説明

測定装置及び測定方法

【課題】試料に含まれる物質の濃度を測定できる測定装置及び測定方法を提供すること。
【解決手段】試料に含まれる標的物質の濃度を測定する測定装置10Aであって、光源(光源装置13)と、金属粒子により増強電場が形成される試料接触面を有し、光源から出射された光により標的物質から放射されるラマン散乱光を増強電場にて増強させる光入射体(センサーチップ)と、光源から出射された光を、光入射体における複数の領域に入射させる照射手段と、複数の領域からそれぞれ放射されたラマン散乱光を受光する受光手段(受光素子174)と、領域の総数と、それぞれの領域から受光されたラマン散乱光の強度とに基づいて、標的物質の濃度を定量する定量手段(制御装置18A)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及び測定方法に関する。特に、試料に含まれる標的物質に光を入射させることで生じるラマン散乱光を検出し、当該試料における標的物質の濃度を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に光を照射して、当該試料に含まれる物質から放射されるラマン散乱光から得られる指紋スペクトルに基づいて、当該物質を同定するラマン分光装置が知られている。しかしながら、このようなラマン散乱光は微弱であるため、当該指紋スペクトルを適切に取得できない場合がある。
このような問題に対し、増強電場を形成してラマン散乱光を増強し、増強された当該ラマン散乱光を受光するラマン分光装置(ハンドヘルド・ラマン・デバイス)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のラマン分光装置では、粗い金属表面及び/又はSERS(Surface Enhanced Raman Scattering:表面増強ラマン散乱)活性金属粒子等がコーティングされた基板を有する試験ストリップを用い、金属表面にレーザー光を照射して、LSPR(Localized Surface Plasmon Resonance:局在表面プラズモン共鳴)により増強電場を形成する。そして、当該ラマン分光装置では、分析すべき試料を金属表面と接触させ、増強電場に侵入した物質から放射されるラマン散乱光を増強することで、ラマン散乱光の検出感度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−529006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1に記載のラマン分光装置では、試料中に含まれる物質の有無を分析する定性分析は可能であるが、当該物質の定量分析ができないという問題がある。特に、当該増強電場形成領域に、数分子程度の極微量物質が存在する濃度領域では当該物質の定量分析が極めて困難であった。
すなわち、前述の増強電場においては、電場の強度が部位によって異なる。このため、例えば、当該電場の強度が高い部位に物質が1分子侵入した場合に得られるラマン散乱光の強度と、当該強度が低い部位に物質が1分子侵入した場合に得られるラマン散乱光の強度とが異なる場合がある。このように、検出されるラマン散乱光の強度と、物質の濃度とが比例関係に無いため、単にラマン散乱光の強度を取得しても当該物質の濃度を測定する定量分析ができないという問題がある。
このため、試料中の物質の定量分析を行うことができる測定装置が要望されてきた。
【0006】
本発明の目的は、試料に含まれる物質の濃度を測定できる測定装置及び測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明の測定装置は、試料に含まれる標的物質の濃度を測定する測定装置であって、光源と、金属粒子により増強電場が形成される試料接触面を有し、前記光源から出射された光により前記標的物質から放射されるラマン散乱光を前記増強電場にて増強させる光入射体と、前記光源から出射された光を、前記光入射体における複数の領域に入射させる照射手段と、前記複数の領域からそれぞれ放射された前記ラマン散乱光を受光する受光手段と、前記領域の総数と、それぞれの前記領域から受光された前記ラマン散乱光の強度とに基づいて、前記標的物質の濃度を定量する定量手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
なお、試料としては、気体試料及び液体試料が挙げられる。
また、光入射体の試料接触面は、例えば、金属粒子により被覆された複数の凸部を有する構成が挙げられる。このような凸部間の寸法は、数nm〜10数nmが好ましく、当該各凸部を被覆する金属粒子は、分子径が光源から出射される光の波長より小さなSERS活性金属粒子(例えば、金、銀及び銅、アルミニウム、パラジウム及びプラチナ)であることが好ましい。これにより、凸部間には増強電場が形成され、増強電場内に侵入した標的物質から放射されるラマン散乱光が表面増強ラマン散乱により増強されるので、受光手段によるラマン散乱光の検出感度を向上できる。
更に、光源は、面発光レーザー等、単一波長で、かつ、直線偏光である光を出射する構成が好ましく、また、濃度測定対象の物質に応じた波長を有する光を出射する光源であることが好ましい。
【0009】
ここで、標的物質は、濃度に比例して試料中に確率的に分布しているので、光が照射され増強電場が生じている領域で当該標的物質の濃度が高いほど(分子数が多いほど)、ラマン散乱光を発光する領域の数は増加し、結果的に各領域から放射されるラマン散乱光の強度は増加する。しかしながら、前述のように、検出されるラマン散乱光の強度と、標的物質の濃度とは直接の比例関係に無い。
このため、本発明では、当該標的物質分子数が光照射された領域数程度の極微量濃度域では、例えば、定量手段が、複数の領域のうち、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数を計数することにより、当該領域の数は、領域の総数に対して標的物質が存在する領域の比率を示す値となり、試料における標的物質の分布率を示す値となる。そして、当該領域の数と標的物質の濃度との関係を予め測定したデータから、計数された領域の数に応じた濃度を取得することで、試料中の標的物質の濃度を測定(定量)できる。
【0010】
また、例えば、定量手段が、当該複数の領域から受光されるラマン散乱光の強度の総和を算出すれば、当該強度の総和は、全ての領域から標的物質の最大のラマン散乱光が受光された場合に対して標的物質の分布率を示す値となる。そして、当該強度の総和と標的物質の濃度との関係を予め測定したデータから、算出された強度の総和に応じた濃度を取得することで、試料中の標的物質の濃度を測定(定量)できる。
【0011】
本発明では、前記複数の領域のうち前記標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数と、当該領域の数に応じて予め測定された前記標的物質の濃度とを関連付けて記憶する記憶部を備え、前記定量手段は、前記複数の領域のうち前記受光手段により前記標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数を計数する計数部と、前記計数部により計数された前記領域の数に応じた前記標的物質の濃度を、前記記憶部から取得する濃度取得部と、を有することが好ましい。
【0012】
ここで、前述のように、試料における標的物質の濃度が高いほど、ラマン散乱光が受光される領域の数は増加する。
これに対し、本発明では、計数部により、複数の領域のうち標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数が計数される。これによれば、前述のように、計数された領域の数は、領域の総数と、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数との比率を表すこととなり、当該比率は、平均化された標的物質の分布率を間接的に示す値となる。そして、濃度取得部が、記憶部から当該領域の数に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0013】
