説明

測定システムおよび方法、測定装置および方法、並びに、情報処理装置および方法

【課題】2周波CW方式等のドップラ方式の応答と精度を両立させる。
【解決手段】2周波CWレーダ1は、高速測定モードの測定として、受信信号Srからの短時間採取データを用いて、自身と測定対象物3との間の相対速度Vhと距離Lhを測定し、高速測定結果Shとして出力する。これと並行して、2周波CWレーダ1は、低速測定モードの測定として、受信信号Srからの長時間採取データを用いて、自身と測定対象物3との間の相対速度Vlと距離Llを測定し、低速測定結果Slとして出力する。その結果、処理演算装置2は、例えば、高応答の処理を実行する場合には高速測定結果Shを使用し、それ以外の場合には低速測定結果Slを使用することができる。例えば、処理演算装置2は、低速測定結果Slを使用して高速測定結果Shの補正もできる。本発明は、プリクラッシュシステム等の高応答システムに適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システムおよび方法、測定装置および方法、並びに、情報処理装置および方法に関し、特に、ドップラ方式による測定処理の高速応答と精度とを両立させることで、その測定結果を利用する後段の処理を適切に実行できるようになった、測定システムおよび方法、測定装置および方法、並びに、情報処理装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車と他車との間の相対速度や距離を測定するセンサとして、2周波CW(Continuous Wave)方式のセンサ(以下、2周波CWレーダと称する)が知られている(例えば特許文献1,2参照)。即ち、この2周波CWレーダは、送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号の周波数(以下、ドップラ周波数と称する)や位相を検出し、その検出結果を用いて他車の相対速度や距離を測定する。
【0003】
自動車(自車)には、このような2周波CWレーダ等のセンサを用いて先行車(他車)との車間距離を一定に保ちながら自動追従できるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)システムが搭載されている。また、近年では、このような2周波CWレーダ等のセンサを用いて自車と他車に衝突しそうであること(プリクラッシュ)を検知して衝突時に衝撃を軽減するためのプリクラッシュシステムが搭載されてきた。
【0004】
このように、自動車にはセンサからの信号を利用した用途の異なるシステムが複数搭載されるようになってきている。
【特許文献1】特許第3203600号公報
【特許文献2】特開2004−69693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の2周波CWレーダには、応答速度と精度の両立が困難であるという問題点がある。
【0006】
従って、例えば、このような問題点がある従来の2周波CWレーダを、距離精度が重要であるシステムと応答速度が重要となるプリクラッシュシステムのような複数のシステムが搭載された自動車に利用する場合、この2周波CWレーダは一方のシステムに適した測定結果しか提供できないという問題がある。
【0007】
この問題点をより一般的にいえば、従来の2周波CWレーダでは、その測定結果を利用する後段の処理が適切に実行できない場合がでてくる可能性がある、という問題点になる。
【0008】
なお、上述した従来の2周波CWレーダが有する問題点は、その他、送信信号の測定対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いる方式(以下、ドップラ方式と称する)の従来の測定装置全体に発生する問題点である。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ドップラ方式による測定処理の高速応答と精度とを両立させることで、その測定結果を利用する後段の処理を適切に実行できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面の測定システムは、送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いるドップラ方式により前記対象物の測定を行う測定装置と、その測定装置の測定結果を用いて所定の処理を実行する処理装置とを含む測定システムであって、前記測定装置は、前記反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行い、その周波数解析結果を用いて前記ドップラ方式による前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有しており、前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行し、前記処理装置は、前記複数の測定モードの中から所定の測定モードを選択して、選択された前記測定モードによる前記測定装置の測定結果を用いて、前記所定の処理を実行する。
【0011】
これにより、測定装置については、ドップラ方式による測定処理の高速応答と精度とを両立させることができるようになり、処理装置については、その測定結果を利用する後段の処理を適切に実行できるようになる。
【0012】
例えば、ドップラ方式としては、2周波CW(Continuous Wave)方式や、モノパルス方式等を採用できる。
【0013】
例えば、測定装置は2周波CWレーダやモノパルス式レーダ(両方式の機能を含むレーダ含む)等で構成され、処理装置はマイクロコンピュータ等で構成される。
【0014】
本発明の一側面の測定方法は、送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いるドップラ方式により前記対象物の測定を行う測定装置と、その測定装置の測定結果を用いて所定の処理を実行する処理装置とを含む測定システムの測定方法であって、前記測定装置は、前記反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行い、その周波数解析結果を用いて前記ドップラ方式による前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有しており、前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行し、前記処理装置は、前記複数の測定モードの中から所定の測定モードを選択して、選択された前記測定モードによる前記測定装置の測定結果を用いて、前記所定の処理を実行する。
【0015】
これにより、測定装置については、ドップラ方式による測定処理の高速応答と精度とを両立させることができるようになり、処理装置については、その測定結果を利用する後段の処理を適切に実行できるようになる。
【0016】
例えば、ドップラ方式としては、2周波CW(Continuous Wave)方式や、モノパルス方式等を採用できる。
【0017】
例えば、測定装置は2周波CWレーダやモノパルス式レーダ(両方式の機能を含むレーダ含む)等で構成され、処理装置はマイクロコンピュータ等で構成される。
【0018】
本発明の測定装置は、送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いるドップラ方式により前記対象物の測定を行う測定装置であって、前記反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行い、その周波数解析結果を用いて前記ドップラ方式による前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有し、前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行する測定処理手段を備える。
【0019】
これにより、ドップラ方式による測定処理の高速応答と精度とが両立可能な測定装置の実現が可能になり、その結果、その測定結果を利用する後段の処理を適切に実行できるようになる。
【0020】
例えば、ドップラ方式としては、2周波CW(Continuous Wave)方式や、モノパルス方式等を採用できる。
