説明

測定具および、それを用いた測定用セル

【課題】本発明は、測定具および、それを用いた測定用セルに関するもので、測定精度をさらに高めることを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、純水11に接触して、その純水11中に存在する物質量を測定する測定電極3を備え、前記測定電極3は、基材3A表面に、所定空間をおいて対向配置した電極16、17と、電極16、17表面、およびこれらの電極16、17間の基材3A表面を覆った保護膜35とを有し、前記保護膜35は、前記純水11に対する可溶性材料により形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば口腔内の微生物数(細菌)を測定するための測定具と、それを用いた測定用セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている微生物数を測定するための測定具は、以下のような構成となっていた。
【0003】
すなわち、測定液に接触して、その測定液中に存在する微生物数を測定する測定電極を備え、前記測定電極は、基材表面に、所定空間をおいて対向配置した第1、第2の電極を有していた。
【0004】
また、この測定具用いて微生物数の測定を実施する測定セルには、測定液が収納される容器内に、前記測定具を設けた構成となっており、前記第1、第2の測定電極に集菌される微生物数が測定されるようになっていた(たとえば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−207431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例における課題は、測定精度をさらに高くすることであった。
【0007】
すなわち、この測定具においては、基材として用いたPET上に蒸着させた銀膜に対して、レーザー加工を行って、第1、第2の電極を形成するのであるが、この電極を露出した状態で保管していると、その電極形成時から使用時までの刻々と変化する状況によって、その第1、第2の電極間、および、これらの第1、第2の電極間の基材表面に目に見えない付着物が付着していく。
【0008】
また、その際の、微妙な保管状態によって、第1、第2の電極間に付着する、付着物の質とか量とかが変わってくるのである。
【0009】
その結果として、測定時において、初期値にばらつきが生じてしまい、測定精度にばらつきが発生するものとなっていた。
【0010】
そこで本発明は、測定精度をさらに高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そしてこの目的を達成するために本発明は、測定液に接触して、その測定液中に存在する物質量を測定する測定電極を備え、前記測定電極は、基材表面に、所定空間をおいて対向配置した第1、第2の電極と、これらの第1、第2の電極表面、およびこれらの第1、第2の電極間の基材表面を覆った保護膜とを有し、前記保護膜は、前記測定液に対する可溶性材料により形成し、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明は、測定液に接触して、その測定液中に存在する物質量を測定する測定電極を備え、前記測定電極は、基材表面に、所定空間をおいて対向配置した第1、第2の電極と、これらの第1、第2の電極表面、およびこれらの第1、第2の電極間の基材表面を覆った保護膜とを有し、前記保護膜は、前記測定液に対する可溶性材料により形成したものであるので、測定精度をさらに高めることができるものとなる。
【0013】
すなわち、本発明の測定具においては、基材として用いた、例えばPET上に蒸着させた銀膜に対して、レーザー加工を行って、第1、第2の電極を形成した直後に、この第1、第2の電極を、測定液に対して可溶性の材料にて覆い、第1、第2の電極の保護膜を形成するようにした。
【0014】
そして、その測定具を用いた測定時においては、測定を開始する前に、測定対象物を含む測定液を、前記第1、第2の電極を覆った保護膜に接触させる。このとき、この保護膜は、測定液に対して可溶性の材料にて形成しているため、徐々に測定液中に溶け出していき、最後には、この保護膜に保護されていた第1、第2の電極が、その電極形成直後のクリアな状態を保持したままで表出してくるものとなっている。
