説明

温調マット用基板、その製造方法及び温調マット

【課題】温調マットの製造時や現場での施工時に、基板本体の配管配設用溝に手作業にて均熱材を嵌め付ける作業が不要である温調マット用基板及びその製造方法と、この温調マット用基板を用いた温調マットとを提供する。
【解決手段】基板1は、基板本体2と、該基板本体2の前面に設けられた溝3と、該溝3の内面から基板本体2の前面にかけて配設された均熱材4と、該均熱材4と基板本体2との間に設けられた熱融着層5等を備えている。基板1を製造する場合、第1プレス型11の凸条13に均熱材4のU字部4aを被着し、押出成形装置から第1プレス型11と第2プレス型12との間に熱融着層5を押出成形し、熱融着層5と第2プレス型12との間に基板本体2を配置し、その後、熱融着層5が溶融温度以上となっている間に、第1プレス型11と第2プレス型12とで均熱材4、熱融着層5及び基板本体2を一体的に該基板本体2の厚さ方向にプレスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の部屋の床、壁、天井等の暖房や冷房を行うための温調マットに用いられる温調マット用基板に係り、特に発泡合成樹脂よりなる板状の基板本体と、該基板本体の一方の板面から凹設された配管配設用溝と、該配管配設用溝の内面から該基板本体の該一方の板面にかけて配設された、金属材料よりなる均熱材とを備え、該均熱材は、該溝内に配置されており、該基板本体の該一方の板面側に開放した略U字形断面形状のU字部と、該U字部に連なり、該基板本体の該一方の板面に重なったフランジ部とを有している温調マット用基板に関する。
【0002】
また、本発明は、この温調マット用基板の製造方法と、この温調マット用基板を用いた温調マットに関する。
【背景技術】
【0003】
床暖房構造として、板状の基板の上面の溝に温水配管を引き回した温水床暖房が周知である。
【0004】
第5図は特開平11−257674号の床暖房構造を示す平面図であり、床下地上に、長方形の板状の基板101が長側辺を平行にして、且つ相互間に小根太102を介して配列されている。この基板101の上面の溝に温水配管103が収容されている。温水配管103は、隣接する基板101に跨がって連続して引き回され、両端がそれぞれヘッダー104に接続されている。
【0005】
この溝内面から基板上面にかけて均熱材105が配置されている。この均熱材105は、周知(例えば特開2002−295853号)の通り、第6図に示す略Ω字形断面形状のものである。即ち、この均熱材105は、U字部105aと、該U字部105aの両端からそれぞれ反対方向に張り出すフランジ部105bとからなり、U字部105aが溝内に配置され、フランジ部105bが基板101の上面に配置される。この均熱材105は熱伝導率が高いアルミ製、銅製とされることが多い。
【0006】
第5図では、基板101を現場で1枚ずつ、相互間に小根太102を配材しながら敷設施工した後、各基板101の溝に均熱材105を嵌め込み、この均熱材105を介して温水配管103を各基板101の溝内に収容し、その上にアルミ箔などの均熱シート(図示略)を展開配置し、その上に表層材106を施工している。
【0007】
このような現場施工の作業数を減らすために、予め工場にて、所定枚数の基板101及び所定本数の小根太102を交互に配列して所定の外形寸法のマット体を形成し、各基板101の溝に均熱材105を嵌め込み、この均熱材105を介して各基板101の溝内に温水配管103を収容した後、各基板101の上面及び各小根太102の上面に跨って均熱シートを貼り付けてこれらをユニット化したものを現場に搬入して施工することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−257674号
【特許文献2】特開2002−295853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
各基板101の溝に均熱材105を嵌め付ける作業は、手作業にて行われる。この際、各基板101の溝に均熱材105のU字部105aを嵌め込んだ後、この均熱材105がずれたり外れたりしないように、テープや接着剤等でフランジ部105bを各基板101の上面に貼り付ける。しかしながら、この作業は、きわめて煩雑である。また、均熱材105を指等で溝に押し込んだときに均熱材105が変形したり破れたりしないようにするために、均熱材105の厚さを大きくするなどして均熱材105の強度及び剛性を高める必要がある。また、テープや接着剤等により均熱材105を基板101の上面に貼り付けた場合、該均熱材105と基板101との結合強度が低く、運搬時等に均熱材105が基板101の上面から剥がれ落ちるおそれがある。
【0010】
上記特開2002−295853号では、U字部105aを折り畳んでおき、この折り畳まれたU字部105aが溝に重なるように均熱材105を基板101の上面に貼り付けた後、このU字部105aの上から温水配管103を溝に押し込むことにより、このU字部105aを溝内に展開させながら温水配管103を溝内に収容している。しかしながら、この場合、折り畳まれたU字部105aが確実に溝内に位置するように均熱材105を手作業にて各基板101の上面に貼り付けるのは容易ではない。即ち、均熱材105を基板101の上面に貼り付ける際に、この均熱材105が少しでもずれると、折り畳まれたU字部105aが基板101とフランジ部105bとの間に挟みこまれて該基板101の上面に接着されてしまうおそれがある。この場合、温水配管103を溝内に入り込ませようとしても、U字部105aが溝内に展開し得ないため、温水配管103を溝内に収容することができなくなる。
【0011】
本発明は、温調マットの製造時や現場での施工時に、基板本体の配管配設用溝に手作業にて均熱材を嵌め付ける作業が不要であり、且つ均熱材と基板本体との結合強度が高い温調マット用基板及びその製造方法と、この温調マット用基板を用いた温調マットとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)の温調マット用基板は、発泡合成樹脂よりなる板状の基板本体と、該基板本体の一方の板面から凹設された配管配設用溝と、該配管配設用溝の内面から該基板本体の該一方の板面にかけて配設された、金属材料よりなる均熱材とを備え、該均熱材は、該配管配設用溝内に配置されており、該基板本体の該一方の板面側に開放した略U字形断面形状のU字部と、該U字部に連なり、該基板本体の該一方の板面に重なったフランジ部とを有している温調マット用基板において、該均熱材の少なくとも該フランジ部と該基板本体との間に、熱可塑性樹脂よりなる熱融着層が設けられており、該熱融着層が該均熱材と該基板本体とに熱融着することによりこれらが一体化されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の温調マット用基板は、請求項1において、前記熱融着層は、前記均熱材の少なくとも前記フランジ部の前記基板本体側に設けられた第1の熱融着層と、該第1の熱融着層と該基板本体との間に設けられた第2の熱融着層とを有しており、該第1の熱融着層は、該均熱材を構成する前記金属材料に対し熱融着性を有する第1の熱可塑性樹脂よりなり、該第2の熱融着層は、該基板本体を構成する前記発泡合成樹脂及び該第1の熱可塑性樹脂の双方に対し熱融着性