測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体
【課題】初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる測位装置等を提供すること。
【解決手段】測位のための初期位置P0に対する、現在時刻におけるSPS衛星の衛星軌道上の位置Psを算出する相対位置算出手段と、初期位置P0に対するSPS衛星の移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出手段と、予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出手段と、相対位置及び周波数差分DPerに基づいて、初期位置の誤差P0erを算出する初期位置誤差算出手段と、初期位置の誤差P0erに基づいて、衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する第1測位方法、又は、衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する第2測位方法のいずれかを選択する測位方法選択手段と、を有する。
【解決手段】測位のための初期位置P0に対する、現在時刻におけるSPS衛星の衛星軌道上の位置Psを算出する相対位置算出手段と、初期位置P0に対するSPS衛星の移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出手段と、予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出手段と、相対位置及び周波数差分DPerに基づいて、初期位置の誤差P0erを算出する初期位置誤差算出手段と、初期位置の誤差P0erに基づいて、衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する第1測位方法、又は、衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する第2測位方法のいずれかを選択する測位方法選択手段と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPS(Satellite Positioning System)を使用して測位を行うことができる測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、SPSである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている(例えば、特許文献1)。
GPS受信機は、例えば、上空に位置する、例えば、4個のGPS衛星からの信号(以後、衛星信号と呼ぶ)を受信し、衛星信号が各GPS衛星から発信された時刻とGPS受信機に到達した時刻との差(以後、遅延時間と呼ぶ)によって、各GPS衛星とGPS受信機との間の距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を求める。GPS受信機は、各GPS衛星の衛星軌道上の位置と、上述の擬似距離を使用して、GPS受信機の現在位置の測位結果を算出するようになっている。衛星信号は、C/A(Coares/Acquisition)コード、航法メッセージ等の各種情報を含む。
【0003】
また、GPS受信機は、衛星信号に載せられているC/Aコードのコードフェーズを利用して、上述の擬似距離を算出することもできる。このC/Aコードは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec=300km)のビット長の信号である。GPS受信機の初期位置が150kmの誤差範囲で既知であれば、各GPS衛星とGPS受信機との間にC/Aコードがいくつ存在するか推定することができるから、C/Aコードの端数部分(コードフェーズ)を利用して、擬似距離を算出することができる。
上述の遅延時間を算出するためには、衛星信号の発信時刻を知る必要がある。この発信時刻は、航法メッセージに含まれる「zカウント」に示されている。zカウントは、航法メッセージのサブフレームに含まれる。航法メッセージは、50bpsのビット率、zカウントを含むサブフレームは300bit(=6s)のビット長の信号である。
このため、zカウントをデコードするためには、6秒間(s)必要な場合があり、上述のコードフェーズを使用する場合に比べて擬似距離の算出が長時間化する。また、弱電界下においては、zカウントをデコードできない場合がある。
これに対して、上述のコードフェーズを利用して擬似距離を算出する方法は、遅延時間を利用する方法に比べて、短時間で擬似距離を算出することができ、弱電界下でも擬似距離の算出が可能である。
ところが、GPS受信機の初期位置が150kmの誤差範囲ではないにもかかわらず、コードフェーズを利用する方法を利用すると、擬似距離の算出は不可能であるか、誤差の大きい擬似距離を算出することになるという問題がある。
【特許文献1】特開2000−131415号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置であって、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出手段と、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出手段と、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出手段と、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出手段と、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出手段と、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する第1測位方法、又は、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する第2測位方法のいずれかを選択する測位方法選択手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記初期位置誤差算出手段を有するから、前記初期位置誤差を算出することができる。ここで、前記周波数誤差が大きいほど、初期位置誤差が大きいことがわかっている。このため、前記初期位置誤差算出手段を有するから、前記初期位置誤差を算出することができるのである。
また、前記測位装置は、前記測位方法選択手段を有するから、前記第1測位方法又は前記第2測位方法のいずれかを選択することができる。
これにより、前記測位装置は、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記相対位置は、前記初期位置に対する各前記衛星位置の仰角であることを特徴とする測位装置である。
【0008】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記初期位置及び前記初期位置誤差を使用して、複数の測位結果を取捨選択する測位結果選択手段を有することを特徴とする測位装置である。
【0009】
前記測位装置の真の位置は、前記初期位置を中心として、前記初期位置誤差を半径とする円内にあるはずである。ここで、前記初期位置誤差は、新たに算出した信頼性の高い情報である。
このため、前記測位装置は、前記初期位置及び前記初期位置誤差を使用して、的確に複数の測位結果を取捨選択することができる。
【0010】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明の構成において、前記衛星信号の発信周波数と前記実測受信周波数を使用して実際のドップラー偏移を算出し、さらに、実際の視線方向ベクトルを算出することによって、前記初期位置を修正する初期位置修正手段を有することを特徴とする測位装置である。
【0011】
第4の発明の構成によれば、前記初期位置を修正することができるから、前記第1測位方法を使用することができる可能性を高くすることができる。
【0012】
前記目的は、第4の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法法によって達成される。
【0013】
第4の発明の構成によれば、前記測位装置は、第1の発明の構成と同様に、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる。
【0014】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0015】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、GPS衛星12a乃至12hから信号S1乃至S8を受信することができる。
なお、GPS衛星のことを、単に、衛星とも呼ぶ。
【0018】
GPS衛星12a等はSPS衛星の一例であり、信号S1等は衛星信号の一例である。信号S1は、C/A(Clear and AcquisionまたはCoarse/Access)コードを含む。C/Aコードは、擬似雑音符号(以後、PN(Psuedo random noise code)符号と呼ぶ)の一つである。このC/Aコードは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット長の信号である。C/Aコードは、1,023チップ(chip)で構成されている。端末20は、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。
【0019】
端末20は例えば、携帯電話機、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance)等であるが、これらに限らない。
SPSはGPSに限らず、例えば、Galileo、準天頂衛星等であってもよい。
【0020】
図2は、測位方法の一例を示す概念図である。
図2は、コードフェーズを使用した測位方法(第1測位方法)を示している。
図2に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズと呼ぶ。コードフェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできるし、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを距離に換算している。