【0015】
その結果として、このクリアな測定電極で測定を実施することができるので、初期値にばらつきが生ずることがなくなり、測定精度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を用いた細菌数測定装置の斜視図
【図2】本発明の一実施形態を用いた細菌数測定装置の斜視図
【図3】本発明の一実施形態を用いた細菌測定用セルの断面図
【図4】本発明の一実施形態を用いた測定電極の正面図
【図5】本発明の一実施形態を用いた測定電極の拡大正面図
【図6】本発明の一実施形態を用いた細菌数測定装置の斜視図
【図7】その電気的なブロック図
【図8】本発明の一実施形態を用いた細菌測定用セルの制作工程を表す図
【図9】その測定電極の部分拡大図
【図10】その測定電極の部分拡大図
【図11】その使用説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の一実施形態を、口腔内の細菌数を測定する測定電極と、それを用いた細菌測定用セルに適用し、この細菌測定用セルを用いた細菌数測定装置を例として、添付図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、口腔内の細菌数を測定するための細菌数測定装置を示し、その上面には、図3に示す細菌測定用セル1を装着する装着部2を備えている。
【0019】
また、この細菌数測定装置の内部には、図3に示す細菌測定用セル1の測定電極3に接続される、測定部(図7にも示す)4を備えた構成となっている。
【0020】
前記装着部2は、上面が開口部5となった円筒状の構成となっており、この開口部5から図2のごとく細菌測定用セル1の下部が挿入される。
【0021】
図3は、その細菌測定用セル1の断面図である。
【0022】
まずこの細菌測定用セル1は、上面が開口したポリカーボネート製の有底筒状の容器6と、この容器6内を、下方の測定空間7と上方の測定液収納空間8に仕切る薄膜9と、この容器6の前記測定液収納空間8上を覆った薄膜10とを備え、前記測定空間7内の中部には、上述した測定電極3を設け、前記測定液収納空間8内には、測定液として純水11を設けた構成となっている。
【0023】
なお、薄膜9、薄膜10は、金属箔、具体的にはアルミニウム箔によって構成しており、薄膜9を、容器6の測定液収納空間8の下部に設けた段部12にその外周を固定し、薄膜10を、容器6の測定液収納空間8の上部開口部に設けたフランジ13にその外周を固定している。
【0024】
図4、図5は、測定電極3を説明するための図であり、図4において、測定電極3の下端には、端子14、15が設けられており、測定電極3の上方には、櫛歯状の電極16、17が設けられている。これら電極16、17は、その対向部の外方に引き出し部16a、17aを有しており、この引き出し部16a、17aが端子14、15に、それぞれ連結されている。
【0025】
この櫛歯状の電極16、17は、長い経路に渡って、両者が極めて接近した対向状態となっており、これにより、両者間で静電容量が発生することになっている。
【0026】
そして、細菌の数が多いと、これら電極16、17間の静電容量も大きくなり、この静電容量の変化から細菌数を測定するようになっている。なお、以上の端子14、15、電極16、17、引き出し部16a、17aは何れも絶縁性の基材3A表面に形成されている。
【0027】
図6は、装着部2に図3に示す細菌測定用セル1を装着後に、この細菌測定用セル1の容器蓋として、たとえばキャップ18を被せたものであり、このキャップ18のほぼ中央部には、棒状の検体採取用担体19(例えば綿棒)を構成する棒体20が貫通する貫通孔18Aを設けている。
【0028】
検体採取用担体19は、図7に示すごとく、その下端部に綿を丸めた採取部21を設けたものであり、本実施形態においては、まず、この検体採取用担体19の棒体20を持って、採取部21で患者の口腔内をなぞり、これにより口腔内から細菌を採取部21によって採取する。
【0029】