或いは、本発明では、前記複数の領域から受光される前記標的物質のラマン散乱光の強度の総和と、当該強度の総和に応じた前記標的物質の濃度とを関連付けて記憶する記憶部を備え、前記定量手段は、前記複数の領域から前記受光手段により受光された前記標的物質のラマン散乱光の強度の総和を算出する総和算出部と、算出された前記強度の総和に応じた前記標的物質の濃度を、前記記憶部から取得する濃度取得部と、を有することが好ましい。
【0014】
ここで、前述のように、標的物質の濃度が高いほど、各領域から放射されるラマン散乱光の強度の総和は増加する。
これに対し、本発明では、総和算出部が、各領域から受光手段により受光されたラマン散乱光の強度の総和を算出する。これによれば、算出される強度の総和は、全ての領域から受光されるラマン散乱光の最大強度に対する比率を表すこととなり、当該比率は、平均化された標的物質の分布率を間接的に示す値となる。そして、濃度取得部が、算出された強度の総和に応じた濃度を記憶部から取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0015】
本発明では、前記照射手段は、前記光源から出射された光を複数の光束に分割し、それぞれの前記光束をそれぞれの前記領域に入射させることが好ましい。
本発明によれば、光入射体における複数の領域に、光源から出射された光を一度に入射させることができるので、各領域に個別に光を入射させる場合に比べ、各領域からのラマン散乱光の受光に要する時間を短縮できる。従って、標的物質の濃度測定を短時間で行うことができる。
【0016】
或いは、本発明では、前記照射手段は、前記光源から出射された光を、時分割でそれぞれの前記領域に入射させることが好ましい。
ここで、分割された部分光束を光入射体(試料接触面)に入射させる場合、各部分光束の強度にばらつきが生じやすいほか、各領域に入射される光の強度が、分割される前の強度に比べて低下する。
これに対し、本発明によれば、光源から出射された光が複数の光束に分割されずに光入射体の各領域に入射されるので、前述のばらつきの問題が生じない他、それぞれの領域に入射される光の強度の低下を防止でき、また、これにより、増強電場の強度を高めることができる。従って、分割された光束が各領域に入射される場合に比べ、高い強度のラマン散乱光を生じさせることができ、受光手段による受光精度を向上できる。
【0017】
本発明では、前記照射手段は、前記光源から出射された光を反射させる反射手段と、前記光源から出射された光の中心軸に対する前記反射手段の角度を調整して、当該反射手段により反射された光を、それぞれの前記領域に入射させる調整手段と、を有することが好ましい。
【0018】
なお、反射手段としては、光源から出射された光を反射させて光入射体に導くとともに、各領域から放射されたラマン散乱光を透過して受光手段に導くハーフミラーを挙げることができる。また、調整手段としては、反射手段の角度を調整しやすいステッピングモーターを採用できる。
ここで、光入射体は、前述の増強電場に物質を侵入しやすくするため、管等の誘導部内に形成された試料の流路上に配置されることが好ましい。このため、光源から出射された光を各領域に入射させるために光入射体を移動させる構成では、流通する試料が外部に漏出しないように、移動後の光入射体と誘導部との間を埋める部材を設ける必要があったり、或いは、光入射体とともに誘導部を移動させる必要があるなど、測定装置の構成が複雑になる。
これに対し、本発明によれば、光源から出射された光は、調整手段により当該光の中心軸に対する角度が調整された反射手段により反射され、光入射体の各領域に入射されるので、光入射体を移動させる場合に比べ、測定装置の構成が複雑化することを抑制できる他、各領域から放射されるラマン散乱光をそれぞれ確実に受光できる。
【0019】
また、反射手段として前述のハーフミラーを利用すれば、光源から出射された光を各領域に向けて反射させる反射手段を別途設ける必要が無い。このため、このようなハーフミラーが採用された測定装置の構成を流用できる。この他、光源から出射された光の経路と、受光手段により受光されるラマン散乱光の経路とが分離されるので、当該受光手段によるラマン散乱光の検出感度を向上できる。
【0020】
或いは、本発明では、前記照射手段は、前記光入射体に入射される光の中心軸に対して交差する方向に当該光入射体を移動させる光入射体移動手段と、それぞれの前記領域に入射されるように、前記光入射体移動手段を制御する制御手段と、を有することが好ましい。
【0021】
ここで、光源から入射される光を反射させて各領域に入射させる構成では、当該各領域に入射される光の入射角が領域毎に変わってしまう。このため、当該光の偏光角度が領域の位置によって変わり、各領域で生じたラマン散乱光の受光に差異が生じやすい。
これに対し、本発明では、制御手段による制御の下、光入射体移動手段によって光入射体が移動されるので、試料接触面に対して一定の角度で、光源からの光を各領域に入射させることができる。従って、各領域でのラマン散乱光の受光に差異が生じないようにすることができるので、測定された濃度の信頼性を向上できる。
また、試料接触面に対する直交方向に、当該試料接触面に入射される光の中心軸を沿わせやすくできるので、ラマン散乱光の受光を安定化できる。
【0022】
或いは、本発明では、前記照射手段は、前記光源を移動させる光源移動手段と、前記光源移動手段により移動された前記光源から出射された光が、それぞれの前記領域に入射されるように、前記光源移動手段を制御する制御手段と、を有することが好ましい。
【0023】
なお、光源移動手段による光源の移動は、移動前の光源から出射される光の中心軸に対する直交方向への平行移動でもよく、当該直交方向に沿う回動軸を中心とする回動でもよい。
本発明によれば、制御手段による制御の下、光源から出射された光が各領域に入射されるように当該光源を光源移動手段が移動させる。これによれば、前述の反射手段を移動させる場合と同様に、光入射体を移動させなくても、各領域に光を確実に入射させることができる。従って、測定装置の構成が複雑化することを抑制できる。
【0024】
また、本発明の測定方法は、試料に含まれる標的物質の濃度を測定する測定方法であって、金属粒子により増強電場が形成される試料接触面において予め総数が設定された複数の領域に光を入射させて、当該光により前記標的物質から放射されるラマン散乱光を前記増強電場にて増強させる散乱光増強ステップと、前記複数の領域から放射された前記ラマン散乱光を受光する受光ステップと、前記領域の総数と、それぞれの前記領域から受光された前記ラマン散乱光の強度とに基づいて、前記標的物質の濃度を定量する定量ステップと、を有することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、前述の測定装置と同様に、標的物質の濃度を測定できる。
すなわち、例えば、定量ステップにて、複数の領域のうち、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数を計数すれば、当該領域の数は、領域の総数に対して標的物質が存在する領域の比率を示す値となり、試料中の標的物質の分布率を示す値となる。この領域の数と物質の濃度との関係を予め測定したデータから、計数された領域の数に応じた濃度を取得することで、試料中の物質の濃度を測定(定量)できる。
【0026】
また、例えば、定量ステップにて、複数の領域から受光されるラマン散乱光の強度の総和を算出すれば、当該強度の総和は、全ての領域から標的物質の最大のラマン散乱光が受光された場合に対して標的物質の分布率を示す値となる。そして、当該強度の総和と物質の濃度との関係を予め測定したデータから、算出された強度の総和に応じた濃度を取得することで、試料中の物質の濃度を測定(定量)できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る測定装置の構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態におけるセンサーチップを模式的に示す断面図。
【図3】前記実施形態におけるセンサーチップの試料接触面を示す平面図。
【図4】前記実施形態における試料接触面上に形成される増強電場を示す模式図。
