説明

測位装置、測位方法およびプログラム

【課題】 任意のタイミングで測位処理を実行する場合でも、短時間に位置の測定を完了することのできる測位装置、測位方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 GPS衛星から送られてくる信号を受信する受信手段と、計時を行う計時手段と、受信されたエフェメリス情報を記憶する記憶手段と、受信された時刻情報に基づき計時手段の計時時刻を修正する時刻修正手段と、間欠的なタイミングTE1,TE2,TE3でエフェメリス情報を受信させる第1受信制御手段と、間欠的なタイミングTC1,TC2,TC3,TC4で時刻情報を受信させる第2受信制御手段とを備え、位置測定タイミングT1において計時手段の計時時刻に基づき同期をとりながらGPS衛星の送信信号を捕捉し、この送信信号と前記記憶手段に記憶されているエフェメリス情報とに基づいて位置の測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位衛星から信号を受信して位置の測定を行う測位装置、測位方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(全地球測位システム)機能を搭載した電子機器において、位置の測定を所定期間ごとに間欠的に行うようにしたものや、カメラ撮影など特定の動作に連動させて位置の測定を行うようにしたものがある(例えば特許文献1〜3を参照)。
【0003】
GPS測位装置では、複数のGPS衛星から受信される測位符号に基づいて各GPS衛星までの擬似距離を算出するとともに、エフェメリス情報に基づいて各GPS衛星の位置を算出し、これらの算出結果を用いて自己の位置を測定する。
【0004】
エフェメリス情報は、一度、受信を行えば、1つのGPS衛星の位置を算出するのに数時間は使用することができる。そのため、位置の測定を間欠的に行う一般的なGPS測位装置においては、以前の測位処理の際に受信したエフェメリス情報をメモリに保存しておき、その後の測位処理の際、有効なエフェメリス情報がメモリに記憶されていれば、これを使用して短時間に自己の位置測定を遂行するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−267734号公報
【特許文献2】特開2006−339723号公報
【特許文献3】特開2001−166366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
GPS衛星から送信される電波は、微弱であり、また、スペクトル拡散されているため、この電波を捕捉して復調するためには、送信側と受信側とで同期をとって受信処理を行う必要がある。
【0007】
GPS衛星は原子時計により正確な時刻情報を有しているが、受信側の機器に搭載される計時回路はそれほどの正確さはない。そのため、計時回路の計時時刻に誤差が生じていると、送信側と受信側とのタイミングの不整合により電波を捕捉して復調するのに時間がかかる。
【0008】
そのため、従来の測位装置では、有効なエフェメリス情報が保存されていて、短時間に位置の測定を遂行できるはずなのに、計時時刻の誤差により電波の捕捉に時間がかかって位置の測定にかかるトータルの時間が長くなるという課題があった。
【0009】
この発明の目的は、時間を開けて測位処理を実行する場合でも、短時間に位置測定の処理を完了することのできる測位装置、測位方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
測位衛星から送られてくる信号の受信を行う受信手段と、
計時を行う計時手段と、
前記受信手段を介して前記測位衛星から位置の測定に必要な航路情報を受信させる第1受信制御手段と、
受信された前記航路情報を記憶する記憶手段と、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻を表わす時刻情報を受信させる第2受信制御手段と、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正手段と、
前記計時手段の計時時刻に基づいて前記測位衛星の送信信号を捕捉し、この送信信号と前記記憶手段に記憶されている航路情報とに基づいて位置の測定を行う測位手段と、
を備え、
前記第1受信制御手段は、
所定の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御手段は、
前記測位手段による位置の測定が行われない期間にも、前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴とする測位装置である。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記第1受信制御手段は、
第1の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御手段は、
第1の受信間隔よりも短い第2の受信間隔で前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記測位衛星はGPS衛星であり、
前記航路情報はエフェメリス情報であることを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の測位装置において、
前記第1受信制御手段は、1時間以内の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御手段は、30分以内の受信間隔で前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記測位手段の電源をオンとオフとに切り換える電源切換手段を備え、
前記第1受信制御手段と前記第2受信制御手段とは前記電源切換手段がオフに切り換えられている期間も前記航路情報と前記時刻情報との間欠的な受信を行わせることを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
動きの有無を検出する動き検出手段を備え、