【0021】
例えば、測定装置は2周波CWレーダやモノパルス式レーダ(両方式の機能を含むレーダ含む)等で構成される。また、測定処理手段は、FFTを行える演算制御回路等により構成される。
【0022】
前記測定装置は、前記測定モードとして、採取時間が第1の時間である第1の測定モードと、前記第1の時間よりも長い第2の測定モードとを有する。
【0023】
これにより、測定装置を、簡単な構成で、それゆえ低コストで実現できるようになる。
【0024】
本発明の一側面の測定方法は、送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いるドップラ方式により前記対象物の測定を行う測定装置の測定方法であって、前記測定装置は、前記反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行い、その周波数解析結果を用いて前記2周波CW方式による前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有し、前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行するステップを含む。
【0025】
これにより、ドップラ方式による測定処理の高速応答と精度とが両立可能な測定方法の実現が可能になり、その結果、その測定結果を利用する後段の処理を適切に実行できるようになる。
【0026】
例えば、ドップラ方式としては、2周波CW(Continuous Wave)方式や、モノパルス方式等を採用できる。
【0027】
例えば、測定装置は2周波CWレーダやモノパルス式レーダ(両方式の機能を含むレーダ含む)等で構成される。
【0028】
本発明の一側面の情報処理装置は、送信信号に対する対象物の反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行うことでドップラ周波数またはそれに基づく量を検出して、その検出結果を用いて前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有しており、前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行する測定装置から、その測定結果を取得して、その測定結果を利用して所定の処理を実行する情報処理装置であって、前記複数の測定モードの中から所定の測定モードを選択して、選択された前記測定モードによる前記測定装置の測定結果を用いて、前記所定の処理を実行する。
【0029】
これにより、送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いる方式、即ちドップラ方式による測定処理の高速応答と精度とが両立可能な測定装置から測定結果を取得して、その測定結果を利用する後段の処理を適切に実行できるようになる。
【0030】
例えば、ドップラ方式としては、2周波CW(Continuous Wave)方式や、モノパルス方式等を採用できる。
【0031】
例えば、測定装置は2周波CWレーダやモノパルス式レーダ(両方式の機能を含むレーダ含む)等で構成される。
【0032】
情報処理装置は、例えば、マイクロコンピュータ等により構成される。
【0033】
前記測定装置は、前記測定モードとして、採取時間が第1の時間である第1の測定モードと、前記第1の時間よりも長い第2の測定モードとを有し、前記情報処理装置は、前記所定の処理として、所定の応答速度が要求される処理を実行する場合には、前記第1の測定モードによる前記測定装置の測定結果を利用し、それ以外の処理を実行する場合には、前記第2の測定モードによる前記測定装置の測定結果を利用することができる。
【0034】
これにより、情報処理装置が、高速応答を要する処理、例えば、対象物が自身に衝突しそうであること(プリクラッシュ)の検出処理を実行する場合、その精度も同時に得ることができるようになる。
【0035】
前記測定装置は、前記測定モードとして、採取時間が第1の時間である第1の測定モードと、前記第1の時間よりも長い第2の測定モードとを有し、前記情報処理装置は、前記所定の処理として、前記第1の測定モードによる前記測定装置の測定結果を利用する第1の処理と、前記第2の測定モードによる前記測定装置の測定結果を利用して、前記第1の測定モードによる前記測定装置の測定結果を補正する第2の処理とを少なくとも実行することができる。
【0036】
これにより、情報処理装置は、第1の処理をより精密に実行できるようになる。
【0037】
本発明の一側面の情報処理方法は、送信信号に対する対象物の反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行うことでドップラ周波数またはそれに基づく量を検出して、その検出結果を用いて前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有しており、前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行する測定装置から、その測定結果を取得して、その測定結果を利用して所定の処理を実行する情報処理装置の情報処理方法であって、前記複数の測定モードの中から所定の測定モードを選択して、選択された前記測定モードによる前記測定装置の測定結果を用いて、前記所定の処理を実行するステップを含む。
【0038】
これにより、送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いる方式、即ちドップラ方式による測定処理の高速応答と精度とが両立可能な測定装置から測定結果を取得して、その測定結果を利用する後段の処理を適切に実行できるようになる。
【0039】
例えば、ドップラ方式としては、2周波CW(Continuous Wave)方式や、モノパルス方式等を採用できる。
【0040】
例えば、測定装置は2周波CWレーダやモノパルス式レーダ(両方式の機能を含むレーダ含む)等で構成される。
【0041】
情報処理装置は、例えば、マイクロコンピュータ等により構成される。
【発明の効果】
【0042】
以上のごとく、本発明によれば、ドップラ方式による測定処理が実行でき、また、その測定結果を利用した後段の処理も実行できる。特に、ドップラ方式による測定処理の高速応答と精度との両立が図れるようになり、その結果、その測定結果を利用する後段の処理も適切に実行できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図1は、本発明を適用した測定システムの一実施の形態の構成例を示している。
【0044】
図1の例の測定システムは、請求項記載の測定装置の一実施の形態としての2周波CWレーダ1と、請求項記載の処理装置の一実施の形態としての処理演算装置2とから構成されている。この処理演算装置2は、例えばマイクロコンピュータ等で構成することができる。
【0045】
2周波CWレーダ1は、その名称の如く、2周波CW方式による測定を行うことができる。
【0046】
ここで、2周波CW方式による測定の概略について説明する。
【0047】
2周波CWレーダ1は、周波数f1のCW(Continuous Wave)と、周波数f2のCWとを時分割で切り替えた結果得られる信号(以下、2周波CWと称する)を生成し、その2周波CWを送信信号Ssとして出力する。
【0048】
この送信信号Ssは測定対象物3において反射し、その反射信号が受信信号Srとして2周波CWレーダ1に受信される。
【0049】
このとき、2周波CWレーダ1と測定対象物3との間に相対速度vが存在すれば、送信信号Ssの周波数f1,f2のそれぞれに対してドップラ周波数△f1,△f2のそれぞれが発生し、その結果、受信信号Srの周波数は、周波数f1+△f1,f2+△f2となる。換言すると、2つの周波数f1+△f1,f2+△f2を有する2周波CWが、受信信号Srと等価な信号となる。
【0050】
そこで、2周波CWレーダ1は、この受信信号Srからドップラ周波数△f1または△f2を検出して、次の式(1)または式(2)の演算を行うことで、2周波CWレーダ1に対する測定対象物3の相対速度vを求めることができる。
【0051】
v = c * △f1 / (2*f1) ・・・(1)
