説明

温度調節装置およびステアリングホイール

【課題】より長時間継続的に温度調節対象物の温度を調節することのできる技術を提供する。
【解決手段】温度調節対象物100の温度を調節する温度調節装置10は、吸熱または放熱する第1面と、第1面が吸熱した場合に放熱し、第1面が放熱した場合に吸熱する第2面とを有する第1熱源素子12および第2熱源素子14と、第1熱源素子12の第1面と第2熱源素子14の第1面とを熱伝達可能に連結する素子間熱伝導部材16と、第1熱源素子12および第2熱源素子14の吸放熱を制御する制御部20と、を備える。制御部20は、第1熱源素子12の第1面が吸熱した場合に第2熱源素子14の第1面が放熱し、第1熱源素子12の第1面が放熱した場合に第2熱源素子14の第1面が吸熱するように制御し、第1熱源素子12の第2面の吸熱または放熱によって温度調節対象物100の温度が調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節装置およびステアリングホイールに関する。特に自動車のステアリングホイールの温度調節を行う温度調節装置および該装置を備えたステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリングホイールは、夏季の炎天下や冬季の厳寒下では、その表面温度が約80℃の高温や約0℃の低温になり、運転者に不快感を与えるだけでなく、運転者がステアリングホイールを充分に把持することができない場合がある。その結果、自動車の運転が困難となってしまう。
【0003】
これに対し、ステアリングホイールのリング部からスポーク部へ延びる熱交換部を備えた熱伝導パイプがリング部に設けられ、またリング部の全周にわたって複数のペルチェ素子が設けられたステアリングホイールが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。 また、ハンドルのリム部(リング部)に熱伝導率の良い素材で形成された熱調節部を備え、スポーク部にペルチェ素子を備え、熱調節部とペルチェ素子とが熱的に連結されたハンドルが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−153026号公報
【特許文献2】特開2002−347629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、多数のペルチェ素子を用いているため高コストである。また、エアコンからの冷風によって熱交換部を冷却しているため、熱交換部における熱交換効率が低い。そのため、ペルチェ素子による温度調節によって生じた廃熱量が熱交換部における熱交換量を上回り、熱伝導パイプが蓄熱してしまう。その結果、ペルチェ素子の機能が低下してしまい、リング部の表面を長時間継続的に温度調節することが困難であった。
【0005】
また、上述の特許文献2の構成では、スポーク部の放熱容量を超えるとスポーク部自体が蓄熱してしまうため、ペルチェ素子の機能が低下してしまい、リング部の表面を長時間継続的に温度調節することが困難であった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より長時間継続的に温度調節対象物の温度を調節することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は温度調節装置である。この温度調節装置は、温度調節対象物の温度を調節する温度調節装置であって、吸熱または放熱する第1面と、前記第1面が吸熱した場合に放熱し、前記第1面が放熱した場合に吸熱する第2面とを有する第1熱源素子および第2熱源素子と、前記第1熱源素子の前記第1面と前記第2熱源素子の前記第1面とを熱伝達可能に連結する素子間熱伝導部材と、前記第1熱源素子および前記第2熱源素子の吸放熱を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1熱源素子の前記第1面が吸熱した場合に前記第2熱源素子の前記第1面が放熱し、前記第1熱源素子の前記第1面が放熱した場合に前記第2熱源素子の前記第1面が吸熱するように制御し、前記第1熱源素子の前記第2面の吸熱または放熱によって前記温度調節対象物の温度が調節されることを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、より長時間継続的に温度調節対象物の温度を調節することができる。
【0009】
上記態様において、前記第1熱源素子の前記第2面と前記温度調節対象物とを熱伝達可能に連結する対象物側熱伝導部材を備え、前記対象物側熱伝導部材を介して、前記第1熱源素子の前記第2面の吸熱または放熱による前記温度調節対象物の温度調節が行われてもよい。この態様によれば、温度調節対象物をより効率的に温度調節することができる。
【0010】
