説明

温熱具用不織布及びそれを用いた温熱具

【課題】本発明は、ソフトな肌触り、柔軟性に優れている温熱具用不織布及びそれを用いた温熱具を提供する。
【解決手段】本発明の温熱具用不織布は、目付が8g/m〜25g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである長繊維を含む第一不織布層と、目付が20g/m〜50g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである短繊維を含む第二不織布層とを積層してなる複合不織布であって、KES−FB2における縦方向の曲げ剛性が0.035gf・cm/cm〜0.050gf・cm/cmであって、KES−FB3における圧縮特性が0.55gf・cm/cm〜0.70gf・cm/cmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱具用不織布及び、それを用いた温熱具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温熱具は、一般的に空気に曝すことにより発熱する組成物を、微孔フィルムに不織布を積層してなる包材に包んでなる温熱用具である。温熱具としては、例えば、揉むタイプや貼るタイプのカイロなどが挙げられる。従来、温熱具の表面材としては、合成繊維からなるスパンボンド不織布が多く用いられている。従来の温熱具は、表面材が柔軟性に乏しいため、人体に接触されると、ゴワゴワする肌触りなどの不快感を与える問題があった。そのため、肌触り性及び柔軟性に優れた使用快適性の良い温熱具が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セルロース系短繊維からなり、水流交絡法により製造された肌触り及び保水性に優れた使い捨てカイロ用不織布が提案されている。また、特許文献2には、熱可塑性長繊維不織布層と短繊維ウェブ層とからなり、流体交絡で一体化された、寸法安定性、柔軟性、肌触り性などに優れた使い捨てカイロ用不織布が提案されている。
【特許文献1】特開2003−339753号公報
【特許文献2】特開2007−20787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、使用快適性の良い温熱具を製造するために、温熱具用不織布の肌触り性及び柔軟性を一層向上することが要望される。本発明の目的は、ソフトな肌触り、柔軟性に優れる温熱具用不織布及びそれを用いた温熱具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の温熱具用不織布は、目付が8g/m〜25g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである長繊維を含む第一不織布層と、目付が20g/m〜50g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである短繊維を含む第二不織布層とを積層してなる複合不織布であって、KES−FB2における縦方向の曲げ剛性が0.035gf・cm/cm〜0.050gf・cm/cmであって、KES−FB3における圧縮特性が0.55gf・cm/cm〜0.70gf・cm/cmであることを特徴とする。
【0006】
すなわち、本発明者らは、目付が8g/m〜25g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである長繊維を含む第一不織布層と、目付が20g/m〜50g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである短繊維を含む第二不織布層とを積層してなる複合不織布であって、KES−FB2における縦方向の曲げ剛性とKES−FB3における圧縮特性とを所定範囲に制御することによって、ソフトな肌触りで柔軟性に優れている温熱具用不織布が得られることを見出し本発明を完成するに至った。前記温熱具用不織布の縦方向における5%伸張時の応力は、0.10N/5cm以上、0.50N/5cm未満であることが好ましい。前記長繊維として、例えば、ポリブチレンテレフタレート繊維またはポリトリメチレンテレフタレート繊維が好ましい。前記第一不織布層と第二不織布層との質量比は、例えば、10〜60:90〜40である。前記複合不織布は、例えば、ウォーターパンチ又はニードルパンチにより一体化することが好適である。