v = c * △f2 / (2*f2) ・・・(2)
なお、cは光速を表している。
【0052】
また、2周波CWレーダ1は、ドップラ周波数△f1であるドップラ信号の位相φ1と、ドップラ周波数△f2であるドップラ信号の位相φ2とを、受信信号Srから検出して、次の式(3)の演算を行うことで、2周波CWレーダ1と測定対象物3との間の距離Lを求めることができる。
【0053】
L = c * (φ1 − φ2) / 4π * (f1 − f2) ・・・(3)
【0054】
このような一連の処理により行われる測定が、2周波CW方式による測定である。
【0055】
ここで、従来の2周波CWレーダが有している問題点、即ち、[発明が解決しようとする課題]で上述したように、従来の2周波CWレーダでは応答速度と精度の両立が困難であるという問題点の発生要因について説明する。
【0056】
上述したように、2周波CW方式では、ドップラ周波数△f1,△f2の検出や、それらに対応する位相φ1,φ2の検出が必要になる。この検出は、対応するドップラ信号に対して周波数解析処理、例えばFFT(Fast Fourier Transform)解析処理(以下、単にFFTと称する)を施すことにより実現される。
【0057】
このFFTの精度を決定するひとつの要素は、FFTの対象となる波形(以下、処理対象波形と称する)のデータ量(アナログ波形で考えると波の個数)である。即ち、処理対象波形のデータ量が多くなるほど、FFTの精度は良くなることが知られている。換言すると、処理対象波形のデータ量が少なくなるほど、FFTの精度は悪くなることが知られている。具体的には例えば、信頼できる結果を得るためには、経験則からいって、少なくとも10周期分のデータ量(アナログ波形で考えると10個分の波)程度が必要とされている。
【0058】
ここで、処理対象波形の周波数をfとし、1回のFFTに利用するデータを処理対象波形から採取する採取時間をtとすると、FFTに利用される処理対象波形のデータ量は、f*t周期分(f*t個の波)となる。
【0059】
この場合、1回のFFTの処理時間(応答時間)は、採取時間tに対して、この採取時間tの間に採取されたデータを用いて演算等を行うための演算時間が加算された時間である。ただし、この演算時間自体は、採取時間tの長短に係らず、ほぼ一定時間とみなせるので、採取時間tのみに着目して、以下の説明を行っていく。換言すると、採取時間tが一定とは、結局、FFTの処理時間も一定であることを意味し、採取時間tが長く/短くなるとは、結局、FFTの処理時間も長く/短くなることを意味する。
【0060】
即ち、採取時間tが一定の場合には、処理対象波形の周波数fが高くなるほど、処理対象波形からの採取データ量(波の個数)は増加して、その結果、FFTの精度は良くなる。逆に、処理対象波形の周波数fが低くなるほど、処理対象波形からの採取データ量(波の個数)は減少して、その結果、FFTの精度は悪くなる。
【0061】
具体的には例えば、図2に示されるように、採取時間t=THであって、周波数fhのドップラ信号S△fhと、周波数fhよりも低い周波数flのドップラ信号S△flとが、処理対象波形であるとする。この場合、図2から明らかなように、ドップラ信号S△fhの方が、ドップラ信号S△flよりも、採取時間THにおける波の個数(採集データ量)が多いことがわかる。このことは、採取時間tを変化させても同様である。例えば、図3に示されるように、採取時間t=TLとした場合にも、ドップラ信号S△fhの方が、ドップラ信号S△flよりも、採取時間TLにおける波の個数(採集データ量)が多いことがわかる。従って、図2や図3の例の場合には、同一の採取時間tであるときには、ドップラ信号S△fhからの採取データを利用したFFTの精度は、ドップラ信号S△flからの採取データを利用したFFTの精度よりも高くなることになる。
【0062】
また、処理対象波形の周波数fが一定の場合には、採取時間tが長くなるほど、処理対象波形からの採取データ量(波の個数)は増加して、その結果、FFTの精度は良くなる。逆に、採取時間tが短くなるほど、処理対象波形からの採取データ量(波の個数)は減少して、その結果、FFTの精度は悪くなる。
【0063】
具体的には例えば、上述した図2や図3から明らかなように、周波数fhのドップラ信号S△fhが処理対象波形であった場合には、長時間の採取時間TLに含まれる波の個数(採取データ量)の方が、短時間の採取時間THに含まれる波の個数(採取データ量)よりも多いことがわかる。このことは、処理対象波形の周波数fを変化させても同様である。例えば、図2や図3から明らかなように、周波数flのドップラ信号S△flが処理対象波形であった場合にも、同様に、長時間の採取時間TLに含まれる波の個数(採取データ量)の方が、短時間の採取時間THに含まれる波の個数(採取データ量)よりも多いことがわかる。従って、図2や図3の例の場合には、処理対象波形の周波数fが同一であるときには、長時間の採取時間TLの採取データを利用したFFTの精度は、短時間の採取時間THの採取データを利用したFFTの精度よりも高くなることになる。
【0064】
ところで、2周波CW方式におけるFFTでは、上述したように、ドップラ周波数△f1,△f2が、処理対象波形の周波数fである。このドップラ周波数△f1,△f2は、上述した式(1),(2)から明らかなように、測定対象物の相対速度vに比例する。
【0065】
従って、測定対象物の相対速度vが低くなるほど、ドップラ周波数△f1,△f2も低くなり、FFTの精度を上げるためには、FFTの処理時間を長くする必要、即ち採取時間tを長くする必要がある。FFTの処理時間を長くすることは、2周波CW方式の測定処理(相対速度vや距離L等の測定処理)の応答速度が遅くなること、ひいては、その測定処理結果を利用するシステム全体、例えばいわゆるプリクラッシュシステム全体の応答速度が遅くなることを意味する。
【0066】
このように、2周波CW方式においては、その原理上、その精度と応答速度との間には、一方を良くしようとする他方が悪くなってしまうという対立関係が存在する。このことが、従来の2周波CWレーダでは応答速度と精度の両立が困難であるという問題点の発生要因である。
【0067】
従って、このような問題点が発生してしまう従来の2周波CWレーダを、例えば、プリクラッシュシステムといったような高速応答が求められるシステムに適用しようとする場合には、従来の2周波CWレーダも高速応答となるように構成する必要がある。即ち、従来の2周波CWレーダを、FFTの処理時間(採取時間t)が短時間となるように構成する必要がある。たたし、その分だけ、従来の2周波CWレーダの測定結果の精度が悪くなり、最悪、システムに必要な精度も得ることができなくなってしまう、という問題点も発生してしまう。さらに、上述したACCシステム等の距離精度が必要なシステムが併せて搭載されている場合には、かかる問題点はより深刻となる。
【0068】
そこで、本発明人は、これらの問題点を解決すべく、次のような手法を発明した。
【0069】
即ち、2周波CW方式により相対速度や距離の測定処理を行う測定モードとして、FFTの処理時間がそれぞれ異なる複数の測定モード、即ち、FFTの処理対象波形(ドップラ周波数△f1,△f2のドップラ信号)からデータを採取する採取時間tがそれぞれ異なる複数の測定モードを設け、複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行させる、という手法(以下、複数FFTモード手法と称する)が、本発明人により発明された手法である。
【0070】
この場合、複数の測定モードの応答速度と精度は、FFTの各処理時間に依存する。即ち、FFTの処理時間が短い測定モードは、高速応答であるが低精度であるという特徴を有する。一方、FFTの処理時間が長い測定モードは、低速応答であるが高精度であるという特徴を有する。従って、2周波CW方式の測定処理結果を利用する後段の処理では、その後段の処理に要求される応答速度と精度とのバランスを考慮して、複数の測定モードの中から適切な測定モードを選択して、その測定モードの測定処理結果を利用することができるようになる。
【0071】
このように、本発明の複数FFTモード手法を適用することで、2周波CW方式による相対速度や距離の測定処理において、その応答速度と精度との両立を図ることができるようになる。即ち、従来の2周波CWレーダが有していた問題点を解決することができるようになる。