上記態様において、前記温度調節対象物の温度を検知する温度検知センサを備え、前記制御部は、前記温度検知センサの検知結果に基づいて、前記第1熱源素子および前記第2熱源素子の吸放熱を制御するようにしてもよい。この態様によれば、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0011】
上記態様において、前記第1熱源素子および前記第2熱源素子は、ペルチェ素子であってもよい。この態様によれば、より長時間継続的に温度調節対象物の温度を調節することができる。
【0012】
本発明の他の態様は、ステアリングホイールである。このステアリングホイールは、上述のいずれかの態様の温度調節装置を備えたことを特徴とする。この態様によれば、より長時間継続的にステアリングホイールの温度を調節することができる。
【0013】
上記態様において、リング部と、前記リング部の内径側に連結されたスポーク部と、を備え、前記温度調節対象物は、前記リング部であり、前記素子間熱伝導部材は、前記スポーク部に設けられていてもよい。この態様によれば、より長時間継続的にステアリングホイールのリング部の温度を調節することができる。
【0014】
上記態様において、前記リング部の上部領域と下部領域とに設けられ、前記リング部の温度を検知する温度検知センサを備え、前記制御部は、前記温度検知センサの検知結果に基づいて、前記第1熱源素子および前記第2熱源素子の吸放熱を制御するようにしてもよい。この態様によれば、無駄な電力消費を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より長時間継続的に温度調節対象物の温度を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0017】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る温度調節装置の構成を示すブロック図である。なお、図中太線は各構成要素が熱的に連結されていることを示している。
【0018】
図1に示すように、温度調節対象物100の温度を調節する温度調節装置10は、第1熱源素子12、第2熱源素子14、素子間熱伝導部材16、対象物側熱伝導部材18、制御部20などにより構成されている。
【0019】
第1熱源素子12および第2熱源素子14はそれぞれ、吸熱または放熱する第1面と、第1面が吸熱した場合に放熱し、第1面が放熱した場合に吸熱する第2面とを有している。第1熱源素子12および第2熱源素子14は、たとえばペルチェ素子からなる。ペルチェ素子は、電流を流すと第1面で周囲より吸熱するとともに第2面で熱を発生(放熱)するか、あるいは第1面で放熱するとともに第2面で周囲より吸熱する。たとえば、第1面で吸熱するように電流を流すと、第1面から第2面へ熱が移動し、これにより第1面での吸熱および第2面での放熱が行われる。第1面あるいは第2面での周囲からの吸熱によって周囲が冷却され、放熱によって周囲が加熱される。ペルチェ素子の吸熱および放熱の熱量は、流す電流量に応じて決定され、また、第1面および第2面のどちらで吸熱あるいは放熱するかは電流の極性に応じて決定される。
【0020】
第1熱源素子12の第1面と第2熱源素子14の第1面とは、素子間熱伝導部材16によって熱伝達可能に連結されている。素子間熱伝導部材16は、たとえばヒートパイプからなる。ヒートパイプは、少量の熱輸送用流体である液体、たとえば水を金属管内に減圧し、封入して構成されている。このような構成のヒートパイプは、銅等の熱伝導率の高い金属の数百倍もの熱伝導率をもつ熱輸送デバイスとして知られている。また、本実施形態では、第1熱源素子12の第2面と温度調節対象物100とが、対象物側熱伝導部材18によって熱伝達可能に連結されている。対象物側熱伝導部材18は、たとえば素子間熱伝導部材16と同様にヒートパイプからなる。
【0021】
制御部20は、第1熱源素子12および第2熱源素子14に印加される電流の極性および電流量を変化させることで、第1熱源素子12および第2熱源素子14の吸放熱を制御する。ここで、制御部20は、第1熱源素子12の第1面が吸熱した場合に第2熱源素子14の第1面が放熱し、第1熱源素子12の第1面が放熱した場合に第2熱源素子14の第1面が吸熱するように制御する。そして、第1熱源素子12の第2面の吸熱または放熱によって温度調節対象物100の温度が調節される。本実施形態では、第1熱源素子12の第2面と温度調節対象物100との間に対象物側熱伝導部材18が設けられているため、第1熱源素子12の第2面の吸熱または放熱による温度調節対象物100の温度調節は、対象物側熱伝導部材18を介して行われることとなる。
【0022】
