説明

温熱炭シート

【課題】炭の遠赤外線放射作用だけを利用したシートでは放射出力が弱く、温熱効果は少ないので、より増大した炭の遠赤外線放射による温熱効果を得る温熱炭シートを提供する。
【解決手段】炭や人体が放出する遠赤外線はアルミニウムに反射するため、片側にアルミニウム箔があるシートを使用すると、炭の遠赤外線は反射して片側に増幅され、人体からの熱放射も反射されて大きなエネルギーになって体に吸収される。この原理作用を利用して炭の遠赤外線放射出力を倍加し、人体の熱放射も利用できるよう、アルミニウム箔2と粉炭1の2層構造のシートにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭の遠赤外線放射力と人体からの放射熱を併せて利用する温熱用品に関する。
【背景技術】
【0002】
特願07−030079や特願11−269634に通気性や透湿性を備えた不織布間に粉炭を挟み固定したものはある。また、特願06−249649に粉炭を不織布間に挟み更に布や樹脂で挟んだものはある。
【0003】
更にアルミニウム箔に、発泡スチロールや樹脂フイルムを貼り合わせた保温シートは一般に販売されている。
【0004】
【参考文献1】
特願07−030079
【参考文献2】
特願11−269634
【参考文献3】
特願06−249649
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭には吸湿作用や吸着作用、遠赤外線放射作用など様々な機能があるため、生活の多くの分野で使用されている。
【0006】
その中で、木炭粉末を封入した不織布シートはあるが、多くは吸湿や吸着を目的に作られたものであり、温熱効果を目的としたものは少ない。
【0007】
吸湿や吸着と保温を目的にしたものは、空気の流通をよくする必要があるため粉炭の包装材に不織布を使用するが、炭は衝撃によって1ミクロン未満に微細化が進行して粉塵になるため、どのような不織布を使用しても不織布の構造上、粉塵が漏れるのを防ぐことはできなかった。このため少しの炭を封入するために、多くの外装を必要としていて、炭の効果は大きくなかった。
【0008】
粉塵の漏れを防止するために、3層構造に貼り合わせた特殊な不織布もあるが、吸湿や吸着性が低下する。しかも、このような不織布でも粉塵の漏れは完全には防げない。
【0009】
また、木炭が遠赤外線を放出するのは周知であるが、遠赤外線は360度に放射されて拡散しているためか、体に纏っても人体に与える作用は緩慢であるため、常温使用の場合、温熱作用を自覚する人は少ない。
【0010】
また一方で人の体温は平均36.5℃であり放射熱は比較的大きく、波長に換算すると10マイクロメートル弱の遠赤外線が放出されていて熱エネルギーの無駄になっている。
【0011】
本発明は炭の遠赤外線放射による温熱効果を得るためになされた。
【課題を解決する手段】
【0012】
炭を使用して温熱効果を得るためには、炭が多く放射する6〜13マクロメートルの波長の遠赤外線出力を増大するか、他の放射エネルギーを加える必要がある。
【0013】
炭の遠赤外線放射出力を大きくするためには炭の温度を上げればよいが、外部エネルギーを必要とし簡便な形態にはならない。しかし、人体は10マイクロメートル程度の波長の遠赤外線を放射しているので、このエネルギーを取り込めば大きな出力を得ることができる。
【0014】
炭や人体が放出する遠赤外線はアルミニウムに反射するため、片側にアルミニウム箔があるシートを使用すると、炭の遠赤外線は反射して片側に増幅され、人体からの熱放射も反射されて大きなエネルギーになって体に吸収される。
【0015】
本発明はアルミニウム箔と粉炭との2層構造を基本にして体を暖めることが特徴の温熱炭シートであり、炭の飛散を防ぐには外装が必要であるために、シートで粉炭を包み込む構造になっている。
【0016】
粉炭の大きさは肌に違和感が無くコストが安い0.2mm〜1mmが適当である。
【0017】
温熱炭シートでアルミニウム箔側を外にして体に纏うと、炭から放出される遠赤外線が増幅されたものと人体から放出される放射熱の反射が加わり、大きな放射エネルギーとなって人体に吸収されることが特徴である。
【0018】
実験では室温32℃で温熱炭シート(900mm×1920mm)上に寝ると使用30分後より使用者及び温熱炭シート共に温度上昇して、使用1時間後以降は使用者の表面体温が4〜5℃上昇し、温熱炭シートも6℃温度が上昇した。この時使用者は体温の上昇をほとんど認識しない。
【0019】
このような現象は、炭シートと人体が共振してお互いに温度上昇したと推定され、体温を上げる温熱効果は著しく、健康維持に役立つ。
【0020】
この作用を寝具や身の回り品に利用すると、熱エネルギー資源を要さない簡便な健康温熱用品ができる。
【0021】
また、このような作用は人間だけではなく生物全体に及ぶと推測され、例えば樹木の幹に温熱炭シートを巻くと、細胞代謝が活性化され元気になると推測され、実験でも果実の実りが良くなっている。
【0022】
請求項1は図1のようにアルミニウム箔で覆われたシートと不織布シート間に炭を封入した構造であり、図2のような炭が移動しないように仕切りを設けたものである。敷布団の上などに敷いて使用するのに向いている。
【0023】
