説明

湯水混合水栓

【課題】湯水混合水栓の水栓本体とは別体を成すカートリッジ収容部材を介して弁カートリッジを水栓本体に取り付ける場合において、カートリッジ収容部材の浮上りに起因して弁カートリッジの再組付けが困難化する問題を解決する。
【解決手段】収容凹所120を有する有底筒状のカートリッジ収容部材98を水栓本体12とは別体に設けて、これを水栓本体12の本体ボデー92の保持凹所104内に配置する。そしてカートリッジ収容部材98の底部100に通水配管36B,42の上端部を接続するとともに、収容凹所120内に弁カートリッジ60を挿入して収容し、且つカートリッジ収容部材98の周壁部102の外周面と本体ボデー92の保持凹所104の内周面とに跨って、カートリッジ収容部材98を上方向に固定する係合部116を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は湯水混合水栓に関し、特に弁カートリッジ周りの構造に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりキッチンの水栓,洗面化粧台の水栓その他の水栓として、レバーハンドルの回動操作によって吐水の水量と温度の調節を行う形式のシングルレバー式の湯水混合水栓が広く用いられている。
【0003】
この種の湯水混合水栓として従来、固定弁体と、レバーハンドルの操作により固定弁体上を摺動運動して吐水の流量及び温度の調節を行う、固定弁体とともに湯水の混合弁を構成する可動弁体とを弁ケースの内部に収納して成る弁カートリッジを、その保持側である水栓本体における本体ボデーの保持凹所に挿入して保持させたものが公知である。
【0004】
湯水混合水栓では、図8に示しているように給水元管からの水,給湯元管からの湯がそれぞれ通水配管としての供給管200,200を通じて弁カートリッジに、例えば図8の例では水栓本体202に内蔵された弁カートリッジに供給され、そこで水と湯とが混合されて、混合水が吐水部へと導かれる。
【0005】
この場合、水栓本体202の本体ボデーに水と湯のそれぞれの流入通路を形成しておいて、上記の供給管200をその流入通路に連通させる状態に本体ボデーに対してねじ接続又は溶接等にて接続するのが一般的である。
しかしながら水栓本体202の形状や構造等によっては、こうしたことが困難である場合がある。
【0006】
そのような場合には、上端に開口を有する有底筒状をなして弁カートリッジの収容凹所を形成するカートリッジ収容部材を、水栓本体の本体ボデーとは別体に設けて、カートリッジ収容部材を本体ボデーの保持凹所内に配設し、カートリッジ収容部材の底部に通水配管の上端部を接続するとともに、収容凹所内に上記の上端の開口を通じて弁カートリッジを挿入し、収容するようになすことが考えられる。
【0007】
ところで、図8に示すように供給配管200として従来からフレキシブルホース206が広く用いられており、そのフレキシブルホース206の施工時に、かかるフレキシブルホース206が部分拡大図に示しているように急角度で曲げられた状態に施工されてしまうことがある。
フレキシブルホース206がこのような状態に施工されてしまうと、フレキシブルホース206が無理のない形状に戻ろうとしてカートリッジ収容部材に対し上向きの押上力が発生してしまう。
【0008】
このため、弁カートリッジのメンテナンス等のために一旦これを取り外したときに、カートリッジ収容部材がフレキシブルホース206による上向きの押上力によって元の位置から浮き上がってしまい、その後弁カートリッジを再組付けしようとしたときに、フレキシブルホース206による上向きの押上力が大きな抵抗となって、弁カートリッジを良好に再組付けができなくなってしまうといったことが生じ得る。
【0009】
尚、図8の例では供給管がフレキシブルホース206と、金属の銅管204とからなっており、フレキシブルホース206による押上力は銅管204を介して弁カートリッジに作用する。
【0010】
特に弁カートリッジの弁ケースが、上部のケース本体と下部の底蓋とを上下に組み付けて構成してあって、ケース本体を下向きに押圧することで内部のシール部材を弾性圧縮させ、シール作用させるものである場合、弁カートリッジの再組付けに際してシール部材を十分に圧縮弾性変形させ得ず、シール部材によるシールが不完全となってしまう恐れを生ずる。