を有する第2の熱可塑性樹脂よりなり、該第1の熱融着層が該均熱材に熱融着し、該第1の熱融着層と第2の熱融着層とが熱融着し、該第2の熱融着層が該基板本体に熱融着することによりこれらが一体化されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の温調マット用基板は、請求項2において、前記均熱材はアルミニウム又はアルミニウム合金よりなり、前記基板本体は発泡ポリスチレンよりなり、前記第1の熱融着層はポリプロピレンよりなり、前記第2の熱融着層は、ポリプロピレンとポリスチレンとの混練樹脂よりなることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の温調マット用基板は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記基板本体は、前記配管配設用溝の底部が該基板本体の前記他方の板面に露呈する厚さとなっており、該基板本体の該他方の板面に沿って、該配管配設用溝の底部を塞ぐ裏張りシートが設けられており、前記熱融着層は、該配管配設用溝内に配置された前記U字部と該裏張りシートとの間にまで設けられており、該熱融着層が該U字部と裏張りシートとに熱融着することにより、該U字部に該裏張りシートが連結されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明(請求項5)の温調マット用基板の製造方法は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温調マット用基板を製造する方法であって、前記熱融着層を、該熱融着層を構成する前記熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱して前記基板本体と前記均熱材との間に配材する配材工程と、該熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている状態において、該熱融着層を該基板本体と該均熱材とに接触させることにより、該熱融着層を該基板本体と該均熱材とに熱融着させてこれらを一体化する一体化工程とを行うことを特徴とするものである。
【0017】
請求項6の温調マット用基板の製造方法は、請求項5において、前記熱融着層を、押出成形装置を用いて形成することを特徴とするものである。
【0018】
請求項7の温調マット用基板の製造方法は、請求項6において、前記押出成形装置は、前記熱融着層を構成する前記熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱し、該熱可塑性樹脂を前記基板本体と前記均熱材との間に押し出して該熱融着層を形成するものであることを特徴とするものである。
【0019】
請求項8の温調マット用基板の製造方法は、請求項5ないし7のいずれか1項において、前記一体化工程において、前記熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている状態において、プレス成形装置を用いて前記均熱材、熱融着層及び基板本体を一体的に該基板本体の厚さ方向にプレスすることにより、該熱融着層を該基板本体と該均熱材とに熱融着させることを特徴とするものである。
【0020】
請求項9の温調マット用基板の製造方法は、請求項8において、前記プレス成形装置は、前記基板本体の前記一方の板面側から押圧する第1のプレス型と、該基板本体の他方の板面側から押圧する第2のプレス型とを備えており、該第1のプレス型には、該基板本体の前記配管配設用溝に係合する凸条が設けられており、前記配材工程において、該凸条に前記均熱材の前記U字部を被着し、該第1のプレス型と第2のプレス型との間に、前記熱融着層を、該熱融着層を構成する前記熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱して配材し、該熱融着層と第2のプレス型との間に該基板本体を配材し、前記一体化工程において、該熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている状態において、該凸条を該基板本体の前記配管配設用溝に係合させながら該第1のプレス型と第2のプレス型とを所定距離まで接近させることにより、該熱融着層を介して該均熱材の前記U字部を該配管配設用溝内に配置し、且つ該均熱材の前記フランジ部を該基板本体の前記一方の板面に重ね合わせると共に、該均熱材、熱融着層及び基板本体を一体的に該基板本体の厚さ方向にプレスして該熱融着層を該基板本体と該均熱材とに熱融着させることを特徴とするものである。
【0021】
請求項10の温調マット用基板の製造方法は、請求項9において、前記配材工程において、前記熱融着層は、前記基板本体の前記一方の板面の略全体を覆うように配材され、前記一体化工程において、該基板本体は、該一方の板面の略全体が該熱融着層を介して前記第1のプレス型によりプレスされることを特徴とするものである。
【0022】
請求項11の温調マット用基板の製造方法は、請求項9又は10において、前記一体化工程において、前記第1のプレス型により前記均熱材の前記フランジ部を押圧して前記基板本体に埋没させ、これにより該フランジ部の該基板本体と反対側の面と、該基板本体の前記一方の板面とを略面一状とすることを特徴とするものである。
【0023】
本発明(請求項12)の温調マットは、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温調マット用基板と、該温調マット用基板の前記均熱材の前記U字部を介して前記基板本体の前記配管配設用溝内に収容された熱媒体流通用配管と、該基板本体の前記一方の板面を覆うように配置され、該基板本体の該一方の板面及び該均熱材の前記フランジ部に付着された均熱シートとを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の温調マット用基板は、基板本体と、その配管配設用溝に配置された均熱材との間に熱融着層が設けられ、この熱融着層を介して基板本体と均熱材とが一体化されたものとなっている。本発明の温調マット用基板を製造するに当っては、この熱融着層を、該熱融着層を構成する熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱して基板本体と均熱材との間に配材し(配材工程)、この熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている状態において、この熱融着層を基板本体と均熱材とに接触させることにより、この熱融着層を基板本体と均熱材とに熱融着させてこれらを一体化する(一体化工程)。このようにして製造された本発明の温調マット用基板にあっては、基板本体と均熱材とに熱融着した熱融着層により均熱材が基板本体に貼り付けられているので、接着剤等により均熱材を基板本体に接着したものに比べて、均熱材の基板本体への結合強度が高い。
【0025】
本発明の温調マット用基板にあっては、予め基板本体と均熱材とが熱融着層を介して一体化されているので、温調マットの製造時や温調床の施工時などに、手作業にて均熱材のU字部を配管配設用溝に嵌め込み、フランジ部をテープや接着剤等により基板本体に貼り付ける作業が不要である。これにより、温調マットの製造作業や温調床の施工作業を容易化することができる。
