説明

温調マット及びその製造方法

【課題】製造が容易で、且つ屈曲耐久性に優れ、上面放熱量が多い温調マットを提供する。
【解決手段】床暖房マット10は、上面に配管収容用の溝30が設けられた長方形状の基板11〜22と、該溝に収容された温水配管40と、該温水配管と接するように溝内面から基板上面にかけて配材された均熱板50と、各基板の上面に跨がって配置された均熱シート材60とを有する。基板11〜22を配列した後、一枚のシート状の均熱板素板50Aを基板11〜22に跨がって貼る。次いで、温水配管40を溝30に押し込み、縦板部52を溝30の内面に沿わせる。その後、均熱シート材60を貼る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の部屋の床、壁、天井等の暖房や冷房を行うための温調マットと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房構造として、板状の基板の上面の溝に温水配管を引き回した温水床暖房が周知である。
【0003】
第7図は特開平11−257674号の床暖房構造を示す平面図であり、長方形の板状の基板1が長側辺を平行にして、かつ相互間に小根太2を介して配列されている。この基板1の上面の溝に温水配管3が収容されている。温水配管3は、隣接する基板1に跨がって連続して引き回され、両端がそれぞれヘッダー4に接続されている。
【0004】
この溝内面から基板上面にかけて均熱板5が配置されている。この均熱板5は、周知(例えば実開昭60−170627号、特開2002−295853号)の通り、第8図に示す略Ω字形断面形状のものである。即ち、この均熱板5は、U字部5aと、該U字部5aの両端からそれぞれ反対方向に張り出すフランジ部5bとからなり、U字部5aが溝内に配置され、フランジ部5bが基板1の上面に配置される。この均熱板は熱伝導率が高いアルミ製、銅製とされることが多い。
【0005】
第7図では、基板1を現場で1枚ずつ敷設施工した後、温水配管3を溝内に配材し、その上にアルミ箔などを均熱シート材を展開配置し、その上に表層材6を施工している。
【0006】
このような現場施工の作業数を減らすために、複数枚の基板、温水配管及び均熱シート材を予め一体化し、折り畳んだり巻回しておき、現場にて展延させるようにしたものも周知である(例えば特開2005−24206号、特開2002−347879号、特開平11−22987号)。第9図は、この特開平11−22987号の床暖房マットの巻回状態を示す斜視図(同号公報の図5)である。
【0007】
特開平11−148656号の図3には、上記Ω字形断面形状の均熱板5を用いる代わりに、平たい板状(シート状)の均熱板の素板を基板上面に配置しておき、上方から温水配管を該均熱板素板を押し破りつつ溝内に押し込むことにより、均熱板素板の一部を溝内に押し込むことが記載されている。
【0008】
同号公報では、均熱板の素板のうち、溝の中央線に沿ってミシン目を入れておき、配管を溝に押し込むときにこのミシン目に沿って素板を開裂させている。
【特許文献1】特開平11−257674号
【特許文献2】実開昭60−170627号
【特許文献3】特開2002−295853号
【特許文献4】特開2005−24206号
【特許文献5】特開2002−347879号
【特許文献6】特開平11−22987号
【特許文献7】特開平11−148656号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
梱包、輸送等のために巻回したり折り畳んだりするようにした従来の床暖房マットでは、基板同士は均熱シート材のみを介して連なっているため、屈曲疲労や応力が均熱シート材に集中し、耐久性が低下するおそれがあった。
【0010】
また、特開平11−148656号のように均熱板素板にミシン目を設けてある場合、ミシン目を正確に溝の中心線に合致させる必要があり、床暖房マットの製造効率が低い。
【0011】
本発明は、耐久性に優れると共に、製造も容易な温調マットと、この温調マットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の温調マットは、上面に配管収容用の溝が設けられた長方形状の基板が複数枚、集合状に配列された基板群と、該溝に収容され、隣接する基板に連続して引き回されている温調用配管と、該温調用配管と接するように溝内面から基板上面にかけて配材された均熱板と、各基板の上面に跨がって配置された均熱シート材とを有し、該均熱板は、基板上面の主板部と、該主板部に連なり、前記溝の入口部内面に沿う縦板部とを有する温調マットであって、前記均熱板の主板部は、各基板の上面に跨がって配材され、各基板の上面に付着されており、前記均熱シート材は、該均熱板の主板部と前記溝とを覆い、該主板部に付着されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の温調マットは、請求項1において、前記均熱板は、平板状の均熱板の素板を基板上に付着させた後、上方から該配管を該均熱板の素板を