【0072】
具体的には例えば、高速応答を要する処理(以下、高速処理と称する)を1以上実行するシステム、例えば、測定対象物が自身に衝突しそうであること(プリクラッシュ)の検出処理を高速処理として実行するプリクラッシュシステムに対して、複数FFTモード手法を適用する場合には、測定モードとしては、次の第1の測定モードと第2の測定モードとを設ければよい。第1の測定モードとは、短時間の採取データから測定処理を行う測定モード、即ち、FFTの処理時間が短時間の測定モードをいう。一方、第2の測定モードとは、長時間の採取データから測定処理を行う測定モード、即ち、FFTの処理時間が長時間の測定モードをいう。
【0073】
以下、第1の測定モードを高速測定モードと称し、第2の測定モードを低速測定モードと称する。また、以下、複数FFTモード手法のうちの、高速測定モードと低速測定モードとを利用する手法を、高速低速FFTモード手法と称する。
【0074】
この高速低速FFTモード手法が適用された2周波CWレーダの一例が、図1の2周波CWレーダ1である。
【0075】
即ち、2周波CWレーダ1は、高速測定モードの測定処理として、受信信号Srからの短時間採取データを用いて測定対象物3の相対速度Vhと距離Lhを測定し、それらを含む信号Sh(以下、高速測定結果Shと称する)を生成して出力するまでの一連の処理を実行する。この高速モードの測定処理と並行して、2周波CWレーダ1は、低速測定モードの測定処理として、受信信号Srからの長時間採取データを用いて測定対象物3の相対速度Vlと距離Llを測定し、それらを含む信号Sl(以下、低速測定結果Slと称する)を生成して出力するまでの一連の処理を実行する。
【0076】
図1に示されるように、この高速測定結果Shと低速測定結果Slとは、処理演算装置2に提供される。ただし、高速測定結果Shと低速測定結果Slとは必ずしも同時に処理演算装置2に提供される訳ではなく、それぞれ独立して、高速測定モードの毎回の測定処理毎に、高速測定結果Shがその都度処理演算装置2に提供され、また、低速測定モードの毎回の測定処理毎に、低速測定結果Slがその都度処理演算装置2に提供される。即ち、詳細については、図7を参照して後述するが、1つの低速測定結果Slが処理演算装置2に提供される間には、より多くの(図7の例では5つの)高速測定結果Shが処理演算装置2に提供されることになる。
【0077】
従って、処理演算装置2は、高速測定結果Shを用いて高速処理を実行する一方、低速測定結果Slを用いて、高速測定結果Shを補正する処理を実行したり、相対速度vが低い測定対象物3の情報を得るための処理を実行することができる。
【0078】
なお、相対速度vが低い測定対象物3は、相対位置変化(距離Lの変化)も比較的小さいことから、システム(2周波CWレーダ1と処理演算装置2)の応答速度が遅くとも、さほど問題とはならない。例えば、図1のシステムがプリクラッシュシステムである場合、測定対象物3の相対速度vが低くなるほど、即ち、相対位置変化が小さくなるほど、測定対象物3との衝突の可能性は低くなる。従って、例えば、処理演算装置2は、相対速度vが一定の閾値以上になるまでは、低速測定結果Slを利用して、測定対象物3の監視を行う等の所定の処理を実行し、相対速度vが閾値以上となったときに、高速測定結果Shを利用して、プリクラッシュの有無を検出する等の高速処理を実行することができる。そして、処理演算装置2は、この高速処理の実行時に適宜、低速測定結果Slを利用して高速測定結果Shを補正することもできる。なお、ここでいう補正には、高速測定結果Shの代わりに低速測定結果Slをそのまま利用して高速処理を実行する、といった処理も含むとする。
【0079】
あるいは、測定対象物3との距離が長くなるほど、測定対象物3との衝突の可能性は低くなる。従って、例えば、処理演算装置2は、距離Lが一定の閾値以下になるまでは、低速測定結果Slを利用して、測定対象物3の監視を行う等の所定の処理を実行し、距離Lが閾値以下となったときに、高速測定結果Shを利用して、プリクラッシュの有無を検出する等の高速処理を実行することができる。
【0080】
なお、以上の処理演算装置2の一連の処理例の詳細については、図8のフローチャートを用いて後述する。
【0081】
以上説明したように、図1のシステムをプリクラッシュシステムに適用することで、従来の2周波CWレーダにより構成される従来のプリクラッシュシステムでは発生してまう上述した問題点を解決することができるようになる。
【0082】
図4は、本発明の高速低速FFTモード手法が適用された2周波CWレーダ1の構成例を示すブロック図である。
【0083】
図4の例の2周波CWレーダ1は、発振部11乃至演算制御部24を含むように構成されている。
【0084】
発振部11は、演算制御部24の制御に基づいて、周波数f1のCWと周波数f2のCWとを交互に切り替えて発振する。即ち、周波数f1,f2を有する2周波CWが発振部11から出力され、増幅部12に提供される。
【0085】
増幅部12は、この2周波CWに対して増幅処理等の各種処理を適宜施して、分岐部13に提供する。
【0086】
分岐部13は、増幅部12からの2周波CW、即ち、周波数f1,f2を有する2周波CWを、増幅部14と混合部18とのそれぞれに提供する。
【0087】
増幅部14は、分岐部13からの2周波CW、即ち、周波数f1,f2を有する2周波CWを、増幅処理等の各種処理を適宜施し、その結果得られる信号を出力信号としてアンテナ部15に提供する。この増幅部14の出力信号が送信信号Ssとして、電波の形態でアンテナ部15から出力される。
【0088】
なお、2周波CWは、必要に応じて、所定の変調方式により変調された上で、送信信号Ssとして、アンテナ部15から出力される。この変調処理は、例えば増幅部14において実行されるとする。
【0089】
送信信号Ssは測定対象物3で反射し、その反射信号が受信信号Srとしてアンテナ部16に受信される。
【0090】
なお、図4の例では、送信用のアンテナ部15と受信用のアンテナ部16とが別個に設けられているが、送信用と受信用とを併用する1つのアンテナ部を設けるようにしてもよい。
【0091】
増幅部17は、アンテナ部16に受信された受信信号Srに対して、増幅処理等の各種処理を適宜施し、その結果得られる2周波CWを出力信号として混合部18に提供する。なお、増幅部14が変調処理を実行している場合には、増幅部17は、さらに、上述した2周波CWを得るために、その変調処理に対応する復調処理を実行する。
【0092】
この増幅部17から出力される2周波CW、即ち、受信信号Srから得られた2周波CWは、上述したように、周波数f1+△f1と、周波数f2+△f2とを有する。即ち、増幅部17からは、あたかも、周波数f1+△f1のCWと、周波数f2+△f2のCWとが時分割で交互に切り替えられて順次出力されることになる。
【0093】
混合部18は、この増幅部17から出力される2周波CW(周波数f1+△f1,f2+△f2を有する2周波CW)と、分岐部13から出力される2周波CW(周波数f1,f2を有する2周波CW)とを混合し、その結果得られる混合信号Smix、具体的には例えば図5に示される波形を有する混合信号Smixを、スイッチ部20に出力する。
【0094】
スイッチ部20は、切り替えタイミング部19の制御に基づいて、その出力先を、増幅部21−1と増幅部21−2とのうちの一方から他方へ切り替える。即ち、切り替えタイミング部19は、演算制御部24による発振部11の発振周波数f1,f2の切り替えタイミングを監視し、周波数がf2からf1に切り替えられるタイミングで、スイッチ部20の出力先を増幅部21−1側に切り替え、また、周波数がf1からf2に切り替えられるタイミングで、スイッチ部20の出力先を増幅部21−2側に切り替える。
【0095】
即ち、混合信号Smixのうちの、発振部11が周波数f1のCWを発振している間に混合部18から出力された信号は、スイッチ部20を介して増幅部21−1に提供されて増幅処理等の各種処理が適宜施され、さらに、ローパスフィルタ部22−1により高域成分(ノイズ等)が除去された上で、信号S△f1としてA/D変換部23に提供される。この信号S△f1が、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号である。