前記第1受信制御手段と前記第2受信制御手段とは、前記動き検出手段の検出に基づき当該測位装置が静止状態にないと判別される期間に、前記航路情報と前記時刻情報との間欠的な受信を継続させることを特徴としている。
【0016】
請求項7記載の発明は、
測位衛星から送られてくる信号を受信する受信手段と、計時を行う計時手段とを用いて位置の測定を行う測位方法において、
前記受信手段を介して前記測位衛星から位置の測定に必要な航路情報を受信させる第1受信制御ステップと、
受信された前記航路情報を記憶手段に記憶させる航路情報記憶ステップと、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻を表わす時刻情報を受信させる第2受信制御ステップと、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正ステップと、
前記計時手段の計時時刻に基づいて前記受信手段により受信される前記測位衛星の送信信号を捕捉し、この送信信号と前記記憶手段に記憶されている航路情報とに基づいて位置の測定を行う測位ステップと、
を含み、
前記第1受信制御ステップでは、
所定の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御ステップでは、
前記測位手段による位置の測定が行われない期間にも、前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴としている。
【0017】
請求項8記載の発明は、
測位衛星から送られてくる信号を受信する受信手段と、計時を行う計時手段とを制御するコンピュータに、
前記受信手段を介して前記測位衛星から位置の測定に必要な航路情報を受信させる第1受信制御機能と、
受信された前記航路情報を記憶手段に記憶させる航路情報記憶機能と、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻を表わす時刻情報を受信させる第2受信制御機能と、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正機能と、
前記計時手段の計時時刻に基づいて前記受信手段に前記測位衛星の送信信号を捕捉させ、この送信信号と前記記憶手段に記憶されている前記航路情報とに基づいて位置の測定を行う測位機能と、
を実現させ、
前記第1受信制御機能では、
所定の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御機能では、
前記測位手段による位置の測定が行われない期間にも、前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、位置の測定が行われていない期間においても、測位衛星から時刻情報が間欠的に受信されて、この時刻情報により計時手段の計時時刻が修正される。また、測位衛星の航路情報も間欠的に受信された状態にされる。従って、時間を開けて位置の測定を行う場合でも、誤差の少ない計時時刻を用いて短時間に測位衛星の送信信号を捕捉することができ、さらに、間欠的に受信されている航路情報を用いて短時間に位置を算出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の電子機器の全体を示すブロック図である。
【図2】電子機器により実行される測位制御処理の動作の一例を表わした説明図である。
【図3】サブCPUにより実行される測位制御処理の手順を示すフローチャートの第1部である。
【図4】同、測位制御処理の手順を示すフローチャートの第2部である。
【図5】同、測位制御処理の手順を示すフローチャートの第3部である。
【図6】同、測位制御処理の手順を示すフローチャートの第4部である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態である測位装置としての電子機器1の全体を示すブロック図である。
【0022】
この実施形態の電子機器1は、電気的に撮像を行って撮影画像を画像データとして保存する撮影機能と、GPS(全地球測位システム)や自律航法による測位機能とを備え、撮影機能により得られた画像データと測位機能により得られた位置データとを関連づけて記憶することのできる装置である。
【0023】
この電子機器1は、図1に示すように、撮影機能とユーザインターフェース機能に関する処理を担う第1処理部10と、測位機能に関する処理を担う第2処理部20と、各部に電源電圧を供給する電源35等を備えている。
【0024】
第1処理部10は、演算処理を行うメインCPU(中央演算処理回路)11と、メインCPU11が実行する制御プログラムや制御データが格納されたROM(Read Only Memory)12と、メインCPU11に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)13と、外部からの指令を入力する操作キー14と、電源を切り換える操作を入力する電源キー15と、CCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により撮像を行う撮像部16と、種々の情報表示を行う液晶ディスプレイなどの表示部17等を備えている。
【0025】
第2処理部20は、演算処理を行うサブCPU21と、サブCPU21が実行する制御プログラムや制御データが格納されたROM22と、サブCPU21に作業用のメモリ空間を提供するRAM23と、制御データを記憶する不揮発性メモリ24と、GPS衛星から送られてくる電波の受信を行うGPS受信アンテナ25と、GPS衛星の送信信号を捕捉して復調するGPS受信回路26と、エフェメリス情報と時刻情報との間欠受信に関する制御を行う間欠受信制御回路27と、3軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサ28と、3軸方向の地磁気の大きさを検出する3軸地磁気センサ29と、3軸加速度センサ28および3軸地磁気センサ29の出力に基づき自律航法によって現在位置データを求める自律航法制御処理回路30と、GPSによる位置測定が行われた際に自律航法により求められた位置データの補正を行う自律航法誤差補正処理回路31と、例えば水晶発振器の信号に基づいて計時を行う計時回路32等を備えている。