次に、この検体採取用担体19の上端部(採取部21の設けられていない端部)を、図3に示す細菌測定用セル1の薄膜10の中央部にのせ、その後、そのまま真下に突き降ろすことで、薄膜10、薄膜9を順次突き破る。そして、薄膜10、および薄膜9を突き破った孔を、検体採取用担体19の棒体20で広げていくと、測定液収納空間8内に検査液として保持されていた純水11は、測定空間7へと流れ込み、測定電極3は、純水11の水面下に水没した状態となる。
【0030】
つぎに、検体採取部21を下にして、図7に示すごとく、この採取部21を細菌測定用セル1の測定空間7へと差し込み、最後に、検体採取用担体19の棒体20の上端を、キャップ18の貫通孔18Aに貫通させて、キャップ18を容器6に被せる。すると、採取部21も、測定空間7において純水11の水面下に配置、水没した状態になる。
【0031】
この状態では、細菌測定用セル1の容器6の上方で、キャップ18の貫通孔18Aが、検体採取用担体19の棒体20の上部を可動自在に支持する支持部となっており、この支持部より下方の棒体20、および採取部21は、前記支持部を緩やかな軸として、水平方向に回転するようになる。
【0032】
さて、図7は、電気的なブロック図を示しており、容器6の底面下方には、ロータ22が配置され、このロータ22には、磁石23、24が配置されている。
【0033】
すなわち、ロータ22を、その駆動部であるモータ25で回転させれば、磁石23、24の回転に伴い、容器6内の底部に可動自在に配置した棒状の攪拌体26が回転し、これにより、攪拌体26は、検体採取用担体19の採取部21を、衝打することになる。
【0034】
その結果として、採取部21は、叩きつけられるような衝撃を受け、採取部21で採取した口腔内の細菌を、純水11内へと効率よく流出させられるものとなっている。
【0035】
また、棒体20は、この棒体20を支持する貫通孔18Aを頂点とした円錐を描くように運動することになるので、測定空間7内においては、採取部21の回転力のみならず、この採取部21に隣接する棒体20の回転力も、純水11を攪拌する力となり、この結果として、測定空間7内における純水11は、上方の電極16、17にも十分到達する大きな攪拌作用が与えられた状態となる。
【0036】
そして、上記流出動作が終了すると、電極16、17を用いた細菌の検出が開始される。
【0037】
さて、この測定について図7を用いて説明を続けると、純水11内へと取り出された細菌を集めるために、電源部27によって、集菌のための交流電圧が測定電極3の端子14、15(図4)に印加される。すると、純水11内の細菌は、電圧印加による誘電泳動力により、プラスとマイナスに分極され、その結果として、その細菌は図5に示す櫛歯状の電極16、17部分に吸引されることになる。この時、電極16、17間に集まる細菌の数が多ければ、静電容量が大きくなる。
【0038】
図7の測定部4は、制御部28の指示により、この静電容量の大きさを測定してその結果を演算部29に送る。この演算部29では、測定部4の測定結果をもとに静電容量の変化率を求め、従来と同じ手法で細菌数に換算して、制御部28を介して表示部30へと表示をすることになる。
【0039】
なお、図7の操作部31は、以上の一連の動作に対する指示入力をするためのものである。
【0040】
さて、本実施形態における最も大きな特徴点は、測定電極3において、その基材3Aの一例として用いたPET表面上に蒸着した銀膜に対して、レーザー加工を行って、櫛歯状の電極16、17を形成するのであるが、これら櫛歯状の電極16、17を形成した直後に、この櫛歯状の電極16、17を、測定液である純水11に対して可溶性の材料にて覆い、電極16、17の保護膜(図8、図9の35)を形成するようにしたことである。
【0041】
そして、その保護膜35で覆われた電極16、17を用いた測定時においては、測定を開始する前に、細菌を含む純水11を、前記保護膜35に接触させる。このとき、この保護膜35は、測定液に対して可溶性の材料にて形成しているため、徐々に純水11に溶け出していき、最後には、この保護膜35に保護されていた電極16、17が、その電極形成直後のクリアな状態を保持したままで表出してくるのである。
【0042】
その結果として、このクリアな測定電極3で測定を実施することができ、初期値にばらつきが生ずることがなくなり、測定精度をさらに高めることができるものである。
【0043】
これについて、以下に詳細に説明する。
【0044】
