説明

測定システム

【課題】被測定体の周囲の影響によるノイズの混入を防止し、被測定体のインピーダンスを高い精度で測定することが可能な測定技術を提供する。
【解決手段】被測定体5のインピーダンスを測定する測定システム1を、インピーダンス計測器30と、接地された導体で形成された、被測定体5を内部に配置可能な筐体20と、前記インピーダンス計測器30に接続された、被測定体5に接続可能な放射形状の電極25と、を有するように構成する。特に、被測定体5が絶縁体で構成されたチャンバ内部品5aである場合に、インピーダンスを高い精度で測定し、測定したインピーダンスから誘電正接の値を求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定体に対して例えば誘電正接及び抵抗率等の種々の物理的特性を測定するために、インピーダンス計測器を用いて被測定体のインピーダンスを測定する測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、例えば半導体処理装置や液晶表示装置等を製造する際のエッチング及び成膜等の基板処理に用いられるチャンバ等の精密化がますます進んでいる。これに伴い、基板処理のチャンバ等の部品に対して要求される性能も厳しくなってきている。このため、これらチャンバ等の部品の物理的特性を測定する場合には、高い測定精度が要求される。
【0003】
特許文献1には、例えばインピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザ等のインピーダンス計測器を用いて被測定体のインピーダンスを測定する測定技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−226105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インピーダンス計測器は、被測定体に電極を接続させてインピーダンスを測定している。一般に、インピーダンス計測器から被測定体に接続される電極の寸法は大きいので、この電極がアンテナとして機能し、被測定体のインピーダンスを測定する際にその周囲にある例えば金属及び観測者等の影響を強く受けてしまう。このため、測定されるインピーダンスの値にはノイズが混入してしまい、被測定体のインピーダンスを精密に測定することが困難であった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、被測定体の周囲の影響によるノイズの混入を防止し、被測定体のインピーダンスを高い精度で測定することが可能な測定技術を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明によれば、被測定体のインピーダンスを測定する測定システムであって、インピーダンス計測器と、接地された導体で形成された、被測定体を内部に配置可能な筐体と、前記インピーダンス計測器に接続された、被測定体に接続可能な放射形状の電極と、を有することを特徴とする、測定システムが提供される。
【0007】
上記測定システムにおいて、前記被測定体は、半導体処理装置における絶縁体で構成されたチャンバ内部品であってもよい。
【0008】
上記測定システムにおいて、前記被測定体は、半導体処理装置における誘電体で覆われた導体であってもよい。
【0009】
また、本発明によれば、被測定体のインピーダンスを測定する測定システムであって、インピーダンス計測器と、接地された導体で形成された、被測定体を内部に配置可能な筐体と、前記インピーダンス計測器に接続された、被測定体に接続可能な複数の電極と、前記複数の電極のうち、選択された電極だけが前記インピーダンス計測器に接続されるように切替可能な切替器と、を有することを特徴とする、測定システムが提供される。
【0010】
上記測定システムにおいて、前記被測定体は、半導体処理装置における誘電体で覆われた導体であってもよい。
【0011】