また、本発明には、前記温熱具用不織布に、透湿フィルムを積層した通気性を有する包材と、前記包材中に空気の存在下で発熱する発熱組成物とを有することを特徴とする温熱具が含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ソフトな肌触り、柔軟性に優れている温熱具用不織布及び、それを用いた使用快適性の良い温熱具が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の温熱具用不織布は、目付が8g/m〜25g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである長繊維を含む第一不織布層と、目付が20g/m〜50g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである短繊維を含む第二不織布層とを積層してなる複合不織布であって、KES−FB2における縦方向の曲げ剛性が0.035gf・cm/cm〜0.050gf・cm/cmであって、KES−FB3における圧縮特性が0.55gf・cm/cm〜0.70gf・cm/cmであることを特徴とする。
【0009】
まず、本発明で使用する第一不織布層について説明する。
【0010】
前記第一不織布層は長繊維を含むものである。前記第一不織布層に含まれる長繊維の比率は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、前記第一不織布層は、実質的に長繊維のみからなることがさらに好ましい。第一不織布層として長繊維を含むものを使用することにより、積層時の加工性が向上するからである。
【0011】
前記第一不織布層の目付は、8g/m以上であることが好ましく、12g/m以上であることがより好ましく、25g/m以下であることが好ましく、20g/m以下であることがより好ましい。第一不織布層の目付けを8g/m以上とすることにより、加工性が向上し、25g/m以下とすることにより、不織布が硬くなりすぎず柔軟性が損なわれにくくなる。
【0012】
前記第一不織布層を構成する長繊維の平均繊維径は、7μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。長繊維の平均繊維径を7μm以上とすることにより、加工性が良好となり、30μm以下とすることにより、柔軟性が向上する。
【0013】
前記長繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン−6、ナイロン−66、共重合ナイロンなどのポリアミド系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル、芯がポリプロピレン、ポリエステルなどからなる芯鞘構造などの複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などの熱可塑性合成繊維が用いられる。前記熱可塑性合成繊維は、単独、あるいは、2種以上の繊維を混合して用いることもできる。前記熱可塑性合成繊維の中でも、ポリブチレンテレフタレート繊維、または、ポリトリメチレンテレフタレート繊維が好ましい。第一不織布層を構成する繊維として、ポリブチレンテレフタレート繊維、または、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を採用することにより、得られる複合不織布が、所定のKES−FB2における縦方向の曲げ剛性および圧縮特性を満足しやすくなる。
【0014】
本発明で使用する第一不織布層の製造方法としては、従来公知の不織布の製法、例えば、スパンボンド法や、メルトブロー法などが挙げられる。
【0015】
前記第一不織布層は、強度及び寸法安定性を確保するため、部分熱圧着されていることが好ましい。前記第一不織布層の部分熱圧着率は、3%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましく、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。部分熱圧着率が、前記範囲内であれば、強度、寸法安定性及び流体交絡性が良好である第一不織布層が得られる。また、流体交絡性を阻害しないため、第一不織布層における熱圧着部は、1個ごとに比較的小さな面積で狭い間隔で分布することが好ましい。例えば、前記熱圧着部の1個当たりの面積は0.1mm〜10mmであり、前記熱圧着部の間隔は1mm〜15mmである。
【0016】
次に、本発明で使用する第二不織布層について説明する。
【0017】
前記第二不織布層は短繊維を含むものである。前記第二不織布層に含まれる短繊維の比率は、25質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、前記第二不織布層が、実質的に短繊維のみからなることが好ましい。第二不織布層として、短繊維を含むものを使用することにより、表面に柔らかい質感を付与することができる。
【0018】