【0026】
本発明の温調マット用基板にあっては、均熱材の各フランジ部が熱融着層を介して基板本体の板面に結着されているため、温調マットを製造するに当り、基板本体の板面のうち各フランジ部の周囲に露呈した部分だけでなく、各フランジ部にも均熱シートを貼り付けることにより、この均熱シートの貼り付け強度が高いものとなる。また、これにより、均熱シートの貼り付け強度を高めるために各フランジ部の周囲の基板本体の板面の露呈部分の面積を大きくする必要がないため、各フランジ部のU字部からの延出長さを大きくすることができる。これにより、マット前面の放熱量を増大させることも可能である。
【0027】
請求項2の通り、熱融着層を、均熱材を構成する金属材料に対し熱融着性を有する第1の熱可塑性樹脂よりなる第1の熱融着層と、基板本体を構成する発泡合成樹脂及び該第1の熱可塑性樹脂の双方に対し熱融着性を有する第2の熱可塑性樹脂よりなる第2の熱融着層とによって構成し、第1の熱融着層を均熱材に熱融着させ、該第1の熱融着層と第2の熱融着層とを熱融着させ、該第2の熱融着層を基板本体に熱融着させるようにすることにより、均熱材と基板本体とを熱融着層を介して強固に一体化することができる。
【0028】
請求項3の通り、均熱材がアルミニウム又はアルミニウム合金よりなり、基板本体が発泡ポリスチレンよりなる場合には、この第1の熱融着層をポリプロピレンにより構成し、第2の熱融着層をポリプロピレンとポリスチレンとの混練樹脂により構成することが好ましい。
【0029】
請求項4の通り、基板本体を、配管配設用溝の底部が該基板本体の他方の板面に露呈する厚さとし、この基板本体の該他方の板面に沿って、配管配設用溝の底部を塞ぐ裏張りシートを設けた場合には、熱融着層を配管配設用溝内の均熱材のU字部と裏張りシートとの間にまで設け、この熱融着層を該U字部と裏張りシートとに熱融着させて該U字部に裏張りシートを連結することが好ましい。このように構成することにより、裏張りシートを手作業にて基板本体に貼り付ける作業が不要になると共に、裏張りシートを基板本体に貼り付けるための両面テープ等も不要となる。
【0030】
本発明では、請求項6の通り、この熱融着層を、押出成形装置を用いて形成することが好ましい。この場合、請求項7の通り、この押出成形装置により、熱融着層を構成する熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱し、この熱可塑性樹脂を基板本体と均熱材との間に押し出して熱融着層を形成することにより、容易に溶融温度以上の熱融着層を基板本体と均熱材との間に配材することが可能である。また、この押出成形装置から溶融温度以上の熱融着層を連続的に押出成形することができるので、温調マット用基板の製造サイクルを効率よく繰り返すことができる。
【0031】
本発明では、請求項8の通り、一体化工程においては、熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている間に、プレス成形装置を用いて均熱材、熱融着層及び基板本体を一体的に該基板本体の厚さ方向にプレスすることにより、この熱融着層を基板本体と均熱材とに熱融着させるようにすることが好ましい。このようにすることにより、熱融着層を基板本体と均熱材とに容易に且つ確実に熱融着させてこれらを一体化することができる。
【0032】
この場合、請求項9の通り、プレス成形装置として、基板本体の一方の板面側から押圧する第1のプレス型と、該基板本体の他方の板面側から押圧する第2のプレス型とを備え、且つ該第1のプレス型には、基板本体の配管配設用溝に係合する凸条が設けられたものを用いるのが好ましい。配材工程においては、この第1のプレス型の凸条に均熱材のU字部を被着し、この第1のプレス型と第2のプレス型との間に、熱融着層を、該熱融着層を構成する熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱して配材し、この熱融着層と第2のプレス型との間に基板本体を配材する。そして、一体化工程においては、この熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている間に、第1のプレス型の凸条を基板本体の配管配設用溝に係合させながら該第1のプレス型と第2のプレス型とを所定距離まで接近させる。これにより、均熱材のU字部が凸条に押されて配管配設用溝内に配置され、且つこの均熱材のフランジ部が第1のプレス型に押されて基板本体の一方の板面に重ね合わされると共に、該均熱材、熱融着層及び基板本体が一体的に該基板本体の厚さ方向にプレスされ、該熱融着層が基板本体と均熱材とに熱融着する。
【0033】
このようにして温調マット用基板を製造した場合、第1のプレス型を用いて均熱材のU字部を配管配設用溝内に配置すると共に、各フランジ部を基板本体の板面に重ね合わせているので、この均熱材のU字部及び各フランジ部がそれぞれ配管配設用溝の内面と基板本体の板面とに沿って精度よく配置される。これにより、前述のように各フランジ部のU字部からの延出長さを大きくしても、各フランジ部がめくれたりすることなく、精度よく基板本体の板面に沿って配置される。また、このように第1のプレス型を用いて均熱材を配管配設用溝に嵌め付けることにより、作業者が指等で押して均熱材を配管配設用溝に嵌め付ける場合に比べて均熱材が変形しにくいことから、均熱材の要求強度及び要求剛性が緩和される。これにより、均熱材の厚さを従来品よりも小さくすることができる。また、均熱材の材質選択の自由度も拡大する。この結果、資材コストの低減を図ることが可能となる。
【0034】
また、このようにして温調マット用基板を製造した場合、この第1のプレス型と、基板本体の他方の板面に係合する第2のプレス型とによって均熱材、熱融着層及び基板本体を一体的に該基板本体の厚さ方向にプレスするため、温調マット用基板の厚さ方向の寸法精度も高いものとなる。
【0035】
本発明では、温調マット用基板を製造するに際し、請求項10の通り、熱融着層を、基板本体の一方の板面の略全体を覆うように形成し、一体化工程において、基板本体の該一方の板面の略全体を、この熱融着層を介して第1のプレス型によりプレスすることが好ましい。このようにした場合、一体化工程においては、基板本体の板面の略全体に熱融着層が接触して該基板本体の板面の略全体が溶融し、第1のプレス型によって該基板本体の板面の略全体が再成形される。これにより、この一体化工程において基板本体が第1のプレス型と第2のプレス型とによって圧縮されることと相俟って、基板本体は、その板面の中央部から周縁部まで厚さが略均等なものとなり、基板の厚さ方向の寸法精度が向上する。
【0036】
また、請求項11の通り、この一体化工程において、第1のプレス型により均熱材のフランジ部を押圧して基板本体に埋没させ、これにより該フランジ部の基板本体と反対側の面と、基板本体の板面とを略面一状とすることが好ましい。このようにすることにより、温調マットを製造するに当り、温調マット用基板を覆うように均熱シートを貼り付けても、このフランジ部によって均熱シートの前面に段差が生じないため、この均熱シートの前面の略全体を略均一に床仕上げ材等の内装材に接触又は対峙させることができるようになるので、ムラなく暖房や冷房を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施の形態に係る温調マット用基板の断面図である。
