説明

温度管理を要する流動体貯蔵タンク内の汚染防止方法、およびその装置

【課題】冷熱媒により温度を管理した流動体貯蔵タンク内の流動体の冷熱媒による汚染を防止する方法および装置を提供する。
【解決手段】一定圧下にある流動体貯蔵タンク2の壁面の外側に設置した密閉式耐圧ジャケット4内で冷熱媒を流動させて該冷熱媒により温度を管理する該流動体貯蔵タンク2において、該密閉式耐圧ジャケット4内で該冷熱媒を、該流動体貯蔵タンク2内の圧力x(atm)以下、好ましくはx(atm)未満の圧力下で流動させることにより、該貯蔵タンク2内の流動体の該冷熱媒による汚染を防止する方法、およびそのための装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度管理を要する流動体貯蔵タンクにおいて、該貯蔵タンクの壁面の外側に設置した密閉式耐圧ジャケットを流動循環する冷熱媒が該貯蔵タンクの該壁面の破損時に該貯蔵タンク内に侵入するのを防止する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な製品製造の工業化が進むと共に、大量の物質を貯蔵することを目的とした貯蔵タンクが使用されるようになった。このタンク内に貯蔵する流動体の性質・用途に合わせ、該タンク内の温度を管理(制御)または保持することが一般化している。図9に示す流動体貯蔵タンク22内の温度を管理(制御)または保持する従来の装置は、冷熱媒を加圧ポンプ27により該タンク壁面に設置した密閉式耐圧ジャケット24内を流動させ、冷熱媒貯液タンク23に戻す装置により一般的に可能となっている。冷熱媒貯液タンク23内の冷熱媒は温度管理装置28により温度を調節する。
【0003】
しかし、上記の従来のタンク壁面の外側に設置した密閉式耐圧ジャケットに冷熱媒を加圧ポンプにより加圧循環し、該タンク内の流動体温度を管理(制御)または保持する方法及び装置では、タンク壁面に亀裂、ピンホール等の破損が発生したときには該冷熱媒が該タンク内に混入して該タンク内の流動体を汚染するという欠陥があった。また、タンク壁面の亀裂、ピンホール等の破損が微小の場合は目視では確認できず、タンク内流動体の汚染を把握する事が出来なかった。このように品質に問題を有する製品が市場に出回る可能性は十分に考えられる事であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来の流動体貯蔵タンクが有していた問題を鑑みて、該流動体貯蔵タンク内の流動体の冷熱媒による汚染を防止する方法および装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明はまた、流動体貯蔵タンクの壁面の亀裂、ピンホール等の破損を簡便に検出する方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の目的を達成するために、一定圧(x)(加圧、減圧、又は常圧、通常は約1気圧の常圧)下にある流動体貯蔵タンクの壁面の外側周囲に設置した密閉式耐圧ジャケット内で冷熱媒を流動させて該冷熱媒により温度を管理する該流動体貯蔵タンクにおいて、該密閉式耐圧ジャケット内で冷熱媒を、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力x(atm)以下、好ましくはx(atm)未満の圧力下、で流動させることにより、該流動体貯蔵タンク内の流動体の、該冷熱媒による汚染を防止する方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、上記の方法を実施するための装置であって、
(a)該流動体貯蔵タンクの壁面の外側に設置した、冷熱媒を流動循環させるための密閉式耐圧ジャケット;
(b)一端が該密閉式耐圧ジャケットの底部と管路により連結された、通気口を有する冷熱媒貯液タンク又はサーバータンク、ここで該冷熱媒貯液タンク又はサーバータンクの液面は該流動体貯蔵タンクの底部よりも液面がA(m)(A>0)だけ下方レベルになるように設置される;及び
(c)該密閉式耐圧ジャケットに設けた冷熱媒出口部に一端が連結し、且つ該冷熱媒貯液タンクと他端が連結する吸引ポンプ
を有し、
該冷熱媒貯液タンク又はサーバータンクの液面から該密閉式耐圧ジャケットの底部までの高さA(m)を、
A≧{W(1−x+d)}/ρ
(ここで、
W(m)は、真空状態での水の吸い上げ高さ(m)(約10mである)であり;
x(atm)は、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力(atm)、即ち該流動体の液面に加わる圧力(atm)であり、該流動体貯蔵タンクが開放されている場合は常圧、即ち、1atmであり;
d(atm)は、該吸引ポンプ停止時に該密閉式耐圧ジャケットの底部で必要とする、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)から該密閉式耐圧ジャケットの底部の圧力(atm)を引いた差圧(atm)であって、d>0であり;
ρは該冷熱媒の比重である)
とし、
該高さA(m)と、該密閉式耐圧ジャケットの底部から最上部までの高さB(m)と、該吸引ポンプによる該冷熱媒の吸い上げ高さC(m)とが、
B≦C−A (1)
〔ここで、
C(m)は、C=(Cmax−S)/ρであり、
max(m)は、該吸引ポンプによる該冷熱媒の最大吸い上げの高さ(m)(但し、Cmaxは冷熱媒を水とした場合の吸い上げ高さ)であり、
S(m)は安全運用値であって、S>0であり、
ρ及びAは、上記の通りである〕
となるように設定した、温度管理を要する流動体貯蔵タンク内の流動体の、該冷熱媒による汚染を防止した装置を提供する。