前記第二不織布層の目付は、20g/m以上であることが好ましく、30g/m以上であることがより好ましく、50g/m以下であることが好ましく、40g/m以下であることがより好ましい。第二不織布層の目付を20g/m以上とすることにより、表面の質感が向上し、50g/m以下とすることにより、厚みが押さえられ不織布の柔軟性が保持できる。
【0019】
前記第二不織布層を構成する短繊維の平均繊維径は、7μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。短繊維の平均繊維径を7μm以上とすることにより、適度なボリュームを不織布に与えることができ、30μm以下とすることにより、柔軟性を付与できる。
【0020】
前記第二不織布層を構成する短繊維の平均長さは、30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることがより好ましく、80mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましい。短繊維の平均長さを30mm以上とすることにより、短繊維集合体として形状を保持できるからであり、80mm以下とすることにより、不織布製造時の短繊維のカード通過性を良好とすることができるからである。
【0021】
前記短繊維を構成する繊維としては、温熱具用包材に包まれる組成物に影響を与えないものであれば、特に限定されないが、疎水性繊維を主体に構成することが好ましい。温熱具は、酸素の供給量や発熱組成物が含有する水分量を調整し、比較的緩やかな反応速度で酸化反応が進行することにより長時間にわたり適度な発熱が持続する。第二不織布層を構成する短繊維を、疎水性繊維を主体に構成しておけば、発熱組成物が、水分を吸収しにくくなり、酸化反応への影響が小さくなる。
【0022】
前記疎水性繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン−6、ナイロン−66、共重合ナイロンなどのポリアミド系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル、芯がポリプロピレン、ポリエステルなどからなる芯鞘構造などの複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などの熱可塑性合成繊維が用いられる。前記熱可塑性合成繊維は、単独でもよく、2種以上の繊維を積層し、混合して用いることもできる。
【0023】
なお、第二不織布層を構成する繊維としては、前記疎水性繊維のみを使用することが好ましい態様であるが、温熱具用包材に包まれる発熱組成物が含有する水分に影響を与えない程度に、親水性繊維を混合しても良い。前記親水性繊維としては、コットンなどの天然繊維、レーヨン、リオセル、キュプラ、ポリノジックなどの再生繊維が好適である。前記の親水性繊維は、単独でもよく、2種以上の繊維を用いることもできる。前記親水性繊維の混合比率は、親水性繊維の種類に応じて適宜調整できるが、短繊維総量中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。第二不織布層において、親水性繊維の混合比率を前記範囲内にすれば、温熱具用包材に包まれる発熱組成物が含有する水分に影響がなく、肌触り性及び皮膚との親和性などが向上した温熱具が得られる。
【0024】
本発明で使用する第二不織布層の製造方法としては、例えば、従来公知のカード法などの開繊処理を行い、ウェブを形成する方法が挙げられる。なお、必要に応じて、形成したウェブにニードルパンチまたはスパンレース法などにより交絡を施しても良い。
【0025】
本発明における温熱具用不織布は、前記第一不織布層と第二不織布層とを積層してなる複合不織布である。積層態様としては、例えば、図1及び図2の態様が挙げられる。図1は、第二不織布層1が第一不織布層3の片面に積層してなる温熱具用不織布10である。図2は第二不織布層1が第一不織布層3の両面に積層してなる温熱具用不織布10である。好ましくは、前記第一不織布を上層として、第二不織布を下層として積層した二層構造の態様である。
【0026】
積層に際しては、前記第一不織布層と第二不織布層との質量比を、第一不織布層:第二不織布層が10〜60:90〜40とすることが好ましく、15〜55:85〜45とすることがより好ましく、20〜50:80〜50とすることがさらに好ましい。第一不織布層と第二不織布層との質量比を前記範囲内にすることによって、肌触り性及び柔軟性が一層良好になるとともに、強度及び寸法安定性も維持しやすくなる。
【0027】