【図2】図1の基板と、この基板をプレスするための金型との分解断面図である。
【図3】図1の基板の一体化工程を示す断面図である。
【図4】第2の実施の形態に係る温調マット用基板の断面図である。
【図5】従来の床暖房構造の平面図である。
【図6】均熱材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第1の実施の形態]
以下に、第1〜3図を参照して第1の実施の形態について説明する。
【0039】
第1図は第1の実施の形態に係る温調マット用基板(以下、基板と略す。)の配管配設用溝付近の断面図、第2図はこの基板と、この基板をプレスするためプレス型との分解断面図、第3図はこの基板の一体化工程を示す断面図である。
【0040】
なお、以下の説明において、基板の前面とは、この基板を用いた温調マットが建物の室の床や壁、天井等に設置されたときに室内側となる板面をいい、これと反対側の板面を裏面という。
【0041】
基板1は、板状の基板本体2と、該基板本体2の前面から凹設された配管配設用溝(以下、溝と略す。)3と、該溝3の内面から基板本体2の前面にかけて配設された均熱材4と、該均熱材4と基板本体2との間に設けられた熱融着層5等を備えている。該基板本体2は、発泡ポリスチレン等の発泡合成樹脂よりなる。
【0042】
この実施の形態では、溝3は、基板本体2を厚さ方向に貫通し、底部が該基板本体2の裏面に露呈している。この溝3の幅及び深さは、基板1を用いて構成される温調マットの熱媒体流通用配管(図示略)の外径と略等しいものとなっている。即ち、この実施の形態では、基板本体2の厚さも、該熱媒体流通用配管の外径と略同等となっている。この実施の形態では、溝3は、基板本体2の前面側から裏面側まで幅が略一定の略方形断面形状となっている。ただし、溝3の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、底部が該熱媒体流通用配管の外面に沿うように略半円弧状に湾曲した略U字形断面形状であってもよい。温調マットに用いられる熱媒体流通用配管の外径は4〜20mm特に5.5〜7mm程度であることが好ましく、溝3の幅及び深さ即ち基板本体2の厚さは、この熱媒体流通用配管の外径+0〜1mm特に0〜0.2mm程度であることが好ましい。
【0043】
なお、図示は省略するが、基板本体2には、所定の配管パターンに従って複数条の溝3が設けられている。一般的には、温調マットは、複数枚の略長方形の基板1と複数本の小根太(図示略)とを、各々の長手方向を略平行方向として交互に配列してなる略長方形状のマット体を有している。このマット体において、各小根太の一端側又は他端側あるいは長手方向の途中部には、隣り合う基板1,1同士を連結する連結スペース(符号略)が形成されており、溝3は、この連結スペースを通って隣り合う一方の基板1から他方の基板1に連続したものとなっている。各基板1のうち該連結スペースとその近傍部並びにマット体の外縁近傍部以外の部分では、溝3は、各基板1の短手方向に所定の間隔をあけて配列され、それぞれ各基板1の長手方向と略平行方向に直線状に延在している。
【0044】
規格品の温調マットにおいては、隣り合う小根太同士の軸心間距離は、実質的に303mmとされている。各小根太の太さは、一般的に45mm程度とされ、各基板1の幅は258mm程度とされる。各基板1には、2〜16条特に4〜8条の溝3が設けられることが好ましい。基板1のうち、各溝3が直線状に延在した部分においては、隣り合う溝3同士の間隔(軸心間距離)は15〜228mm特に26〜75mm程度であることが好ましい。
【0045】
各基板1の溝3のうち、上記連結スペースを通って隣接する基板1の溝3に連なるものは、該連結スペースの近傍部から該連結スペースに向かってカーブするように延在している。また、連結スペースに向かわずにマット体の外縁近傍まで延在した溝3は、この外縁近傍においてマット体の反対側へUターンするように延在している。
【0046】
小根太の長手方向における各基板1の長さをマット体の幅よりも小さいものとし、マット体を形成するに際しては、小根太の長手方向にも複数枚、基板1を配列するように構成することもある。この場合、基板1として、マット体のうち連結スペース及びその近傍部を構成するもの、該マット体の外縁近傍部を構成するもの、並びにこれら以外の部分を構成するものなど数種類を用意する。連結スペース及びその近傍部を構成する基板1には、該連結スペースに向かってカーブした溝3が設けられ、マット体の外縁近傍部を構成する基板1にはUターンするように延在した溝3が設けられ、これら以外の部分を構成する基板1には直線状に延在した溝3が設けられる。これらの基板1を、各々の溝3同士が所定の配管パターンにて連続するように適宜組み合わせてマット体を形成する。
【0047】
この実施の形態では、基板本体2の裏面側に、各溝3の底部を塞ぐ裏張りシート6が設けられている。この実施の形態では、該裏張りシート6は、基板本体2の裏面の略全体を覆っているが、細長い帯状とされ、溝3を1条ずつ覆うように配設されてもよい。この裏張りシート6は、低熱伝導材よりなることが好ましい。この低熱伝導材としては、不織布や合成樹脂シートあるいは紙等を用いることができる。これらの低熱伝導材の熱伝導率は、通常、0.02〜0.5W/m・k、好ましくは0.02〜0.1W/m・kである。
【0048】
この実施の形態では、均熱材4は、溝3内に配置されたU字部4aと、該U字部4aに連なり、基板本体2の前面に沿って配置されたフランジ部4bとを有している。第1図の通り、該U字部4aは、基板本体2の前面側に開放した略U字形断面形状となっている。このU字部4aの基板本体2前面側の両端部から溝3の両側の該基板本体2の前面に沿って側方へ1対のフランジ部4bが延出している。この均熱材4は金属材料よりなる。この均熱材4を構成する金属材料としては、熱伝導率が高いアルミニウム又はアルミニウム合金や、銅等が好適である。ただし、均熱材4の材質はこれに限定されない。
【0049】
この実施の形態では、均熱材4の裏面に沿って、該均熱材4を構成する金属材料に対し熱融着性を有する熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)よりなる第1の熱融着層としての第1熱融着シート5aが配設されている。例えば均熱材4がアルミニウム又はアルミニウム合金製である場合には、この第1熱融着シート5aを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS、ポリエチレンテレフタレート等が好適である。この第1熱融着シート5aの厚さは1μm〜1mm特に10μm〜20μmであることが好ましい。
【0050】
この実施の形態では、該第1熱融着シート5aは、基板1の製造に先立ち、予めドライラミネート等により均熱材4の裏面に付着されたものとなっている。なお、均熱材4に第1熱融着シート5aを付着させる方法はこれに限定されない。この第1熱融着シート5a付き均熱材4の製作方法としては、例えば、均熱材4を製作するためのアルミ板等の基材の表面に予め第1熱融着シート5aをラミネートしておき、この第1熱融着シート5a付き基材から均熱材4を製作するようにしてもよく、均熱材4を製作した後に、その裏面に第1熱融着シート5aをラミネートするようにしてもよい。