【0096】
一方、混合信号Smixのうちの、発振部11が周波数f2のCWを発振している間に混合部18から出力された信号は、スイッチ部20を介して増幅部21−2に提供されて増幅処理等の各種処理が適宜施され、さらに、ローパスフィルタ部22−2により高域成分(ノイズ等)が除去された上で、信号S△f2としてA/D変換部23に提供される。この信号S△f2が、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号である。
【0097】
即ち、図5に示されるように、混合部18から出力された混合信号Smixは、切り替えタイミング部19乃至ローパスフィルタ部22−2により、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号S△f1と、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号S△f2とのそれぞれに分離されて、A/D変換部23にそれぞれ提供される。
【0098】
A/D変換部23は、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号S△f1と、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号S△f2とのそれぞれに対して、A/D変換(Analog to Digital変換)処理を施し、その結果得られるデジタルのドップラ信号S△f1とドップラ信号S△f2とのそれぞれを演算制御部24に提供する。
【0099】
この演算制御部24の詳細な構成例が図6に示されている。図6の例では、演算制御部24は、制御部51乃至低速測定モード測定処理部54を含むように構成されている。
【0100】
制御部51は、演算制御部24内の制御を行う他、2周波CWレーダ1全体の制御、例えば上述したように、発振部11が発振するCWの周波数をf1とf2のうちの一方から他方へ切り替える制御等を行う。
【0101】
データ取得保持部52は、A/D変換部23からデジタルデータの形態で順次提供されてくる、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号S△f1と、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号S△f2とのそれぞれを個別に取得して保持する。なお、データ取得保持部52におけるデータの保持量は、後述する低速測定モード測定処理部54の1回の測定処理に必要なデータ量以上であれば、特に限定されない。
【0102】
高速測定モード測定処理部53は、上述した高速測定モードによる測定処理を実行し、その結果得られる高速測定結果Shを出力する。このため、高速測定モード測定処理部53には、高速FFT部61と高速速度距離演算部62とが設けられている。ただし、高速FFT部61と高速速度距離演算部62との説明については、ここでは省略し、後述する演算制御部24の動作の説明の際に併せて説明することにする。
【0103】
一方、低速測定モード測定処理部54は、上述した低速測定モードによる測定処理を実行し、その結果得られる低速測定結果Slを出力する。このため、低速測定モード測定処理部54には、低速FFT部71と低速速度距離演算部72とが設けられている。ただし、低速FFT部71と低速速度距離演算部72との説明については、ここでは省略し、後述する演算制御部24の動作の説明の際に併せて説明することにする。
【0104】
次に、図4の2周波CWレーダ1の動作例について説明する。
【0105】
ただし、発振部11乃至A/D変換部23までが実行する動作については、従来の動作と基本的に同様であり、また、上述した発振部11乃至A/D変換部23の構成の説明を参照することで容易に理解可能であるため、ここではその説明については省略する。
【0106】
そこで、以下、図7を参照して、2周波CWレーダ1のうちの、図6の構成を有する演算制御部24の動作例について説明する。
【0107】
図7には、上から順に、低速測定モード測定処理部54のタイミングチャート、データ取得保持部52のタイミングチャート、および、高速測定モード測定処理部53のタイミングチャートのそれぞれが示されている。
【0108】
低速測定モード測定処理部54のタイミングチャートにおいて、パルスは、その間に測定処理、即ち、採取データを用いたFFTと、その結果を用いた距離等の演算処理とが実行中であることを意味し、また、パルスの右方の矢印は、低速測定結果Slが出力されることを意味している。同様に、高速測定モード測定処理部53のタイミングチャートにおいて、パルスは、その間に測定処理、即ち、採取データを用いたFFTと、その結果を用いた距離等の演算処理とが実行中であることを意味し、また、パルスの右方の矢印は、高速測定結果Shが出力されることを意味している。
【0109】
なお、図7の例では、低速測定モード測定処理部54の測定処理の処理時間(演算時間)と、高速測定モード測定処理部53の測定処理の処理時間(演算時間)とは、何れもTC(=50msec)とされている。
【0110】
一方、データ取得保持部52のタイミングチャートには、各時刻に取得されて保持されたデータそのもの、即ち、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号S△f1と、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号S△f2との各データそのものが描画されている。
【0111】
図7の例では、低速測定モード測定処理部54は、時間TL(=450msec)の間にデータ取得保持部52に保持されたデータを利用して、測定処理を1回実行して、その結果得られる低速測定結果Slを出力する。
【0112】
即ち、低速測定結果Slにおける採取時間tは、時間TL(=450msec)とされている。従って、低速測定モード測定処理部54の処理時間全体(応答時間)は、採取時間TL(=450msec)と測定処理時間(演算時間)TC(=50msec)との合算時間TL+TC(=500msec)となる。
【0113】
以下、低速測定モードによる測定処理例について詳しく説明する。
【0114】
先ず、低速FFT部71は、採取時間TLの間にデータ取得保持部52に保持されたデータを採取する。即ち、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号S△f1と、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号S△f2とのそれぞれのデータのうちの、その直前の採取時間TLの間にデータ取得保持部52により取得されて保持された分のデータが、低速FFT部71により採取される。
【0115】
すると、測定処理時間(演算時間)TCの間に、次のような測定処理が、低速FFT部71と低速速度距離演算部72とにより実行される。
【0116】
即ち、低速FFT部71は、この採取データ(採取時間TL分のドップラ信号S△f1やドップラ信号S△f2のそれぞれのデータ)に対して例えばFFT(Fast Fourier Transform)解析処理等を施すことで、ドップラ周波数△f1とその位相φ1を検出するとともに、ドップラ周波数△f2とその位相φ2を検出し、それぞれ低速速度距離演算部72に提供する。
【0117】
低速速度距離演算部72は、低速FFT部71からのドップラ周波数△f1を用いて上述した式(1)を演算するか、または、低速FFT部71からのドップラ周波数△f2を用いて上述した式(2)を演算し、その演算結果を測定対象物3の相対速度Vlとする。
【0118】
また、低速速度距離演算部72は、低速FFT部71からの位相φ1と位相φ2との差、即ち、位相差φ1−φ2を算出し、この位相差φ1−φ2を用いて上述した式(3)を演算し、その演算結果を測定対象物3の距離Llとする。
【0119】
そして、低速速度距離演算部72は、相対速度Vlと距離Llとを含む低速測定結果Slを生成して、出力する。
【0120】
即ち、ここまでの一連の測定処理が、測定処理時間TC内に行われる。
【0121】