具体的には、たとえば、温度調節対象物100を冷却する場合には、制御部20は第1熱源素子12の第2面が吸熱するように、第1熱源素子12に直流電流を流す。温度調節対象物100の熱は、対象物側熱伝導部材18を介して、あるいは直接、第1熱源素子12の第2面から第1熱源素子12内に吸収され、これにより温度調節対象物100は冷却される。第1熱源素子12の第2面から吸収された熱は、第1熱源素子12内を移動して第1面側に至り、第1熱源素子12の第1面から素子間熱伝導部材16に放出される。素子間熱伝導部材16内に封入されている熱輸送用流体は、第1熱源素子12の第1面から伝えられた熱によって蒸気化し、第2熱源素子14側に移動する。
【0023】
第2熱源素子14の第1面は制御部20によって吸熱するように制御されているため、素子間熱伝導部材16内を移動してきた熱は、第2熱源素子14の第1面から第2熱源素子14内に吸収される。第2熱源素子14内に吸収された熱は、第2熱源素子14内を移動して第2面側に至り、第2熱源素子14の第2面から放出される。第2熱源素子14の第2面には、ヒートシンクなどの図示しない放熱部材が設けられており、第2熱源素子14の第2面から放出された熱は、効率的に冷却される。
【0024】
ペルチェ素子は、素子自体の温度上昇によって冷却・加熱性能が低下してしまう。本実施形態では、第1熱源素子12の第1面と第2熱源素子14の第1面とを素子間熱伝導部材16で熱的に連結するとともに、第1熱源素子12の第1面と第2熱源素子14の第1面とで吸熱・放熱を逆制御している。したがって、第1熱源素子12の第1面から放出された熱は、効率的に素子間熱伝導部材16内に吸収されるとともに第2熱源素子14側に移動し、第2熱源素子14の第1面から第2熱源素子14内に吸収される。すなわち、第1熱源素子12から放出された熱を第2熱源素子14が吸収することで、第1熱源素子12における熱交換を高効率に行っている。そのため、第1熱源素子12の温度上昇を効率的に抑えることができ、第1熱源素子12による冷却・加熱性能の低下を抑えることができる。
【0025】
なお、対象物側熱伝導部材18を設けずに、第1熱源素子12の第2面によって温度調節対象物100を直接温度調節するようにしてもよい。また、対象物側熱伝導部材18自体が温度調節対象物100の全部または一部を構成する場合には、対象物側熱伝導部材18を温度調節対象物100としてもよい。
【0026】
次に、実施形態1に係る温度調節装置10をステアリングホイール200に適用した場合を説明する。図2はステアリングホイール200の概略平面図であり、図3(a)、(b)はステアリングホイール200の概略部分断面図である。図3において、(a)は図2におけるA−A線に沿った概略断面図であり、(b)は図2におけるB−B線に沿った概略断面図である。
【0027】
図2に示すように、ステアリングホイール200は、運転者が主に把持するリング部202と、リング部202の内径側に連結されたスポーク部204とを備える。本実施形態では、スポーク部204は略T字状の形状であり、スポーク部204の3方に延びる3つの端部がそれぞれリング部202の左右領域および下領域に連結されている。ステアリングホイール200は、スポーク部204を介して図示しない車両の操舵軸に回転可能に連結されており、運転者がリング部202を回転操作することで操舵軸が回転し、車両の前輪の向きが変えられるようになっている。
【0028】
図2および図3(a)、(b)に示すように、リング部202は、たとえばアルミニウム合金などの金属からなり、リング状の芯材206を有する。芯材206の外周には、たとえばウレタン樹脂などの合成樹脂からなる充填材208が配設されている。また、スポーク部204の端部が連結されているリング部202の左右領域には、内部に第1熱源素子12が1つずつ配設されている。したがって、ここではリング部202が温度調節対象物100となる。
【0029】
第1熱源素子12の第2面12bには対象物側熱伝導部材18が熱伝達可能に連結されている。対象物側熱伝導部材18は、リング部202の全周にわたって設けられるとともに、リング部202の一部を構成している。第1熱源素子12の第1面12aには素子間熱伝導部材16の一端が熱伝達可能に連結され、素子間熱伝導部材16の他端側は、スポーク部204側に延びている。なお、ここではリング部202の左領域の断面のみを図3(a)に示しているが、右領域の断面は左領域の断面と同様であるため図示は省略する。
【0030】
スポーク部204の下方向に延びる端部内には、第2熱源素子14が配設されている。また、スポーク部204内には、リング部202の左領域内に配設された第1熱源素子12およびリング部202の右領域内に配設された第1熱源素子12と、スポーク部204の下方向に延びる端部内に配設された第2熱源素子14とを熱的に連結するように、素子間熱伝導部材16が配設されている。ここで、第2熱源素子14は、その第1面14aがスポーク部204に向くように第2熱源素子14に配設されており、第1面14aと素子間熱伝導部材16とが熱伝達可能に連結されている。第2熱源素子14の第2面14bには放熱部材としてのヒートシンク22が設けられている。スポーク部204において、素子間熱伝導部材16の表面は断熱シート210に覆われている。