【図5】前記実施形態における装置本体の構成を示すブロック図。
【図6】前記実施形態における撮像画像の一例を示す図。
【図7】前記実施形態における濃度測定処理を示すフローチャート。
【図8】本発明の第2実施形態に係る測定装置の構成を示すブロック図。
【図9】前記実施形態における濃度測定処理を示すフローチャート。
【図10】本発明の第3実施形態に係る測定装置の構成を示す模式図。
【図11】前記実施形態における測定装置の装置本体の構成を示すブロック図。
【図12】前記実施形態における光が入射される領域の移動方向を示す図。
【図13】前記実施形態における濃度測定処理を示すフローチャート。
【図14】本発明の第4実施形態に係る測定装置の装置本体の構成を示すブロック図。
【図15】前記実施形態における濃度測定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
[測定装置の全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る測定装置10Aの構成を示す模式図である。
本実施形態に係る測定装置10Aは、試料に含まれる標的物質を同定するとともに、当該標的物質の濃度を測定する測定装置である。この測定装置10Aは、図1に示すように、装置本体11Aと、当該装置本体11Aに交換可能に取り付けられる交換ユニット31とを備えて構成される。
このうち、交換ユニット31は、試料が流通する流路を形成する。この流路上には、センサーチップ311が設けられ、装置本体11Aは、当該センサーチップ311に光(レーザー光)を照射して、試料に含まれる標的物質から放射されるラマン散乱光を検出し、当該ラマン散乱光の強度に基づいて標的物質の濃度を測定する。なお、交換ユニット31の構成については、後に詳述する。
【0029】
[装置本体の構成]
装置本体11Aは、交換ユニット31内を流通する試料に含まれる標的物質の同定及び定量を行う。この装置本体11Aは、筐体12と、当該筐体12内に設けられる光源装置13、光束分割装置14、ハーフミラー15、対物レンズ16、検出装置17、制御装置18A及び電源装置19と、筐体12外に露出して外部機器と接続されるインターフェイスである接続部20とを有する。この他、図1では図示を省略するが、装置本体11Aは、測定装置10Aを操作するためのボタン等が配設された操作装置21(図5)、及び、測定結果を表示する表示装置22(図5)を有する。なお、制御装置18Aの構成は、後に詳述する。
【0030】
筐体12には、開閉自在に設けられるカバー部121が設けられており、当該カバー部121内には、交換ユニット31が配置される。そして、カバー部121を開放することで、交換ユニット31の着脱が行われる。
また、カバー部121内には、排出手段としてのファン122が設けられている。このファン122は、制御装置18Aにより駆動が制御され、当該ファン122が駆動すると、交換ユニット31内に試料が導入される。
【0031】
光源装置13は、本発明の光源に相当する。この光源装置13は、単色の直線偏光を出射する垂直共振器面発光レーザーにより構成される発光部131と、当該発光部131から出射されるレーザー光を平行化するコリメーターレンズ132とを有する。この発光部131から出射されるレーザー光の直径は、1μm〜1mmの範囲で設定されている。そして、発光部131から出射された光は、コリメーターレンズ132を介して、光束分割装置14に入射される。
【0032】
光束分割装置14は、光源装置13から入射される光束を複数の部分光束に分割し、分割された各部分光束を、ハーフミラー15に入射させる。このような光束分割装置14としては、ビームスプリッターを例示できる。このような光束分割装置14は、本実施形態においては、本発明の照射手段に相当する。
【0033】
ハーフミラー15は、光束分割装置14を介して光源装置13から入射される光束をセンサーチップ311に向けて反射させる。具体的に、ハーフミラー15は、光束分割装置14から入射される各部分光束の光路を90度屈曲させて、当該各部分光束を対物レンズ16に入射させる。
【0034】
対物レンズ16は、本実施形態では、コリメーターレンズにより構成され、ハーフミラー15を介して入射される各部分光束を平行化し、当該各部分光束をセンサーチップ311にそれぞれ入射させる。
なお、詳しくは後述するが、これら部分光束がそれぞれ入射される各領域AR1〜AR9(図6)からは、表面増強ラマン散乱によるレイリー散乱光及びラマン散乱光が放射される。そして、当該レイリー散乱光及びラマン散乱光は、対物レンズ16及びハーフミラー15を透過し、検出装置17に入射される。
【0035】
検出装置17は、ハーフミラー15を挟んで、対物レンズ16及びセンサーチップ311とは反対側に位置し、当該ハーフミラー15により反射された光の中心軸の延長線上(換言すると、ハーフミラー15を透過する光の中心軸上)に配置される。この検出装置17は、センサーチップ311において領域AR1〜AR9から放射されたレイリー散乱光及びラマン散乱光のうち、ラマン散乱光を選択的に検出する。
このような検出装置17は、集光レンズ171、フィルター172、分光素子173及び受光素子174を有する。
【0036】
集光レンズ171は、ハーフミラー15を介して入射されるレイリー散乱光及びラマン散乱光を集光して、フィルター172に入射させる。
フィルター172は、入射されるレイリー散乱光及びラマン散乱光のうち、ラマン散乱光を透過させる。すなわち、当該フィルター172は、レイリー散乱光を除去する。
分光素子173は、制御装置18Aによる制御の下、透過する光の波長を選択可能な構成を有する。このような分光素子173は、例えば、共振波長を調整可能な可変エタロン分光器により構成できる。
受光素子174は、本発明の受光手段に相当する。この受光素子は、分光素子173を介して入射されるラマン散乱光を受光し、センサーチップ311の各領域AR1〜AR9を撮像する。そして、当該受光素子174は、撮像画像を制御装置18Aに出力する。
【0037】
[交換ユニットの構成]
交換ユニット31は、前述のように、カバー部121内に着脱自在に取り付けられ、内部を試料が流通するものであり、試料の測定の度に交換される。この交換ユニット31は、光入射体としてのセンサーチップ311と、当該センサーチップ311に試料を誘導する誘導部312と、センサーチップ311を通過した試料を排出する排出部313とを有する。
【0038】
これらのうち、誘導部312及び排出部313は、それぞれ断面視S字状のダクトにより構成されている。
誘導部312の一端には、比較的大きな粉塵や一部の水蒸気等を除去する防塵フィルター3121が設けられ、他端は、センサーチップ311と接続される。
また、排出部313の一端は、センサーチップ311と接続され、他端は、前述のファン122と接続される。
そして、当該ファン122が駆動されると、防塵フィルター3121を介して試料が誘導部312内に導入され、当該誘導部312内を流通した後、当該試料は、センサーチップ311に到達する。また、センサーチップ311内を流通した試料は、排出部313内を流通して、ファン122により外部に排出される。すなわち、誘導部312、センサーチップ311及び排出部313の内部には、それぞれ、試料が流通する流路が形成されている。
【0039】
図2は、センサーチップ311を模式的に示す断面図である。なお、図2及び後述する図3においては、図の見易さを考慮して、突出部及び金属微粒子の一部にのみ「F21」及び「M」の符号を付す。
センサーチップ311は、本発明の光入射体に相当する。このセンサーチップ311は、図2に示すように、内部を流通する試料に光源装置13から出射された光(部分光束)P1を入射させて、当該試料に含まれる標的物質から前述のレイリー散乱光P2及びラマン散乱光P3を放射させるものである。このようなセンサーチップ311は、透光性を有する一対の基板3111,3112間に試料が流通する流路が形成されており、各基板3111,3112には、互いに対向し、かつ、当該試料と接触する試料接触面F1,F2が形成されている。
【0040】
図3は、センサーチップ311の試料接触面F2を示す平面図である。
