説明

測定用プローブと、それを構成する測定用プローブ本体部材、内側プローブ素子及び周側プローブ素子

【課題】 同じピッチで異なる電流容量の測定用プローブを構成するに必要な部品の種類を少なくすることができるようにする。
【解決手段】本測定用プローブ1は、中心部に一つの内側プローブ素子2を収納する内側プローブ素子配置部20、20を有し、その周囲に、周側プローブ素子4を収納し得る周側プローブ素子配置部を複数有し、内側プローブ素子配置部20、20に一つの上記内側プローブ素子2が収納され、上記複数の周側プローブ素子配置部の少なくとも一部の周側プローブ素子配置部に、上記周側プローブ素子4が収納された構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の電子部品の各電極とテスター回路等の電子回路とを接続するための中継に使用される測定用プローブと、それを構成する測定用プローブ本体部材、内側プローブ素子及び周側プローブ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、トランジスタその他の電子部品を用いた電子回路は、各種の装置、機器類に非常に多く用いられており、その用途は拡大の一途を辿っているが、これらの電子回路は片面或いは両面に配線膜が印刷されたプリント基板を用いて構成されるのが普通であり、該プリント基板にIC、LSI、トランジスタその他の各種電子部品を搭載し、必要な半田付けを行うことにより電子回路が構成されるようになっている。
【0003】
そして、電子回路を用いた装置、機器類はその多くが小型化、高機能化、高性能化が要求され、それに伴って電子回路の回路構成が複雑化、高集積化を要求されている。従って、プリント基板の配線も微細化、高集積化の傾向があり、その結果、その検査のための測定が難しくなる。というのは、配線の微細化、高集積化により測定用プローブの配設密度、配置位置の精度を高くすることが必要であるからである。それでいて、検査の重要性は高まる一方である。
というのは、配線の微細化、高集積化が進むほど、ショート不良、その他の発生率が高くなるからである。
【0004】
そして、その検査には、測定回路を備えたテスターが用いられ、その測定回路へのプリント基板の各配線膜、電極等の電気的導出にはコンタクト機器が用いられる。このコンタクト機器はプレートに多数のプローブを備え、各プローブの一端をプリント基板の各配線膜等の測定回路に電気的に接続すべき部分に接触させ、他端を測定回路に接続されたコードの先端に接触させるようになっているものが多い。これに関しては、本願出願人会社は特願平7−61728、特願平8−183449、特願平10−66333等により各種提案を行っている。
【0005】
更に、中央に通常のプローブ素子を設けると共に、そのプローブ素子の周りに周側プローブ素子を設け、例えば四探針測定等ができるようにした測定用プローブも開発した。
四探針測定とは、一つのプローブ素子ポイントに対して二つの端子[I(電流)端子、V(電圧)端子]で別々に電気的なコンタクトをとりながら行うものであり、そのような四探針測定のできる測定用プローブについても、本願出願人は例えば特願2007−284497により提案している。
【特許文献1】特願2007−284497
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、測定用プローブは、用途、用途先の仕様等により許容電流値が異なり、比較的小さな電流しか流さなくても良い仕様があれば、かなり高電流(大電流)を流す必要がある仕様もあり、許容電流は多種多様である。
従って、測定用プローブは要求される許容電流に関する仕様に合格することが不可欠である。
【0007】
そのため、従来においては、許容電流についての仕様の違い毎に、それに合格するタイプの測定用プローブを開発、設計してテスター製造メーカー等に供給していた。
【0008】
しかしながら、そのようにした場合、同じピッチ対応の測定用プローブであっても、許容電流が異なる場合、許容電流毎に異なる仕様の測定用プローブを用意しなければならない。それは設計上、製造上、在庫調整上の無視できない無駄をもたらす。
即ち、測定用プローブは、配線膜のピッチが異なる毎にそれに対応したピッチのものを用意しなければならないのはやむを得ないことであるが、例えば0.5mmピッチで許容電流が通常5Aであるにもかかわらず、同じピッチなのに、特別に許容電流を10Aにすること、或いはもっと大きな15Aが要求される場合がある。
【0009】
そのような場合、その0.5mmピッチ用として5A仕様の測定用プローブは使えず、特別に10A仕様のもの、更には15A仕様のものを改めて設計し、製造し直して提供しなければならない。