【0011】
尚、下記特許文献1には弁カートリッジを水栓本体の本体ボデーに対し係合具にて係合させ、固定状態とする点が開示されている。但しこの特許文献1に開示のものは、弁カートリッジを直接水栓本体の本体ボデーに固定するもので、本発明とは構成の異なる別異のものである。
更に下記特許文献2には、弁カートリッジを水栓本体の本体ボデーに対してカートリッジ押えを用いて押さえつけ、固定するようになした点が開示されている。但しこの特許文献2に開示のものも、弁カートリッジを直接水栓本体の本体ボデーに対して固定するものであり、本発明とは別異のものである。
【0012】
【特許文献1】特開2004−251050号公報
【特許文献2】特開平2001−355753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上のような事情を背景とし、水栓本体の本体ボデーとは別体を成すカートリッジ収容部材を介して弁カートリッジを水栓本体に取り付けるようになした場合において、カートリッジ収容部材の浮上りに起因して弁カートリッジの再組付けが困難化する問題を解決し、弁カートリッジを良好に再組付けすることのできる湯水混合水栓を提供することを目的として成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して請求項1のものは、固定弁体と、レバーハンドルの操作により該固定弁体上を摺動運動して吐水の流量及び温度の調節を行う、該固定弁体とともに湯水の混合弁を構成する可動弁体とを弁ケースの内部に収納して成る弁カートリッジを、該弁カートリッジの保持側である水栓本体における本体ボデーの保持凹所に挿入して保持させてなる湯水混合水栓において、上端に開口を有する有底筒状をなして内側に前記弁カートリッジの収容凹所を形成するカートリッジ収容部材を前記水栓本体の本体ボデーとは別体に設けて、該カートリッジ収容部材を該本体ボデーの前記保持凹所内に配設し、該カートリッジ収容部材の底部に通水配管の上端部を接続するとともに、該収容凹所内に前記上端の開口を通じて前記弁カートリッジを挿入して収容し、且つ該カートリッジ収容部材の前記底部から立ち上がる周壁部の外周面と前記本体ボデーの保持凹所の内周面とに跨って、該カートリッジ収容部材を軸方向且つ該保持凹所からの抜け方向である上方向に固定する係合部を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項2のものは、請求項1において、前記係合部が、リング状をなし周方向に分断された形態の弾性を有する止め輪と、前記カートリッジ収容部材の前記周壁部の外周面と前記保持凹所の内周面とのそれぞれに、径方向に対向して設けられ、該止め輪に対して前記抜け方向に係合する係合溝とを有していることを特徴とする。
【0016】
請求項3のものは、請求項2において、前記本体ボデーには前記保持凹所を内側に形成する周壁部が、前記軸方向の前記係合溝の位置する部分において周方向に一部切り欠かれており、その切欠部において前記止め輪を径方向に弾性変形操作可能となしてあることを特徴とする。
【0017】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記本体ボデーの前記保持凹所には、前記カートリッジ収容部材を下側から支持する支持部が設けられる一方、該カートリッジ収容部材には対応する被支持部が設けられており、該保持凹所の上端部内周面の雌ねじ部に対する固定ナットのねじ込みにより該カートリッジ収容部材が下向きに押圧され、前記保持凹所に固定されるようになしてあることを特徴とする。
【0018】
請求項5のものは、請求項4において、前記弁カートリッジは、前記弁ケースが上部のケース本体と下部の底蓋とを上下に組み付けて構成してあって、該ケース本体が下向きに押圧されることで内部のシール部材が弾性圧縮せしめられ、シール作用するようになしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0019】
以上のように本発明は、カートリッジ収容部材の底部から立ち上がる周壁部の外周面と本体ボデーの保持凹所の内周面とに跨って、カートリッジ収容部材を軸方向且つ収容凹所からの抜け方向である上方向に固定する係合部を設けたものである。