【0008】
本発明はまた、上記の方法を実施するための装置であって、
(a)該流動体貯蔵タンクの壁面の外側に設置した、冷熱媒を流動循環させるための密閉式耐圧ジャケット;
(b)一端が該密閉式耐圧ジャケットの底部と管路により連結された、通気口を有する冷熱媒貯液タンク;
(c)一端が該密閉式耐圧ジャケットに設けた冷熱媒出口部に管路で連結しそして他端が管路で該冷熱媒貯液タンクと連結する吸引ポンプ;及び
(d)一端が該密閉式耐圧ジャケットの底部とそして他端が該冷熱媒貯液タンクに管路で連結された減圧ユニット;
を有し、
該密閉式耐圧ジャケット底部から最上部までの高さB(m)を、
B≦C−{W(1−E)}/ρ)
〔ここで、常圧を1atmとし、
C(m)は該吸引ポンプによる該冷熱媒の吸い上げ高さC(m)であって、
C=(Cmax−S)/ρであり、
max(m)は該吸引ポンプによる水の最大吸い上げの高さ(m)であり、
Sは安全運用値(m)であって、S>0であり、
ρは該冷熱媒の比重であり、
W(m)は真空状態での水の吸い上げ高さ(約10mである)であり、
E(atm)は該減圧ユニットの設定圧力(atm)であって、
E=x−dであり、
x(atm)は、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力(atm)であり、
d(atm)は、該吸引ポンプ停止時に必要とする、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)から該密閉式耐圧ジャケットの底部の圧力(atm)を引いた差圧(atm)であって、d>0である〕
となるように設定した、温度管理を要する流動体貯蔵タンク内の流動体の、該冷熱媒による汚染を防止した装置を提供する。
【0009】
本発明はまた、上記の方法を実施するための装置であって、該流動体貯蔵タンクの高さH(m)(=B(m))が、吸引ポンプによる冷熱媒の吸い上げ高さC(m)(C(m)は、冷熱媒が水である場合の吸い上げ高さ(m)とする)を越える大型タンクである場合(即ち、H>Cの場合)は、密閉式耐圧ジャケットを多段構造として、密閉式耐圧ジャケットを2段以上の多段構造として、1段目は前記の構成とし、2段目以降の各段には、それぞれ密閉式耐圧ジャケットを設け、そして該冷熱媒貯液タンクと各段の密閉式耐圧ジャケットの底部との間にサーバータンク又は減圧ユニットを設け、
該サーバータンクを設けた場合は、各サーバータンクの液面から各密閉式耐圧ジャケットの底部までの高さA’を、
A’≧{W(1−x+d)}/ρ
(W,x,dおよびρは、前記の通りである)とし、そして、各サーバータンクの液面から各密閉式耐圧ジャケットの最上部までの高さA’+B’(m)を、
A’+B’≦C
(ここで、C=(Cmax−S)/ρであり、Cmax、Sおよびρは前記の通りである)
とし、
該減圧ユニットを設けた場合は、各密閉式耐圧ジャケットの底部から最上部までの高さB’(m)を、
B’≦C−{W(1−E)}/ρ)
(ここで、C、W、Eおよびρは前記の通りである)
とすればよい。即ち、2段目以降も、1段目と同様に構成することができる。
【0010】
更に本発明は、加圧された冷熱媒を減圧し且つ一定圧に保つ減圧弁と、該冷熱媒を更に減圧する差圧弁とから構成される減圧ユニットを提供する。
【0011】
更に本発明は、一定圧下にある流動体貯蔵タンクの壁面の外側周囲に設置した密閉式耐圧ジャケット内で冷熱媒を流動させて該冷熱媒により該流動体貯蔵タンク内の流動体の温度を管理する該流動体貯蔵タンクにおいて、該密閉式耐圧ジャケット内で該冷熱媒を、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)以下、好ましくはx(atm)未満、の圧力下で流動させ、該冷熱媒を該冷熱媒の通路に設けたエアーだまりからサンプリングし、該冷熱媒の成分を分析することを特徴とする、該流動体貯蔵タンクの亀裂の検出方法を提供する。
【0012】
更に本発明は、減圧を必要とする液体が流動している空間において、何らかの原因により減圧が保たれない状況になりそうになった場合、その空間の流動を止めてその空間を密閉し、物理的および強制的に減圧する、上記の温度管理を要する流動体貯蔵タンク内の冷熱媒による汚染を防止した装置に使用し得る物理的減圧装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、流動体貯蔵タンク内の流動体を冷熱媒により温度保持する際に、突然に該貯蔵タンク壁面に亀裂、ピンホール等の破損が発生したとしても、該貯蔵タンクの外側の密閉式耐圧ジャケット内が該貯蔵タンクの内側よりも減圧状態にあるので、該貯蔵タンク内流動体が該密閉式耐圧ジャケットに流れ込むため、該貯蔵タンク内流動体に該冷熱媒が混入することはない。このため、該冷熱媒を介した該流動体の細菌汚染、異物混入などを防止することが出来、該貯蔵タンク内流動体の品質を保持する事が出来る。また、該貯蔵タンク壁面の亀裂、ピンホール等の破損を、冷熱媒をサンプリングして、冷熱媒サンプルの汚染を検出することにより、容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一段の第1の実施形態を示す装置の配置図である。
【図2】本発明の一段の第2の実施形態を示す装置の配置図である。
【図3】本発明の一段の第3の実施形態を示す装置の配置図である。
【図4】本発明の一段の第4の実施形態を示す装置の配置図である。
【図5】大型流動体貯蔵タンクにおける本発明の多段の第1の実施形態を示す配置図である。
【図6】大型流動体貯蔵タンクにおける本発明の多段の第2の実施態様を示す装置の配置図である。
