説明

温感皮膚化粧料

【課題】皮膚に接触させることにより十分な温感が得られ、経時安定性及び使用感にも優れ、特に、高温時における保管においても長期間の安定性を確保することが可能な温感作用を示す温感皮膚化粧料を提供すること。
【解決手段】本発明の温感皮膚化粧料は、皮膚に接触させることにより温感が生じる、クリーム状又はゲル状の化粧料であって、水和発熱性無機粉体、カチオン性高分子、油成分、非イオン性界面活性剤及び非水系媒体を含むことを特徴とする。該非水系の温感皮膚化粧料は、クリーム状の基礎化粧料、スキンケア料、洗顔料等に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に塗布した際に、優れた使用感と適度な温感が得られ、保管時の耐久性に優れる、スキンケアクリーム、洗顔料等の温感皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料に発熱作用を付与すると、温感に基づく良好な使用感、血行促進効果、洗浄作用向上、薬効促進等の効果が期待できる。このため、従来より温感を有する化粧料が種々提案されている。
特許文献1には、水と接触して発熱する多価アルコール類と、トウガラシチンキやカンフル等の皮膚刺激剤とを併用する方法が提案されている。
しかし、多価アルコール類の水和反応熱のみを利用した上記方法では、発熱量が不十分であった。
そこで、特許文献2等において、ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル等の水と反応して発熱する水和発熱性無機粉体を、非水系媒体と組合わせた化粧料が提案されている。
また、このような無機粉体を、非水系媒体中で安定化させる技術として、例えば、特許文献3には、高分子化合物等の増粘剤を利用して系の粘度を調整して安定化させる技術が提案されている。
しかし、この文献に挙げられる技術では、安定性が十分とは言えない。そこで、特許文献4には、安定性を更に向上させるために、カルボキシビニルポリマー及び/又は脂肪酸石鹸を配合する技術が提案されている。
該特許文献4に記載された技術の利用により、製品を市販可能な程度に安定化することが可能になった。しかし、この技術を利用した製品も、50℃程度の高温下における安定性が、必ずしも十分ではなく、更なる安定化技術の開発が望まれている。
また、化粧料の使用感を更に向上させるために、通常、油成分の配合が望まれる。しかし、特許文献3及び4に記載された高分子化合物等の増粘剤と、油成分と、油成分の通常の乳化剤として使用される非イオン性界面活性剤とを用いても、上記高温下における安定性が悪化する傾向にある。
【特許文献1】特開昭58−113113号公報
【特許文献2】米国特許第3250680号明細書
【特許文献3】特開平11−309365号公報
【特許文献4】特開2005−89365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、皮膚に接触させることにより十分な温感が得られ、経時安定性及び使用感にも優れ、特に、高温時における保管においても長期間の安定性を確保することが可能な温感作用を示す温感皮膚化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記特許文献3及び4に記載された非水系の温感化粧料における増粘剤に代えて、カチオン性高分子と、油成分と、非イオン性界面活性剤とを組合わせて配合することにより、温感作用を保持し、使用感及び高温安定性を改善しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明によれば、皮膚に接触させることにより温感が生じる、クリーム状又はゲル状の化粧料であって、水和発熱性無機粉体、カチオン性高分子、油成分、非イオン性界面活性剤及び非水系媒体を含む、非水系の温感皮膚化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明の温感皮膚化粧料は、水和発熱性無機粉体、カチオン性高分子、油成分、非イオン性界面活性剤及び非水系媒体を含み、非水系のクリーム状又はゲル状の形態を有するので、皮膚に塗布することにより、良好な使用感及び温感を与えることができる。しかも、従来の温感作用を有する化粧料に比して、50℃程度の高温下においても、水和発熱性無機粉体の沈降や製剤の液分離を長期間にわたり抑制し、優れた安定性を示すことができる。
従って、本発明の温感皮膚化粧料は、例えば、クリーム状の基礎化粧料、スキンケア料、洗顔料等の各種化粧料に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の温感皮膚化粧料は、例えば、皮膚に塗布し、マッサージ等して皮膚に接触させることにより、含有される水和発熱性無機粉体が、皮膚等における水分と水和し、十分な温感を示す。温感皮膚化粧料の粘度は、水和発熱性無機粉体の製剤中における沈降等を防止し、使用感の悪化を抑制するために、通常、200000mPa・s〜500000mPa・s程度が好ましい。