かかる本発明によれば、弁カートリッジの固定を解除してこれを水栓本体から取り外したときに、フレキシブルホースによる上向きの押上力によってカートリッジ収容部材が元の位置から浮き上がってしまう現象を良好に防止することができ、従ってその後において弁カートリッジを再組付けする際に、良好にこれを再組付けすることができる。
【0020】
この場合において、上記係合部を、リング状をなし周方向に分断された形態の弾性を有する止め輪と、カートリッジ収容部材の周壁部の外周面と保持凹所の内周面とのそれぞれに径方向に対向して設けられ、止め輪に対して上記の抜け方向に係合する係合溝とを含んで構成しておくことができる(請求項2)。
【0021】
このようにしておけば、カートリッジ収容部材の外周面と保持凹所の内周面との各係合溝に対して、単に弾性を有する止め輪を係合させるだけで、カートリッジ収容部材の抜け方向の移動を防止でき、また係合部を簡単な構造で構成することができる。
【0022】
次に請求項3は、本体ボデーの保持凹所を内側に形成する周壁部を、軸方向の係合溝の位置する部分において周方向に一部切り欠き、その切欠部において止め輪を径方向に弾性変形操作可能となしたものである。
このようしておけば、止め輪及び係合溝によって保持凹所内に固定したカートリッジ収容部材を、止め輪を弾性変形させることによって保持凹所から、即ち本体ボデーから取り外すことが可能となり、カートリッジ収容部材を本体ボデーの収容凹所に固定状態にロックしてしまう場合と異なって、即ち嵌め殺し状態としてしまう場合と異なって、必要な場合にカートリッジ収容部材を取り外すことができ、水栓本体に外観不良があったり或いはカートリッジ収容部材に何らかの不良があったりした場合において、カートリッジ収容部材を含む全体を破棄することなく、不良を生じている部材だけを取り替えるといったことが可能となる。
【0023】
本発明では、本体ボデーの保持凹所にカートリッジ収容部材を下側から支持する支持部を設ける一方、カートリッジ収容部材に対応する被支持部を設け、保持凹所の上端部内周面の雌ねじ部に対する固定ナットのねじ込みによりカートリッジ収容部材を下向きに押圧し、保持凹所に固定するようになしておくことができる(請求項4)。
【0024】
このようにすることで、固定ナットのねじ込みによりカートリッジ収容部材を容易に保持凹所内に固定状態となすことができる。
但し単にこのようにしてカートリッジ収容部材を固定しただけであると、固定ナットを取り外して弁カートリッジを外してしまうと、フレキシブルホースからの上向きの押上力でカートリッジ収容部材が元の位置から浮き上がってしまう。
【0025】
しかるに本発明では、このような固定手段とは別に設けた係合部にてカートリッジ収容部材が抜け方向に移動阻止されているため、フレキシブルホースからの押上力にてカートリッジ収容部材が浮き上がってしまうのを防止できる。
【0026】
本発明は、弁カートリッジの弁ケースが上部のケース本体と下部の底蓋とを上下に組み付けて構成してあって、ケース本体が下向きに押圧されることで内部のシール部材を弾性圧縮させ、シール作用させるようになしてあるものに適用して特に効果の大なるものである(請求項5)。
【0027】
本発明によれば、カートリッジ収容部材の浮上りを良好に防止できるため、固定ナットの締込みによる下向きの押圧力でシール部材を十分に弾性圧縮させることができ、シールが不十分となるのを有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明を、自動水栓としての湯水混合水栓に適用した場合の実施形態を、図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10はカウンタで、このカウンタ10上に起立する状態で水栓本体12が設けられ、更にこの水栓本体12から吐水管14が延び出している。
吐水管14の先端部は吐水口16を有する吐水ヘッド18とされ、この吐水ヘッド18が、これに接続された可撓性を有する給水ホース22(図2参照)とともに、そのホルダ管としての吐水管本体20から引き出し可能とされている。
即ちこの実施形態の湯水混合水栓は、ホース収納式の水栓である。
【0029】
吐水管14は、ここでは逆U字状をなすグースネック形状をなしており、そしてその吐水管本体20の上面に、人体検知センサとして温水用センサ26(以下単にセンサ26とする)と浄水用センサ28(以下単にセンサ28とする)とが設けられている。