【0021】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスを使用して算出可能である。エフェメリスは、GPS衛星12aの精密な軌道を示す情報である。そして、例えば、GPS衛星12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(km)であるから、初期位置Q0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必要がある。
【0022】
そして、端末20は、コードフェーズ及び周波数を変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になったコードフェーズがコード端数部C/Aaのコードフェーズである。
【0023】
図3及び図4は、相関処理の説明図である。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。レプリカC/Aコードは、端末20が発生する符号である。
例えば、図3(a)に示すように、コヒーレント時間が5msecであれば、5msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相(コードフェーズ)と、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
図3(b)に示すように、相関値Pの最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、コードフェーズ端数部C/Aa(図2参照)のコードフェーズである。
【0024】
図4(a)に示すように、端末20は、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(位相幅W1)間隔で相関処理を行う。
図4(b)に示すように、端末20は、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,023チップまでをサーチする。
このとき、端末20は、サーチ中心周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において信号S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)kHzの周波数の範囲を、20Hzごとの周波数ステップで信号S1等をサーチする。
【0025】
一般的には、GPS受信器は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移(予想ドップラー周波数)H2を加え、さらにドリフトDRを加えて、サーチ中心周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1,575.42MHzである。ドリフトDRとは、温度変化によるGPS受信器の基準発振器の発振周波数の変化である。
ドップラー偏移は、各GPS衛星12a等とGPS受信機との相対移動によって生じる。GPS受信機は、エフェメリスによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、予想ドップラー周波数H2を算出する。
GPS受信機は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチ中心周波数Aを算出する。
【0026】
端末20は、上述の第1測位方法のほかに、信号S1等の遅延時間に基づいて、擬似距離を算出する測位方法(第2測位方法)も実際可能である。
第2測位方法においても、上述と同様の相関処理を行う。ただし、第2測位方法においては、信号S1等に含まれる航法データのzカウントをデコードして発信時刻を知る必要がある。zカウントのデコードのためには、6秒(s)必要な場合があるから、その時間だけ測位が長時間化し、また、弱電界下においては、zカウントをデコードできない場合もある。
第2の測位方法も、信号S1等を捕捉及び追尾するために、上述の相関処理を行う。ただし、上述のように、zカウントをデコードする必要があるために、擬似距離の算出に長時間を要する場合がある、
【0027】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図5は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図5に示すように、端末20は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有する。
このバス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26が接続されている。記憶装置26は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
【0028】
また、このバス22には、各種情報や命令の入力を受けるための入力装置28、電源装置30、通信信号を送受信するための通信装置32、GPS衛星12a等から信号S1等を受信するためのGPS装置34及び、各種情報を表示するための表示装置36が接続されている。
また、このバス22には、時計38が接続されている。
【0029】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図6は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図6に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図5の通信装置32に対応する通信部102、GPS装置34に対応するGPS部104、表示装置36に対応する表示部106、時計38に対応する計時部108等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0030】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、衛星軌道情報152を格納している。衛星軌道情報152は、すべてのGPS衛星12a等の概略の軌道を示すアルマナック(Almanac)152a、及び、各GPS衛星12a等の精密な軌道を示すエフェメリス(Ephemeris)152bを含む。端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、GPS衛星12a等からの信号S1等を受信してデコードすることによって取得する。
端末20は、衛星軌道情報152を、信号S1等に基づく測位に使用する。
【0031】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納している。初期位置情報154は、初期位置P0を示す情報である。初期位置P0は、例えば、前回測位時の測位位置である。
【0032】
初期位置P0の誤差は、例えば、初期位置P0を算出したときの信号S1等の受信状態やPDOP(Position Dilution Of Precision)によって規定することができる。例えば、信号S1等の信号強度が強く、PDOPが小さい場合には、初期位置誤差P0erは5メートル(m)である。これに対して、屋内で信号S1等を受信し、信号強度が弱い場合には、初期位置誤差P0erは30メートル(m)である。
しかし、前回測位から長時間経過している場合や、前回測位時の位置から大きく移動している場合には、受信状態等による初期位置誤差P0erは信頼性を欠く。
この点、端末20は、今回の測位に際して、新たに初期位置誤差P0erを算出して、的確に、上述の第1測位方法又は第2測位方法を選択することができるようになっている。
【0033】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、衛星位置算出プログラム112を格納している。衛星位置算出プログラム112は、制御部100が、観測可能な各GPS衛星12a等について、その軌道上の衛星位置Psを算出するためのプログラムである。衛星位置算出プログラム112と制御部100は、衛星位置算出手段の一例である。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aに基づいて、初期位置P0を基準として現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を算出する。続いて、制御部100は、エフェメリス152bに基づいて、現在時刻におけるGPS衛星12a等の軌道上の位置をGPS衛星12a等ごとに算出する。
例えば、GPS衛星12aの軌道上の衛星位置Psa、GPS衛星12bの軌道上の衛星位置Psbというように、衛星位置Psは、GPS衛星12a等ごとに算出される。
制御部100は、算出した衛星位置Psを示す衛星位置情報156を第2記憶部150に格納する。
【0034】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、相対位置算出プログラム114を格納している。相対位置算出プログラム114は、制御部100が、初期位置P0に対する衛星位置Psの相対位置を算出するためのプログラムである。相対位置算出プログラム114と制御部100は、相対位置算出手段の一例である。
【0035】
図7は、相対位置算出プログラム114の説明図である。
具体的には、制御部100は、初期位置P0から例えば、GPS衛星12aの衛星位置Psaへ向かうベクトルpgを算出する。
そして、ベクトルpgが示す3次元座標上の方向からGPS衛星12aの仰角及び方位角を算出する。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、仰角及び方位角を算出する。
制御部100は、算出した仰角及び方位角を示す相対位置情報158を第2記憶部150に格納する。仰角及び方位角は、相対位置の一例である。
【0036】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、視線方向ベクトル算出プログラム116を格納している。視線方向ベクトル算出プログラム116は、制御部100が、初期位置P0に対する各衛星の視線方向ベクトルvsを算出するためのプログラムである。視線方向ベクトルvsは、初期位置P0に対する各衛星の移動状態を示す情報の一例である。視線方向ベクトル算出プログラム116と制御部100は、移動状態算出手段の一例である。
【0037】
図8は、視線方向ベクトル算出プログラム116の説明図である。
具体的には、制御部100は、図8に示すように、エフェメリス152bを参照して、
例えば、GPS衛星12aの速度ベクトルvgを算出する。そして、初期位置P0とGPS衛星12aの軌道上の位置Psaを使用して、速度ベクトルvgの視線方向の成分vsを産出する。視線方向の成分vsが、視線方向ベクトルvsである。