【図7】大型流動体貯蔵タンクにおける本発明の多段の第3の実施態様を示す装置の配置図である。
【図8】大型流動体貯蔵タンクにおける本発明の多段の第4実施形態を示す配置図である。
【図9】従来の温度管理流動体貯蔵タンクの装置の配置図である。
【図10】本発明の装置に使用する減圧ユニットの配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、冷熱媒が必要とする減圧状態を保ち、かつ減圧循環可能な高さに冷熱媒貯液タンク(又は冷熱媒サーバータンク)の液面と密閉式耐圧ジャケットの最上部の相対的位置を調整することが必要となる。つまり、吸引ポンプによる冷熱媒の最大吸い上げの高さCmax(m)から安全運用値S(m)を差し引いて吸引ポンプによる冷熱媒吸い上げ高さC(m)を設定し(C=Cmax−S)、冷熱媒貯液タンク(又は冷熱媒サーバータンク)の液面から流動体貯蔵タンク壁面上の密閉式耐圧ジャケット底面までの高さA(m)と、該密閉式耐圧ジャケット底部からその最上部までの高さB(m)を調整することが重要である。
【0016】
吸引ポンプの冷熱媒の最大吸い上げの高さCmaxはポンプ性能に依存する。そして、吸引ポンプの冷熱媒の最大吸い上げ高さCmaxを、より一般的な冷熱媒である水の最大吸い上げ高さ(m)と定義づける。本発明の冷熱媒の減圧状態を保つために、流動体貯蔵タンクと冷熱媒貯液タンクが大気に開放されている場合、上記の高さA,Bと吸引ポンプによる冷熱媒の吸い上げの高さCとの間に次式(1)が成り立つようにA,B,Cを設定する。
A+B≦C (1)
A:冷熱媒貯液タンク(又は冷熱媒サーバータンク)の液面から密閉式耐圧ジャケット底部までの高さ(m)、
B:密閉式耐圧ジャケット底部から該ジャケットの最上部までの高さ(m)、
C:吸引ポンプによる冷熱媒の吸い上げの高さ(m)
冷熱媒が水の場合、標準状態であるならば、水の吸い上げ高さW(m)は、真空状態(0atm)で約10mである(W=約10)。このことから、吸引ポンプが停止した際、密閉式耐圧ジャケット底部、及びその最上部での圧力は次式(2)、(3)で示すことができる。
ジャケット底部の圧力(atm)=(1−A/W)×1 (2)
ジャケット最上部の圧力(atm)=(1−(A+B)/W)×1 (3)
【0017】
より一般的には、冷熱媒の比重をρとすると、吸引ポンプが停止した際、密閉式耐圧ジャケット底部、及びその最上部の圧力は次式(2’)、(3’)で示すことができる。
ジャケット底部の圧力(atm)=(1−Aρ/W)×1 (2’)
ジャケット最上部の圧力(atm)=(1−(A+B)ρ/W)×1 (3’)
(2’)、(3’)式より、吸引ポンプ停止時に密閉式耐圧ジャケット底部の圧力が該ジャケット最上部の圧力よりも大きくなることが示され、吸引ポンプ停止時の該ジャケット底部の圧力を、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力x(atm)以下、好ましくはx未満、と設定することにより、該密閉式耐圧ジャケット内で冷熱媒を、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力x(atm)以下の圧力下で流動させること(ポンプ停止時も含めて)が可能となる。吸引ポンプの稼動時は、吸引ポンプの停止時よりも密閉式耐圧ジャケット底部の圧力は低くなるため、該密閉式耐圧ジャケット底部の圧力は該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力(x)よりも低くなる。
【0018】
冷熱媒の吸い上げ高さC(m)は次式(4)により設定する。
C=(Cmax−S)/ρ (4)
max:吸引ポンプによる冷熱媒の最大吸い上げの高さ(m)
S:安全運用値(m)
ρ:冷熱媒の比重(g/cm
max(m)は吸引ポンプによる冷熱媒の最大吸い上げの高さであり、S(m)は安全運用値であり、ρは冷熱媒の比重である。安全運用値S(m)は金属疲労等による吸引ポンプの吸引性能の劣化等を考慮したもので、通常1m以上、好ましくは2〜4(m)である。
次に、冷熱媒貯液タンク(又は冷熱媒サーバータンク)の液面から流動体貯蔵タンク壁面上の密閉式耐圧ジャケット底面までの高さA(m)を次式(5)により設定する。
A≧{W(1−x+d)/ρ} (5)
x:流動体貯蔵タンク内に加わる圧力(atm)、
d:吸引ポンプ停止時に必要とする、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)から該密閉式耐圧ジャケットの底部の圧力(atm)を引いた差圧(atm)であって、d>0、好ましくはdは0.05〜0.4(atm)、特に0.2〜0.4(atm)、
W:真空状態での水の吸い上げ高さ(約10m)、
である。
そして、下記式(1)となるようにB(m)を設定する。
B≦C−A (1)
即ち、
B≦(Cmax−S)/ρ−W(1−x+d)/ρ (6)
となる。
S(m)及びd(atm)を適切な値に設定した場合は、
A={W(1−x+d)/ρ} (5’)
B=C−A=(Cmax−S)/ρ−{W(1−x+d)/ρ} (6’)
とすることができる。
【0019】
このように、本発明は冷熱媒貯液タンクの液面から密閉式耐圧ジャケット底部の高さA(m)と、該密閉式耐圧ジャケット底部から最上部までの高さB(m)により、吸引ポンプ停止の際でも密閉式耐圧ジャケット内の相対的減圧を達成することが可能である。
【0020】
これらの高さA,Bを、吸引ポンプによる冷熱媒の吸い上げの高さC、冷熱媒の比重、必要とする流動体貯蔵タンク内の圧力xと密閉式耐圧ジャケット内の圧力との差圧、安全運用値および大気圧などを考慮し、安全に循環が可能なように調節する。