ここでセンサ26はその検知方向前方、即ち上方に使用者が手かざししたとき、これを検知して吐水口16から適温に温調された温水を吐水させる。
温水用センサ26は、その後人体非検知となっても温水の吐水を継続させ、再び使用者による手かざし操作によって人体検知したとき、吐水口16からの温水の吐水を停止させる。
【0030】
センサ28もまた同様で、使用者の手かざし操作によって人体検知すると、そこで吐水口16から浄水を吐水させる。
センサ28は、その後人体非検知となっても浄水の吐水を継続させ、そして再び使用者が手かざし操作することによって人体検知したとき、そこで浄水の吐水を停止させる。
即ちセンサ26,28は、何れも人体検知する毎に吐水と止水とを切り替える手かざし式の交互センサとされている。
【0031】
水栓本体12には、その内部に後述の湯水の混合弁を内蔵した弁カートリッジ60が設けられ、またその操作部としてレバーハンドル32が設けられている。
レバーハンドル32は、左右回動操作によって水と湯との混合比率を変化させることで吐水の温度を調節し、また上下回動操作によって吐水の流量を調節する。
【0032】
この実施形態において、給水元管からの水はカウンタ10下の止水栓34を経て、通水配管としての水供給管36を通じ弁カートリッジ60へと供給される。
また給湯元管からの湯が、止水栓38を経て通水配管としての湯供給管40を通じて弁カートリッジ60へと供給される。
そしてそれらを通じて供給された水と湯とが、弁カートリッジ60で所定比率で混合されて適温の温水とされ、同じく通水配管としての流出管42へと流出する。
流出管42に流出した温水は、給水ホース22を通じて吐水ヘッド18に導かれ、吐水口16から吐水せしめられる。
【0033】
尚上記の水供給管36は、止水栓34に繋がる下部がフレキシブルホース36Aからなっており、また弁カートリッジ60側の上部が金属製の銅管36Bから成っている。
同様に湯供給管40もまた、止水栓38に繋がる下部がフレキシブルホース40Aから成っており、また弁カートリッジ60側の上部が銅管40Bから成っている。
尚上記の流出管42もまた銅管から成っている。
【0034】
カウンタ10の下方には、制御ボックス44が配置されており、そしてその制御ボックス44の内部において、流出通路46上にこれを開閉する電磁弁48が設けられていて、その電磁弁48の開閉により、吐水口16からの温水の吐水と止水とが行われる。
【0035】
制御ボックス44の内部にはまた、マイコンを主要素とする制御部50が設けられ、この制御部50に対して電磁弁48が電気的に接続されている。
ここで制御部50は電磁弁48の作動制御を行う。
この制御部50にはまた、上記のセンサ26及び28が電気的に接続されている。
制御部50は、センサ26による人体検知に基づいて電磁弁48を開閉制御し、吐水口16からの温水の吐水と止水とを制御する。
【0036】
給水元管からの水はまた、水供給管36から分岐した浄水通路52へと取り出され、そして浄水通路52上に設けられた浄水器54のフィルタを通過してそこで浄化された上で、浄化後の水(浄水)が、弁カートリッジ60をバイパスして流出通路46に導かれ、そしてその流出通路46を通じて吐水ヘッド18の吐水口16から吐水される。
【0037】
この浄水通路52上には、浄水器54への原水の流入側において電磁弁56と定流量弁58とが設けられている。
電磁弁56は制御部50に電気的に接続されており、制御部50による電磁弁56の開閉制御によって、吐水口16からの浄水の吐水と止水とが行われる。
詳しくは、センサ28による人体検知に基づいて電磁弁56が制御部50により開閉制御されることによって、浄水の吐水と止水とが行われる。
【0038】
図4に示しているように、水栓本体12の内部には弁カートリッジ60が設けられている。
弁カートリッジ60は、セラミックディスクから成る固定弁体62と、固定弁体62上を摺動運動する、固定弁体62とともに湯水の混合弁66を構成する、セラミックディスクから成る可動弁体64、及び可動弁体64の上面に一体移動する状態に組み付けられた円盤状のディスクキャップ68とを有しており、それらが弁ケース70の内部に収容されている。
