説明

湾曲形状シートの加工方法

【課題】過剰に湾曲形状を付与されたシートを、生産性高く、容易に適正な湾曲形状に修正する加工方法を提供する。
【解決手段】過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシート1を10〜40mm厚さに積載し、その上下を金属製平板で挟み、荷重を掛けながら所定温度まで加熱、保持し、次いでその上に更に過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを10〜40mm厚さに積載し、金属製平板で挟み、荷重を掛けながら所定温度まで加熱、保持する操作を繰り返して行い、その後、繰り返して積載した過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを一度に略所定温度に保持してアニールした後、放冷する湾曲形状シートの加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学スクリーン用、例えばプロジェクションテレビの透過型スクリーン用の、過剰に湾曲形状を付与されたシートを適正形状に修正加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクションテレビの透過型スクリーンのような光学スクリーンは、通常、フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート、フロントパネル等のシートにより構成されている。一般的には、フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートを重ね合わせる構成が採用されており、また、近年、これらレンズシートを保護する目的から、さらにフロントパネルを重ね合わせる構成も採用されている。
上記光学スクリーンにおいては、設置環境の温湿度変化により、シート間に「浮き」と呼ばれる現象が発生して、画像の解像度を低下させる等の問題が生じることがある。この問題を解決するため、シート間の密着性を高める目的で、シートに湾曲を付与する方法が知られている。
【0003】
シートに湾曲を付与する具体的な方法としては、シートを湾曲した形状に押出成形した後、湾曲した形状を有する型の上で加熱する方法(特許文献1参照。)、シートを凹状湾曲型に載置して熱変形温度より5〜20℃低い温度で特定の時間熱処理する方法(特許文献2参照。)、赤外線により塑性変形温度以上に加熱したシートを凹状反り型と凸状反り型の間に載置してプレスしながら冷却する方法(特許文献3参照。)等が知られている。
しかしながら、従来の方法で得られた湾曲形状のシートは、付型した形状の変形を招くことがあったり、湾曲の形状が不十分であったりする。その一方で、過剰に湾曲の形状が付与されることがある。
【0004】
過剰に湾曲した形状のシートは、修正して適正な湾曲形状にして使用できるようにすることが望まれる。
過湾曲形状シートを一枚毎に荷重を掛け、加熱して修正するのでは生産性が低く、また多数のシートを重ねて修正すると必ずしも十分に修正できない。
したがって、生産性が高く、容易に過湾曲形状シートを修正する方法が望まれている。
【特許文献1】特開平11−216773号公報
【特許文献2】特開2003−5295号公報
【特許文献3】特開2004−252292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、過剰に湾曲形状を付与されたシートを、生産性高く、容易に適正な湾曲形状に修正する加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、過剰に湾曲形状を付与されたシートを、生産性高く、容易に適正な湾曲形状に修正する加工方法について鋭意検討した結果、過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを10〜40mm厚さに積載し、その上下を金属製平板で挟み、荷重を掛けながら所定温度まで加熱、保持し、次いでその上に更に過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを10〜40mm厚さに積載し、金属製平板で挟み、荷重を掛けながら所定温度まで加熱、保持する操作を繰り返して行い、その後、繰り返して積載した過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを一度に略所定温度に保持してアニールした後、放冷することによって、生産性高く、容易に適正な湾曲形状に修正することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを10〜40mm厚さに積載し、その上下を金属製平板で挟み、荷重を掛けながら所定温度まで加熱、保持し、次いでその上に更に過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを10〜40mm厚さに積載し、金属製平板で挟み、荷重を掛けながら所定温度まで加熱、保持する操作を繰り返して行い、その後、繰り返して積載した過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを一度に略所定温度に保持してアニールした後、放冷することを特徴とする湾曲形状シートの加工方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によって、過剰に湾曲形状を付与されたシートを、生産性高く、容易に適正な湾曲形状に修正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における熱可塑性樹脂を主体とするシートとしては、通常、透明性の高い熱可塑性樹脂を主体としたものである。熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体のようなアクリル系樹脂や、ポリカーボネート樹脂等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が用いられる。これら樹脂はゴム強化されたものであってもよいし、また、光拡散剤、酸化防止剤、可塑剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤が目的により1種または2種以上添加されたものであってもよい。
【0009】
本発明におけるシートは、プロジェクションテレビの透過型スクリーンのような光学スクリーンを構成するためのものであり、例えば、フレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート、フロントパネルのようなシート状のスクリーン構成部材や、それらを製造する際に所謂、原板として用いるシート状基材等が挙げられる。
【0010】
フレネルレンズシートとしては、例えば、キャスト成形により得られたもの、押出成形等により得たシート状基材にプレス成形によりフレネルレンズ形状を付与したもの、またはシート状基材の表面に紫外線硬化型樹脂をフレネルレンズ形状が形成するように硬化させたもの等である。
【0011】
また、レンチキュラーレンズシートとしては、例えば、押出成形やキャスト成形により得られたもの、シート状基材にプレス成形によりレンチキュラーレンズ形状を付与したもの、またはその表面に紫外線硬化型樹脂によりレンチキュラーレンズ形状が形成されたフィルムをシート状基材に貼合して得られたもの等である。
【0012】
また、フロントパネルとしては、例えば、押出成形やキャスト成形により得られたもの、さらにハードコートや低反射コート等の表面処理が施されたもの等である。
【0013】
さらに、上記フレネルレンズ用のシート状基材(フレネルレンズ原板)やフロントパネルには、表面マット、プリズム、レンチキュラーレンズ、リニアーフレネルレンズ等の表面加工が施してあってもよい。
【0014】
また、シートとして、表面に細かな凹凸を設けて防眩面としたものも挙げられる。この防眩性シートの製造方法としては、例えば、表面に凹凸を有するロールを用いて、加熱溶融状態でダイから板状に押出された直後の樹脂の表面に凹凸を設ける押出ロール転写成形法、内面に凹凸を有する金型内に樹脂を射出して成形する射出成形法、内面に凹凸を有するセル内で原料単量体を重合させる注型成形法が挙げられる。
【0015】
また、熱可塑性樹脂に不溶性樹脂粒子を分散させて熱可塑性樹脂組成物とし、これを加熱し、溶融状態としてダイから押出する押出成形方法により製造することもできる。ダイから押出する押出成形された熱可塑性樹脂組成物は、その表面に不溶性樹脂粒子による細かな凹凸が形成され、これにより防眩性の基材表面を得ることができる。
【0016】
不溶性樹脂とは、熱可塑性樹脂と共に加熱し、熱可塑性樹脂を溶融させても、自らは溶融することなく、粒子状のままで熱可塑性樹脂中に分散しうる樹脂粒子である。不溶性樹脂粒子としては、架橋粒子を用いることができ、具体的には、基材を構成する樹脂として、MS樹脂を用いた場合には、メタクリル酸メチルおよびスチレンと、ラジカル重合可能な官能基を2個以上有する多官能単量体とを共重合させ得られるものが挙げられる。不溶性樹脂粒子の粒子径は、十分な防眩性を付与する場合は通常10μm以上である。