これに対して、高速測定モード測定処理部53は、時間TL(=450msec)よりも短い時間TH(=50msec)の間にデータ取得保持部52に保持されたデータを利用して、測定処理を1回実行して、その結果得られる高速測定結果Shを出力する。
【0122】
即ち、高速測定結果Shにおける採取時間tは、時間TH(=50msec)とされている。従って、高速測定モード測定処理部53の処理時間全体(応答時間)は、採取時間TH(=50msec)と測定処理時間(演算時間)TC(=50msec)との合算時間TH+TC(=100msec)となる。
【0123】
以下、高速測定モードによる測定処理例について詳しく説明する。
【0124】
先ず、高速FFT部61は、採取時間THの間にデータ取得保持部52に保持されたデータを採取する。即ち、ドップラ周波数△f1を有するドップラ信号S△f1と、ドップラ周波数△f2を有するドップラ信号S△f2とのそれぞれのデータのうちの、その直前の採取時間THの間にデータ取得保持部52により取得されて保持された分のデータが、高速FFT部61により採取される。
【0125】
すると、測定処理時間(演算時間)TCの間に、次のような測定処理が、高速FFT部61と高速速度距離演算部62とにより実行される。
【0126】
即ち、高速FFT部61は、この採取データ(採取時間TH分のドップラ信号S△f1やドップラ信号S△f2のそれぞれのデータ)に対して例えばFFT解析処理等を施すことで、ドップラ周波数△f1とその位相φ1を検出するとともに、ドップラ周波数△f2とその位相φ2を検出し、それぞれ高速速度距離演算部62に提供する。
【0127】
高速速度距離演算部62は、高速FFT部61からのドップラ周波数△f1を用いて上述した式(1)を演算するか、または、高速FFT部61からのドップラ周波数△f2を用いて上述した式(2)を演算し、その演算結果を測定対象物3の相対速度Vhとする。
【0128】
また、高速速度距離演算部62は、高速FFT部61からの位相φ1と位相φ2との差、即ち、位相差φ1−φ2を算出し、この位相差φ1−φ2を用いて上述した式(3)を演算し、その演算結果を測定対象物3の距離Lhとする。
【0129】
そして、高速速度距離演算部62は、相対速度Vhと距離Lhとを含む高速測定結果Shを生成して、出力する。
【0130】
即ち、ここまでの一連の測定処理が、測定処理時間TC内に行われる。
【0131】
ここで、低速測定モードと高速測定モードとを比較するに、上述したように、図7の例では、採取時間TL+測定処理時間(演算時間)TC(=500msec)が、低速測定モードの応答時間(処理時間)とされている。一方、採取時間TH+測定処理時間(演算時間)TC(=100msec)が、高速測定モードの応答時間(処理時間)とされている。
【0132】
従って、図7の例では、高速測定モードの応答速度は、低速測定モードの応答速度と比較して、5倍も速いことになる。即ち、低速測定結果Slが1回出力される間に、高速測定結果Shは5回も出力されることになる。
【0133】
一方、低速測定モードにおけるFFTでは、高速測定モードにおけるFFTと比較して、9倍の時間の採取データを用いることができることになる。このことは、上述した図2と図3のドップラ信号S△fhやドップラ信号S△flがデータ取得保持部52に保持されたデータであるとして、図2と図3とを比較することで容易にわかることである。従って、低速測定モードによる低速測定結果Slは、高速測定モードによる高速測定結果Shと比較して、その精度は良いことになる。
【0134】
これにより、図4の処理演算装置2は、2周波CW方式の測定結果を利用する処理を実行する場合、その処理に要求される応答速度と精度とのバランスを考慮して、低速測定結果Slと高速測定結果Shとのうちの好適な方を選択して、選択した方の測定結果を利用できるようになる。
【0135】
即ち、処理演算装置2が実行する処理は、2周波CW方式の測定処理結果(以下、レーダ検出結果と称する)を利用する処理であれば特に限定されない。ここでは、高速処理を1以上実行するシステム、例えば、プリクラッシュシステムに図1のシステムを適用した場合に好適な処理演算装置2の処理の一例について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0136】
ステップS1において、処理演算装置2は、レーダ検出結果を、低速測定結果Slに初期設定する。
【0137】
なお、「低速測定結果Slに初期設定する」とは、後述するステップS7の所定の処理演算に用いるレーダ検出結果の選択が未実施であるので、低速測定結果Slを一旦選択する、ということを意味する。従って、ステップS1の処理として、処理演算装置2は、レーダ検出結果を、高速測定結果Shに初期設定するようにしてもよい。
【0138】
ステップS2において、処理演算装置2は、相対速度が閾値以上であるか否かを判定する。ここに、相対速度とは、測定対象物3の相対速度vを意味する。より正確には、レーダ検出結果として低速測定結果Slが設定されている場合には、低速測定モードの測定値である相対速度Vlが、ステップS2でいう相対速度である。また、レーダ検出結果として高速測定結果Shが設定されている場合には、高速測定モードの測定値である相対速度Vhが、ステップS2でいう相対速度である。
【0139】
ステップS2において、相対速度が閾値未満であると判定された場合、処理はステップS3に進む。ステップS3において、処理演算装置2は、レーダ検出結果を、低速測定結果Slに設定する。これにより、処理はステップS7に進む。
【0140】
なお、「低速測定結果Slに設定する」とは、後述するステップS7の所定の処理演算に用いるレーダ検出結果として、低速測定結果Slを選択する、ということを意味する。また、「低速測定結果Slに設定する」とは、高速測定結果Shから低速測定結果Slに設定変更することのみならず、低速測定結果Slの設定を維持することも含む。
【0141】
これに対して、ステップS2において、相対速度が閾値以上であると判定された場合、処理はステップS4に進む。ステップS4において、処理演算装置2は、レーダ検出結果を、高速測定結果Shに設定する。
【0142】
なお、「高速測定結果Shに設定する」とは、後述するステップS7の所定の処理演算に用いるレーダ検出結果として、高速測定結果Shを選択する、ということを意味する。また、「高速測定結果Shに設定する」とは、低速測定結果Slから高速測定結果Shに設定変更することのみならず、高速測定結果Shの設定を維持することも含む。
【0143】
ステップS5において、処理演算装置2は、レーダ検出結果の補正を行うか否かを判定する。
【0144】
このステップS5の判定条件は、特に限定されず、具体的には例えば、新たな低速測定結果Slが2周波CWレーダ1から処理演算装置2に入力されていることを条件としてもよいし、所定の時間が経過したことを条件としてもよい。
【0145】
ステップS5において、レーダ検出結果の補正を行うと判定した場合、処理演算装置2は、ステップS6において、低速測定結果Slを利用して、レーダ検出結果の補正を行う。これにより、処理はステップS7に進む。
【0146】
なお、「低速測定結果Slを利用して、レーダ検出結果の補正を行う」とは、後述するステップS7の所定の処理演算に用いるレーダ検出結果として取得された高速測定結果Shを、直前に取得された低速測定結果Slを用いて補正することを意味する。また、上述したように、「低速測定結果Slを利用して、レーダ検出結果の補正を行う」には、後述するステップS7の所定の処理演算に用いるレーダ検出結果として、高速測定結果Shの代わりに低速測定結果Slを採用することも含む。
【0147】
これに対して、ステップS5において、レーダ検出結果の補正を行わないと判定された場合、ステップS6の処理は実行されずに、即ち、補正は行われずに、処理はステップS7に進む。
【0148】
ステップS7において、処理演算装置2は、レーダ検出結果を用いて、所定の処理演算を実行する。
【0149】
ここでいう「レーダ検出結果を用いて、所定の処理演算を実行する」とは、レーダ検出結果として高速測定結果Shが設定されている場合と、レーダ検出結果として低速測定結果Slが設定されている場合とで同一の処理演算を実行することの他、レーダ検出結果として高速測定結果Shが設定されている場合と、レーダ検出結果として低速測定結果Slが設定されている場合とでそれぞれ異なる処理演算を実行することを含む。