制御部100は、算出した視線方向ベクトルvsを示す視線方向ベクトル情報160を第2記憶部150に格納する。
【0038】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、予想受信周波数算出プログラム118を格納している。予想受信周波数算出プログラム118は、制御部100が、観測可能な各GPS衛星12a等について信号S1のキャリア周波数のドップラー偏移を予想して、予想受信周波数festを算出するためのプログラムである。予想受信周波数算出プログラム118と制御部100は、予想受信周波数算出手段の一例である。
【0039】
図9は、予想受信周波数算出プログラム118の説明図である。
制御部100は、図9の式1を使用して、予想受信周波数festを算出する。
式1において、視線方向ベクトルvsに示される速度vによるドップラー偏移を考慮して、予想受信周波数festが算出される。
なお、本実施の形態においては、説明の便宜のため、端末20は静止しているものとする。また、端末20の基準クロックのドリフトはないと仮定する。
制御部100は、算出した予想受信周波数festを示す予想受信周波数情報162を第2記憶部150に格納する。
【0040】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部150に、実測受信周波数算出プログラム120を格納している。実測受信周波数算出プログラム120は、制御部100が、各GPS衛星12a等ごとに、信号S1等を受信したときの実測受信周波数(キャリアの周波数)frを算出するためのプログラムである。
制御部100は、算出した実測受信周波数frを示す実測受信周波数情報164を第2記憶部150に格納する。
【0041】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部150に、ドップラー誤差算出プログラム122を格納している。ドップラー誤差算出プログラム122は、制御部100が、予測受信周波数festと実測受信周波数frとの周波数差分であるドップラー誤差DPerを算出するためのプログラムである。ドップラー誤差算出プログラム122と制御部100は、周波数差分算出手段の一例である。
制御部100は、予測受信周波数festから実測受信周波数frを減じることによって、ドップラー誤差DPerを算出する。予想受信周波数festは、信号S1等のキャリアの発信周波数f0のドップラー偏移を予想して算出されている。そして、実測受信周波数frは、発信周波数f0がドップラー偏移の影響を受けた結果の周波数を実測して算出したものである。このため、予想受信周波数festと実測受信周波数frの差分は、予想受信周波数festを算出したときに予想したドップラー偏移の誤差を示している。
なお、予測受信周波数festは、各GPS衛星12a等ごとに異なっているから、各GPS衛星12a等ごとにドップラー誤差DPerも異なる。
制御部100は、算出したドップラー誤差DPerを示すドップラー誤差情報166を第2格納部150に格納する。
【0042】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部150に、初期位置誤差算出プログラム124を格納している。初期位置誤差算出プログラム124は、制御部100が、各衛星の仰角及び方位角に基づいて、初期位置P0の誤差(初期位置誤差P0er)を算出するためのプログラムである。初期位置誤差算出プログラム124と制御部100は、初期位置誤差算出手段の一例である。
【0043】
図10及び図11は、初期位置誤差算出プログラム124の説明図である。
図10に示すように、例えば、初期位置P0を基準とすると視線ベクトルvsが0の場合であっても、真の位置Prにおいては、視線ベクトルvsが存在する場合がある。すなわち、初期位置P0における視線ベクトルvsと真の位置Prにおける視線ベクトルvsが異なる場合がある。
これは、初期位置P0が真の位置Prと乖離しているためである。すなわち、初期地位誤差P0erが存在するためである。
そして、上述のように、予想受信周波数festは、初期位置P0を基準とする視線ベクトルvsに基づいて算出されている。このため、視線ベクトルvsの誤差は、ドップラー誤差DPerに反映する。
これは、ドップラー誤差DPerによって、初期位置誤差P0erを算出することができることを意味する。
【0044】
図11(a)に示すように、初期位置誤差P0erの単位長である1キロメートル(km)あたりのドップラー誤差uniDPerは、仰角に基づいて規定される。仰角が90度の場合にはドップラー誤差uniDPerは最も大きく、例えば、1kmについて1.0ヘルツ(Hz/km)である。これに対して、仰角が0度の場合にはドップラー誤差uniDPerは最も小さく、1kmについて0ヘルツ(Hz/km)である。
なお、図11(a)のグラフは、特定の衛星の軌道が端末20の頭上を通過する前提で作成されているが、特定の衛星の軌道が端末20頭上を通過しない場合であっても、仰角が90度に近いほど、ドップラー誤差uniDPerは大きい。このため、図11(a)とは数値は異なるが、同様のグラフを作成することができる。このとき、端末20は、相対位置情報158の方位角を使用する。
【0045】
図11(a)のグラフは、図11(b)に参考として示した式に示すように、仰角θにおけるドップラー誤差uniDPerθに初期位置誤差P0erを乗じた値がドップラー誤差DPerであるという関係があることを示す。
このため、図11(b)に示すように、制御部100は、ドップラー誤差DPerを仰角θにおける単位距離当たりのドップラー誤差uniDPerθで除する式2を使用して、初期位置誤差P0erを算出する。
例えば、仰角θが90度である場合に、ドップラー誤差DPerが100Hzであると、初期位置誤差P0erは100kmである。
制御部100は、算出した初期位置誤差P0erを示す初期位置誤差情報168を第2記憶部150に格納する。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、初期位置誤差P0erを算出する。例えば、GPS衛星12aについての初期位置誤差P0eraと、GPS衛星12bについての初期位置誤差P0erbをそれぞれ算出する。仰角θはGPS衛星12a等ごとに異なるから、初期位置誤差P0erもまた、GPS衛星12a等ごとに異なる。すなわち、初期位置P0を基準として、仰角θが90度から離れる衛星ほど初期位置誤差P0erは大きく、仰角θが小さい衛星ほど初期位置誤差P0erは小さい。
制御部100は、複数の衛星について初期位置誤差P0erを算出した場合には、その平均値を算出し、平均値を初期位置誤差P0erとする。これにより、初期位置誤差P0erの算出誤差の影響が低減され、一層的確に測位方法を選択することができる。
【0046】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム126を格納している。測位プログラム126は、制御部100が、初期位置誤差P0erに基づいて、第1測位方法又は第2測位方法を選択して測位するためのプログラムである。制御部100にと測位プログラム126は、測位方法選択手段の一例である。
【0047】
図12は、測位プログラム126の説明図である。
図6及び図12に示すように、測位プログラム126は、第1測位プログラム128及び第2測位プログラム130を含む。第1測位プログラム128は、制御部100が、第1測位方法を実施するためのプログラムである。第2測位プログラム130は、制御部100が、第2測位方法を実施するためのプログラムである。
図12に示すように、制御部100は、初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)以内の場合には、第1測位方法を選択する。
これに対して、制御部100は、初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)よりも大きい場合には、第2測位方法を選択する。
制御部100は、第1測位方法又は第2測位方法によって算出した測位位置P1を示す測位位置情報170を第2記憶部150に格納する。
【0048】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム132を格納している。
測位位置出力プログラム132は、制御部100が、測位位置P1を出力するためのプログラムである。
制御部100は、測位位置P1が複数算出されている場合には、初期位置P0と初期位置誤差P0erに基づいて、測位位置P1を取捨選択する。具体的には、制御部100は、初期位置P0を中心として半径が初期位置誤差P0erの範囲内にある測位位置P1のみを出力する。
すなわち、測位位置出力プログラム132と制御部100は、測位結果選択手段の一例である。
【0049】
端末20は、上述のように構成されている。
上述のように、端末20は、初期位置誤差P0erを算出することができる。ここで、ドップラー誤差DPer誤差が大きいほど、初期位置誤差P0erが大きいことがわかっている。このため、ドップラー誤差DPerを使用して、初期位置誤差P0erを算出することができるのである。
また、端末20は、第1測位方法又は第2測位方法のいずれかを選択することができる。
これにより、端末20は、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる。
【0050】
端末20の真の位置は、初期位置P0を中心として、初期位置誤差P0erを半径とする円内にあるはずである。ここで、初期位置誤差P0erは、新たに算出した信頼性の高い情報である。
このため、端末20は、初期位置P0及び初期位置誤差P0erを使用して、的確に複数の測位結果を取捨選択することができる。
【0051】
以上が本実施の形態の端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図13を使用して説明する。
図13は本実施の形態の端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0052】
まず、端末20は、観測可能な各GPS衛星12a等について、衛星位置Psを算出する(図13のステップST1)。このステップST1は、衛星位置算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、各GPS衛星12a等の仰角及び方位角を算出する(ステップST2)。このステップST2は、相対位置算出ステップの一例である。
【0053】