また、本発明によれば、被測定体のインピーダンスを測定する測定システムであって、インピーダンス計測器と、前記インピーダンス計測器に接続された、被測定体に接続可能な第1及び第2の電極と、を有し、前記第2の電極は、前記第1の電極を覆う環状に構成されていることを特徴とする、測定システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インピーダンス計測器に接続された電極を被測定体の周囲の電磁気的な外乱から防護し、被測定体のインピーダンスを高精度に測定することが可能になる。これにより、測定したインピーダンスから被測定体の種々の物理的特性を精密に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明をする。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る測定システム1の構成図である。本発明の第1の実施形態では、被測定体5としてのチャンバ内部品5aのインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスの値から被測定体5の物理的特性の1つである誘電正接の値を算出している。本発明の第1の実施の形態で用いられているチャンバ内部品5aは、図2に一例を示すように、例えば半導体等を製造する際のエッチング及び成膜等の基板処理装置9のチャンバ10内で用いられる略円筒形状の絶縁体(一般にインシュレータ等と呼ばれる)である。
【0015】
図2に示す基板処理装置9について簡単に説明する。この基板処理装置9は、半導体製造過程において、基板Wに対するエッチング等の処理を行うものである。チャンバ10の内側には、処理空間Kが形成される。チャンバ10の壁部A2は、接地されている。チャンバ10内には、高周波が印加される上部電極11及び下部電極12が対向配置されている。上部電極11には、高周波電源13からプラズマ生成用の例えば周波数が60MHzの高周波電力が供給され、処理空間Kの処理ガスがプラズマ化されて基板Wの処理を行うことができる。一方、下部電極12には、基板Wに入射するイオンのエネルギー広がりをそろえることを目的として、高周波電源14から周波数が13MHzの高周波電力が供給される。上部電極11及び下部電極12は、略円板形状であり導電性材料から形成されている。上部電極11と壁部A2との間には、絶縁体A1が介在されている。下部電極12の上には、基板Wを静電吸引して固定する静電チャック5bが設けられており、下部電極12の下には、絶縁体で形成された略円筒形状のインシュレータ5aが設けられている。処理空間Kには、ガス供給経路15及びシャワーヘッドとしての機能も有する上部電極11を介して処理ガスが供給される。また、処理空間K内の処理ガスは、ガス排気経路116を介して排気される。なお、この場合には、図2に示す基板処理装置9を一例として説明したが、被測定体5は、図2に示す基板処理装置9以外の基板処理装置のチャンバ内部品であってもよいし、チャンバ内部品以外の部品であってもよい。
【0016】
図1に示すように、測定システム1は、接地された中空の円柱形状の導体である筐体20の内部に形成される閉空間内に被測定体5を配置してインピーダンスを測定するように構成されている。本発明の第1の実施の形態では、略円筒形状の被測定体5がその軸方向を鉛直方向に平行に筐体20内部の底面中央に配置されている。被測定体5の上には略円板形状の電極25が載置されている。電極25は、被測定体5だけに接触し、筐体20の内面には接触しないように配置されている。電極25は、導電線33及び給電棒35を介してインピーダンス計測器30に接続されている。測定システム1は、インピーダンス計測器30から被測定体5に接触させた電極25に高周波電力を供給し、その反射係数を求めることにより、被測定体5のインピーダンスを測定するように構成されている。
【0017】
図1に示すように、筐体20の上面は、着脱可能な蓋体23になっている。これにより、蓋体23を筐体20から取外し、筐体20の内部に例えば被測定体5を配置したり、筐体20の内部から被測定体5を取出したりする等の作業ができるようになっている。
【0018】
図3は、本発明の第1の実施の形態で用いられる被測定体5上に配置された電極25の平面図である。本発明の第1の実施の形態では、略円筒形状の被測定体5(5a)の上に略円板形状の電極25が、同心配置されている。図3に示すように、電極25は同一平面(図3に示す紙面)内において、中心位置Oから放射状に外側に向かって延設された4本のスポーク電極40を備えている。これら4本のスポーク電極40は、長手方向の長さが同一であり、隣接するスポーク電極40同士の角度がいずれも90度になっている。
【0019】
4本のスポーク電極40の一端は、中心位置Oで互いに結合されており、他端は、各々、環状の外周電極42に接続されている。スポーク電極40の幅(即ち、長手方向と直交する幅方向の長さ)と外周電極42の径方向の幅は、約10〜20mmに設定されている。なお、電極25が備えるスポーク電極40の数は任意であってもよい。また、隣接するスポーク電極40同士の中心角度は、任意の角度であってもよいが、各スポーク電極40同士で円が等分割されるような対称的な配置構成にするのが好ましい。また、電極25は、外周電極42を有さず、スポーク電極40だけを有する構成であってもよい。