【0051】
この実施の形態では、後述のように熱融着層5によって裏打ちシート6をU字部4aの底部に連結するために、第1熱融着シート5a(及び後述の第2熱融着シート5b)を均熱材4の裏面全体に設けているが、裏打ちシート6を設けない場合や、裏打ちシート6を他の手段により基板本体2の裏面側に保持する場合など、U字部4aの裏側に熱融着層5が不要な場合には、各フランジ部4bの裏面にのみ第1熱融着シート5aを設けてもよい。
【0052】
この実施の形態では、該第1熱融着シート5aと基板本体2との間に、第2の熱融着層としての第2熱融着シート5bが設けられている。この第2熱融着シート5bは、基板本体2を構成する発泡合成樹脂と、第1熱融着シート5aを構成する第1の熱可塑性樹脂との双方に対し熱融着性を有する熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂)よりなる。例えば基板本体2が発泡ポリスチレンよりなり、均熱材4がアルミニウム又はアルミニウム合金よりなり、第1熱融着シート5aをポリプロピレンにより構成した場合には、この第2熱融着シート5bを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(以下、PPと略すことがある。)とポリスチレン(以下、PSと略すことがある。)との混練樹脂(以下、PP/PS混練樹脂という。)が好適である。
【0053】
第2熱融着シート5bをPP/PS混練樹脂製とした場合、PPとPSの混合比は、重量比でPP:PS=7:3程度であることが好ましい。通常、混練樹脂を安定させるために、これにタルクを5〜10重量%程度混合する。なお、PPとPSとの混合比や、他の混合物の種類及び混合比は、基板1の他の部材や製造条件等に応じて適宜設定される。このように配合した樹脂ペレットを押出成形装置に供給し、該押出成形装置によりこの樹脂を溶融温度以上に加熱しながら混練してシート状に押し出し成形することにより、第2熱融着シート5bが形成される。第2熱融着シート5bをPP/PS混練樹脂製とした場合には、この混練樹脂は200〜230℃に加熱されて成形される。
【0054】
この実施の形態では、第2熱融着シート5bは、後述の通り、基板1を製造する際の配材工程において、押出成形装置によりシート状に成形されながら、第1プレス型11と基板本体2との間に溶融パリソンとして押し出される。この第2熱融着シート5bの溶融パリソンが第1熱融着シート5a付き均熱材4と基板本体2との間に配置され、後述の一体化工程においてこれらが基板本体2の厚さ方向にプレスされることにより、該第1熱融着シート5aが第2熱融着シート5bにより加熱されて溶融し、これらの熱融着シート5a,5b同士が熱融着すると共に、該第1熱融着シート5aが均熱材4に熱融着する。また、基板本体2の前面が第2熱融着シート5bにより加熱されて溶融し、これらの基板本体2と第2熱融着シート5bとが熱融着する。
【0055】
この実施の形態では、第2熱融着シート5bは、基板本体2の前面の略全体を覆う大きさとなっている。この第2熱融着シート5bの厚さは1μm〜2mm特に0.1mm〜0.2mmであることが好ましい。
【0056】
この基板1の製造方法について、第2,3図を参照して説明する。
【0057】
この基板1は、プレス成形装置及び押出成形装置(図示略)を用いて製造される。このプレス成形装置は、基板1の前面側に配置される第1プレス型11と、基板1の裏面側に配置される第2プレス型12と、該第1プレス型11と第2プレス型12とを接近させるプレス機(図示略)と、後述の一体化工程において第1熱融着シート5aと第2熱融着シート5bとの間等から空気を抜く排気装置(図示略)等を備えている。
【0058】
第1プレス型11の基板本体2との対峙面には、該基板本体2の溝3に係合する凸条13が設けられている。この第1プレス型11の基板本体2との対峙面のうち凸条13以外の部分は、全体が略面一状の平坦面となっている。即ち、この第1プレス型11の基板本体2との対峙面のうち、該凸条13に被着された均熱材4の各フランジ部4bが重なる部分は、その周囲の部分(第2熱融着シート5bを介して基板本体2の前面が重なる部分)と略面一となっている。
【0059】
第2,3図の通り、この凸条13は、上端が丸みを帯びた逆U字形断面形状となっており、この凸条13に均熱材4のU字部4aを被せたときに、該凸条13の外周面とU字部4aの内周面とが略密着するようになっている。前記排気装置は、後述の一体化工程において、凸条13に被着されたU字部4aの内周面と該凸部13の外周面との間からも排気するように構成されている。なお、均熱材4を穴あきシート状材料により構成し、この穴から空気を排出させて空気溜まりをなくす手法をとってもよい。
【0060】
前記押出成形装置は、第2熱融着シート5bを成形するためのものである。即ち、この押出成形装置は、該第2熱融着シート5bを構成する熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱し、溶融状態の熱可塑性樹脂をシート状に成形しながら押し出すことにより、連続して所定幅及び所定厚みの第2熱融着シート5bを形成するものである。本発明においては、この押出成形装置は、シート状に成形した溶融状態の熱可塑性樹脂を第1プレス型11と第2プレス型12との間に押し出すように設置されている。この実施の形態では、該押出成形装置は、基板本体2の前面の略全体を覆う大きさの第2熱融着シート5bを押出成形するように構成されている。
【0061】
基板1の製造に先立ち、溝3付き基板本体2、第1熱融着シート5a付き均熱材4、並びに裏張りシート6をそれぞれ製作しておく。なお、基板本体2は、後述の一体化工程の最終段階における第1プレス型11と第2プレス型12との間隔S(第3図)よりも厚みが大きくなるように成形される。
【0062】
基板1を製造する場合には、まず、第1プレス型11の凸条13に均熱材4のU字部4aを被着する。次いで、押出成形装置から第1プレス型11と第2プレス型12との間に溶融状態の熱可塑性樹脂を押し出して第2熱融着シート5bを形成する。次いで、この第2熱融着シート5bと第2プレス型12との間に基板本体2を配置する。また、この基板本体2と第2プレス型12との間に裏打ちシート6を配置する(配材工程)。なお、裏打ちシート6は、基板本体2を第1プレス型11と第2プレス型12との間に配置する前に第2プレス型12に沿って配置してもよく、基板本体2を第1プレス型11と第2プレス型12との間に配置してから該基板本体2と第2プレス型12との間に配置してもよく、基板本体2の裏面に重ねておき、該基板本体2と一緒に第1プレス型11と第2プレス型12との間に配置してもよい。
【0063】
その後、押出成形装置から押し出された第2熱融着シート5bを構成する熱可塑性樹脂の温度が溶融温度以上となっている間に、凸条13を基板本体2の溝3に係合させながら、第1プレス型11と第2プレス型12とを所定距離Sまで接近させる(一体化工程)。これにより、第2熱融着シート5bを介して第1熱融着シート5a付き均熱材4のU字部4aが凸条13により溝3内に押し込まれると共に、フランジ部4bが該第2熱融着シート5bを介して基板本体2の前面に重ね合わされる。また、第1プレス型11と第2プレス型12とによって該均熱材4、第1熱融着シート5a、第2熱融着シート5b、基板本体2及び裏打ちシート6が一体的に該基板本体2の厚さ方向にプレスされる。
