説明

測定器及びその認証設定方法

【課題】 誤操作、誤設定のおそれや第三者からの不正アクセスの心配がない測定器及びその認証設定方法を実現することを目的とする。
【解決手段】 測定器にカード読取器を付け、ICカードの挿入・抜出と測定器のユーザ認証及びユーザ毎の動作設定・変更を連動させることにより、誤設定や不正アクセスを防ぐことができる。したがって、複数の正規ユーザのみが測定器を簡単に設定変更して使い回すことができ、セキュリティが向上する。また、手入力の煩雑さや動作設定のためのPC接続の手間からユーザを解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ認証やユーザ毎の動作設定を頻繁に行う測定器及びその認証設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、開発や製造の現場では、1台の測定器(計測器や記録計を含む)を複数のユーザが個別の設定で使い回すことが行われている。図3ではユーザAが設定Aで月曜から火曜日まで使用し、ユーザBが設定Bで水曜から木曜日まで使用し、ユーザCが設定Cで金曜から土曜日まで使用する例が示されている。
測定器及びその認証設定方法に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−28583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1台の測定器を複数の用途で使い回す場合は再設定が必要になるが、従来から最もよく行われているのは図4(A)に示すようにユーザが測定器に設定情報を直接手入力する方法である。この場合、ユーザは測定器を使用する都度、ユーザ名、ユーザID及びパスワード等よりなるユーザ情報をキー入力し、その後動作設定を行うことになり、操作が煩雑となる。このため、人的要因による誤操作、誤設定のおそれがあるという問題があった。
【0005】
再設定する他の従来方法は、図4(B)に示すように通信を利用してPCから設定情報を送信する方法である。この場合はPC(パーソナルコンピュータ)接続の必要があり、第三者からの不正アクセスの心配があるという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決しようとするもので、誤操作、誤設定のおそれや第三者からの不正アクセスの心配がない測定器及びその認証設定方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
ユーザ認証及び動作設定を行う機能を備えた測定器において、
前記ユーザ認証及び前記動作設定に必要な情報が書き込まれているICカードと
このICカードの内容を読み取るカード読取器と
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の測定器において、
前記ICカードの挿入・抜出による前記ユーザ認証と前記動作設定の履歴を前記測定器の操作ログに残すことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、
請求項1記載の測定器において、
前記ICカードが大容量の記憶領域を備え、前記ICカードを抜き出す際に前記測定器の記録結果を前記記憶領域に保存することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、
ユーザ認証及び動作設定を行う機能を備えた測定器の認証設定方法において、
前記ユーザ認証及び前記動作設定に必要な情報が書き込まれたICカードをカード読取器に挿入する際に前記ユーザ認証及び前記動作設定を行うこと
を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、ユーザ認証情報及びユーザ毎の動作設定情報が書き込まれたICカードをカード読取器に挿入する際にユーザ認証及び動作設定を行うことにより、誤操作、誤設定のおそれや第三者からの不正アクセスの心配のない測定器及びその認証設定方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る測定器の認証設定方法の一実施例を示す説明図である。ユーザ認証及び動作設定の手順を以下に示す。
ユーザ認証情報及びユーザ毎の動作設定情報が書き込まれたICカードがカード読取器に挿入されると、カード読取器はICカードのユーザ認証情報及び動作設定情報を読み取る。
ユーザ名、ユーザID及びパスワード等からなるユーザ認証情報は測定器内部メモリに記憶されているユーザ情報と照合され、一致するユーザ情報がある場合はこのユーザのログインが許可される。
ICカードから読み取られた、ネットワーク接続情報、機器表示情報、キーボード情報、入出力レンジ情報等、ユーザが作業するために必要な情報からなる動作設定情報は測定器内部メモリの動作設定情報に関する記憶場所に書き込まれる。
ICカードの挿入・抜出と、これに伴うユーザ認証情報及び動作設定情報に関連する情報は測定器内部の操作ログに記録される。
【0013】
図2は上記の認証設定方法を実施するための測定器の一実施例を示す構成ブロック図である。測定器として、ここではレコーダの例を用いる。1はICカードが挿入・抜出されるカード読取器、2は入力端子、3は入力端子2を介して測定信号が入力される測定回路、4は測定回路3、内部メモリ5、記憶媒体6、表示部7及び設定データ操作部8が接続される演算制御部である。
【0014】
