測定プローブ及びその構成方法
ナノ又はナノメートル以下の寸法の個別サンプルの幅広い物理的特性の測定を可能とした測定プローブを設ける。プローブは、プローブ本体と、プローブ本体に連結された基板と、基板の近くにあるチップとを備える。さらに、プローブは、電気入力部を有する粗圧電アクチュエーターを備える。粗ピエゾは、第1電気信号を電気入力部に供給するとチップ及び/又は基板を互いに対して移動させるように構成されている。さらに、プローブは、粗ピエゾの電気入力部と電気通信される低域通過フィルターを備える。さらに、プローブは、第2電気信号を電気入力部に供給するとチップ及び/又は基板を互いに対して移動させるように構成された電気入力部を有する細圧電アクチュエーターを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2009年5月28日に出願された仮特許出願(61/181,840)の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、測定に関し、更に詳しくは、材料の特性を測定することに適したプローブに関するものである。
【発明の背景】
【0003】
ナノ又はナノメートル以下の寸法(以下「ポイントコンタクト(point contacts)」という)の材料の物理的特性の測定は簡単ではない。小さな寸法からなるこのような測定は、次第に難しくなっている。これは、(a)小さなサンプルからの微弱な信号、(b)不適切な信号・ノイズ比、(c)寄生性ノイズ(電気的又は機械的)、(c)サンプル組成の不確実性、(d)温度、圧力、湿度、不純物等のわずかな変化を伴う信号の大きな変動、(e)サンプル安定性、(f)測定される物理的特性に対する一般的な許容基準の欠如、(g)追跡可能性(traceability)などを含むいくつかの複雑な要素に基づくものである。さらに、多くの場合で、原子サイズの寸法からなるサンプルの特別な物理的特性の測定のための方法又は機器はない。
【0004】
種々の方法を用いてポイントコンタクトを形成できる。これらの方法は、機械的制御破断接合(mechanical controlled break junction)(MCBJ)及び走査型トンネル顕微鏡(STM)の多くの種類を含み、双方は、圧電アクチュエーター(ピエゾ)を利用して、2つの対向する面(以下「チップ」と「基板」という)間の隙間を縮める。他の方法は、ピエゾ、ステッピングモーター、スクリュー装置及び/又は他の移動機構部の使用を含んでおり、チップと基板との間にポイントコンタクトを形成する。2つの電極間又は細ワイヤーを電解研磨することで、ポイントコンタクトを形成できる。
【0005】
しかし、既存の従来のアプローチには問題がある。MCBJタイプの方法では、ピエゾの配置と基板に対するチップの移動との間に1対1の関係はなく、寄生性の機械的及び/又は電気的ノイズを被る。その結果、制御が難しいサイズの不安定なポイントコンタクトを生成し、新たなチップを用いると別個のキャリブレーションを必要とし、配置を測定するための不正確な方程式を伴う。さらに、MCBJタイプの方法において、チップと基板との間の配置を支持するために中間材料を使用すると、全材料に固有の時間依存性又は時間非依存性の弾性/塑性挙動を被り、これは温度によって変化し、これによって、予測が難しい方法で配置を変更することになる。
【0006】
さらに、MCBJ、STM、又は他の同様の方法におけるピエゾアクチュエーターを駆動する信号のノイズによって、ピエゾは形状が若干変化する。ピエゾの形状変化は小さいが、原子スケールでは、ポイントコンタクトを不安定(制御不能な寸法変位)にするのに十分である。ピエゾを駆動する信号に偏流が存在することがあるという他の欠点があり、これは同様の作用を有する。例えば、図1A及び1Bは、MCBJタイプの方法で形成された金のポイントコンタクト(gold point contact)を示し、これは、不適切な分離(isolation)から生じる寄生性の機械的振動に基づく制御不能な寸法変化を被る。この実施形態では、時間t=0sで約50アトムの金のポイントコンタクトを形成する(図1A)。コンダクタンス軌跡の拡大図(図1Aの挿入)は、コンタクト寸法を制御不能に変化する寄生性の機械的振動の存在を示す。図1Bは、コンダクタンス軌跡のフーリエ変換を示し、これは、異なる振幅及び周波数の機械的振動の存在を示す。
【0007】
ステッピングモーター、スクリュー装置、移動機構部の使用、又はピエゾの直接使用によって、同様の機械的及び/又は電気的ノイズを導き、上記の通り、ポイントコンタクトの大きさを制御できないようになる。
【0008】
電気めっき又は電解研磨の技術は有用だが、小さな気温変化での限られた装置に制限される。
【0009】
異なる摂動(perturbation)における広範囲の物理的特性の測定に対して、寄生性の機械的及び電気的干渉のない安定的なポイントコンタクトを得ることは、複雑、不正確であって、一つの多用途のシステムに組み込むことが難しい。
【発明の概略】
【0010】
ナノ又はナノメートル以下(sub-nanometer)の個別のサンプルにおける広い範囲の物理的特性の測定が可能な測定プローブを提供する。プローブは、プローブ本体と、プローブ本体に連結された基板と、を備える。基板は、測定される材料で構成される。基板は、基板ホルダーに保持され、基板ホルダーは、基板台に連結される。さらに、プローブは、プローブ本体に連結されたチップを備える。チップは、チップホルダーに付けられ、チップ台によってプローブ本体に連結される。チップは、基板に近接するチップ端部を有する。
【0011】
さらに、プローブは、電気入力部を有する粗圧電アクチュエーター(以下「ピエゾ」という)を備える。粗ピエゾは、第1電気信号を電気入力部に供給するとチップ及び/又は基板を互いに対して移動するように構成されている。プローブは、粗ピエゾの電気入力部と電気通信される低域通過フィルター(low-pass filter)を備え、第1電気信号の略全ての非直流成分(non-D.C. components)を取り除く。粗ピエゾと同様に、細ピエゾは、第2電気信号を電気入力部に供給するとチップ及び/又は基板を互いに対して移動するように構成されている。細ピエゾが、所定の電気信号に対して粗ピエゾよりも小さく動かされる点で、細ピエゾは粗ピエゾと異なる。各ピエゾ(粗及び細)の1つ以上が用いられる。
【0012】
測定プローブを構成する方法として本発明は実施され、アクチュエーター及び磁石を有する押圧アセンブリを設けるステップを備える。プローブ本体を押圧アセンブリの近くに設け、プローブ本体は、基板とチップ台とを備える。チップが基板の近くにあって、チップホルダーを押圧アセンブリの磁石で押圧アセンブリに保持するように、内部に付けられたチップを有するチップホルダーをプローブ本体のチップ台に配置する。アクチュエーターを使って、チップを所定の距離ごとに基板に移動する。チップと基板とのパラメーターを測定して、チップから基板までの距離を決定する。所定のチップ・基板距離が決定されるまで、アクチュエーターを使ってチップを移動するステップと、チップ・基板パラメーターを測定するステップとを繰り返す。所定のチップ・基板距離が決定されると、チップホルダーをプローブ本体のチップ台に付ける。
【0013】
材料の物理的特性を測定する方法として本発明は実施され、測定される材料の近くにあるチップを有する測定装置を設けるステップと、チップ及び基板が互いに近づくように、チップ及び/又は材料を互いに移動させるためにプローブの粗ピエゾの電気入力部に第1電気信号を供給するステップと、チップ及び/又は材料を互いに移動するようにプローブの細ピエゾの電気入力部に第2電気信号を供給するステップと、材料の特性を測定するためにチップを使用するステップとを備える。
【0014】
さらに、本方法は、プローブ本体に付けられ、且つ基板及び/又はチップを互いに移動するように構成された粗ピエゾを設けるステップを備える。チップホルダーを移動するために(上記した)押圧アセンブリアクチュエーターの使用に対して、粗ピエゾを使って、基板及び/又はチップを互いに対して所定の第2距離ごとに移動する。チップ・基板パラメーターを測定して、チップ・基板距離を決定する。所定のチップ・基板距離が決定されるまで、又は粗ピエゾが最大変位(最大使用可能長さ)に達するまで、粗ピエゾを使用するステップと、チップ・基板パラメーターを測定するステップとを繰り返す。
【0015】
記載されている装置は測定システムであって、物理、化学、バイオ、工学、材料学、測量、ナノサイエンス及びナノテクノロジー、分子電子工学及び分子力学、バイオ力学、摩擦などの幅広い分野での学術的及び産業的研究に有用である。
【0016】
本装置では、電気的、機械的、摩擦学的、分子電子的、量子電子的、バイオ力学的、磁電気的、磁気抵抗的などの幅広い物理特性を測定できる。組み込まれた測定システムは、振動及びノイズ軽減特性、カスタム電子機器、種々の温度、圧力、力、変形、磁界又は電界、環境(ガス又は液体)、プローブ整列アセンブリ、異なるプローブ、カスタムソフトウェア、及び、リアルタイムデータ取得及び処理機能を備える。本発明のシステムでは、多様性、機械的振動分離、複合圧電アクチュエーターの使用による安定性の向上、調和のとれた熱膨張係数による安定性の向上、プローブの予備的な整列によるシンプルな設計、リアルタイムノイズの分析、製造の容易性、原子サイズのサンプルの確固たる信号、高い信号・ノイズ比、小さい寄生性ノイズ(電気的及び機械的)、サンプル組成の確実性、コントロールされた環境(温度、圧力、湿度など)、高いサンプル安定性、モジュール式組立を含む多くの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】従来のMCBJタイプの方法によって形成された金のポイントコンタクトの電圧と時間とを示すグラフ図。
【図1B】図1Aの曲線の周波数領域を示すグラフ図。
【図2A】本発明の一実施形態に係るプローブを示す斜視図。
【図2B】図2Aにおける範囲Aを示す詳細図。
【図2C】図2Bにおける範囲Bを示す詳細図。
【図3A】本発明の他の実施形態に係るカバーを有するプローブを示す斜視図。
【図3B】カバーのない図3Aのプローブを示す斜視図。
【図3C】図3A及び3Bのプローブの磁気整列アセンブリを示す斜視図。
【図3D】図3Bにおける範囲Cを示す詳細図。
【図3E】図3A及び3Bにおけるプローブのチップ・基板領域を示す詳細図。
【図4】本開示のシステム及び方法を用いて、1つ,2つ及び4つの原子からなる高安定性、ノイズのない金のポイントコンタクトの例に対して、コンダクタンスと時間とを示すグラフ図。
【図5】本開示のシステム及び方法を用いて、径が1,2,3,4及び5原子の金のポイントコンタクトの測定されたI−V特性の例を示すグラフ図。
【図6】本開示のシステム及び方法を用いて、種々の振幅及び異なる周波数での金のポイントコンタクトの機械的伸びの例を示すグラフ図。
【図7】本発明の実施形態に係る分離システムを示す概略図。
【図8A】分離システム及びプローブに対する周波数応答の例を示すグラフ図。
【図8B】本発明のシステムでシステム及びプローブを最適化して機械的振動を軽減した場合における、分離及びプローブの周波数応答の例を示すグラフ図。
【図9A】実験室の床面における周波数のスペクトル分析を示すグラフ図。
【図9B】本発明の実施形態に係る分離システムのエアーテーブルにおける周波数のスペクトル分析を示すグラフ図であって、図9Aのグラフ図の最大振幅を標準とする。
【図9C】本発明の実施形態に係る分離システムの第1サスペンションステージにおける周波数のスペクトル分析を示すグラフ図であって、図9Aのグラフ図の最大振幅を標準とする。
【図9D】本発明の実施形態に係る分離システムの第2サスペンションステージにおける周波数のスペクトル分析を示すグラフ図であって、図9Aのグラフ図の最大振幅を標準とする。
【図10A】本発明のプローブ整列アセンブリ及びプローブを示す斜視図。
【図10B】図10Aのプローブ整列アセンブリ及びプローブを示す平面図。
【図10C】図10Bにおける範囲Dを示す詳細図。
【図10D】図10A及び10Bのプローブ整列アセンブリ及びプローブを示す側面図。
【図10E】図10Dの範囲Eを示す詳細図。
【図11A】本開示のチップ接近方法を示す。
【図11B】本開示のチップ接近方法を示し、ポイントコンタクトが形成されている。
【図12】チップ整列電子装置を示す概略図。
【図13】リアルタイムデータ取得ユニット、決定論的制御システム及び駆動電子機器に接続されたプローブの一実施形態を示す概略図。
【図14】リアルタイムデータ取得ユニット、決定論的制御システム及び駆動電子機器に接続されたプローブの他の実施形態を示す概略図。
【図15】1nm/sのチップ後退速度を有する種々の後退サイクルのコンダクタンスヒストグラムを示すグラフ図。
【図16】0.1nm/sのチップ後退速度を有する種々の後退サイクルのコンダクタンスヒストグラムを示すグラフ図。
【図17】測定プローブを構成する方法を示すフローチャート図。
【図18】材料の特性を測定する方法を示すフローチャート図。
【図19】原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバーとして構成された本発明のプローブを使って、室温で金を収縮して破裂する間における(a)コンダクタンス及び(b)力の同時測定を示すグラフ図であり、AFMのカンチレバーの後退速度は5nm/sである。
【図20】1Go以下で最後のコンダクタンス水平域がある(a)コンダクタンス軌跡と、(b)同時測定された力・伸び曲線を示すグラフ図であり、(a)の挿入図は、1Go以下の水平域に対するコンダクタンス軌跡及び力・伸び曲線の詳細を示し、AFMのカンチレバーの後退速度は5nm/sである。