これらのうち、装置本体11Aに近い基板3112に形成された試料接触面F2には、図3に示すように、一辺が5mmの矩形範囲内に、円筒状の突出部F21が格子状に複数突設されている。これら突出部F21間のピッチは、例えば、300nm以上で、かつ、光源装置13により出射されるレーザー光の発振波長以下の範囲で設定される。
このように格子状に配列された各突出部F21は、SERS活性金属粒子(以下「金属微粒子」と略す場合がある)Mにより被覆されており、当該金属微粒子Mにより被覆された各突出部F21間のギャップは、例えば、1nm以上で、かつ、前述のピッチの半分以下の範囲で設定される。また、このような金属微粒子Mとしては、金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム及び白金を例示できる。
【0041】
図4は、試料接触面F2上に形成される増強電場EFを示す模式図である。なお、図4においては、図の見易さを考慮して、標的物質の一部の分子にのみ「N」の符号を付す。
金属微粒子Mが被覆された複数の突出部F21を有する試料接触面F2に、光源装置13からの光が入射されると、当該各突出部F21間のギャップに、増強電場EFが形成される。このような増強電場EFに標的物質の分子Nが侵入すると、当該分子Nの振動数の情報を含むラマン散乱光P3及びレイリー散乱光P2(それぞれ図2参照)が生じる。この際、当該増強電場EFにより表面増強ラマン散乱が生じ、放射されるラマン散乱光が増強される。このようにして放射されたラマン散乱光P3及びレイリー散乱光P2は、前述のように、対物レンズ16及びハーフミラー15を介して、検出装置17に入射され、ラマン散乱光P3が受光素子174により受光される。
【0042】
[制御装置の構成]
図5は、装置本体11Aの構成を示すブロック図であり、主に制御装置18Aの構成を示すブロック図である。
制御装置18Aは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等が実装された回路基板により構成され、測定装置10A全体を制御する。この制御装置18Aは、当該CPUがROMに記憶されたプログラムを処理することにより、図5に示す主制御部181A、画像処理部182A、計数部183A、濃度取得部184Aとして機能するほか、記憶部185Aを有する。このような制御装置18Aは、本発明の定量手段として機能する。
【0043】
このうち、記憶部185Aは、前記ROMで構成できる他、HDD(Hard Disk Drive)及び半導体メモリー等により構成できる。このような記憶部185Aは、物質特有の指紋スペクトルと、当該物質の名称とを関連付けて記憶している。
また、記憶部185Aは、交換ユニット31内を流通する試料に含まれる標的物質の濃度と、当該濃度に応じてラマン散乱光が受光素子174により受光される領域の数とが関連付けられたLUT(Look Up Table)を、標的物質ごとに記憶している。具体的に、当該LUTは、標的物質の濃度がそれぞれ異なる試料を交換ユニット31に流通させ、センサーチップ311に前述の部分光束を照射した際に、当該標的物質から放射されるラマン散乱光が検出された領域の数を予め測定しておき、当該領域の数と、標的物質の濃度とを関連付けたテーブルとして作成されている。
【0044】
なお、標的物質の全ての濃度に対して当該領域数を測定することは現実的に困難であるので、標的物質の各濃度と、当該濃度に対応する領域の数との検量線を作成し、当該検量線に基づいて当該LUTは作成される。このため、LUTの代わりに、当該検量線の近似関数を記憶するように構成してもよい。
【0045】
主制御部181Aは、装置本体11A全体を制御する。例えば、光源装置13の点灯、分光素子173の透過波長の調整、ファン122の駆動、及び、表示装置22の表示を制御する。
画像処理部182Aは、受光素子174による撮像画像を取得し、当該撮像画像に対して所定の補正処理を実行する。また、画像処理部182Aは、当該撮像画像から、受光されたラマン散乱光に基づいて、分光素子173により標的物質特有の指紋スペクトルを取得し、当該指紋スペクトルに応じた物質の名称を、記憶部185Aを参照して取得する。すなわち、画像処理部182Aは、標的物質を同定する定性分析部としても機能する。
【0046】
図6は、画像処理部182Aにより処理された撮像画像の一例を示す図である。
計数部183Aは、画像処理部182Aにより取得された撮像画像に基づいて、前述の試料接触面F2において部分光束が照射された領域のうち、標的物質のラマン散乱光が検出された領域の数を計数する。例えば、図6に示すように、光束分割装置14により光源装置13から出射された光が9つの部分光束に分割され、当該各部分光束が試料接触面F2における領域AR1〜AR9に入射される場合では、計数部183Aは、撮像画像において当該領域AR1〜AR9の位置を認識し、領域AR1〜AR9のうち、輝度が所定値を超えている領域の数(図6の例では、AR3、AR4及びAR9の3つ)を計数する。なお、当該所定値は、前述の増強電場により増強されたラマン散乱光が検出された際の輝度値とすることができる。
図5に戻り、濃度取得部184Aは、計数部183Aにより計数された領域の数に対応する標的物質の濃度を、記憶部185Aに記憶されたLUTを参照して取得する。この際、濃度取得部184Aは、画像処理部182Aにより同定された標的物質の物質名に対応するLUTを参照する。そして、このようにして取得された標的物質の濃度は、主制御部181Aにより、表示装置22に表示される。
【0047】
以下、測定装置10Aによる標的物質の濃度測定処理について説明する。
図7は、当該濃度測定処理を示すフローチャートである。
制御装置18Aは、濃度測定プログラムを処理して、交換ユニット31内を流通する試料に含まれる標的物質の濃度測定処理を実行する。
この濃度測定処理では、図7に示すように、主制御部181Aが、光源装置13を点灯させ、センサーチップ311に部分光束を照射する(ステップSA1)。
このステップSA1とともに、或いは、当該ステップSA1の後、主制御部181Aが、ファン122を駆動させ、交換ユニット31内に試料を誘導する(ステップSA2)。
これにより、試料が誘導部312を介してセンサーチップ311内に導入され、試料接触面F1,F2に接触する。そして、部分光束が入射されて形成される増強電場EF(図4)に標的物質の分子が侵入すると、前述のように、増強されたラマン散乱光及びレイリー散乱光が放射される。すなわち、ステップSA1,SA2が、本発明の散乱光増強ステップに相当する。
【0048】
次に、検出装置17の受光素子174が、分光素子173を透過したラマン散乱光を受光し(ステップSA3)、画像処理部182Aが、当該受光素子174から撮像画像を処理する(ステップSA4)。この際、画像処理部182Aは、受光素子174により受光されたラマン散乱光に基づいて、標的物質の指紋スペクトルを取得し、当該標的物質を同定する。
そして、計数部183Aが、取得された撮像画像に基づいて、増強されたラマン散乱光が検出された領域の数を計数する(ステップSA5)。
この後、濃度取得部184Aが、標的物質に応じて記憶部185Aに記憶されたLUTを参照し、計数部183Aにより計数された領域の数に応じた当該標的物質の濃度を取得する(ステップSA6)。すなわち、本実施形態においては、ステップSA5,SA6が本発明の定量ステップに相当する。
以上により、濃度測定処理が終了する。
【0049】
以上説明した本実施形態に係る測定装置10Aによれば、以下の効果がある。
計数部183Aにより、複数の領域AR1〜AR9のうち、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数が計数される。これによれば、計数された領域の数は、光源装置13からの光が入射される領域AR1〜AR9の総数と、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数との比率を表すこととなり、当該比率は、平均化された標的物質の分布率を間接的に示す値となる。そして、濃度取得部184Aが、記憶部185Aに記憶された対応する標的物質のLUTを参照して、当該領域の数に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0050】