【0017】
不溶性樹脂粒子の使用量は、押出条件、特に押出し後の冷却条件により異なるが、例えば基材を構成する樹脂100質量部あたり、5質量部〜15質量部程度である。
不溶性樹脂粒子は、基材の厚み方向にわたって均一に存在してもよいが、不溶性樹脂粒子が分散された表面層と、不溶性樹脂粒子を含まないか、または表面層より含有量の少ない基材層とを含む多層構造とすることが、不溶性樹脂粒子の使用量を削減できて好ましい。このような多層構造の基板は、例えば不溶性樹脂粒子を分散させた熱可塑性樹脂組成物と、不溶性樹脂粒子を含まない熱可塑性樹脂と共押出しする多層押出し成形法により、2種2層板として製造することができる。
【0018】
更に、シートとして、これらシート表面の片面あるいは両面の一部あるいは全部にハードコートなどの表面処理したシートも挙げられる。
ハードコート剤としては、紫外線などのエネルギー線を照射されることより硬化するエネルギー線硬化性のハードコート剤、加熱されることにより硬化する熱硬化性のハードコート剤としては種々のものが知られているが、例えば、基材を構成する樹脂としてMS樹脂を用いた場合には、分子中に芳香族環および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物を含有し、芳香族環1個あたりの(メタ)アクリロイルオキシ基が3個以上の割合で存在するハードコート剤[特開2004−1372号公報に記載]、分子中に脂肪式環および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物と、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物またはそのオリゴマーを含むハードコート剤[特開2003−311891号公報に記載]などが好ましく用いられる。なお、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基をいう。このようなハードコート剤を塗布することにより、ハードコート膜として表面処理膜を形成することができる。
【0019】
表面処理の際に使用しうる溶剤としては、表面処理剤を溶解することができ、塗布後に揮発し得るものであればよく例えばメタノール、エタノール、2ープロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンのようなアルコール類、アセトン、2−ブタノン、4−メチルペンタノンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチルのようなエステル類、水などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を混合して用いられる。表面処理液における溶剤の含有量は、表面処理液を基準として通常50質量%〜80質量%、好ましくは60質量%〜70質量%程度である。
【0020】
表面処理液は、例えば導電性無機化合物の微粒子が分散されていてもよい。この微粒子の粒子径は、例えば0.1μm以下である〔特開2004−1372号公報、特開2003−311891号公報に記載〕。このような微粒子が分散された表面処理液を用いることで、帯電防止性の表面処理膜が形成されて、帯電防止性の表面処理防眩板とすることができる。
【0021】
表面処理液を防眩性基板の防眩面に塗布するには、例えば防眩性基板の全体を表面処理液中に浸漬するディップコート法、防眩面に表面処理液を吹き付けて付着させるスプレーコート法、防眩面上でバー、ロールにより表面処理液を引き延ばすバーコート法またはロールコート法などの塗布方法で塗布すればよい。
表面処理液の塗布量は、目的の表面処理膜を形成するに要する量であればよく、例えば単位面積当たり、概ね10g/m〜25g/cm程度の表面処理液を塗布すればよい。
【0022】
塗布方法によっては、過剰量の表面処理液が防眩面が塗布される場合もあるが、この場合には、過剰分を除去すればよい。過剰分を除去するには、例えばディップコート法により接触させた場合には、表面処理液から防眩性基板を引き上げればよく、引き上げた後、さらに圧縮空気などを吹き付けて、過剰分を吹き飛ばして除去してもよい。スプレーコート法により接触させた場合には、表面処理液の吹き付けを停止すればよく、吹き付けの停止後、さらに圧縮空気などを吹き付けて、過剰分を吹き飛ばして除去してもよい。バーコート法やロールコート法により塗布した場合には、バーにより、更に防眩面上の表面処理液を引き延ばして過剰分を除去すればよい。このようにして、過剰分の表面処理液を除去することにより、目的の表面処理膜を形成するに適した量の表面処理液を防眩面上に塗布することができる。