【0021】
冷熱媒貯液タンク又は冷熱媒サーバータンクの液面を密閉式耐圧ジャケット底部より下方レベルに設置できない場合(A=0の場合)は、減圧ユニットにより冷熱媒減圧循環が可能となり、さらに吸引ポンプ停止時は、電磁弁と物理的減圧装置の組み合わせにより密閉式耐圧ジャケット内の圧力を流動体貯蔵タンク内の圧力以下(減圧維持)とすることができる。
減圧ユニットによる減圧を実施する場合も、冷熱媒の吸い上げ高さC(m)は式(4):
C=(Cmax−S)/ρ (4)
(Cmax、S、ρは前記の通りである。)により設定する。安全運用値S(m)は金属疲労等による吸引ポンプの吸引性能の劣化等を考慮し、設定する必要がある。
Bは、次式(7)により設定する。
B≦C−W(1−E)/ρ (7)
E(atm)は、減圧ユニットの設定圧力(atm)であり、C、W、ρは前記の通りである。
減圧ユニットの設定圧力E(atm)は、次式(8)により設定する。
E=x−d (8)
x、dは前記の通りである。
【0022】
以下、本発明の装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
小型の流動体貯蔵タンクの場合
温度管理する小型の流動体貯蔵タンクに設けられる密閉式耐圧ジャケットの高さB(m)が、気圧が1atm、温度が25度の標準状態で吸引ポンプによる冷熱媒の最大ポンプ吸い上げ高さ(=ポンプ性能)Cmax以下(冷熱媒の比重が1、ポンプ性能が8mの場合は、Bは8m以下、好ましくはポンプ性能Cmaxから安全運用値(好ましくは約2m)を引いた6m以下)の場合において、本発明の第1の態様(図1参照)では、大気に開放した冷熱媒貯液タンク3を、そのタンク3の液面が、上部を大気に開放した流動体貯蔵タンク2の底部よりもA(m)だけ下方レベル(冷熱媒が水の場合、A={W(1−x+d)/ρ}=0.5〜2m下方レベル)になるように設置し、流動体貯蔵タンク2の壁面に設けられた密閉式耐圧ジャケット4内を、その冷熱媒出口部位付近に設けた吸引ポンプ1により吸引して、該貯蔵タンク2内よりも減圧状態にする(高さによる減圧)。即ち、冷熱媒貯液タンク3から密閉式耐圧ジャケットの最上部までの高さA+B(m)が吸引ポンプ1による冷熱媒の吸い上げ高さC(m)以下、即ちA+B≦C、又はS及びdを適切な値に設定した場合はC=A+B、となるように設定して、冷熱媒を冷熱媒貯液タンク3から冷熱媒流動管路5を経て密閉式耐圧ジャケット4の底部に送り、該密閉式耐圧ジャケット4内を流動させて吸引し、ついで冷熱媒流動管路5を経て冷熱媒貯液タンク3に戻すことにより、密閉式耐圧ジャケット4内で冷熱媒を常に流動体貯蔵タンク2内よりも減圧状態(流動体貯蔵タンク2内の圧力に比べて相対的に圧力が低い状態、通常、1気圧以下)で流動させる。さらに、吸引ポンプ1が停止した際も、上記式(2)、(3)又は(2’)、(3’)に示すように、密閉式耐圧ジャケット4内を減圧状態(流動体貯蔵タンク2内の圧力に比べて相対的に圧力が低い状態、通常、1気圧以下)に保つことが可能である。吸引ポンプ1と冷熱媒貯液タンク3の間の冷熱媒流動管路5に、好ましくは冷熱媒貯液タンク3の近くで、且つ冷熱媒貯液タンク3の液面以下の高さにエアーだまり9を設けてもよい。冷熱媒貯液タンク3内の冷熱媒は温度管理設備8により温度管理することができる。
【0023】
冷熱媒貯液タンク3から流動体貯蔵タンク2まで距離がある場合や、冷熱媒貯液タンク3が大型であり、流動体貯蔵タンク2よりも低いレベル(高さ)に冷熱媒貯液タンクの設置が不可能である場合は、本発明の第2及び第3の態様として、図2及び図3に示すようにサーバータンク10を流動体貯蔵タンク2の近くで且つ該流動体貯蔵タンク2よりも低いレベルに設置してもよい。
その場合、冷熱媒貯液タンク3から冷熱媒を加圧ポンプ17で加圧し、該サーバータンク10に送り込む。その後、該冷熱媒を吸引ポンプ1で該サーバータンク10から密閉式耐圧ジャケット4内を減圧循環させ、冷熱媒貯液タンク3に戻す構造となる。この場合も、A+B(Aはサーバータンク10の液面から流動体貯蔵タンク2の底部までの高さ、Bは密閉式耐圧ジャケットの高さである)を吸引ポンプの吸い上げ高さC(m)以下、即ちA+B≦C、S及びdを適切な値に設定した場合はA+B=Cとなるように設定する。
【0024】
該サーバータンク10に通気口(通気管)を設け、該サーバータンク10を密閉系ではなく開放系としておき、ボールタップを設け、冷熱媒貯液タンク3からの冷熱媒の流量を調節するのが好ましい。これにより、サーバータンク10の液面を一定に保つことが可能となる。
【0025】
吸引ポンプ1が停止した際も密閉式耐圧ジャケット4内を減圧状態に保つために、図2に示すように、吸引ポンプ1の下流に電磁弁13を設けてもよい。
【0026】
図3に示すように、密閉式耐圧ジャケット4の冷熱媒出口部位付近に設けた吸引ポンプ1と冷熱媒貯液タンク3の間に冷熱媒レシーバータンク11を設け、吸引ポンプ1と連動するレベルセンサー(図示していない)を冷熱媒レシーバータンク11に設けて、冷熱媒レシーバータンク11の液面を調節することもできる。
【0027】
冷熱媒貯液タンク3の液面をサーバータンク10により流動体貯蔵タンク2の底部よりも下方レベルに設定して減圧状態を保持する(高さによる減圧)代わりに、減圧ユニット12により圧力調整して、該密閉式耐圧ジャケット4内を該貯蔵タンク2内よりも減圧状態にしてもよい(減圧ユニットによる減圧)。
【0028】
