説明

温水装置

【課題】オーバフロー水の排水処理を簡易な手段によって合理的に行なうことができる温水装置を提供する。
【解決手段】熱交換器を利用した熱回収に伴って発生したドレインを貯留可能なドレイン貯留部3と、ドレイン貯留部3内のドレインをドレイン用配管6を介して所定の排水箇所に送り出すドレイン用ポンプP3と、湯水流路内を流通する湯水または湯水タンク85内の湯水の一部をオーバフロー水として排出するオーバフロー部85aと、を備えている、温水装置WHであって、オーバフロー部85aからのオーバフロー水をドレイン貯留部3に流入可能とする配管部87を備えており、ドレイン貯留部3に流入したオーバフロー水は、ドレイン用ポンプP3の駆動によりドレイン用配管6を介して前記所定の排水箇所に送り出すことが可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用媒体から熱交換器を利用して熱回収を行なうことにより湯水加熱を行なう温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の温水装置の一例として、特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された温水装置は、燃焼器により発生された燃焼ガスから熱交換器を利用して顕熱および潜熱を回収し、給湯用および暖房用の湯水加熱を行なうことが可能に構成されている。燃焼ガスから潜熱回収を行なうと、酸性のドレインが発生するが、このドレインは、中和処理槽を利用して中和処理されてからドレイン用配管を利用して温水装置の外部に導かれ、たとえば浴室の排水口などに排出されるように構成されている。一方、前記温水装置には、前記温水装置に配管接続される暖房装置との間で湯水(不凍液などを含む)を循環流通させるための暖房用配管部が設けられている。この暖房用配管部については、その内部からエア抜きを行なわせて湯水を適宜補充できるようにすることが望ましく、そのための手段として、湯水タンクが設けられている。
【0003】
しかしながら、前記したような温水装置においては、次に述べるように、改善すべき点があった。
【0004】
すなわち、暖房用配管部の湯水タンクには、この湯水タンクからのオーバフロー水を温水装置の外部に導いて排出するための配管部を設ける必要がある(ただし、このような配管については、特許文献1には記載されていない)。前記した配管部を設ける場合、オーバフロー水が温水装置の設置箇所周辺に垂れ流しされるように設定することは、環境衛生の悪化を招くことや、その他の種々の理由から避けたい場合が多い。また、前記配管部をオーバフロー水の排水に好ましい場所まで延ばすことも考えられるが、そのような場所が温水装置の近くに存在しない場合には、前記配管部を長くしなければならず、その施工作業が面倒になるなどの不具合を生じる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−112763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、オーバフロー水の排水処理を簡易な手段によって合理的に行なうことができる温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される温水装置は、加熱用媒体から熱回収を行なうことにより湯水加熱を行なうための熱交換器と、前記熱回収に伴って発生したドレインを貯留可能なドレイン貯留部と、このドレイン貯留部内の水位が所定量に達したときに駆動を開始し、前記ドレイン貯留部内のドレインをドレイン用配管を介して所定の排水箇所に送り出すドレイン用ポンプと、湯水流路内を流通する湯水または湯水タンク内の湯水の一部をオーバフロー水として前記湯水流路または湯水タンクの外部に排出可能なオーバフロー部と、を備えている、温水装置であって、前記オーバフロー部を前記ドレイン貯留部または前記ドレイン貯留部よりも上流部分に接続し、かつ前記オーバフロー部から排出されたオーバフロー水を前記ドレイン貯留部に流入可能とする配管部を備えており、前記ドレイン貯留部に流入したオーバフロー水は、前記ドレイン用ポンプの駆動により前記ドレイン用配管を介して前記所定の排水箇所に送り出すことが可能とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、湯水流路または湯水タンクからのオーバフロー水は、ドレイン貯留部に流入した後に、ドレイン用配管を介して所定の排水箇所に送り出される。