また、緊急受注に迅速に対応するために、同じピッチであっても許容電流値毎に異なる仕様の複数種の測定用プローブ用各種部品を在庫として用意しておかなければならないことになる。
これは経営を圧迫する要因になり好ましくない。
【0010】
本発明はこのような問題点を解決すべく為されたものであり、同じピッチの測定用プローブにおける許容電流の相違に対応して用意する使用部材の種類が少なくて済み、許容電流毎に仕様の異なる部材を多数用意する無駄を少なくすることができる測定用プローブと、それを構成する測定用プローブ本体部材、内側プローブ素子及び周側プローブ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の測定用プローブは、中心部に、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させた一つの内側プローブ素子を配置し得る内側プローブ素子配置部を有し、この内側プローブ素子配置部の周囲に、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させた周側プローブ素子を配置し得る周側プローブ素子配置部を複数有し、上記内側プローブ素子配置部に一つの上記内側プローブ素子が配置され、上記複数の周側プローブ素子配置部の少なくとも一部の周側プローブ素子配置部に、上記周側プローブ素子が配置されたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の測定用プローブは、請求項1記載の測定用プローブにおいて、前記一つまたは複数の周側プローブ素子の導電子の先端に機械的及び電気的に連結された導電性のキャップを一対又は複数対有することを特徴とする。
【0013】
請求項3の測定用プローブ本体部材は、中心部に、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させた一つの内側プローブ素子を収納する内側プローブ素子配置部を有し、この内側プローブ素子配置部の周囲に、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させた周側プローブ素子を配置し得る周側プローブ素子配置部を複数有することを特徴とする。
【0014】
請求項4の内側プローブ素子は、請求項3の測定用プローブ本体部材の内側プローブ素子配置部に配置されるものであって、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させたことを特徴とする。
請求項5の周側プローブ素子は、請求項3の測定用プローブ本体部材の周側プローブ素子配置部に配置されるものであって、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2の測定用プローブによれば、内側プローブ素子として許容電流の違い対応したものを用いることで内側における許容電流への対応ができる。
また、周側については、周側プローブ素子配置部の数が複数なので、許容電流の違いに対して、その大きさに応じて周側プローブ素子配置部に収納する周側プローブ素子の数を増減することにより許容電流への対応ができる。
【0016】
例えば、許容電流が5Aのときは例えば8個ある周側プローブ素子配置部のうちの2個の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子を配置し、10Aのときは4個の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子を配置し、15Aのときは6個の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子を配置し、20Aのときは8個の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子を配置することにより、許容電流の違いに、設計仕様の異なる部品を多数種用意することなく、対応することができる。
【0017】
請求項3の測定用プローブ本体部材、請求項4の内側プローブ素子、請求項5の周側プローブ素子によれば、内側プローブ素子配置部に許容電流に対応した内側プローブ素子を収納し、許容電流の違いに対応した数の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子を収納することにより、要求される許容電流に対応した測定用プローブを構成することができる。
従って、ピッチが同じ測定用プローブに対して、一種類の測定用プローブ本体部材と、許容電流の違いに対応して用意される複数種の内側プローブ素子と、一種類の周側プローブ素子があれば、許容電流の違いに対応することができ、