本発明の温感皮膚化粧料において非水系は、使用される各成分に不可避的に含まれる微量な水分までをも排除する意ではなく、通常、温感皮膚化粧料中に1質量%未満、特に0.1質量%以下、更には0.01質量%以下の水を含む場合であっても本発明における非水系の範囲に含まれる。
【0007】
本発明に用いる水和発熱性無機粉体としては、例えば、活性化ゼオライト(M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O:Mは金属イオン、nは原子価、x、yは任意の定数を示す)、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、明礬、無水ケイ酸、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はこれらの混合物からなる群より選択される無機粉体が挙げられ、特に、活性化ゼオライトの使用が好ましい。
前記活性化ゼオライトは、pH10以下、好ましくはpH8.0〜10.0に調整されたゼオライトであって、例えば、ゼオライトをイオン交換樹脂により処理したり、酸により中和処理する方法等により得ることができる。また、市販品を用いることもでき、例えば、商品名「ゼオラムA−4 LPH」(東ソー(株)製)等が挙げられる。
活性化ゼオライトのpHが10を超える場合には、経時的に変色が生じるのを抑制できない恐れがある。ここで、活性化ゼオライトのpHは、活性化ゼオライトに20倍量の水を加えて混合して測定した値を意味する。
活性化ゼオライトの粒径は、目的の温感皮膚化粧料の種類やその粘度等に応じて適宜選択できるが、通常、使用感や発熱性を良好にするために、50μm以下が好ましい。
水和発熱性無機粉体の配合割合は、目的の温感皮膚化粧料の種類等に応じて適宜選択することができる。十分な温感が得られ、使用感を悪化させないために、温感皮膚化粧料全量に対して、通常5〜40質量%、特に5〜30質量%が好ましい。
【0008】
本発明に用いるカチオン性高分子は、上記水和発熱性無機粉体の製剤中における安定性、特に、高温下における安定性を長期間保持し、且つ製剤の使用感の改善に寄与する成分であって、例えば、4級アミノ基を有する化粧料や医療原料等に既に市販されているポリクオタニウムや、天然物由来のカチオン性高分子を挙げることができる。
ポリクオタニウムとしては、例えば、ポリクオタニウム−5、ポリクオタニウム−6、ポリクオタニウム−7、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−16、ポリクオタニウム−22、ポリクオタニウム−28、ポリクオタニウム−32、ポリクオタニウム−33、ポリクオタニウム−37、ポリクオタニウム−39、ポリクオタニウム−43、ポリクオタニウム−44、ポリクオタニウム−46、ポリクオタニウム−47、ポリクオタニウム−49、ポリクオタニウム−51、ポリクオタニウム−52、ポリクオタニウム−53、ポリクオタニウム−55、ポリクオタニウム−57、ポリクオタニウム−61、ポリクオタニウム−64、ポリクオタニウム−65、ポリクオタニウム−68又はこれら2種以上の混合物が好適に挙げられる。
天然物由来のカチオン性高分子としては、例えば、塩化o−(2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル)ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン化セルロース;塩化o−(2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル)グァーガム等のカチオン化グァーガム;デキストラン塩化ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムエーテル等のカチオン化デキストラン;カエサルピニアスピノサヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド等のカチオン化タラガム又はこれら2種以上の混合物が好適に挙げられる。
カチオン性高分子の配合割合は、目的の温感皮膚化粧料の種類等に応じて適宜選択することができる。水和発熱性無機粉体の製剤中における安定性、特に、高温下における安定性を長期間保持し、且つ製剤の使用感の改善を十分なものにするために、温感皮膚化粧料全量に対して、通常0.1〜5.0質量%、好ましくは0.3〜3.0質量%である。
【0009】