したがって、温水装置の外部に、オーバフロー水排出用の配管を別途設ける必要がなくなり、温水装置を設置する際の配管施工作業が容易化される。また、オーバフロー水を所定の排水箇所に送り出す動作は、ドレイン用ポンプを利用して行なわれているために、オーバフロー水排出用のポンプも不要となる。さらに、オーバフロー水とドレインとは、同一箇所に排出されるために、これらの排出が集約され、合理的かつ衛生的な排水処理が可能となる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、浴槽への湯張り給湯および風呂追い焚き動作の少なくとも一方を行なうための風呂配管に、前記ドレイン用配管が差し込まれた二重管構造部を備えている。
【0011】
このような構成によれば、たとえば温水装置と浴室の排水口との間にドレイン用配管を施工する作業が、風呂配管の施工と同時に簡易に行なうことが可能となる。また、前記した二重管構造部を採用すれば、ドレイン用配管を風呂配管の外部に沿わせる場合と比較すると、これらの配管の全体が大きく嵩張ることが抑制され、それらの配管の占有スペースを小さくすることができる。また、風呂配管やドレイン用配管を屋外から浴室内に引き込むための浴室外壁に設けられる穴の開口面積も小さくすることができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ドレイン用ポンプは、第1および第2の運転モードのいずれかに切り換え設定可能であり、前記ドレイン用ポンプを駆動制御するための前記ドレイン貯留部における水位として、所定の高水位、中水位、および低水位が規定され、かつ前記低水位は、前記ドレイン用ポンプの駆動を停止させるための水位とされており、前記ドレイン用ポンプは、前記第1の運転モードに設定されているときには、前記ドレイン貯留部の水位が前記高水位になった時点で駆動を開始する一方、前記第2の運転モードに設定されているときには、前記ドレイン貯留部の水位が前記中水位になった時点で駆動を開始するように構成されている。
【0013】
このような構成によれば、ドレイン用ポンプを第1の運転モードに設定した際には、ドレイン貯留部に多くのドレインが貯留されてからこのドレインが排出されることとなり、ドレイン用ポンプの運転回数を少なくするのに好適となる。これに対し、ドレイン用ポンプを第2の運転モードに設定した際には、比較的少量のドレインが貯留された段階でドレインが排出されることとなる。したがって、加熱用媒体の発生手段として、燃焼器が用いられている場合に、この燃焼器の燃焼駆動が終了した後においても、ドレイン用ポンプが長時間にわたって運転されてその運転音がユーザに違和感を与えたり、耳障りになるといった不具合が解消される。
第2の運転モードは、とくに前記した二重管構造部が設けられた場合に好ましいものとなる。すなわち、二重管構造部は、風呂配管内にドレイン用配管を差し込んだ部分であるために、ドレイン用配管は小径になりがちである。ドレイン用配管が小径であると、単位時間当たりのドレイン排出流量が小さくなるために、第1の運転モードを設定した場合には、ドレイン用ポンプがかなりの長時間にわたって運転し続ける虞がある。これに対し、第2の運転モードを設定すれば、ドレイン用配管が小径であっても、燃焼器の燃焼駆動終了後にドレイン用ポンプが長時間にわたって運転されることは好適に防止される。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記加熱用媒体は、燃焼器により発生された燃焼ガスであり、前記第2の運転モードが設定されているときに、前記燃焼器の燃焼号数またはこれに対応するパラメータに基づいてドレインの発生量を演算するとともに、この演算値に基づいて前記ドレイン貯留部の水位が前記中水位に達したか否かを判断し、かつ前記中水位に達したものと判断したときに前記ドレイン用ポンプの駆動を開始させる制御を実行する制御手段を備えている。
【0015】
このような構成によれば、ドレイン貯留部における水位が前記中水位に達したか否かを判断するためのセンサが不要となる。水位検出用のセンサとしては、複数の電極を利用したものがあるが、前記構成を採用した場合には、中水位を検出するための電極を不要として、センサの小型化などを好適に図ることが可能である。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御手段は、前記第2の運転モードが設定されているときに、前記ドレイン用ポンプを駆動させたにも拘わらず、前記ドレイン貯留部の水位が低下せずに前記高水位以上となり、かつこの状態が所定時間以上継続したときには、前記燃焼器の燃焼号数を低下させる制御を実行するように構成されている。