破断させて溝内に挿入することにより前記縦板部を形成したものであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の温調マットは、請求項1又は2において、前記均熱板及び均熱シート材は金属箔よりなることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の温調マットの製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の温調マットを製造する方法であって、各基板を配列させる工程と、平板状の均熱板の素板を各基板の上面に跨がって付着させる工程と、溝の上方から該均熱板の素板を押し破って配管を溝に配置させると共に、該溝の入口部内面に沿う前記縦板部を形成する工程と、該均熱板の主板部及び溝を覆うように均熱シート材を該主板部に付着させる工程とを有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項5の温調マットの製造方法は、請求項4において、前記均熱板の素板は全体として無孔の板材であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の温調マットでは、基板同士が均熱板及び均熱シート材の双方によって連結されるため、屈曲耐久性に優れる。なお、薄い金属箔よりなる均熱板と均熱シート材とで基板同士を連結した場合、両者の合計厚みを有した1枚の金属箔で基板同士を連結した場合に比べて屈曲耐久性が良好である。
【0018】
この温調マットを製造する場合、均熱板の素板を溝及び基板上面を覆うように基板上面に付着させた後、配管を溝に押し込む。
【0019】
本発明の一態様では、ミシン目を設けることなく配管を溝に押し込むようにしており、ミシン目を溝の中心線に合致させる等の煩雑な作業が不要であり、温調マットの製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態は本発明の一例であり、本発明は以下の実施の形態以外の形態をもとりうる。
【0021】
第1図は第1の実施の形態に係る温調マットとしての床暖房マットの平面図、第2図及び第3図は第1図の床暖房マットの製造方法を示す斜視図、第4図及び第5図は同断面図(第5図は第3図のV−V線断面図)、第6図は床暖房マットの巻回状況を示す斜視図である。
【0022】
この実施の形態では、温調マットとして床暖房マット10を例に挙げて説明する。
【0023】
この床暖房マット10は、複数枚(この実施の形態では12枚)の長方形の基板11〜22よりなる基板群と、各基板11〜22の上面に設けられた溝30に配材された温調用配管としての温水配管40と、該温水配管40が連なるヘッダー41と、各基板11〜22の上面に跨がって付着された均熱板50及び均熱シート材60等を備えている。
【0024】
この床暖房マットを製造するには、長方形の基板11〜22を各々の長側辺を突き合わせてようにして配列する。この基板11〜22群の上面に第2図及び第4図の通り均熱板素板50Aを接着剤又は粘着剤によって付着させる。なお、1枚のシート状の均熱板素板50Aによってすべての基板11〜22の上面を覆うようにする。この均熱板素板50Aは、ミシン目などが全く設けられていない無孔状のものである。
【0025】
次いで第3図及び第5図の通り、上方から温水配管40を、該均熱板素板50Aを押し破って溝30内に押し込む。この温水配管40の押し込みにより、均熱板素板50Aは、溝30の中心線付近に沿って断裂して均熱板50となる。そしてこの断裂により生じた2葉の片は各々溝30の内面のうち基板上面近傍に重なり、均熱板50の縦板部52となる。均熱板素板50Aのうち、基板11〜22の上面に付着していた部分は均熱板50の主板部51となる。
【0026】
その後、すべての基板11〜22に跨がって均熱シート材60を接着剤又は粘着剤によって均熱板50の主板部51に付着させる。この均熱シート材60は、溝30を跨ぐと共に、各基板11〜22の突き合わせ部を跨いでいる。この後、温水配管40の両端をヘッダー41に接続する。
【0027】
なお、基板20,21には前記ヘッダー41を収容するための切欠部20a,21aが形成されている。
【0028】
このように構成された床暖房マット10においては、溝30のすべてに対し均熱板50の縦板部52が装着されており、温水配管40からの熱の上面放熱量が多い。
【0029】
この床暖房マット10は、第6図の通り、基板11〜22の長側辺の部分で上面側(均熱シート材60側)を谷折りするように屈曲させることができるので、前記第9図のように巻回することができる。
【0030】
この床暖房マット10にあっては、基板11〜22同士が均熱シート材60だけでなくさらに均熱板50によっても連結されているので、屈曲耐久性が良好である。この床暖房マット10を製造するに際して用いた均熱板素板50Aには、ミシン目は設けられておらず、詳細な位置合わせが不要であるため、均熱板素板50Aを基板11〜22群に貼り付ける作業がきわめて容易である。