図4に示す本発明の第4の態様においては、冷熱媒貯液タンク3の液面を流動体貯蔵タンク2の底部よりも下方レベルにする代わりに、減圧ユニット12により管路内を減圧して、ポンプ停止時に備えている。
【0029】
密閉式耐圧ジャケット4の出口部と吸引ポンプ1の間に物理的減圧装置14を設けて、密閉式耐圧ジャケット4内の減圧状態を強制減圧するなど、様々な方法で、該密閉式耐圧ジャケット内の減圧状態を高さで制御しない方法も本発明に含まれる。吸引ポンプ1のポンプ停止時に備えて、電磁弁13を設けて密閉式耐圧ジャケット4内を密閉してもよい。
【0030】
いずれの態様においても、冷熱媒貯液タンク内部と該密閉式耐圧ジャケットの最下部(底部)を、場合によっては冷熱媒レシーバータンク11を介して管路で接続し、密閉式耐圧ジャケット4の通常は頂部にある出口部と該吸引ポンプ1の吸入口とを管路で接続し、さらに吸引ポンプ1の吐出口と冷熱媒貯液タンク3内部とを管路で接続する。ここで、該管路は該冷熱媒貯液タンクの液面内に入るようにするのが、空気の混入を防止する観点から好ましい。
【0031】
冷熱媒貯液タンクには通気口(通気管)を設ける必要がある。これは冷熱媒貯液タンク3を密閉系ではなく開放系としておく事が必要となるためである。この理由は戻り(吸引ポンプ1から冷熱媒貯液タンク3へ)の管路内の加圧状態の冷熱媒を常気圧に戻すことにより、行き(冷熱媒貯液タンク3から密閉式耐圧ジャケット4へ)の管路内を常に減圧下におくためである。
【0032】
冷熱媒の減圧状態で保つために、吸引ポンプ1を停止した際も密閉式耐圧ジャケット4内に冷熱媒が満たされた状態が必要である。すなわち、吸引ポンプ1を停止した際は、冷熱媒が冷熱媒貯液タンク3に排出されるのではなく、ただ冷熱媒の流れが止まっただけの状態が望ましい。これは吸引ポンプ1を停止した際も、密閉式耐圧ジャケット4内を減圧状態に保つために、冷熱媒が冷熱媒貯液タンク3に排出されては減圧状態が保たれなくなるからである。
従って、吸引ポンプ1の吐出口から冷熱媒貯液タンク3内部までの管路において、吸引ポンプ1の吐出口からの管路を、冷熱媒貯液タンク3内の液面に入った状態にするか、冷熱媒貯液タンク3の液面以下の冷熱媒貯液タンク壁に取り付けるとよい。或いは、吸引ポンプ1の吐出口からの管路が冷熱媒貯液タンク3内の液面以上にあったとしても、密閉式耐圧ジャケット4と冷熱媒貯液タンク3との間に吸引ポンプ1が止まった時に閉じる電磁弁13を設置してもよい。
【0033】
流動体貯蔵タンク2の壁面上の密閉式耐圧ジャケット4内を減圧状態として流動体貯蔵タンク2内への冷熱媒の混入を防止する方法及び装置は、密閉式耐圧ジャケット4内を常に減圧状態(流動体貯蔵タンク2内の圧力に比べて相対的に圧力が低い状態)にする方法を意味するものであり、必ずしも上記に示す態様に限定されるものではない。
【0034】
大型の流動体貯蔵タンクの場合
ポンプによる冷熱媒吸い上げの高さ(C)を越えるような高さの密閉式耐圧ジャケットを必要とする大型流動体貯蔵タンクに本発明を適用する場合は、密閉式耐圧ジャケットの構造を多段とし、必要に応じて各段にサーバータンクおよび/又は減圧ユニットと、吸引ポンプを設けるとよい。
【0035】
即ち、密閉式耐圧ジャケットを多段にして、最下段の1段目を上記の小型の流動体貯蔵タンクの場合の装置と同様の構成とし、2段目以降の各段に1段目と同様の密閉式耐圧ジャケットを設け、2段目以降の構成を、1段目と同様の構成とするか(図5、図7参照)、或いは2段目以降の吸引ポンプを省略することもできる(図6、図8参照)。この際も、各密閉式耐圧ジャケット4a,4b,4c等の高さB’(m)を、吸引ポンプによる冷熱媒の最大吸い上げ高さ(Cmax)から安全運用値S(m)を引いた値以下(B’≦(Cmax−S)/ρ)とする。各段にサーバータンクを設けた場合は、各サーバータンクの液面から対応する各密閉式耐圧ジャケットの底部までの高さA’(m)も下記式(5’)を満たすように設定するのが好ましい。
A’≧{W(1−x+d)/ρ} (5’)
W,x,d,ρは前記の通りである。
【0036】
第5、6図に示す3段構造の態様では、各段には冷熱媒サーバータンク10a、10b、10cを設けて、各冷熱媒サーバータンクの液面が、冷熱媒を送る各密閉式耐圧ジャケット4a,4b,4cの底部よりも下方になるように設置する。各密閉式耐圧ジャケット4a,4b,4cの出口部と冷熱媒貯液タンク3の間にそれぞれ吸引ポンプ1a、1b、1c等を設ける。二段目以降の吸引ポンプ1b、1cと冷熱媒貯液タンク3の間にそれぞれ冷熱媒レシーバータンク11b、11cを設けてもよい(図5)。或いは、二段目以降の密閉式耐圧ジャケット4b、4cの各装置単位においては、各密閉式耐圧ジャケットの出口部と冷熱媒貯液タンク3との間の高さが、吸引ポンプによる冷熱媒の吸い上げ高さを超えるので、吸引ポンプ1b、1cを省略して、その代わりに運転開始時の呼び水を供給するためのT型配管16とバルブ15を二段目以降の密閉式耐圧ジャケット4b、4cの各出口部と冷熱媒貯液タンク3との間の各管路に設けてもよい(図6、図8)。
【0037】
各段に冷熱媒サーバータンク10a、10b、10c等を設ける代わりに、図7、8に示すように、各段に設けた減圧ユニット12により冷熱媒貯液タンク3から直接、各密閉式耐圧ジャケット4a,4b,4cの底部に冷熱媒を送ってもよい。図7に示す態様では、各段に物理的減圧装置14a、14b、14c、及び電磁弁13が設けられ、二段目以降には冷熱媒レシーバータンク11b、11cが設けられている。図8に示す態様では、一段目のみに物理的減圧装置14及び電磁弁13が設けられ、二段目以降には吸引ポンプ1b、1cを省略して、その代わりに運転開始時の呼び水を供給するためのT型配管16とバルブ15を二段目以降の密閉式耐圧ジャケット4b、4cの各出口部と冷熱媒貯液タンク3との間の各管路に設けている。
