説明

温度測定装置及び温度測定方法

【課題】複数の処理チャンバー内の温度測定対象物の温度を同時に測定することのできる温度測定装置及び温度測定方法を提供する。
【解決手段】光源からの光を複数の測定用の光に分けるための第1光分離手段と、複数の測定用の光を夫々測定光と参照光に分けるための複数の第2光分離手段と、測定光をn個の第1〜第n測定光に分けるための第3光分離手段と、複数の参照光を夫々反射するための参照光反射手段と、参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための1つの光路長変化手段と、温度測定対象物から反射する第1〜第n測定光と、参照光反射手段から反射する複数の参照光との干渉を測定するための複数の光検出器とを備えた温度測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置及び温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置により処理される基板、例えば半導体ウエハや液晶表示装置用基板の温度を正確に測定することは、成膜やエッチングなど種々の処理の結果により半導体ウエハや液晶表示装置用基板上に形成される膜やホールなどの形状、物性等を正確にコントロールする点からも極めて重要である。このため、例えば抵抗温度計や、基板裏面の温度を測定する蛍光式温度計等を利用した計測法等の様々な方法によって半導体ウエハや液晶表示装置用基板の温度を計測することが従来から行われている。
【0003】
近年では、上述したような従来の温度計測方法では困難だった基板の温度を直接計測することができる低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術が知られている。さらに、上記の低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術において、第1スプリッタによって光源からの光を温度測定用の測定光と参照光とに分け、さらに、分けられた測定光を第2スプリッタによってn個の測定光に分けてn個の測定光をn個の測定ポイントへ照射し、これらのn個の測定光の反射光と、参照光反射手段で反射された参照光の反射光との干渉を測定し、複数の測定ポイントの温度を同時に測定できるようにした技術も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このような技術によれば、簡単な構成で複数の測定ポイントの温度を一度に測定できる。また、測定光をマルチプレクサによって切り替えて複数の処理チャンバーに供給し、複数の処理チャンバー内の基板等の温度を計測できるようにした低コヒーレンス干渉計を利用した温度計測技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−112826号公報
【特許文献2】特開2008−216182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した測定光をマルチプレクサによって切り替えて複数の処理チャンバーに供給し、複数の処理チャンバー内の基板等の温度を計測できるようにした温度計測技術では、マルチプレクサによって切り替えて測定光を供給するため、複数の処理チャンバー内の基板等の温度を同時に測定することはできない。
【0006】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、複数の処理チャンバー内の温度測定対象物の温度を同時に測定することのできる温度測定装置及び温度測定方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の温度測定装置の一態様は、光源と、前記光源からの光を複数の測定用の光に分けるための第1光分離手段と、前記第1光分離手段からの複数の測定用の光を、夫々測定光と参照光に分けるための複数の第2光分離手段と、前記第2光分離手段からの夫々の測定光を、さらにn個の第1〜第n測定光に分けるための前記第2光分離手段と等しい数の第3光分離手段と、前記複数の第2光分離手段からの参照光を夫々反射するための参照光反射手段と、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と、前記第2光分離手段からの夫々の参照光を、前記参照光反射手段へ照射する位置まで伝送する前記第2光分離手段と等しい数の参照光伝送手段と、前記第3光分離手段からの前記第1〜第n測定光を、夫々温度測定対象物の各測定ポイントへ照射する測定光照射位置まで伝送する第1〜第n測定光伝送手段と、前記温度測定対象物から反射する前記第1〜第n測定光と、前記参照光反射手段から反射する複数の参照光との干渉を測定するための前記第2光分離手段と等しい数の光検出器とを備え、前記第1〜第n測定光における前記第3光分離手段から前記温度測定対象物までの各光路長を夫々互いに異なるようにし、かつ、1つの前記光路長変化手段によって、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させることを特徴とする。
