説明

湯水混合水栓

【課題】専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、容易に温調ハンドルの回転方向の位置が適正な位置となるように調整することのできる湯水混合水栓を提供する。
【解決手段】温調ハンドル12に設けた温度表示部94と、水栓本体部14に設けた指示部106とによって温調ハンドル12により設定した温度を表すようにした湯水混合水栓において、温調ハンドル12の回転限度を規定するストッパ108,110,112及び指示部106を備えたストッパリング98を外部に露出する状態に水栓本体部10に脱着可能に嵌着する。またそのストッパリング98は、雌セレーション部104と雄セレーション部96との噛合位置を変更することで、水栓本体部10に対し回転方向の組付位置を調節可能としておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は湯水混合水栓に関し、詳しくは温調ハンドル周りの構造に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水と湯とを混合し且つその混合比率を変化させて吐水の温度調節を行う湯水混合水栓が広く用いられている。
一般にこの種の湯水混合水栓では、温調ハンドル(温度調節ハンドル)が回転式のハンドルとされ、温調ハンドルの回転操作によって吐水の温度が調節される。
【0003】
湯水混合水栓では、温調ハンドルが現在どのような操作位置にあるか、具体的には温調ハンドルの操作による現在の吐水の設定温度を表すために、通常は温調ハンドル側に温度表示部が、また水栓本体部の側に温度表示部の特定の部位を指し示す指示部が設けられる。
この場合、指示部が指し示した部位の温度が現在の設定温度を表す。
また温調ハンドルが無制限に回転操作されてしまわないように、温調ハンドルの回転限度を規定する機構が設けられる。
【0004】
図5はそれらの具体例を示している。
図5において200は水栓本体部,202は回転式の温調ハンドル、204は温調ハンドル202に設けられた温度表示部,206は水栓本体部200の側に設けられた指示部である。
ここでは指示部206が指し示している表示40・の温度が現在の設定温度(ここでは適温の40℃)であることを表している。
図5(A)において、208は水栓本体部200の内部に埋込状態且つ固定状態に設けられ、また水栓本体部200から突き出した部分が温調ハンドル202の内側に隠蔽される状態に設けられたストッパ部材で、ストッパ210を含む複数のストッパを備えている。
【0005】
一方温調ハンドル202側には、それらストッパに当接する当り部212が温調ハンドル202と一体回転する状態に設けられている。
ここでは温調ハンドル202を回転操作したときに、当り部212がストッパ210その他のストッパに当ることで、温調ハンドル202の回転限度が規定される。
【0006】
図5(A)において、214は内周面と外周面とにセレーション部を有するリング状のセレーション部材で、その内周面のセレーション部に対して温調軸216がセレーション結合され、また外周面のセレーション部に対して温調ハンドル202がセレーション結合され、以ってかかるセレーション部材214を介して温調ハンドル202と温調軸216とが一体回転するようになっている。
ここで温調ハンドル202は、水栓本体部200に対して軸方向に抜止状態に組み付けられている。
【0007】
図5に示すものにおいては、温調ハンドル202を回転操作すると温調軸216が回転し、これにより水栓本体部200の内部の混合弁体が位置移動して水と湯との混合比率を変化させる。即ち吐水温度を変化させる。
【0008】
ところで湯水混合水栓を工場で生産し出荷するときには、温調ハンドル202側の温度表示部204と水栓本体部200側の指示部206とにより表される設定温度が実際の吐水温度と合致するように、温調ハンドル202の回転方向の組付位置が調節されているが、実際に湯水混合水栓を様々な設置現場で設置施工したとき、設置現場の給水圧その他の条件の相異によって、温度表示部204と指示部206とで表される設定温度よりも実際の吐水温度が高かったり或いは低かったりする等、温調ハンドル202による設定温度と実際の吐水温度との間にズレが生じるといったことが起り得る。
【0009】
この場合、水栓の使用者が温度表示部204と指示部206とに基づいて温調ハンドル202を回転操作し、吐水の温度設定を行っても、求める温度で吐水させることができず、水栓の使い勝手が悪化する。