【0017】
このような構成によれば、たとえばドレイン用ポンプを駆動させている際のドレイン排出量よりも、燃焼器が燃焼駆動することにより発生してドレイン貯留部に流入するドレイン量の方が多い場合に、ドレイン貯留部に流入するドレイン量を抑制することが可能となる。したがって、ドレイン貯留部からドレインがオーバフローする事態を回避するのに好適となる。前記した二重管構造部が設けられて、ドレイン用配管部の内径が小さくされていることに起因して、ドレイン用配管部を流通するドレインの時間当たりの流量が少なくされている場合には、ドレイン貯留部からドレインがオーバフローし易くなるために、このような場合に前記した構成は、とくに好ましいものとなる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ドレイン貯留部の上流に位置し、前記ドレインを中和するための中和剤が内部に設けられた中和処理槽を備えており、この中和処理槽または前記ドレイン貯留部の内部には湯水が供給可能とされて、この湯水供給によって、前記中和処理槽または前記ドレイン貯留部の内部、および前記中和処理槽または前記ドレイン貯留部よりも下流側のドレイン排水流路を洗浄可能とされている。
【0019】
このような構成によれば、ドレイン排水流路が洗浄され、中和剤の成分が析出してドレイン排出路内に詰まりなどが生じることを回避することができる。前記した二重管構造部が設けられて、ドレイン用配管が小径とされている場合には、詰まりを生じ易くなるために、このような場合にはとくに有意義である。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1および図2は、本発明が適用された温水装置の一例を示している。図1に示すように、本実施形態の温水装置WHは、給湯用および暖房用の温水装置本体部1A,1B、中和処理層2、ドレイン貯留部3、制御部4、外装ケース5、ドレイン用配管6、2本の風呂配管7A,7B、ならびにドレイン用配管6の一部が風呂配管7Aに差し込まれた二重管構造部Dを備えている。外装ケース5は、温水装置本体部1A,1B、中和処理槽2、ドレイン貯留部3、および制御部4などを囲み込んでおり、これらを保護している。制御部4は、本発明でいう制御手段の一例に相当する。
【0023】
給湯用の温水装置本体部1Aは、たとえば台所、洗面所、浴室などに供給される湯を生成するための部分である。暖房用の温水装置本体部1Bは、温水式床暖房装置などの暖房装置の熱媒としての湯水(不凍液なども含まれる)を加熱するための部分である。これら給湯用および暖房用の温水装置本体部1A,1Bは、ファン10a,10bによって燃焼用空気が送り込まれるケーシング11a,11b内に配置された燃焼器12a,12bと、この燃焼器12a,12bによって発生された燃焼ガスから顕熱および潜熱を回収可能な1次熱交換器13a,13bおよび2次熱交換器14a,14bとを具備している。
【0024】
給湯用の熱交換器13a,14aは、入水口80aおよび出湯口81aに配管部80,81を介して接続されている。外部から入水口80aに供給された水は、熱交換器14a,13aに導かれて加熱され、かつこの加熱により生成された湯水が出湯口81aに導かれて、この出湯口81aから台所などの所望位置に供給される。また、前記の湯水は、浴槽9への湯張りにも利用される。すなわち、配管部81と風呂配管7Bとは、補助配管部82を介して接続されており、補助配管部82に設けられている開閉弁V1を開くと、配管部81の湯水が風呂配管7Bに供給される。ただし、浴槽9への湯張り時には、風呂用ポンプP1が駆動される。このことにより、補助配管部82から風呂配管(風呂戻り管)7Bに到達した湯水は、風呂用ポンプP1を通過した後に風呂配管(風呂往き管)7A内を通って浴槽9に供給される。2本の風呂配管7A,7Bは、それぞれの一端が浴槽9に接続されて、一定の湯水循環流路を構成しており、風呂追い焚き動作を行なう場合には、風呂用ポンプP1が駆動して浴槽9の湯水が風呂配管7Bから風呂用ポンプP1に汲み上げられてから熱交換器HEにより加熱され、その後に風呂配管7Aを通って浴槽9に戻される。熱交換器HEにおいて、浴槽9から汲み上げられた湯水を加熱するための媒体としては、たとえば暖房用の温水装置本体部1Bにおいて加熱された湯水が利用される。