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、基本的に、一種類のピッチについて、一種類の測定用プローブ本体部材と、各電流の違いに対応した種類の内側プローブ素子と、一種類の周側プローブ素子を用意しておき、上記測定用プローブ本体部材の内側プローブ素子配置部に、許容電流の違い対応した種類の内側プローブ素子を配置し、周側プローブ素子を収納させる周側プローブ素子配置部の数を選ぶことで対応できるようにしたものであるが、測定用プローブ本体部材の周側プローブ素子配置部の数は、例えば6、8、9、10或いは12等が最適であるが、必ずしもそれには限定されない。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明を図示実施例に従って詳細に説明する。
図1(A)〜(C)は本発明の一つの実施例1を説明するためのもので、(A)は実施例1を示す断面図、(B)は図1(A)のB−B線視断面図、(C)は内側プローブを示す断面図である。
【0020】
先ず、図1(C)を参照して内側プローブ素子2について説明する。この内側プローブ素子2は基本的に従来から普通のプローブとして用いられたものである。測定用プローブはピッチ毎に構成部品の寸法等が異なるが、同じピッチであっても許容電流の違いに対応して複数種の内側プローブ素子が用意されており、許容電流に対応した内側プローブ素子2を用いる必要がある。
また、後で説明する複数の周側プローブ素子(4、4、・・・)は、その内側プローブ素子2とは寸法、具体的には各部材の長さ、太さに相違があるが、基本的構成は同じなので、その内部構造の図示、説明は省略する。
【0021】
6、6は一対の導電子で、先端6a、6aが互いに外側を向くように配置され、外周面に外向きの係合段部8、8を有する。
10は一対の導電子6・6間に介在する導電性のコイルスプリングである。12はバレルで、コイルスプリング10及び上記一対の導電子6、6の基部側部分を収納する。具体的には、バレル12の両端の係合段部14、14が上記一対の導電子6、6の係合段部8、8にて係合してコイルスプリング10及び上記一対の導電子6、6の基部側部分を収納する。
【0022】
この内側プローブ素子2は、後で述べるように周側プローブ素子4、4、・・・と共に後述するバレル(32)内に収納されたときこのプローブ素子4、4、・・・との電気的絶縁性が保たれるように、外周面に絶縁物をコーティングする等して絶縁手段を講じるようにすると良い。
上記一対の導電子6・6の間に介在するコイルスプリング10はバレル12内にて導電子6、6を外側に付勢する。
【0023】
従って、この内側プローブ素子2は例えばICの電極と、ICテスター側の電極との間に介在し、その電極間の距離が通常時(非接触時)プローブ2よりも稍短くなると上記コイルスプリング10は圧縮されて弾力を蓄え、その弾力により導電子6、6をICの電極、ICテスター側電極に弾接させ、導電子6、6を電極に良好に接触させる。
【0024】
次に、図1(A)、(B)を参照して測定用プローブ1の全体的構成を説明する。
20、20は一対の円管状の絶縁子で、この一対の円管状の絶縁子20、20により内側プローブ素子が構成される。
絶縁子20、20の中心孔には上記内側プローブ素子2の導電子6、6の小径の外側部分6a、6aが遊嵌されており、その外側部分6a、6aの先端は絶縁子20、20から外側へ突出している。
【0025】
4、4、・・・は内側プローブ素子2の周囲に設けられた周側プローブ素子で、周側プローブ素子を複数、例えば8個配置できるようになっている。即ち、本実施例では周側プローブ素子配置部が8個用意されている。このように、本実施例では周側プローブ素子配置部の数は8個であるが、その数は8個に限定されず、例えば6個、9個、10個、12個等、別の実施例もあり得る
【0026】
また、複数(本実施例では8個)ある周側プローブ素子配置部の全部に周側プローブ素子4、4、・・・が配置されている訳ではなく、許容電流の違い対応した数の周側プローブ素子配置部のみに、内側プローブ素子4、4、・・・を配置してなる。
例えば、許容電流が5Aのときは8個の周側プローブ素子配置部のうちの2個の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子4を収納させ、10Aのときは4個の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子を収納させ、15Aのときは6個の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子を収納させ、20Aのときは8個の周側プローブ素子配置部に周側プローブ素子を収納させるようにすることにより、許容電流についての仕様の違いに、設計仕様の異なる部品を用意することなく、対応することができる。
【0027】