前記第一不織布層と前記第二不織布層とを積層してなる複合不織布は、ウォーターパンチまたはニードルパンチにより一体化されることが好ましい。前記ウォーターパンチ法としては、例えば、公知のスパンレース加工機を用い、前記第一不織布層と前記第二不織布層とからなる積層体を、金網製やポリエステル繊維製などの網目を有する多孔性支持体上に設置し、表裏両面にそれぞれ高圧水流を噴射ノズルから噴射することにより一体化させる方法が挙げられる。なお、前記多孔性支持体の下から真空装置を用いることによりスムーズに脱液することもできる。さらに、ドライヤーで水分を乾燥することも好適である。
【0028】
前記ウォーターパンチ法として、まず、第二不織布層側から高圧水流を噴射することにより、ある程度前記第二不織布層と前記第一不織布層とを交絡させ、次に、反転させて、前記第一不織布側から高圧水流を噴射することにより前記第二不織布層と前記第一不織布層とをさらに交絡させる方法が好適である。
【0029】
前記ウォーターパンチ方法において、高圧水流を噴射する条件としては、例えば、第一不織布層側にかける噴射圧は10kgf/cm(0.98MPa)〜100kgf/cm(9.80MPa)であり、第二不織布層側にかける噴射圧は15kgf/cm(1.47MPa)〜100kgf/cm(9.80MPa)であることが好ましい。噴射ノズルの孔径は、0.05mm〜2.0mmが好ましく、噴射ノズルの間隔は、例えば、0.5mm〜10.0mmが好ましい。噴射ノズルと前記多孔性支持体との間隔は1cm〜5cmであることが推奨される。
【0030】
前記ニードルパンチ方法としては、まず第二不織布層側からニードルパンチし、次に第一不織布層側からニードルパンチして交絡させる方法が好適である。
【0031】
ニードルパンチを実施する条件について、特開2004−19062号公報などで開示されている条件を用いることができ、例えば、針が34〜38番手ニードル、針密度が30〜100本/cm、針深度が15mm以下である。
【0032】
本発明における温熱具用不織布は、ニードルパンチまたはウォータパンチにより一体化されることによって、長繊維を含む第一不織布層の繊維間隙に、第二不織布層に含まれる短繊維が入りこみ、厚み方向にわたって第一不織布層と第二不織布層とが、三次元で交絡される構造を有するため、表面が立毛状態であり、柔軟性、肌触り性が良好であると共に、短繊維の脱落が少なく、耐磨耗性に優れる。
【0033】
前記温熱具用不織布の縦方向における5%伸張時の応力は、0.10N/5cm以上であることが好ましく、0.20N/5cm以上であることがより好ましく、0.50N/5cm未満であることが好ましく、0.40N/5cm以下であることがより好ましい。前記温熱具用不織布の縦方向とは、温熱具用不織布を製造する際の流れ方向(機械方向、MD)である。また、前記温熱具用不織布の横方向(TD)における5%伸張時の応力は、0.01N/5cm以上であることが好ましく、0.02N/5cm以上であることがより好ましく、0.20N/5cm以下であることが好ましく、0.10N/5cm以下であることがより好ましい。前記温熱具用不織布の横方向(TD)とは、前記温熱具用不織布の縦方向(MD)に対して90°の角度で交差する方向である。前記温熱具用不織布の縦方向における5%伸張時の応力又は横方向における5%伸張時の応力が、前記範囲内である温熱具用不織布は、幅入り率が少ないため、寸法安定性及び加工安定性が良好である。
【0034】
前記温熱具用不織布は、KES−FB2における縦方向の曲げ剛性が、0.035gf・cm/cm(0.034Pa・m)以上であることが好ましく、0.040gf・cm/cm(0.039Pa・m)以上であることがより好ましく、0.050gf・cm/cm(0.049Pa・m)以下であることが好ましく、0.046gf・cm/cm(0.045Pa・m)以下であることがより好ましい。KES−FB2における縦方向の曲げ剛性は、温熱具用不織布の柔らかさを指標するものである。前記KES−FB2における縦方向の曲げ剛性が、前記範囲にある温熱具用不織布は、肌触り性及び柔軟性に優れると共に、肌への追従性に優れるものである。前記KES−FB2における縦方向の曲げ剛性は、カトーテック社製のKES−FB2型曲げ試験機を用い、20±2℃/65±2%RHの測定環境で測定した縦方向の曲げ剛性値である。
【0035】
前記温熱具用不織布は、KES−FB3における圧縮特性が、0.55gf・cm/cm(0.54Pa・m)以上であることが好ましく、0.60gf・cm/cm(0.59Pa・m)以上であることがより好ましく、0.70gf・cm/cm(0.69Pa・m)以下であることが好ましく、0.65gf・cm/cm(0.64Pa・m)以下であることがより好ましい。KES−FB3における圧縮特性は、温熱具用不織布のふんわりさを指標するものである。前記KES−FB3における圧縮特性が前記範囲である温熱具用不織布は、ふんわりしている風合いを有すると共に、数時間使用してもゴワゴワ感がほとんど感じられないものである。前記KES−FB3における圧縮特性は、カトーテック社製のKES−FB3型圧縮試験機を用い、20±2℃/65±2%RHの測定環境で、第一不織布層側より50sec/mmの圧縮速度で圧縮し測定した圧縮特性値である。