【0150】
例えば、後者の例としては、上述したように、プリクラッシュの有無を検出する等の高速処理が、レーダ検出結果として高速測定結果Shが設定されている場合の所定の処理演算の一例である。一方、相対速度vが低い測定対象物3の情報を得るための処理、具体的には例えばプリクラッシュシステムにおける測定対象物3の監視を行う処理等が、レーダ検出結果として低速測定結果Slが設定されている場合の所定の処理演算の一例である。
【0151】
このようなステップS7の処理が終了すると、処理はステップS8に進む。ステップS8において、処理演算装置2は、処理の終了が指示されたか否かを判定する。
【0152】
ステップS8において、処理の終了がまだ指示されていないと判定された場合、処理はステップS2に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
【0153】
これに対して、ステップS8において、処理の終了が指示されたと判定された場合、処理演算装置2の処理は終了となる。
【0154】
他の実施例として、例えば、ステップS2において、処理演算装置2は、距離が閾値以下であるか否かを判定するようにしても良い。ここに、距離とは、測定対象物3のとレーダとの距離Lを意味する。より正確には、レーダ検出結果として低速測定結果Slが設定されている場合には、低速測定モードの測定値である距離Llが、ステップS2でいう距離である。また、レーダ検出結果として高速測定結果Shが設定されている場合には、高速測定モードの測定値である距離Lhが、ステップS2でいう距離である。
【0155】
ところで、上述した本発明の高速低速FFTモード手法を含む複数FFTモード手法は、図1や図4の構成のシステムのみならず、様々な構成の装置やシステムに適用可能である。
【0156】
なお、ここに、システムとは、複数の処理装置や処理部により構成される装置全体を表すものである。換言すると、図4のシステムは、図9に示されるように、1つの測定装置101であると捉えることもできる。即ち、図9の例の測定装置101とは、2周波CWレーダ1に対応する一処理部としての2周波CWレーダ部111と、処理演算装置2に対応する一処理部としての処理演算部112とからなる1つの装置である。
【0157】
また、上述した例では、2周波CWレーダ1は、測定対象物3の相対速度vと距離Lとのみを測定したが、さらに別の物理量、例えば測定対象物3の角度等を測定するようにしてもよい。この場合の角度の測定手法も、特に限定されず、例えば、図4の受信用のアンテナ部16を2つのアンテナで構成することで、それらの2つのアンテナの受信信号の和と差の振幅比を用いて角度を算出する手法、即ち、いわゆるモノパルス方式を採用することもできる。
【0158】
この場合のモノパルス方式に利用される受信信号とは、送信信号の測定対象物における反射信号であって、ドップラ周波数△fを含む信号である。そして、このドップラ周波数△f自身またはそれに基づく量(例えばそのドップラ信号の位相等)を用いて、角度が算出される。従って、このドップラ周波数△f自身またはそれに基づく量(例えばそのドップラ信号の位相等)を抽出するために、2周波CW方式と同様に、FFT等の周波数解析処理が実行される。従って、ただ単に従来のモノパルス方式による測定処理を実行しただけでは、[発明が解決しようとする課題]で上述した問題点、即ち、応答速度と精度の両立が困難であるという問題点が発生する。
【0159】
さらにいえば、送信信号の測定対象物における反射信号を受信信号として受信し、その受信信号におけるドップラ周波数△f自身またはそれに基づく量(例えばそのドップラ信号の位相等)を用いて測定対象を測定する方式、即ち、ドップラ方式の従来の測定装置全体が、[発明が解決しようとする課題]で上述した問題点、即ち、応答速度と精度の両立が困難であるという問題点を有していることになる。
【0160】
この場合、このようなドップラ方式の測定装置に対して、上述した本発明の高速低速FFTモード手法を含む複数FFTモード手法を適用することが可能であり、かかる本発明の複数FFTモード手法が適用された測定装置は、上述した2周波CWレーダ1と全く同様に、かかる問題点を解決できるようになる。即ち、本発明が適用される測定装置は、上述した例に限定されず、様々な形態を取ることが可能である。
【0161】
ところで、上述した一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)は、ハードウエアにより実行させることもできるが、ソフトウエアにより実行させることもできる。
【0162】
この場合、その一連の処理を実行する装置(上述した定義のシステム)またはその一部分は、例えば、図10に示されるようなコンピュータで構成することができる。
【0163】
図10において、CPU(Central Processing Unit)201は、ROM(Read Only Memory)202に記録されているプログラム、または記憶部208からRAM(Random Access Memory)203にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM203にはまた、CPU201が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0164】
CPU201、ROM202、およびRAM203は、バス204を介して相互に接続されている。このバス204にはまた、入出力インタフェース205も接続されている。
【0165】
入出力インタフェース205には、キーボード、マウスなどよりなる入力部206、ディスプレイなどよりなる出力部207、ハードディスクなどより構成される記憶部208、および、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部209が接続されている。通信部209は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置との通信処理を行う。さらにまた、通信部209は、必要に応じて、図1等でいう測定対象物3を測定するための送信信号Ssや受信信号Srの送受信処理も行う。
【0166】
入出力インタフェース205にはまた、必要に応じてドライブ210が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア211が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部208にインストールされる。
【0167】
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0168】
このようなプログラムを含む記録媒体は、図10に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア(パッケージメディア)211により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM202や、記憶部208に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0169】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明が適用される測定システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】FFTの精度や処理時間と、採取データの周波数や採取時間との関係を説明する図である。
【図3】FFTの精度や処理時間と、採取データの周波数や採取時間との関係を説明する図である。
【図4】図1の2周波CWレーダの詳細な構成例を示すブロック図である。
【図5】2つのドップラ周波数△f1,△f2を有するドップラ信号の分離手法の一例を説明する図である。
【図6】図4の演算制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図7】図6の演算制御部の処理例を説明するタイミングチャートである。
【図8】図1や図4の処理演算装置の処理例を説明するフローチャートである。