【図21】1Go以下で最後のコンダクタンス水平域がある(a)コンダクタンス軌跡と、(b)同時測定された力・伸び曲線を示すグラフ図であり、AFMのカンチレバーの後退速度は5nm/sである。
【発明の開示】
【0018】
図2A〜2Cは、本発明の実施形態に関するものであって、ナノ又はナノメートル以下の単一サンプルの物理的特性を広範囲に測定できる計測プローブ10を示す。プローブ10は、例えばチタン等(材料の選択については後述する)の非反応金属で構成されるプローブ本体12を備える。プローブ10は、プローブ本体12に連結された基板14を備える。基板14は、上面18を備える。基板14は、測定される材料で構成される。他の実施形態では、測定される材料は液体からなり、そして、例えば保持リング16(これに限定されない)のような保持器具が、基板14の上面18に配置され、液体を収納する。他の実施形態では、基板14は、液体を収納するのに適した形状(例えば皿)で構成されている。基板14は、基板ホルダー42に保持される。基板ホルダー42は、基板台40に連結される。
【0019】
プローブ10は、プローブ本体12に連結されたチップ20を備える。図2A〜2Cに示される実施形態では、チップ20は、チップホルダー22を備える。チップ20は、チップホルダー22に付けられており、チップホルダー22はチップ台24によってプローブ本体12に連結されている。チップ20は、基板14に近いチップ端部26を備える。チップ端部26は、ポイント28を構成する。ポイント28は、寸法的に単一原子と同じ小ささである(例えば金に対しては0.35オングストローム)。チップ20は、例えば金、プラチナ、コバルト等で構成される。チップ20及び基板14は、種々の形状からなり、同一又は異なる材料で構成される。例えば、扁平な基板14及び尖ったチップ20の代わりに、互いに対向する二つの尖った部材(チップ及び基板)を用いることもできる。
【0020】
プローブ10は、電気入力部32を有する粗圧電(ピエゾ)アクチュエーター30を備える。一般的に、ピエゾは、ピエゾの電気入力部で受ける電気信号に基づいて、形状が変化する。本実施形態では、第1電気信号が電気入力部32に供給されると、粗ピエゾ30は、チップ20及び/又は基板14を互いに移動するように構成されている。即ち、粗ピエゾ30は、チップ20及び/又は基板14を互いに接近又は離れるように移動する。このように、粗ピエゾ30は、チップ20とプローブ本体12との間に配置され、チップ20を基板14から近接又は離れるように移動する。また、粗ピエゾ30は、基板14とプローブ本体12との間に配置され、基板14をチップ20から近接又は離れるように移動する。他の実施形態では、2つの粗ピエゾ30が用いられ、チップ20及び基板14の双方を互いに近接又は離すように移動する。
【0021】
プローブ10は、電気入力部36を有する細圧電(ピエゾ)アクチュエーター34を備える。上記した粗ピエゾ30と同様に、第2電気信号が電気入力部36に供給されると、細ピエゾ34は、チップ20及び/又は基板14を互いに移動するように構成されている。細ピエゾ34は供給される電気信号に対して少ない移動を生じさせるという点で、粗ピエゾ30と異なる(詳細については後述する)。
【0022】
粗ピエゾ及び細ピエゾ30,34は、X軸、Y軸及び/又はZ軸に沿って独立した移動が可能である。例えば、多自由度のピエゾアクチュエーターを選択できる。他の実施形態では、各ピエゾ(粗及び細)の1以上が用いられ、1以上の次元での移動が可能となる。
【0023】
プローブ10は、粗ピエゾ30の電気入力部32と電気通信される低域通過フィルター38を備える。これにより、低域通過フィルター(low-pass filter)38によって、第1電気信号をフィルター(濾過)して、第1電気信号の略全ての非直流成分(non-D.C. components)を取り除く。このように、粗ピエゾ30に供給されたフィルターされた電気信号は、電気的ノイズは略無い。その結果、粗ピエゾ30の不要な移動は略なく、これによって、粗ピエゾ30によるチップ20及び/又は基板14の不要な移動がない。
【0024】
本発明のプローブは、特別な使用及び需要に応じて異なって構成される。例えば、粗ピエゾは基板の下方に設けられ、細ピエゾはチップの後方に設けられる(逆も同様)。このようなプローブ11の一つが、図3A〜3Eに示される。このようなプローブ11は、ポイントコンタクトの伸び(elongation of the point contacts)を要求する小さなシステムの機械的特性の測定、それと同時に力、摩擦学、(バイオ)分子力学など、異なる摂動で他の物理的特性とともに測定することに適したものである。プローブ11は、図3Aでカバー46を備えており、図3Bで備えていない。カバー46は、ポート96を介して、実験中に不活性又は他のガスを導入するために用いられる。図3Eは、チップ30がカンチレバーチップである実施形態を示す。例えば、カンチレバーチップの撓みを従来技術の光学的又は他の方法で測定する。このようなプローブ11を原子間顕微鏡として用いることができる。
【0025】
チップ20と基板14との間にポイントコンタクトを形成するための複合ピエゾ(粗又は細)の使用によって、ポイントコンタクトをノイズの減少により安定的に構成できる。特に、第1電気信号からノイズをフィルターすることによって、粗ピエゾ30は、安定的なプラットフォーム(platform)を供給し、そのプラットフォームによって、細ピエゾ34は、チップ20及び/又は基板14の位置を細かく調整できる。ノイズは、(細ピエゾ34の電気入力部に供給される)第2電気信号に存在するかもしれないが、細ピエゾの小さな移動を生成するので、実質的に小さな影響でしかない。
【0026】
複合ピエゾの使用を説明するために、X軸に沿った変位を可能とする粗及び細ピエゾを考える。粗ピエゾの特性は、細ピエゾに対して、同じ駆動電圧に対して大きな変位となっている。限定されない実施形態において、100nm/Vの感度の粗ピエゾに適用される10Vの信号(10mVのノイズを有する)によって、1000nm(1μm)の変位が生じ、その位置で1nmの不確実性が伴う。それに対して、1nm/Vの感度の細ピエゾに適用される同一電圧によって、10nmの変位が生じ、その位置で0.01nm(10ピコメーター)の不確実性が伴う。本発明のプローブを用いた測定システムは、単原子(〜0.1nm)程度の小さなシステムの物理的特性を測定するという事実を踏まえると、粗ピエゾだけでは、位置に対して大きな不確実性があるので、特性を詳しく研究する際に不適当である。同時に、限定された変位能力、及びこのような小さな距離で基板に対するチップの配置調整から生じる複雑性によって、細ピエゾの使用だけでは不十分となる。通常は、基板に対してチップを配置するために、数ミクロンのチップ・基板間の変位距離が要求される。また、低温ではピエゾに対する変位距離は著しく減少する。例えば、一般的なピエゾでは、低温での変位距離は、室温での変位の90%ほどに減少する。さらに、粗ピエゾ及び細ピエゾを有する実施形態を説明する一方で、本発明は、さらに感度のよい複合ピエゾ(例えば、粗ピエゾ、中ピエゾ、細ピエゾ)の使用を含む。
【0027】
使用中、予め設定された大きさのポイントコンタクトが形成されるまで、または、基板14が基板14から所定の距離に運ばれるまで、粗ピエゾ30は、チップ20と基板14との間の隙間を縮めるために用いられる。(なお、上記の通り、プローブの構成によって、チップ20、基板14又は双方のいずれかは、互いに対して移動する。)粗ピエゾ30電気信号に対する電子装置は、非常に小さな遮断周波数(cutoff frequency)(〜0.01Hz)の低域通過フィルターされた信号(low pass filtered signal)を供給する。その結果、駆動信号のノイズ及び偏流(drift)が著しく低下するので、粗ピエゾ30の位置を非常に安定的にする。その結果、粗ピエゾ30は静止する。しかし、この安定性がポイントコンタクトでの偏流及びノイズを減少する一方、ポイントコンタクトの種々の物理的特性を精査する際に必要とされる粗ピエゾ30の動的特性(dynamic properties)も減少する。例えば、金属のポイントコンタクト(metal point contact)の負荷・撓み作用や単一分子の歪み特性を測定する際、異なる周波数でピエゾを振動させることが望まれる。一般的な実験でピエゾが数十Hzから数kHz以上に振動することを保証する一方、例えば0.01Hz以下の遮断周波数の低域通過フィルターされた信号は、百秒に一回よりも速い所望の振幅で振動しない。これらの場合、細ピエゾ34によって動的機能(dynamic capabilities)が提供される。このように、細ピエゾ34は、動的測定(dynamical measurements)に対して任意の高周波数で振動する。細ピエゾ34は、チップ20と基板14との間のポイントコンタクトの大きさをピコメートル分解能で変化させて、種々の物理的特性を解析するために用いられる。サンプルの大きさは、単一原子又は単一分子からそれ以上まで適用できる。
【0028】
図4は、本発明の実施形態を用いて1,2及び4原子で形成されたノイズのない金のポイントコンタクト(gold point contact)における、高安定の例を示す。所望の大きさ及び形状のポイントコンタクトがチップ及び基板の間に形成されると、種々の物理的特性の測定が行われる。本発明のプローブは、温度、圧力、力、伸び、電界、磁界、組成、またはこれらの組み合わせ、及び種々の化学環境(液体、気体など)に応じて、ナノメートルの大きさの材料の種々の物理的特性を測定できる。例えば、図5は、直径が1,2,3,4及び5原子の金のポイントコンタクトにおける測定されたI−V特性の例を示す。図6は、種々の振幅及び周波数の金のポイントコンタクトにおける機械的伸びの数例を示す。
【0029】
AFM(原子間力顕微鏡)モジュールとして構成される場合、本発明は、例えば力伸びデータ(force elongation data)を測定するために用いられる。図19〜21は、図3A〜3Eで示されるものと同様のプローブを試験したときに得られたデータを示す。これらのデータは例示であって、本発明を限定するものではない。図19は、室温で金を収縮して破裂する間における(a)コンダクタンス及び(b)力の同時測定を示すグラフ図である。上記(及び後の例)のAFMのカンチレバーの後退速度は5nm/sである。図20は、1Go以下でコンダクタンス水平域がある(a)コンダクタンス軌跡と、(b)同時測定された力・伸び曲線を示すグラフ図である。また、図20は、1Go以下の水平域に対するコンダクタンス軌跡及び力・伸び曲線の詳細を示す(挿入図参照)。図21は、1Go以下でコンダクタンス水平域がある(a)コンダクタンス軌跡と、(b)同時測定された力・伸び曲線を示すグラフ図である。
【0030】
プローブ10は、試験環境を変更するための部品44を備える。例えば、プローブ10は、基板14を加熱するための加熱手段を備える。同様に、プローブ10は、冷却するための冷却手段、磁界を導入するための磁石、又は、基板14を振動するための振動手段を備える。他の部品は、当業者にとっては明らかである。このような部品を、独立して、又は種々の組み合わせで用いることができる。プローブ10は、このような部品を位置決めするためのスロット52を備える。このようにして、部品は、所望の試験に応じて簡単に着脱できるようになっている。
【0031】
プローブ10は、プローブチャンバー(例えば、後述する分離系)にプローブ10を取り付けるための取付けパック(mounting puck)13を備える。プローブ10は、電気路がチップ20から電気的インターフェースに、及び基板14から電気的インターフェースに供給されるように構成され、測定装置を電気的インターフェースに接続することによって、チップ20と基板14との間における特性の電気的測定を形成できる。ワイヤーを使ったり、プローブ本体自身を使ったり、導電性塗料及び接着剤を使ったり、及び/又は既知の技術を使うことで、電気路を設けることができる。電気的インターフェースは、取付けパック13の近くに設けられる。プローブ10を取付けパック13で取り付けるときに、測定に必要な電気的接続が自動的に形成されるように、電気的インターフェースが取付けパック13自身となる。プローブ10は、取付けパック13とプローブ本体12との間の不導体15を備える。
【0032】
本発明のプローブの他の検討事項として、プローブの種々の部品の熱膨張係数を厳選することがある。種々の部品が、熱膨張係数で大きな不一致があると、温度が低いときに種々の部品の収縮又は膨張によって、チップは基板から離れて後退したり衝突したりする。チップが基板から遠く離れると、粗ピエゾの変位では不十分となり、実験が中止となる。反対に、基板に影響を与えるチップは、交換される必要がある。プローブの材料及び形状の厳選によって、チップは、全温度で基板に対して同一距離を維持する。このように互換性のある熱膨張係数を有する材料の厳選が、機械的可動部品、ステッピングモーター、他の機構を削減し、温度による機構変形を補償する。
【0033】