【0036】
前記温熱具用不織布の厚さは、0.6mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、0.8mm以上であることがさらに好ましい。厚さが前記下限以上の温熱具用不織布は、膨らみ感を有するため、肌触り性及び柔軟性に優れるからである。
【0037】
以下、前記温熱具用不織布を用いた温熱具について、図面を参照しながら説明するが、本発明の温熱具は、図面に示した態様に限定されるものではない。本発明の温熱具は、前記温熱具用不織布に透湿フィルムを積層してなる通気性を有する包材と、前記包材中に空気の存在下で発熱する発熱組成物とを有する温熱具である。
【0038】
図3および図4は、本発明の温熱具の態様を例示する説明図である。図3に示した温熱具では、本発明の温熱具用不織布10に透湿フィルム5を積層してなる包材を温熱具20の片面に用い、温熱具20の他面に透湿フィルム5とその全面にわたって設けらている接着手段11とからなるものを用い、それらの間に発熱組成物7が収容されている。接着手段11は、接着剤層と離形紙とからなり、離形紙をはがすことにより、温熱具を肌もしくは衣服に直接貼布することができる。図4に示した温熱具では、本発明の温熱具用不織布10に透湿フィルム5を積層してなる包材同士の間に、発熱組成物7が収容されている。また、図3および図4に示した温熱具は、包材の周縁部においてシール部9が設けられている。なお、接着手段11は、温熱具の種類に応じて、設けない場合があり、例えば、揉むタイプの温熱具の場合は、接着手段11を設けなくてよい。この際、本発明の温熱具用不織布を使用することにより、温熱具の肌触りや使用快適性が向上する。
【0039】
前記透湿フィルムとしては、透湿性を有するものであれば、特に限定されなく、例えば、樹脂に炭酸カルシウムなどの無機微粒子を混合してシート状とし、これを延伸するなどにより微小な空隙を形成した多孔質シートが挙げられる。前記透湿フィルムとしては、例えば、単一のフィルム、或いは2種以上の積層フィルムなどが用いられる。
【0040】
前記透湿フィルムを構成する基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、メタロセン触媒を用いた直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/エチレン−酢酸ビニール共重合物、ポリエチレン/エチレンアクリル酸塩共重合物、ポリアミドなどが用いられる。不織布の柔軟性の観点から、ポリエチレンが好ましい。
【0041】
前記温熱具用不織布に透湿フィルムを積層する方法としては、特に限定されなく、例えば、接着剤あるいは熱接合により積層する方法や、Tダイからの押出しラミネート法などが挙げられる。透湿フィルムは、第一不織布層側に配置することが好適である。
【0042】
また、第二不織布層側には、適宜、印刷などが施されていても良い。
【0043】
前記発熱組成物としては、空気の存在下で発熱するものであれば、特に限定されなく、例えば、鉄粉などの金属粉、金属塩化物、金属硫化物、反応助剤、水、保湿材(例えば、活性炭、木粉、バーミキュライト、吸水性樹脂、シリカゲル、リンターなど)及び添加物などの混合物が用いられる。
【0044】
前記温熱具を製造する方法としては、従来公知の方法により製造することができる。例えば、前記包材に、前記発熱組成物を収容し、包材の周縁部をシールすることにより製造する方法などが挙げられる。
【0045】
前記温熱具の具体例としては、揉むカイロ、貼るカイロなどの使い捨てカイロを挙げることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。本発明で用いた測定法は以下の通りである。
【0047】
[測定法]
(1)目付
JIS L 1906(2000)5.2法に従って測定する。
(2)平均繊維径
温熱具用不織布の表裏それぞれにおいて任意部位10箇所からサンプリングした試験片の切断面が観察できるように蒸着セットして、視差走査型電子顕微鏡にて繊維軸を横切る方向にほぼ直角に切断されている任意の繊維50本について写真撮影し、写真を拡大して各繊維の断面から直径を求め、それらの値を平均して繊維の直径をそれぞれ算出する。
(3)厚さ
JIS L 1906(2000)5.1法に準拠して測定する。加圧子として4cmのものを使用し、加圧圧力が2kPaである。
(4)5%伸張時の応力