【0020】
電極25の中心位置Oには、例えば円柱形状の孔45が設けられている。この孔45の内面には、ねじ山T1が設けられており、このねじ山と係合するねじ山T2を外周面に備えた略円柱形状の結合用部材46をねじ結合して固定できるようになっている。この結合用部材46は、電極25の孔45内にねじ結合させて固定した状態のまま、電極25と一体的に扱われる。
【0021】
図4は、図1に示す電極25と給電棒35の結合部分の側面の断面を拡大して示した拡大断面図である。上述したように電極25の孔45に結合用部材46が固定されており、この結合用部材46には給電棒35が結合されている。図4に示すように、結合用部材46には、スリット50が鉛直方向に設けられており、給電棒35の先細の先端部51を挿入して固定できるようになっている。これにより、給電棒35は結合用部材46を介して電極25に固定される。なお、給電棒35の先端部51及び結合用部材46はいずれも導電性の材料で形成されており、インピーダンス計測器30から給電棒35に供給された高周波電力を、給電棒35の先端部51から結合用部材46を介して電極25に供給できるようになっている。
【0022】
給電棒35は、図1に示すように、筐体20の底面の中央部を貫通し、筐体20の外部及び内部の両方にまたがって配置されている。筐体20が給電棒35によって貫通されている部分では、給電棒35と筐体20との間に例えばテフロン等の絶縁体55が設けられており、給電棒35と筐体20は互いに電気的に絶縁されている。給電棒35の先端部51と反対側にある端部56は、筐体20の外側でインピーダンス計測器30に接続された導電線33に接続されている。
【0023】
インピーダンス計測器30としては、被測定体5に高周波電力を印加することによってインピーダンスを測定するインピーダンスアナライザを用いている。このインピーダンスアナライザは、測定したインピーダンスから例えば誘電正接や抵抗率等、被測定体5の種々の物理的特性を求めることが可能である。なお、インピーダンス計測器30としては、インピーダンスアナライザ以外に例えばネットワークアナライザ、LCRメータ等、任意の測定装置が用いられてもよい。また、インピーダンス計測器30は、インピーダンスの測定だけを行う測定装置であってもよく、その場合には、測定したインピーダンスの値に基づいて別の装置又は測定者によって被測定体5の種々の物理的特性が算出される。
【0024】
次に、以上のように構成された測定システム1を用いて、被測定体5の一例としてのチャンバ内部品5aのインピーダンスを測定し、被測定体5の誘電正接の値を求める手順について、図1〜図4を用いて説明する。
【0025】
筐体20の蓋体23を取外す。初期状態では、筐体20の内部では給電棒35から電極25が取外された状態になっている。図1に示すように、略円筒形状の被測定体5としてのチャンバ内部品5a(以下、被測定体5とする)の軸方向に沿った中心の空洞部分に給電棒35を通すようにして筐体20の内部底面上に載置する。給電棒35に対して被測定体5及び電極25の位置を適宜調整してから、給電棒35の先端部51を電極25に固定された結合用部材46のスリット50内に図4に示すように挿入しながら、電極25を被測定体5の上に載置する。これにより、図1に示すように、電極25は、結合用部材46、給電棒35及び導電線33を介してインピーダンス計測器30に接続された状態になる。
【0026】
取外されていた蓋体23を取付け、筐体20の内部を閉空間にする。インピーダンス計測器30を用いて、電極25から被測定体5に高周波電力を印加し、そのインピーダンスを測定する。測定したインピーダンスの値から被測定体5の誘電正接の値を求める。なお、誘電正接とは、被測定体5の誘電損失を示す値である。具体的に説明すると、被測定体5のインピーダンスZがZ=R+iXと表される場合に、誘電正接の値は(−R/X)となる。被測定体5をチャンバ内部品として用いる場合には、チャンバ内で基板に印加される高周波の出力損失を抑えるために、この誘電正接の値が低くなっている必要がある。本発明の第1の実施の形態では、被測定体5の誘電損失の値は、測定したインピーダンスの値に基づいてインピーダンス計測器30が算出するようになっている。
【0027】
測定終了後、筐体20の蓋体23を取外す。筐体20の中の電極25を取出し、次いで、被測定体5を取出す。続けて他の被測定体5の測定を行う場合には、測定する他の被測定体5を筐体20内部に配置し、上述した手順を繰返す。そうでない場合には、筐体20の蓋体23を取付けて測定の一連の手順は終了する。
【0028】