本発明に係るプローブが全体的に小さいことで、プローブを種々の環境、例えば、低温保持装置、真空チャンバー、磁界用ソレノイド、特別なガス環境などに組み込むことができる。このような実験は、振動分離系に収納される。外部ノイズ(電気的及び機械的)からの測定信号の分離、又は環境中のコントロール不能な変動(例えば、気温、湿気、不純物)から生じる寄生効果(parasitic effects)の分離が、全物理的特性の測定システムの目標である。しかし、原子サイズのポイントコンタクトで測定を行う間、このような分離は非常に重要である。外部の摂動から実験を分離する機能は、原子レベルのサンプルをしっかり測定するために必要である。機械的振動、電気的干渉、熱変動、又は気流は、これらの小さなスケールで多大な影響を与える。コントロール不能な機械的振動の影響の例を図1に示す
【0034】
図7は、プローブチャンバー102内に本発明のプローブを収納する分離システム100の概略図を示す。このような分離システム100は、メインチャンバー104を備え、メインチャンバー104は、電気システム内で電気的干渉が寄生性ノイズ(parasitic noise)を生成することを防止するファラデー箱106を備える。ファラデー箱106は、メインチャンバー104内の温度を一定に保つ断熱部108に並べられている。この開示に関与する小さなスケールシステムでは、種々の周囲温度でプローブの部品が拡大又は収縮される。普通の測定ではないに等しいが、プローブのチップと基板との間の距離の偏流が生じ、コントロール不能な種々のサンプル形状が生じる。メインチャンバーは、外部気流が侵入することを防止し、音響発砲体110がメインチャンバー104の内側に並べられて音波が内部で反響することを防止する。
【0035】
振動分離システムがメインチャンバー104内に形成され、エアーテーブル112及びサスペンションステージ11,116を備える。エアーテーブル112は、エアーシリンダーに設けられたステンレススチール薄板プラットフォームとなっており、エアーシリンダーは、プラットフォームの影響を和らげる。支持機構がエアーテーブル112の天板に設けられており、第1サスペンションステージ114(質量=m1)は第1スプリングダンパーシステム118(ばね定数=k1、減衰係数=c1)で吊り下げられている。第2サスペンションステージ116(m2)が、第2スプリングダンパーシステム120(k2、c2)で第1サスペンションステージから吊り下げられている。プローブチャンバー102が第2サスペンションステージ116に設けられており、種々のプローブアセンブリを収納できる。プローブチャンバー102は、種々の装置に応じて作成できる。例えば、プローブチャンバー102は、温度を上昇させるヒーター、低温研究のための低温保持装置、又は磁気的研究を行うためのソレノイドを備えることができる。プローブチャンバー102は、高真空下に配置されたり、所望のガス化学環境で浄化される。なお、振動を分離するために種々のステージを必要とすることがある。
【0036】
機械的振動分離は、このような分離システム100の重要な要素である。振動分離システムは、包囲環境内で機械的周波数をフィルターするように動作する。図8Aの分離曲線(isolation curve)152は、分離システムに対する周波数応答(frequency response)の例である。周波数f1で、分離システムの固有周波数と一致するピークがある。この周波数で振動の振幅が増幅される(増幅率>0)が、このピークの両側で振動が抑えられる(増幅率<0)。プローブ曲線(probe curve)150は、プローブアセンブリの周波数応答であり、これは固体アセンブリが非常に高い固有振動数f2を有することによる。組合せ曲線154は、システムに対する組合せ応答(combined response)であって、環境振動から最もよい分離が可能なようにできるだけ小さく形成されている。一般的に、機械的振動のほとんどが周波数f1とf2との間で下がり、特にできるだけ低くされる必要のある領域であって、これを得るために種々の方法がある。低い周波数にf1を押し下げ、高い周波数にf2を押し上げることで、増幅率を減少する。さらに、分離の追加ステージを追加することで、f1の両側の減少が、増幅率を減少する急勾配になる。これらの方法を用いることで本発明の分離システムを効果的にすることが図8Bに示される(固体曲線151,153,155は曲線150,152,154にそれぞれ対応する)。
【0037】
分離システムの質量、ばね定数及び減衰係数の値は、最低の周波数応答が得られるように厳選される。図9Aは、図9B〜9Dの全グラフを標準化するために用いられる床面での最大振幅を伴って、典型的な実験室の床面における周波数のスペクトル分析を示す。グラフにおいて、0Hzと80Hzとの間の周波数で、約17Hzで大きな急上昇がみられる。図9B,9C及び9Dは、エアーテーブルプラットフォーム、第1サスペンションステージ及び第2サスペンションステージでの同一の測定を示す。主となるグラフは図9Aと同一縮尺であって、振幅を直接比較できる。図9B〜9Dは、各例における振動を最も明確に示すために別々の縮尺の挿入図を有する。第2サスペンションステージ上で3つの異なるステージの固有周波数が測定できるまで、各追加ステージは測定振動を減少する。分離のこれら3つのレベルは、分離システムの周波数応答において、f1の両側に傾斜する勾配を増加する。プローブアセンブリの高機械的剛性を合わせたとき(高いf2)、組合せ周波数応答(combined frequency response)は、本発明のシステムを用いた測定での機械的振動の全信号を効果的に減少するのに十分なものとなる。追加振動がプローブに移動しないように特別な配慮がケーブル付属品になされる。
【0038】
プローブ整列アセンブリ
【0039】
追加の変位機械的部品に関する複雑化を削減するため、及び(上記した)本発明のプローブの全体サイズを減少するために、プローブは、図10A〜10Eに示すようなプローブ整列アセンブリ60を用いて、外部の整列工程を利用する。プローブ整列アセンブリ60を用いて、プローブチャンバー又は他のプラットフォームにプローブを取り付ける前に、基板に対してチップを整列する。プローブをプローブチャンバー又は他のプラットフォームに移動できるように、チップ・基板整列によって、チップが基板から数ミクロン又はミクロン以下だけ離して配置される。プローブ整列アセンブリ60内に、プローブ62のパック64がパックソケット66に差し込まれる。チップ68は、(例えば、接着剤、エポキシド(epoxied)、半田などで)チップホルダー70に付けられ、チップ台72に取り付けられる。チップホルダー70は、磁気コアピース74(magnetic core piece)を収納し、これは、磁石78によって押圧アセンブリ(pushing assembly)70の表面に保持される。絶縁プレート79(insulating plate)は、押圧アセンブリとチップホルダー70との間に設けられる。後述するチップ接近法でチップホルダー70を適切に配置すると、チップホルダー70は、チップ台72に付けられる。チップ台72からチップ68への伝導路を保持するために、伝導性接着剤、エポキシ、又は塗料が用いられる。このようなプローブ整列アセンブリ60は、硬化する間におけるチップ台72に対するチップ68の移動を防止する。
【0040】
チップホルダー70をチップ台72に配置するために、押圧アセンブリ76は、ステッピングモーター80(又は他の適切なアクチュエーター)を備え、プローブ62の基板82に対してチップホルダー70を押す。ステッピングモーター80は、基板82に対してチップ68を数ミクロン内で配置する。この配置を補助するために光学顕微鏡が用いられる。ステッピングモーター80及び押圧アセンブリ76の方法でチップ68が配置されると、自動チップ接近方法(automated tip approach method)によって基板82に対してチップ68が精密に並べられ、これによって、所望の最終の隙間(desired final gap)(数ミクロンからミクロン以下、又は数ナノメートル)を決定する。自動チップ接近方法は、チップ68と基板82との間の電気抵抗の測定に基づく自動電気的フィードバック近接(automated electrical feedback approach)を利用する。
【0041】
自動チップ接近方法の例を図11A〜11Bで示す。図11Aに示すように、粗ピエゾに対する電圧を次第にゆっくりと傾斜させることで、自動近接が始まる。各ステップで、フィードバックシステムが、図12に示すようなチップ整列電子装置を用いて、チップ・基板隙間(tip-substrate gap)を通じた測定可能な電気抵抗を調べる。チップ68と基板82との間に空隙(air gap)がある場合、抵抗が大きい(ほとんどのメートル範囲よりも高い)。チップ・基板隙間がナノメートル以下のオーダーとなる位置、又はチップが基板に接触するときまで、粗ピエゾが進むと、抵抗が測定可能になる。接触しない状態で粗ピエゾの電圧が最大レベルに達すると、粗ピエゾの電圧がゼロにリセットされ、ステッピングモーター80は押圧アセンブリ76を移動し、それによって、1ステップごとにチップホルダー70が前進し、粗ピエゾの電圧が、再度、傾斜上昇する(再度、各ステップの後に電気抵抗を測定する)。所望のポイントコンタクトが検出されると、図11Bの通り、粗ピエゾの電圧はゼロにリセットされ、自動近接が完了する。このポイントで、チップホルダー70はチップ台72に付けられる。チップホルダー70が付けられるとステッピングモーター80及び押圧アセンブリ76は後退し、プローブ62は、プローブ整列アセンブリ60のパックソケット66から取り除かれる。その後、プローブ62は測定のために用いられる。
【0042】
この方法で、整列の間に用いられる粗ピエゾの電圧に基づいて、チップ68と基板82との間の隙間を知る。この工程で基板82からチップ68を正確に離すことができ、同じ粗ピエゾの電圧を粗ピエゾに適用することで、(例えば、プローブチャンバー内で)プローブ62を使用する間に素早く回復できる。この方法によって、プローブから分離したステッピングモーターを使用できる。
【0043】
図3A〜3Cに示すプローブの他の実施形態では、磁気整列アセンブリ91を備える。チップ86は、細ピエゾ88に取り付けられる。この限定されない例では、チップ86はカンチレバーの形式となっており、ポイントコンタクトの変形の間に撓み及び力を測定することに用いられる。基板90は、基板ホルダー92に取り付けられる。基板90及びチップ86を取り付けた後、ステッピングモーター94を用いて磁気整列アセンブリ91を押す。測定するためにプローブ11を使用する間、種々のガスを導入するために用いられるポート96を通じて、ステッピングモーター94を取り付ける。その後、基板90がチップ86に対する所定の位置に配置されるまで、整列アセンブリ91を押し、(チップ・基板隙間の電気抵抗の測定を通じて)上記のように電気的にモニターされる。その後、ステッピングモーター94が取り外され、測定のためにプローブ11を用いる。図3Cの整列アセンブリ91の底面に磁石群93が示されており、ステッピングモーター94を取り外すと、磁石群が磁石プレート95を把持し、整列アセンブリ91を適所に固定する。ステッピングモーター94を取り外した後、プラグ97を挿入してプローブチャンバーを密封する。
【0044】
本発明は、測定プローブを構成する方法(100)のように実施される(例えば、図17参照)。方法(100)は、アクチュエーター及び磁石を有する押圧アセンブリを提供するステップ(103)を備える。押圧アセンブリは、上記したものと同様である。プローブ本体を提供し(106)、プローブ本体を押圧アセンブリの近くに配置する。プローブ本体は、例えば図2Aに示すプローブ本体のような基板及びチップ台を備える。付けられたチップを有するチップホルダーをプローブ本体のチップ台に配置する(109)。チップが基板の近くになるようにチップホルダーを配置し、押圧アセンブリの磁石で押圧アセンブリにチップホルダーを保持する。チップホルダーは、押圧アセンブリの磁石を引きつけるために構成されたチップホルダー磁石を備える。アクチュエーターを使って、所定の距離ごとにチップを基板に移動する(112)。限定されない例で、アクチュエーターがステッピングモーターの場合、押圧アセンブリは、ステッピングモーターの1ステップごとにチップを押す。チップ及び基板のパラメーターを測定し、チップから基板までの距離を測定する(115)。限定されない例で、チップと基板との間で抵抗(又はコンダクタンス)を測定し、隙間が存在するか及び/又はポイントコンタクトが形成されているかを測定する。所望のチップ・基板距離が決定されるまで、アクチュエーターを用いてチップを移動するステップ(112)と、チップ・基板パラメーターを測定するステップ(115)とを繰り返す(118)。例えば、ポイントコンタクトが形成されていると測定によって示されるまで、チップを基板に進める。所望のチップ・基板距離が決定されると、チップホルダーをプローブ本体に付ける(121)。このような押圧アセンブリ及び方法の使用を通じて、押圧アセンブリのアクチュエーターをプローブ本体に配置する必要がなく、これによって、使用する際にプローブ本体をより小さく安定的にすることができる。
【0045】
他の実施形態では、方法(100)は、プローブ本体に付けられ、且つ基板及び/又はチップを互いに移動するように構成された粗ピエゾを提供するステップ(124)を備える。例えば、粗ピエゾは、基板をチップに、チップを基板に、又はその双方を移動するように構成されている。チップホルダーを移動するために押圧アセンブリアクチュエーター(例えば、ステッピングモーターのステップ)を使用(112)する間、粗ピエゾを用いて(127)、所定の第2距離ごとに基板をチップに(又はチップを基板に、又はその双方)移動する。所定の第2距離(粗ピエゾの移動)は、アクチュエーターの所定距離より短く、粗ピエゾを使って、アクチュエーターの移動の間の増分距離(incremental distance)ごとに基板及び/又はチップを互いに近づくように移動する。チップ・基板パラメーターを測定し、チップ・基板距離を測定する(130)。所望のチップ・基板距離が決定されるまで、又は粗ピエゾが最大変位に達する(最大使用可能長さ)まで、粗ピエゾを使用するステップ(127)と、チップ・基板パラメーターを測定するステップ(130)とを繰り返す(133)。所望のチップ・基板距離を得られた場合、チップホルダーをプローブ本体に付ける(121)。粗ピエゾが動作の最大幅に達した場合、粗ピエゾの長さがリセットされ、アクチュエーターを用いて、所定の距離ごとにチップを基板に移動する(112)。