【0026】
この電子機器1においては、電源35による各部への電源供給に対して3系統の切換制御が行われる。第1処理部10では、電源キー15の操作によって電源の供給と遮断が切り換えられ、それにより第1処理部10が作動状態と停止状態とに切り換えられる。
【0027】
第2処理部20においては、常時作動部20aには常に電源供給が行われた状態にされる。常時作動部20aには、サブCPU21、計時回路32、および3軸加速度センサ28が含まれる。第2処理部20のその他の各部については、サブCPU21の制御によって電源の供給状態が切り換えられる。すなわち、サブCPU21は、第1処理部10の作動状態と3軸加速度センサ28の出力とに基づいてスリープ状態となったり起動状態となったり動作モードが切り換えられる。そして、起動状態のときには第2処理部20全体への電源供給を継続させるが、スリープ状態のときには常時作動部20a以外への電源供給を停止させる。
【0028】
GPS受信回路26は、複数のGPS衛星と処理タイミングの同期をとりながら所定の拡散符号を用いて逆拡散の処理を行うことで、スペクトル拡散された各GPS衛星の送信電波を捕捉して復調する。受信処理の初期段階において、GPS受信回路26は計時回路32の計時時刻に従って各GPS衛星との処理タイミングの同期を図るが、タイミングがずれていて送信電波の捕捉ができない場合には、処理タイミングを変更しながら受信処理を繰り返すことで、各GPS衛星と同期した処理タイミングを見つけてGPS衛星の送信信号を捕捉および復調する。従って、計時回路32の計時時刻が正確であればGPS衛星の送信電波を極短時間に捕捉できるが、計時回路32の計時時刻に誤差が多く含まれる場合には送信電波の捕捉に時間がかかる。
【0029】
間欠受信制御回路27は、GPS受信回路26を介して必要なエフェメリス情報と時刻情報とを受信する制御を行う。受信制御は、サブCPU21の指令に基づいて開始し、受信が完了したら終了する。具体的には、サブCPU21からエフェメリス情報の間欠受信の開始指令を受けると、GPS受信回路26から送られてくる復調データを入力して、必要なエフェメリス情報が受信されたか監視する。そして、必要数のGPS衛星のエフェメリス情報が受信されたら、サブCPU21に受信完了を知らせる。同様に、サブCPU21から時刻情報の間欠受信の開始指令を受けると、GPS受信回路26から送られてくる復調データを入力して、時刻情報が受信されたか監視し、受信されたらサブCPU21に受信完了を知らせる。
【0030】
不揮発性メモリ24には、測位結果である複数の位置データが記憶されるとともに、サブCPU21の指令によって間欠受信された複数のGPS衛星のエフェメリス情報が記憶される。
【0031】
サブCPU21は、第2処理部20の統括的な制御処理に加えて、GPS受信回路26を作動させて所定の測位演算を行うことで電子機器1の現在位置を算出する処理も行う。測位演算では、複数のGPS衛星から送られてくる測位符号に基づいて各GPS衛星までの擬似距離を算出し、且つ、不揮発性メモリ24に記憶されているエフェメリス情報を用いて各GPS衛星の位置を算出し、これらの算出結果に基づいて自己の位置を算出する。
【0032】
3軸加速度センサ28は、自律航法による位置測定を行うための自律航法用センサとしての機能と、電子機器1が使用状態にあるか否かを検出する動き検出手段としての機能とを兼ね備えたものである。すなわち、3軸加速度センサ28は、自律航法用センサの機能として、電子機器1の向き特定のために重力方向の測定を行い、且つ、電子機器1を携帯したユーザの歩行動作(歩数)を求めるために重力方向の加速度変化を計測する。
【0033】
また、3軸加速度センサ28は、動き検出手段の機能として、一定以上の加速度変化が一定時間(例えば30秒や1分など)以上発生していない状態か否かを判別し、この判別に基づく起動制御信号をサブCPU21の起動端子へ出力するようになっている。一定以上の加速度変化が有れば起動制御信号を有効レベルとし、一定以上の加速度変化が一定時間以上なければ起動制御信号を無効レベルとする。この3軸加速度センサ28による起動端子の制御によって、電子機器1の電源がオフにされている状態で、サブCPU21が起動状態となったりスリープ状態となったり切り換えられる。
【0034】
3軸地磁気センサ29は、自律航法による位置測定の際に電子機器1の向きを特定するために磁北の方向を計測する。
【0035】
自律航法制御処理回路30は、サブCPU21の演算処理を補助するための演算回路であり、所定のサンプリング周期で3軸地磁気センサ29と3軸加速度センサ28の計測データをサブCPU21を介して入力し、これらの計測データから電子機器1の移動方向と移動量とを算出していく。詳細には、3軸加速度センサ28による上下方向の加速度変化の計測結果に基づいて電子機器1を携帯したユーザの歩数を計数し、これに予め設定入力されている歩幅データと乗算することで、相対的な移動量を求める。また、3軸加速度センサ28の重力方向の計測結果と3軸地磁気センサ29の磁北方向の計測結果に基づいて電子機器1の向きを求める。
【0036】
また、自律航法制御処理回路30は、3軸加速度センサ28に現れる歩行動作特有の加速度変化から移動方向を作出する。具体的には、ユーザの胴体は左足を踏み出すときに前方やや左側に大きく加速し、右足を踏み出すときに前方やや右側に大きく加速する。このとき、装置がユーザの胴体に装着されていると、装置も同様の加速度運動を行うので、この加速度変化が3軸加速度センサの水平方向の成分に現れる。このようにして、3軸加速度センサ28による歩行動作の前後方向の揺れや左右方向のローリング動作の検出結果に基づいて電子機器1を携帯したユーザの歩行方向(すなわち移動方向)を求める。
【0037】
さらに、自律航法制御処理回路30は、上記のように求められた移動量および移動方向からなるベクトルデータを、サブCPU21から供給される基準地点の位置データに積算していくことで、移動経路に沿った各地点の位置データを求めて不揮発性メモリ24に記憶させていく。