【0031】
制御部20は、たとえば、車両の備える図示しないECU(Electronic Control Unit)内に設けられている。
【0032】
このような構成において、たとえば、リング部202を冷却する場合には、制御部20は第1熱源素子12の第2面12bが吸熱するように制御する。リング部202の熱は、その多くが対象物側熱伝導部材18に吸収され、対象物側熱伝導部材18の空洞部18aに封入されている熱輸送用流体を蒸気化し、第1熱源素子12側に移動する。リング部202の熱は、対象物側熱伝導部材18を介して、あるいは直接、第1熱源素子12の第2面12bから第1熱源素子12内に吸収される。
【0033】
第2面12bから吸収された熱は、第1熱源素子12の第1面12aから素子間熱伝導部材16に放出され、素子間熱伝導部材16の空洞部16a内に封入されている熱輸送用流体を蒸気化し、第2熱源素子14側に移動する。素子間熱伝導部材16内を移動してきた熱は、第2熱源素子14の第1面14aから第2熱源素子14内に吸収され、第2熱源素子14内を移動して第2面14bから放出される。第2熱源素子14の第2面14bから放出された熱は、ヒートシンク22を介して放出される。
【0034】
続いて、温度調節装置10の制御部20による温度調節制御フローについて説明する。図4は、制御部20による温度調節制御を示すフローチャートである。
【0035】
まず、制御部20は、運転者からの温度調節開始指示があったか判断する(ステップ401:以下S401と略記する。他のステップも同様)。運転者は、たとえば、車両に設けられた温度調節開始スイッチのON/OFFによってステアリングホイール200の温度調節の開始・終了を指示することができ、また、設定温度スイッチによってステアリングホイール200の調節温度を変更することが可能である。運転者からの温度調節開始指示がない場合(S401のNo)、制御部20は、運転者からの温度調節開始指示の有無判断を繰り返す。
【0036】
運転者からの温度調節開始指示があった場合(S401のYes)、制御部20は、第1熱源素子12および第2熱源素子14への通電を開始する(S402)。この際、制御部20は、第1熱源素子12の第1面12aと第2熱源素子14の第1面14aとが異なる吸熱・放熱動作を行うように、第1熱源素子12および第2熱源素子14に通電する。第1熱源素子12および第2熱源素子14に流す電流量は、たとえば直前に実行した温度調節制御フローにおいて運転者が設定温度スイッチによって設定した温度に応じて決定される。
【0037】
続いて、運転者からの温度調節終了指示があったか判断する(S403)。温度調節終了指示がない場合(S403のNo)、制御部20は、運転者からの設定温度変更指示があったか判断する(S405)。温度設定変更指示があった場合(S405のYes)、制御部20は、第1熱源素子12および第2熱源素子14に流す電流量を、変更後の設定温度に応じた電流量に変更する(S406)。
【0038】
第1熱源素子12および第2熱源素子14に流す電流量の変更後、あるいは設定温度変更指示がない場合(S405のNo)、制御部20は、運転者からの温度調節終了指示の有無を判断する(S403)。温度調節終了指示があった場合(S403のYes)、制御部20は、第1熱源素子12および第2熱源素子14への通電を終了し(S404)、本制御フローを終了する。
【0039】
以上の構成によって得られる効果は以下のとおりである。すなわち、本実施形態に係る温度調節装置10では、第1熱源素子12の第1面12aと第2熱源素子14の第1面12aとを素子間熱伝導部材16によって熱的に連結している。また、第1熱源素子12の第1面12aと第2熱源素子14の第1面14aとで吸熱・放熱を逆制御している。そのため、第1熱源素子12の放出した熱を第2熱源素子14が吸収することで、第1熱源素子12における高効率の熱交換が可能となり、第1熱源素子12の温度上昇を抑えることができる。その結果、第1熱源素子12による冷却・加熱性能の低下を抑えることができるため、長時間継続的な温度調節が可能となる。
【0040】
また、第1熱源素子12での高効率の熱交換が可能となるため、より短時間での温度調節が可能となる。また、これにより、温度調節対象物100に設けるペルチェ素子の個数を減らすことができ、製造コストも低減できる。さらに、第1熱源素子12自体が高温になることで起こる第1熱源素子12の故障も防ぐことができる。
【0041】
(実施形態2)