【0025】
暖房用の熱交換器13b,14bは、入水口83aおよび出湯口84aに配管部83,84を介して接続されており、暖房装置から入水口83aに戻された湯水が熱交換器14b,13bによって加熱された後に、出湯口84aから前記暖房装置に向けて再度供給されるようになっている。
【0026】
暖房用の熱交換器13b,14bどうしの間には、暖房湯水タンク85およびポンプP2を有する配管部86が設けられている。これらは、配管部83,84などの暖房装置用の配管内に湯水を補充しつつ、この湯水を循環させるためものである。暖房湯水タンク85は、液面センサ(図示略)を備え、かつ配管部80に分岐接続された給水用配管部80bからの給水が可能とされていることにより、このタンク85内には常に一定量以上の湯水が存在するように制御される。この暖房湯水タンク85には、このタンクの外部にオーバフロー水を排出するためのオーバフロー部85aが設けられている。このオーバフロー部85aには、このオーバフロー部85aをドレイン貯留部3の流入口31に接続することによって、オーバフロー水をドレイン貯留部3内に導くための配管部87が接続されている。
【0027】
中和処理槽2は、熱交換器14a,14bによって燃焼ガスから潜熱回収を行なった際に発生する酸性のドレインを中和するためのものであり、合成樹脂製の容器20内に粒状の炭酸カルシウムなどの中和剤21が収容された構成である。熱交換器14a,14bの表面に発生したドレインは、その下方に設けられたドレイン受け部15によって受けられてから、配管部88を介して中和処理槽2に導入され、中和剤21との接触により中和された後に排出口22から排出される。
【0028】
ドレイン貯留部3は、中和処理槽2の排出口22から排出されるドレインを一時的に貯留させるための部分である。後述するように、ドレイン貯留部3は、中和処理槽2と一体化された構成とすることが可能である。図2によく表われているように、ドレイン貯留部3には、ドレイン用の流入口30、既述したオーバフロー水用の流入口31、および流出口32に加え、水位検出器33が設けられている。また、流出口32には、ドレイン用ポンプP3を備えたドレイン用配管6が接続されている。
【0029】
水位検出器33は、グランド電極33aと正電圧が印加される2本の電極33b,33cを備えており、これらの電極33a〜33cがドレイン中に浸漬して電気的な導通状態にあるか否かに基づいてドレインの水位を検出可能とされている。この水位検出器33においては、所定の低水位LLおよび高水位LHを検出可能である。ドレイン用ポンプP3のオン・オフは、水位検出器33によって検出される水位に基づき、制御部4によって制御される。本実施形態では、後述するように、低水位LLと高水位LHとの中間水位である所定の中水位LMも、ドレイン用ポンプP3の駆動制御に利用されるが、この中水位LMは、制御部4によって演算される。
【0030】
ドレイン貯留部3内には、オーバフロー水やドレインに加えて、加熱または非加熱の湯水を流入させることが可能とされている。具体的には、ドレイン用の流入口30にドレインを導く接続管88aには、開閉弁V2を有する湯水供給管89が接続されている。この湯水供給管89は、たとえば補助配管部82に分岐接続されており(図1を参照)、開閉弁V1,V2が開かれたときに、加熱湯水をドレイン貯留部3内に供給する。このようなドレイン貯留部3内への湯水供給は、後述するように、ドレイン貯留部3内およびドレイン用配管6内を洗浄するのに役立つ。
【0031】
二重管構造部Dは、外装ケース5の外部において風呂配管7A内にドレイン用配管6が差し込まれた部分である。風呂配管7Aへのドレイン用配管6の差し込みは、たとえば風呂配管7Aの外装ケース5への取付用ジョイント70に設けられた孔部70aを利用して行なわれている。風呂配管7Aの終端には、浴槽9のアダプタ90への取付用ジョイント71が設けられており、このジョイント71に設けられた孔部71aからドレイン用配管6の終端6aが外部に引き出されている。ドレイン用配管6の終端6aは、たとえば浴室の床に設けられた浴槽湯水の排出口(図示略)にドレインを排出可能な配置とされる。
【0032】