【0038】
自律航法誤差補正処理回路31は、サブCPU21の演算処理を補助するための演算回路であり、サブCPU21の指令に基づいて、自律航法により求められて不揮発性メモリ24に記憶されている複数の位置データに対して所定の誤差補正を行う。誤差補正は、GPSの測位により正確な位置データが求められた際に、この正確な位置データに基づいて、その前後で自律航法によって求められている位置データを正確な位置データに合わせるように実行される。
【0039】
第1処理部10のROM12には、操作キー14からの入力に基づいて表示部17の表示内容を変更したり、撮像部16を駆動して画像データを取り込むとともに、第2処理部20から現在位置データを取得して画像データと関連づけて保存したりする制御プログラムが記憶されている。
【0040】
第2処理部20のROM22には、GPSと自律航法による位置測定を行うための測位制御処理のプログラムが記憶されている。この測位制御処理のプログラムは、ROM22に格納するほか、例えば、データ読取装置を介してサブCPU21が読み取り可能な、光ディスク等の可搬型記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに格納しておくことが可能である。また、このようなプログラムがキャリアウェーブ(搬送波)を媒体として通信回線を介して電子機器1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0041】
次に、上記構成の電子機器1において実行される測位制御処理について説明する。
【0042】
図2には、電子機器1の測位制御処理の動作の一例を表わした説明図を示す。
【0043】
この実施形態の電子機器1においては、図2に示すように、電源キー15が操作されて電子機器1が起動したタイミングT1において、サブCPU21の制御によって、短時間でGPSによる位置の測定が行われるようになっている。
【0044】
詳細には、タイミングT1に電子機器1が起動すると、メインCPU11からサブCPU21へ電子機器1の起動が通知され、サブCPU21の制御によってGPSの測位処理が開始される。このGPS測位処理では、GPS受信回路26が計時回路32の計時時刻に基づいて受信処理の同期をとることで、速やかにGPS衛星の送信電波を捕捉する。さらに、サブCPU21が不揮発性メモリ24に記憶されたエフェメリス情報を用いて測位演算を行うことで、速やかに電子機器1の現在位置のデータを算出する。
【0045】
このように任意のタイミングで開始されるGPSの測位処理を短時間で遂行させるために、この実施形態の電子機器1では、図2のタイミングTE1,TE2,TE3に示すように、測位処理の必要のない期間においても、間欠的に、複数のGPS衛星から航路情報としてのエフェメリス情報を受信して不揮発性メモリ24へ記憶しておく処理を行っている。
【0046】
さらに、この実施形態の電子機器1では、図2のタイミングTC1,TC2,TC3,TC4に示すように、測位処理が行われない期間においても、エフェメリス情報の受信間隔よりも短い間隔で、GPS衛星から時刻情報を受信して計時回路32の計時時刻の誤差を補正する時刻合わせの処理を行っている。
【0047】
エフェメリス情報の受信間隔は、例えば一定時間の30分に設定されている。1つのGPS衛星が電波受信可能な範囲に入ってからこの範囲を出るまでの時間は4時間程度であり、また、エフェメリス情報は2時間ごとに更新される。従って、30分間隔で電波が届く複数のGPS衛星のエフェメリス情報を取得して記憶しておくことで、任意のタイミングでGPSの測位を実行する場合でも、常に必要なエフェメリス情報が保持された状態にすることができる。
【0048】
なお、エフェメリス情報の受信間隔は、30分に限られず、例えば、1時間以内の間隔としておけば、測位を行うのに必要なエフェメリス情報を常に保持した状態にしておくことができる。また、一定時間とせずに、例えば有効なエフェメリス情報(電波が届く範囲にあるGPS衛星のエフェメリス情報で最新のもの)が多数保持されていれば受信間隔を長くしたり、有効なエフェメリス情報が少なくなってきたら受信間隔を短くするなど、所定条件で長短に変動される所定の受信間隔としても良い。
【0049】
時刻情報の受信間隔は、例えば一定時間の10分に設定されている。水晶発振器を用いた計時回路32においては、GPS衛星の計時時刻と比較して大きな誤差が発生するが、10分ごとにGPS衛星の時刻情報と同期させる処理を行って誤差を少なくしておくことで、計時回路32の計時データに基づきGPS衛星側との同期を速やかに行って、GPS受信回路26による電波の捕捉を短時間に行わせることが可能となる。なお、時刻情報の受信間隔は、10分に限られず、計時回路32の誤差が少なければもっと長い時間に設定したり、誤差が大きければもっと短い時間に設定するようにしても良い。また、一定時間とせずに所定の条件で長短に変動される所定の受信間隔とすることもできる。
【0050】
また、この電子機器1では、上記のエフェメリス情報の間欠受信の際(TE1,TE2,TE3)、この受信処理に伴って時刻情報も同時に受信できることから、時刻情報の受信および計時回路32の時刻合わせの処理も併せて行っている。また、エフェメリス情報の受信に伴って測位演算に必要な測位符号も取得されることから、測位演算により現在位置データを求める処理も併せて行っている。
【0051】
上記のエフェメリス情報と時刻情報の間欠受信の処理は、電子機器1の電源がオンのときもオフのときも共に実行される。但し、電源がオフに切り換えられ、且つ、3軸加速度センサ28からサブCPU21へ出力される起動制御信号が無効レベルにされている期間は、電子機器1が全く使用されていない状態と判断できる。従って、この間は、上記の間欠受信の処理は停止され、常時作動部20a以外の第2処理部20の各部への電源供給も停止されるようになっている。
【0052】