光束分割装置14により、センサーチップ311の試料接触面F2における複数の領域AR1〜AR9に、光源装置13から出射された光を一度に入射させることができる。これによれば、各領域AR1〜AR9に応じた位置に、光源装置13からの光を個別に入射させる場合に比べ、各領域AR1〜AR9からのラマン散乱光の受光に要する時間を短縮できる。従って、標的物質の濃度測定を短時間で行うことができる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態に係る測定装置は、前述の測定装置10Aと同様の構成を有する。ここで、測定装置10Aでは、試料接触面F2において、増強されたラマン散乱光が検出された領域の数に対応した濃度を、記憶部185AのLUTから取得する構成であった。これに対し、本実施形態に係る測定装置では、各領域から受光されたラマン散乱光の強度の総和を算出し、当該総和に応じた濃度を、記憶部から取得する構成である。この点で、本実施形態に係る測定装置と、測定装置10Aとは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図8は、本実施形態に係る測定装置10Bの構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る測定装置10Bは、装置本体11Aに代えて装置本体11Bを有する他は、前述の測定装置10Aと同様の構成及び機能を有し、装置本体11Bは、制御装置18Aに代えて制御装置18Bを有する他は、装置本体11Aと同様の構成及び機能を有する。
制御装置18Bは、図8に示すように、計数部183A、濃度取得部184A及び記憶部185Aに代えて総和算出部186、濃度取得部184B及び記憶部185Bを備える他は、前述の制御装置18Aと同様の構成及び機能を有する。
【0053】
これらのうち、記憶部185Bは、記憶部185Aと同様の構成を有し、また、同様の情報を記憶している。更に、記憶部185Bは、交換ユニット31内を流通する試料に含まれる標的物質の濃度と、当該濃度に応じて試料接触面F2の各領域AR1〜AR9(図6)から受光されるラマン散乱光の強度の総和とが関連付けられたLUTを、標的物質ごとに記憶している。具体的に、当該LUTは、標的物質の濃度がそれぞれ異なる試料を交換ユニット31に流通させ、センサーチップ311に前述の部分光束を照射した際に、各領域AR1〜AR9から受光されるラマン散乱光の強度の総和を予め測定しておき、当該総和と、標的物質の濃度とを関連付けたテーブルとして作成されている。
なお、前述の場合と同様に、標的物質の全ての濃度に対して当該総和を算出することは現実的に困難であるので、標的物質の各濃度と、当該濃度に対応するラマン散乱光の強度の総和との検量線を作成し、当該検量線に基づいて当該LUTは作成される。このため、LUTの代わりに、当該検量線の近似関数を記憶するように構成してもよい。
【0054】
総和算出部186は、画像処理部182Aにより処理された撮像画像に基づいて、各領域AR1〜AR9から受光された標的物質のラマン散乱光の強度の総和を算出する。
濃度取得部184Bは、総和算出部186により算出された総和に応じた標的物質の濃度を、記憶部185Bの対応する標的物質のLUTから取得する。
【0055】
以下、測定装置10Bによる標的物質の濃度測定処理について説明する。
図9は、当該濃度測定処理を示すフローチャートである。
制御装置18Bは、濃度測定プログラムを処理して、交換ユニット31内を流通する試料に含まれる標的物質の濃度測定処理を実行する。
この濃度測定処理では、図9に示すように、制御装置18Bが、前述のステップSA1〜SA4と同様の処理を実行する。
そして、総和算出部186が、処理された撮像画像に基づいて、各領域AR1〜AR9から受光されるラマン散乱光の強度の総和を算出する(ステップSB1)。
この後、濃度取得部184Bが、同定された標準物質のLUTを参照し、算出された総和に応じた標的物質の濃度を取得する(ステップSB2)。すなわち、本実施形態においては、ステップSB1,SB2が本発明の定量ステップに相当する。
以上により、試料に含まれる標的物質の濃度が測定される。
【0056】
以上説明した本実施形態に係る測定装置10Bによれば、前述の測定装置10Aと同様の効果を奏することができる。
すなわち、総和算出部186が、領域AR1〜AR9から受光素子174により受光されたラマン散乱光の強度の総和を算出する。これによれば、算出される強度の総和は、全領域AR1〜AR9から受光されるラマン散乱光の最大強度に対する比率を表すこととなり、当該比率は、平均化された標的物質の分布率を間接的に示す値となる。そして、濃度取得部184Bが、記憶部185Bの対応する標準物質のLUTを参照して、算出された強度の総和に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0057】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態に係る測定装置は、前述の測定装置10A,10Bと同様の構成を有する。ここで、測定装置10Aでは、光源装置13から出射された光を複数の部分光束に分割し、試料接触面F2において各部分光束が照射された各領域から受光されるラマン散乱光の強度に基づいて、標的物質の濃度を測定した。これに対し、本実施形態に係る測定装置では、試料測定面F2において光が入射される領域の位置を変更し、当該領域ごとにラマン散乱光を受光して、標的物質の濃度を測定する。この点で、本実施形態に係る測定装置と、前述の測定装置10A,10Bとは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図10は、本実施形態に係る測定装置10Cの構成を示す模式図である。また、図11は、測定装置10Cが有する装置本体11Cの構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る測定装置10Cは、図10及び図11に示すように、光束分割装置14、対物レンズ16及び制御装置18Aに代えて、ハーフミラー15を移動させる移動手段23(図11)、対物レンズ16C(図10)及び制御装置18C(図10及び図11)を有する他は、前述の測定装置10Aと同様の構成及び機能を有する。
【0059】
このうち、対物レンズ16Cは、図10に示すように、光源装置13から出射され、ハーフミラー15を介して入射される光束を、センサーチップ311上に設定された焦点位置に収束させて、当該光束を入射させる。この対物レンズ16Cを介して入射される光束は、試料接触面F2においては、直径1μm以上1mm以下の範囲(好ましくは、1μm以上10μm以下の範囲)で設定される。
【0060】
図12は、試料接触面F2において光が入射される領域の移動方向を示す図である。
移動手段23は、ステッピングモーター等のモーターや、移動対象の移動を案内するガイド部材等を備えて構成されている。この移動手段23は、光源装置13から入射される光の中心軸に対するハーフミラー15の角度が変更されるように、当該ハーフミラー15を回動させる。これにより、図12に示すように、試料接触面F2において光が入射される領域ARが移動され、当該試料接触面F2が走査される。そして、受光素子174により、移動された領域ARの位置ごとに、ラマン散乱光が受光されることとなる。
【0061】
制御装置18Cは、図11に示すように、主制御部181A、画像処理部182A及び計数部183Aに代えて主制御部181C、画像処理部182C及び計数部183Cを有する他は、前述の制御装置18Aと同様の構成及び機能を有する。
主制御部181Cは、主制御部181Aと同様の機能を有する他、移動手段23の動作を制御する。この主制御部181Cの制御により、前述のように、試料接触面F2において光が入射される領域AR(図12)が移動され、当該試料接触面F2においては、時分割で光の入射領域ARの位置が変更される。すなわち、主制御部181C及び移動手段23は、本発明の調整手段に相当し、ハーフミラー15は、本発明の反射手段に相当する。なお、本実施形態では、主制御部181C及び移動手段23により、前述の領域AR1〜AR9と同じ位置に領域ARが位置するように、ハーフミラー15の角度が調整される。