弁ケース70は、図中上部のケース本体72と、下部の底蓋74との2分割構造とされており、それらが上下に組み付けられて弁ケース70を構成している。
【0039】
固定弁体62及び底蓋74には、互いに連通した状態で水,湯を流入させるための内部通路76が設けられ、また別の位置に互いに連通した状態で混合水を流出させるための内部通路78が設けられている。
一方可動弁体64には、内部通路76から流入した水と湯とを混合する混合室80が形成されている。
混合室80で混合された混合水(温水)は、内部通路78を通じて流出し、そしてその流出した混合水は流出管42及び上記の給水ホース22を通じて、吐水ヘッド18の吐水口16へと送られる。
【0040】
上記固定弁体62と底蓋74との間には、それら固定弁体62と底蓋74とによって弁ケース70の軸方向に挟まれる状態でゴム等の弾性を有するシール部材82が設けられ、このシール部材82によって底蓋74と固定弁体62との間が水密にシールされている。
また底蓋74と後述のカートリッジ収容部材98の底部100との間には、同じくゴム等の弾性を有するシール部材84が、それら底蓋74と底部100とによって軸方向に挟まれる状態で設けられており、このシール部材84によって底蓋74と底部100との間が水密にシールされている。
【0041】
ここでシール部材82,84は弁ケース70の軸方向に弾性圧縮せしめられており、その弾性圧縮状態の下で所要のシール機能を発揮する。
即ち弁ケース70における上部のケース本体72は、底蓋74に対して図中下向きに相対的に微小移動可能であり、また底蓋74は、シール部材84を弾性圧縮しつつカートリッジ収容部材98における底部100に対して相対的に下向きに微小移動可能である。
【0042】
上記レバーハンドル32からは駆動レバー86が下向きに延び出しており、その下端部がディスクキャップ68の係合凹部88に係合させられている。
ディスクキャップ68及び可動弁体64は、この駆動レバー86の下端部とともに図4中左右方向及び紙面と直角方向の回転方向に一体に移動せしめられる。
そして可動弁体64の固定弁体62に対する図4中左右方向の摺動運動によって吐水の流量調節が行われ、また紙面と直角方向の回動且つ摺動運動によって、水と湯との混合比率が変化せしめられる。即ち吐水の温度が変化せしめられる。
【0043】
この駆動レバー86は、紙面と直角方向の軸90を介して回転体85に取り付けられている。
また回転体85は、弁ケース70の内部に回転可能に組み込まれている。
駆動レバー86は、この軸90周りにレバーハンドル32と一体に回動し、また回転体85の軸心周りにレバーハンドル32とともに回転体85と一体に回転運動する。
【0044】
図2において、92は水栓本体12における本体ボデーで、全体として筒状を成している。
この本体ボデー92は、その上部が吐水管14用の取付部94と、弁カートリッジ60用の取付部96とに二股に分岐させられている。
取付部94,96はそれぞれ略円筒状を成しており、そして一方の取付部94に、吐水管14の基端部が取り付けられ、また取付部96に、上記の弁カートリッジ60が図4のカートリッジ収容部材98を介して取り付けられている。
このカートリッジ収容部材98は、底部100とこれから立ち上がる周壁部102とを有する、上端に開口を有する有底円筒状のもので、水栓本体12の本体ボデー92と別体に設けられている。
【0045】
図6において、104は取付部96の周壁部103の内側に形成された平面形状が円形の保持凹所で、カートリッジ収容部材98は、この保持凹所104内部に挿入され、保持されている。
そしてこのカートリッジ収容部材98の底部100に対して、上記の銅管36B,40Bがそれぞれ固定弁体62及び底蓋74の上記の内部通路76に連通する状態でねじ接続されており、また流出管42が、固定弁体62及び底蓋74における上記の流出側の内部通路78に連通する状態で溶接により接続されている。
【0046】
この保持凹所104には、その下部に径方向内方に突出する形態で支持部106が設けられている。
ここで支持部106は、図5に示しているように保持凹所104の内周面に沿って半周強の周長で設けられている。
一方、カートリッジ収容部材98の底部100には、その外周面に沿って被支持部108が全周に亘って環状に設けられており、この被支持部108が、支持部106によって下側から支持されている。
