説明

湯面検知センサー

【課題】表面が酸化しにくく、導通不良を防止することのできる湯面検知センサーを提供する。
【解決手段】本発明の湯面検知センサーは、溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施し、さらにその上に電解ニッケルめっきを施したことを特徴とする。この電解ニッケルめっきの厚さは好ましくは5μm〜500μm、特に好ましくは10μm〜300μmとする。
これにより、本体部の表面がめっきにより完全に覆われるとともに略平滑面になり、酸化しにくいセンサーとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手許炉、保持炉、機前炉等において、アルミニウム或いはアルミニウム合金などの金属溶湯の湯面の高さを検知する湯面検知センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
手許炉、保持炉、機前炉等は、金属溶湯の湯面高さを検知するため、湯面検知センサーを取付けてあるものがあり、これは、金属溶湯の湯面に接触又は非接触させたセンサーの導通の有無により湯面の高さを検知し、所定の湯面より低い場合は給湯し、所定の湯面に達した場合は給湯を停止する信号を出すものである。
【0003】
このようなセンサーは、高温の溶湯に接するものであるため溶湯に対して耐食性のあるものが用いられることが多く、例えば、TiBと、TiC又はTiCNとからなる導電性セラミックスで構成したセンサー(下記特許文献1参照)や、通電性セラミックスからなる本体部の表面にNiめっき又はCrめっきを施して構成したセンサーがある(下記特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−234083号公報
【特許文献2】特開平2−31115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、アルミニウム或いはアルミニウム合金等の金属溶湯を鋳造する場合、鋳造の前に保持炉があり、この保持炉の湯面を一定に保つために湯面検知センサーが備えてある。このセンサーは、高温大気中に曝されるため、表面が酸化されやすく、使用し始めてから比較的早期に導通不良を起こし、誤った湯面高さを検知することがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来のセンサーよりも長期に渡り表面を酸化しにくくし、導通不良を防止することのできる湯面検知センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の湯面検知センサーは、金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施し、さらにその上に電解ニッケルめっきを施したことを特徴とするものである。電解ニッケルめっきの厚さは好ましくは5μm〜500μm、特に好ましくは10μm〜300μmとする。
【0008】
このようにすることにより、表面が高温で酸化しにくくなり、導通不良を防止することができる。
これは、無電解ニッケルめっきを施し、さらにその上に電解ニッケルめっきを施したことにより、本体部の表面がめっきにより完全に被覆されるとともに、略平滑面になり、酸化しにくくなるためであると思われる。
【0009】
また、本発明は、金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施した後、その上に電解ニッケルめっきを施す工程を含む湯面検知センサーの製造方法も対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を説明する。なお、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の湯面検知センサーは、金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施し、さらにその上に電解ニッケルめっきを施したことを特徴とするものである。
【0012】
本体部は、導電性のあるセラミックスを用いることができ、例えば、二硼化チタン系、より具体的には、92TiB−5TiCN−3Coや95TiB−5TiCなどの導電性セラミックを用いることができる。
【0013】
無電解ニッケルめっきは、従来公知の方法で行なうことができ、例えば、無電解ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル、塩化ニッケルなどのニッケル塩に、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムなどの還元剤を含有させた液を用いて行なうことができる。
無電解ニッケルめっきの厚さは、特に限定するものではないが、好ましくは0.1μm〜10μm、特に好ましくは1μm〜5μmとする。
【0014】
電解ニッケルめっきは、従来公知の方法で行なうことができ、例えば、電解ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル、塩化ニッケルなどのニッケル塩を用いて行なうことができる。
電解ニッケルめっきの厚さは、特に限定するものではないが、好ましくは5μm〜500μm、特に好ましくは10μm〜300μmとする。
【0015】
このように、本体部の表面上に無電解ニッケルめっきを施し、さらにその上に電解ニッケルめっきを施したセンサーは、表面がめっきで完全に覆われるとともに略平滑面になるため、酸化しにくくなり、導通不良を防止することができる。
【0016】