【0008】
本発明の温度測定方法の一態様は、光源と、前記光源からの光を複数の測定用の光に分けるための第1光分離手段と、前記第1光分離手段からの複数の測定用の光を、夫々測定光と参照光に分けるための複数の第2光分離手段と、前記第2光分離手段からの夫々の測定光を、さらにn個の第1〜第n測定光に分けるための前記第2光分離手段と等しい数の第3光分離手段と、前記複数の第2光分離手段からの参照光を夫々反射するための参照光反射手段と、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と、前記第2光分離手段からの夫々の参照光を、前記参照光反射手段へ照射する位置まで伝送する前記第2光分離手段と等しい数の参照光伝送手段と、前記第3光分離手段からの前記第1〜第n測定光を、夫々温度測定対象物の各測定ポイントへ照射する測定光照射位置まで伝送する第1〜第n測定光伝送手段と、前記温度測定対象物から反射する前記第1〜第n測定光と、前記参照光反射手段から反射する複数の参照光との干渉を測定するための前記第2光分離手段と等しい数の光検出器とを備え、前記第1〜第n測定光における前記第3光分離手段から前記温度測定対象物までの各光路長を夫々互いに異なるようにした温度測定装置を用いて前記温度測定対象物の温度を測定する温度測定方法であって、1つの前記光路長変化手段によって、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の処理チャンバー内の温度測定対象物の温度を同時に測定することのできる温度測定装置及び温度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる温度測定装置の概略構成を示す図。
【図2】図1の温度測定装置における干渉波形の例を示すグラフ。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる温度測定装置の概略構成を示す図。
【図4】本発明の第3実施形態にかかる温度測定装置の概略構成を示す図。
【図5】本発明の第4実施形態にかかる温度測定装置の概略構成を示す図。
【図6】図5の温度測定装置における干渉波形の例を示すグラフ。
【図7】本発明の第5実施形態にかかる温度測定装置の概略構成を示す図。
【図8】図7の温度測定装置における干渉波形の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
図1は、第1実施形態の温度測定装置100の構成を模式的に示すものである。図1において、PC1〜PC6は、プラズマエッチング装置の処理チャンバーを示している。なお、図1において、スペースの都合上PC3〜PC6については、PC1,PC2に比べて図示を簡略化してあるが、PC3〜PC6は、PC1,PC2と同様な構成となっている。本第1実施形態において、温度測定装置100は、これらのPC1〜PC6内に配設された載置台10上に載置された半導体ウエハWの中央部及び周縁部の温度を、その裏面側から測定する構成となっている。すなわち、本第1実施形態では、温度測定対象物が半導体ウエハWとなっている。なお、半導体ウエハWの温度の他、例えば、図1中に示すフォーカスリング11の温度を測定する構成としてもよい。
【0013】
温度測定装置100は、光源110と、この光源110からの光を複数(N)の測定用の光に分けるための第1光分離手段120と、第1光分離手段120からの複数の測定用の光を、夫々測定光と参照光に分けるための複数(本実施形態では3つ)の第2光分離手段130と、第2光分離手段130からの夫々の測定光を、さらにn個(本実施形態ではn=4)の第1〜第n測定光(本実施形態では第1〜第4測定光)に分けるための第2光分離手段130と等しい数(本実施形態では3つ)の第3光分離手段140とを備えている。
【0014】