【0023】
塗布温度は、表面処理剤が硬化したり、溶剤が揮発したりせず、表面処理液を塗布しうる温度であればよく、通常は0℃〜40℃程度である。
【0024】
塗布後、乾燥することにより溶剤を揮発させ、必要により硬化させて、目的の表面処理膜を形成することができる。溶剤を揮発させるには、そのまま室温で風乾する方法、加熱して乾燥させる方法、減圧して揮発させる方法などが挙げられる。硬化させる方法は、表面処理剤の種類により異なり、エネルギー線硬化性の表面処理剤を用いた場合には、エネルギー線を照射すればよく、エネルギー線の強度や照射時間などは、用いた表面処理剤の種類、平均膜厚などにより適宜選択される。また熱硬化性の表面処理剤を用いた場合には加熱すればよく、加熱時間や加熱温度などは、用いた表面処理剤の種類、平均膜厚などにより適宜選択される。硬化は、溶剤を揮発させた後に行ってもよいし、溶剤の揮発と同時に行ってもよい。
【0025】
湾曲形状の付与方法としては、シートを凹状湾曲型上に載置し、赤外線ヒーターによって熱変形温度から20℃〜0℃低い温度に加熱した後、凸状湾曲型を載せて一対の湾曲型の間に挟んで冷却しながら湾曲形状を付与する方法、シートを湾曲した形状に押出成形した後、湾曲した形状を有する型の上で加熱する方法、シートを凹状湾曲型に載置して熱変形温度より20〜5℃低い温度で特定の時間熱処理する方法、赤外線により塑性変形温度以上に加熱したシートを凹状反り型と凸状反り型の間に載置してプレスしながら冷却する方法等が挙げられる。
【0026】
湾曲形状は、矩形シートの一方方向が湾曲した形状、または全体が湾曲した形状で弧長さが700〜800mmの場合、弧高さが約5〜50mm、好ましくは約10〜25mmのものであるが、これに限られるものではない。
【0027】
上記の方法によって湾曲形状を付与した場合に、中には目標以上に湾曲したシートが得られることがある。本発明においては、この過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを対象とし、適正な湾曲形状に修正する。
【0028】
過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを、厚さ約10〜40mm、好ましくは約10〜30mm、更に好ましくは15〜20mmに積載する。シート1枚の厚みが2mmである場合には約5〜20枚積載することになる。
積載するシートの枚数が多くなる程、1度に処理できる枚数は増加し生産性は向上するが、積載したシートの中央部やそれより下のシートは、伝熱が小さくなりシート温度が上がらなくなるため好ましくない。
【0029】
この積載したシートを金属製平板の間に挟み込み、荷重を掛けながら熱風オーブンで所定温度まで加熱する。金属製平板としては、通常、伝熱性が良いことからアルミニウム板が用いられる。また、荷重を掛ける最上部には鉄板またはステンレス板を配置して行う。荷重としては熱可塑性樹脂を主体とするシートの種類によって異なるが、通常、0.003〜0.01kg/cmである。
【0030】
所定温度は、熱可塑性樹脂シートの熱変形温度から50℃〜10℃低い温度である。熱風オーブンの熱風温度は、上記所定温度より約10℃〜20℃高めに設定する。約10℃未満であるとシートが所定温度に到達する時間がかかり過ぎるため好ましくなく、また約20℃より高くなると局所的に所定温度より高くなるため過剰に修正されるため、好ましくない。シートをこの所定温度で約20〜120分間、好ましくは約30〜100分間保持する。
【0031】
次に重りおよび鉄板またはステンレス板を一旦除去した後、上記と同様に、更に過剰に湾曲形状が付与されたシートを約20mm厚さ積載し、その上にアルミニウム板、鉄板またはステンレス板、重りを載せて荷重をかけて熱風オーブンで所定温度まで加熱し、所定時間保持する。
【0032】
同様の操作を繰り返し、金属製平板の間に挟み込んだ約10〜40mm厚さに積載したシートを1段として、合計5〜15段まで積載し、加熱、保持する。
これを図1に示す。約10〜40mm厚さに積載した過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシート(1)をアルミニウム板(2)で挟んで加熱、保持し、この操作を繰り返して、シート(1)をアルミニウム板(2)で挟んで順次積載されている。最上部には鉄板またはステンレス板(3)を配置し、その上に重り(4)を置いて荷重を掛けている。
【0033】