図2の構成の測定器の動作を以下に説明する。
まず、測定器にログインできる権限を付与するユーザ情報を設定データ操作部8から入力し、演算制御部4を介して内部メモリ5のユーザ情報領域に保存する。保存される内容はユーザ名、ユーザID及びパスワードなどのユーザ認証情報である。
ログインにあたり、ICカードがカード読取器1に挿入されると、カード読取器1はユーザ名、ユーザID及びパスワードなどのユーザ認証情報をICカードから読み取り、演算制御部4に入力する。演算制御部4は入力されたユーザ認証情報がユーザ情報領域51に保存されているユーザ認証情報と一致するか確認し、ユーザ認証情報が一致する場合、入力されたユーザがログイン状態となる。ICカードがカード読取器1に挿入された際に、カード読取器1はこのユーザの動作設定情報(波形表示情報、入出力レンジ情報、画面移動情報、初期制御情報等などの初期設定情報)をICカードから読み取り、演算制御部4を介して内部メモリ5の設定情報領域52に保存する。これら一連のログイン手続を経て測定が開始されると、入力端子2に印加される電圧などの入力信号は測定回路3でディジタルデータに変換され、演算制御部4を経由して内部メモリ5の測定データ領域54に格納される。内部メモリ5に格納された測定データは、メモリストップ時にファイル形式で記憶媒体6に転送格納される。なお、記憶媒体6には、測定データの他、設定情報領域52から波形表示情報、入出力レンジ情報などの初期設定情報が格納される。ファイルが保存された後、記憶媒体6から測定データファイルを読み出し、その測定データを表示部7で参照する。
【0015】
ログアウトの際は、操作完了後ICカードを抜き出す前又は抜き出す際に、操作中に変更した分も含めた動作設定情報及びユーザ認証情報がICカードに書き込まれる。ICカードの挿入・抜出と、これに伴うユーザ認証情報及び動作設定情報に関連する情報は内部メモリ5の操作ログ領域53に記録される。
【0016】
上記のような構成の測定器によれば、測定器にカード読取器を付け、ICカードの挿入・抜出と測定器のユーザ認証及びユーザ毎の動作設定・変更を連動させることにより、誤設定や不正アクセスを防ぐことができる。すなわち、ICカードという物理的な鍵にユーザ認証及び動作設定を集約したので、複数の正規ユーザのみが測定器を簡単に設定変更して使い回すことになり、したがってセキュリティが向上する。
また、ユーザ認証やユーザ毎の動作設定をICカードの挿入・抜出に集約し、その記録を操作ログに残す機能は食品・薬品の検査などで測定器に求められる作業証拠として利用することができる。
また、ユーザ認証やユーザ毎の動作設定をICカードの挿入・抜出に集約することにより、手入力の煩雑さや動作設定のためのPC接続の手間からユーザを解放する。
【0017】
なお、作業の最後の状態をICカードに記録しておけば、次にカードを納入したときに直ちに環境を復元することができる。
また、ICカードを作業者の社員証で兼ねたり、ICカードの配布をもって作業者に測定器の使用許可を与えることにより、管理を一元化することができる。
さらに、ICカードの代わりにUSBキーなどの大容量の記憶領域を持つメディアを使用すれば、記録計などのデータ収集装置において、ユーザ認証や動作設定に加えて記録結果の保存作業をメディアの差込・抜出操作に集約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る測定器の認証設定方法の一実施例を示す説明図である。
【図2】図2は上記の認証設定方法を実施するための測定器の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図3】従来の測定器の複数ユーザによる使い回しの状況を示す説明図である。
【図4】従来の測定器の再設定の状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 カード読取器
2 入力端子
3 測定回路
4 演算制御部
5 内部メモリ
6 記憶媒体
7 表示部
8 設定データ操作部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ認証及び動作設定を行う機能を備えた測定器において、
前記ユーザ認証及び前記動作設定に必要な情報が書き込まれているICカードと
このICカードの内容を読み取るカード読取器と
を備えたことを特徴とする測定器。
【請求項2】
前記ICカードの挿入・抜出による前記ユーザ認証と前記動作設定の履歴を前記測定器の操作ログに残すことを特徴とする請求項1記載の測定器。
【請求項3】
前記ICカードが大容量の記憶領域を備え、前記ICカードを抜き出す際に前記測定器の記録結果を前記記憶領域に保存することを特徴とする請求項1記載の測定器。
【請求項4】
ユーザ認証及び動作設定を行う機能を備えた測定器の認証設定方法において、
前記ユーザ認証及び前記動作設定に必要な情報が書き込まれたICカードをカード読取器に挿入する際に前記ユーザ認証及び前記動作設定を行うこと
を特徴とする測定器の認証設定方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−46990(P2008−46990A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223575(P2006−223575)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】