また図5(A)に示すストッパ部材208のストッパ210を含む複数のストッパは、温度表示部204と指示部206とで表される現在の設定温度と実際の吐水温度とが合致することを前提として、その位置が定められているため、例えば適温の湯(混合水)の温度を40℃としたとき、これを中心としてそれよりも高温側又は低温側に予め定めた所定角度まで温調ハンドル202を回転させたところで、これを回転規制するようにストッパ210の位置、即ち回転限度の規制位置が定めてあるため、温調ハンドル202の表示上の調節温度(設定温度)と実際の吐水温度との間にズレが生じていると、温調ハンドル202の回転限度を規定するストッパ210の位置も不適正なものとなってしまう。
【0010】
このような設定温度と実際の吐水温度とのズレを解消するため、従来にあっては、温調ハンドル202を一旦水栓本体部200から取外して、即ち温調ハンドル202の取付構造を一旦ばらした上で、温調ハンドル202の回転方向の位置を調整して再組付けするといったことを設置現場毎に行うが、この作業は面倒な作業となる。
特に専門的な知識を有しない水栓の使用者が、こうした調整を行うといったことは実際上困難である。
【0011】
尚本発明に関連する先行技術として、下記特許文献1にはCリング状の弾性を有する安全リング(ロックリング)を取り外すことで、温調ハンドルを軸方向に押し込んでこれを空回転可能とし、その状態で温調ハンドルの回転方向の位置を調節した上で、温調ハンドルを再び元の位置まで軸方向に戻し、その後に安全リングを再装着するようになした点が開示されている。
この特許文献1に開示のものは、温調ハンドルの操作により設定された温度と実際の吐水温度とを一致させることを目的としている点で本願発明と共通しているが、この特許文献1に開示のものは、温調ハンドル自体の位置を変更し調節するもので、ハンドル構造が複雑になり部品点数も多くなってしまう点で本発明とは解決手段が異なっている。
【0012】
一方特許文献2には、筒状の規制筒に切欠形状をノッチを複数個所に設けて、そのノッチの何れかに規制筒とは別体を成すストッパ駒を装着し、そしてそのストッパ駒の位置を変更することで、温調ハンドルの回転限度の規制位置を変更するようになした点が開示されている。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは、ストッパ駒の位置を変更するために温調ハンドルを一旦取り外さなければならない点で、本発明と異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−138734号公報
【特許文献2】特開平10−131249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上のような事情を背景とし、専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、容易に温調ハンドルの回転方向の位置が適正な位置となるように調整することのできる湯水混合水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
而して請求項1のものは、回転式の温調ハンドルに設けた温度表示部と、水栓本体部の該温調ハンドル側に設けた指示部とによって、該温調ハンドルの操作による吐水の設定温度を表すようにした湯水混合水栓において、前記温調ハンドルの回転限度を規定するストッパ及び前記指示部を備えたストッパリングを外部に露出する状態に前記水栓本体部に脱着可能に嵌着し、該ストッパリングは、該水栓本体部に対して前記温調ハンドルの回転方向における組付位置を調節可能に嵌着してあることを特徴とする。
【0016】
請求項2のものは、請求項1において、前記ストッパリングは弾性を有するCリング状となしてあることを特徴とする。
【0017】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記ストッパリングには内周面に沿って雌の噛合歯が設けてあるとともに、前記水栓本体部の外周面には対応する雄の噛合歯が設けてあり、それら一対の噛合歯を噛み合せる状態に前記ストッパリングが水栓本体部に嵌着してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0018】
以上のように本発明は、温調ハンドルの回転限度を規定するストッパ及び吐水の設定温度を表すための指示部を備えたストッパリングを、外部に露出する状態に水栓本体部に脱着可能に嵌着し、そしてそのストッパリングを、水栓本体部に対して温調ハンドルの回転方向における組付位置を調節可能となしたものである。
【0019】