さらに、この実施形態の電子機器1では、電源がオフで3軸加速度センサ28の起動制御信号が無効レベルになっている期間を除いて、常に、自律航法制御処理回路30により自律航法の位置測定(図2に「自律測位」と記す)が実行される。さらに、図2のタイミングT1,TE1,TE2,TE3において、GPSによる測位が行われたら、自律航法誤差補正処理回路31によって、過去に自律航法の測位により求められた位置データが、GPSの位置データに基づき補正されて、より正確な位置データに修正されるようになっている。
【0053】
なお、この実施形態の電子機器1では、上記のように自律航法の測位によって移動経路の情報を残すように構成され、且つ、自律航法の測位にはGPSの位置データが必要となるため、エフェメリス情報の間欠受信時にもGPSの測位演算を行って位置データの算出も行っている。しかしながら、電子機器1の起動タイミング或いは任意の操作時にGPSの測位を短時間に行えればよいのであれば、エフェメリス情報の間欠受信時にGPSの測位演算を行って位置データを求める必要はない。
【0054】
上述のような測位制御処理によれば、常に、電子機器1の内部に有効なエフェメリス情報が保持され、且つ、計時回路32の計時時刻が正確な値に補正された状態となるので、任意のタイミングでGPSの測位処理の要求がなされた場合でも、短時間にGPS衛星の送信電波を捕捉することができ、且つ、短時間で測位演算を行うことができる。その結果、例えば数秒程度の短い時間で正確な現在位置データを求めることが可能となる。
【0055】
続いて、上述した測位制御処理を実現する制御手順の一例をフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
図3〜図6には、サブCPU21により実行される測位制御処理のフローチャートを示す。
【0057】
この測位制御処理は、サブCPU21の電源投入とともに開始されて常時に実行されるものである。また、このフローチャートにおいて、ステップS1〜S3の処理は、サブCPU21のソフトウェア処理ではなく、サブCPU21の起動状態を制御するステータスレジスタの機器オンフラグと、3軸加速度センサ28からサブCPU21へ出力される起動制御信号とに基づくハードウェア処理を表わしている。
【0058】
すなわち、サブCPU21では、電子機器1の電源の切換え状態を示す機器オンフラグが電源オンを示す値“1”であれば起動状態にされ、電源オフを示す値“0”であればスリープ状態に移行可能な状態にされる。さらに、機器オンフラグが“0”の状態において、3軸加速度センサ28の起動制御信号が無効レベルであればスリープ状態へ移行し、有効レベルになればスリープ状態が解除される。
【0059】
従って、先ず、機器オンフラグの判別(ステップS1)によって電子機器1の電源がオンであれば、サブCPU21は起動状態にあるので、サブCPU21はステップS6の処理から実行する。一方、電子機器1の電源がオフであれば、3軸加速度センサ28の起動制御信号による制御(ステップS2)によって、電子機器1が移動状態にあるか静止状態にあるか判別される(ステップS3)。そして、起動制御信号が無効レベルであれば(ステップS3で“No”)、サブCPU21はスリープ状態のままとなり、3軸加速度センサ28の起動制御信号が有効レベルとなれば(ステップS3で“Yes”)、サブCPU21は起動して、ステップS4の処理から実行する。
【0060】
その結果、ステップS4から処理が開始されたら、サブCPU21は、先ず、自己の起動処理を行い(ステップS4)、続いて、3軸加速度センサ28や3軸地磁気センサ29など第2処理部20の電源をオンする処理を行う(ステップS5)。そして、ステップS6へ移行する。
【0061】
ステップS6へ移行したら、サブCPU21は、まず、自律航法による測位の処理(S6〜S8)を実行する。すなわち、3軸加速度センサ28と3軸地磁気センサ29により加速度と方位の検出を行わせ(ステップS6)、その検出データを自律航法制御処理回路30へ送って基準地点の位置データに移動ベクトルを積算して現在位置データを算出させる(ステップS7)。ここで、基準地点の位置データとは、前回のGPSの測位により得られた位置データのことである。サブCPU21がスリープ状態から起動したばかりで基準地点の位置データがない場合には、仮の位置データが代用される。そして、自律航法制御処理回路30により位置データが求められたら、この位置データを補正前の移動軌跡データとして不揮発性メモリ24へ記憶させる(ステップS8)。
【0062】
つまり、上記のステップS6〜S8の処理が、ステップS6〜S12のループ処理により繰り返し行われることで、サブCPU21が起動している期間に常に自律航法の測位処理が背後で継続される。
【0063】
自律航法の測位処理を行ったら、次に、サブCPU21は、電子機器1の電源状態に応じた分岐処理を行う(ステップS9)。そして、電源の切り換わりがなければステップS10へ、オフからオンへの切り換わりがあれば電源オン時の処理(図5のステップS28〜S33)へ、オンからオフへの切り換わりがあれば電源オフ時の処理(図6のステップS34〜S46)へ、それぞれ移行する。
【0064】
その結果、切り換わりがなくてステップS10へ移行したら、先ず、サブCPU21は、GPS受信回路26が作動中でGPS衛星からの何らかの信号受信中であるか否かを判別し(ステップS10)、受信中でなければ前回のエフェメリス情報の受信から一定時間(例えば30分)が経過したか判別し(ステップS11)、経過していなければ前回の時刻同期から一定時間(例えば10分)が経過したか判別し(ステップS12)、この時間の経過もなければ、そのままステップS6へと戻る。
【0065】
一方、ステップS10の判別処理で受信中と判別されれば、信号受信に係る制御ステップ(図4のステップS16〜S26)へ移行する。
【0066】
また、ステップS11で時間経過と判別されれば、順次、間欠受信制御回路27へエフェメリス情報の受信開始指令の発行(ステップS13:第1受信制御ステップ)、サブCPU21自らの位置演算(GPS測位演算)の開始(ステップS14)、間欠受信制御回路27へ時刻情報の受信開始指令の発行および時刻同期の開始(ステップS15:第2受信制御ステップ)を行った後に、信号受信に係る制御ステップ(ステップS16〜S26)へ移行する。
【0067】