【0038】
本発明で使用することのできる冷熱媒は、通常は常温、大気圧で液体の媒体であり、冷媒と熱媒を含む。該冷媒とは、流動体貯蔵タンク内の流動体を冷却するための液体であって、その例としては、冷凍装置により冷却された冷却水や不凍液(一般にエチレングリコール液またはプロピレングリコール液)などが挙げられる。冷熱媒貯液タンクの冷媒は冷却装置により必要に応じて摂氏−10〜5度程度、通常は−2〜2度程度に冷却される。
【0039】
該熱媒とは、流動体貯蔵タンク内の流動体を加温するための液体であって、本発明で使用することのできる熱媒の例は、加熱装置により加熱された熱水、熱油などである。
【0040】
流動体貯蔵タンク内の流動体は、牛乳、ワイン、酒、飲料等、温度制御状態で液体のもの、又は粉体である。該貯蔵タンクは通常、大気圧に開放されているが、加圧密閉系でもよく、加圧密閉系の場合は、密閉式耐圧ジャケットが該貯蔵タンク内よりも更に相対的に減圧状態となる。
【0041】
本発明で使用することにできる吸引ホンプは自吸式ポンプが望ましく、自吸式の渦巻ポンプ、ピストンポンプなどである。自吸式ポンプの自吸ポンプ性能(Cmax)は、冷熱媒貯液タンク(又はサーバータンク)の液面から自吸式ポンプの吸入口までの高低レベル、即ち、該液面から密閉式耐圧ジャケットの最上部までの高さ(A+B)以上が必要である。
【0042】
流動体貯蔵タンクの亀裂の検出
吸引ポンプ1から冷熱媒貯液タンク3へ冷熱媒が戻っていく配管にエアーだまり9をもうけることが望ましい。もしこのエアーだまりにエアーが溜まっていくようならば、装置自身になんらかの異常が生じていることが容易に察知可能である。
【0043】
冷熱媒貯液タンク3の冷熱媒をエアーだまり9からサンプリングし、ガスクロマトグラフィーもしくは液体クロマトグラフィーのような成分分析機器を用い、冷熱媒の成分を分析することを定期的に実施する。これにより、流動体貯蔵タンク2内の流動体が冷熱媒サンプルに検出された場合、密閉式耐圧ジャケット4と流動体貯蔵タンク2の間の壁面に何らかの亀裂が生じている可能性が高くなる。即ち、本発明によると、流動体貯蔵タンク壁面における異常が容易に察知可能である。
【0044】
このエアーだまり9は吸引ポンプ1から冷熱媒貯液タンク3へ冷熱媒が戻っていく配管中の、好ましくは冷熱媒貯液タンク3に近い位置で、且つ該貯液タンク3の液面以下の位置に取り付けることが望ましい。
【0045】
図4,7,8に示す態様に使用し得る減圧ユニット12は、図10に例示するように、減圧弁18と差圧弁19から構成される。減圧ユニット12は、加圧ポンプ17により加圧された冷熱媒を減圧弁18により減圧し且つ一定圧に保ち、差圧弁19により減圧状態にすることができる。減圧弁18通過後の冷熱媒の圧力が低すぎる(例えば、2気圧以下)と差圧弁19による減圧が作用しにくい怖れがあるので、減圧弁18通過後の冷熱媒の圧力は2気圧(atm)以上、好ましくは2〜4気圧(atm)にする。減圧ユニットの設定圧力E(atm)は、E=x−dであり、ここで、x及びdは前記の通りある。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
上部が大気に開放された流動体貯蔵タンク2の高さが約5mである、図1に示す一段式の装置において、冷熱媒(水)貯液タンク3の液面から密閉式耐圧ジャケット4の底部までの高さ(A)を1m、密閉式耐圧ジャケット4の底部から最上部までの高さ(B)を5mとし、自吸式渦巻ポンプ1(株式会社荏原製作所製、口径40mmの40FQD5.15A型、最大吸い上げ高さ(Cmax)7m、出力1.5KW)を用い、これらを冷熱媒流動管路5(40Aの塩ビ管)で接続する。
冷熱媒貯液タンク3は接続する温度管理装置8により冷熱媒を任意の温度に冷却または加熱し、アイスバンカーまたはホットバンカーとして使用できるように常時温度管理装置8を自動運転して管理する。
【0047】
流動体貯蔵タンク2では、流動体投入管6により流動体を投入し、流動体取出管7に送り出す。流動体投入管6により流動体を流動体貯蔵タンク2に投入する前、又は投入の直後に、自吸式渦巻ポンプ1に冷熱媒をいれて運転を開始して、該冷熱媒を冷熱媒貯液タンク3から、冷熱媒流動管路5の冷熱媒流動方向5aに、流動体貯蔵タンク2の壁面に設置した密閉式耐圧ジャケット4内を流動させて自吸式渦巻ポンプ1まで吸い上げ、ついで該冷熱媒を冷熱媒貯液タンク3に戻すように循環させる。この冷熱媒の循環は、流動体貯蔵タンク2内に流動体が貯液されている間、その任意の温度管理状態を勘案して適宜に実施する。
上記装置では、ポンプ1が停止した場合も含めて、冷熱媒(水)は流動体貯蔵タンク2内よりも減圧状態で密閉式耐圧ジャケット4内を流動した。
【符号の説明】
【0048】
1 自吸式渦巻ポンプ(吸引ポンプ)
2 流動体貯蔵タンク
3 冷熱媒貯液タンク
4,4a,4b,4c 密閉式耐圧ジャケット
5 冷熱媒流動管路
5a 冷熱媒流動方向
6 流動体投入管
7 流動体取出管
8 温度管理設備
9 エアーだまり
10a、10b、10c 液面調整式冷熱媒サーバータンク
11b、11c 冷熱媒レシーバータンク
12 減圧ユニット
13 電磁弁
14 物理的減圧装置
15 運転開始時の呼び水用バルブ
16 T型配管
17 加圧ポンプ
18 減圧弁