また、温度測定装置100は、複数の第2光分離手段130からの参照光を夫々反射するための参照光反射手段150と、参照光反射手段150から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段160と、第2光分離手段130からの夫々の参照光を、参照光反射手段150へ照射する位置まで伝送する第2光分離手段130と等しい数(本実施形態では3つ)の参照光伝送手段170と、第3光分離手段140からの第1〜第4測定光を、夫々温度測定対象物の各測定ポイントへ照射する測定光照射位置まで伝送する第1〜第4測定光伝送手段180a〜180dと、温度測定対象物から反射する第1〜第4測定光と、参照光反射手段150から反射する複数の参照光との干渉を測定するための第2光分離手段130と等しい数の光検出器190とを備えている。
【0015】
また、温度測定装置100では、第1〜第4測定光における第3光分離手段140から温度測定対象物としての半導体ウエハWまでの各光路長が、夫々互いに異なるように設定されている。さらに、温度測定装置100では、1つの光路長変化手段160によって、参照光反射手段150から反射する3つの参照光の光路長を変化させるようになっている。
【0016】
光源110としては、測定光と参照光との干渉が測定できれば、任意の光を使用することが可能である。半導体ウエハWの温度測定を行う場合には、少なくとも半導体ウエハWの表面と裏面との間の距離(通常は800〜1500μm程度)からの反射光が干渉を生じない程度の光が好ましい。具体的には例えば低コヒーレンス光を用いることが好ましい。低コヒーレンス光とは、コヒーレンス長の短い光をいう。低コヒーレンス光の中心波長は例えば0.3〜20μmが好ましく、更に0.5〜5μmがより好ましい。また、コヒーレンス長としては、例えば0.1〜100μmが好ましく、更に3μm以下がより好ましい。このような低コヒーレンス光を光源110として使用することにより、余計な干渉による障害を回避でき、半導体ウエハWの表面又は内部層からの反射光に基づく参照光との干渉を容易に測定することができる。
【0017】
上記低コヒーレンス光を使用した光源としては、例えばSLD(Super Luminescent Diode)、LED、高輝度ランプ(タングステンランプ、キセノンランプなど)、超広帯域波長光源等を使用することができる。これらの低コヒーレンス光源の中でも、図1に示した輝度の高いSLD(波長、例えば1300nm)を光源110として用いることが好ましい。
【0018】
第1光分離手段120としては、例えば光ファイバカプラを用いることができる。但し、これに限定されるものではなく、複数(N)の測定用の光に分けることが可能なものであればどのような光分離手段を用いてもよい。また、第2光分離手段130についても、同様に例えば光ファイバカプラを用いることができる。但し、これに限定されるものではなく、参照光と測定光とに分けることが可能なものであればどのような光分離手段を用いてもよい。第3光分離手段140としては、例えば光ファイバカプラを用いることができる。但し、これに限定されるものではなく、複数(本実施形態では4つ)の測定光に分けることが可能なものであればどのような光分離手段を用いてもよい。第1光分離手段120、第2光分離手段130、第3光分離手段140としては、例えば光導波路型分波器、半透鏡などを用いてもよい。
【0019】
参照光反射手段150は、例えば参照ミラーにより構成される。参照ミラーとしては例えばコーナーキューブプリズム、平面ミラーなどを用いることができる。本実施形態では、1つの平面ミラーによって、3つの参照光を反射する構成となっている。
【0020】
光路長変化手段160は、上記した参照光反射手段150を、参照光の入射方向に平行な方向へ移動させるためのものである。上記のように、本実施形態では、3つの参照光を、1つの平面ミラーからなる参照光反射手段150によって反射するようになっており、この参照光反射手段150を1つの光路長変化手段160によって参照光の入射方向に平行な方向へ移動させるようになっている。このように、参照光反射手段150を一方向へ駆動させることにより、参照光反射手段150から反射する参照光の光路長を変化させることができる。光路長変化手段160は、リニアステージ161、サーボモータ162、レーザ干渉計163等から構成されている。サーボモータ162は、モータコントローラ165及びモータドライバ166を介してコンピュータ等からなるコントローラ200により制御される。また、レーザ干渉計163からの信号は、A/D変換器201でデジタル信号に変換されてコントローラ200に入力される。
【0021】