また、ステップS12の判別処理で前回時刻同期から一定時間経過したと判別されれは、間欠受信制御回路27へ時刻情報の受信開始指令の発行および時刻同期を開始させる処理(ステップS15)のみを行った後、信号受信に係る制御ステップ(ステップS16〜S26)へ移行する。
【0068】
つまり、上記のステップS11〜S15の処理によって、一定時間ごとにエフェメリス情報の間欠受信が開始され、より短い一定時間ごとに時間合わせのために時刻情報の間欠受信が開始される。また、エフェメリス情報の間欠受信が開始される際には、位置の測定と時間合わせも一緒に開始されるようになっている。
【0069】
信号受信に係る制御ステップ(ステップS16〜S26)へ移行すると、先ず、サブCPU21は現在の処理ステータスが時刻同期処理中か確認し(ステップS16)、処理中であれば間欠受信制御回路27に問い合わせて時刻情報の受信が終了したか確認する(ステップS17)。そして、受信終了していればこの時刻情報に基づき計時回路32の計時データを修正して(ステップS18:時刻修正ステップ)、次の処理ステップ(ステップS19〜S23)へ移行する。一方、ステップS16で時刻同期処理中でないと判別されたら、そのまま次の処理ステップ(ステップS19〜S23)へ移行し、ステップS17で受信終了でないと判別されたらステップS6へ戻る。
【0070】
次の処理ステップへ移行したら、先ず、サブCPU21は現在の処理ステータスが位置演算処理中であるか確認し(ステップS19)、処理中であれば位置演算が終了したか確認する(ステップS20)。そして、位置演算が終了していれば、順次、算出結果に基づいて現在の位置データを確定し(ステップS21)、自律航法測位の基準ポイントをこの位置データで更新し(ステップS22)、この位置データを自律航法誤差補正処理回路31へ送って自律航法測位で過去に求められた位置データの補正処理を実行させる(ステップS23)。そして、次の処理ステップ(ステップS24〜S26)へ移行する。一方、ステップS19で位置演算処理中でないと判別されたら、そのまま次の処理ステップ(ステップS24〜S26)へ移行し、ステップS20で位置演算終了でないと判別されたらステップS6へ戻る。
【0071】
次の処理ステップへ移行したら、先ず、サブCPU21は現在の処理ステータスがエフェメリス情報の受信処理中か確認し(ステップS24)、処理中であれば間欠受信制御回路27に問い合わせてエフェメリス情報の受信が終了したか確認する(ステップS25)。そして、受信が終了していれば、このエフェメリス情報を不揮発性メモリ24へ記憶させて(ステップS26:航路情報記憶ステップ)、次のステップS27へ移行する。一方、ステップS24でエフェメリス情報の受信中でないと判別されたら、そのまま次のステップS27へ移行し、ステップS25の判別処理で受信が終了していないと判別されたらステップS6へ戻る。
【0072】
つまり、エフェメリス情報および時刻情報の受信処理ならびに位置演算処理の何れかが開始された後、電源の切換え状態に変更がなければ、ステップS6〜S10,S16以降のループ処理が繰り返されて、その間に情報受信が終了したか或いは位置演算が終了したか確認が行われる。さらに、受信が終了していれば時刻同期(ステップS18)やエフェメリス情報の記憶処理(ステップS26)など必要な処理がなされ、また位置演算が終了されれば基準ポイントの設定(ステップS22)や自律航法の位置データの補正(ステップS23)など必要な処理が実行されるようになっている。
【0073】
そして、エフェメリス情報および時刻情報の受信処理ならびに位置演算処理の何れかが開始された後、これらの処理が全て終了したら、上記のループ処理を抜けて、サブCPU21が自らスリープ状態に移行する処理を行う(ステップS27)。ここで、電子機器1の電源がオフで3軸加速度センサ28の起動制御信号が無効レベルであれば、サブCPU21はスリープ状態へ移行して、第2処理部20の電源もオフにされる。そして、ステップS2,S3の起動待ちの処理状態へ移行する。一方、電子機器1の電源がオンであるか、或いは、3軸加速度センサ28の起動制御信号が有効レベルであれば、サブCPU21はスリープ状態へ移行せずに、ステップS6からの処理を続行する。
【0074】
次に電源オン時の処理について説明する。電子機器1の電源がオフからオンに切り換えられて、ステップS9の判別処理で電源オン時の処理(図5のステップS28〜S33)へ分岐したら、先ず、サブCPU21は、電子機器1の電源状態を示す機器オンフラグを“1”にセットし(ステップS28)、次いで、メインCPU11との間で指令や情報のやり取りが可能なように電子機器1(「情報機器」と記す)の起動に対応する処理(ステップS29)を行う。
【0075】
さらに、サブCPU21は、GPS受信回路26の電源が既にオンになっているか確認し(ステップS30)、オフであれば電源オンにする(ステップS31)。続いて、サブCPU21は、間欠受信制御回路27へエフェメリス情報の受信開始指令を発行し(ステップS32)、また、サブCPU21自ら位置演算(GPS測位演算)を開始する(ステップS33:測位ステップ)。このステップS33の測位演算では、不揮発性メモリ24に記憶されているエフェメリス情報を用いて位置の演算を行う。そして、これらの処理を開始したら、ステップS6に戻る。
【0076】
つまり、上記のステップS32,S33の処理により、電子機器1の電源キー15がオフからオンへ切り換えられた際に、GPSによる位置の測定と、それに付随させたエフェメリス情報の受信処理とが開始されるようになっている。
【0077】
次に電源オフ時の処理について説明する。電子機器1の電源がオンからオフに切り換えられて、ステップS9の判別処理で電源オフ時の処理(図6のステップS34〜S46)へ分岐したら、先ず、サブCPU21は、現在の処理ステータスがエフェメリス情報の受信処理中か確認し(ステップS34)、処理中であれば間欠受信制御回路27に問い合わせてエフェメリス情報の受信が終了したか確認する(ステップS35)。そして、受信が終了していれば、このエフェメリス情報を不揮発性メモリ24へ記憶させて(ステップS36)、次のステップS37へ移行する。一方、ステップS34でエフェメリス情報の受信中でないと判別されたら、そのまま次のステップS37へ移行する。