19 差圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定圧下にある流動体貯蔵タンクの壁面の外側周囲に設置した密閉式耐圧ジャケット内で冷熱媒を流動させて該冷熱媒により温度を管理する該流動体貯蔵タンクにおいて、該密閉式耐圧ジャケット内で冷熱媒を、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力x(atm)以下の圧力下で流動させることにより、該流動体貯蔵タンク内の該流動体の、該冷熱媒による汚染を防止する方法。
【請求項2】
大気に開放した冷熱媒貯液タンク又はサーバータンクの液面を該密閉式耐圧ジャケットの底部よりも高さA(m)だけ下方レベルに設定し、該密閉式耐圧ジャケットの冷熱媒出口部と連結した吸引ポンプにより該冷熱媒を吸引して、該冷熱媒を該冷熱媒貯液タンクから管路を経て該密閉式耐圧ジャケットの底部に送り、該密閉式耐圧ジャケット内を流動循環させ、該吸引ポンプを経て該冷熱媒貯液タンクに戻すことにより、該密閉式耐圧ジャケットに該冷熱媒を流動させ、該冷熱媒貯液タンク又はサーバータンクの液面から該密閉式耐圧ジャケットの底部までの高さA(m)を、
A≧{W(1−x+d)}/ρ
(ここで、
W(m)は、真空状態での水の吸い上げ高さ(m)(約10mである)であり;
x(atm)は、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力(atm)であり;
d(atm)は、該吸引ポンプ停止時に該密閉式耐圧ジャケットの底部で必要とする、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)から該密閉式耐圧ジャケットの底部の圧力(atm)を引いた差圧(atm)であって、d>0であり;
ρは該冷熱媒の比重である)
とし、
該高さA(m)と、該密閉式耐圧ジャケットの底部から最上部までの高さB(m)と、該吸引ポンプによる該冷熱媒の吸い上げ高さC(m)とが、
B≦C−A
〔ここで、
C(m)は、C=(Cmax−S)/ρであり;
max(m)は、該吸引ポンプによる該冷熱媒の最大吸い上げの高さ(m)(但し、Cmaxは冷熱媒を水とした場合の吸い上げ高さ)であり;
S(m)は安全運用値であって、S>0であり;
ρ及びAは、上記の通りである〕
となるように設定することにより、該冷熱媒を上記圧力x(atm)未満の圧力下で該密閉式耐圧ジャケット内を流動させることを特徴とした、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
大気に開放した該冷熱媒貯液タンクと該流動体貯蔵タンクの間に減圧ユニットを配置し、該密閉式耐圧ジャケットの冷熱媒出口部と連結した吸引ポンプにより該冷熱媒を吸引して、該冷熱媒を該冷熱媒貯液タンクから該減圧ユニットを経て該密閉式耐圧ジャケットの底部に送り、該密閉式耐圧ジャケット内を流動循環させ、該吸引ポンプを経て該冷熱媒貯液タンクに戻すことにより、該密閉式耐圧ジャケットに該冷熱媒を流動させ、該密閉式耐圧ジャケット底部から最上部までの高さB(m)を、
B≦C−{W(1−E)}/ρ
〔ここで、常圧を1atmとし、
C(m)は該吸引ポンプによる該冷熱媒の吸い上げ高さC(m)であって、
C=(Cmax−S)/ρであり、
max(m)は該吸引ポンプによる水の最大吸い上げの高さ(m)(但し、Cmaxは冷熱媒を水とした場合の吸い上げ高さ)であり、
S(m)は安全運用値(m)であって、S>0であり、
ρは該冷熱媒の比重であり、
W(m)は真空状態での水の吸い上げ高さ(約10mである)であり、
E(m)は該減圧ユニットの設定圧力(atm)であって、
E=x−dであり、
xは、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力(atm)であり、
d(atm)は、該吸引ポンプ停止時に必要とする、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)から該密閉式耐圧ジャケットの底部の圧力(atm)を引いた差圧(atm)であって、d>0である〕、
とすることにより、該冷熱媒を上記圧力x(atm)未満の圧力下で該密閉式耐圧ジャケット内を流動させることを特徴とした、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)該流動体貯蔵タンクの壁面の外側に設置した、冷熱媒を流動循環させるための密閉式耐圧ジャケット;
(b)一端が該密閉式耐圧ジャケットの底部と管路により連結された、通気口を有する冷熱媒貯液タンクおよび任意にサーバータンク、ここで該冷熱媒貯液タンク又はサーバータンクの液面は該流動体貯蔵タンクの底部よりも液面がA(m)(A>0)だけ下方レベルになるように設置される;及び
(c)一端が該密閉式耐圧ジャケットに設けた冷熱媒出口部に連結し、そして他端が該冷熱媒貯液タンクと連結する吸引ポンプ
を有し、
該冷熱媒貯液タンク又はサーバータンクの液面から該密閉式耐圧ジャケットの底部までの高さA(m)を、
A≧{W(1−x+d)}/ρ
(ここで、
W(m)は、真空状態での水の吸い上げ高さ(m)(約10mである)であり;
x(atm)は、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力(atm)であり;
dは、該吸引ポンプ停止時に該密閉式耐圧ジャケットの底部で必要とする、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)から該密閉式耐圧ジャケットの底部の圧力(atm)を引いた差圧(atm)であって、d>0であり;
ρは該冷熱媒の比重である)
とし、
該高さA(m)と、該密閉式耐圧ジャケットの底部から最上部までの高さB(m)と、該吸引ポンプによる該冷熱媒の吸い上げ高さC(m)とが、
B≦C−A
〔ここで、
C(m)は、C=(Cmax−S)/ρであり;