即ちカートリッジ収容部材98は、被支持部108を支持部106に対して下向きに当接させる状態に取付部96に取り付けられ、固定されている。
【0047】
カートリッジ収容部材98における底部100の外周面にはまた、被支持部108の上側位置に係合溝110が全周に亘って設けられている。
また保持凹所104の側にも、係合溝110に対し径方向に対向する位置において係合溝112が設けられている。
そしてそれら係合溝110,112に跨って、径方向に弾性を有する金属製のCリング、即ち周方向に分断された形態のCリング(止め輪)114が設けられ、かかるCリング114が係合溝110,112のそれぞれにカートリッジ収容部材98の軸方向、即ち図中斜め上下方向に係合せしめられている。
【0048】
詳しくは、Cリング114の内周側が係合溝110に係合せしめられ、また外周側が係合溝112に係合せしめられ、係るCリング114を介して、カートリッジ収容部材98が保持凹所104に対して図中上方向の抜け方向に係合せしめられ、その係合作用によって、カートリッジ収容部材98が上方向に抜け防止、詳しくは浮上り防止されている。
この実施形態では、このCリング114及び係合溝110,112によって係合部116が構成されている。
【0049】
尚Cリング114には、図6中部分拡大断面図に示しているように、図中下方に進むに連れて漸次小径化するテーパ形状のカム面118が外周側に形成されている。
このCリング114は、その成形形状が図4に示す組付状態よりも拡径形状とされており、その内周側をカートリッジ収容部材98の係合溝110に嵌め合せた状態で、Cリング114を保持凹所104の内周面に沿って図中下向きに、カートリッジ収容部材98とともに移動させて行くと、被支持部108が支持部106に当接し、そしてCリング114が保持凹所104側の係合溝112に対向して位置したところで、Cリング114が拡径方向に拡がって外周側を係合溝112に係合させる。
その際にテーパ形状のカム面118は、Cリング114の移動を円滑に案内する。
【0050】
この実施形態では、カートリッジ収容部材98を保持凹所104内に位置させる状態に取付部96に取り付けた状態の下で、カートリッジ収容部材98の内側に形成される収容凹所120に、弁カートリッジ60をその上端の開口から挿入し、そして保持凹所104の上端部内周面の雌ねじ部122に対して、図4に示しているように雄ねじ124を有する固定ナット126をねじ込むことで、弁カートリッジ60を取付部96に取り付けることができる。
【0051】
このとき、固定ナット126の締め込みによる下向きの押圧力は、先ず弁カートリッジ60におけるケース本体72に加えられ、そしてその押圧力によってシール部材82,84が弾性圧縮せしめられ、それらシール部材82,84が本来のシール作用状態となる。
また弁カートリッジ60が、その固定ナット126による下向きの押圧力によって、カートリッジ収容部材98の底部100に対して強く押圧された状態に、カートリッジ収容部材98に対して軸方向に固定される。
尚、当初の組付けに際しては図3に示しているように予めカートリッジ収容部材98の収容凹所120内にカートリッジ60を収容した状態で、それらを保持凹所104に挿入し、取付部96に対して取り付けることができる。
【0052】
一方、弁カートリッジ60のメンテナンス等の必要が生じた場合においては、固定ナット126を外すことによって、弁カートリッジ60を図4中上向きに取り出すことができる。
このとき、カートリッジ収容部材98に対してフレキシブルホース36A,40Aからの押上力が銅管36B,40Bを介して働いていると、また図7の比較例に示しているように係合部116が設けられていないと、カートリッジ収容部材98aは、フレキシブルホース36Aによる押上力によって保持凹所104a内において図中上向きに浮上りhを生じる。
【0053】
この場合、弁カートリッジ60を再組付けするに際し、固定ナット126をねじ込んで行ったときに、フレキシブルホース36Aからの押上力に抵抗して固定ナット126を締め込んでいかなければならず、その際の大きな抵抗によって固定ナット126を十分に締め込まなかったり、或いはフレキシブルホース36Aによる上向きの押上力によってカートリッジ収容部材98aが傾きを生じてしまい、その傾きによって固定ナット126を本来の締込位置まで十分に締め込められなくなってしまうことが生じる。
