説明

温度計付き真空計

【課題】真空雰囲気またはガス雰囲気にある容器内において、真空度と温度の計測に、最も効果的な方法を具体化する。
【解決手段】温度計と真空計を単一ケース内に収納した。図3はその一例を示す。最上部の表示器は大型のものを用い、その時点の真空度と温度を交互に表示する。その下部に小型の表示器があり一段目と二段目は特定の温度設定値に達した時、また三段目と四段目は特定の真空度に達した時、外部に信号を送出する機能を持つ。これらに小型表示器の設定により温度と真空度の組み合わせ等、各種の使用方法が可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空計と温度計の両分野に属する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の製造、真空冶金加工等の分野において大気と遮断した容器内を真空雰囲気、またはガス雰囲気とし、雰囲気中の特定部分を加温または冷却する場合がある。このような時、容器内の真空度と温度を測定するため通常、真空計と温度計の二体を必要とした。
【発明の概要】

【本発明が解決しようとしている課題】
【0003】
本発明は容器内の真空度と温度の計測を効率よく行うことを目的とした。
【0004】
一般に用いられている真空計には動作原理に基づき、熱伝導真空計、電離真空計、冷陰極真空計等、各種のものがある。これらの動作は殆どが電子機器の応用によって行われているため、電源部を持つ。電源部はプラス、マイナス5V−15Vの一部またはすべてを具備しており、また多くの真空計は小型中央演算素子(CPU)をもつ。
【0005】
また、温度計はゼーベック効果を利用したサーモカップルを温度センさーとしたものが多い。
【0006】
ゼーベック効果とは異種の素材よりなる2本の金属線の両端を接合するとき線内を循環する電流の存在を云う。この電流は金属線両端の温度差に比例する。
【0007】
上記金属線の環状線をなす一方を開放し電流計、または電圧計等の検出器を接続し、他方の接合部を加熱するとき、検出器の指示は加熱温度に比例する。
【0008】
図1はサーモカップルと検出器の接続状態を示したもので1の金属線A、2の金属線B、3の検出器よりなる。金属線A、Bの接合部4の加熱温度をT1とし、検出器の近傍に置く他端子接合部5の温度をT2とした場合、検出器3に現れる出力は金属接合部温度T1、T2の差のみに依存する。
理由は中間金属の法則により検出器の金属素成、温度は検出器出力に無関係のためである。この状態においてT1を常に一定にしても検出器出力は一定にはならない。それはT2が測定室等の温度によって変化するためである。
【0009】
上記のT2温度の変動による弊害を避けるため、過去においては金属線接合部5の部分を氷塊を入れた魔法瓶に入れ、ほぼ零度付近に保つ手段を講じた。この処置により加熱温度と検出器の指示の関係が常に一定になった。
【0010】
しかし現在では冷接点温度補償用ICの出現により魔法瓶を用いる等の煩わしい手段を用いる必要は全くない。図2はその構成を示すものでサーモカップル冷接点温度補償用IC6にサーモカップルと出力計を接続すれば室温に関係なく図中4部分の温度のみに依存する値を示す。
【0011】
サーモカップル冷接点温度補償用ICおよびこれの周辺装置は電子機器である。そのため電源を必要とする。またセンサによってはセンサ加熱部の温度と指示計指示の比例を希望値に補正したいためCPUを用いる。
【0012】
温度計には加熱物体より放射される赤外線を利用して温度を計測するものもある。これらには熱型赤外線センサー、または量子型赤外線センサー等があるが、これらも単純なサーモカップル型温度計と同じく電源部を有しCPUを持つ。
【0013】
容器内を真空雰囲気、またはガス雰囲気とし容器の特定部位を加温するとき、真空計と温度計の二体の計器を必要とすることを述べた。しかし両者共に電源部を備え、さらにCPUを具備している場合が多い。
【0014】
近時、希原素金属の枯渇、更に工業製品生産時に発生する二酸化炭素排出量の削減が強く問題視されている中、上記のように多くの共通部分を持つ真空計と温度計を二者並べて備えるのは明らかな矛盾である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
多くの共通部分を持つ真空計と温度計を、二者並べて使用する矛盾を解決するには次の方法がある。
【0016】
1.真空計と温度計の電源部を共用にする。
【0017】
2.真空計と温度計を同一ケース内に収め、同一電源、同一CPUにより目的物を計測する。内部に用いるCPUは別々に備えてもよいが、CPUの多機能化により両者を同一CPUにより稼動することは容易である。この場合の呼称であるが、真空計の方が構造的に複雑なことおよび消費電力が大きいことから温度計付き真空計が適切である。
【0018】
図3は同一ケース内に真空度と温度の計測機能を備えた温度計付き真空計の一例を示す。
【0019】
右方最上部の表示器は大型のものを用いてあり、その時点の真空度の表示と温度の表示を交互に表示する。その下部に小型の表示器があり一段目と二段目は特定の温度設定値に達した時、外部に信号を送出する機能を持っている。三段目と四段目は特定の真空度設定値に達した時、外部に信号を送出する機能を持っている。これらの小型表示器の設定により温度と真空度の組み合わせ、または帯域を設ける等、各種の使用方法が可能になる。
【0020】
左方のPROGRAM CONTROL UNITは、各温度のセグメントにおける時間に対する温度の立ち上がりを定める制御部である。
【発明の効果】
【0021】
別々のケースに収められた真空計と温度計の電源部を共用にすれば部品点数は少なくてすむ。また同一ケース内に真空度と温度の計測部を合体させれば部品の点数は少なくなり、また占有体積は小さい。これら、いずれの場合も低価格に繋がり環境改善に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】サーモカップルと検出器を接続した原理図である。
【図2】サーモカップルと冷接点温度補償用ICおよび検出器を接続した原理図である。
【図3】同一ケース内に真空度と温度の計測を可能にした機器である温度計付き真空計の正面パネル図である。
【符号の説明】
【0023】
1:金属線A
2:金属線B
3:サーモカップル出力用検出機
4:金属線接合部
5:金属線接合部
6:冷接点温度補償用IC
T1:金属線接合部4の温度
T2:金属線接合部5の温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通電源により稼動される真空計と温度計
【請求項2】
単一ケース内に収納された温度計付き真空計
【請求項3】
単一ケース内に収納され、共通電源と共通CPUにより稼動される温度計付き真空計

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−281804(P2010−281804A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149140(P2009−149140)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(505276764)株式会社東洋電子研究所 (8)
【Fターム(参考)】