各周側プローブ素子4、4、・・・は上記内側プローブ素子2と寸法が異なり、導電子22、22は内側プローブ素子2の導電子6、6よりも短く、細いが内部構成、動作原理は同じであり、24はそのバレルであり、内側プローブ素子2のバレル12と同じ役割を果たす。
尚、周側プローブ素子4の導電子22、22は小径の外側部分のみ図面に現れる。また、導電子22・22を外側に付勢するコイルスプリング(内側プローブ素子2のコイルスプリング10と同じ役割を果たす。)は図面に現れない。
【0028】
26、26、26、26は導電性のキャップであり、内端に上記導電子22の外側部分の先端が嵌合される導電子嵌合孔を複数(本実施例では4個)有し、外端に尖った接触子30を1個ずつ有する。
本実施例では、導電性のキャップ26は2対26、26・26、26、4個26、26、26、26であり、各々4個の内側プローブ素子2の導電子22と接続されている。
【0029】
32はプローブ全体のバレルであり、この内部に測定用プローブ2に必要な全部品が収納されている。具体的には、上記導電性キャップ26、26、26、26の外周面の外向きの段部にバレル32の外端の内向きの段部が係合することによりバレル32内部に全部品が収納されている。
そして、周側プローブ素子4、4、・・・は、内側プローブ素子2と同様に、両端の導電性キャップ26、26、26、26を介してICの電極と、ICテスター側の電極との間に介在し、その電極間の距離が通常時(非接触時)における距離よりも稍短くなると図示しない上記コイルスプリングは圧縮されて弾力を蓄え、その弾力により導電子22、22をICの電極、ICテスター側電極に弾接させ、導電子22、22を電極に良好に接触させる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、半導体素子等の電子部品の各電極とテスター回路等の電子回路とを接続するための中継に使用される測定用プローブに一般的に利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(A)〜(C)は本発明の一つの実施例を説明するためのもので、(A)は実施例1を示す断面図、(B)は図1(A)のB−B線視断面図、(C)は内側プローブを示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・実施例(測定用プローブ)、2・・・内側プローブ素子、
4・・・周側プローブ素子、6・・・導電子、10・・・コイルスプリング、
12・・・コイルスプリング、14・・・バレル、16・・・係合段部、
20・・・内側プローブ素子配置部、26・・・導電性キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部に、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させた一つの内側プローブ素子を配置し得る内側プローブ素子配置部を有し、
上記内側プローブ素子配置部の周囲に、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させた周側プローブ素子を配置し得る周側プローブ素子配置部を複数有し、
上記内側プローブ素子配置部に一つの上記内側プローブ素子が配置され、
上記複数の周側プローブ素子配置部の少なくとも一部の周側プローブ素子配置部に、上記周側プローブ素子が配置された
ことを特徴とする測定用プローブ。
【請求項2】
前記一つまたは複数の周側プローブ素子の導電子の先端に機械的及び電気的に連結された導電性のキャップを一対又は複数対有する
ことを特徴とする請求項1記載の測定用プローブ。
【請求項3】
中心部に、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させた一つの内側プローブ素子を収納する内側プローブ素子配置部を有し、
上記内側プローブ素子配置部の周囲に、先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に収納させた周側プローブ素子を配置し得る周側プローブ素子配置部を複数有する
ことを特徴とする測定用プローブ本体部材。
【請求項4】
請求項3の測定用プローブ本体部材の内側プローブ素子配置部に配置されるものであって、
先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に配置した
ことを特徴とする内側プローブ素子。
【請求項5】
請求項3の測定用プローブ本体部材の周側プローブ素子配置部に配置されるものであって、
先端が互いに外側を向くように配置された一対の導電子の間に互いに離間させる方向に付勢するように導電性コイルスプリングを介在させたものをバレル内に配置した
ことを特徴とする周側プローブ素子。

【図1】
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