本発明の湯面検知センサーは、例えば、金属溶湯保持炉において、図1に示すように、アース1、センサー2、センサー3を、順に高くなるように配し、アース1は、常時、金属溶湯に接触するように配し、センサー2は先端が湯面4の下限を示すように配し、センサー3は先端が湯面4の上限を示すように配して用いることができる。これにより、アース1とセンサー2とが金属溶湯に浸漬し、このアース1とセンサー2とが導通している間は、金属溶湯の湯面下限レベルが保たれていることを示し、新たな金属溶湯が供給される。湯面4が上昇し、センサー3に接して、アース1とセンサー3とが導通したときは、金属溶湯の湯面上限レベルに達したことを示し、その供給の停止時期を把握することができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
なお、以下に示すメッキの厚さは、断面を電子顕微鏡で撮影して計測した。
【0018】
(実施例1)
本体部として直径20mmの95TiB−5TiCを用い、この表面に、無電解ニッケルめっきを厚さ3μmで施し、さらに、その上に電解ニッケルめっきを厚さ5μmで施したものを実施例1とした。
【0019】
(実施例2)
電解ニッケルめっきの厚さを10μmとした以外は、実施例1と同様に作成した。
【0020】
(実施例3)
電解ニッケルめっきの厚さを50μmとした以外は、実施例1と同様に作成した。
【0021】
(実施例4)
電解ニッケルめっきの厚さを100μmとした以外は、実施例1と同様に作成した。
【0022】
(実施例5)
電解ニッケルめっきの厚さを300μmとした以外は、実施例1と同様に作成した。
【0023】
(実施例6)
電解ニッケルめっきの厚さを500μmとした以外は、実施例1と同様に作成した。
【0024】
(比較例1)
直径20mmの95TiB−5TiCを比較例1とした(いずれのめっきも施さない)。
【0025】
(比較例2)
直径20mmの95TiB−5TiCの表面に、厚さ3μmの無電解ニッケルめっきのみを施したものを比較例2とした。
【0026】
(表面観察)
実施例2及び比較例1,2を、電子顕微鏡で拡大し、表面状態を観察した。図2に実施例2の顕微鏡写真を、図3に比較例1の顕微鏡写真を、図4に比較例2の顕微鏡写真を示す。
実施例2では、めっきで本体部を完全に覆い、表面状態は滑らかであった。
比較例1,2では、表面状態は粗く、また、比較例2では、めっきで覆われずに本体部が見えている部分もあった。
【0027】
(電気抵抗測定)
実施例1〜6及び比較例1,2を、長さ15mmにして供試体とし、図5に示すように、アルミナ板5の上に供試体6を載せ、大気中730℃又は800℃で所定の時間曝露したものを取り出し、図6に示すように、センサー本体部とめっき表面との間で電気抵抗を測定した。なお、730℃又は800℃までの昇温は約1時間、常温までの降温は約5〜6時間かけて行なった。
730℃で曝露した場合を図7に示し、800℃で曝露した場合を図8に示す。
【0028】
(結果)
730℃で曝露した場合は、実施例1〜6及び比較例1,2とも2週間導通を保っており、いずれにも大きな差はなかった。
800℃で曝露した場合は、比較例1,2は1日以内に導通不良となったが、実施例1(電解ニッケルめっき厚5μm)は1日、実施例6(電解ニッケルめっき厚500μm)は3日導通を保つことができた。また、実施例2〜5(電解ニッケルめっき厚10μm〜300μm)は1週間導通を保つことができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の湯面検知センサーの使用例を示した図である。
【図2】実施例2の表面を示した電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例1の表面を示した電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例2の表面を示した電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例での曝露方法を示した図である。
【図6】実施例での抵抗測定方法を示した図である。
【図7】実施例1〜6及び比較例1,2を730℃で曝露した場合の電気抵抗を示し、縦軸は電気抵抗[Ω]、横軸は曝露時間[hr]を示した図である。
【図8】実施例1〜6及び比較例1,2を800℃で曝露した場合の電気抵抗を示し、縦軸は電気抵抗[Ω]、横軸は曝露時間[hr]を示した図である。
【符号の説明】
【0030】
1アース 2,3湯面検知センサー 4湯面 5アルミナ板 6供試体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施し、さらにその上に電解ニッケルめっきを施した湯面検知センサー。
【請求項2】
金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施し、さらにその上に厚さ5μm〜500μmの電解ニッケルめっきを施した湯面検知センサー。
【請求項3】
金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施し、さらにその上に厚さ10μm〜300μmの電解ニッケルめっきを施した湯面検知センサー。
【請求項4】
金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施した後、その上に電解ニッケルめっきを施す工程を含む湯面検知センサーの製造方法。
【請求項5】
金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施した後、その上に厚さ5μm〜500μmの電解ニッケルめっきを施す工程を含む湯面検知センサーの製造方法。
【請求項6】
金属溶湯に接触又は浸漬されるセラミックス製本体部の表面上に、無電解ニッケルめっきを施した後、その上に厚さ10μm〜300μmの電解ニッケルめっきを施す工程を含む湯面検知センサーの製造方法。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−250641(P2009−250641A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95495(P2008−95495)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】