本発明によれば、温調ハンドルによる設定温度と実際の吐水の温度とが合っていないとき、ストッパリングを水栓本体部から取り外した上、回転方向の位置を調節して再び水栓本体部に組み付けることで、温調ハンドルによる設定温度と実際の吐水温度とをよく一致させることができる。
即ち温調ハンドルによる温度設定を適正に行えるようになる。
【0020】
またそのストッパリングには、温調ハンドルの回転限度を規定するストッパが備えてあるため、ストッパリングの組付位置を回転方向に調節することで、併せてそのストッパリングに備えられた、温調ハンドルの回転限度を規定するストッパの位置もまた適正な位置に位置調節することができる。即ち温調ハンドルの回転限度の規定位置を適正な位置とすることができる。
【0021】
しかも本発明では、温調ハンドルの取外し及び再組付けなどの面倒且つ難しい作業を行わなくても、単にストッパリングを水栓本体部に対して脱着し、また回転方向の組付位置を変更するだけで良いので、専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、温調ハンドルによる温度設定の適正化と、温調ハンドルの回転限度を規制するストッパ位置の適正化とを簡単に行うことができる。
【0022】
ここで上記のストッパリングは、弾性を有するCリング状のものとなしておくことができる(請求項2)。
このようにしておけば、水栓本体部に対するストッパリングの脱着を、Cリング状の部材から成るストッパリングの弾性及び周方向の切欠部分を利用して簡単に行うことができる。
【0023】
ここでストッパリングには内周面に沿って雌の噛合歯を設け、また水栓本体部の外周面には対応する雄の噛合歯を設け、それら一対の噛合歯を噛み合せる状態にストッパリングを水栓本体部に嵌着し、またその噛合歯の噛合位置を変えることでストッパリングの組付位置を調節可能となしておくことができる(請求項3)。
【0024】
このようにすることで、ストッパリングの脱着及び回転方向の組付位置の調節をより一層簡単に行うことが可能となる。
尚本発明は、混合室に混合水温度に感応して混合弁体の位置調節を自動的に行う感温ばねを備えて成る自動温度調節機能付きの湯水混合水栓に適用して特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態である湯水混合水栓の要部の断面図である。
【図2】同実施形態における温調ユニットを示す図である。
【図3】同実施形態における温調ハンドルと水栓本体部の要部の外観及びストッパリングの構成を示した図である。
【図4】同実施形態における作用説明図である。
【図5】従来の湯水混合水栓の要部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の湯水混合水栓における水栓本体部で、12は回転式の温調ハンドル(温度調節ハンドル)である。
この実施形態の湯水混合水栓は自動温度調節機能付(サーモスタット式)の湯水混合水栓で、円筒形状のハウジング14の内部に温調ユニット16が組み込まれている。
【0027】
図2にその温調ユニット16の具体的構成が示してある。
図2において18は弁ケース、20は軸ケースで、それらが互いにねじ結合されている。
弁ケース18には、軸方向に離隔した位置に水流入口22と湯流入口24とが設けられており、それら水流入口22と湯流入口24とから水と湯とが内部に流入するようになっている。
【0028】
流入した水と湯とは図中右方向に流れて混合室26に至り、そこで水と湯とが混合されて、混合水が流出口28から吐水部に向けて図中右方向に流出する。
【0029】
30は水と湯とを混合する混合弁体で、軸方向に離隔した水側弁部32と湯側弁部34、及びそれらを軸方向に連繋する連繋部36を有している。
一方弁ケース18には、水側弁部32と湯側弁部34との間において、それら水側弁部32,湯側弁部34に各対応した水側弁座38,湯側弁座40が設けられている。
【0030】
42は温調軸で、軸ケース20の内部においてその内面に回転可能に嵌合する大径の円筒部44を有している。
この円筒部44の内周面には雌ねじ部46が設けられており、そこに円筒形状をなす進退部材48の外周面の雄ねじ部50が螺合されている。
進退部材48は、これら雌ねじ部46と雄ねじ部50との螺合により温調軸42の回転にてねじ送りで図中左右方向に進退移動する。
【0031】
この進退部材48の図中左端側にはストッパリング52が掛止されている。
そしてこのストッパリング52に対して、コイルばねから成る第1バイアスばね54の一端(図中左端)が当接せしめられている。