制御部4は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、温水装置WHの各部の動作制御を実行する。この制御部4は、ドレイン用ポンプP3の運転モードとして、第1の運転モードと第2の運転モードとのいずれか一方を選択するためのモード選択スイッチを備えた操作部(図示略)を備えている。ただし、この操作部は、制御部4に接続されたリモートコントローラなど、制御部4以外の部分に設けられていてもよい。制御部4は、前記モード選択スイッチによって選択された運転モードに対応した態様で、ドレイン用ポンプP3を駆動制御するが、その詳細は後述する。
【0033】
次に、前記した温水装置WHの作用について説明する。
【0034】
まず、給湯用および暖房用の湯水加熱動作は、既述したように、燃焼器12a,12bを駆動させて発生させた燃焼ガスから熱交換器13a,13b,14a,14bにより熱回収を行なうことにより行なわれる。熱交換器14a,14bを利用した潜熱回収に伴って発生する酸性のドレインは、ドレイン受け部15から中和処理槽2に導かれて中和された後にドレイン貯留部3に流入する。ドレイン用ポンプP3は、ドレイン貯留部3におけるドレインの水位が所定の水位(高水位LHの場合と中水位LMの場合とがあり、この点は後述する)になると駆動を開始し、ドレインの水位が所定の低水位LLになると停止する動作を繰り返す。このようなドレイン用ポンプP3の駆動により、ドレイン貯留部3のドレインは、ドレイン用配管6の終端6a側に送り出され、浴室の排水口に排出される。
【0035】
外装ケース5の外部においては、風呂配管7A内にドレイン用配管6が差し込まれた二重管構造部Dが設けられているために、たとえばこのような二重管構造を採用することなく、2本の風呂配管7A,7Bの外部にドレイン用配管6を沿わせる場合と比較すると、それら複数の配管が大きく嵩張ることが抑制され、それらの占有スペースを小さくすることができる。また、前記した配管を屋外から浴室内に引き込むべく浴室の外壁に設けられる穴の開口面積も小さくすることができる。
【0036】
暖房湯水タンク85内の湯水がオーバフローした場合、このオーバフロー水は、配管部87を介してドレイン貯留部3内に流入し、ドレインと混合した状態で一時的に貯留される。ドレイン用ポンプP3は、厳密には、オーバフロー水とドレインとのトータルの水位が所定水位になった時点で駆動を開始する。したがって、このドレイン用ポンプP3の駆動により、オーバフロー水はドレインと一緒にドレイン用配管6内を通過して浴室の排水口に導かれて排出される。その結果、外装ケース5の外部に、ドレイン用配管6とは別個にオーバフロー水用の配管部を設ける必要はない。また、オーバフロー水を送り出すための専用のポンプを別途設ける必要もない。さらに、オーバフロー水およびドレインが、ともに浴室の排水口に排出されて、これらの排水が集約されれば、排水管理やその他の面において種々便利となる。
【0037】
次に、図3のフローチャートを参照しつつ、制御部4によるドレイン用ポンプP3の運転制御の一例について説明する。
【0038】
まず、制御部4は、前記したモード選択スイッチによって、ドレイン用ポンプP3の運転モードが第1および第2の運転モードのいずれに選択されているのかを確認する(S1)。第1の運転モードが選択されている場合(S2:NO)、制御部4は、ドレイン貯留部3の水位が所定の高水位LHになるとドレイン用ポンプP3を駆動させてドレイン排出を行なわせ、かつその後に前記水位が所定の低水位LLになった時点でドレイン用ポンプP3の駆動を停止させる(S12:YES,S13,S14:YES,S15)。第1の運転モードにおいては、前記した動作が繰り返されるが、ドレイン貯留部3に多くのドレインが貯留されるのを待ってからドレイン用ポンプP3が駆動されるために、ドレイン用ポンプP3の運転回数を少なくすることができる。
【0039】
前記とは異なり、第2の運転モードが選択されている場合(S2:YES)、制御部4は、燃焼器12a,12bの少なくとも一方が燃焼を開始すると、燃焼号数またはこれに対応するパラメータ(たとえば、燃料消費量)に基づき、ドレイン発生量を演算してその積算量を算出する処理を開始する(S3:YES,S4)。次いで、その積算量が所定の中水位LMに相当する値に達すると、その時点でドレイン用ポンプP3を駆動させてドレイン排出を行なわせる(S5:YES,S6)。その後、ドレイン貯留部3の水位が低下すると、ドレイン用ポンプP3の駆動が停止され、かつドレインの積算量がリセットされる(S7:YES,S8,S9)。このリセットの時点において、燃焼器12a,12bの燃焼駆動が終了してる場合には、ドレイン発生量およびこれを積算していく演算処理を中止する(S10:YES,S11)。未だ終了していない場合には、制御部4は、前記した動作処理を繰り返す(S10:NO,S4)。