本発明に用いる油成分は、温感皮膚化粧料の使用感を向上させるのに寄与する成分であって、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン等の炭化水素系の液状油;サフラワー油、大豆油、月見草油、ブドウ種子油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、アルモンド油、ゴマ油、コムギ胚芽油、トウモロコシ油、綿実油、アボガド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ヒマシ油、ラッカセイ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ホホバ油等の植物性液状油;2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸2−ヘキシデシル、ミリスチン酸イソステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、炭酸ジアルキル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリン、ジ(カプリル/カプリン酸)プロピレングリコール等のエステル油又はこれら2種以上の混合物が挙げられる。
油成分の配合割合は、目的の温感皮膚化粧料の種類等に応じて適宜選択することができる。温感皮膚化粧料の使用感及び安定性の点で、温感皮膚化粧料全量に対して、通常0.2〜5.0質量%、好ましくは0.3〜3.0質量%が好ましい。
【0010】
本発明に用いる非イオン性界面活性剤は、前記油成分等の分散性を良好にする作用を示す成分であって、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸ポリグリセリル又はこれら2種以上の混合物が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の配合割合は、目的の温感皮膚化粧料の種類や上記油成分の含有割合等に応じて適宜選択することができる。使用感や安定性の点で、温感皮膚化粧料全量に対して、通常0.05〜1.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%である。特に、上記油成分100質量部に対して、20〜30質量部が好ましい。
【0011】
本発明に用いる非水系媒体としては、各成分を溶解又は分散しうる非水系の媒体であれば良く、水和によって発熱する多価アルコール等が挙げられる。具体的には例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール又はこれら2種以上の混合物が好ましく挙げられる。混合物としては、例えば、ポリエチレングリコール及び1,3−ブチレングリコールを含み、且つグリセリン、プロピレングリコール又は3−メチル−1,3−ブタンジオールの少なくとも1種を含む混合物が挙げられる。
非水系媒体の配合割合は、各成分や非水系媒体の種類に応じて、温感皮膚化粧料の粘度が、上述の200000mPa・s〜500000mPa・s程度となるように適宜選択できるが、温感皮膚化粧料全量に対して、通常58〜93質量%、好ましくは68〜92質量%である。
【0012】
本発明の温感皮膚化粧料には、上記各成分の他に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常使用しうる他の成分を適宜組み合わせて配合することができる。
他の成分としては、製剤安定化作用及び使用感改良作用を示す、前記発熱性無機粉体以外の無機粉体、例えば、シリカ、タルク、カオリン、セリサイト、クレー、シリコン、シリコン樹脂、セラミック化雲母又はこれらの2種以上の混合物を含有させることができる。また、温感を更に向上させるために、例えば、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、カンフル、ノナン酸バニリルアミド、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、ニコチン酸ベンジル又はこれらの2種以上の混合物等の皮膚刺激剤を含有させることができる。
他の成分として、上記以外に、例えば、保湿剤、上記以外の他の界面活性剤、酸化防止剤、植物エキス、防腐剤、油脂類、アルコール、殺菌剤、香料、色素、顔料、プロテアーゼ、リパーゼ、塩化リゾチーム、パパイン、パンクレアチン等の酵素を含有させることもできる。
他の成分を含有させる場合の配合割合は、その種類や目的に応じて適宜選択することができる。温感皮膚化粧料全量基準で、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。
【0013】
