ30は、支持部材13のフレーム13aの下辺に設けられた脚部31に取り付けられる。キャスタ30は、広く使用されているもので、ベース32と、ベース32に取り付けられる保持枠33と、保持枠33に回転可能に保持された球体34と、を有する。
【0049】
各支持部材13にキャスタ30を取り付けることにより、連結した複数の支持部材13を、床面上で自由に移動でき、連結した複数の支持部材13の展開および折り畳みが容易に行えるようになる。
【0050】
図12は、第3実施形態の温度測定システムにおいて、連結した複数の支持部材13を示す図である。
第3実施形態では、第1実施形態の連結された複数の支持部材13の両端の支持部材13に、移動部材41を連結したことが異なり、他の部分は第1実施形態と同じである。移動部材41は、下部に設けられた脚部42を有する。キャスタ43は、移動部材41の脚部42に取り付けられる。キャスタ43は、広く使用されているもので、ベース43aと、ベース43aに回転可能に保持されたローラー43bと、を有する。移動部材41は、連結部材15aにより、連結された複数の支持部材13の両端の支持部材13に連結される。
【0051】
連結された複数の支持部材13は、床面上で自由に移動できる2個の移動部材41の間に連結されるので、床面上で自由に移動でき、連結した複数の支持部材13の展開および折り畳みが容易に行えるようになる。
【0052】
図13は、第4実施形態の温度測定システムにおいて、連結した複数の支持部材13を示す図である。
第4実施形態では、第3実施形態の移動部材41に類似した2個の移動部材を使用するが、2個の移動部材41は、連結された複数の支持部材13の両端の支持部材13に連結しない。2個の移動部材41の間には、2本の案内ワイヤ15cを架設する。2個の移動部材41の一方には、2本の案内ワイヤ15cを巻き取る巻き取り機構が設けられている。巻き取り機構により、2本の案内ワイヤ15cは、2個の移動部材41の間の距離を遠くすると伸び、2個の移動部材41の間の距離を短くすると縮み、所望の距離でロックできるようになっている。
【0053】
支持部材13は、1つの側辺の最上部および最下部に配置された案内環15bを有し、2本の案内ワイヤ15cが2個の案内環15bに挿通される。これにより、連結した複数の支持部材13は、2本の案内ワイヤ15cに沿って容易に展開および折り畳みが行える。
【0054】
ある空間の平面における温度分布を測定する時には、この平面の両側に2個の移動部材41を移動する。これにより、2本の案内ワイヤ15cが、この平面に沿って配置される。そして、連結した複数の支持部材13を2本の案内ワイヤ15cに沿って展開し、光ファイバ12のコイル部12aを所望の位置に配置し、温度測定を行う。
なお、案内ワイヤ15cの代わりに固定案内棒を使用することも可能である。
【0055】
以上、実施形態を説明したが、各種変形例が可能である。
例えば、上述した実施形態では、コイル部12aは、円形状を有していたが、多角形状等の他の形状を有していても良い。
また、上述した実施形態では、光ファイバは、支持部材上に蛇行して配設されていたが、光ファイバは、支持部材上に直線状、波線状、ループ状、又は多角形状等の他の形態で配設されていても良い。
【0056】
以下、本明細書に開示する温度測定システムの実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0057】
[実施例1]
光ファイバとして、マルチモード・グレーデッドインデックス型石英光ファイバ−(HFR−2Z−1、古河電工製、ポリウレタン樹脂被覆)を用いた。温度測定部として、ラマン散乱光式温度測定装置(SENSA社製、DTS800M)を用いた。コイル部は、光ファイバを直径45mmで7回捲回して形成された。
【0058】
支持部材のフレームとして、アルミ製フレーム(幅700mm×長さ2000mm)を用いた。コイル部は、光ファイバを直径45mmで7回捲回して形成された。フレームに架けられたワイヤ上に、コイル部が、10cm間隔でホットメルト系接着在を用いて固定されて、支持部材が形成された。このような支持部材が10個用意された。支持部材の4隅に配置された案内環には、直径1mmのステンレスワイヤ製の案内ワイヤが挿通された。支持部材同士は、折曲部材としてのちょうつがいを用いて折曲自在に接続された。光ファイバ保護部材として、住友電装(株)製コルゲートチューブ(内径5.4mm、外径7.8mm、スリット付き)を用いた。
【0059】
上述した実施例1では、非使用時には700mm×2000mm×200mmの空間にコンパクトに小さくまとめることが可能であるとともに、使用時は折り畳んだ支持部材を端から順次開くことで、極めて短時間にかつ容易に複数の支持部材を長手方向に面状に展開することが可能であり、データセンタの通路やサーバラック表面の温度分布を数分で10cmメッシュの高い距離分解能で、温度分布が測定可能であった。