【0032】
56は同じくコイルばねから成る第2バイアスばねで、これら第1バイアスばね54と第2バイアスばね56との付勢力が混合弁体30に対して右向き、即ち水側弁部32を閉弁させ、湯側弁部34を開弁させる方向に及ぼされている。
【0033】
一方混合室26の内部には、形状記憶合金製のコイル形状の感温ばね58が収容されており、その感温ばね58による付勢力が混合弁体30に対し第1バイアスばね54,第2バイアスばね56による付勢力とは逆方向、即ち湯側弁部34を閉弁させ、水側弁部32を開弁させる方向に及ぼされている。
尚60は、混合弁体30から図中左向きに延び出した弁軸である。
この弁軸60は、湯側弁部34を強制的に完全閉弁させる際に引張棒として用いられる。
【0034】
この温調ユニット16では、第1バイアスばね54及び第2バイアスばね56による図中右向きの付勢力と、感温ばね58による図中左向きの付勢力とが釣り合う位置に混合弁体30が保持され、水流入口22から流入する水と湯流入口24から流入する湯との比率を一定比率とする。
【0035】
そして混合水温度が変化したとき、例えば混合水温度が高温側に変化したときには、感温ばね58が付勢力を高めて、第1バイアスばね54,第2バイアスばね56による付勢力との釣り合い位置を図中左側にシフトさせ、混合弁体30を図中左側に微小移動させる。これにより湯側弁部34の開度を小,水側弁部32の開度を大として湯流入量を少なく、水流入量を多くして混合水温度を低くし、混合水温度を設定温度に維持するように働く。
【0036】
逆に混合水温度が設定温度よりも低くなったときには、感温ばね58が付勢力を弱くして混合弁体30を図中右向きに微小移動させ、これにより混合水温度を高くして設定温度に維持するように働く。
【0037】
上記温調軸42は、温調ハンドル12による温度設定の操作に基づいて回転により進退部材48を図中左右方向に進退移動させ、これにより第1バイアスばね54,第2バイアスばね56による付勢力を増減させて、混合弁体30を図中左右方向に進退移動させる。
【0038】
図1において、62は円形のリング状をなすセレーション部材(ダブルセレーション部材)で、内周面に雌セレーション部64を、外周面に雄セレーション部66を有しており、そしてその内周面の雌セレーション部64に対して、温調軸42の雄セレーション部68がセレーション結合され、また外周面の雄セレーション66に対して、温調ハンドル12の雌セレーション部70がセレーション結合されている。
これにより、温調ハンドル12がセレーション部材62を介して温調軸42に一体回転状態に連結されている。
【0039】
温調ハンドル12は、水栓本体部10からの抜止めのための弾性片から成る固定片72を一体に有している。この固定片72の先端部(図中左端部)は押圧部74とされている。
一方温調軸42には、セレーション部材62とのセレーション結合部から図中左向きに延び出した小径部76の先端部に略球状をなす被押圧部78が設けられている。
【0040】
80は、化粧キャップを兼ねた抜止部材で、脚部82を固定片72の外周側の溝84に差し込むことで、固定片72の先端部の押圧部74を、温調軸42の被押圧部78に押圧し、以って温調ハンドル12を水栓本体部10に対して軸方向に抜止めする。
【0041】
86は、温調ハンドル12に一体回転状態に保持された、温調ハンドル12の回転規制のための当り部で、貫通孔88から外部に突出した安全ボタン90と一体に構成されている。
これら当り部86及び安全ボタン90は、板ばね92にて径方向外方に常時付勢されている。
【0042】
図3(A)に示しているように温調ハンドル12の外面、詳しくは水栓本体部10に近接した位置の外面には、温度表示部94が設けられている。
ここで温度表示部94は、適温(ここでは40℃)を表示する適温表示部94Aと、これよりも高温域を表す高温域表示部94Bと、低温域を表す低温域表示部94Cとを有している。
一方水栓本体部10の温調ハンドル12側の端部、詳しくはハウジング14の温調ハンドル12側の端部には、その外周面に全周に亘って雄セレーション部(噛合歯)96が設けられている。
【0043】
図3において、98はこの雄セレーション部96において水栓本体部10に嵌着されるストッパリング(ここでは樹脂製)で、周方向の端部100と100との間に開口部102を有する、弾性を有するCリング状をなしている。
そしてその内周面には、全周に亘って雌セレーション部(噛合歯)104が形成されている。
またその外周面には、温調ハンドル12の上記の温度表示部94と協働して、温調ハンドル12による現在の設定温度を表すための指示部106が設けられている。