図8は、測定電極3、および、それを用いた細菌測定用セル1の製作工程を示す図で、図8(a)では、測定電極3の基材3AとなるPET表面上に銀を蒸着したものがロール状態となっている。
【0045】
つぎに、図8(b)において、このロール状態から、測定電極3を切り出して、個片に分離し、この個片に対して加熱アニール処理を実施する。この加熱アニール処理によって、PET表面上の銀の電気抵抗が低減され、また、PETの寸法も、これ以降の熱処理(例えばレジスト処理)に対して安定したものとなる。
【0046】
図8(c)においては、PET表面上の銀に対して、図4、図5に示す端子14、15、電極16、17、引き出し部16a、17aを、レーザー加工にて形成する。
【0047】
図10は、このレーザー加工した電極16、17の拡大図であり、この図10を用いてレーザー加工について説明する。図10においては、測定電極3の基材3Aとして用いたPET表面上に銀が厚さ100nm程度で蒸着されており、スポット径が例えば30μmのレーザーによって、電極16、17間の溝32が加工され、その結果、円が重なり合い連続した形状で、溝32が形成されている。
【0048】
なお、この溝32の両側面には、レーザー加工によって銀がはじかれ除去された結果、高さ100〜300nm程度のバリ33が、溝32に沿って壁状に立ち上がることになる。
【0049】
このとき、重要なのは、壁状のバリ33における溝32側の壁面34であり、測定時においては、図10に示すごとく、溝32を挟んだ二つの壁面34間に、細菌34aが集菌されることになるのである。
【0050】
そしてまた、レーザー加工が行われた直後の、この状態おいては、壁面34は、有機物等の付着が少ない状態であり、つまり、細菌の測定に好適なクリアな状態となっているのである。
【0051】
しかしながら、このクリアな状態の電極16、17を、空気中に露出したままの状態で保管していると、その電極形成時から使用時までの刻々と変化する状況によって、その電極16、17表面および電極16、17間の基材3Aに、目に見えない付着物(有機物等)が徐々に付着していくことになる。
【0052】
また、その際の、微妙な保管状態によって、電極16、17間に付着する、付着物の質とか量とかが変わってきてしまい、この状態で測定を行うと、測定の初期値にばらつきが生じてしまうことになる。
【0053】
これを防止するために、本実施形態においては、図8(d)において、壁面34を保護するため、図9(b)に示すごとく、電極16、17表面、および電極16、17間の基材3Aを覆う保護膜35を形成するのである。この保護膜35は、細菌の測定の直前まで保持されることになり、電極16、17を、細菌の測定に好適なクリアな状態で保護していくことになる。
【0054】
なお、この保護膜35は、純水11に対して可溶性の材料により形成しており、本実施形態においては、その一例として、ショ糖脂肪酸エステルを使用する。このショ糖脂肪酸エステルは、親和性の性格を持つ水酸基を有するショ糖と、親油性の脂肪酸で構成された界面活性剤である。
【0055】
この保護膜35は、菌を測定する前に取り除くことになるので、取り除きやすいように、その厚さは薄く形成することが望ましいが、本実施形態においては、電極16、17を十分に保護するために、保護膜35の厚さを、溝32の両側に形成された壁状のバリ33の高さよりも大きくしている。
【0056】
具体的には、バリ33の高さが100〜300nm程度であるので、保護膜35の厚さを、数μmの大きさで形成し、電極16、17の表面を覆っている。これにより、電極16、17を十分に保護できるものとなっている。
【0057】
つぎに、図8(e)においては、図9(c)に示すごとく、電極16、17の外方に引き出した、引き出し部16a、17aに対して、レジスト加工を行い、レジスト膜36で覆う。具体的には、電極16、17の周囲に、四角い窓35Aを設け、この窓35Aの外部をレジスト膜36でレジスト処理することになる。
【0058】
このレジスト処理に際して、本実施形態においては、レジスト膜の内周部分、つまり窓35Aの周囲が、保護膜35の外周部分と重なる箇所が発生しているが、保護膜35のショ糖脂肪酸エステルは、前述のごとく、親油性の脂肪酸で構成されているために、レジスト印刷を実施するときに、レジスト溶液に含まれる溶剤に溶け込む事になる。
【0059】