【0064】
この際、前記排気装置により第1熱融着シート5aと第2熱融着シート5bとの間及びU字部4aの内周側と凸条13との間から空気を抜き、これらを密着させる。なお、排気装置により第2熱融着シート5bと基板本体2との間からも排気するようにしてもよい。
【0065】
この第2熱融着シート5bは溶融温度以上となっているので、これと接触した第1熱融着シート5aも該第2熱融着シート5bからの熱により溶融する。これにより、該熱融着シート5a,5b同士が熱融着して熱融着層5を形成すると共に、第1熱融着シート5aが均熱材4の裏面に熱融着する。また、均熱材4と反対側で第2熱融着シート5bと接触した基板本体2の前面も該第2熱融着シート5bからの熱により溶融し、これにより第2熱融着シート5bが基板本体2の前面に熱融着する。さらに、溝3内のU字部4aの裏側において、該U字部4aを介して凸条13により熱融着層5(第2熱融着シート5b)が裏打ちシート6に押し付けられて熱融着し、これにより裏打ちシート6が該U字部4aに連結される。この結果、熱融着層5を介して均熱材4、基板本体2及び裏打ちシート6が一体化される。
【0066】
この実施の形態では、第2熱融着シート5bは基板本体2の前面の略全体を覆う大きさとなっているため、基板本体2の前面の略全体がこの第2熱融着シート5bと接触し、この第2熱融着シート5bからの熱により溶融する。そして、この状態で第1プレス型11によってプレスされることにより、基板本体2の前面が該第1プレス型11によって再成形される。なお、第1のプレス型11の基板本体2との対峙面は、凸条13を除いた略全体が略面一な平坦面となっているので、基板本体2の前面は、この再成形により、その中央部から外周側までレベル差のない平坦面となる。
【0067】
また、この際、基板本体2の前面に重なった均熱材4の各フランジ部4bは、この第1プレス型11に押されて溶融状態の該基板本体2の前面に没する。これにより、各フランジ部4bの前面は、その周囲の基板本体2の前面(該基板本体2の前面に熱融着した熱融着シート5bの前面)と略面一となる。
【0068】
その後、第2熱融着シート5bを基板本体2の外縁に沿ってカットし、冷却し、脱型することにより、基板本体2と均熱材4と裏張りシート6とが熱融着層5を介して一体化された基板1が完成する。その後、次の製造サイクルに移行する。
【0069】
前述の通り、この基板1としては、温調マットのマット体の連結スペース及びその近傍部を構成するもの、マット体の外縁近傍部を構成するもの、並びにこれら以外の部分を構成するものなど、溝3のパターンが異なる数種類の基板1が製造される。そして、これらの基板1を適宜組み合わせて温調マットのマット体を形成する。なお、このマット体のうち溝3が湾曲した部分にのみ本発明の基板1を用い、溝3が直線状に延在した部分には、均熱材4が基板本体2と予め一体化されていない従来品の基板(図示略)を用いてもよい。これは、湾曲した溝3に手作業にて均熱材4を嵌め着けるのは容易ではないが、直線状の溝3に手作業にて均熱材4を嵌め着けるのは比較的容易だからである。この場合、従来品の基板の溝3への均熱材4の嵌め着け作業は、各基板の配列前に行ってもよく、配列後に行ってもよい。
【0070】
マット体を形成した後、各基板1に跨って溝3(均熱材4のU字部4a)内に熱媒体流通用配管を引き回す。その後、各基板1の前面に跨って均熱シート(図示略)を配置し、各基板1の前面及びこれらの間の各小根太の前面にこの均熱シートを貼り付ける。この均熱シートにより、マット体を構成する各基板1と各小根太とが一体化される。この均熱シートの裏面には、予め粘着材又は接着材が付着されていることが好ましい。この均熱シートを各基板1の前面に貼り付けるに際しては、均熱材4の各フランジ部4bの周囲に露呈した基板本体2の前面だけでなく、各フランジ部4bの前面にも均熱シートを貼り付ける。本発明の基板1にあっては、各フランジ部4bは熱融着層5によって基板本体2の前面に結着されているので、均熱シートを基板本体2の前面だけでなく各フランジ部4bにも貼り付けることにより、均熱シートの貼り付け強度が高いものとなる。これにより、温調マットが完成する。
【0071】
この温調マットを用いて例えば暖房床を構築する場合には、床下地上にこの温調マットを敷設し、温水供給源(図示略)にこの温調マットの熱媒体流通用配管を接続する。また、必要に応じ、この温調マットの周囲の床下地上に該温調マットと略同厚さのダミー材(図示略)を敷設する。その後、この温調マット上(及びダミー材上)に床仕上げ材(図示略)を敷設することにより、暖房床の施工が完了する。
【0072】
なお、このように予めユニット化された温調マットを施工現場へ搬入する代わりに、現場にて基板1、小根太、熱媒体流通用配管、均熱シート等を床下地上に施工して暖房床を構築するようにしてもよい。
【0073】
このようにして製造された基板1は、基板本体2と均熱材4とに熱融着した熱融着層5により均熱材4が基板本体2に貼り付けられているので、接着剤等により均熱材4を基板本体2に接着したものに比べて、均熱材4の基板本体2への結合強度が高い。また、この基板1は、予め均熱材4と裏打ちシート6とが基板本体2と一体化された状態で出荷されるため、温調マットの製造時や温調床の施工時等に手作業で均熱材4及び裏打ちシート6を基板本体2に取り付ける作業が不要である。これにより、温調マットの製造作業や温調床の施工作業を容易化することができる。
【0074】
この基板1を製造するに当っては、基板本体2の前面及び溝3に係合する第1プレス型11を用いて均熱材4を該溝3に嵌め付けているので、この均熱材4のU字部4a及び各フランジ部4bがそれぞれ溝3の内面と基板本体2の板面とに沿って精度よく配置される。なお、この実施の形態では、一体化工程において、排気装置により均熱材4と第1プレス型11の凸条13との間の空気を抜くようにしているので、均熱材4が第1プレス型11の表面に密着し、均熱材4を該溝3に嵌め付ける際に均熱材4が変形しにくい。これにより、溝3に嵌め付けた後の均熱材4の形状精度も高いものとなる。
【0075】
また、このように第1プレス型11を用いて均熱材4を溝3に嵌め付けることにより、作業者が指等で押して均熱材4を溝3に嵌め付ける場合に比べて均熱材4が変形しにくいことから、均熱材4の要求強度及び要求剛性が緩和される。これにより、均熱材4の厚さを従来品よりも小さくすることができる。また、均熱材4の材質選択の自由度も拡大する。この結果、資材コストの低減を図ることが可能となる。なお、従来品においては、例えば均熱材4をアルミ製とした場合、その形状を保持するために、均熱材4の厚さを100μm以上とする必要があったが、この基板1にあっては、例えば均熱材4の厚さを50μm程度としても十分に精度よく均熱材4を溝3に嵌め付けることができる。
【0076】
この基板1にあっては、均熱材4の各フランジ部4bが熱融着層5を介して基板本体2の前面に結着されているため、均熱シートを、基板本体2の前面のうち各フランジ部4bの周囲に露呈した部分だけでなく、各フランジ部4bの前面にも貼り付けることにより、均熱シートの貼り付け強度が高いものとなる。また、これにより、均熱シートの貼り付け強度を高めるために各フランジ部4bの周囲の基板本体2の前面の露呈部分の面積を大きくする必要がないため、各フランジ部4bのU字部4aからの延出長さを大きくすることができる。これにより、温調マット前面の放熱量を増大させることも可能である。