光検出器190としては、低価格性、コンパクト性を考慮すれば、例えばフォトダイオードを用いて構成することが好ましい。具体的には例えばSiフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、Geフォトダイオードなどを用いたPD(Photo Detector)により構成する。但し、温度測定対象物からの測定光と参照光反射手段150からの参照光との干渉を測定できれば、上記のものに限られず、例えばアバランシェフォトダイオード、光電子増倍管などを用いて光検出器190を構成してもよい。光検出器190の検出信号は、増幅器191を介してA/D変換器201に入力され、デジタル信号に変換されてコントローラ200によって処理される。
【0022】
第2光分離手段130からの参照光は、第2光分離手段130と等しい数(本実施形態では3つ)の参照光伝送手段170によって参照光反射手段150へ照射する参照光照射位置まで伝送されるようになっている。参照光伝送手段170は、夫々光ファイバ及びコリメータ等から構成されている。
【0023】
また、第3光分離手段140からの第1〜第4測定光は、第1〜第4測定光伝送手段180a〜180dによって、夫々温度測定対象物(本実施形態では半導体ウエハW)へ照射する測定光照射位置まで伝送されるようになっている。第1〜第4測定光伝送手段180a〜180dは、夫々、光ファイバ及びコリメータ等から構成されている。
【0024】
上記温度測定装置100では、第1〜第4測定光における第3光分離手段140から温度測定対象物までの各光路長が夫々互いに異なるように構成されている。具体的には、例えば、第1〜第4測定光伝送手段180a〜180dの光ファイバの長さが夫々同一の場合は、例えばコリメータの先端面、すなわち測定光照射位置が、温度測定対象物から照射方向に略平行な方向に夫々ずれるように配置される。また、コリメータの先端面をずらすことなく、光ファイバの長さを変えることにより、上記第1〜第4測定光における第3光分離手段140から温度測定対象物までの各光路長が異なるようにしてもよい。
【0025】
なお、第1〜第4測定光における第3光分離手段140から温度測定対象物までの各光路長の差は、少なくとも各測定ポイント毎に測定される第1〜第4測定光と参照光との干渉波が夫々重ならないようにする必要がある。例えば光源110として低コヒーレンス光源を使用する場合には、少なくとも干渉波のコヒーレンス長以上各光路長の差があれば、干渉波の重なりを防止することができる。また、このような各光路長の差は、温度測定対象物の厚さや厚さの変化率、測定する温度範囲、参照光反射手段150の移動距離などを考慮して決定することが好ましい。具体的には例えば0.7mm程度の厚みがあるシリコンウエハでは、常温から200℃くらいまでの温度範囲での参照光反射手段150の移動距離は0.04mm程度であるため、第1〜第4測定光における光路長の差を夫々0.1mm程度設ければ、各測定ポイント毎の干渉波が重ならないようにすることができる。
【0026】
これにより、参照光反射手段150を一度走査するだけで各第1〜第4測定光が照射された測定ポイントの干渉波を一度に検出することができる。また、本実施形態において、参照光反射手段150は、3つの第2光分離手段130からの3つの参照光を夫々反射するようになっている。したがって、これらの3つの参照光を用いた6つの各処理チャンバーPC1〜PC6における温度測定を、参照光反射手段150を一度走査するだけで行うことができる。このため、温度計測にかかる時間を極力短くすることができる。
【0027】
上記のように、温度測定装置100においては、光源110からの光は、第1光分離手段120に入射され、複数(3つ以上)の測定用の光に分けられる。これらの測定用の光は、夫々複数(本実施形態では3つ)の第2光分離手段130に入射され、測定光と参照光とに分けられる。このうち、測定光は、第3光分離手段140により第1〜第4測定光に分けられて、各処理チャンバーPC1〜PC6において、測定光照射位置から温度測定対象物である半導体ウエハWの各測定ポイントに向けて照射され、半導体ウエハWの裏面、各層の境界面、表面において反射される。
【0028】
一方、参照光は、参照光反射手段150によって反射される。そして、第1〜第4測定光の各反射光は、第3光分離手段140を介して第2光分離手段130に入射し、参照光の反射光とともに、光検出器190で検出される。
【0029】
そして、光路長変化手段160により参照光反射手段150を走査することによって、干渉波形が得られる。ここで、光源110としては、上述したような低コヒーレンス光源を用いている。低コヒーレンス光源によれば、光源110からの光のコヒーレンス長が短いため、通常は測定光の光路長と参照光の光路長とが一致した場所で強く干渉が起こり、それ以外の場所では干渉は実質的に低減するという特質がある。このため、参照光反射手段150を移動させ、参照光の光路長を変化させることにより、温度測定対象物の表面及び裏面の他、内部にさらに層があればその各層についても、これらの屈折率差によって反射した測定光と参照光が干渉する。