続いて、端末20は、視線方向ベクトルvsを算出する(ステップST3)。このステップST3は、移動状態算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、予想受信周波数festを算出する(ステップST4)。このステップST4は、予想受信周波数算出ステップの一例である。
【0054】
続いて、端末20は、信号S1等を受信し、実測受信周波数frを算出する(ステップST5)。
続いて、端末20は、ドップラー誤差DPerを算出する(ステップST6)。このステップST6は、周波数差分算出ステップの一例である。
【0055】
続いて、端末20は、初期位置誤差P0erを算出する(ステップST7)。このステップST7は、初期位置誤差算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、測位方法を決定する(ステップST8)。このステップST8は、測位方法選択ステップの一例である。
【0056】
続いて、端末20は、第1測位方法又は第2測位方法によって、測位を行う(ステップST9)。
続いて、端末20は、測位位置P1を出力する(ステップST10)。
【0057】
上述のステップによって、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施の形態について、説明する。
第2の実施の形態における端末20Aの構成は、上記第1の実施の形態の端末20と多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0059】
図14は、端末20Aの主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図14に示すように、端末20Aは、初期位置修正プログラム134を格納している。
初期位置修正プログラム134は、初期位置誤差P0erが150kmよりも大きい場合に、制御部100が、複数のGPS衛星12a等の移動方向と、衛星位置Psと、GPS衛星12a等からの発信周波数H1及び実測受信周波数frとに基づいて、初期位置P0を修正するためのプログラムである。
【0060】
図15は、初期位置修正プログラム134の説明図である。
図15にしめすように、制御部100は、例えば、GPS衛星12aからの発信周波数H1及び実測受信周波数frとに基づいて、実際のドップラー周波数を算出し、GPS衛星12a等の移動方向と衛星位置Psとを使用して、実測視線方向ベクトルvsraを算出する。
そして、制御部100は、実測視線方向ベクトルvsraの延長線上の地表の位置P0raを算出することができる。この位置P0raが端末20Aの位置である。しかし、ドップラー周波数を使用して算出した端末20の位置P0raは精度が低い。
このため、制御部100は、さらに、GPS衛星12bからの発信周波数H1及び実測受信周波数frとに基づいて、実際のドップラー周波数を算出し、GPS衛星12a等の移動方向と衛星位置Psとを使用して、実測視線方向ベクトルvsrbを算出する。
そして、制御部100は、実測視線方向ベクトルvsrbの延長線上の地表の位置P0rbを算出する。
そして、制御部100は、位置P0raとP0rbとの平均位置P0rを算出し、修正初期位置P0rとする。
これにより、位置P0ra及びP0rbの誤差を低減することができる。ただし、修正初期位置P0erは、測位方法を選択するためには十分な精度を有するが、表示装置36(図5参照)に表示してユーザが自己位置の確認等に使用するほどの精度は有していない。
制御部100は、修正初期位置P0rを示す修正初期位置情報172を第2記憶部150に格納する。
なお、より多くの衛星を使用して位置P0ra等を算出し、それらの平均位置を算出することによって、修正初期位置P0rの精度を向上させることができる。
【0061】
そして、制御部100は、修正初期位置P0rを使用して、初期位置誤差P0erを算出するための一連の演算処理を行う。
そして、制御部100は、新たに算出した初期位置誤差P0erに基づいて、第1測位プログラム128又は第2測位プログラム130による測位のいずれかを選択する。
このため、修正初期位置P0rを使用して算出した初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)以内であれば、より迅速に測位可能な第1測位プログラム128に基づく測位を行うことができる。
このように、端末20Aの構成によれば、当初の初期位置P0によって算出した初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)より大きい場合であっても、修正初期位置P0rによって算出した初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)以内であれば、より迅速に測位可能な第1測位プログラム128に基づく測位を行うことができるから、第1測位プログラム128による測位方法を使用することができる可能性を高くすることができる。
【0062】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の相対位置算出ステップと、移動状態算出ステップと、予想受信周波数算出ステップと、周波数差分算出ステップと、初期位置誤差算出ステップと、測位方法選択ステップ等を実行させるための測位装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような測位装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0063】
これら測位装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプログラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0064】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】測位方法の一例を示す概念図である。
【図3】相関処理の説明図である。
【図4】相関処理の説明図である。
【図5】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図6】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図7】相対位置算出プログラムの説明図である。
【図8】視線方向ベクトル算出プログラムの説明図である。
【図9】予想受信周波数算出プログラムの説明図である。
【図10】初期位置誤差算出プログラムの説明図である。
【図11】初期位置誤差算出プログラムの説明図である。
【図12】測位プログラムの説明図である。
【図13】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図14】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図15】初期位置修正プログラムの説明図である。
【符号の説明】
【0066】
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h・・・GPS衛星、20・・・端末、112・・・衛星位置算出プログラム、114・・・相対位置算出プログラム、116・・・視線方向ベクトル算出プログラム、118・・・予想受信周波数算出プログラム、120・・・実測受信周波数算出プログラム、122・・・ドップラー誤差算出プログラム、124・・・初期位置誤差算出プログラム、126・・・測位プログラム、128・・・第1測位プログラム、130・・・第2測位プログラム、132・・・測位位置出力プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、SPS(Satellite Positioning System)を使用して測位を行うことができる測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、SPSである例えば、GPS(Global Positioning System)を利用してGPS受信機の現在位置を測位する測位システムが実用化されている(例えば、特許文献1)。
GPS受信機は、例えば、上空に位置する、例えば、4個のGPS衛星からの信号(以後、衛星信号と呼ぶ)を受信し、衛星信号が各GPS衛星から発信された時刻とGPS受信機に到達した時刻との差(以後、遅延時間と呼ぶ)によって、各GPS衛星とGPS受信機との間の距離(以後、擬似距離と呼ぶ)を求める。GPS受信機は、各GPS衛星の衛星軌道上の位置と、上述の擬似距離を使用して、GPS受信機の現在位置の測位結果を算出するようになっている。衛星信号は、C/A(Coares/Acquisition)コード、航法メッセージ等の各種情報を含む。
【0003】
また、GPS受信機は、衛星信号に載せられているC/Aコードのコードフェーズを利用して、上述の擬似距離を算出することもできる。このC/Aコードは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec=300km)のビット長の信号である。GPS受信機の初期位置が150kmの誤差範囲で既知であれば、各GPS衛星とGPS受信機との間にC/Aコードがいくつ存在するか推定することができるから、C/Aコードの端数部分(コードフェーズ)を利用して、擬似距離を算出することができる。
上述の遅延時間を算出するためには、衛星信号の発信時刻を知る必要がある。この発信時刻は、航法メッセージに含まれる「zカウント」に示されている。zカウントは、航法メッセージのサブフレームに含まれる。航法メッセージは、50bpsのビット率、zカウントを含むサブフレームは300bit(=6s)のビット長の信号である。
このため、zカウントをデコードするためには、6秒間(s)必要な場合があり、上述のコードフェーズを使用する場合に比べて擬似距離の算出が長時間化する。また、弱電界下においては、zカウントをデコードできない場合がある。
これに対して、上述のコードフェーズを利用して擬似距離を算出する方法は、遅延時間を利用する方法に比べて、短時間で擬似距離を算出することができ、弱電界下でも擬似距離の算出が可能である。
ところが、GPS受信機の初期位置が150kmの誤差範囲ではないにもかかわらず、コードフェーズを利用する方法を利用すると、擬似距離の算出は不可能であるか、誤差の大きい擬似距離を算出することになるという問題がある。