実施形態2では、温度調節装置10が温度調節対象物100の温度を検知する温度検知センサを備え、制御部20が温度検知センサの検知結果に基づいて温度調節を制御する点が実施形態1と異なる。なお、温度調節装置10のその他の構成、ステアリングホイール200の構成などは実施形態1と基本的に同一であり、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0042】
図5は、実施形態2に係る温度調節装置10の構成を示すブロック図である。なお、図中太線は各構成要素が熱的に連結されていることを示している。
温度調節装置10は、温度検知センサ24、26を備えている。温度検知センサ24、26は、温度調節対象物100の温度を検知し、制御部20に検知結果を送信する。制御部20は、温度検知センサ24、26からの検知結果に基づいて、第1熱源素子12および第2熱源素子14への通電を制御する。たとえば、制御部20は、温度検知センサ24あるいは温度検知センサ26のどちらか一方の検知結果が予め定められた所定の温度範囲から外れた場合に、第1熱源素子12および第2熱源素子14の吸放熱制御を行う。なお、温度検知センサの数は特に限定されない。
【0043】
次に、実施形態2に係る温度調節装置10をステアリングホイール200に適用した場合を説明する。図6はステアリングホイール200の概略平面図である。
図6に示すように、ステアリングホイール200のリング部202に、温度検知センサ24、26が設けられている。ここで、温度検知センサ24はリング部202の上部領域に、温度検知センサ26はリング部202の下部領域に、それぞれ設けられている。車両の操舵軸に取り付けられたステアリングホイール200は、車両の前輪の転舵角量がゼロの状態では、ステアリングホイール200の上部領域が上側に、下部領域が下側にある基準状態にある。通常、ステアリングホイール200はこの基準状態にあることが多い。そのため、ステアリングホイール200の上部領域は日光の照射などにより最も高温になりやすく、相対的に下部領域は最も低温になりやすい。そのため、温度検知センサ24、26を上部領域および下部領域に設けている。
【0044】
続いて、温度調節装置10の制御部20による温度調節制御フローについて説明する。図7は、制御部20による温度調節制御を示すフローチャートである。
図示しないイグニッションスイッチの投入などにより、制御部20は、図7に示す温度調節制御フローを開始する。
【0045】
まず、制御部20は、温度検知センサ24、26の検知結果から、リング部202の表面温度が予め設定された所定の温度範囲内にあるか判断する(S701)。リング部202の表面温度が所定の温度範囲内にあった場合(S701のYes)、制御部20は、本制御フローを終了する。リング部202の表面温度が所定の温度範囲内になかった場合(S701のNo)、制御部20は、第1熱源素子12および第2熱源素子14への通電を開始し(S702)、リング部202の温度を調節する。ここで、本実施形態では、温度検知センサ24、26の検知結果の少なくとも1つが所定の温度範囲内になければリング部202の温度調節制御を実行する。
【0046】
制御部20は、リング部202の表面温度が所定の温度範囲を下回っていた場合には、第1熱源素子12の第2面12bが放熱するように第1熱源素子12に電流を流す。また、リング部202の表面温度が所定の温度範囲を上回っていた場合には、第1熱源素子12の第2面12bが吸熱するように第1熱源素子12に電流を流す。第1熱源素子12および第2熱源素子14に流す電流量は、リング部202の表面温度が所定の温度範囲内となる量であり、たとえば温度検知センサ24、26によって検知された温度と所定の温度範囲の上限あるいは下限温度との差に応じて決定される。
【0047】
第1熱源素子12および第2熱源素子14への通電を開始した後、制御部20は、リング部202の表面温度が所定の温度範囲内にあるか判断する(S703)。リング部202の表面温度が所定の温度範囲内になかった場合(S703のNo)、制御部20は、第1熱源素子12および第2熱源素子14への通電状態を維持する。リング部202の表面温度が所定の温度範囲内にあった場合(S703のYes)、制御部20は、第1熱源素子12および第2熱源素子14への通電を終了し(S704)、本制御フローを終了する。
【0048】
以上、実施形態2に係る温度調節装置10によれば、実施形態1の効果に加えて以下の効果が得られる。すなわち、本実施形態の温度調節装置10では、制御部20が温度検知センサ24、26の検知結果に基づいて温度調節対象物100の温度を調節している。そのため、温度調節装置10をステアリングホイール200に適用した場合には、自動的にステアリングホイール200の温度調節を実行することができ、運転者による操作が不要となる。また、リング部202の表面温度が所定範囲内となった場合には自動的に温度調節制御が終了するため、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0049】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0050】