【0078】
次に移行したら、サブCPU21は、位置演算の処理中か確認し(ステップS37)、処理中であれば位置演算が終了したか確認する(ステップS38)。そして、位置演算が終了していれば、順次、算出結果に基づいて現在の位置データを確定し(ステップS39)、自律航法の測位の基準ポイントをこの位置データで更新し(ステップS40)、この位置データを自律航法誤差補正処理回路31へ送って自律航法測位で過去に求められた位置データの補正処理を実行させる(ステップS41)。そして、次のステップS42へ移行する。一方、ステップS37で位置演算処理中でないと判別されたら、そのまま次のステップS42へ移行する。
【0079】
次のステップに移行したら、サブCPU21は、電子機器1の電源状態を示す機器オンフラグを“0”にセットし(ステップS42)、次いで、メインCPU11との通信状態を終了するなど電子機器1(「情報機器」と記す)の電源オフに対応する処理(ステップS43)を行って、サブCPU21が自らスリープ状態に移行する処理を行う(ステップS44)。ここで、電子機器1が静止状態にあって3軸加速度センサ28の起動制御信号が無効レベルになっていれば、サブCPU21はスリープ状態へ移行して、第2処理部20の電源もオフにされる。そして、ステップS2,S3の起動待ちの処理状態へ移行する。一方、3軸加速度センサ28が加速度変化を検出していて起動制御信号が有効レベルであれば、サブCPU21はスリープ状態へ移行せずに、ステップS6からの処理を続行する。
【0080】
また、ステップS35の判別処理でエフェメリス情報の受信が未終了と判別されるか、或いは、ステップS38の判別処理で位置演算が未終了と判別されたら、電子機器1の電源状態を示す機器オンフラグを“0”にセットし(ステップS45)、次いで、メインCPU11との通信状態を終了するなど電子機器1の電源オフに対応する処理(ステップS46)を行って、ステップS6へ戻る。
【0081】
つまり、上記のステップS34〜S46の処理によって、電子機器1の電源がオフされた場合でも、エフェメリス情報の受信処理と位置演算の処理が開始されている場合には、それが終了するのを待って、電源オフの処理がなされるようになっている。
【0082】
そして、上述した図3〜図6の測位制御処理によって、図2の説明図に示したようなエフェメリス情報と時刻情報の間欠受信が実現され、さらに、任意のタイミングで電子機器1の電源がオンされた際に短時間での位置の測定が実現されるようになっている。
【0083】
以上のように、この実施形態の電子機器1によれば、エフェメリス情報の間欠受信によってGPSの測位演算に必要なエフェメリス情報が多くの期間で保持された状態にされ、また、時刻情報の間欠受信によって計時回路32の計時時刻が多くの期間で誤差の少ない状態にされる。従って、任意のタイミングでGPSの位置測定を行う場合でも、正確な計時時刻を使用することでGPS衛星の送信電波を短時間に捕捉することができ、さらに、保持されているエフェメリス情報を使用することが短時間のうちに測位演算を行って現在位置を求めることができる。
【0084】
また、この実施形態の電子機器1によれば、エフェメリス情報の受信間隔よりも短い間隔で時刻情報の間欠受信を行うようにしているので、エフェメリス情報については必要なエフェメリス情報を保持するために最適化された受信間隔で間欠受信を行い、時刻情報については送信電波を捕捉するのに必要な正確な計時時刻を保てるように最適化された受信間隔で間欠受信を行うことができる。従って、無駄のない間欠受信によって、必要なエフェメリス情報の保持と、必要な計時時刻の修正処理とを実現することができる。
【0085】
また、この実施形態の電子機器1によれば、エフェメリス情報の受信間隔を30分間隔とし、時刻情報の受信間隔を10分間隔としているので、必要なエフェメリス情報の保持と、必要な計時時刻の修正処理とを実現する最適な間欠受信が実現されている。なお、エフェメリス情報の受信間隔を1時間以内で適宜設定し、時刻情報の受信間隔を30分以内で適宜設定してもほぼ同様に最適な間欠受信が実現される。
【0086】
また、この実施形態の電子機器1では、電子機器1の電源がオフされても、バックグラウンドでエフェメリス情報と時刻情報の間欠受信が行われるようになっているので、電子機器1の電源をオンして直ぐに短時間での位置測定が可能になっている。
【0087】
さらに、この実施形態の電子機器1では、3軸加速度センサ28の制御によって、電子機器1が完全に使用されていない状態と判別できる期間には、エフェメリス情報と時刻情報の間欠受信も停止されるようになっているので、不使用時に無駄に電力が消費されるのを回避できるようになっている。
【0088】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、エフェメリス情報を間欠的に受信する所定の受信間隔は、上述したように、所定条件で長さが変化する受信間隔としても良い。また、時刻情報を間欠的に受信する所定の受信間隔も、所定条件で長さが変化する受信間隔としても良い。
【0089】
また、上記実施形態では、GPSを利用した位置の測定を行い、航路情報としてエフェメリス情報が適用された例を示したが、別の測位衛星による測位システムを利用して位置測定を行う場合には、航路情報として当該測位システムで測位演算に必要なGPS衛星の航路の情報が適用されることになる。
【0090】
また、上記実施形態では、電子機器1の電源がオフされ、且つ、電子機器1が所定の静止状態にある場合にのみ、エフェメリス情報と時刻情報の間欠受信が停止されるようにしているが、例えば、第1電源スイッチと、第2電源スイッチと、2系統の電源スイッチを設けて、第1電源スイッチのみがオフされたときは間欠受信を継続し、第2電源スイッチがオフされたら間欠受信を停止するようにしても良い。また、電源状態に関わらずに、電子機器1が所定の静止状態にあるか否かの判別のみによって、間欠受信を継続又は停止させるようにしても良い。
【0091】