【0040】
前記した第2の運転モードでは、ドレイン貯留部3に多くのドレインが貯留する以前にドレイン用ポンプP3が駆動を開始するために、ドレイン用ポンプP3が連続運転する時間が短くなる。したがって、燃焼器12a,12bの燃焼駆動が停止した後においても、ドレイン用ポンプP3が長時間にわたって運転することが防止される。燃焼駆動停止後にドレイン用ポンプP3が長時間にわたって運転されたのでは、ユーザに違和感などを与える虞があるが、前記した第2の運転モードでは、そのようなことを解消することができる。また、ドレイン水位が中水位LMに達する量であるか否かは、制御部4の演算により求められているために、水位検出器33に中水位LM検出用の電極を設ける必要がなく、水位検出器33の構造の簡素化ならびに小型化を図ることができる。もちろん、中水位LMに加えて、ドレイン水位が高水位LHに達する量であるか否かについても、演算によって求め、高水位LH用の電極33cを省略した構成とすることもできる。
【0041】
二重管構造部Dは、風呂配管7Aにドレイン用配管6を差し込んでいるために、ドレイン用配管6が小径とされて、単位時間当たりのドレイン排出流量が少なくなる場合がある。この場合、ドレイン貯留部3に貯留されているドレインを排出するのに時間を要することとなって、燃焼器12a,12bの駆動停止後においてもドレイン用ポンプP3を長時間運転させなければならなくなる可能性が高い。これに対し、前記した第2の運転モードを選択しておけば、そのようなことを好適に回避することができる。なお、第2の運転モードを選択した場合には、ドレイン用ポンプP3が運転される頻度が高くなるが、ドレイン用ポンプP3が運転されるのは、燃焼器12a,12bが燃焼駆動してその燃焼音が発生している場合が殆どであるから、ドレイン用ポンプP3の運転音がユーザに聴こえ難くすることが可能である。
【0042】
一方、第2の運転モード時において、ドレイン用ポンプP3を駆動させてもドレイン貯留部3の水位が低下せず、逆に水位が上昇して高水位LHに達する場合がある(S7:NO,S16:YES)。このような現象は、ドレイン用配管6が小径であって、ドレイン排出量よりもドレイン発生量の方が多い場合、あるいはドレイン用配管6に詰まりが生じている場合に生じ得る。制御部4は、水位が高水位LHのまま所定時間経過したときには、その時点で燃焼器12a,12bの燃焼量(燃焼号数)を減少させる(S18)。この動作により、ドレイン発生量が減少することとなる。その後、水位が低水位LLまで下降した場合には、とくに異常は無いと考えられるため、ドレイン用ポンプP3の運転を停止させて、先に述べた第2の運転モードの動作が継続される(S19:YES,SS8)。
【0043】
前記とは異なり、燃焼号数を減少させたにも拘わらず、水位が低水位LLまで下降せず、所定時間が経過した場合には(S18,S19:NO,S20)、ドレイン用配管6に詰まりを生じているなどの異常が発生している可能性が高い。したがって、この場合には、制御部4はエラーであると判断し、燃焼器12a,12bの駆動を強制終了させる(S21)。このことにより、ドレイン貯留部3からドレインがオーバフローするといった事態を好適に回避することができる。温水装置WHには、表示画面やアラームを備えたリモートコントローラ(図示略)が具備されており、好ましくは、制御部4は、前記した強制終了を行なった際には、異常の旨を画面表示させたり、あるいはアラーム音を発生させるなどしてユーザに報知する処理を行なう。
【0044】
図3のフローチャートには示されていないが、制御部4は、配管部89からドレイン貯留部3内への給湯動作も制御する。この給湯動作は、たとえば予め設定された一定時間が経過する都度、燃焼器12aを駆動させ、かつ開閉弁V1,V2を所定時間だけ開くことにより行なわれる。また、このような動作に代えて、開閉弁V1が開かれる浴槽9への湯張り動作時に開閉弁V2を所定時間開くことにより行なわせることもできる。ドレイン貯留部3に湯水が供給されると、ドレイン排出の場合と同様に、水位が高水位LHまたは中水位LMになった時点でドレイン用ポンプP3が駆動を開始し、ドレイン用配管6内に流出していく。このような動作により、ドレイン貯留部3およびドレイン用配管6の内部を洗浄することができる。中和処理槽2からドレイン貯留部3に流入するドレインは、中和剤21の成分を含んでいる場合があるが、前記した洗浄を行なえば、前記成分を洗い流すことができ、前記成分がドレイン用配管6内において析出して詰まりの原因となることが防止される。なお、ドレイン貯留部3およびドレイン用配管6内の洗浄には、非加熱の水よりも加熱された湯水の方が好ましいものの、非加熱の水を用いても洗浄効果は得られる。したがって、配管部89は、加熱された湯水が流通する配管部(本実施形態では、補助配管部82)に代えて、非加熱の湯水が流通する配管部に接続された構成とすることもできる。