【0046】
データ取得、リアルタイム制御、電子装置及びカスタムソフトウェア
【0047】
リアルタイムデータ取得システム及びリアルタイムデータを分析するためのカスタムソフトウェアによって本発明のシステムを駆動する。図13は、リアルタイムデータ取得ユニット320及び決定論的制御システム330(deterministic control system)に接続されたプローブ310の一実施形態を示す。図14は、リアルタイムデータ取得ユニット420及び決定論的制御システム420に接続された他の実施形態のプローブ410を示す。コンピューターにインターフェースで接続されたリアルタイムシステムを使用することで、数ループの実行を必要とするカスタムソフトウェアを実行するための決定論的制御ループが提供される。カスタムソフトウェアは、カスタムルーティンを使用することでデータ取得及びハードウェア制御を制御するだけではなく、リアルタイム処理、表示、及び取得データを所望のフォーマットに実行することもできる。例えば、ソフトウェアは、コンダクタンスヒストグラム及びノイズ分析を計算、プロット及び保存できる。さらに、システムは、リアルタイムでアクセス可能な累積及び個々のファイル(cumulative and individual files)を生成する。説明のために、図15及び16は、1nm/s及び0.1nm/sのそれぞれで、チップを後退することによって、原子サイズの金のポイントコンタクトのコンダクタンスヒストグラムを示す。図15は、3000,6000,9000及び12,000の後退サイクル(retraction cycles)でのコンダクタンスヒストグラムを示す。本発明のソフトウェアを使用して、12,000後退サイクルを独立してアクセスできる。また、図15及び16に示すように、所定のステージポイントでの累積ファイルをアクセス及びプロットできる。チップに対する可変の後退速度(retraction rates)及び接近速度(approach rates)を有するサイクルと所定の速度で予め割り当てられた数のサイクルとを実行するためにソフトウェアを形成できる。ピエゾに対して可変の後退又は接近速度で予め割り当てられた振幅及び周波数を有するソフトウェアを入力することで、動的特性を調査できる。
【0048】
測定方法
【0049】
測定される材料に近接するチップを有する測定装置を提供するステップ(203)を備えた材料の物理的特性を測定する方法(200)のように、本発明を実施する(例えば、図18参照)。測定装置はプローブであって、上記の通り、それぞれに電気入力部を有する粗ピエゾ及び細ピエゾと備え、チップ及び/又は材料を互いに移動させるように構成されている。チップ及び材料を互いに接近するように、第1電気信号を粗ピエゾの電気入力部に提供し(206)、チップ及び/又は材料を互いに移動させる。第2電気信号を細ピエゾの電気入力部に提供し(209)、チップ及び/又は材料を互いに移動させる。チップを使用して(212)、材料の特性を測定する。例えば(限定されない)、チップと材料との抵抗又はレジスタンスを測定する。他の限定されない実施形態では、材料の伸びを測定するように、第2電気信号を振動する。第1電気信号をフィルターして(215)、信号から略全ての非直流値(non-D.C. values)を取り除く。このように、ノイズ及び信号偏流を第1電気信号からフィルターして、粗ピエゾがチップの安定的配置を与える。
【0050】
一又はそれ以上の特定の実施形態について本発明を説明しているが、本発明の思想及び範囲から外れることなく他の実施形態を形成できる。本発明は、請求項及び合理的な解釈によってのみ限定される。
【図1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2009年5月28日に出願された仮特許出願(61/181,840)の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、測定に関し、更に詳しくは、材料の特性を測定することに適したプローブに関するものである。
【発明の背景】
【0003】
ナノ又はナノメートル以下の寸法(以下「ポイントコンタクト(point contacts)」という)の材料の物理的特性の測定は簡単ではない。小さな寸法からなるこのような測定は、次第に難しくなっている。これは、(a)小さなサンプルからの微弱な信号、(b)不適切な信号・ノイズ比、(c)寄生性ノイズ(電気的又は機械的)、(c)サンプル組成の不確実性、(d)温度、圧力、湿度、不純物等のわずかな変化を伴う信号の大きな変動、(e)サンプル安定性、(f)測定される物理的特性に対する一般的な許容基準の欠如、(g)追跡可能性(traceability)などを含むいくつかの複雑な要素に基づくものである。さらに、多くの場合で、原子サイズの寸法からなるサンプルの特別な物理的特性の測定のための方法又は機器はない。
【0004】
種々の方法を用いてポイントコンタクトを形成できる。これらの方法は、機械的制御破断接合(mechanical controlled break junction)(MCBJ)及び走査型トンネル顕微鏡(STM)の多くの種類を含み、双方は、圧電アクチュエーター(ピエゾ)を利用して、2つの対向する面(以下「チップ」と「基板」という)間の隙間を縮める。他の方法は、ピエゾ、ステッピングモーター、スクリュー装置及び/又は他の移動機構部の使用を含んでおり、チップと基板との間にポイントコンタクトを形成する。2つの電極間又は細ワイヤーを電解研磨することで、ポイントコンタクトを形成できる。
【0005】
しかし、既存の従来のアプローチには問題がある。MCBJタイプの方法では、ピエゾの配置と基板に対するチップの移動との間に1対1の関係はなく、寄生性の機械的及び/又は電気的ノイズを被る。その結果、制御が難しいサイズの不安定なポイントコンタクトを生成し、新たなチップを用いると別個のキャリブレーションを必要とし、配置を測定するための不正確な方程式を伴う。さらに、MCBJタイプの方法において、チップと基板との間の配置を支持するために中間材料を使用すると、全材料に固有の時間依存性又は時間非依存性の弾性/塑性挙動を被り、これは温度によって変化し、これによって、予測が難しい方法で配置を変更することになる。
【0006】
さらに、MCBJ、STM、又は他の同様の方法におけるピエゾアクチュエーターを駆動する信号のノイズによって、ピエゾは形状が若干変化する。ピエゾの形状変化は小さいが、原子スケールでは、ポイントコンタクトを不安定(制御不能な寸法変位)にするのに十分である。ピエゾを駆動する信号に偏流が存在することがあるという他の欠点があり、これは同様の作用を有する。例えば、図1A及び1Bは、MCBJタイプの方法で形成された金のポイントコンタクト(gold point contact)を示し、これは、不適切な分離(isolation)から生じる寄生性の機械的振動に基づく制御不能な寸法変化を被る。この実施形態では、時間t=0sで約50アトムの金のポイントコンタクトを形成する(図1A)。コンダクタンス軌跡の拡大図(図1Aの挿入)は、コンタクト寸法を制御不能に変化する寄生性の機械的振動の存在を示す。図1Bは、コンダクタンス軌跡のフーリエ変換を示し、これは、異なる振幅及び周波数の機械的振動の存在を示す。
【0007】
ステッピングモーター、スクリュー装置、移動機構部の使用、又はピエゾの直接使用によって、同様の機械的及び/又は電気的ノイズを導き、上記の通り、ポイントコンタクトの大きさを制御できないようになる。
【0008】
電気めっき又は電解研磨の技術は有用だが、小さな気温変化での限られた装置に制限される。
【0009】
異なる摂動(perturbation)における広範囲の物理的特性の測定に対して、寄生性の機械的及び電気的干渉のない安定的なポイントコンタクトを得ることは、複雑、不正確であって、一つの多用途のシステムに組み込むことが難しい。
【発明の概略】
【0010】
ナノ又はナノメートル以下(sub-nanometer)の個別のサンプルにおける広い範囲の物理的特性の測定が可能な測定プローブを提供する。プローブは、プローブ本体と、プローブ本体に連結された基板と、を備える。基板は、測定される材料で構成される。基板は、基板ホルダーに保持され、基板ホルダーは、基板台に連結される。さらに、プローブは、プローブ本体に連結されたチップを備える。チップは、チップホルダーに付けられ、チップ台によってプローブ本体に連結される。チップは、基板に近接するチップ端部を有する。
【0011】
さらに、プローブは、電気入力部を有する粗圧電アクチュエーター(以下「ピエゾ」という)を備える。粗ピエゾは、第1電気信号を電気入力部に供給するとチップ及び/又は基板を互いに対して移動するように構成されている。プローブは、粗ピエゾの電気入力部と電気通信される低域通過フィルター(low-pass filter)を備え、第1電気信号の略全ての非直流成分(non-D.C. components)を取り除く。粗ピエゾと同様に、細ピエゾは、第2電気信号を電気入力部に供給するとチップ及び/又は基板を互いに対して移動するように構成されている。細ピエゾが、所定の電気信号に対して粗ピエゾよりも小さく動かされる点で、細ピエゾは粗ピエゾと異なる。各ピエゾ(粗及び細)の1つ以上が用いられる。
【0012】
測定プローブを構成する方法として本発明は実施され、アクチュエーター及び磁石を有する押圧アセンブリを設けるステップを備える。プローブ本体を押圧アセンブリの近くに設け、プローブ本体は、基板とチップ台とを備える。チップが基板の近くにあって、チップホルダーを押圧アセンブリの磁石で押圧アセンブリに保持するように、内部に付けられたチップを有するチップホルダーをプローブ本体のチップ台に配置する。アクチュエーターを使って、チップを所定の距離ごとに基板に移動する。チップと基板とのパラメーターを測定して、チップから基板までの距離を決定する。所定のチップ・基板距離が決定されるまで、アクチュエーターを使ってチップを移動するステップと、チップ・基板パラメーターを測定するステップとを繰り返す。所定のチップ・基板距離が決定されると、チップホルダーをプローブ本体のチップ台に付ける。
【0013】
材料の物理的特性を測定する方法として本発明は実施され、測定される材料の近くにあるチップを有する測定装置を設けるステップと、チップ及び基板が互いに近づくように、チップ及び/又は材料を互いに移動させるためにプローブの粗ピエゾの電気入力部に第1電気信号を供給するステップと、チップ及び/又は材料を互いに移動するようにプローブの細ピエゾの電気入力部に第2電気信号を供給するステップと、材料の特性を測定するためにチップを使用するステップとを備える。
【0014】
さらに、本方法は、プローブ本体に付けられ、且つ基板及び/又はチップを互いに移動するように構成された粗ピエゾを設けるステップを備える。チップホルダーを移動するために(上記した)押圧アセンブリアクチュエーターの使用に対して、粗ピエゾを使って、基板及び/又はチップを互いに対して所定の第2距離ごとに移動する。チップ・基板パラメーターを測定して、チップ・基板距離を決定する。所定のチップ・基板距離が決定されるまで、又は粗ピエゾが最大変位(最大使用可能長さ)に達するまで、粗ピエゾを使用するステップと、チップ・基板パラメーターを測定するステップとを繰り返す。
【0015】
記載されている装置は測定システムであって、物理、化学、バイオ、工学、材料学、測量、ナノサイエンス及びナノテクノロジー、分子電子工学及び分子力学、バイオ力学、摩擦などの幅広い分野での学術的及び産業的研究に有用である。
【0016】
本装置では、電気的、機械的、摩擦学的、分子電子的、量子電子的、バイオ力学的、磁電気的、磁気抵抗的などの幅広い物理特性を測定できる。組み込まれた測定システムは、振動及びノイズ軽減特性、カスタム電子機器、種々の温度、圧力、力、変形、磁界又は電界、環境(ガス又は液体)、プローブ整列アセンブリ、異なるプローブ、カスタムソフトウェア、及び、リアルタイムデータ取得及び処理機能を備える。本発明のシステムでは、多様性、機械的振動分離、複合圧電アクチュエーターの使用による安定性の向上、調和のとれた熱膨張係数による安定性の向上、プローブの予備的な整列によるシンプルな設計、リアルタイムノイズの分析、製造の容易性、原子サイズのサンプルの確固たる信号、高い信号・ノイズ比、小さい寄生性ノイズ(電気的及び機械的)、サンプル組成の確実性、コントロールされた環境(温度、圧力、湿度など)、高いサンプル安定性、モジュール式組立を含む多くの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】従来のMCBJタイプの方法によって形成された金のポイントコンタクトの電圧と時間とを示すグラフ図。
【図1B】図1Aの曲線の周波数領域を示すグラフ図。
【図2A】本発明の一実施形態に係るプローブを示す斜視図。
【図2B】図2Aにおける範囲Aを示す詳細図。
【図2C】図2Bにおける範囲Bを示す詳細図。