【0054】
この場合、シール部材82,84が十分に弾性圧縮せしめられず、その結果シール部材82,84によるシールが不十分となって、場合により漏水を生じてしまう。
特に固定弁体62と可動弁体64との摺動面は、シール部材82,84の弾性変形による反発力で密着接触せしめられてシール確保されるため、それら摺動面でのシール性が不十分となる恐れがある。
【0055】
しかるにこの実施形態では、図6に示しているように係合部116によるカートリッジ収容部材98の浮上り防止作用に基づいて、そのような不具合の発生を防止することができ、固定ナット126を本来の締込位置まで十分に締め込むことができるとともに、その固定ナット126の締込みによってシール部材82,84を十分に弾性圧縮させることができ、それらシール部材82,84に本来のシール性能を発揮させることができる。
【0056】
尚、カートリッジ収容部材98をCリング114及び係合溝110,112からなる係合部116によって、保持凹所104内に嵌め殺し状態に固定してしまうと、水栓本体12の本体ボデー92の外観不良やカートリッジ収容部材98等の部品に不良が生じていた場合、全体を破棄しなければならなくなってしまう。
そこでこの実施形態では、弁カートリッジ60用の取付部96の周壁部103が、図6に示しているように部分的に切りかかれており、その切欠部128において、Cリング114が本体ボデー92の内方に開放せしめられている。
【0057】
従ってこの実施形態では、図5に示しているように吐水管14用の取付部94の側から(このとき吐水管14は取り外しておく)、Cリング114を径方向に弾性変形操作することが可能であり、これによりCリング114による係合作用を解除して、カートリッジ収容部材98を取付部102から図中上方に取り外すことができる。
【0058】
以上のように本実施形態によれば、弁カートリッジ60の固定を解除してこれを水栓本体12から取り外したときに、フレキシブルホース36A,40Aによる上向きの押上力によってカートリッジ収容部材98が元の位置から浮き上がってしまう現象を良好に防止することができ、従ってその後において弁カートリッジ60を再組付けする際に、良好にこれを再組付けすることができる。
【0059】
また係合部116が、Cリング114と、係合溝110,112とで構成されているため、係合溝110,120に対して、単に弾性を有するCリング114を係合させるだけで、カートリッジ収容部材98の抜け方向の移動を防止でき、また係合部116を簡単な構造で構成することができる。
【0060】
更に本体ボデー92の保持凹所104を内側に形成する周壁部103を、軸方向の係合溝112の位置する部分において周方向に一部切り欠いているため、その切欠部128においてCリング114を径方向に弾性変形操作することができ、これにより水栓本体12に外観不良があったり或いはカートリッジ収容部材98に何らかの不良があったりした場合において、カートリッジ収容部材98を含む全体を破棄することなく、不良を生じている部材だけを取り替えるといったことが可能となる。
【0061】
また本実施形態によれば、カートリッジ収容部材98の浮上りを良好に防止できるため、固定ナット126の締込みによる下向きの押圧力でシール部材82,84を十分に弾性圧縮させることができ、シールが不十分となるのを有効に防止することができる。
【0062】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態は本発明を自動水栓に適用した場合の実施形態であるが、本発明はこのような自動水栓に限らず、弁カートリッジをカートリッジ収容部材を用いて水栓本体に取り付けるようになした様々な湯水混合水栓に対して適用することが可能であり、また上記係合部はあくまで本発明の一形態例に過ぎず、止め輪として他の様々なものを用いたり或いは係合部自体を他の様々な形態で構成することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において、種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態である湯水混合水栓の概略全体図である。
【図2】同実施形態における水栓本体の本体ボデーを切り欠いて周辺部とともに示す図である。