【0060】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【0061】
以下、実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
開口を有する固定形状の2個以上の支持部材と、
前記2個以上の支持部材を回動可能に連結する連結部材と、
前記2個以上の支持部材に配設された光ファイバと、
前記光ファイバからの後方散乱光を受信して前記光ファイバの温度分布を測定する温度測定部と、
を備えることを特徴とする温度測定システム。
(付記2)
前記光ファイバは、前記2個以上の支持部材のそれぞれに配設され、一方の端に第1の接続コネクタを、他方の端に第2の接続コネクタを有する複数の子光ファイバを備え、
連結する前記2個の支持部材に配設された前記子光ファイバの前記第1の接続コネクタと前記第2の接続コネクタを接続する
ことを特徴とする付記1記載の温度測定システム。
(付記3)
前記2個以上の支持部材のそれぞれは、固定形状の枠と、前記枠に網目状に張られた繊維と、を備え、
前記網目状に張られた繊維の間に開口が形成され、
前記光ファイバは、前記繊維に係止され、
前記連結部材は、連結する前記2個の支持部材の前記枠に設けられる
ことを特徴とする付記1または2記載の温度測定システム。
(付記4)
前記支持部材の下部に設けられ、前記支持部材を床面上で移動可能に支持するキャスタを備える
ことを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の温度測定システム。
(付記5)
連結された前記2個以上の支持部材の両端の支持部材に連結された2個の移動部材を備え、
前記2個の移動部材のそれぞれは、前記移動部材を床面上で移動可能に支持するキャスタを備える
ことを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の温度測定システム。
(付記6)
連結された前記2個以上の支持部材の両端の支持部材に連結された2個の移動部材と、
前記2個の移動部材の間に設けられた案内部材と、を備え、
前記2個以上の支持部材のそれぞれは、前記案内部材に係止するための係止部材を備える
ことを特徴とする付記1から5のいずれかに記載の温度測定システム。
(付記7)
前記案内部材は、前記2個の移動部材の間に張られたワイヤであり、
前記係止部材は、各支持部材を前記ワイヤに係止するリングである
ことを特徴とする付記6記載の温度測定システム。
【符号の説明】
【0062】
10 温度測定システム
11 シート
12 光ファイバ
12a コイル部
13 支持部材
13a フレーム
13b ワイヤ(繊維)
15a 連結部材
17 温度測定部
17a 光学部
17b 制御部
17c モニタ
18 光ファイバ保護部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する固定形状の2個以上の支持部材と、
前記2個以上の支持部材を回動可能に連結する連結部材と、
前記2個以上の支持部材に配設された光ファイバと、
前記光ファイバからの後方散乱光を受信して前記光ファイバの温度分布を測定する温度測定部と、
を備えることを特徴とする温度測定システム。
【請求項2】
前記光ファイバは、前記2個以上の支持部材のそれぞれに配設され、一方の端に第1の接続コネクタを、他方の端に第2の接続コネクタを有する複数の子光ファイバを備え、
連結する前記2個の支持部材に配設された前記子光ファイバの前記第1の接続コネクタと前記第2の接続コネクタを接続する
ことを特徴とする請求項1記載の温度測定システム。
【請求項3】
前記2個以上の支持部材のそれぞれは、固定形状の枠と、前記枠に網目状に張られた繊維と、を備え、
前記網目状に張られた繊維の間に開口が形成され、
前記光ファイバは、前記繊維に係止され、
前記連結部材は、連結する前記2個の支持部材の前記枠に設けられる
ことを特徴とする請求項1または2記載の温度測定システム。
【請求項4】
連結された前記2個以上の支持部材の両端の支持部材に連結された2個の移動部材を備え、
前記2個の移動部材のそれぞれは、前記移動部材を床面上で移動可能に支持するキャスタを備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の温度測定システム。
【請求項5】
連結された前記2個以上の支持部材の両端の支持部材に連結された2個の移動部材と、
前記2個の移動部材の間に設けられた案内部材と、を備え、
前記2個以上の支持部材のそれぞれは、前記案内部材に係止するための係止部材を備える
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の温度測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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