そして、この状態で、レジスト加工の加熱処理が実施されると、レジスト膜36は熱によって硬化していく。そのため、重なった保護膜35は、レジスト膜36と同化した状態で存在することになり、その結果として、保護膜35とレジスト膜36の重なった部分も、他の部分のレジスト膜36と同じ強度でレジストすることができる。
【0060】
このとき、本実施形態においては、保護膜35の厚みよりも、レジスト膜36の厚みを大きくしている。具体的には、保護膜35の厚さは数μmとしているのに対して、レジスト膜36の厚さは、20〜40μmとしている。つまり、保護膜35の厚さに対して、レジスト膜36の厚さを十分に大きい厚さで形成しているので、保護膜35とレジスト膜36の重なった部分の保護膜35は、レジスト膜36に十分に溶け込むことができる。
【0061】
その後、図8(f)において、作成した測定電極3とともに、細菌測定用セル1が一体成型され、図8(g)において、細菌測定用セル1の容器6内の底部に、攪拌体26を配置した後に、測定空間7の上面を薄膜9で封止し、図8(h)において、容器6上方の測定液収納空間8内を純水11で満たし、その上面を薄膜10で封止する。
【0062】
そして、図8(i)のごとく、細菌測定用セル1を包装袋37で覆い、この状態で、細菌の測定時まで保管することになる。
【0063】
ここで、図11を用いて、細菌の測定時の説明を行う。
【0064】
まず、図11(a)では、検体採取用担体19の採取部21で患者の口腔内をなぞり、これにより口腔内から細菌を採取する。一方、細菌測定用セル1を細菌数測定装置にセットする。
【0065】
つぎに、細菌測定用セル1の薄膜10、薄膜9を破り、容器6上方の測定液収納空間8の純水11を、下方の測定空間7へと流し込むと、図11(b)に示すごとく、測定電極3を純水11に水没させることができ。
【0066】
この時、測定電極3の電極16、17間の表面を覆った保護膜35は、純水11に対して可溶性の材料を用いているため、純水11に接した表面から、砂糖が水に溶けていくように、純水11に徐々に溶け出していくことになる。
【0067】
なお、純水11に溶け出した保護膜35は、純水11に完全に溶け込むために、細菌の測定の邪魔をすることもなく、また、純水11に対する保護膜35の絶対量を小さくしているために、純水11の導電率を変化させることもない。
【0068】
そして、この測定空間7に、採取部21を差し込み、測定電極3と同様に採取部21も水没させる。
【0069】
図11(c)では、図7の制御部28がモータ25を3000rpmで回転駆動する。これにより、容器6内の底部に可動自在に配置した棒状の攪拌体26も3000rpmで高速回転することになり、そのため、攪拌体26は、検体採取用担体19の採取部21を衝打し、この採取部21から、採取した口腔内の細菌が、純水11内へと効率よく流出していくことになる。
【0070】
この時、上述したごとく、攪拌体26が高速回転することにより、純水11は、容器6の中央部に渦が形成されるほどに大きく攪拌され、上方の電極16、17にも十分到達する大きな攪拌作用が与えられた状態となる。
【0071】
すなわち、図11(b)において、測定電極3を純水11に水没させた時から、測定電極3の電極16、17間の表面を覆った保護膜35は、純水11に接した表面から、純水11に徐々に溶け出していたのであるが、攪拌体26が回転を開始したこの時以降は、攪拌体26によって引き起こされる大きな攪拌水流が、絶え間なく電極16、17に当たることとなり、保護膜35の純水11への溶出を加速することとなる。
【0072】
また、電極16、17の溝32の両側面には、図10に示すごとく、バリ33が、溝32に沿って壁面を作るように立ち上がっており、図5に示すごとく、この壁面は長い経路にわたって形成されている。
【0073】
しかしながら、このように、狭く長く形成された壁面間においても、攪拌体26の高速回転により発生させた大きな攪拌水流で、この壁面間の溝32を繰り返し、洗い出すことができ、溝32から保護膜35を、効率よく除去できるものとなっている。
【0074】
したがって、電極16、17の表面を覆った保護膜35は、短時間の間に純水11に溶け出し、最後には、保護膜35に保護されていた電極16、17が、レーザー加工により電極が形成された直後の状態で、つまり、細菌の測定に好適なクリアな状態で表出してくるのである。