たとえば、車両が図示しないシートの温度調節を行うシートヒータを備えている場合には、ヒートシータの温度制御と連動して温度調節装置10によるステアリングホイール200の温度調節を実行するようにしてもよい。これによれば、シートヒータの温度制御機構とステアリングホイール200の温度制御機構とにおいて、その機構の一部を共有することができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態1に係る温度調節装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ステアリングホイールの概略平面図である。
【図3】図3(a)、(b)はステアリングホイールの概略部分断面図である。
【図4】制御部による温度調節制御を示すフローチャートである。
【図5】実施形態2に係る温度調節装置の構成を示すブロック図である。
【図6】ステアリングホイールの概略平面図である。
【図7】制御部による温度調節制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
10 温度調節装置、 12 第1熱源素子、 12a、14a 第1面、 12b、14b 第2面、 14 第2熱源素子、 16 素子間熱伝導部材、 16a、18a 空洞部、 18 対象物側熱伝導部材、 20 制御部、 22 ヒートシンク、 24、26 温度検知センサ、 100 温度調節対象物、 200 ステアリングホイール、 202 リング部、 204 スポーク部、 210 断熱シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節対象物の温度を調節する温度調節装置であって、
吸熱または放熱する第1面と、前記第1面が吸熱した場合に放熱し、前記第1面が放熱した場合に吸熱する第2面とを有する第1熱源素子および第2熱源素子と、
前記第1熱源素子の前記第1面と前記第2熱源素子の前記第1面とを熱伝達可能に連結する素子間熱伝導部材と、
前記第1熱源素子および前記第2熱源素子の吸放熱を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1熱源素子の前記第1面が吸熱した場合に前記第2熱源素子の前記第1面が放熱し、前記第1熱源素子の前記第1面が放熱した場合に前記第2熱源素子の前記第1面が吸熱するように制御し、
前記第1熱源素子の前記第2面の吸熱または放熱によって前記温度調節対象物の温度が調節されることを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
前記第1熱源素子の前記第2面と前記温度調節対象物とを熱伝達可能に連結する対象物側熱伝導部材を備え、
前記対象物側熱伝導部材を介して、前記第1熱源素子の前記第2面の吸熱または放熱による前記温度調節対象物の温度調節が行われることを特徴とする請求項1に記載の温度調節装置。
【請求項3】
前記温度調節対象物の温度を検知する温度検知センサを備え、
前記制御部は、前記温度検知センサの検知結果に基づいて、前記第1熱源素子および前記第2熱源素子の吸放熱を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の温度調節装置。
【請求項4】
前記第1熱源素子および前記第2熱源素子は、ペルチェ素子であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の温度調節装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温度調節装置を備えたことを特徴とするステアリングホイール。
【請求項6】
リング部と、
前記リング部の内径側に連結されたスポーク部と、
を備え、
前記温度調節対象物は、前記リング部であり、
前記素子間熱伝導部材は、前記スポーク部に設けられたことを特徴とする請求項5に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
前記リング部の上部領域と下部領域とに設けられ、前記リング部の温度を検知する温度検知センサを備え、
前記制御部は、前記温度検知センサの検知結果に基づいて、前記第1熱源素子および前記第2熱源素子の吸放熱を制御することを特徴とする請求項6に記載のステアリングホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−275947(P2009−275947A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125739(P2008−125739)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】