【特許文献1】特開2000−131415号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる測位装置、その制御方法、制御プログラム及びその記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、第1の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置であって、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出手段と、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出手段と、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出手段と、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出手段と、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出手段と、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する第1測位方法、又は、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する第2測位方法のいずれかを選択する測位方法選択手段と、を有することを特徴とする測位装置により達成される。
【0006】
第1の発明の構成によれば、前記測位装置は、前記初期位置誤差算出手段を有するから、前記初期位置誤差を算出することができる。ここで、前記周波数誤差が大きいほど、初期位置誤差が大きいことがわかっている。このため、前記初期位置誤差算出手段を有するから、前記初期位置誤差を算出することができるのである。
また、前記測位装置は、前記測位方法選択手段を有するから、前記第1測位方法又は前記第2測位方法のいずれかを選択することができる。
これにより、前記測位装置は、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記相対位置は、前記初期位置に対する各前記衛星位置の仰角であることを特徴とする測位装置である。
【0008】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明のいずれかの構成において、前記初期位置及び前記初期位置誤差を使用して、複数の測位結果を取捨選択する測位結果選択手段を有することを特徴とする測位装置である。
【0009】
前記測位装置の真の位置は、前記初期位置を中心として、前記初期位置誤差を半径とする円内にあるはずである。ここで、前記初期位置誤差は、新たに算出した信頼性の高い情報である。
このため、前記測位装置は、前記初期位置及び前記初期位置誤差を使用して、的確に複数の測位結果を取捨選択することができる。
【0010】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明の構成において、前記衛星信号の発信周波数と前記実測受信周波数を使用して実際のドップラー偏移を算出し、さらに、実際の視線方向ベクトルを算出することによって、前記初期位置を修正する初期位置修正手段を有することを特徴とする測位装置である。
【0011】
第4の発明の構成によれば、前記初期位置を修正することができるから、前記第1測位方法を使用することができる可能性を高くすることができる。
【0012】
前記目的は、第4の発明によれば、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、を有することを特徴とする測位装置の制御方法法によって達成される。
【0013】
第4の発明の構成によれば、前記測位装置は、第1の発明の構成と同様に、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる。
【0014】
前記目的は、第5の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムによって達成される。
【0015】
前記目的は、第6の発明によれば、コンピュータに、複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態の端末20等を示す概略図である。
図1に示すように、端末20は、GPS衛星12a乃至12hから信号S1乃至S8を受信することができる。
なお、GPS衛星のことを、単に、衛星とも呼ぶ。
【0018】
GPS衛星12a等はSPS衛星の一例であり、信号S1等は衛星信号の一例である。信号S1は、C/A(Clear and AcquisionまたはCoarse/Access)コードを含む。C/Aコードは、擬似雑音符号(以後、PN(Psuedo random noise code)符号と呼ぶ)の一つである。このC/Aコードは、1.023Mbpsのビット率、1,023bit(=1msec)のビット長の信号である。C/Aコードは、1,023チップ(chip)で構成されている。端末20は、このC/Aコードを使用して現在位置の測位を行う。
【0019】
端末20は例えば、携帯電話機、PHS(Personal Handy−phone System)、PDA(Personal Digital Assistance)等であるが、これらに限らない。
SPSはGPSに限らず、例えば、Galileo、準天頂衛星等であってもよい。
【0020】
図2は、測位方法の一例を示す概念図である。
図2は、コードフェーズを使用した測位方法(第1測位方法)を示している。
図2に示すように、例えば、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードが連続的に並んでいると観念することができる。そして、GPS衛星12aと端末20との間の距離は、C/Aコードの長さ(300キロメートル(km))の整数倍とは限らないから、コード端数部C/Aaが存在する。つまり、GPS衛星12aと端末20との間には、C/Aコードの整数倍の部分と、端数部分が存在する。C/Aコードの整数倍の部分と端数部分の合計の長さが擬似距離である。端末20は、3個以上のGPS衛星12a等についての擬似距離を使用して測位を行う。
本明細書において、C/Aコードの端数部C/Aaをコードフェーズと呼ぶ。コードフェーズは、例えば、C/Aコードの1,023あるチップの何番目かで示すこともできるし、距離に換算して示すこともできる。擬似距離を算出するときには、コードフェーズを距離に換算している。
【0021】
GPS衛星12aの軌道上の位置はエフェメリスを使用して算出可能である。エフェメリスは、GPS衛星12aの精密な軌道を示す情報である。そして、例えば、GPS衛星12aの軌道上の位置と後述の初期位置Q0との距離を算出すれば、C/Aコードの整数倍の部分を特定することができる。なお、C/Aコードの長さが300キロメートル(km)であるから、初期位置Q0の位置誤差は、150キロメートル(km)以内である必要がある。
【0022】
そして、端末20は、コードフェーズ及び周波数を変動させながら、相関処理を行う。この相関処理は、後述のコヒーレント処理及びインコヒーレント処理で構成される。
相関積算値が最大になったコードフェーズがコード端数部C/Aaのコードフェーズである。
【0023】
図3及び図4は、相関処理の説明図である。
コヒーレントは、端末20が受信したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関をとる処理である。レプリカC/Aコードは、端末20が発生する符号である。
例えば、図3(a)に示すように、コヒーレント時間が5msecであれば、5msecの時間において同期積算したC/AコードとレプリカC/Aコードとの相関値等を算出する。コヒーレント処理の結果、相関をとった位相(コードフェーズ)と、相関値が出力される。
インコヒーレントは、コヒーレント結果の相関値を積算することによって、相関積算値(インコヒーレント値)を算出する処理である。
相関処理の結果、コヒーレント処理で出力されたコードフェーズと、相関積算値が出力される。
図3(b)に示すように、相関値Pの最大値Pmaxに対応するコードフェーズCP1が、コードフェーズ端数部C/Aa(図2参照)のコードフェーズである。
【0024】
図4(a)に示すように、端末20は、C/Aコードの1チップを例えば、等間隔で分割して、相関処理を行う。C/Aコードの1チップは、例えば、32等分される。すなわち、32分の1チップの位相幅(位相幅W1)間隔で相関処理を行う。
図4(b)に示すように、端末20は、例えば、C/Aコードの第1チップから第1,023チップまでをサーチする。
このとき、端末20は、サーチ中心周波数Aを中心として、所定の幅の周波数において信号S1等をサーチする。例えば、(A−100)kHzの周波数から(A+100)kHzの周波数の範囲を、20Hzごとの周波数ステップで信号S1等をサーチする。
【0025】
一般的には、GPS受信器は、GPS衛星12a等からの発信周波数H1にドップラー偏移(予想ドップラー周波数)H2を加え、さらにドリフトDRを加えて、サーチ中心周波数Aを算出する。GPS衛星12a等からの発信周波数H1は既知であり、例えば、1,575.42MHzである。ドリフトDRとは、温度変化によるGPS受信器の基準発振器の発振周波数の変化である。
ドップラー偏移は、各GPS衛星12a等とGPS受信機との相対移動によって生じる。GPS受信機は、エフェメリスによって現在時刻における各GPS衛星12a等の視線速度(端末20の方向に対する速度)を算出する。そして、その視線速度に基づいて、予想ドップラー周波数H2を算出する。
GPS受信機は、各GPS衛星12a等ごとに、サーチ中心周波数Aを算出する。
【0026】
端末20は、上述の第1測位方法のほかに、信号S1等の遅延時間に基づいて、擬似距離を算出する測位方法(第2測位方法)も実際可能である。
第2測位方法においても、上述と同様の相関処理を行う。ただし、第2測位方法においては、信号S1等に含まれる航法データのzカウントをデコードして発信時刻を知る必要がある。zカウントのデコードのためには、6秒(s)必要な場合があるから、その時間だけ測位が長時間化し、また、弱電界下においては、zカウントをデコードできない場合もある。
第2の測位方法も、信号S1等を捕捉及び追尾するために、上述の相関処理を行う。ただし、上述のように、zカウントをデコードする必要があるために、擬似距離の算出に長時間を要する場合がある、
【0027】
(端末20の主なハードウエア構成について)
図5は端末20の主なハードウエア構成を示す概略図である。
図5に示すように、端末20は、コンピュータを有しており、コンピュータは、バス22を有する。
このバス22には、CPU(Central Processing Unit)24、記憶装置26が接続されている。記憶装置26は例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等である。