不織布は通気性に優れているため湿気や臭いを素早く吸着する。一方で粉塵が漏れる心配があるが、圧迫や衝撃によって粉炭が微細化しても、微粉末は下部に移動する性質があるためアルミニウム箔側に集まり、不織布からは漏れない。このように温熱効果のほかに、吸着、吸臭作用も付加されることが特徴であり、快適な睡眠環境を得ることができる。
【0024】
アルミニウム箔だけでは強度が弱いためアルミニウム箔にポリスチロールやポリエチレンなどの樹脂シートを貼ったものを使用するのが望ましく、不織布間やフイルム間に粉炭を封入した後に、片側をアルミニウム箔で覆ってもよい。
【0025】
請求項2は図3のようにアルミニウム箔で覆われたシートと通気性フイルム間に炭を封入したものであり、図2のような炭が移動しないように仕切りを設けたものである。
【0026】
温熱効果は請求項1と同じであるが、悪臭や湿気の吸収速度は遅くなる。しかし、フイルムであるため粉塵が外部に漏れることがないのが特徴であり、座布団、ひざ掛け、掛け布団など頻繁に移動するものに向いている。
【0027】
請求項3は図4のように炭コーティング不織布とアルミニウム箔を張り合わせたものであり、炭の使用量が少ないため遠赤外線放射出力も弱いが、柔らかく厚みが薄く自由に切断できるのが特徴で、体の各部位に違和感が無く装着できる。
【0028】
アルミニウム箔は独特の色調であるため、用途に応じ適切な色調の布やフイルムを貼り付けてデザインを工夫できる。
【0029】
使用する粉炭は木炭や竹炭が好ましいが、活性炭でも石炭でもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の特徴はアルミニウム箔と炭との2層構造から生じるものである。炭は波長6〜15マイクロメートル間の遠赤外線放射力が強く、アルミニウム箔は遠赤外線を反射する。
【0031】
炭の遠赤外線は360度に放射されているが、アルミニウム箔があると反射されて180度になり人体に吸収される量も倍になる。また人体から放出する波長10マイクロメートル程度の遠赤外線もアルミニウム箔に反射されて再吸収される。
【0032】
増大して吸収される波長6〜15マイクロメートルの遠赤外線は水や蛋白質の共振波長であるため、この遠赤外線を吸収することによって、人体中の水素分子の振動が増幅され、大きな温熱効果を得ることができる。
【実施例】
【0033】
請求項1においてはアルミニウム箔と樹脂シートが貼り合わされた下部シート上に粉炭をスポット状に蒔き、粉炭層と無粉炭部分を設ける、上部に不織布シートを被せ無粉炭部分を溶着して仕切りを設けながら上部と下部を接着させる生産工程によって、図2のように粉炭が偏らないよう小さな仕切りを設けた温熱炭シートを生産する。
【0034】
下部シートには発泡スチロールなどの樹脂シートとアルミニウム箔の貼り合わせでなく、不織布にアルミニウム箔を貼ったものを使用してもよい。
【0035】
請求項2においては、図3のように請求項1の不織布シートに代えて通気性フイルムを使用したものである。
【0036】
請求項3においては図4のように、炭コーティング不織布にアルミニウム箔と樹脂シートが貼り合わされたシートを溶着させたものである。樹脂シートを用いずアルミニウム箔と炭コーティング不織布を直接貼ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
体の内部から温める温熱シートとして、寝具に使用できる他、肩こり用、膝用、肘用、足冷え用、うっ血解消用などに加工して健康用具に利用することが出来る。
植物においては、幹に巻いて樹木の健康と増収に利用できる。
また、乾燥剤、臭取りとしても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】 片面が不織布の温熱炭シートの構造である。
【図2】 温熱炭シートの平面図である。
【図3】 片面が通気性フイルムの温熱炭シートの構造である。
【図4】 炭コーティング不織布を使用した温熱炭シートの構造である。
【符号の説明】
【0039】
1.不織布
2.粉炭
3.樹脂シート
4.通気性フイルム
5.炭コーティング不織布
6.熱シール部分
7.炭封入部分
8.アルミニウム箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片側がアルミニウム箔で覆われたシートで、片側が不織布のシート間に炭を封入したものであり、炭の偏りをなくすための仕切りを設けた温熱炭シート
【請求項2】
片側がアルミニウム箔で覆われたシートで、片側が通気性フイルムのシート間に炭を封入したものであり、炭の偏りをなくすための仕切りを設けた温熱炭シート
【請求項3】
微粉炭をコーティングした不織布とアルミニウム箔を張り合わせた温熱炭シート

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−119226(P2009−119226A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323995(P2007−323995)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(598095042)株式会社森林研究所 (24)
【Fターム(参考)】