また、測位衛星による位置の測定を開始するタイミングは電源オン時に限られない。また、エフェメリス情報の間欠受信時に位置の測定は行わないようにしても良いし、自律航法による測位も行わないようにしても良い。その他、実施形態で示した細部構成および細部方法は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 電子機器
10 第1処理部
15 電源キー(電源切換手段)
20 第2処理部
21 サブCPU(コンピュータ、第1受信制御手段、第2受信制御手段)
22 ROM
23 RAM
24 不揮発性メモリ(記憶手段)
25 GPS受信アンテナ(受信手段)
26 GPS受信回路(受信手段)
27 間欠受信制御回路
28 3軸加速度センサ(動き検出手段)
32 計時回路(計時手段)
35 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星から送られてくる信号の受信を行う受信手段と、
計時を行う計時手段と、
前記受信手段を介して前記測位衛星から位置の測定に必要な航路情報を受信させる第1受信制御手段と、
受信された前記航路情報を記憶する記憶手段と、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻を表わす時刻情報を受信させる第2受信制御手段と、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正手段と、
前記計時手段の計時時刻に基づいて前記測位衛星の送信信号を捕捉し、この送信信号と前記記憶手段に記憶されている航路情報とに基づいて位置の測定を行う測位手段と、
を備え、
前記第1受信制御手段は、
所定の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御手段は、
前記測位手段による位置の測定が行われない期間にも、前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記第1受信制御手段は、
第1の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御手段は、
第1の受信間隔よりも短い第2の受信間隔で前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記測位衛星はGPS衛星であり、
前記航路情報はエフェメリス情報であることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
前記第1受信制御手段は、1時間以内の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御手段は、30分以内の受信間隔で前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴とする請求項3記載の測位装置。
【請求項5】
前記測位手段の電源をオンとオフとに切り換える電源切換手段を備え、
前記第1受信制御手段と前記第2受信制御手段とは前記電源切換手段がオフに切り換えられている期間も前記航路情報と前記時刻情報との間欠的な受信を行わせることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項6】
動きの有無を検出する動き検出手段を備え、
前記第1受信制御手段と前記第2受信制御手段とは、前記動き検出手段の検出に基づき当該測位装置が静止状態にないと判別される期間に、前記航路情報と前記時刻情報との間欠的な受信を継続させることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項7】
測位衛星から送られてくる信号を受信する受信手段と、計時を行う計時手段とを用いて位置の測定を行う測位方法において、
前記受信手段を介して前記測位衛星から位置の測定に必要な航路情報を受信させる第1受信制御ステップと、
受信された前記航路情報を記憶手段に記憶させる航路情報記憶ステップと、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻を表わす時刻情報を受信させる第2受信制御ステップと、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正ステップと、
前記計時手段の計時時刻に基づいて前記受信手段により受信される前記測位衛星の送信信号を捕捉し、この送信信号と前記記憶手段に記憶されている航路情報とに基づいて位置の測定を行う測位ステップと、
を含み、
前記第1受信制御ステップでは、
所定の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御ステップでは、
前記測位手段による位置の測定が行われない期間にも、前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴とする測位方法。
【請求項8】
測位衛星から送られてくる信号を受信する受信手段と、計時を行う計時手段とを制御するコンピュータに、
前記受信手段を介して前記測位衛星から位置の測定に必要な航路情報を受信させる第1受信制御機能と、
受信された前記航路情報を記憶手段に記憶させる航路情報記憶機能と、
前記受信手段を介して前記測位衛星から時刻を表わす時刻情報を受信させる第2受信制御機能と、
受信された前記時刻情報に基づき前記計時手段の計時時刻を修正する時刻修正機能と、
前記計時手段の計時時刻に基づいて前記受信手段に前記測位衛星の送信信号を捕捉させ、この送信信号と前記記憶手段に記憶されている前記航路情報とに基づいて位置の測定を行う測位機能と、
を実現させ、
前記第1受信制御機能では、
所定の受信間隔で前記航路情報を間欠的に受信させ、
前記第2受信制御機能では、
前記測位手段による位置の測定が行われない期間にも、前記時刻情報を間欠的に受信させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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