【0077】
この基板1にあっては、その製造時の一体化工程において、基板本体2の前面に重なった均熱材4の各フランジ部4bが第1プレス型11に押されて基板本体2の前面に埋没することにより、各フランジ部4bの前面と基板本体2の前面とが略面一となっている。これにより、この基板1の前面に貼り付けられた均熱シートの前面に、各フランジ部4bによって段差が生じないため、この均熱シートの前面の略全体を略均一に床仕上げ材等の内装材に接触又は対峙させることができるようになるので、ムラなく暖房や冷房を行うことが可能となる。
【0078】
前述の通り、この実施の形態では、第2熱融着シート5bを、押出成形装置から基板本体2の前面の略全体を覆う大きさに形成している。これにより、一体化工程においては、基板本体2の前面の略全体に第2熱融着シート5bが接触して該基板本体2の前面の略全体が溶融し、第1プレス型11によって該基板本体2の前面の略全体が再成形される。これにより、この一体化工程において基板本体2が第1プレス型11と第2プレス型12とによって所定厚さまで圧縮されることと相俟って、基板本体2は、その板面の中央部から周縁部まで厚さが略均等なものとなり、基板1の厚さ方向の寸法精度が向上する。
【0079】
即ち、例えば基板本体2を発泡ポリスチレンにより成形した場合には、一般的に、該基板本体2の厚さ方向の寸法公差は、基準寸法5.5mmに対し±0.5mm程度と大きく、且つ該基板本体2は、その板面の中央部が周縁部よりも厚さの大きい形状となる傾向があるが、この実施の形態のようにして基板1を製造することにより、基板本体2の厚さ方向の寸法公差を基準寸法5.5mmに対し±0.1mm程度まで小さくすることが可能である。
【0080】
[第2の実施の形態]
第4図は第2の実施の形態に係る温調マット用基板の配管配設用溝付近の断面図である。
【0081】
上記第1の実施の形態では、基板本体2の厚さは、溝3内に引き回される熱媒体流通用配管の直径と同等程度であり、溝3は、基板本体2の裏面に貫通したものとなっているが、この第2の実施の形態の基板1Aにおいては、第4図の通り、基板本体2Aは、厚さが熱媒体流通用配管の直径よりも大きなものとなっており、溝3Aは、この基板本体2Aの裏面に貫通していない。そのため、この基板1Aにあっては、該基板本体2Aの裏面に裏張りシート6が設けられていない。
【0082】
また、第1の実施の形態では、溝3は、基板本体2の前面側から裏面側まで幅が略一定の略方形断面形状となっているが、第2の実施の形態では、溝3Aの断面形状は、その底部が略半円筒状に湾曲した略U字形となっている。この実施の形態では、第2熱融着シート5bは、この溝3Aの底面に沿って延在している。これにより、基板1Aを製造する際の一体化工程において、第1プレス型の凸条13によって均熱材4のU字部4aと溝3Aの底面との間で第1熱融着シート5aと第2熱融着シート5bとがプレスされ、熱融着層5を介してU字部4aが溝3Aの底面に結着されるようになる。なお、この第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、溝3Aは、基板本体2の前面側から底部まで幅が略一定の略方形断面形状であってもよい。
【0083】
この基板1Aのその他の構成は、第1の実施の形態の基板1と同様である。また、この基板1Aの製造方法は、基板本体2と第2プレス型12との間に裏張りシート6を配置しないこと以外は、基板1と同様である。
【0084】
この基板1Aにあっても、基板1と同様の作用効果が奏される。
【0085】
[材質等]
上記各部材の材質の一例として次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
基板本体2,2Aとしては例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン等の発泡合成樹脂を用いることができる。発泡合成樹脂としては、断熱性の点から、内部の気泡が独立気泡となっているものが好ましい。
【0087】
本発明においては、裏張りシート6は、低熱伝導材よりなることが好ましい。この低熱伝導材としては、不織布や合成樹脂シートあるいは紙等を用いることができる。
【0088】
小根太としては、木材や、釘打ち可能な合成木材又は合成樹脂あるいは合成樹脂発泡体等が好ましい。
【0089】
均熱シートとしては、アルミ又は銅等の金属箔が好ましい。
【0090】
均熱シートの表面にポリエチレンテレフタレート等のフィルムをラミネートすることにより、温調マットの梱包時や運搬時等に均熱シートの破損を防止することができる。なお、このフィルムの材質はポリエチレンテレフタレート以外であってもよい。
【0091】
熱媒体流通用配管としては、可撓性のポリエチレン等の合成樹脂チューブや銅パイプが例示される。
【0092】
均熱材4としては、アルミ又は銅等の金属箔が好ましい。均熱材4の厚さは、30〜500μm特に35〜100μmであることが好ましい。均熱材4の各フランジ部4bのU字部4a両端部からの延出長さは、20mm以下特に3〜10mmであることが好ましい。あるいは、各フランジ部4bの該延出長さは、基板本体2の前面における隣り合う溝3,3同士の間隔の1〜80%特に5〜50%であることが好ましい。なお、本発明においては、基板本体2の前面の略全体が各フランジ部4bによって覆われていてもよい。
【0093】
上記の各実施の形態では、熱融着層5は、均熱材4を構成する金属材料に対し熱融着性を有する第1の熱可塑性樹脂よりなる第1熱融着シート5aと、基板本体2,2Aを構成する発泡合成樹脂と該第1の熱可塑性樹脂との双方に対し熱融着性を有する第2の熱可塑性樹脂よりなる第2熱融着シート5bとにより構成されているが、熱融着層5の構成はこれに限定されない。例えば、熱融着層5は、均熱材4を構成する金属材料と基板本体2,2Aを構成する発泡合成樹脂との双方に対し熱融着性を有する熱可塑性樹脂よりなる1枚の熱融着シートのみによって構成されてもよい。あるいは、3枚以上の熱融着シートによって構成されてもよい。
【0094】
上記の各実施の形態はいずれも本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の各実施の形態に限定されない。
【0095】
例えば、本発明の温調マットは、床に設置される温調マットに限定されるものではなく、壁や天井等に設置される温調マットにも適用可能である。また、熱媒体流通用配管には、水以外のオイル、不凍液等の熱媒体を流通させてもよい。熱媒体流通用配管に冷媒を流通させて冷房に使用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,1A 温調マット用基板
2,2A 基板本体
3,3A 配管配設用溝
4 均熱材
4a U字部
4b フランジ部
5 熱融着層
5a 第1熱融着シート(第1の熱融着層)
5b 第2熱融着シート(第2の熱融着層)
6 裏張りシート
11 第1プレス型
12 第2プレス型
13 凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂よりなる板状の基板本体と、
該基板本体の一方の板面から凹設された配管配設用溝と、