【0028】
また、このバス22には、各種情報や命令の入力を受けるための入力装置28、電源装置30、通信信号を送受信するための通信装置32、GPS衛星12a等から信号S1等を受信するためのGPS装置34及び、各種情報を表示するための表示装置36が接続されている。
また、このバス22には、時計38が接続されている。
【0029】
(端末20の主なソフトウエア構成について)
図6は、端末20の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図6に示すように、端末20は、各部を制御する制御部100、図5の通信装置32に対応する通信部102、GPS装置34に対応するGPS部104、表示装置36に対応する表示部106、時計38に対応する計時部108等を有する。
端末20は、また、各種プログラムを格納する第1記憶部110、各種情報を格納する第2記憶部150を有する。
【0030】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、衛星軌道情報152を格納している。衛星軌道情報152は、すべてのGPS衛星12a等の概略の軌道を示すアルマナック(Almanac)152a、及び、各GPS衛星12a等の精密な軌道を示すエフェメリス(Ephemeris)152bを含む。端末20は、アルマナック152a及びエフェメリス152bを、GPS衛星12a等からの信号S1等を受信してデコードすることによって取得する。
端末20は、衛星軌道情報152を、信号S1等に基づく測位に使用する。
【0031】
図6に示すように、端末20は、第2記憶部150に、初期位置情報154を格納している。初期位置情報154は、初期位置P0を示す情報である。初期位置P0は、例えば、前回測位時の測位位置である。
【0032】
初期位置P0の誤差は、例えば、初期位置P0を算出したときの信号S1等の受信状態やPDOP(Position Dilution Of Precision)によって規定することができる。例えば、信号S1等の信号強度が強く、PDOPが小さい場合には、初期位置誤差P0erは5メートル(m)である。これに対して、屋内で信号S1等を受信し、信号強度が弱い場合には、初期位置誤差P0erは30メートル(m)である。
しかし、前回測位から長時間経過している場合や、前回測位時の位置から大きく移動している場合には、受信状態等による初期位置誤差P0erは信頼性を欠く。
この点、端末20は、今回の測位に際して、新たに初期位置誤差P0erを算出して、的確に、上述の第1測位方法又は第2測位方法を選択することができるようになっている。
【0033】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、衛星位置算出プログラム112を格納している。衛星位置算出プログラム112は、制御部100が、観測可能な各GPS衛星12a等について、その軌道上の衛星位置Psを算出するためのプログラムである。衛星位置算出プログラム112と制御部100は、衛星位置算出手段の一例である。
具体的には、制御部100は、アルマナック152aに基づいて、初期位置P0を基準として現在時刻において観測可能なGPS衛星12a等を算出する。続いて、制御部100は、エフェメリス152bに基づいて、現在時刻におけるGPS衛星12a等の軌道上の位置をGPS衛星12a等ごとに算出する。
例えば、GPS衛星12aの軌道上の衛星位置Psa、GPS衛星12bの軌道上の衛星位置Psbというように、衛星位置Psは、GPS衛星12a等ごとに算出される。
制御部100は、算出した衛星位置Psを示す衛星位置情報156を第2記憶部150に格納する。
【0034】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、相対位置算出プログラム114を格納している。相対位置算出プログラム114は、制御部100が、初期位置P0に対する衛星位置Psの相対位置を算出するためのプログラムである。相対位置算出プログラム114と制御部100は、相対位置算出手段の一例である。
【0035】
図7は、相対位置算出プログラム114の説明図である。
具体的には、制御部100は、初期位置P0から例えば、GPS衛星12aの衛星位置Psaへ向かうベクトルpgを算出する。
そして、ベクトルpgが示す3次元座標上の方向からGPS衛星12aの仰角及び方位角を算出する。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、仰角及び方位角を算出する。
制御部100は、算出した仰角及び方位角を示す相対位置情報158を第2記憶部150に格納する。仰角及び方位角は、相対位置の一例である。
【0036】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、視線方向ベクトル算出プログラム116を格納している。視線方向ベクトル算出プログラム116は、制御部100が、初期位置P0に対する各衛星の視線方向ベクトルvsを算出するためのプログラムである。視線方向ベクトルvsは、初期位置P0に対する各衛星の移動状態を示す情報の一例である。視線方向ベクトル算出プログラム116と制御部100は、移動状態算出手段の一例である。
【0037】
図8は、視線方向ベクトル算出プログラム116の説明図である。
具体的には、制御部100は、図8に示すように、エフェメリス152bを参照して、
例えば、GPS衛星12aの速度ベクトルvgを算出する。そして、初期位置P0とGPS衛星12aの軌道上の位置Psaを使用して、速度ベクトルvgの視線方向の成分vsを産出する。視線方向の成分vsが、視線方向ベクトルvsである。
制御部100は、算出した視線方向ベクトルvsを示す視線方向ベクトル情報160を第2記憶部150に格納する。
【0038】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、予想受信周波数算出プログラム118を格納している。予想受信周波数算出プログラム118は、制御部100が、観測可能な各GPS衛星12a等について信号S1のキャリア周波数のドップラー偏移を予想して、予想受信周波数festを算出するためのプログラムである。予想受信周波数算出プログラム118と制御部100は、予想受信周波数算出手段の一例である。
【0039】
図9は、予想受信周波数算出プログラム118の説明図である。
制御部100は、図9の式1を使用して、予想受信周波数festを算出する。
式1において、視線方向ベクトルvsに示される速度vによるドップラー偏移を考慮して、予想受信周波数festが算出される。
なお、本実施の形態においては、説明の便宜のため、端末20は静止しているものとする。また、端末20の基準クロックのドリフトはないと仮定する。
制御部100は、算出した予想受信周波数festを示す予想受信周波数情報162を第2記憶部150に格納する。
【0040】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部150に、実測受信周波数算出プログラム120を格納している。実測受信周波数算出プログラム120は、制御部100が、各GPS衛星12a等ごとに、信号S1等を受信したときの実測受信周波数(キャリアの周波数)frを算出するためのプログラムである。
制御部100は、算出した実測受信周波数frを示す実測受信周波数情報164を第2記憶部150に格納する。
【0041】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部150に、ドップラー誤差算出プログラム122を格納している。ドップラー誤差算出プログラム122は、制御部100が、予測受信周波数festと実測受信周波数frとの周波数差分であるドップラー誤差DPerを算出するためのプログラムである。ドップラー誤差算出プログラム122と制御部100は、周波数差分算出手段の一例である。
制御部100は、予測受信周波数festから実測受信周波数frを減じることによって、ドップラー誤差DPerを算出する。予想受信周波数festは、信号S1等のキャリアの発信周波数f0のドップラー偏移を予想して算出されている。そして、実測受信周波数frは、発信周波数f0がドップラー偏移の影響を受けた結果の周波数を実測して算出したものである。このため、予想受信周波数festと実測受信周波数frの差分は、予想受信周波数festを算出したときに予想したドップラー偏移の誤差を示している。
なお、予測受信周波数festは、各GPS衛星12a等ごとに異なっているから、各GPS衛星12a等ごとにドップラー誤差DPerも異なる。
制御部100は、算出したドップラー誤差DPerを示すドップラー誤差情報166を第2格納部150に格納する。
【0042】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部150に、初期位置誤差算出プログラム124を格納している。初期位置誤差算出プログラム124は、制御部100が、各衛星の仰角及び方位角に基づいて、初期位置P0の誤差(初期位置誤差P0er)を算出するためのプログラムである。初期位置誤差算出プログラム124と制御部100は、初期位置誤差算出手段の一例である。
【0043】
図10及び図11は、初期位置誤差算出プログラム124の説明図である。
図10に示すように、例えば、初期位置P0を基準とすると視線ベクトルvsが0の場合であっても、真の位置Prにおいては、視線ベクトルvsが存在する場合がある。すなわち、初期位置P0における視線ベクトルvsと真の位置Prにおける視線ベクトルvsが異なる場合がある。
これは、初期位置P0が真の位置Prと乖離しているためである。すなわち、初期地位誤差P0erが存在するためである。
そして、上述のように、予想受信周波数festは、初期位置P0を基準とする視線ベクトルvsに基づいて算出されている。このため、視線ベクトルvsの誤差は、ドップラー誤差DPerに反映する。
これは、ドップラー誤差DPerによって、初期位置誤差P0erを算出することができることを意味する。
【0044】
図11(a)に示すように、初期位置誤差P0erの単位長である1キロメートル(km)あたりのドップラー誤差uniDPerは、仰角に基づいて規定される。仰角が90度の場合にはドップラー誤差uniDPerは最も大きく、例えば、1kmについて1.0ヘルツ(Hz/km)である。これに対して、仰角が0度の場合にはドップラー誤差uniDPerは最も小さく、1kmについて0ヘルツ(Hz/km)である。