【0031】
上記実施の形態では、床暖房マット10のベース板部分は基板11〜22のみによって構成されているが、前記第7図のように少なくとも一部の基板同士の間に小根太が介在されてもよい。この場合も、均熱板及び均熱シート材はすべての基板及び小根太を覆うように付着される。
【0032】
[材質等]
上記各部材の材質の一例として次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
基板としては例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン等の発泡合成樹脂のほか木材等を用いることができる。これらの発泡体の気泡としては、断熱性の点から独立気泡のものが好ましい。
【0034】
小根太は木材や釘打ち可能な合成木材が好ましい。
【0035】
均熱板及び均熱シート材は、厚さが10μm〜2mm程度で熱伝導性に優れたものが好ましく、例えばアルミ、銅、錫、ステンレス鋼などの金属箔が挙げられる。中でも、製造の容易さの点から、アルミ又は銅が好ましい。
【0036】
温水配管としては、可撓性を有するものが好ましく、ポリエチレン等の合成樹脂チューブが例示される。
【0037】
上記実施の形態では床暖房マットを巻くようにしているが、折り畳むようにしてもよい。
【0038】
上記実施の形態は床暖房マットに関するものであるが、本発明の温調マットは、壁、天井等に配置されてもよい。また、温水ではなく、冷水を配管に通水して冷房するようにしてもよい。水以外のオイル、不凍液等の熱媒体を流通させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態に係る温調マットとしての床暖房マットの平面図である。
【図2】第1図の床暖房マットの製造途中の分解斜視図である。
【図3】第1図の床暖房マットの製造途中の分解斜視図である。
【図4】第1図の床暖房マットの製造途中の断面図である。
【図5】第1図の床暖房マットの製造途中の断面図である。
【図6】床暖房マットの巻回状況を示す斜視図である。
【図7】従来の床暖房マットの平面図である。
【図8】従来の均熱板の斜視図である。
【図9】従来の床暖房マットの巻回状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
5 均熱板
5a U字部
5b フランジ部
10 床暖房マット
11〜22 基板
30 溝
40 温水配管
41 ヘッダー
50 均熱板
51 主板部
52 縦板部
50A 均熱板素板
60 均熱シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に配管収容用の溝が設けられた長方形状の基板が複数枚、集合状に配列された基板群と、
該溝に収容され、隣接する基板に連続して引き回されている温調用配管と、
該温調用配管と接するように溝内面から基板上面にかけて配材された均熱板と、
各基板の上面に跨がって配置された均熱シート材と
を有し、
該均熱板は、基板上面の主板部と、該主板部に連なり、前記溝の入口部内面に沿う縦板部とを有する温調マットであって、
前記均熱板の主板部は、各基板の上面に跨がって配材され、各基板の上面に付着されており、
前記均熱シート材は、該均熱板の主板部と前記溝とを覆い、該主板部に付着されていることを特徴とする温調マット。
【請求項2】
請求項1において、前記均熱板は、平板状の均熱板の素板を基板上に付着させた後、上方から該配管を該均熱板の素板を破断させて溝内に挿入することにより前記縦板部を形成したものであることを特徴とする温調マット。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記均熱板及び均熱シート材は金属箔よりなることを特徴とする温調マット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の温調マットを製造する方法であって、
各基板を配列させる工程と、
平板状の均熱板の素板を各基板の上面に跨がって付着させる工程と、
溝の上方から該均熱板の素板を押し破って配管を溝に配置させると共に、該溝の入口部内面に沿う前記縦板部を形成する工程と、
該均熱板の主板部及び溝を覆うように均熱シート材を該主板部に付着させる工程と
を有することを特徴とする温調マットの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、前記均熱板の素板は全体として無孔の板材であることを特徴とする温調マットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−122014(P2008−122014A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308073(P2006−308073)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000236159)三菱化学産資株式会社 (101)
【Fターム(参考)】