【0030】
上記の干渉波の波形の例を、縦軸を干渉強度(V)、横軸を参照ミラー移動距離(μm)とした図2のグラフに示す。図2に示すように、半導体ウエハWの屈折率をn、半導体ウエハWの厚さをdとした時に、ndに相当する距離だけ離れた位置に、半導体ウエハWの裏面で反射された測定光の干渉波と、半導体ウエハWの表面側で反射された測定光の干渉波が検出される。そして、各測定ポイントまでの光路長が異なるように設定されていることから、光路長の差に相当する距離だけ離れた位置に夫々の測定ポイントの干渉波のピークが検出される。
【0031】
上記の温度測定装置100によって半導体ウエハW等の温度測定を行う際は、温度測定に先立って、温度測定対象物である半導体ウエハW等の初期厚さ測定を行う。この時、図2に示したような干渉波の波形が得られ、ピークの間隔として、半導体ウエハW等の初期厚さが得られる。そして、半導体ウエハW等の温度は、この初期厚さに対する厚さの変化、つまり、ピークの間隔の変化によって検出する。
【0032】
次に、測定光と参照光との干渉波に基づき、温度変化に基づく光路長変化を用いて温度を測定する方法についてさらに詳細に説明する。
【0033】
半導体ウエハW等の温度測定対象物がプラズマ等の作用によって温められると、半導体ウエハW等は膨張するとともに屈折率が変化するため、温度変化前と温度変化後では、干渉波形の位置がずれて、干渉波形のピーク間幅が変化する。このとき、各測定ポイントごとに温度変化があれば、測定ポイントごとに干渉波形の位置がずれて、干渉波形のピーク間幅が変化する。このような測定ポイントごとに干渉波形のピーク間幅を測定することにより温度変化を検出することができる。例えば図1に示すような温度測定装置100であれば、干渉波形のピーク間幅は、参照光反射手段150の移動距離に対応しているため、干渉波形のピーク間幅における参照光反射手段150の移動距離を測定することにより、温度変化を検出することができる。
【0034】
半導体ウエハWの厚さをdとし、屈折率をnとした場合、干渉波形についてのピーク位置のずれは、厚さdについては各層固有の線膨張係数αに依存し、また屈折率nの変化については主として各層固有の屈折率変化の温度係数βに依存する。なお、屈折率変化の温度係数βについては波長にも依存することが知られている。
【0035】
従って、ある測定ポイントPにおける温度変化後の半導体ウエハWの厚さd′を数式で表すと下記数式(1)に示すようになる。なお、数式(1)において、ΔTは測定ポイントの温度変化を示し、αは線膨張率、βは屈折率変化の温度係数を示している。また、d、nは、夫々温度変化前の測定ポイントPにおける厚さ、屈折率を示している。
【0036】
d′=d・(1+αΔT)、n′=n・(1+βΔT) …(1)
上記数式(1)に示すように、温度変化によって測定ポイントPを透過する測定光の光路長が変化する。光路長は一般に、厚さdと屈折率nとの積で表される。従って、温度変化前の測定ポイントPを透過する測定光の光路長をLとし、測定ポイントにおける温度が夫々ΔTだけ変化した後の光路長をL′とすると、L、L′は夫々下記の数式(2)に示すようになる。
【0037】
L=d・n 、 L′=d′・n′ …(2)
従って、測定ポイントにおける測定光の光路長の温度変化前後の差(L′−L)は、上記数式(1)、(2)により計算して整理すると、下記数式(3)に示すようになる。なお、下記数式(3)では、α・β≪α、α・β≪βを考慮して微小項を省略している。
【0038】
L′−L=d′・n′−d・n=d・n・(α+β)・ΔT
=L・(α+β)・ΔT …(3)
【0039】
ここで、各測定ポイントにおける測定光の光路長は、参照光との干渉波形のピーク間幅に相当する。従って、線膨張率α、屈折率変化の温度係数βを予め調べておけば、各測定ポイントにおける参照光との干渉波形のピーク間幅を計測することによって、上記数式(3)を用いて、各測定ポイントの温度に換算することができる。
【0040】