以上の第1の実施の形態によれば、被測定体5を、導体である筐体20内に配置して被測定体5の周囲の影響によるノイズを遮断し、被測定体5のインピーダンスを従来よりも高精度で測定することができる。これにより、測定したインピーダンスから、例えば誘電正接の値等、被測定体5の種々の物理的特性を非常に精密に求めることが可能になる。また、測定系に印加されたRF(高周波)信号のうち、電極表面からは測定対象物を通過することなく接地電極に流れてしまう成分がある。この成分は電極面積に比例して増大する。そこで、電極形状を放射形状にすることによって、電極面積を小さくし、ひいては測定対象物を通過することなく接地電極に流れてしまう成分を減少させることで、測定の精度を向上させることができる。ここで、本発明の第1の実施の形態の効果を測定システム1での測定結果を示す図5を用いて説明する。図5において横軸は印加する高周波の周波数を示し、縦軸は被測定体5の実抵抗成分を示している。また、実線Aは、被測定体5を筐体20内に配置して測定した場合を示し、実線Bは、同じ被測定体5を筐体20を用いずに測定した場合を示す。図5から分かるように、実線Bのデータでは、データにノイズ的挙動が見られるが、実線Aのデータでは、ノイズが無くなりデータの精度が向上していることが分かる。
【0029】
本発明の第2の実施の形態として、図6に示すように、インピーダンスを測定する際に用いる電極25を、被測定体5の中心部に接触させる第1の電極60とする構成にしてもよい。図6に示すように、第1の電極60は、被測定体5に下側から接触している。なお、図1と同様に、筐体20は接地されている。
【0030】
本発明の第2の実施の形態では、被測定体5として、図2に示す基板処理装置9のチャンバ内部品5の1つである静電チャック5bのインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスの値からその抵抗率を測定している。静電チャック5bは、誘電体71で覆われた導体70であり、図6に示すように、円板形状をしている。静電チャック5bは、筐体20の内部底面上に設けられた環状の導体の支持体75によって面を水平にした状態で支持されている。なお、本発明の第2の実施の形態では、本発明の第1の実施の形態の場合と同様に、第1の電極60が筐体20の外部及び内部にまたがって配置された給電棒61に設けられている。この給電棒61は、インピーダンス計測装置30に接続された導電線33に接続されている。また、給電棒61が筐体20を貫通する部分では、給電棒61と筐体20との間に、例えばテフロン等の絶縁体55が設けられ、給電棒61及び筐体20は互いに電気的に絶縁されている。
【0031】
静電チャック5bは、図2に示す基板処理装置9を用いて基板を処理する際に基板を静電吸引して固定する装置であり、その抵抗率の値が大き過ぎる場合には、静電吸引が弱くなってしまう。また、基板処理装置9は、通常、電解補正機能(図示せず)を備えており、静電チャック5bの抵抗率の値が小さ過ぎる場合には、この電解補正機能が働かなくなってしまう。このため、静電チャック5bの抵抗率の値が所定の範囲内に正確に収まっている必要がある。なお、この場合には静電チャック5bについて説明したが、例えば埋込式ヒータ等、静電チャック5bと同様に導体70を誘電体71で被覆した構成であるその他の被測定体5についても同様である。
【0032】
図7は、図6に示す本発明の第2の実施の形態に係る測定システム1が備える第1の電極60及び支持体75を上から視た平面図である。図6及び図7に示すように、円板形状である第1の電極60は、被測定体5としての静電チャック5b(以下、被測定体5とする)の中心部に接触して配置されている。これに対して、環状の支持体75は、被測定体5の周辺部に配置されている。本発明の第2の実施の形態では、第1の電極60と支持体75は、同心円状に構成されている。
【0033】
第1の電極60及び支持体75は、インピーダンス計測器30に接続されており、いずれか一方から他方に高周波を流すことにより、被測定体5のインピーダンスを測定することができる。また、インピーダンス計測器30は、測定したインピーダンスから抵抗率を求めることが可能である。なお、インピーダンス計測器30が印加する高周波の周波数は、例えば100MHz、40MHz、13.56MHz及び3.2MHz等、被測定体5が実際に基板処理装置(図2)内で用いられる際にこの被測定体5に印加される高周波と同じ周波数を印加して測定するのが好ましい。
【0034】