なお、図11(a)のグラフは、特定の衛星の軌道が端末20の頭上を通過する前提で作成されているが、特定の衛星の軌道が端末20頭上を通過しない場合であっても、仰角が90度に近いほど、ドップラー誤差uniDPerは大きい。このため、図11(a)とは数値は異なるが、同様のグラフを作成することができる。このとき、端末20は、相対位置情報158の方位角を使用する。
【0045】
図11(a)のグラフは、図11(b)に参考として示した式に示すように、仰角θにおけるドップラー誤差uniDPerθに初期位置誤差P0erを乗じた値がドップラー誤差DPerであるという関係があることを示す。
このため、図11(b)に示すように、制御部100は、ドップラー誤差DPerを仰角θにおける単位距離当たりのドップラー誤差uniDPerθで除する式2を使用して、初期位置誤差P0erを算出する。
例えば、仰角θが90度である場合に、ドップラー誤差DPerが100Hzであると、初期位置誤差P0erは100kmである。
制御部100は、算出した初期位置誤差P0erを示す初期位置誤差情報168を第2記憶部150に格納する。
制御部100は、GPS衛星12a等ごとに、初期位置誤差P0erを算出する。例えば、GPS衛星12aについての初期位置誤差P0eraと、GPS衛星12bについての初期位置誤差P0erbをそれぞれ算出する。仰角θはGPS衛星12a等ごとに異なるから、初期位置誤差P0erもまた、GPS衛星12a等ごとに異なる。すなわち、初期位置P0を基準として、仰角θが90度から離れる衛星ほど初期位置誤差P0erは大きく、仰角θが小さい衛星ほど初期位置誤差P0erは小さい。
制御部100は、複数の衛星について初期位置誤差P0erを算出した場合には、その平均値を算出し、平均値を初期位置誤差P0erとする。これにより、初期位置誤差P0erの算出誤差の影響が低減され、一層的確に測位方法を選択することができる。
【0046】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位プログラム126を格納している。測位プログラム126は、制御部100が、初期位置誤差P0erに基づいて、第1測位方法又は第2測位方法を選択して測位するためのプログラムである。制御部100にと測位プログラム126は、測位方法選択手段の一例である。
【0047】
図12は、測位プログラム126の説明図である。
図6及び図12に示すように、測位プログラム126は、第1測位プログラム128及び第2測位プログラム130を含む。第1測位プログラム128は、制御部100が、第1測位方法を実施するためのプログラムである。第2測位プログラム130は、制御部100が、第2測位方法を実施するためのプログラムである。
図12に示すように、制御部100は、初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)以内の場合には、第1測位方法を選択する。
これに対して、制御部100は、初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)よりも大きい場合には、第2測位方法を選択する。
制御部100は、第1測位方法又は第2測位方法によって算出した測位位置P1を示す測位位置情報170を第2記憶部150に格納する。
【0048】
図6に示すように、端末20は、第1記憶部110に、測位位置出力プログラム132を格納している。
測位位置出力プログラム132は、制御部100が、測位位置P1を出力するためのプログラムである。
制御部100は、測位位置P1が複数算出されている場合には、初期位置P0と初期位置誤差P0erに基づいて、測位位置P1を取捨選択する。具体的には、制御部100は、初期位置P0を中心として半径が初期位置誤差P0erの範囲内にある測位位置P1のみを出力する。
すなわち、測位位置出力プログラム132と制御部100は、測位結果選択手段の一例である。
【0049】
端末20は、上述のように構成されている。
上述のように、端末20は、初期位置誤差P0erを算出することができる。ここで、ドップラー誤差DPer誤差が大きいほど、初期位置誤差P0erが大きいことがわかっている。このため、ドップラー誤差DPerを使用して、初期位置誤差P0erを算出することができるのである。
また、端末20は、第1測位方法又は第2測位方法のいずれかを選択することができる。
これにより、端末20は、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる。
【0050】
端末20の真の位置は、初期位置P0を中心として、初期位置誤差P0erを半径とする円内にあるはずである。ここで、初期位置誤差P0erは、新たに算出した信頼性の高い情報である。
このため、端末20は、初期位置P0及び初期位置誤差P0erを使用して、的確に複数の測位結果を取捨選択することができる。
【0051】
以上が本実施の形態の端末20の構成であるが、以下、その動作例を主に図13を使用して説明する。
図13は本実施の形態の端末20の動作例を示す概略フローチャートである。
【0052】
まず、端末20は、観測可能な各GPS衛星12a等について、衛星位置Psを算出する(図13のステップST1)。このステップST1は、衛星位置算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、各GPS衛星12a等の仰角及び方位角を算出する(ステップST2)。このステップST2は、相対位置算出ステップの一例である。
【0053】
続いて、端末20は、視線方向ベクトルvsを算出する(ステップST3)。このステップST3は、移動状態算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、予想受信周波数festを算出する(ステップST4)。このステップST4は、予想受信周波数算出ステップの一例である。
【0054】
続いて、端末20は、信号S1等を受信し、実測受信周波数frを算出する(ステップST5)。
続いて、端末20は、ドップラー誤差DPerを算出する(ステップST6)。このステップST6は、周波数差分算出ステップの一例である。
【0055】
続いて、端末20は、初期位置誤差P0erを算出する(ステップST7)。このステップST7は、初期位置誤差算出ステップの一例である。
続いて、端末20は、測位方法を決定する(ステップST8)。このステップST8は、測位方法選択ステップの一例である。
【0056】
続いて、端末20は、第1測位方法又は第2測位方法によって、測位を行う(ステップST9)。
続いて、端末20は、測位位置P1を出力する(ステップST10)。
【0057】
上述のステップによって、初期位置の誤差を的確に把握して、擬似距離の算出方法を選択することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施の形態について、説明する。
第2の実施の形態における端末20Aの構成は、上記第1の実施の形態の端末20と多くの構成が共通するため共通する部分は同一の符号等とし、説明を省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0059】
図14は、端末20Aの主なソフトウエア構成を示す概略図である。
図14に示すように、端末20Aは、初期位置修正プログラム134を格納している。
初期位置修正プログラム134は、初期位置誤差P0erが150kmよりも大きい場合に、制御部100が、複数のGPS衛星12a等の移動方向と、衛星位置Psと、GPS衛星12a等からの発信周波数H1及び実測受信周波数frとに基づいて、初期位置P0を修正するためのプログラムである。
【0060】
図15は、初期位置修正プログラム134の説明図である。
図15にしめすように、制御部100は、例えば、GPS衛星12aからの発信周波数H1及び実測受信周波数frとに基づいて、実際のドップラー周波数を算出し、GPS衛星12a等の移動方向と衛星位置Psとを使用して、実測視線方向ベクトルvsraを算出する。
そして、制御部100は、実測視線方向ベクトルvsraの延長線上の地表の位置P0raを算出することができる。この位置P0raが端末20Aの位置である。しかし、ドップラー周波数を使用して算出した端末20の位置P0raは精度が低い。
このため、制御部100は、さらに、GPS衛星12bからの発信周波数H1及び実測受信周波数frとに基づいて、実際のドップラー周波数を算出し、GPS衛星12a等の移動方向と衛星位置Psとを使用して、実測視線方向ベクトルvsrbを算出する。
そして、制御部100は、実測視線方向ベクトルvsrbの延長線上の地表の位置P0rbを算出する。
そして、制御部100は、位置P0raとP0rbとの平均位置P0rを算出し、修正初期位置P0rとする。
これにより、位置P0ra及びP0rbの誤差を低減することができる。ただし、修正初期位置P0erは、測位方法を選択するためには十分な精度を有するが、表示装置36(図5参照)に表示してユーザが自己位置の確認等に使用するほどの精度は有していない。
制御部100は、修正初期位置P0rを示す修正初期位置情報172を第2記憶部150に格納する。
なお、より多くの衛星を使用して位置P0ra等を算出し、それらの平均位置を算出することによって、修正初期位置P0rの精度を向上させることができる。
【0061】
そして、制御部100は、修正初期位置P0rを使用して、初期位置誤差P0erを算出するための一連の演算処理を行う。
そして、制御部100は、新たに算出した初期位置誤差P0erに基づいて、第1測位プログラム128又は第2測位プログラム130による測位のいずれかを選択する。
このため、修正初期位置P0rを使用して算出した初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)以内であれば、より迅速に測位可能な第1測位プログラム128に基づく測位を行うことができる。
このように、端末20Aの構成によれば、当初の初期位置P0によって算出した初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)より大きい場合であっても、修正初期位置P0rによって算出した初期位置誤差P0erが150キロメートル(km)以内であれば、より迅速に測位可能な第1測位プログラム128に基づく測位を行うことができるから、第1測位プログラム128による測位方法を使用することができる可能性を高くすることができる。
【0062】
(プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等について)