【0044】
ストッパリング98にはまた、その内周面に、周方向に間隔を隔てて第1ストッパ108,第2ストッパ110及び第3ストッパ112が径方向内方に突出する形態で設けられている。
ここで3つのストッパ108,110,112は、上記の雌セレーション部104とはストッパリング98における幅方向の異なった位置に設けられている。
【0045】
これら第1ストッパ108,第2ストッパ110,第3ストッパ112は、温調ハンドル12側の上記の当り部86を当接させることによって、温調ハンドル12の回転限度を規定するもので、このうち第1ストッパ108は安全ストッパとしてのものであり、温調ハンドル12を低温側から高温側に回転させたとき、適温表示部94Aがストッパリング98の指示部106に一致したところで当り部86を当接させ、温調ハンドル12を一旦そこで回転停止させる。
第2ストッパ110は、高温側の最終の回転限度を規定する高温側ストッパとしてのものである。
【0046】
温調ハンドル12は、これを低温側から高温側に回転させ、そして適温表示部94Aが指示部106に一致したところで、当り部86が第1ストッパ108に当接することで一旦そこで回転規制されるが、この状態で安全ボタン90を押し込むと当り部86が径方向内方に移動して第1ストッパ108から外れ、ここにおいて第1ストッパ108による温調ハンドル12の回転規制が解除される。
【0047】
そこで温調ハンドル12を更に高温側に回転させると、当り部86が次に第2ストッパ110に当接し、ここにおいて温調ハンドル12の高温側への回転が最終的に規制される。
【0048】
一方第3ストッパ112は低温側ストッパとしてのもので、温調ハンドル12を低温側に大きく回転させたとき、当り部86を当接させることによって低温側の回転限度を規定する。
ここで第2ストッパ110と第3ストッパ112とは、安全ストッパとしての第1ストッパ108よりも突出高さが高くされている。
【0049】
ストッパリング98は、その弾性を利用して開口部102を通じ、内周面の雌セレーション部104を水栓本体部10の外周面の雄セレーション部96に噛み合せる状態に、水栓本体部10に対して外部に露出する状態に簡単に嵌着することができる。
また嵌着状態にあるストッパリング98を、簡単に水栓本体部10から取り外すことができる。
【0050】
更にこのストッパリング98は、雌セレーション部104と雄セレーション部96との噛合いの位置を変えることによって、温調ハンドル12における回転方向の組付位置を小刻みに変更し、調整することができる。
詳しくは、温調ハンドル12側の温度表示部94における適温表示部94Aが、ストッパリング98の指示部106に合致したときに、実際の吐水の温度が丁度適温の湯となるように、ストッパリング98の組付位置を調節することができる。
【0051】
図4は、その際のストッパリング98の調節の仕方を具体的に示している。
ストッパリング98を装着した状態の下で、図4(B)に示しているように適温表示部94Aが指示部106に合致する位置まで温調ハンドル12を持ち来し吐水を行ったとき、その吐水の温度が適温(の湯)であれば、ストッパリング98の組付位置を特に変更し調整する必要はない。
【0052】
しかしながらこのとき、実際の吐水の温度が適温よりも熱いときには、図4(A)に示すように温調ハンドル12を低温側に回転し、吐水の温度が適温となる位置に温調ハンドル12を持ち来す。
そしてこのときの温調ハンドル12側の適温表示部94Aに対して、指示部106を合せるようにしてストッパリング98の組付位置を調整する。
図4(A)はこのときの状態を表している。
【0053】
逆に実際の吐水温度が適温よりも低い(ぬるい)ときには、図4(C)に示すように温調ハンドル12を高温側に回転させ、そして実際の吐水温度が丁度適温となったところで温調ハンドル12を回転停止させる。
その後ストッパリング98の指示部106が温調ハンドル12側の適温表示部94Aに一致するように、ストッパリング98の回転方向の位置を調節する。
図4(C)はこのときの状態を示している。
【0054】
このようにすれば、図4(A),(B),(C)何れの状態の下においても、温度表示部94と指示部106とにより表された温調ハンドル12の設定温度と実際の吐水温度とが良く一致する状態となり、温調ハンドル12による温度設定を適正に行えるようになる。
【0055】