【図3】同実施形態の水栓本体を各部品に分解して示す分解斜視図である。
【図4】同実施形態の要部の断面図である。
【図5】カートリッジ収容部材を略した状態で示す図4におけるV-V断面図である。
【図6】カートリッジ収容部材の本体ボデーへの組付状態を示す断面図である。
【図7】本発明の利点を説明するための比較例図である。
【図8】従来の湯水混合水栓の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
12 水栓本体
32 レバーハンドル
36 水供給管
40 湯供給管
60 弁カートリッジ
62 固定弁体
64 可動弁体
66 湯水の混合弁
70 弁ケース
72 ケース本体
74 底蓋
82,84 シール部材
92 本体ボデー
98 カートリッジ収容部材
100 底部
102,103 周壁部
104 保持凹所
106 支持部
108 被支持部
110,112 係合溝
114 Cリング(止め輪)
116 係合部
120 収容凹所
122 雌ねじ部
126 固定ナット
128 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定弁体と、レバーハンドルの操作により該固定弁体上を摺動運動して吐水の流量及び温度の調節を行う、該固定弁体とともに湯水の混合弁を構成する可動弁体とを弁ケースの内部に収納して成る弁カートリッジを、該弁カートリッジの保持側である水栓本体における本体ボデーの保持凹所に挿入して保持させてなる湯水混合水栓において、
上端に開口を有する有底筒状をなして内側に前記弁カートリッジの収容凹所を形成するカートリッジ収容部材を前記水栓本体の本体ボデーとは別体に設けて、該カートリッジ収容部材を該本体ボデーの前記保持凹所内に配設し、該カートリッジ収容部材の底部に通水配管の上端部を接続するとともに、該収容凹所内に前記上端の開口を通じて前記弁カートリッジを挿入して収容し、
且つ該カートリッジ収容部材の前記底部から立ち上がる周壁部の外周面と前記本体ボデーの保持凹所の内周面とに跨って、該カートリッジ収容部材を軸方向且つ該保持凹所からの抜け方向である上方向に固定する係合部を設けたことを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記係合部が、リング状をなし周方向に分断された形態の弾性を有する止め輪と、前記カートリッジ収容部材の前記周壁部の外周面と前記保持凹所の内周面とのそれぞれに、径方向に対向して設けられ、該止め輪に対して前記抜け方向に係合する係合溝とを有していることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項3】
請求項2において、前記本体ボデーには前記保持凹所を内側に形成する周壁部が、前記軸方向の前記係合溝の位置する部分において周方向に一部切り欠かれており、その切欠部において前記止め輪を径方向に弾性変形操作可能となしてあることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記本体ボデーの前記保持凹所には、前記カートリッジ収容部材を下側から支持する支持部が設けられる一方、該カートリッジ収容部材には対応する被支持部が設けられており、
該保持凹所の上端部内周面の雌ねじ部に対する固定ナットのねじ込みにより該カートリッジ収容部材が下向きに押圧され、前記保持凹所に固定されるようになしてあることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項5】
請求項4において、前記弁カートリッジは、前記弁ケースが上部のケース本体と下部の底蓋とを上下に組み付けて構成してあって、該ケース本体が下向きに押圧されることで内部のシール部材が弾性圧縮せしめられ、シール作用するようになしてあることを特徴とする湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−133133(P2010−133133A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309042(P2008−309042)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】