【0045】
図4〜図6は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0046】
図4に示す実施形態においては、オーバフロー水をガイドする配管部87の一端が、ドレイン導入用の配管部88に接続され、暖房湯水タンク85からのオーバフロー水が中和処理槽2に流入するように構成されている。このような構成によれば、中和処理槽2に流入したオーバフロー水は、その後にドレイン貯留部3に流れ込むこととなり、やはりドレイン用ポンプP3の駆動により適切に排出される。このことから理解されるように、本発明においては、オーバフロー水がドレイン貯留部3よりも上流側に導かれるように構成してもかまわない。なお、オーバフロー水を中和処理槽2に流入させた場合には、中和剤2の消耗、および中和剤2の成分の流出を招く虞があるため、これを防止する観点からすると、オーバフロー水を直接的にドレイン貯留部3に導くことが好ましい。
【0047】
図5に示す実施形態においては、配管部89の一端が、ドレイン導入用の配管部88に接続され、洗浄用の湯水が中和処理槽2に流入するように構成されている。このような構成によれば、中和処理槽2内を洗浄し、この部分に藻などを繁殖し難くすることが可能である。ただし、中和処理槽2に洗浄用の湯水を供給したのでは、図4に示した実施形態と同様に、中和剤の消耗や成分の流出を招く虞があり、好ましくは、ドレイン貯留部3に直接的に流入させることが好ましい。
【0048】
図6に示す実施形態においては、ドレイン貯留部3と中和処理槽2とが一体的に形成されている。より具体的には、中和処理槽2を構成する容器20の一部は、中和剤21が充填されていないドレイン貯留部3として形成されており、中和剤21が充填されている領域(中和処理槽の部分)を通過して中和されたドレインは、そのままドレイン貯留部3に流入して貯留されるように構成されている。このような構成によれば、ドレイン貯留部3と中和処理槽2とを別体に形成してこれらを配管接続する場合よりも全体のコンパクト化を図ることができる。本発明でいうドレイン貯留部は、ある程度の量のドレインを一時的に貯留可能であればよく、他の機器類に付属して設けられていてもかまわない。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明に係る温水装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0050】
本発明でいうオーバフロー部は、暖房湯水タンクのオーバフロー部に限らない。これ以外の湯水タンク、またはタンクとは異なる湯水流路に設けられているオーバフロー部も適用対象とすることができる。したがって、本発明に係る温水装置は、上述した実施形態とは異なり、給湯用と暖房用の2つの温水装置本体部が組み合わされた構成でなくてもよく、たとえば暖房用の機能を有しない給湯用の温水装置として構成されていてもよい。
【0051】
ドレイン用配管は、風呂配管に差し込まれていなくてもよく、二重管構造部が設けられていない構成とすることができる。なお、上述した実施形態では、二重管構造部Dが、風呂配管7A(風呂往き管)にドレイン用配管6が差し込まれた構成とされているが、これとは異なり、風呂配管7B(風呂戻り管)にドレイン用配管6が差し込まれた構成とすることもできる。ドレインおよびオーバフロー水の排水箇所は、適宜選択可能であり、浴槽湯水の排水口とは異なる箇所とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る温水装置の一例を示す概略説明図である。
【図2】図1に示す温水装置の要部説明図である。
【図3】図1に示す温水装置が具備する制御部の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の例を示す要部概略図である。
【図5】本発明の他の例を示す要部概略図である。
【図6】本発明の他の例を示す要部概略図である。
【符号の説明】