本発明の温感皮膚化粧料は、その種類に応じて、公知の方法に準拠して製造することができる。各成分の分散性等を良好にするために、本発明に用いる上述のカチオン性高分子、油成分及び非イオン性界面活性剤は、他の成分と混合する前に、予め均質混合しておくことが好ましい。上述のカチオン性高分子、油成分及び非イオン性界面活性剤を予め混合した市販品を用いることもできる。該市販品としては、例えば、商品名「Salcare SC96」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が好適に挙げられる。
【実施例】
【0014】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1〜4及び比較例1〜4
表1に示す各成分を常法により混合調製し、スキンケアクリームを製造した。尚、活性化ゼオライトは、商品名「ゼオラムA−4 LPH」(東ソー(株)製)を使用した。また、ポリクオタニウム−37、ジ(カプリル/カプリン酸)PG(プロピレングリコールの略)及びポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(1)トリデシルエーテルは、他の成分と混合する前に予め混合し乳化させてから使用した。得られた各スキンケアクリームを用いて以下に示す各種評価を行った。結果を表1に示す。
<温感評価>
得られたスキンケアクリームを、5人のパネルにより、手の甲に塗布しマッサージしてもらった後に評価した。評価は、非常に温感があるを5点、温感があるを3点、温感がないを1点とし、5人の平均点で評価した。
<使用感評価>
得られたスキンケアクリームを、5人のパネルにより、手の甲に塗布してマッサージしてもらった後に評価した。評価は、使用感が良いを5点、使用感が普通を3点、使用感が悪いを1点とし、5人の平均点で評価した。
<高温安定性評価>
得られたスキンケアクリームを、ポリエチレン製のチューブに充填し、50℃の恒温室で4週間放置した後に評価した。評価は、放置前後において粘度変化が無く、分離が生じていないものを○、粘度が低下し、わずかに分離したものを△、粘度が著しく低下し、分離したものを×とした。
【0015】
【表1】

【0016】
実施例5〜8及び比較例5〜8
表2に示す各成分を常法により混合調製し、ゲル状の洗浄料を製造した。尚、活性化ゼオライトは、商品名「ゼオラムA−4 LPH」(東ソー(株)製)を使用した。また、ポリクオタニウム−37、ジ(カプリル/カプリン酸)PG及びポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(1)トリデシルエーテルは、他の成分と混合する前に予め混合し乳化させてから使用した。得られた各洗浄料を用いて以下に示す各種評価を行った。結果を表2に示す。
<温感評価>
得られた洗浄料を、5人のパネルにより、手の甲に塗布しマッサージしてもらった後に評価した。評価は、非常に温感があるを5点、温感があるを3点、温感がないを1点とし、5人の平均点で評価した。
<使用感評価>
得られた洗浄料を、5人のパネルにより、手の甲に塗布してマッサージしてもらい、その後水で洗浄した後に評価した。評価は、使用感が良いを5点、使用感が普通を3点、使用感が悪いを1点とし、5人の平均点で評価した。
<高温安定性評価>
得られたスキンケアクリームを、ポリエチレン製のチューブに充填し、50℃の恒温室で4週間放置した後に評価した。評価は、放置前後において粘度変化が無く、分離が生じていないものを○、粘度が低下し、わずかに分離したものを△、粘度が著しく低下し、分離したものを×とした。
【0017】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に接触させることにより温感が生じる、クリーム状又はゲル状の化粧料であって、
水和発熱性無機粉体、カチオン性高分子、油成分、非イオン性界面活性剤及び非水系媒体を含む、非水系の温感皮膚化粧料。
【請求項2】
水和発熱性無機粉体が活性化ゼオライトを含み、カチオン性高分子がポリクオタニウムを含む請求項1記載の温感皮膚化粧料。
【請求項3】
非水系媒体が、多価アルコールを含む請求項1又は2記載の温感皮膚化粧料。
【請求項4】
温感皮膚化粧料全量基準における、水和発熱性無機粉体の配合割合が5〜40質量%、カチオン性高分子の配合割合が0.1〜5.0質量%、油成分の含有割合が0.2〜5.0質量%、非イオン性界面活性剤の含有割合が0.05〜1.0質量%及び非水系媒体の配合割合が58〜93質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の温感皮膚化粧料。

【公開番号】特開2009−67721(P2009−67721A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237445(P2007−237445)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(591267785)関西酵素株式会社 (5)
【Fターム(参考)】