JIS L 1906に準じて測定する。引張試験機で、幅5cm、長さ30cmの試料を切り取り、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/minで5%伸張時の中間応力、破断強度を縦、横それぞれ3箇所測定し、3点の平均値で求める。
(5)縦方向の曲げ剛性
試料を20cm角に切断し、カトーテック社製のKES−FB2曲げ試験機を用い、20±2℃/65±2%RHの測定環境で、試料の縦方向の曲げ剛性を測定する。
【0048】
(6)圧縮特性
試料を20cm角に切断し、カトーテック社製のKES−FB3圧縮試験機を用い、20±2℃/65±2%RHの測定環境で、第一不織布層側より50sec/mmの圧縮速度で圧縮し、試料の圧縮特性を測定する。
(7)加工特性
温熱具用不織布は、透湿フィルムに積層時に、幅入りの有無などについて調べた。評価基準は、次の通りである。
○:幅入りすることなく、原反を加工することができた。
×:原反が幅入りしてしまった。
(8)肌触り
貼るタイプカイロの表面を触ったときの、肌の感覚について評価した。評価基準は、次の通りである。
○:肌に優しい柔らかい感覚があった。
×:肌に硬い感覚があった。
(9)柔軟性
貼るタイプカイロを貼ったときの、体への追従性について評価した。評価基準は、次の通りである。
○:体にぴったりと追従した。
×:体に追従することができなかった。
(10)使用快適性
貼るタイプカイロを3時間使用後、肌への違和感について評価した。評価基準は、次の通りである。
○:違和感を感じなかった。
×:ゴワゴワの違和感を感じた。
【0049】
[温熱具用不織布の製造]
実施例1
平均繊維径が、15.4μmであるポリブチレンテレフタレート(PBT)長繊維を用いて、スパンボンド法により第一不織布層(目付8g/m)を作製した。平均繊維径が12.4μm、平均繊維長が51mmであるポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維を用いて、スパンレース法により第二不織布層(目付20g/m)を作製した。第一不織布層と第二不織布層との質量比が29/71であった。
【0050】
前記第一不織布層と第二不織布層とを積層させて、ウォーターパンチにより一体化して、複合不織布を作製した。具体的には、パーフュジェット社製のスパンレース加工機を用い、前記積層体を、網目を有する多孔性支持体上に設置し、先に第二不織布層側から高圧水流を噴射することにより、ある程度前記積層体を交絡させ、次に、積層体をひっくり返して、前記第一不織布側から高圧水流を噴射することにより、前記積層体をさらに交絡させた。前記高圧水流を噴射する条件の詳細は、第一不織布層側にかける噴射圧は4本のノズルでそれぞれ15kgf/cm(1.47MPa)、30kgf/cm(2.94MPa)、70kgf/cm(6.86MPa)、及び、100kgf/cm(9.80MPa)であり、第二不織布層側にかける噴射圧は3本のノズルでそれぞれ90kgf/cm(8.83MPa)であり、噴射ノズルの孔径は100μmであった。
【0051】
その後、ドライヤーで前記交絡させた積層体に含有する水分を乾燥し、ワインダーで巻き取り、温熱具用不織布1を製造した。温熱具用不織布1について、縦方向の曲げ剛性値および圧縮特性値を測定した結果を表1に示す。
【0052】
また、透湿フィルムとしてポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚:50μm)を、温熱具用不織布1の第一不織布層側に積層し、包材を作製した。得られた包材に、鉄粉61.6wt%、活性炭5.3wt%、バーミキュライト9.5wt%、食塩3.1wt%、水20.5wt%からなる発熱組成物を収容し、ヒートシール法により温熱具1を製造した。温熱具1について、肌触り、柔軟性および使用快適性を評価し、結果を表1に示す。なお、包材作製時に、温熱具用不織布1は、透湿フィルムに積層時の加工特性も評価した結果を表1に示す。
【0053】
実施例2〜7および比較例1〜6
表1及び表2に示している第一不織布層および第二不織布層を用いた以外は、実施例1と同一方法で、温熱具用不織布2〜13および温熱具2〜13を製造した。実施例1と同様の方法で測定および評価を行って、結果を表1に示す。表1及び表2において、PBT、PET、PTT、Ryは、それぞれポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、レーヨンの略称である。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