コンピュータに上述の動作例の相対位置算出ステップと、移動状態算出ステップと、予想受信周波数算出ステップと、周波数差分算出ステップと、初期位置誤差算出ステップと、測位方法選択ステップ等を実行させるための測位装置の制御プログラムとすることができる。
また、このような測位装置の制御プログラム等を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等とすることもできる。
【0063】
これら測位装置の制御プログラム等をコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられるプログラム格納媒体は、例えばフロッピー(登録商標)のようなフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc−Recordable)、CD−RW(Compact Disc−Rewritable)、DVD(Digital Versatile Disc)などのパッケージメディアのみならず、プログラムが一時的若しくは永続的に格納される半導体メモリ、磁気ディスクあるいは光磁気ディスクなどで実現することができる。
【0064】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。さらに、上述の各実施の形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態の端末等を示す概略図である。
【図2】測位方法の一例を示す概念図である。
【図3】相関処理の説明図である。
【図4】相関処理の説明図である。
【図5】端末の主なハードウエア構成を示す概略図である。
【図6】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図7】相対位置算出プログラムの説明図である。
【図8】視線方向ベクトル算出プログラムの説明図である。
【図9】予想受信周波数算出プログラムの説明図である。
【図10】初期位置誤差算出プログラムの説明図である。
【図11】初期位置誤差算出プログラムの説明図である。
【図12】測位プログラムの説明図である。
【図13】端末の動作例を示す概略フローチャートである。
【図14】端末の主なソフトウエア構成を示す概略図である。
【図15】初期位置修正プログラムの説明図である。
【符号の説明】
【0066】
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h・・・GPS衛星、20・・・端末、112・・・衛星位置算出プログラム、114・・・相対位置算出プログラム、116・・・視線方向ベクトル算出プログラム、118・・・予想受信周波数算出プログラム、120・・・実測受信周波数算出プログラム、122・・・ドップラー誤差算出プログラム、124・・・初期位置誤差算出プログラム、126・・・測位プログラム、128・・・第1測位プログラム、130・・・第2測位プログラム、132・・・測位位置出力プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のSPS(Satellite Positioning System)衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置であって、
前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出手段と、
前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出手段と、
前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出手段と、
前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出手段と、
前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出手段と、
前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する第1測位方法、又は、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する第2測位方法のいずれかを選択する測位方法選択手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記相対位置は、
前記初期位置に対する各前記衛星位置の仰角であることを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記初期位置及び前記初期位置誤差を使用して、複数の測位結果を取捨選択する測位結果選択手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の測位装置。
【請求項4】
前記衛星信号の発信周波数と前記実測受信周波数を使用して実際のドップラー偏移を算出し、さらに、実際の視線方向ベクトルを算出することによって、前記初期位置を修正する初期位置修正手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測位装置。
【請求項5】
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、
前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、
前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項6】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、
前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、
前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、
前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、
前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
複数のSPS(Satellite Positioning System)衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置であって、
前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出手段と、
前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出手段と、
前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出手段と、
前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出手段と、
前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出手段と、
前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する第1測位方法、又は、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する第2測位方法のいずれかを選択する測位方法選択手段と、
を有することを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記相対位置は、
前記初期位置に対する各前記衛星位置の仰角であることを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記初期位置及び前記初期位置誤差を使用して、複数の測位結果を取捨選択する測位結果選択手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の測位装置。
【請求項4】
前記衛星信号の発信周波数と前記実測受信周波数を使用して実際のドップラー偏移を算出し、さらに、実際の視線方向ベクトルを算出することによって、前記初期位置を修正する初期位置修正手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測位装置。
【請求項5】
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、
前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、
前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、
を有することを特徴とする測位装置の制御方法。
【請求項6】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、
前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、
前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
複数のSPS衛星からの衛星信号を使用して測位を行う測位装置が、前記測位のための初期位置に対する、現在時刻における前記SPS衛星の衛星軌道上の位置を算出する相対位置算出ステップと、
前記測位装置が、前記測位のための初期位置に対する前記SPS衛星の移動状態を算出する移動状態算出ステップと、
前記測位装置が、前記移動状態に基づいて、ドップラー偏移を予想して、前記衛星信号の予想受信周波数を算出する予想受信周波数算出ステップと、
前記測位装置が、前記予想受信周波数と実際の受信周波数である実測受信周波数との周波数差分を算出する周波数差分算出ステップと、
前記測位装置が、前記相対位置及び前記周波数差分に基づいて、前記初期位置の誤差を算出する初期位置誤差算出ステップと、
前記測位装置が、前記初期位置の誤差に基づいて、前記衛星信号のコードフェーズを使用して擬似距離を算出する測位方法、または、前記衛星信号の遅延時間を使用して擬似距離を算出する測位方法のいずれかを選択する測位方法選択ステップと、
を実行させることを特徴とする測位装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−58146(P2008−58146A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235141(P2006−235141)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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