【図9】本発明が適用される測定装置の構成例を示すブロック図である。
【図10】本発明が適用される測定システムや測定装置の全部または一部分の構成の別の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0171】
1 2周波CWレーダ
2 処理演算装置
3 測定対象物
11 発振部
12 増幅部
13 分岐部
14 増幅部
15 アンテナ部
16 アンテナ部
17 増幅部
18 混合部
19 切り替えタイミング
20 スイッチ部
21−1,21−2 増幅部
22−1,22−2 ローパスフィルタ
23 A/D変換部
24 演算制御部
51 制御部
52 データ取得保持部
53 高速測定モード測定処理部
54 低速測定モード測定処理部
61 高速FFT部
62 高速速度距離演算部
71 低速FFT部
72 低速速度距離演算部
101 測定装置
111 2周波CWレーダ部
112 処理演算部
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 バス
205 入出力インタフェース
206 入力部
207 出力部
208 記憶部
209 通信部
210 ドライブ
211 リムーバブルメディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いるドップラ方式により前記対象物の測定を行う測定装置と、その測定装置の測定結果を用いて所定の処理を実行する処理装置とを含む測定システムにおいて、
前記測定装置は、
前記反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行い、その周波数解析結果を用いて前記ドップラ方式による前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有しており、
前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行し、
前記処理装置は、
前記複数の測定モードの中から所定の測定モードを選択して、選択された前記測定モードによる前記測定装置の測定結果を用いて、前記所定の処理を実行する
測定システム。
【請求項2】
送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いるドップラ方式により前記対象物の測定を行う測定装置と、その測定装置の測定結果を用いて所定の処理を実行する処理装置とを含む測定システムの測定方法において、
前記測定装置は、
前記反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行い、その周波数解析結果を用いて前記ドップラ方式による前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有しており、
前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行し、
前記処理装置は、
前記複数の測定モードの中から所定の測定モードを選択して、選択された前記測定モードによる前記測定装置の測定結果を用いて、前記所定の処理を実行する
測定方法。
【請求項3】
送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いるドップラ方式により前記対象物の測定を行う測定装置において、
前記反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行い、その周波数解析結果を用いて前記ドップラ方式による前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有し、
前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行する測定処理手段
を備える測定装置。
【請求項4】
前記測定装置は、前記測定モードとして、採取時間が第1の時間である第1の測定モードと、採取時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間である第2の測定モードとを有する
請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
送信信号の対象物での反射信号についてのドップラ信号を用いるドップラ方式により前記対象物の測定を行う測定装置の測定方法において、
前記測定装置は、
前記反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行い、その周波数解析結果を用いて前記ドップラ方式による前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有し、
前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行する
ステップを含む測定方法。
【請求項6】
送信信号に対する対象物の反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行うことでドップラ周波数またはそれに基づく量を検出して、その検出結果を用いて前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有しており、前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行する測定装置から、その測定結果を取得して、その測定結果を利用して所定の処理を実行する情報処理装置であって、
前記複数の測定モードの中から所定の測定モードを選択して、選択された前記測定モードによる前記測定装置の測定結果を用いて、前記所定の処理を実行する
情報処理装置。
【請求項7】
前記測定装置は、前記測定モードとして、採取時間が第1の時間である第1の測定モードと、採取時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間である第2の測定モードとを有し、
前記情報処理装置は、前記所定の処理として、所定の応答速度が要求される処理を実行する場合には、前記第1の測定モードによる前記測定装置の測定結果を利用し、それ以外の処理を実行する場合には、前記第2の測定モードによる前記測定装置の測定結果を利用する
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記測定装置は、前記測定モードとして、採取時間が第1の時間である第1の測定モードと、採取時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間である第2の測定モードとを有し、
前記情報処理装置は、前記所定の処理として、前記第1の測定モードによる前記測定装置の測定結果を利用する第1の処理と、前記第2の測定モードによる前記測定装置の測定結果を利用して、前記第1の測定モードによる前記測定装置の測定結果を補正する第2の処理とを少なくとも実行する
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
送信信号に対する対象物の反射信号から採取された採取データに対して周波数解析を行うことでドップラ周波数またはそれに基づく量を検出して、その検出結果を用いて前記対象物の測定を行う測定モードとして、前記反射信号から前記採取データを採取する採取時間がそれぞれ異なる複数の測定モードを有しており、前記複数の測定モードの各測定処理を他とは独立して並行して実行する測定装置から、その測定結果を取得して、その測定結果を利用して所定の処理を実行する情報処理装置の情報処理方法であって、
前記複数の測定モードの中から所定の測定モードを選択して、選択された前記測定モードによる前記測定装置の測定結果を用いて、前記所定の処理を実行する
ステップを含む情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−128673(P2008−128673A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310603(P2006−310603)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】