以上の第2の実施の形態によれば、第1の電極60を被測定体5の中心部に接触させて配置すると共に、第1の電極60を接触させた中心部を囲むように、環状の支持体75を被測定体5の周辺部に配置したことによって、第1の電極60及び支持体75の間に高周波を流した場合の経路が等方的になる。これにより、測定誤差を生じさせてしまう高周波の迂回路をなくし、再現性のあるインピーダンスの測定値を得ることができ、被測定体5の抵抗率を正確に測定することが可能になる。また、本発明の第2の実施の形態では、本発明の第1の実施の形態と同様の効果も有する。
【0035】
本発明の第3の実施の形態として、図8に示すように、電極25を複数(図8に示す場合には9つ)の電極80a〜80iで構成し、インピーダンスの測定を行う際に、切替器90を用いてこれら複数の電極のうちから選択された電極(例えば図8に示す場合には80b、80c)だけがインピーダンス計測器30に接続されるように切替えて測定を行うようにしてもよい。本発明の第3の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、被測定体5として静電チャック5b(以下、被測定体5とする)の抵抗率を測定している。また、被測定体5は、本発明の第2の実施の形態の場合と同様に、筐体20の内部底面上に設けられた環状の支持台92によって面を水平にした状態で支持されているが、この支持台92は樹脂製である。なお、図1と同様に、筐体20は接地されている。
【0036】
図9は、図8に示す本発明の第3の実施の形態に係る測定システム1が備える9つの電極80a〜80iを上から視た平面図である。以下では、測定システム1が備える切替え可能な電極の数が9である場合について説明するが、測定システム1が備える切替え可能な電極の数は任意の数であってもよい。図8及び図9に示すように、これら9つの電極80a〜80iは、いずれも概ね同じ大きさの円板形状をしている。また、図9に示すように、9つの電極80a〜80iの全体が十字を形成するように被測定体5上の各位置に配置されている。図8に示すように、9つの電極80a〜80iには、各々、給電棒35a〜35iが接続されている。これらの給電棒35a〜35iは、各々、筐体20の底面を貫通し、筐体20の外側まで延設されている。給電棒35a〜35iと筐体20との間には、各々、例えばテフロン等の絶縁体55が設けられており、各給電棒35a〜35iは筐体20と互いに電気的に絶縁されている。また、筐体20の外側に配置された給電棒35a〜35iの各端部には、各々、端子57(57a〜57i)が設けられている。
【0037】
切替器90は、図8に示すように、上述した給電棒35a〜35iの各端子57a〜57iから任意の2つを選択し、インピーダンス計測器30に各々導電線33、34を介して接続された端子93、94に各々、接続できるように構成されている。本発明の第3の実施の形態では、端子93、94には、接続先を変更可能な導電線96、98が接続されており、これらの導電線96、98の先端には雄型のプラグが設けられている。また、給電棒35a〜35iの各端子57a〜57iには、雌型のプラグが設けられている。これにより、導電線96、98の先端の雄型のプラグを接続されている端子57a〜57iから外して別の端子に挿入することにより、図8の点線に示すように、接続を切替えることができるようになっている。これにより、インピーダンス計測器30の2つの接続先を各端子57a〜57iのうちから、任意に選択した2つの端子に切替え、インピーダンス計測器30に接続される電極80a〜80iを切替ることができ、被測定体5のインピーダンスを測定する測定部位を変更することができる。
【0038】
具体的に説明すると、切替器90を用いて端子93を端子57aに接続し、端子94を端子57eに接続して測定を行った場合には、被測定体5の測定部位が図9に示す電極80a及び電極80eの間に設定され、この測定部位5に対するインピーダンスを測定することができる。この場合には、被測定体5の直径に近い長さの測定部位のインピーダンスを測定し、この測定部位における抵抗率を求めることができる。一方、切替器90を用いて端子93を端子57bに接続し、端子94を端子57cに接続した場合には、被測定体5の測定部位が図9に示す電極80b及び電極80cの間に設定され、被測定体5に対して非常に距離の短い測定部位のインピーダンスを測定し、その抵抗率を求めることができる。
【0039】
以上の第3の実施の形態によれば、被測定体5に複数の電極80a〜80iを配置し、インピーダンス計測器30に接続する電極をこれら複数の電極のうちから2つを選択して切替え、被測定体5のインピーダンスを測定するようにしたことによって、被測定体5の任意の測定部位のインピーダンスを測定し、その抵抗率を求めることができる。また、抵抗率を測定する際にその測定部位の位置及び大きさを種々変更することが可能になる。これにより、測定したインピーダンスから求まる被測定体5の例えば抵抗率等の物理的特性が、被測定体5の全体に亘って所定の範囲内になっているかどうかを検査することが可能になる。