【図3A】本発明の他の実施形態に係るカバーを有するプローブを示す斜視図。
【図3B】カバーのない図3Aのプローブを示す斜視図。
【図3C】図3A及び3Bのプローブの磁気整列アセンブリを示す斜視図。
【図3D】図3Bにおける範囲Cを示す詳細図。
【図3E】図3A及び3Bにおけるプローブのチップ・基板領域を示す詳細図。
【図4】本開示のシステム及び方法を用いて、1つ,2つ及び4つの原子からなる高安定性、ノイズのない金のポイントコンタクトの例に対して、コンダクタンスと時間とを示すグラフ図。
【図5】本開示のシステム及び方法を用いて、径が1,2,3,4及び5原子の金のポイントコンタクトの測定されたI−V特性の例を示すグラフ図。
【図6】本開示のシステム及び方法を用いて、種々の振幅及び異なる周波数での金のポイントコンタクトの機械的伸びの例を示すグラフ図。
【図7】本発明の実施形態に係る分離システムを示す概略図。
【図8A】分離システム及びプローブに対する周波数応答の例を示すグラフ図。
【図8B】本発明のシステムでシステム及びプローブを最適化して機械的振動を軽減した場合における、分離及びプローブの周波数応答の例を示すグラフ図。
【図9A】実験室の床面における周波数のスペクトル分析を示すグラフ図。
【図9B】本発明の実施形態に係る分離システムのエアーテーブルにおける周波数のスペクトル分析を示すグラフ図であって、図9Aのグラフ図の最大振幅を標準とする。
【図9C】本発明の実施形態に係る分離システムの第1サスペンションステージにおける周波数のスペクトル分析を示すグラフ図であって、図9Aのグラフ図の最大振幅を標準とする。
【図9D】本発明の実施形態に係る分離システムの第2サスペンションステージにおける周波数のスペクトル分析を示すグラフ図であって、図9Aのグラフ図の最大振幅を標準とする。
【図10A】本発明のプローブ整列アセンブリ及びプローブを示す斜視図。
【図10B】図10Aのプローブ整列アセンブリ及びプローブを示す平面図。
【図10C】図10Bにおける範囲Dを示す詳細図。
【図10D】図10A及び10Bのプローブ整列アセンブリ及びプローブを示す側面図。
【図10E】図10Dの範囲Eを示す詳細図。
【図11A】本開示のチップ接近方法を示す。
【図11B】本開示のチップ接近方法を示し、ポイントコンタクトが形成されている。
【図12】チップ整列電子装置を示す概略図。
【図13】リアルタイムデータ取得ユニット、決定論的制御システム及び駆動電子機器に接続されたプローブの一実施形態を示す概略図。
【図14】リアルタイムデータ取得ユニット、決定論的制御システム及び駆動電子機器に接続されたプローブの他の実施形態を示す概略図。
【図15】1nm/sのチップ後退速度を有する種々の後退サイクルのコンダクタンスヒストグラムを示すグラフ図。
【図16】0.1nm/sのチップ後退速度を有する種々の後退サイクルのコンダクタンスヒストグラムを示すグラフ図。
【図17】測定プローブを構成する方法を示すフローチャート図。
【図18】材料の特性を測定する方法を示すフローチャート図。
【図19】原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバーとして構成された本発明のプローブを使って、室温で金を収縮して破裂する間における(a)コンダクタンス及び(b)力の同時測定を示すグラフ図であり、AFMのカンチレバーの後退速度は5nm/sである。
【図20】1Go以下で最後のコンダクタンス水平域がある(a)コンダクタンス軌跡と、(b)同時測定された力・伸び曲線を示すグラフ図であり、(a)の挿入図は、1Go以下の水平域に対するコンダクタンス軌跡及び力・伸び曲線の詳細を示し、AFMのカンチレバーの後退速度は5nm/sである。
【図21】1Go以下で最後のコンダクタンス水平域がある(a)コンダクタンス軌跡と、(b)同時測定された力・伸び曲線を示すグラフ図であり、AFMのカンチレバーの後退速度は5nm/sである。
【発明の開示】
【0018】
図2A〜2Cは、本発明の実施形態に関するものであって、ナノ又はナノメートル以下の単一サンプルの物理的特性を広範囲に測定できる計測プローブ10を示す。プローブ10は、例えばチタン等(材料の選択については後述する)の非反応金属で構成されるプローブ本体12を備える。プローブ10は、プローブ本体12に連結された基板14を備える。基板14は、上面18を備える。基板14は、測定される材料で構成される。他の実施形態では、測定される材料は液体からなり、そして、例えば保持リング16(これに限定されない)のような保持器具が、基板14の上面18に配置され、液体を収納する。他の実施形態では、基板14は、液体を収納するのに適した形状(例えば皿)で構成されている。基板14は、基板ホルダー42に保持される。基板ホルダー42は、基板台40に連結される。
【0019】
プローブ10は、プローブ本体12に連結されたチップ20を備える。図2A〜2Cに示される実施形態では、チップ20は、チップホルダー22を備える。チップ20は、チップホルダー22に付けられており、チップホルダー22はチップ台24によってプローブ本体12に連結されている。チップ20は、基板14に近いチップ端部26を備える。チップ端部26は、ポイント28を構成する。ポイント28は、寸法的に単一原子と同じ小ささである(例えば金に対しては0.35オングストローム)。チップ20は、例えば金、プラチナ、コバルト等で構成される。チップ20及び基板14は、種々の形状からなり、同一又は異なる材料で構成される。例えば、扁平な基板14及び尖ったチップ20の代わりに、互いに対向する二つの尖った部材(チップ及び基板)を用いることもできる。
【0020】
プローブ10は、電気入力部32を有する粗圧電(ピエゾ)アクチュエーター30を備える。一般的に、ピエゾは、ピエゾの電気入力部で受ける電気信号に基づいて、形状が変化する。本実施形態では、第1電気信号が電気入力部32に供給されると、粗ピエゾ30は、チップ20及び/又は基板14を互いに移動するように構成されている。即ち、粗ピエゾ30は、チップ20及び/又は基板14を互いに接近又は離れるように移動する。このように、粗ピエゾ30は、チップ20とプローブ本体12との間に配置され、チップ20を基板14から近接又は離れるように移動する。また、粗ピエゾ30は、基板14とプローブ本体12との間に配置され、基板14をチップ20から近接又は離れるように移動する。他の実施形態では、2つの粗ピエゾ30が用いられ、チップ20及び基板14の双方を互いに近接又は離すように移動する。
【0021】
プローブ10は、電気入力部36を有する細圧電(ピエゾ)アクチュエーター34を備える。上記した粗ピエゾ30と同様に、第2電気信号が電気入力部36に供給されると、細ピエゾ34は、チップ20及び/又は基板14を互いに移動するように構成されている。細ピエゾ34は供給される電気信号に対して少ない移動を生じさせるという点で、粗ピエゾ30と異なる(詳細については後述する)。
【0022】
粗ピエゾ及び細ピエゾ30,34は、X軸、Y軸及び/又はZ軸に沿って独立した移動が可能である。例えば、多自由度のピエゾアクチュエーターを選択できる。他の実施形態では、各ピエゾ(粗及び細)の1以上が用いられ、1以上の次元での移動が可能となる。
【0023】
プローブ10は、粗ピエゾ30の電気入力部32と電気通信される低域通過フィルター38を備える。これにより、低域通過フィルター(low-pass filter)38によって、第1電気信号をフィルター(濾過)して、第1電気信号の略全ての非直流成分(non-D.C. components)を取り除く。このように、粗ピエゾ30に供給されたフィルターされた電気信号は、電気的ノイズは略無い。その結果、粗ピエゾ30の不要な移動は略なく、これによって、粗ピエゾ30によるチップ20及び/又は基板14の不要な移動がない。
【0024】
本発明のプローブは、特別な使用及び需要に応じて異なって構成される。例えば、粗ピエゾは基板の下方に設けられ、細ピエゾはチップの後方に設けられる(逆も同様)。このようなプローブ11の一つが、図3A〜3Eに示される。このようなプローブ11は、ポイントコンタクトの伸び(elongation of the point contacts)を要求する小さなシステムの機械的特性の測定、それと同時に力、摩擦学、(バイオ)分子力学など、異なる摂動で他の物理的特性とともに測定することに適したものである。プローブ11は、図3Aでカバー46を備えており、図3Bで備えていない。カバー46は、ポート96を介して、実験中に不活性又は他のガスを導入するために用いられる。図3Eは、チップ30がカンチレバーチップである実施形態を示す。例えば、カンチレバーチップの撓みを従来技術の光学的又は他の方法で測定する。このようなプローブ11を原子間顕微鏡として用いることができる。
【0025】
チップ20と基板14との間にポイントコンタクトを形成するための複合ピエゾ(粗又は細)の使用によって、ポイントコンタクトをノイズの減少により安定的に構成できる。特に、第1電気信号からノイズをフィルターすることによって、粗ピエゾ30は、安定的なプラットフォーム(platform)を供給し、そのプラットフォームによって、細ピエゾ34は、チップ20及び/又は基板14の位置を細かく調整できる。ノイズは、(細ピエゾ34の電気入力部に供給される)第2電気信号に存在するかもしれないが、細ピエゾの小さな移動を生成するので、実質的に小さな影響でしかない。
【0026】
複合ピエゾの使用を説明するために、X軸に沿った変位を可能とする粗及び細ピエゾを考える。粗ピエゾの特性は、細ピエゾに対して、同じ駆動電圧に対して大きな変位となっている。限定されない実施形態において、100nm/Vの感度の粗ピエゾに適用される10Vの信号(10mVのノイズを有する)によって、1000nm(1μm)の変位が生じ、その位置で1nmの不確実性が伴う。それに対して、1nm/Vの感度の細ピエゾに適用される同一電圧によって、10nmの変位が生じ、その位置で0.01nm(10ピコメーター)の不確実性が伴う。本発明のプローブを用いた測定システムは、単原子(〜0.1nm)程度の小さなシステムの物理的特性を測定するという事実を踏まえると、粗ピエゾだけでは、位置に対して大きな不確実性があるので、特性を詳しく研究する際に不適当である。同時に、限定された変位能力、及びこのような小さな距離で基板に対するチップの配置調整から生じる複雑性によって、細ピエゾの使用だけでは不十分となる。通常は、基板に対してチップを配置するために、数ミクロンのチップ・基板間の変位距離が要求される。また、低温ではピエゾに対する変位距離は著しく減少する。例えば、一般的なピエゾでは、低温での変位距離は、室温での変位の90%ほどに減少する。さらに、粗ピエゾ及び細ピエゾを有する実施形態を説明する一方で、本発明は、さらに感度のよい複合ピエゾ(例えば、粗ピエゾ、中ピエゾ、細ピエゾ)の使用を含む。
【0027】
使用中、予め設定された大きさのポイントコンタクトが形成されるまで、または、基板14が基板14から所定の距離に運ばれるまで、粗ピエゾ30は、チップ20と基板14との間の隙間を縮めるために用いられる。(なお、上記の通り、プローブの構成によって、チップ20、基板14又は双方のいずれかは、互いに対して移動する。)粗ピエゾ30電気信号に対する電子装置は、非常に小さな遮断周波数(cutoff frequency)(〜0.01Hz)の低域通過フィルターされた信号(low pass filtered signal)を供給する。その結果、駆動信号のノイズ及び偏流(drift)が著しく低下するので、粗ピエゾ30の位置を非常に安定的にする。その結果、粗ピエゾ30は静止する。しかし、この安定性がポイントコンタクトでの偏流及びノイズを減少する一方、ポイントコンタクトの種々の物理的特性を精査する際に必要とされる粗ピエゾ30の動的特性(dynamic properties)も減少する。例えば、金属のポイントコンタクト(metal point contact)の負荷・撓み作用や単一分子の歪み特性を測定する際、異なる周波数でピエゾを振動させることが望まれる。一般的な実験でピエゾが数十Hzから数kHz以上に振動することを保証する一方、例えば0.01Hz以下の遮断周波数の低域通過フィルターされた信号は、百秒に一回よりも速い所望の振幅で振動しない。これらの場合、細ピエゾ34によって動的機能(dynamic capabilities)が提供される。このように、細ピエゾ34は、動的測定(dynamical measurements)に対して任意の高周波数で振動する。細ピエゾ34は、チップ20と基板14との間のポイントコンタクトの大きさをピコメートル分解能で変化させて、種々の物理的特性を解析するために用いられる。サンプルの大きさは、単一原子又は単一分子からそれ以上まで適用できる。
【0028】
図4は、本発明の実施形態を用いて1,2及び4原子で形成されたノイズのない金のポイントコンタクト(gold point contact)における、高安定の例を示す。所望の大きさ及び形状のポイントコンタクトがチップ及び基板の間に形成されると、種々の物理的特性の測定が行われる。本発明のプローブは、温度、圧力、力、伸び、電界、磁界、組成、またはこれらの組み合わせ、及び種々の化学環境(液体、気体など)に応じて、ナノメートルの大きさの材料の種々の物理的特性を測定できる。例えば、図5は、直径が1,2,3,4及び5原子の金のポイントコンタクトにおける測定されたI−V特性の例を示す。図6は、種々の振幅及び周波数の金のポイントコンタクトにおける機械的伸びの数例を示す。
【0029】