このように、干渉波形のピーク間隔から温度への換算をする場合、上述したように干渉波形のピーク間で表される光路長が線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βによって変わるため、これら線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βを予め調べておく必要がある。半導体ウエハWを含めた物質の線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは一般に、温度帯によっては、温度に依存する場合もある。例えば線膨張率αについては一般に、物質の温度が0〜100℃くらいの温度範囲ではそれほど変化しないので、一定とみなしても差支えないが、100℃以上の温度範囲では物質によっては温度が高くなるほど変化率が大きくなる場合もあるので、そのような場合には温度依存性が無視できなくなる。屈折率変化の温度係数βについても同様に温度範囲によっては、温度依存性が無視できなくなる場合がある。
【0041】
例えば半導体ウエハWを構成するシリコン(Si)の場合は、0〜500℃の温度範囲において線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは例えば二次曲線で近似することができることが知られている。このように、線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは温度に依存するので、例えば温度に応じた線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βを予め調べておき、その値を考慮して温度換算すれば、より正確な温度に換算することができる。
【0042】
次に、他の実施形態について説明する。図3は、第2実施形態の構成を示すものである。図3に示す温度測定装置100aは、3つの処理チャンバーPC1〜PC3について、夫々4点の温度を測定する構成としたもので、第3光分離手段140で分離された4つの第1〜第4測定光を、処理チャンバーPC1〜PC3内の半導体ウエハWの3点及びフォーカスリング11の1点に照射してこれらの部位の温度を測定する構成としたものである。
【0043】
また、図4は、第3実施形態の構成を示すものである。図4に示す温度測定装置100bでは、光源110として、単波長の光源ではなく、SC(Supercontinuum)光源等の連続的波長を有する光源を使用し、第1光分離手段120として異なる波長の光に分ける波長分離スプリッタ等を使用して異なる波長の3つの測定用の光に分け、各処理チャンバーPC1〜PC3毎に異なる波長の測定光で温度を測定する構成としたものである。
【0044】
また、図5は、第4実施形態の構成を示すものである。図5に示す温度測定装置100cでは、光検出器190と増幅器191との間に、光検出器190の出力信号から交流成分(AC成分)を抜き出す交流成分抽出手段192を設けた構成となっている。このように、交流成分抽出手段192を設けることによって、縦軸を干渉強度(V)、横軸を参照ミラー移動距離(μm)とした図6のグラフにその波形を示すように、測定信号中の直流成分の影響を排除することができ、これによってより精度良く温度測定を行うことができる。
【0045】
また、図7は、第5実施形態の構成を示すものである。図7に示す温度測定装置100dでは、参照光伝送手段170の途中にアッテネータ171を介在させた構成となっている。このように、参照光伝送手段170の途中にアッテネータ171を介在させることによって、参照光の強度を、第3光分離手段140によって4分割された第1〜第4測定光の強度に近付けることができる。これによって、縦軸を干渉強度(V)、横軸を参照ミラー移動距離(μm)とした図8のグラフにその波形を示すように、図2に示したアッテネータの無い場合に比べて干渉波形を拡大することができ、より精度良く温度測定を行うことができる。
【0046】
以上説明したとおり、本発明の実施形態では、複数の処理チャンバーPC1〜PC6について、その内部に設けられた温度測定対象物の温度を、マルチプレクサによる切り換えを行うことなく同時に測定することができる。また、温度測定の基準となる参照光を反射する参照光反射手段150及びこの参照光反射手段150を移動させて参照光の光路長を変化させる光路長変化手段160を共用する構成としたので、機差の発生を無くすことができ、装置構成も簡略化することができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0048】
PC1〜PC4……処理チャンバー、10……載置台、11……フォーカスリング、100……温度測定装置、110……光源、120……第1光分離手段、130……第2光分離手段、140……第3光分離手段、150……参照光反射手段、160……光路長変化手段、170……参照光伝送手段、180a〜180d……第1〜第4測定光伝送手段、190……光検出器、200……コントローラ、W……半導体ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を複数の測定用の光に分けるための第1光分離手段と、