【0062】
画像処理部182Cは、画像処理部182Aと同様の機能を有する他、ハーフミラー15の角度が調整されて試料接触面F2における領域ARの位置が変更されるごとに、受光素子174から入力される撮像画像(受光結果)を取得して、当該撮像画像を処理する。また、画像処理部182Cは、受光されたラマン散乱光に基づいて、標的物質を同定する。
計数部183Cは、画像処理部182Cにより処理された撮像画像に基づいて、増強されたラマン散乱光が受光された試料接触面F2における領域の数を計数する。この際、計数部183Cは、移動される領域ARの位置ごとに取得される各撮像画像のうち、ラマン散乱光が受光された撮像画像の数を、試料接触面F2においてラマン散乱光が受光された領域の数として計数する。
そして、濃度取得部184Aが、記憶部185Aを参照して、計数部183Cにより計数された領域の数に応じた標的物質の濃度を取得する。
【0063】
なお、記憶部185Aには、標的物質ごとに前述のLUTが記憶されているが、当該LUTは、前述の部分光束がそれぞれ照射された複数の領域のうち、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数と、標的物質の濃度とが関連付けられたLUTではない。すなわち、本実施形態の記憶部185Aが記憶するLUTは、標的物質の濃度が予め設定された試料を交換ユニット31内に流通させ、移動手段23及びハーフミラー15により、試料接触面F2において光が入射される領域の位置を時分割で変更し、当該各領域(前述の領域AR1〜AR9に応じた位置の領域)のうち、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数と、当該標的物質の濃度とが関連付けられたLUTである。
【0064】
次に、測定装置10Cによる標的物質の濃度測定処理について説明する。
図13は、当該濃度測定処理を示すフローチャートである。
制御装置18Cは、濃度測定プログラムを処理して、交換ユニット31内を流通する試料に含まれる標的物質の濃度測定処理を実行する。
この濃度測定処理では、図13に示すように、制御装置18Cが、前述のステップSA1,SA2と同様の処理を実行する。
【0065】
そして、主制御部181Cが、移動手段23を制御して、ハーフミラー15の角度を調整して試料接触面F2における光の入射領域の位置を調整し(ステップSC1)、受光素子174が、当該領域から放射されるラマン散乱光を受光する(ステップSC2)。
この後、画像処理部182Cが、受光素子174により取得された撮像画像を処理するとともに、分光素子173による指紋スペクトル同定により標的物質の同定を行い(ステップSC3)、計数部183Cが、取得された撮像画像に基づいて、ラマン散乱光が検出された撮像画像の数を前述の領域の数として計数する(ステップSC4)。
【0066】
次に、主制御部181Cが、試料接触面F2において予め設定された全ての領域(前述の領域AR1〜AR9に対応する位置)に対して、光源装置13からの光を入射させたか否かを判定する(ステップSC5)。
ここで、光が入射されていない領域が存在すると判定された場合には、制御装置18Cは、処理をステップSC1に戻す。これにより、主制御部181Cが、前述の位置調整を再度実行し、試料接触面F2において、光が入射される領域の位置が変更される。
一方、全ての領域に対して光が入射されたと判定された場合には、濃度取得部184Aが、計数された領域の数に応じた標的物質の濃度を記憶部185Aから取得する(ステップSC6)。すなわち、本実施形態においては、ステップSC4,SC6が本発明の定量ステップに相当する。
以上により、濃度測定処理が終了し、試料に含まれる標的物質が定量される。
【0067】
以上説明した本実施形態に係る測定装置10Cによれば、前述の測定装置10Aと同様の効果を奏することができる他、以下の効果がある。
すなわち、計数部183Cにより、試料接触面F2において光源装置13からの光が入射される領域(前述の領域AR1〜AR9に応じた位置の領域)のうち、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数が計数される。そして、濃度取得部184Aが、記憶部185Aに記憶された対応する標的物質のLUTを参照して、当該領域の数に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0068】
また、光源装置13から出射され、ハーフミラー15を介して試料接触面F2に入射される光は、当該ハーフミラー15を移動させる移動手段23により、当該試料接触面F2における位置を変えて時分割で入射される。これによれば、当該光源装置13から出射された光が複数の光束に分割されずに試料接触面F2の各領域(前述の領域AR1〜AR9に応じた領域)に入射されるので、それぞれの領域に入射される光の強度のばらつき及び低下を防止できる他、増強電場の強度を高めることができる。従って、分割された光束が試料接触面F2に入射される場合に比べ、高い強度のラマン散乱光を生じさせることができ、受光素子174による受光精度を向上できる。
【0069】
光源装置13から出射された光は、移動手段23により当該光の中心軸に対する角度が調整されたハーフミラー15により反射され、試料接触面F2の各領域に入射される。これによれば、誘導部312及び排出部313と接続されたセンサーチップ311を移動させる場合に比べ、測定装置10Cの構成が複雑化することを抑制できる。
また、移動手段23は、光源装置13から出射された光の光路と、試料接触面F2から放射された光の光路とを分離するハーフミラー15を移動させて、当該試料接触面F2に対して光が入射される領域を変更しているので、当該光が入射される位置を変更するために反射手段を別途設ける必要が無い。このため、当該ハーフミラー15が採用された測定装置の構成を流用できる。
【0070】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態に係る測定装置は、前述の測定装置10Cと同様の構成を有する。ここで、測定装置10Cでは、前述の測定装置10Aと同様に、試料接触面F2において増強されたラマン散乱光が検出される領域の数に応じた標的物質の濃度を取得する構成であった。これに対し、本実施形態に係る測定装置では、前述の測定装置10Bと同様に、各領域から検出されるラマン散乱光の総和に応じた標的物質の濃度を取得する。この点で、本実施形態に係る測定装置と、測定装置10Cとは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図14は、本実施形態に係る測定装置10Dが有する装置本体11Dの構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る測定装置10Dは、図14に示すように、制御装置18Cに代えて制御装置18Dを有する他は、前述の測定装置10Cと同様の構成及び機能を有する。
この制御装置18Dは、計数部183C、濃度取得部184A及び記憶部185Aに代えて、総和算出部186D、濃度取得部184B及び記憶部185Bを有する他は、前述の制御装置18Cと同様の構成及び機能を有する。
【0072】
総和算出部186Dは、総和算出部186と同様の機能を有するが、試料接触面F2において光が入射される領域の位置が変更されるごとに画像処理部182Cから入力されて処理される各撮像画像に基づいて、増強されたラマン散乱光の強度の総和を算出する点で、総和算出部186と異なる。すなわち、総和算出部186Dは、各撮像画像から取得されるラマン散乱光の強度をそれぞれ加算して、試料接触面F2における複数の領域から受光されるラマン散乱光の強度の総和を算出する。
そして、濃度取得部184Bが、記憶部185Bの対応するLUTを参照して、当該強度の総和に基づいて、同定された標的物質の濃度を取得する。
【0073】