AFM(原子間力顕微鏡)モジュールとして構成される場合、本発明は、例えば力伸びデータ(force elongation data)を測定するために用いられる。図19〜21は、図3A〜3Eで示されるものと同様のプローブを試験したときに得られたデータを示す。これらのデータは例示であって、本発明を限定するものではない。図19は、室温で金を収縮して破裂する間における(a)コンダクタンス及び(b)力の同時測定を示すグラフ図である。上記(及び後の例)のAFMのカンチレバーの後退速度は5nm/sである。図20は、1Go以下でコンダクタンス水平域がある(a)コンダクタンス軌跡と、(b)同時測定された力・伸び曲線を示すグラフ図である。また、図20は、1Go以下の水平域に対するコンダクタンス軌跡及び力・伸び曲線の詳細を示す(挿入図参照)。図21は、1Go以下でコンダクタンス水平域がある(a)コンダクタンス軌跡と、(b)同時測定された力・伸び曲線を示すグラフ図である。
【0030】
プローブ10は、試験環境を変更するための部品44を備える。例えば、プローブ10は、基板14を加熱するための加熱手段を備える。同様に、プローブ10は、冷却するための冷却手段、磁界を導入するための磁石、又は、基板14を振動するための振動手段を備える。他の部品は、当業者にとっては明らかである。このような部品を、独立して、又は種々の組み合わせで用いることができる。プローブ10は、このような部品を位置決めするためのスロット52を備える。このようにして、部品は、所望の試験に応じて簡単に着脱できるようになっている。
【0031】
プローブ10は、プローブチャンバー(例えば、後述する分離系)にプローブ10を取り付けるための取付けパック(mounting puck)13を備える。プローブ10は、電気路がチップ20から電気的インターフェースに、及び基板14から電気的インターフェースに供給されるように構成され、測定装置を電気的インターフェースに接続することによって、チップ20と基板14との間における特性の電気的測定を形成できる。ワイヤーを使ったり、プローブ本体自身を使ったり、導電性塗料及び接着剤を使ったり、及び/又は既知の技術を使うことで、電気路を設けることができる。電気的インターフェースは、取付けパック13の近くに設けられる。プローブ10を取付けパック13で取り付けるときに、測定に必要な電気的接続が自動的に形成されるように、電気的インターフェースが取付けパック13自身となる。プローブ10は、取付けパック13とプローブ本体12との間の不導体15を備える。
【0032】
本発明のプローブの他の検討事項として、プローブの種々の部品の熱膨張係数を厳選することがある。種々の部品が、熱膨張係数で大きな不一致があると、温度が低いときに種々の部品の収縮又は膨張によって、チップは基板から離れて後退したり衝突したりする。チップが基板から遠く離れると、粗ピエゾの変位では不十分となり、実験が中止となる。反対に、基板に影響を与えるチップは、交換される必要がある。プローブの材料及び形状の厳選によって、チップは、全温度で基板に対して同一距離を維持する。このように互換性のある熱膨張係数を有する材料の厳選が、機械的可動部品、ステッピングモーター、他の機構を削減し、温度による機構変形を補償する。
【0033】
本発明に係るプローブが全体的に小さいことで、プローブを種々の環境、例えば、低温保持装置、真空チャンバー、磁界用ソレノイド、特別なガス環境などに組み込むことができる。このような実験は、振動分離系に収納される。外部ノイズ(電気的及び機械的)からの測定信号の分離、又は環境中のコントロール不能な変動(例えば、気温、湿気、不純物)から生じる寄生効果(parasitic effects)の分離が、全物理的特性の測定システムの目標である。しかし、原子サイズのポイントコンタクトで測定を行う間、このような分離は非常に重要である。外部の摂動から実験を分離する機能は、原子レベルのサンプルをしっかり測定するために必要である。機械的振動、電気的干渉、熱変動、又は気流は、これらの小さなスケールで多大な影響を与える。コントロール不能な機械的振動の影響の例を図1に示す
【0034】
図7は、プローブチャンバー102内に本発明のプローブを収納する分離システム100の概略図を示す。このような分離システム100は、メインチャンバー104を備え、メインチャンバー104は、電気システム内で電気的干渉が寄生性ノイズ(parasitic noise)を生成することを防止するファラデー箱106を備える。ファラデー箱106は、メインチャンバー104内の温度を一定に保つ断熱部108に並べられている。この開示に関与する小さなスケールシステムでは、種々の周囲温度でプローブの部品が拡大又は収縮される。普通の測定ではないに等しいが、プローブのチップと基板との間の距離の偏流が生じ、コントロール不能な種々のサンプル形状が生じる。メインチャンバーは、外部気流が侵入することを防止し、音響発砲体110がメインチャンバー104の内側に並べられて音波が内部で反響することを防止する。
【0035】
振動分離システムがメインチャンバー104内に形成され、エアーテーブル112及びサスペンションステージ11,116を備える。エアーテーブル112は、エアーシリンダーに設けられたステンレススチール薄板プラットフォームとなっており、エアーシリンダーは、プラットフォームの影響を和らげる。支持機構がエアーテーブル112の天板に設けられており、第1サスペンションステージ114(質量=m1)は第1スプリングダンパーシステム118(ばね定数=k1、減衰係数=c1)で吊り下げられている。第2サスペンションステージ116(m2)が、第2スプリングダンパーシステム120(k2、c2)で第1サスペンションステージから吊り下げられている。プローブチャンバー102が第2サスペンションステージ116に設けられており、種々のプローブアセンブリを収納できる。プローブチャンバー102は、種々の装置に応じて作成できる。例えば、プローブチャンバー102は、温度を上昇させるヒーター、低温研究のための低温保持装置、又は磁気的研究を行うためのソレノイドを備えることができる。プローブチャンバー102は、高真空下に配置されたり、所望のガス化学環境で浄化される。なお、振動を分離するために種々のステージを必要とすることがある。
【0036】
機械的振動分離は、このような分離システム100の重要な要素である。振動分離システムは、包囲環境内で機械的周波数をフィルターするように動作する。図8Aの分離曲線(isolation curve)152は、分離システムに対する周波数応答(frequency response)の例である。周波数f1で、分離システムの固有周波数と一致するピークがある。この周波数で振動の振幅が増幅される(増幅率>0)が、このピークの両側で振動が抑えられる(増幅率<0)。プローブ曲線(probe curve)150は、プローブアセンブリの周波数応答であり、これは固体アセンブリが非常に高い固有振動数f2を有することによる。組合せ曲線154は、システムに対する組合せ応答(combined response)であって、環境振動から最もよい分離が可能なようにできるだけ小さく形成されている。一般的に、機械的振動のほとんどが周波数f1とf2との間で下がり、特にできるだけ低くされる必要のある領域であって、これを得るために種々の方法がある。低い周波数にf1を押し下げ、高い周波数にf2を押し上げることで、増幅率を減少する。さらに、分離の追加ステージを追加することで、f1の両側の減少が、増幅率を減少する急勾配になる。これらの方法を用いることで本発明の分離システムを効果的にすることが図8Bに示される(固体曲線151,153,155は曲線150,152,154にそれぞれ対応する)。
【0037】
分離システムの質量、ばね定数及び減衰係数の値は、最低の周波数応答が得られるように厳選される。図9Aは、図9B〜9Dの全グラフを標準化するために用いられる床面での最大振幅を伴って、典型的な実験室の床面における周波数のスペクトル分析を示す。グラフにおいて、0Hzと80Hzとの間の周波数で、約17Hzで大きな急上昇がみられる。図9B,9C及び9Dは、エアーテーブルプラットフォーム、第1サスペンションステージ及び第2サスペンションステージでの同一の測定を示す。主となるグラフは図9Aと同一縮尺であって、振幅を直接比較できる。図9B〜9Dは、各例における振動を最も明確に示すために別々の縮尺の挿入図を有する。第2サスペンションステージ上で3つの異なるステージの固有周波数が測定できるまで、各追加ステージは測定振動を減少する。分離のこれら3つのレベルは、分離システムの周波数応答において、f1の両側に傾斜する勾配を増加する。プローブアセンブリの高機械的剛性を合わせたとき(高いf2)、組合せ周波数応答(combined frequency response)は、本発明のシステムを用いた測定での機械的振動の全信号を効果的に減少するのに十分なものとなる。追加振動がプローブに移動しないように特別な配慮がケーブル付属品になされる。
【0038】
プローブ整列アセンブリ
【0039】
追加の変位機械的部品に関する複雑化を削減するため、及び(上記した)本発明のプローブの全体サイズを減少するために、プローブは、図10A〜10Eに示すようなプローブ整列アセンブリ60を用いて、外部の整列工程を利用する。プローブ整列アセンブリ60を用いて、プローブチャンバー又は他のプラットフォームにプローブを取り付ける前に、基板に対してチップを整列する。プローブをプローブチャンバー又は他のプラットフォームに移動できるように、チップ・基板整列によって、チップが基板から数ミクロン又はミクロン以下だけ離して配置される。プローブ整列アセンブリ60内に、プローブ62のパック64がパックソケット66に差し込まれる。チップ68は、(例えば、接着剤、エポキシド(epoxied)、半田などで)チップホルダー70に付けられ、チップ台72に取り付けられる。チップホルダー70は、磁気コアピース74(magnetic core piece)を収納し、これは、磁石78によって押圧アセンブリ(pushing assembly)70の表面に保持される。絶縁プレート79(insulating plate)は、押圧アセンブリとチップホルダー70との間に設けられる。後述するチップ接近法でチップホルダー70を適切に配置すると、チップホルダー70は、チップ台72に付けられる。チップ台72からチップ68への伝導路を保持するために、伝導性接着剤、エポキシ、又は塗料が用いられる。このようなプローブ整列アセンブリ60は、硬化する間におけるチップ台72に対するチップ68の移動を防止する。
【0040】
チップホルダー70をチップ台72に配置するために、押圧アセンブリ76は、ステッピングモーター80(又は他の適切なアクチュエーター)を備え、プローブ62の基板82に対してチップホルダー70を押す。ステッピングモーター80は、基板82に対してチップ68を数ミクロン内で配置する。この配置を補助するために光学顕微鏡が用いられる。ステッピングモーター80及び押圧アセンブリ76の方法でチップ68が配置されると、自動チップ接近方法(automated tip approach method)によって基板82に対してチップ68が精密に並べられ、これによって、所望の最終の隙間(desired final gap)(数ミクロンからミクロン以下、又は数ナノメートル)を決定する。自動チップ接近方法は、チップ68と基板82との間の電気抵抗の測定に基づく自動電気的フィードバック近接(automated electrical feedback approach)を利用する。
【0041】
自動チップ接近方法の例を図11A〜11Bで示す。図11Aに示すように、粗ピエゾに対する電圧を次第にゆっくりと傾斜させることで、自動近接が始まる。各ステップで、フィードバックシステムが、図12に示すようなチップ整列電子装置を用いて、チップ・基板隙間(tip-substrate gap)を通じた測定可能な電気抵抗を調べる。チップ68と基板82との間に空隙(air gap)がある場合、抵抗が大きい(ほとんどのメートル範囲よりも高い)。チップ・基板隙間がナノメートル以下のオーダーとなる位置、又はチップが基板に接触するときまで、粗ピエゾが進むと、抵抗が測定可能になる。接触しない状態で粗ピエゾの電圧が最大レベルに達すると、粗ピエゾの電圧がゼロにリセットされ、ステッピングモーター80は押圧アセンブリ76を移動し、それによって、1ステップごとにチップホルダー70が前進し、粗ピエゾの電圧が、再度、傾斜上昇する(再度、各ステップの後に電気抵抗を測定する)。所望のポイントコンタクトが検出されると、図11Bの通り、粗ピエゾの電圧はゼロにリセットされ、自動近接が完了する。このポイントで、チップホルダー70はチップ台72に付けられる。チップホルダー70が付けられるとステッピングモーター80及び押圧アセンブリ76は後退し、プローブ62は、プローブ整列アセンブリ60のパックソケット66から取り除かれる。その後、プローブ62は測定のために用いられる。
【0042】
この方法で、整列の間に用いられる粗ピエゾの電圧に基づいて、チップ68と基板82との間の隙間を知る。この工程で基板82からチップ68を正確に離すことができ、同じ粗ピエゾの電圧を粗ピエゾに適用することで、(例えば、プローブチャンバー内で)プローブ62を使用する間に素早く回復できる。この方法によって、プローブから分離したステッピングモーターを使用できる。
【0043】