実施例1〜7において、温熱具用不織布のいずれも、目付が8g/m〜25g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである長繊維からなる第一不織布層と、目付が20g/m〜50g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである短繊維からなる第二不織布層とを含んだため、その縦方向の曲げ剛性値および圧縮特性値が本発明の範囲にあり、その加工特性や、それを用いた温熱具の肌触り、柔軟性および使用快適性が優れていることが分かった。
【0057】
比較例1および2の温熱具用不織布では、不織布層の目付(比較例1の第二不織布層または比較例2の第一不織布層)が本発明の範囲を超えたため、温熱具用不織布の加工特性およびそれを用いた温熱具の肌触りが優れていたが、温熱具用不織布の縦方向の曲げ剛性値および圧縮特性値が本発明の範囲を超えて、温熱具の柔軟性および使用快適性が劣ることが分かった。
【0058】
比較例3および6の温熱具用不織布では、第一不織布層および第二不織布層の平均繊維径がいずれも本発明の範囲を超えたため、温熱具用不織布の加工特性が優れていたが、縦方向の曲げ剛性値および圧縮特性値が本発明の範囲を超えて、温熱具の肌触り、柔軟性および使用快適性が劣ることが分かった。
【0059】
比較例4の温熱具用不織布では、第一不織布層を用いなかったため、温熱具用不織布の縦方向の曲げ剛性値が0.035〜0.050gf・cm/cmの範囲にあり、それを用いた温熱具の肌触り、柔軟性および使用快適性が優れていたが、温熱具用不織布の圧縮特性および加工特性が劣ることが分かった。
【0060】
比較例5の温熱具用不織布では、第二不織布層を使用せずに、また第一不織布層の目付が25g/mを超えたため、温熱具用不織布の加工特性が優れていたが、縦方向の曲げ剛性値が0.050gf・cm/cmを超えて、圧縮特性値が0.55gf・cm/cm未満になり、それを用いた温熱具の肌触り、柔軟性および使用快適性が劣ることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の温熱具用不織布を例示する断面説明図である。
【図2】本発明の温熱具用不織布を例示する断面説明図である。
【図3】本発明の温熱具用不織布を包材として使用している温熱具の態様を例示する断面説明図である。
【図4】本発明の温熱具用不織布を包材として使用している温熱具の態様を例示する断面説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1:第二不織布層、3:第一不織布層、5:透湿フィルム、7:発熱組成物、9:シール部、10:温熱具用不織布、11:接着手段、20:温熱具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付が8g/m〜25g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである長繊維を含む第一不織布層と、
目付が20g/m〜50g/mであって、平均繊維径が7μm〜30μmである短繊維を含む第二不織布層とを積層してなる複合不織布であって、
KES−FB2における縦方向の曲げ剛性が0.035gf・cm/cm〜0.050gf・cm/cmであって、KES−FB3における圧縮特性が0.55gf・cm/cm〜0.70gf・cm/cmであることを特徴とする温熱具用不織布。
【請求項2】
前記温熱具用不織布の縦方向における5%伸張時の応力が0.10N/5cm以上0.50N/5cm未満である請求項1に記載の温熱具用不織布。
【請求項3】
前記長繊維が、ポリブチレンテレフタレート繊維またはポリトリメチレンテレフタレート繊維である請求項1または2に記載の温熱具用不織布。
【請求項4】
前記第一不織布層と第二不織布層との質量比は、第一不織布層:第二不織布層=10〜60:90〜40である請求項1〜3のいずれかに記載の温熱具用不織布。
【請求項5】
前記複合不織布が、ウォーターパンチ又はニードルパンチにより一体化されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の温熱具用不織布。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の温熱具用不織布に、透湿フィルムを積層してなる通気性を有する包材と、前記包材中に空気の存在下で発熱する発熱組成物とを有することを特徴とする温熱具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−225975(P2009−225975A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74322(P2008−74322)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(592162922)株式会社ユウホウ (5)
【Fターム(参考)】