前記第1光分離手段からの複数の測定用の光を、夫々測定光と参照光に分けるための複数の第2光分離手段と、
前記第2光分離手段からの夫々の測定光を、さらにn個の第1〜第n測定光に分けるための前記第2光分離手段と等しい数の第3光分離手段と、
前記複数の第2光分離手段からの参照光を夫々反射するための参照光反射手段と、
前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と、
前記第2光分離手段からの夫々の参照光を、前記参照光反射手段へ照射する位置まで伝送する前記第2光分離手段と等しい数の参照光伝送手段と、
前記第3光分離手段からの前記第1〜第n測定光を、夫々温度測定対象物の各測定ポイントへ照射する測定光照射位置まで伝送する第1〜第n測定光伝送手段と、
前記温度測定対象物から反射する前記第1〜第n測定光と、前記参照光反射手段から反射する複数の参照光との干渉を測定するための前記第2光分離手段と等しい数の光検出器とを備え、
前記第1〜第n測定光における前記第3光分離手段から前記温度測定対象物までの各光路長を夫々互いに異なるようにし、
かつ、1つの前記光路長変化手段によって、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させる
ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の温度測定装置であって、
前記参照光反射手段を1つの平面ミラーによって構成したことを特徴とする温度測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の温度測定装置であって、
前記第1光分離手段が、前記光源からの光を、異なる波長域の複数の前記測定用の光に分けることを特徴とする温度測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の温度測定装置であって、
前記光検出器からの出力信号から交流成分を抜き出す交流成分抽出手段を具備したことを特徴とする温度測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の温度測定装置であって、
前記参照光反射手段から反射する参照光の強度を、前記温度測定対象物から反射する前記第1〜第n測定光の強度に近付けるように減衰させるための光減衰手段を具備したことを特徴とする温度測定装置。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光を複数の測定用の光に分けるための第1光分離手段と、
前記第1光分離手段からの複数の測定用の光を、夫々測定光と参照光に分けるための複数の第2光分離手段と、
前記第2光分離手段からの夫々の測定光を、さらにn個の第1〜第n測定光に分けるための前記第2光分離手段と等しい数の第3光分離手段と、
前記複数の第2光分離手段からの参照光を夫々反射するための参照光反射手段と、
前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段と、
前記第2光分離手段からの夫々の参照光を、前記参照光反射手段へ照射する位置まで伝送する前記第2光分離手段と等しい数の参照光伝送手段と、
前記第3光分離手段からの前記第1〜第n測定光を、夫々温度測定対象物の各測定ポイントへ照射する測定光照射位置まで伝送する第1〜第n測定光伝送手段と、
前記温度測定対象物から反射する前記第1〜第n測定光と、前記参照光反射手段から反射する複数の参照光との干渉を測定するための前記第2光分離手段と等しい数の光検出器とを備え、
前記第1〜第n測定光における前記第3光分離手段から前記温度測定対象物までの各光路長を夫々互いに異なるようにした温度測定装置を用いて前記温度測定対象物の温度を測定する温度測定方法であって、
1つの前記光路長変化手段によって、前記参照光反射手段から反射する参照光の光路長を変化させる
ことを特徴とする温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202692(P2012−202692A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64462(P2011−64462)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】