図3A〜3Cに示すプローブの他の実施形態では、磁気整列アセンブリ91を備える。チップ86は、細ピエゾ88に取り付けられる。この限定されない例では、チップ86はカンチレバーの形式となっており、ポイントコンタクトの変形の間に撓み及び力を測定することに用いられる。基板90は、基板ホルダー92に取り付けられる。基板90及びチップ86を取り付けた後、ステッピングモーター94を用いて磁気整列アセンブリ91を押す。測定するためにプローブ11を使用する間、種々のガスを導入するために用いられるポート96を通じて、ステッピングモーター94を取り付ける。その後、基板90がチップ86に対する所定の位置に配置されるまで、整列アセンブリ91を押し、(チップ・基板隙間の電気抵抗の測定を通じて)上記のように電気的にモニターされる。その後、ステッピングモーター94が取り外され、測定のためにプローブ11を用いる。図3Cの整列アセンブリ91の底面に磁石群93が示されており、ステッピングモーター94を取り外すと、磁石群が磁石プレート95を把持し、整列アセンブリ91を適所に固定する。ステッピングモーター94を取り外した後、プラグ97を挿入してプローブチャンバーを密封する。
【0044】
本発明は、測定プローブを構成する方法(100)のように実施される(例えば、図17参照)。方法(100)は、アクチュエーター及び磁石を有する押圧アセンブリを提供するステップ(103)を備える。押圧アセンブリは、上記したものと同様である。プローブ本体を提供し(106)、プローブ本体を押圧アセンブリの近くに配置する。プローブ本体は、例えば図2Aに示すプローブ本体のような基板及びチップ台を備える。付けられたチップを有するチップホルダーをプローブ本体のチップ台に配置する(109)。チップが基板の近くになるようにチップホルダーを配置し、押圧アセンブリの磁石で押圧アセンブリにチップホルダーを保持する。チップホルダーは、押圧アセンブリの磁石を引きつけるために構成されたチップホルダー磁石を備える。アクチュエーターを使って、所定の距離ごとにチップを基板に移動する(112)。限定されない例で、アクチュエーターがステッピングモーターの場合、押圧アセンブリは、ステッピングモーターの1ステップごとにチップを押す。チップ及び基板のパラメーターを測定し、チップから基板までの距離を測定する(115)。限定されない例で、チップと基板との間で抵抗(又はコンダクタンス)を測定し、隙間が存在するか及び/又はポイントコンタクトが形成されているかを測定する。所望のチップ・基板距離が決定されるまで、アクチュエーターを用いてチップを移動するステップ(112)と、チップ・基板パラメーターを測定するステップ(115)とを繰り返す(118)。例えば、ポイントコンタクトが形成されていると測定によって示されるまで、チップを基板に進める。所望のチップ・基板距離が決定されると、チップホルダーをプローブ本体に付ける(121)。このような押圧アセンブリ及び方法の使用を通じて、押圧アセンブリのアクチュエーターをプローブ本体に配置する必要がなく、これによって、使用する際にプローブ本体をより小さく安定的にすることができる。
【0045】
他の実施形態では、方法(100)は、プローブ本体に付けられ、且つ基板及び/又はチップを互いに移動するように構成された粗ピエゾを提供するステップ(124)を備える。例えば、粗ピエゾは、基板をチップに、チップを基板に、又はその双方を移動するように構成されている。チップホルダーを移動するために押圧アセンブリアクチュエーター(例えば、ステッピングモーターのステップ)を使用(112)する間、粗ピエゾを用いて(127)、所定の第2距離ごとに基板をチップに(又はチップを基板に、又はその双方)移動する。所定の第2距離(粗ピエゾの移動)は、アクチュエーターの所定距離より短く、粗ピエゾを使って、アクチュエーターの移動の間の増分距離(incremental distance)ごとに基板及び/又はチップを互いに近づくように移動する。チップ・基板パラメーターを測定し、チップ・基板距離を測定する(130)。所望のチップ・基板距離が決定されるまで、又は粗ピエゾが最大変位に達する(最大使用可能長さ)まで、粗ピエゾを使用するステップ(127)と、チップ・基板パラメーターを測定するステップ(130)とを繰り返す(133)。所望のチップ・基板距離を得られた場合、チップホルダーをプローブ本体に付ける(121)。粗ピエゾが動作の最大幅に達した場合、粗ピエゾの長さがリセットされ、アクチュエーターを用いて、所定の距離ごとにチップを基板に移動する(112)。
【0046】
データ取得、リアルタイム制御、電子装置及びカスタムソフトウェア
【0047】
リアルタイムデータ取得システム及びリアルタイムデータを分析するためのカスタムソフトウェアによって本発明のシステムを駆動する。図13は、リアルタイムデータ取得ユニット320及び決定論的制御システム330(deterministic control system)に接続されたプローブ310の一実施形態を示す。図14は、リアルタイムデータ取得ユニット420及び決定論的制御システム420に接続された他の実施形態のプローブ410を示す。コンピューターにインターフェースで接続されたリアルタイムシステムを使用することで、数ループの実行を必要とするカスタムソフトウェアを実行するための決定論的制御ループが提供される。カスタムソフトウェアは、カスタムルーティンを使用することでデータ取得及びハードウェア制御を制御するだけではなく、リアルタイム処理、表示、及び取得データを所望のフォーマットに実行することもできる。例えば、ソフトウェアは、コンダクタンスヒストグラム及びノイズ分析を計算、プロット及び保存できる。さらに、システムは、リアルタイムでアクセス可能な累積及び個々のファイル(cumulative and individual files)を生成する。説明のために、図15及び16は、1nm/s及び0.1nm/sのそれぞれで、チップを後退することによって、原子サイズの金のポイントコンタクトのコンダクタンスヒストグラムを示す。図15は、3000,6000,9000及び12,000の後退サイクル(retraction cycles)でのコンダクタンスヒストグラムを示す。本発明のソフトウェアを使用して、12,000後退サイクルを独立してアクセスできる。また、図15及び16に示すように、所定のステージポイントでの累積ファイルをアクセス及びプロットできる。チップに対する可変の後退速度(retraction rates)及び接近速度(approach rates)を有するサイクルと所定の速度で予め割り当てられた数のサイクルとを実行するためにソフトウェアを形成できる。ピエゾに対して可変の後退又は接近速度で予め割り当てられた振幅及び周波数を有するソフトウェアを入力することで、動的特性を調査できる。
【0048】
測定方法
【0049】
測定される材料に近接するチップを有する測定装置を提供するステップ(203)を備えた材料の物理的特性を測定する方法(200)のように、本発明を実施する(例えば、図18参照)。測定装置はプローブであって、上記の通り、それぞれに電気入力部を有する粗ピエゾ及び細ピエゾと備え、チップ及び/又は材料を互いに移動させるように構成されている。チップ及び材料を互いに接近するように、第1電気信号を粗ピエゾの電気入力部に提供し(206)、チップ及び/又は材料を互いに移動させる。第2電気信号を細ピエゾの電気入力部に提供し(209)、チップ及び/又は材料を互いに移動させる。チップを使用して(212)、材料の特性を測定する。例えば(限定されない)、チップと材料との抵抗又はレジスタンスを測定する。他の限定されない実施形態では、材料の伸びを測定するように、第2電気信号を振動する。第1電気信号をフィルターして(215)、信号から略全ての非直流値(non-D.C. values)を取り除く。このように、ノイズ及び信号偏流を第1電気信号からフィルターして、粗ピエゾがチップの安定的配置を与える。
【0050】
一又はそれ以上の特定の実施形態について本発明を説明しているが、本発明の思想及び範囲から外れることなく他の実施形態を形成できる。本発明は、請求項及び合理的な解釈によってのみ限定される。
【図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プローブ本体と、
(b)前記プローブ本体に連結された基板と、
(c)前記プローブ本体に連結され、前記基板の近くにあるチップと、
(d)第1電気入力部を有し、前記第1電気入力部によって第1入力信号を受信すると前記チップと前記基板との間で相対移動させるように構成された粗ピエゾと、
(e)前記第1電気入力部と電気通信され、前記第1入力信号を選択的にフィルターするように構成された低域通過フィルターと、
(f)電気入力部を有し、前記第2電気入力部によって第2入力信号を受信すると前記チップと前記基板との間で相対移動させるように構成された細ピエゾと、
を備えることを特徴とする測定プローブ。
【請求項2】
さらに、液体を収納するために基板の上面に配置された固定器具を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項3】
前記基板は、前記プローブ本体に対して固定され、
前記チップは、前記プローブ本体に対して移動可能であって、
前記粗ピエゾ及び前記細ピエゾは、前記チップ及び前記基板を互いに対して移動させるために前記チップを移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項4】
前記チップは、前記プローブ本体に対して固定され、
前記基板は、前記プローブ本体に対して移動可能であって、
前記粗及び細ピエゾは、前記チップ及び基板を互いに対して移動させるために前記基板を移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項5】
前記チップは、前記プローブ本体に対して移動可能であって、
前記基板は、前記プローブ本体に対して移動可能であって、
前記粗及び細ピエゾは、前記チップ及び基板を互いに対して移動させるために前記基板及びチップを移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項6】
さらに、第1ばね定数の第1スプリングと第2ばね定数の第2スプリングとを有する分離プラットフォームを備え、前記第1及び第2スプリングは、支持装置から前記分離プラットフォームを吊り下げ、前記プローブ本体は、前記分離プラットフォームに付けられることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項7】
前記第1及び第2入力信号の同一変化は、前記粗ピエゾによって生じる移動を、前記細ピエゾによって生じる移動よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項8】
前記チップは、カンチレバーからなることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項9】
前記チップは、原子間力顕微鏡のチップからなることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項10】
前記チップは、ニードルチップからなることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項11】
さらに、チップホルダーを備えており、前記チップは、前記チップホルダーに付けられることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項12】
前記第2電気信号は時間とともに変化して、前記細ピエゾは前記チップと基板との間の距離を変化させることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項13】
さらに、前記基板を加熱するための加熱手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項14】
さらに、前記基板を冷却するための冷却手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項15】
さらに、前記基板に磁界を適用するための磁石を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項16】
(a)プローブ本体と、
(b)前記プローブ本体に連結され、基板ホルダーを固定するように構成された基板台と、
(c)前記プローブ本体に連結され、前記基板台の近くにあって、チップホルダーを固定するように構成されたチップ台と、
(d)第1入力信号を第1電気入力部で受信すると前記チップ台と前記基板台との間の相対移動を生じさせるための粗手段と、
(e)前記粗ピエゾの前記第1電気入力部と電気通信され、前記第1入力信号を選択的にフィルターするように構成された低域通過フィルターと、
(f)第2入力信号を第2電気入力部で受信すると前記チップ台と基板台との間の相対移動を生じさせるための細手段と
を備えることを特徴とする測定プローブ。
【請求項17】
前記粗及び細手段は互いにピエゾからなることを特徴とする請求項16に記載の測定プローブ。
【請求項18】
さらに、前記基板台に固定され、基板を固定するように構成された基板ホルダーを備えることを特徴とする請求項16に記載の測定プローブ。
【請求項19】
さらに、前記チップ台に固定され、チップを固定するように構成されたチップホルダーを備えることを特徴とする請求項16に記載の測定プローブ。
【請求項20】
(a)測定される材料の近くにあるチップを有する測定装置と、第1電気入力部を有し、前記チップと基板との間に相対移動を生じさせるように構成された粗ピエゾと、第2電気入力部を有し、前記チップと基板との間に相対移動を生じさせるように構成された細ピエゾとを備えるステップと、