なお、記憶部185Bに記憶されているLUTは、標的物質の濃度が予め設定された試料を交換ユニット31内に流通させ、移動手段23及びハーフミラー15により、試料接触面F2において光が入射される領域の位置を時分割で変更し、当該各領域(前述の領域AR1〜AR9に応じた位置の領域)から受光される標的物質のラマン散乱光の強度の総和と、当該標的物質の濃度とが関連付けられたLUTである。
【0074】
次に、測定装置10Dによる標的物質の濃度測定処理について説明する。
図15は、当該濃度測定処理を示すフローチャートである。
制御装置18Dは、濃度測定プログラムを処理して、交換ユニット31内を流通する試料に含まれる標的物質の濃度測定処理を実行する。
この濃度測定処理では、図15に示すように、制御装置18Dが、前述のステップSA1,SA2及びSC1〜SC3と同様の処理を実行する。
【0075】
このステップSC3の後、総和算出部186Dが、画像処理部182Cにより処理された撮像画像に基づいて、ラマン散乱光の強度の総和を算出する(ステップSD1)。
この後、制御装置18Dは、前述のステップSC5を実行し、当該ステップSC5にて、予め設定された全ての領域に光が入射されたと判定された場合には、濃度取得部184Bが、算出された強度の総和に応じた標的物質の濃度を記憶部185Bから取得する(ステップSC6)。すなわち、本実施形態においては、ステップSD1,SC6が本発明の定量ステップに相当する。
以上により、濃度測定処理が終了し、試料に含まれる標的物質が定量される。
【0076】
以上説明した本実施形態に係る測定装置10Dによれば、前述の測定装置10B,10Cと同様の効果を奏することができる。
すなわち、総和算出部186Dが、試料接触面F2において当該試料接触面F2を走査するように移動される光の入射領域(領域AR1〜AR9に対応する位置の領域AR)から受光素子174により受光されたラマン散乱光の強度の総和を算出する。そして、濃度取得部184Bが、記憶部185Bの対応する標準物質のLUTを参照して、算出された強度の総和に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0077】
また、光源装置13から出射された光は、移動手段23及びハーフミラー15により、当該試料接触面F2における位置を変えて時分割で入射される。これによれば、当該光源装置13から出射された光が複数の光束に分割されて試料接触面F2に入射される場合に比べ、当該試料接触面F2に入射される光の強度の低下を防止できる他、増強電場の強度を高めることができる。従って、高い強度のラマン散乱光を生じさせることができ、受光素子174による受光精度を向上させることができる。
【0078】
移動手段23は、ハーフミラー15を移動させる構成であるので、センサーチップ311を移動させる場合に比べ、測定装置10Cの構成が複雑化することを抑制できる。また、試料接触面F2への光の入射位置を変更するための移動手段23の移動対象として、従来あるハーフミラー15が採用されているので、他の反射手段を別途設ける必要が無い。このため、当該ハーフミラー15が採用された測定装置の構成を流用できる。
【0079】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態に係る測定装置は、前述の測定装置10Cと同様の構成を有する。ここで、当該測定装置10Cでは、試料接触面F2に対する光の入射位置を変更するために移動手段23が移動させる移動対象はハーフミラー15であったのに対し、本実施形態に係る測定装置では、当該移動対象はセンサーチップ311である。この点で、当該測定装置と測定装置10Cとは相違する。
移動手段23は、本実施形態では、本発明の光入射体移動手段として機能する。この移動手段23は、制御手段として機能する主制御部181Cの制御の下、試料接触面F2に対する光の入射位置が変更されるように、当該光の中心軸に対して直交する方向にセンサーチップ311を平行移動させる。これにより、図12において示したように、試料接触面F2において光が入射される領域ARの位置が変更される。
【0080】
このような構成によっても、測定装置10Cが実行する濃度測定処理と同様の処理を実行することにより、当該測定装置10Cと同様の効果を奏することができる。
すなわち、計数部183Cが、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数を計数し、濃度取得部184Aが、記憶部185Aに記憶された対応する標的物質のLUTを参照して、当該領域の数に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0081】
移動手段23は、試料接触面F2に入射される光の中心軸に対して直交する方向にセンサーチップ311を平行移動させるので、当該光が入射される試料接触面F2の各領域にて、当該試料接触面F2と入射される光の中心軸とは常に一定の角度(直角)となる。これによれば、当該各領域でのラマン散乱光の受光に差異が生じないようにすることができるので、測定された濃度の信頼性を向上できる。また、試料接触面F2に対する直交方向に、当該試料接触面F2に入射される光の中心軸を沿わせやすくできるので、ラマン散乱光の受光を安定化できる。
【0082】
なお、本実施形態に係る測定装置は、測定装置10Cと同様の構成を有し、制御装置18Cを有する構成としている。しかしながら、制御装置18Cに代えて制御装置18Dを有する構成としてもよい。このような構成によっても、測定装置10Dが実行する濃度測定処理と同様の処理を本実施形態に係る測定装置が実行することにより、当該測定装置10Dと同様の効果を奏することができる。
すなわち、総和算出部186Dが、光源装置13からの光が入射される試料接触面F2の各領域から受光されるラマン散乱光の強度の総和を算出し、濃度取得部184Bが、対応する標準物質のLUTから、算出された強度の総和に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0083】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
本実施形態に係る測定装置は、前述の測定装置10Cと同様の構成を有する。ここで、測定装置10Cでは、前述のように、移動手段23の移動対象はハーフミラー15であったのに対し、本実施形態に係る測定装置では、当該移動対象は光源装置13である。この点で、当該測定装置と測定装置10Cとは相違する。
移動手段23は、本実施形態では、光源移動手段として機能する。この移動手段23は、制御手段として機能する主制御部181Cの制御の下、光源装置13から出射される光の中心軸に対する直交方向に、当該光源装置13を平行移動させる。これにより、図12において示したように、試料接触面F2において光が入射される領域ARの位置が変更される。
【0084】
このような構成によっても、測定装置10Cが実行する濃度測定処理と同様の処理を実行することにより、当該測定装置10Cと同様の効果を奏することができる。
すなわち、計数部183Cが、標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数を計数し、濃度取得部184Aが、対応する標的物質のLUTを参照して、当該領域の数に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0085】
移動手段23は、光源装置13から出射される光の中心軸に対する直交方向に、当該光源装置13を平行移動させるので、当該光が入射される試料接触面F2における各領域では、当該試料接触面F2と入射される光の中心軸とは常に一定の角度(直角)となる。これによれば、各領域でのラマン散乱光の受光に差異が生じないようにすることができるので、測定された濃度の信頼性を向上できる。また、試料接触面F2に対する直交方向に、当該試料接触面F2に入射される光の中心軸を沿わせやすくできるので、ラマン散乱光の受光を安定化できる。
また、移動手段23が、光源装置13を移動させるので、センサーチップ311を移動させる必要がなく、測定装置の構成が複雑化することを抑制できる。
【0086】