max(m)は、該吸引ポンプによる該冷熱媒の最大吸い上げの高さ(m)(但し、Cmaxは冷熱媒を水とした場合の吸い上げ高さであり;
S(m)は安全運用値であって、S>0であり;
ρ及びAは、上記の通りである〕
となるように設定した、温度管理を要する流動体貯蔵タンク内の流動体の、該冷熱媒による汚染を防止した装置。
【請求項5】
(a)該流動体貯蔵タンクの壁面の外側に設置した、冷熱媒を流動循環させるための密閉式耐圧ジャケット;
(b)一端が該密閉式耐圧ジャケットの底部と管路により連結された、通気口を有する冷熱媒貯液タンク;
(c)一端が該密閉式耐圧ジャケットに設けた冷熱媒出口部に管路で連結しそして他端が管路で該冷熱媒貯液タンクと連結する吸引ポンプ;及び
(d)一端が該密閉式耐圧ジャケットの底部とそして他端が該冷熱媒貯液タンクに管路で連結された減圧ユニット;
を有し、
該密閉式耐圧ジャケット底部から最上部までの高さB(m)を、
B≦C−{W(1−E)}/ρ
〔ここで、常圧を1atmとし、
C(m)は該吸引ポンプによる該冷熱媒の吸い上げ高さC(m)であって、
C=(Cmax−S)/ρ)であり、
max(m)は該吸引ポンプによる水の最大吸い上げの高さ(m)(但し、Cmaxは冷熱媒を水とした場合の吸い上げ高さ)であり、
Sは安全運用値(m)であって、S>0であり、
ρは該冷熱媒の比重であり、
W(m)は真空状態での水の吸い上げ高さ(約10mである)であり、
E(atm)は該減圧ユニットの設定圧力(atm)であって、
E=x−dであり、
x(atm)は、該流動体貯蔵タンク内に加わる圧力(atm)であり、
d(atm)は、該吸引ポンプ停止時に必要とする、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)から該密閉式耐圧ジャケットの底部の圧力(atm)を引いた差圧(atm)であって、d>0である〕
とした、温度管理を要する流動体貯蔵タンク内の流動体の、該冷熱媒による汚染を防止した装置。
【請求項6】
上記の差圧d(atm)が0.2〜0.4(atm)である、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
該流動体貯蔵タンクの高さB(m)が、吸引ポンプによる冷熱媒の吸い上げ高さC(m)を越える大型タンクである場合、密閉式耐圧ジャケットを2段以上の多段構造として、1段目は請求項4又は5の構成とし、2段目以降の各段には、それぞれ密閉式耐圧ジャケット、および該冷熱媒貯液タンクと各段の密閉式耐圧ジャケットの底部との間に配置したサーバータンク又は減圧ユニットを設け、
該サーバータンクを設けた場合は、各サーバータンクの液面から各密閉式耐圧ジャケットの底部までの高さA’を、
A’≧{W(1−x+d)}/ρ
(W,x,dおよびρは、前記の通りである)とし、そして、各サーバータンクの液面から各密閉式耐圧ジャケットの最上部までの高さA’+B’(m)を、
A’+B’≦C
(ここで、C=(Cmax−S)/ρであり、Cmax、Sおよびρは前記の通りである)
とし、
該減圧ユニットを設けた場合は、各密閉式耐圧ジャケットの底部から最上部までの高さB’(m)を、
B’≦C−{W(1−E)}/ρ
(ここで、C、W、Eおよびρは前記の通りである)
とした、請求項4〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
該冷熱媒の成分を分析するために、該冷熱媒のサンプリング用のエアーだまりを該冷熱媒の通路に設けた、請求項4〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
加圧された冷熱媒を減圧し且つ一定圧に保つ減圧弁と、該冷熱媒を更に減圧する差圧弁とから構成される、請求項5〜6の装置に使用するための減圧ユニット。
【請求項10】
一定圧下にある流動体貯蔵タンクの壁面の外側周囲に設置した密閉式耐圧ジャケット内で冷熱媒を流動させて該冷熱媒により該流動体貯蔵タンク内の流動体の温度を管理する該流動体貯蔵タンクにおいて、該密閉式耐圧ジャケット内で該冷熱媒を、該流動体貯蔵タンク内の圧力x(atm)以下の圧力下で流動させ、該冷熱媒を該冷熱媒の通路に設けたエアーだまりからサンプリングし、該冷熱媒の成分を分析することを特徴とする、該流動体貯蔵タンクの亀裂の検出方法。
【請求項11】
減圧を必要とする液体が流動している空間において、減圧が保たれない状況となる可能性がある場合、物理的減圧装置によりその空間の流動を止めてその空間を密閉し、物理的および強制的に減圧する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
減圧を必要とする液体が流動している空間において、減圧が保たれない状況となる可能性がある場合、その空間の流動を止めてその空間を密閉し、物理的および強制的に減圧する物理的減圧装置を更に設けた、請求項4〜8のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−219148(P2011−219148A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92479(P2010−92479)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【特許番号】特許第4707764号(P4707764)
【特許公報発行日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(509317575)八尾乳業協同組合 (1)
【Fターム(参考)】