(b)前記チップ及び/又は前記材料を互いに対して移動させるために、第1電気信号を前記第1電気入力部に供給するステップと、
(c)前記チップ及び/又は前記材料を互いに対して移動させるために、第2電気信号を前記第2電気入力部に供給するステップと、
(d)前記材料の特性を測定するために、前記チップを使用するステップと
を備えることを特徴とする材料の特性を測定する方法。
【請求項21】
前記特性は、コンダクタンス、伸び、力及び抵抗の群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに、略全ての非直流成分を取り除くために、前記第1電気信号をフィルターするステップを備えることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記チップは、カンチレバーチップからなり、前記チップを使って前記材料の特性を測定し、さらに、前記カンチレバーチップの撓みを測定するためにレーザーを前記カンチレバーチップに反射することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
(a)アクチュエーター及び磁石を有する押圧アセンブリを設けるステップと、
(b)前記押圧アセンブリの近くにあって、基板及びチップ台を有するプローブ本体を設けるステップと、
(c)前記プローブ本体の前記チップ台にチップを有し、前記チップが前記基板の近くにあって、前記磁石によって前記押圧アセンブリに対して保持されるチップホルダーを配置するステップと、
(d)所定の距離ごとに前記チップを前記基板に移動するために、前記アクチュエーターを使用するステップと、
(e)前記チップから前記基板への距離を決定するために、前記チップ及び基板のパラメーターを測定するステップと、
(f)所望の距離が決定されるまで(d)及び(e)のステップを繰り返すステップと、
(g)前記チップホルダーを前記チップ台に付けるステップと
を備えることを特徴する測定プローブを構成する方法。
【請求項25】
さらに、(a)前記基板を前記チップに対して移動するように構成された粗ピエゾを設けるステップと、
(b)所定の距離に対して前記チップを前記アクチュエーターで移動し、前記所定の距離よりも小さい所定の第2距離で前記基板を前記チップに移動するために、前記粗ピエゾを使用するステップと、
(c)前記チップから前記基板への距離を決定するために、前記チップ及び基板のパラメーターを測定するステップと、
(d)所望の距離が決定されるまで、又は、前記粗ピエゾが最大使用可能長さに達するまで、(b)及び(c)のステップを繰り返すステップと
を備えることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらに、前記粗ピエゾを初期設定にリセットするステップを備えることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記押圧アセンブリの前記アクチュエーターは、ステッピングモーターからなることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記パラメーターは、前記チップと前記基板との間の電気抵抗からなることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項1】
(a)プローブ本体と、
(b)前記プローブ本体に連結された基板と、
(c)前記プローブ本体に連結され、前記基板の近くにあるチップと、
(d)第1電気入力部を有し、前記第1電気入力部によって第1入力信号を受信すると前記チップと前記基板との間で相対移動させるように構成された粗ピエゾと、
(e)前記第1電気入力部と電気通信され、前記第1入力信号を選択的にフィルターするように構成された低域通過フィルターと、
(f)電気入力部を有し、前記第2電気入力部によって第2入力信号を受信すると前記チップと前記基板との間で相対移動させるように構成された細ピエゾと、
を備えることを特徴とする測定プローブ。
【請求項2】
さらに、液体を収納するために基板の上面に配置された固定器具を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項3】
前記基板は、前記プローブ本体に対して固定され、
前記チップは、前記プローブ本体に対して移動可能であって、
前記粗ピエゾ及び前記細ピエゾは、前記チップ及び前記基板を互いに対して移動させるために前記チップを移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項4】
前記チップは、前記プローブ本体に対して固定され、
前記基板は、前記プローブ本体に対して移動可能であって、
前記粗及び細ピエゾは、前記チップ及び基板を互いに対して移動させるために前記基板を移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項5】
前記チップは、前記プローブ本体に対して移動可能であって、
前記基板は、前記プローブ本体に対して移動可能であって、
前記粗及び細ピエゾは、前記チップ及び基板を互いに対して移動させるために前記基板及びチップを移動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項6】
さらに、第1ばね定数の第1スプリングと第2ばね定数の第2スプリングとを有する分離プラットフォームを備え、前記第1及び第2スプリングは、支持装置から前記分離プラットフォームを吊り下げ、前記プローブ本体は、前記分離プラットフォームに付けられることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項7】
前記第1及び第2入力信号の同一変化は、前記粗ピエゾによって生じる移動を、前記細ピエゾによって生じる移動よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項8】
前記チップは、カンチレバーからなることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項9】
前記チップは、原子間力顕微鏡のチップからなることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項10】
前記チップは、ニードルチップからなることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項11】
さらに、チップホルダーを備えており、前記チップは、前記チップホルダーに付けられることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項12】
前記第2電気信号は時間とともに変化して、前記細ピエゾは前記チップと基板との間の距離を変化させることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項13】
さらに、前記基板を加熱するための加熱手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項14】
さらに、前記基板を冷却するための冷却手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項15】
さらに、前記基板に磁界を適用するための磁石を備えることを特徴とする請求項1に記載の測定プローブ。
【請求項16】
(a)プローブ本体と、
(b)前記プローブ本体に連結され、基板ホルダーを固定するように構成された基板台と、
(c)前記プローブ本体に連結され、前記基板台の近くにあって、チップホルダーを固定するように構成されたチップ台と、
(d)第1入力信号を第1電気入力部で受信すると前記チップ台と前記基板台との間の相対移動を生じさせるための粗手段と、
(e)前記粗ピエゾの前記第1電気入力部と電気通信され、前記第1入力信号を選択的にフィルターするように構成された低域通過フィルターと、
(f)第2入力信号を第2電気入力部で受信すると前記チップ台と基板台との間の相対移動を生じさせるための細手段と
を備えることを特徴とする測定プローブ。
【請求項17】
前記粗及び細手段は互いにピエゾからなることを特徴とする請求項16に記載の測定プローブ。
【請求項18】
さらに、前記基板台に固定され、基板を固定するように構成された基板ホルダーを備えることを特徴とする請求項16に記載の測定プローブ。
【請求項19】
さらに、前記チップ台に固定され、チップを固定するように構成されたチップホルダーを備えることを特徴とする請求項16に記載の測定プローブ。
【請求項20】
(a)測定される材料の近くにあるチップを有する測定装置と、第1電気入力部を有し、前記チップと基板との間に相対移動を生じさせるように構成された粗ピエゾと、第2電気入力部を有し、前記チップと基板との間に相対移動を生じさせるように構成された細ピエゾとを備えるステップと、
(b)前記チップ及び/又は前記材料を互いに対して移動させるために、第1電気信号を前記第1電気入力部に供給するステップと、
(c)前記チップ及び/又は前記材料を互いに対して移動させるために、第2電気信号を前記第2電気入力部に供給するステップと、
(d)前記材料の特性を測定するために、前記チップを使用するステップと
を備えることを特徴とする材料の特性を測定する方法。
【請求項21】
前記特性は、コンダクタンス、伸び、力及び抵抗の群から選択されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに、略全ての非直流成分を取り除くために、前記第1電気信号をフィルターするステップを備えることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記チップは、カンチレバーチップからなり、前記チップを使って前記材料の特性を測定し、さらに、前記カンチレバーチップの撓みを測定するためにレーザーを前記カンチレバーチップに反射することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
(a)アクチュエーター及び磁石を有する押圧アセンブリを設けるステップと、
(b)前記押圧アセンブリの近くにあって、基板及びチップ台を有するプローブ本体を設けるステップと、
(c)前記プローブ本体の前記チップ台にチップを有し、前記チップが前記基板の近くにあって、前記磁石によって前記押圧アセンブリに対して保持されるチップホルダーを配置するステップと、
(d)所定の距離ごとに前記チップを前記基板に移動するために、前記アクチュエーターを使用するステップと、
(e)前記チップから前記基板への距離を決定するために、前記チップ及び基板のパラメーターを測定するステップと、
(f)所望の距離が決定されるまで(d)及び(e)のステップを繰り返すステップと、
(g)前記チップホルダーを前記チップ台に付けるステップと
を備えることを特徴する測定プローブを構成する方法。
【請求項25】
さらに、(a)前記基板を前記チップに対して移動するように構成された粗ピエゾを設けるステップと、
(b)所定の距離に対して前記チップを前記アクチュエーターで移動し、前記所定の距離よりも小さい所定の第2距離で前記基板を前記チップに移動するために、前記粗ピエゾを使用するステップと、
(c)前記チップから前記基板への距離を決定するために、前記チップ及び基板のパラメーターを測定するステップと、
(d)所望の距離が決定されるまで、又は、前記粗ピエゾが最大使用可能長さに達するまで、(b)及び(c)のステップを繰り返すステップと
を備えることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらに、前記粗ピエゾを初期設定にリセットするステップを備えることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記押圧アセンブリの前記アクチュエーターは、ステッピングモーターからなることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記パラメーターは、前記チップと前記基板との間の電気抵抗からなることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−528341(P2012−528341A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513329(P2012−513329)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036714
【国際公開番号】WO2010/138904
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(506194117)ザ リサーチ ファウンデイション オブ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク (11)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036714
【国際公開番号】WO2010/138904
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(506194117)ザ リサーチ ファウンデイション オブ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク (11)
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