【0075】
そして、図11(d)において、細菌数の測定を行うときには、このクリアな電極16、17を用いて細菌の測定を実施することができるので、初期値にばらつきが生ずることがなく、測定精度をさらに高めることができるのである。
【0076】
そして測定後には、図11(e)において、純水11を排水し、細菌測定用セル1および検体採取用担体19を廃棄することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように本発明は、測定液に接触して、その測定液中に存在する物質量を測定する測定電極を備え、前記測定電極は、基材表面に、所定空間をおいて対向配置した第1、第2の電極と、これらの第1、第2の電極表面、およびこれらの第1、第2の電極間の基材表面を覆った保護膜とを有し、前記保護膜は、前記測定液に対する可溶性材料により形成したものであるので、測定精度をさらに高めることができるものとなる。
【0078】
すなわち、本発明の測定具においては、基材として用いた、例えばPET上に蒸着させた銀膜に対して、レーザー加工を行って、第1、第2の電極を形成した直後に、この第1、第2の電極を、測定液に対して可溶性の材料にて覆い、第1、第2の電極の保護膜を形成するようにした。
【0079】
そして、その測定具を用いた測定時においては、測定を開始する前に、測定対象物を含む測定液を、前記第1、第2の電極を覆った保護膜に接触させる。このとき、この保護膜は、測定液に対して可溶性の材料にて形成しているため、徐々に測定液中に溶け出していき、最後には、この保護膜に保護されていた第1、第2の電極が、その電極形成直後のクリアな状態を保持したままで表出してくるものとなっている。
【0080】
その結果として、このクリアな測定電極で測定を実施することができるので、初期値にばらつきが生ずることがなくなり、測定精度をさらに高めることができる。
【0081】
従って、測定具および、それを用いた測定用セルとして、広く活用が期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0082】
1 細菌測定用セル
2 装着部
3 測定電極
3A 基材
4 測定部
5 開口部
6 容器
7 測定空間
8 測定液収納空間
9 薄膜
10 薄膜
11 純水
12 段部
13 フランジ
14、15 端子
16、17 電極
16a、17a 引き出し部
18 キャップ
18A 貫通孔
19 検体採取用担体
20 棒体
21 採取部
22 ロータ
23、24 磁石
25 モータ
26 攪拌体
27 電源部
28 制御部
29 演算部
30 表示部
31 操作部
32 溝
33 バリ
34 壁面
35 保護膜
35A 窓
36 レジスト膜
37 包装袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定液に接触して、その測定液中に存在する物質量を測定する測定電極を備え、
前記測定電極は、基材表面に、所定空間をおいて対向配置した第1、第2の電極と、これらの第1、第2の電極表面、およびこれらの第1、第2の電極間の基材表面を覆った保護膜とを有し、前記保護膜は、前記測定液に対する可溶性材料により形成した測定具。
【請求項2】
第1、第2の電極は、その対向部の外方に引き出し部を有し、
この引き出し部は、レジスト膜により覆った請求項1に記載の測定具。
【請求項3】
レジスト膜の内周は、保護膜の外周を覆った請求項2に記載の測定具。
【請求項4】
測定液が収納される容器内に、請求項1から3のいずれか一つに記載の測定具を設けた測定用セル。
【請求項5】
容器内の下方に測定電極を収納する測定空間、上方に測定液を収納する測定液収納空間を設けた請求項4に記載の測定用セル。
【請求項6】
容器内の底部には、攪拌体を設けた請求項4または5に記載の測定用セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−158276(P2011−158276A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18179(P2010−18179)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】