【0040】
本発明の第4の実施の形態として、図10に示すように、被測定体5を樹脂製の台104の上に載置し、被測定体5を上方から第1の電極100等から成る治具を用いて測定するようにしてもよい。この例では、被測定体5に接触して配置される第1の電極100の先端部100Aが、被測定体5の周辺部に接触して配置される第2の電極103及び被測定体5によって周囲が覆われた構成になっている。本発明の第4の実施の形態では、第2の電極103が例えばAl(アルミニウム)及びC(炭素)を材料とする円筒形状に形成され、その軸方向が鉛直方向に平行になるように配置されている。第2の電極103は、被測定体5と接触させる側の円形の下面が開放されており、且つ円形の上面は閉じている。これにより、第2の電極103の開放された下面が被測定体5によって下部が塞がれる形で閉空間が形成されている。第1の電極100は、第2の電極103の円形上面の中央部分を鉛直方向に貫通するように構成されており、被測定体5に接触する第1の電極100は、この閉空間内に配置されている。なお、本発明の第4の実施の形態では、図10に示すように、筐体20を用いていない場合について説明したが、図6に示す第2の実施の形態の場合と同様にして筐体20が用いられてもよい。図10に示す第1の電極100及び第2の電極103は、図6に示す第1の電極60及び支持体75と同様に、インピーダンス計測器30に接続されている。
【0041】
以上の第4の実施の形態によれば、被測定体5に対して第1の電極100及び第2の電極103の間に高周波を流してインピーダンスを測定する際に、第1の電極100及び第2の電極103が配置された側の被測定体5の面については、第2の電極103によって測定部位が完全に覆われているため、被測定体5の測定部位が開放された状態で測定を行う従来公知の測定技術を用いて測定した場合よりも、インピーダンスを測定する際に周囲のノイズが混入する影響を低減することができる。これにより、従来よりもインピーダンスを高精度に測定することが可能になる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0043】
上述した実施形態においては、被測定体が略円筒形状の絶縁体で構成されるチャンバ内部品5、導体を誘電体で被覆した構造である静電チャック5b等である場合について説明したが、被測定体は任意の形状及び材料であってもよい。
【0044】
上述した実施形態においては、測定したインピーダンスに基づいて被測定体の物理的特性として誘電正接又は抵抗率の値を測定する場合について説明したが、測定したインピーダンスから被測定体の任意の物理的特性を求めるようにしてもよい。
【0045】
上述した実施形態においては、電極25が被測定体5の下側から被測定体5に接触している場合について説明したが、電極25は、例えば被測定体5の上側から被測定体5に接触する等、任意の配置構成であってもよい。
【0046】
上述した実施形態においては、複数の電極80a〜80iが被測定体5の所定の測定位置に固定されている場合について説明したが、複数の電極80a〜80iを被測定体5上で移動可能にする等して、各位置を任意の位置に設定できるようにしてもよい。
【0047】
上述した実施形態においては、被測定体5の周辺部に配置される支持体75が、被測定体5の中心部に配置される第1の電極60を同心状に配置されている場合について説明したが、支持体75が第1の電極60の周囲に配置されている構成であれば、第1の電極60及び支持体75の配置構成は任意であってもよい。
【0048】
上述した実施形態においては、切替器90によって複数の電極80a〜80iのうち、選択された2つの電極だけがインピーダンス計測器30に接続されるように接続が切替えられる場合について説明したが、インピーダンス計測器30に接続が切替えられる電極の数は任意であってもよい。また、切替器90は、導電線96、98の接続先を変更することにより接続を切替えるように構成されている場合について説明したが、切替器90はその他の構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、測定したインピーダンスに基づいて被測定体の物理的特性を測定する測定システムに有用であり、特に、被測定体が例えば半導体処理装置や液晶表示装置等を製造する際のエッチング及び成膜等の基板処理のチャンバ内で用いられる部品である場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る測定システム1の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る測定システム1で被測定体5としてインピーダンスが測定されるチャンバ内部品5aを説明する説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態で用いられる被測定体5上に配置された電極25の平面図である。