【0053】
WH 温水装置
D 二重管構造部
P3 ドレイン用ポンプ
2 中和処理槽
3 ドレイン貯留部
4 制御部(制御手段)
6 ドレイン用配管
9 浴槽
7A,7B 風呂配管
13a,13b 熱交換器
14a,14b 熱交換器
33 水位検出器(水位検出手段)
85 暖房湯水タンク
85a オーバフロー部
87 配管部(オーバフロー水用の)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用媒体から熱回収を行なうことにより湯水加熱を行なうための熱交換器と、
前記熱回収に伴って発生したドレインを貯留可能なドレイン貯留部と、
このドレイン貯留部内の水位が所定量に達したときに駆動を開始し、前記ドレイン貯留部内のドレインをドレイン用配管を介して所定の排水箇所に送り出すドレイン用ポンプと、
湯水流路内を流通する湯水または湯水タンク内の湯水の一部をオーバフロー水として前記湯水流路または湯水タンクの外部に排出可能なオーバフロー部と、
を備えている、温水装置であって、
前記オーバフロー部を前記ドレイン貯留部または前記ドレイン貯留部よりも上流部分に接続し、かつ前記オーバフロー部から排出されたオーバフロー水を前記ドレイン貯留部に流入可能とする配管部を備えており、
前記ドレイン貯留部に流入したオーバフロー水は、前記ドレイン用ポンプの駆動により前記ドレイン用配管を介して前記所定の排水箇所に送り出すことが可能とされていることを特徴とする、温水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温水装置において、
浴槽への湯張り給湯および風呂追い焚き動作の少なくとも一方を行なうための風呂配管に、前記ドレイン用配管が差し込まれた二重管構造部を備えている、温水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温水装置であって、
前記ドレイン用ポンプは、第1および第2の運転モードのいずれかに切り換え設定可能であり、
前記ドレイン用ポンプを駆動制御するための前記ドレイン貯留部における水位として、所定の高水位、中水位、および低水位が規定され、かつ前記低水位は、前記ドレイン用ポンプの駆動を停止させるための水位とされており、
前記ドレイン用ポンプは、前記第1の運転モードに設定されているときには、前記ドレイン貯留部の水位が前記高水位になった時点で駆動を開始する一方、
前記第2の運転モードに設定されているときには、前記ドレイン貯留部の水位が前記中水位になった時点で駆動を開始するように構成されている、温水装置。
【請求項4】
請求項3に記載の温水装置であって、
前記加熱用媒体は、燃焼器により発生された燃焼ガスであり、
前記第2の運転モードが設定されているときに、前記燃焼器の燃焼号数またはこれに対応するパラメータに基づいてドレインの発生量を演算するとともに、この演算値に基づいて前記ドレイン貯留部の水位が前記中水位に達したか否かを判断し、かつ前記中水位に達したものと判断したときに前記ドレイン用ポンプの駆動を開始させる制御を実行する制御手段を備えている、温水装置。
【請求項5】
請求項4に記載の温水装置であって、
前記制御手段は、前記第2の運転モードが設定されているときに、前記ドレイン用ポンプを駆動させたにも拘わらず、前記ドレイン貯留部の水位が低下せずに前記高水位以上となり、かつこの状態が所定時間以上継続したときには、前記燃焼器の燃焼号数を低下させる制御を実行するように構成されている、温水装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の温水装置であって、
前記ドレイン貯留部の上流に位置し、前記ドレインを中和するための中和剤が内部に設けられた中和処理槽を備えており、
この中和処理槽または前記ドレイン貯留部の内部には湯水が供給可能とされて、この湯水供給によって、前記中和処理槽または前記ドレイン貯留部の内部、および前記中和処理槽または前記ドレイン貯留部よりも下流側のドレイン排水流路を洗浄可能とされている、温水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−107172(P2010−107172A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282539(P2008−282539)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】