またこのとき、ストッパリング98に備えられた第1ストッパ108,第2ストッパ110,第3ストッパ112も同時に適正な位置に位置調節されるため、温調ハンドル12を回転操作したときに、本来の設定した適正な位置で温調ハンドル12を回転規制することができる。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、温調ハンドル12による設定温度と実際の吐水の温度とが合っていないとき、ストッパリング98を水栓本体部10から取り外した上、回転方向の位置を調節して再び水栓本体部10に組み付けることで、温調ハンドル12による設定温度と実際の吐水温度とをよく一致させることができる。
【0057】
またストッパリング98に備えられた、温調ハンドル12の回転限度を規定する第1ストッパ108,第2ストッパ110,第3ストッパ112の位置も適正な位置に位置調節することができる。
【0058】
しかも本実施形態では、温調ハンドル12の取外し及び再組付けなどの面倒且つ難しい作業を行わなくても、単にストッパリング98を水栓本体部10に対して脱着し、また回転方向の組付位置を変更するだけで良いので、専門的な知識を有しない水栓の使用者であっても、温調ハンドル12による温度設定の適正化と、温調ハンドル12の回転限度を規制するストッパ位置の適正化とを簡単に行うことができる。
【0059】
またストッパリング98は、弾性を有するCリング状のものとなしてあるため、更にストッパリング98は、内周面の雌セレーション部104を水栓本体部10の外周面の雄セレーション部96に噛み合せることで水栓本体部10に嵌着し、またそのセレーション部の噛合位置を変えることでストッパリング98の組付位置を調節できるため、ストッパリング98の脱着及び回転方向の組付位置の調節自体も簡単に行うことができる。
【0060】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態ではストッパリングに安全ストッパとしての第1ストッパと、高温側の上限の回転限度を規定する第2ストッパ、更に低温側の下限の第3ストッパを設けているが、場合によってストッパの数を多くしたり少なくしたりすること、またストッパの回転方向の位置を適宜の位置に変更したり設定したりすることも可能である。但し少なくとも高温側の上限の回転限度規制のための第3ストッパは備えておくことが望ましい。
【0061】
更に上記実施形態ではストッパリングを弾性を有するC字状に構成しているが、これを他の様々な形状,形態で構成することも可能であり、更に回転位置の調節を雄セレーション部と雌セレーション部以外の凹凸形状の噛合歯の噛合位置の変更にて行うようになすことも可能である。
その他本発明は、自動温度調節機能を備えていないミキシングタイプの湯水混合水栓にも適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 水栓本体部
12 温調ハンドル
94 温度表示部
96 雄セレーション部(噛合歯)
98 ストッパリング
104 雌セレーション部(噛合歯)
106 指示部
108 第1ストッパ
110 第2ストッパ
112 第3ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式の温調ハンドルに設けた温度表示部と、水栓本体部の該温調ハンドル側に設けた指示部とによって、該温調ハンドルの操作による吐水の設定温度を表すようにした湯水混合水栓において
前記温調ハンドルの回転限度を規定するストッパ及び前記指示部を備えたストッパリングを外部に露出する状態に前記水栓本体部に脱着可能に嵌着し、
該ストッパリングは、該水栓本体部に対して前記温調ハンドルの回転方向における組付位置を調節可能に嵌着してあることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記ストッパリングは弾性を有するCリング状となしてあることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記ストッパリングには内周面に沿って雌の噛合歯が設けてあるとともに、前記水栓本体部の外周面には対応する雄の噛合歯が設けてあり、それら一対の噛合歯を噛み合せる状態に前記ストッパリングが水栓本体部に嵌着してあることを特徴とする湯水混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−241315(P2012−241315A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108805(P2011−108805)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】