【図4】図1に示す電極25と給電棒35の結合部分の側面の断面を拡大して示した拡大断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る測定システム1を用いて測定した測定結果を比較例と共に示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る測定システム1の構成図である。
【図7】図6に示す本発明の第2の実施の形態に係る測定システム1が備える第1の電極60及び支持体75を上から視た平面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る測定システム1の構成図である。
【図9】図8に示す本発明の第3の実施の形態に係る測定システム1が備える9つの電極80a〜80iを上から視た平面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る測定システム1の構成図である。
【符号の説明】
【0051】
1 測定システム
5 被測定体
5a インシュレータ(チャンバ内部品、被測定体)
5b 静電チャック(チャンバ内部品、被測定体)
9 基板処理装置
10 チャンバ
11 上部電極
12 下部電極
13、14 高周波電源
15 ガス供給経路
16 ガス排気経路
20 筐体
23 蓋体
25、80、80a〜80i 電極
30 インピーダンス計測器
33、34 導電線
35、35a〜35i、61、64 給電棒
40 スポーク電極
42 外周電極
45 円柱形状の孔
46 結合用部材
50 スリット
51 給電棒の先細の先端部
55 絶縁体
56 給電棒の端部
57a〜57i、93、94 端子
60、100 第1の電極
70 導体
71 誘電体
75 支持体
90 切替器
92 樹脂製の環状の支持台
96、98 接続先を変更可能な導電線
100A 電極の先端部
103 第2の電極
104 樹脂製の台
A1 絶縁体
A2 壁部
T1、T2 ねじ山
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体のインピーダンスを測定する測定システムであって、
インピーダンス計測器と、
接地された導体で形成された、被測定体を内部に配置可能な筐体と、
前記インピーダンス計測器に接続された、被測定体に接続可能な放射形状の電極と、を有することを特徴とする、測定システム。
【請求項2】
前記被測定体は、半導体処理装置における絶縁体で構成されたチャンバ内部品であることを特徴とする、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記被測定体は、半導体処理装置における誘電体で覆われた導体であることを特徴とする、請求項1に記載の測定システム。
【請求項4】
被測定体のインピーダンスを測定する測定システムであって、
インピーダンス計測器と、
接地された導体で形成された、被測定体を内部に配置可能な筐体と、
前記インピーダンス計測器に接続された、被測定体に接続可能な複数の電極と、
前記複数の電極のうち、選択された電極だけが前記インピーダンス計測器に接続されるように切替可能な切替器と、を有することを特徴とする、測定システム。
【請求項5】
前記被測定体は、半導体処理装置における誘電体で覆われた導体であることを特徴とする、請求項4に記載の測定システム。
【請求項6】
被測定体のインピーダンスを測定する測定システムであって、
インピーダンス計測器と、
前記インピーダンス計測器に接続された、被測定体に接続可能な第1及び第2の電極と、を有し、
前記第2の電極は、前記第1の電極を覆う環状に構成されていることを特徴とする、測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−249482(P2008−249482A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91144(P2007−91144)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】