なお、本実施形態に係る測定装置では、光源装置13から出射される光の中心軸に対する直交方向に沿う回動軸を中心として、当該光源装置13を回動させるように移動手段23を構成することも可能である。この場合でも、試料接触面F2における領域ARの位置を変更できる。
【0087】
また、本実施形態に係る測定装置は、測定装置10Cと同様の構成を有し、制御装置18Cを有する構成としている。しかしながら、制御装置18Cに代えて制御装置18Dを有する構成としてもよい。このような構成によっても、測定装置10Dが実行する濃度測定処理と同様の処理を本実施形態に係る測定装置が実行することにより、当該測定装置10Dと同様の効果を奏することができる。
すなわち、総和算出部186Dが、光源装置13からの光が入射される試料接触面F2の各領域から受光されるラマン散乱光の強度の総和を算出し、濃度取得部184Bが、対応する標準物質のLUTから、算出された強度の総和に応じた濃度を取得することにより、標的物質の濃度を取得できる。従って、試料に含まれる標的物質の濃度を測定できる。
【0088】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、試料接触面F2に形成された各突出部F21のピッチ、金属微粒子M間の間隔、当該試料接触面F2に入射される光の直径等は、前述の第1実施形態で示した数値としたが、本発明はこれに限らない。すなわち、適切に標的物質から放射されるラマン散乱光を受光及び検出可能であれば、これらの数値は適宜設定可能である。
【0089】
前記各実施形態では、試料接触面F2を9つの領域AR1〜AR9に区分し、当該各領域AR1〜AR9に光源装置13からの光が入射するように、当該光を分割した部分光束を入射させたり、或いは、時分割で各領域AR1〜AR9に光を入射させたりしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、試料接触面F2において光が入射される領域の数は、2以上であれば適宜設定してよい。
【0090】
前記各実施形態では、センサーチップ311において、装置本体11A〜11D側、すなわち、光が入射される側の基板3112の内面に形成された試料接触面F2に、金属微粒子Mにより被覆される複数の突出部F21を形成したが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該複数の突出部が、基板3111の内面に形成された試料接触面F1に形成されていてもよい。
【0091】
前記各実施形態では、センサーチップ311の試料接触面F2には、金属微粒子Mにより被覆される円筒状の突出部F21が、格子状に突設されているとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、標的物質から放射されるラマン散乱光を、表面増強ラマン散乱により増強できる増強電場を形成可能であれば、当該突出部の形状及び配置等は、適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0092】
10A〜10D…測定装置、13…光源装置(光源)、311…センサーチップ(光入射体)、14…光束分割装置(照射手段)、15…ハーフミラー(反射手段)、18A〜18D…制御装置(定量手段)、23…移動手段(調整手段、光入射体移動手段、光源移動手段)、174…受光素子(受光手段)、181C…主制御部(調整手段、制御手段)、183A,183C…計数部、184A,184B…濃度取得部、186,186D…総和算出部、185A,185B…記憶部、EF…増強電場、F2…試料接触面、N…標的物質。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる標的物質の濃度を測定する測定装置であって、
光源と、
金属粒子により増強電場が形成される試料接触面を有し、前記光源から出射された光により前記標的物質から放射されるラマン散乱光を前記増強電場にて増強させる光入射体と、
前記光源から出射された光を、前記光入射体における複数の領域に入射させる照射手段と、
前記複数の領域からそれぞれ放射された前記ラマン散乱光を受光する受光手段と、
前記領域の総数と、それぞれの前記領域から受光された前記ラマン散乱光の強度とに基づいて、前記標的物質の濃度を定量する定量手段と、を有する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置において、
前記複数の領域のうち前記標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数と、当該領域の数に応じて予め測定された前記標的物質の濃度とを関連付けて記憶する記憶部を備え、
前記定量手段は、
前記複数の領域のうち前記受光手段により前記標的物質のラマン散乱光が受光された領域の数を計数する計数部と、
前記計数部により計数された前記領域の数に応じた前記標的物質の濃度を、前記記憶部から取得する濃度取得部と、を有する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測定装置において、
前記複数の領域から受光される前記標的物質のラマン散乱光の強度の総和と、当該強度の総和に応じた前記標的物質の濃度とを関連付けて記憶する記憶部を備え、
前記定量手段は、
前記複数の領域から前記受光手段により受光された前記標的物質のラマン散乱光の強度の総和を算出する総和算出部と、
算出された前記強度の総和に応じた前記標的物質の濃度を、前記記憶部から取得する濃度取得部と、を有する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定装置において、
前記照射手段は、前記光源から出射された光を複数の光束に分割し、それぞれの前記光束をそれぞれの前記領域に入射させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の測定装置において、
前記照射手段は、前記光源から出射された光を、時分割でそれぞれの前記領域に入射させる
ことを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の測定装置において、
前記照射手段は、
前記光源から出射された光を反射させる反射手段と、
前記光源から出射された光の中心軸に対する前記反射手段の角度を調整して、当該反射手段により反射された光を、それぞれの前記領域に入射させる調整手段と、を有する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項5に記載の測定装置において、
前記照射手段は、
前記光入射体に入射される光の中心軸に対して交差する方向に当該光入射体を移動させる光入射体移動手段と、
それぞれの前記領域に入射されるように、前記光入射体移動手段を制御する制御手段と、を有する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項8】
請求項5に記載の測定装置において、
前記照射手段は、
前記光源を移動させる光源移動手段と、
前記光源移動手段により移動された前記光源から出射された光が、それぞれの前記領域に入射されるように、前記光源移動手段を制御する制御手段と、を有する
ことを特徴とする測定装置。
【請求項9】
試料に含まれる標的物質の濃度を測定する測定方法であって、
金属粒子により増強電場が形成される試料接触面において予め総数が設定された複数の領域に光を入射させて、当該光により前記標的物質から放射されるラマン散乱光を前記増強電場にて増強させる散乱光増強ステップと、
前記複数の領域から放射された前記ラマン散乱光を受光する受光ステップと、
前記領域の総数と、それぞれの前記領域から受光された前記ラマン散乱光の強度とに基づいて、前記標的物質の濃度を定量する定量ステップと、を有する
ことを特徴とする測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−198059(P2012−198059A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61225(P2011−61225)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】