該配管配設用溝の内面から該基板本体の該一方の板面にかけて配設された、金属材料よりなる均熱材と
を備え、
該均熱材は、
該配管配設用溝内に配置されており、該基板本体の該一方の板面側に開放した略U字形断面形状のU字部と、
該U字部に連なり、該基板本体の該一方の板面に重なったフランジ部と
を有している温調マット用基板において、
該均熱材の少なくとも該フランジ部と該基板本体との間に、熱可塑性樹脂よりなる熱融着層が設けられており、
該熱融着層が該均熱材と該基板本体とに熱融着することによりこれらが一体化されていることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項2】
請求項1において、前記熱融着層は、
前記均熱材の少なくとも前記フランジ部の前記基板本体側に設けられた第1の熱融着層と、
該第1の熱融着層と該基板本体との間に設けられた第2の熱融着層と
を有しており、
該第1の熱融着層は、該均熱材を構成する前記金属材料に対し熱融着性を有する第1の熱可塑性樹脂よりなり、
該第2の熱融着層は、該基板本体を構成する前記発泡合成樹脂及び該第1の熱可塑性樹脂の双方に対し熱融着性を有する第2の熱可塑性樹脂よりなり、
該第1の熱融着層が該均熱材に熱融着し、該第1の熱融着層と第2の熱融着層とが熱融着し、該第2の熱融着層が該基板本体に熱融着することによりこれらが一体化されていることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項3】
請求項2において、前記均熱材はアルミニウム又はアルミニウム合金よりなり、前記基板本体は発泡ポリスチレンよりなり、
前記第1の熱融着層はポリプロピレンよりなり、
前記第2の熱融着層は、ポリプロピレンとポリスチレンとの混練樹脂よりなることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記基板本体は、前記配管配設用溝の底部が該基板本体の前記他方の板面に露呈する厚さとなっており、
該基板本体の該他方の板面に沿って、該配管配設用溝の底部を塞ぐ裏張りシートが設けられており、
前記熱融着層は、該配管配設用溝内に配置された前記U字部と該裏張りシートとの間にまで設けられており、
該熱融着層が該U字部と裏張りシートとに熱融着することにより、該U字部に該裏張りシートが連結されていることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温調マット用基板を製造する方法であって、
前記熱融着層を、該熱融着層を構成する前記熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱して前記基板本体と前記均熱材との間に配材する配材工程と、
該熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている状態において、該熱融着層を該基板本体と該均熱材とに接触させることにより、該熱融着層を該基板本体と該均熱材とに熱融着させてこれらを一体化する一体化工程と
を行うことを特徴とする温調マット用基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、前記熱融着層を、押出成形装置を用いて形成することを特徴とする温調マット用基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、前記押出成形装置は、前記熱融着層を構成する前記熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱し、該熱可塑性樹脂を前記基板本体と前記均熱材との間に押し出して該熱融着層を形成するものであることを特徴とする温調マット用基板の製造方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか1項において、前記一体化工程において、前記熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている状態において、プレス成形装置を用いて前記均熱材、熱融着層及び基板本体を一体的に該基板本体の厚さ方向にプレスすることにより、該熱融着層を該基板本体と該均熱材とに熱融着させることを特徴とする温調マット用基板の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、前記プレス成形装置は、
前記基板本体の前記一方の板面側から押圧する第1のプレス型と、
該基板本体の他方の板面側から押圧する第2のプレス型と
を備えており、
該第1のプレス型には、該基板本体の前記配管配設用溝に係合する凸条が設けられており、
前記配材工程において、該凸条に前記均熱材の前記U字部を被着し、該第1のプレス型と第2のプレス型との間に、前記熱融着層を、該熱融着層を構成する前記熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱して配材し、該熱融着層と第2のプレス型との間に該基板本体を配材し、
前記一体化工程において、該熱融着層を構成する熱可塑性樹脂が溶融温度以上となっている状態において、該凸条を該基板本体の前記配管配設用溝に係合させながら該第1のプレス型と第2のプレス型とを所定距離まで接近させることにより、該熱融着層を介して該均熱材の前記U字部を該配管配設用溝内に配置し、且つ該均熱材の前記フランジ部を該基板本体の前記一方の板面に重ね合わせると共に、該均熱材、熱融着層及び基板本体を一体的に該基板本体の厚さ方向にプレスして該熱融着層を該基板本体と該均熱材とに熱融着させることを特徴とする温調マット用基板の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、前記配材工程において、前記熱融着層は、前記基板本体の前記一方の板面の略全体を覆うように配材され、
前記一体化工程において、該基板本体は、該一方の板面の略全体が該熱融着層を介して前記第1のプレス型によりプレスされることを特徴とする温調マット用基板の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、前記一体化工程において、前記第1のプレス型により前記均熱材の前記フランジ部を押圧して前記基板本体に埋没させ、これにより該フランジ部の該基板本体と反対側の面と、該基板本体の前記一方の板面とを略面一状とすることを特徴とする温調マット用基板の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温調マット用基板と、
該温調マット用基板の前記均熱材の前記U字部を介して前記基板本体の前記配管配設用溝内に収容された熱媒体流通用配管と、
該基板本体の前記一方の板面を覆うように配置され、該基板本体の該一方の板面及び該均熱材の前記フランジ部に付着された均熱シートと
を備えてなる温調マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−141052(P2011−141052A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−659(P2010−659)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】