その後、シートを上記の所定温度に保持し、約5〜10時間アニールする。アニール後、熱風オーブンでの加熱を停止し、放冷する。この時、放冷に要する時間は約10時間以下が好ましい。アニール時間や放冷時間が長すぎると、一連の修正時間が長くなり生産性が低下して好ましくない。アニール時間が短すぎると、シートの位置によっては湾曲形状の修正が不十分になったり、修正度合いにムラが出たりする恐れがある。放冷時間が短すぎると、シートの温度が高いままであるため、シート取りだしたときに急冷され、修正度合が変化するため好ましくない。放冷後のシート温度は室温に近いほど好ましいが、高くてもアニール温度の20℃以下程度にすることが好ましい。
【0034】
上記したとおり、積載するシートの枚数を多くすると、積載したシートの中央部やそれより下のシートは、伝熱が小さくなりシート温度が上がらなくなるため、湾曲形状の修正が十分でなく、好ましくない。また、積載するシートの枚数を少なくして、その積層単位毎に、アニール、放冷する場合には、一連の修正時間が長くなり生産性が低下して好ましくない。
これに対して、本発明の方法は、過剰に湾曲形状を付与されたシートを、生産性高く、容易に適正な湾曲形状に修正することができる。
【実施例】
【0035】
以下、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明はこれら実施例のものに限定されるものではない。
【0036】
実施例1
熱可塑性樹脂を主体とするシートとして帯電防止ハードコート防眩板(長さ750mm×幅1200mm、熱変形温度:100℃)を用いた。この帯電防止ハードコート防眩板は、メタクリル酸メチル(60重量%)とスチレン(40重量%)の共重合体樹脂〔住友化学(株)製、「スミペックスHS」〕に、不溶性樹脂粒子〔メタクリル酸メチルおよびスチレンを主成分とする重合体〕を含む基板(厚み:約2.1mm)を、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔新中村化学(株)、「NKエステルA−9530」〕、2,2’−ビス(4−アクリロイルオキシジエトキシ)フェニルプロパン−2−プロパノール〔共栄社化学(株)、「ライトアクリレート BP−4EA」〕、2−メチル−1−プロパノールを主成分とする耐擦傷性塗料に五酸化二アンチモン分散液〔Sb、触媒化成工業(株)、「ELECOM PC−14」〕を添加した帯電防止ハードコート塗料に浸漬、塗布し、乾燥、紫外線を照射して硬化させることによって、表面に帯電防止ハードコート膜(厚み:約5μm)を形成したものである。
この帯電防止ハードコート防眩板を凹状湾曲型上に積置し、遠赤外線ヒーターで加熱した後、凸状湾曲型を載せて一対の湾曲型の間にシートを挟み、自然冷却して湾曲形状を付与した。
【0037】
湾曲形状は、シートの凸面を下にして置き、四隅の浮き上がり高さを測定して反り量として求めた。本実施例においては、適正な湾曲形状は、反り量が7〜22mmである。
【0038】
厚さ1mmのアルミニウム板上に、過剰に湾曲形状が付与されたシートを含有するシートを、凸面側(ハードコート未処理側面)を上にして約20mm厚さ(10枚)に積載し、その上に厚さ1mmのアルミニウム板を載せ、その上に更に厚さ2mmの鉄板を載せた。その上に重さ10kgの重りを6個載せ(荷重:0.0067kg/cm)、熱風温度が約87℃の熱風オーブンに入れ、90分間保持した。
【0039】
次に重りおよび鉄板を一旦除去した後、上記と同様に、更に過剰に湾曲形状が付与されたシートを凸面側(ハードコート未処理側面)を上にして約20mm厚さ(10枚)に積載し、その上にアルミニウム板、鉄板、重さ10kgの重りを6個載せ、熱風温度が約87℃の熱風オーブンに入れ、40分間保持した。
同様の操作を繰り返し、約20mm厚さ(10枚)に積載したシートを1段として、合計10段まで積載し、加熱、保持した。
なお、各段のシート温度は、最上部のシートでは約70℃程度まで上昇しているが、それより下のシートではそれより低い温度になっている。
【0040】
10段目を約87℃で40分間保持した後、約72℃で10時間保持してアニールした。その後、熱風オーブンの加熱を停止し、放冷した。
加工前後の反り量を表1に示す。表中のI〜IVはシートの四隅の位置を示す。反り量の値は、代表として各段の中央のシートについて測定した値である。
反り量が22mmを超える反りが、適正な7〜22mmの範囲の反りに修正されている。
【0041】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を説明する断面模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシート
2 アルミニウム板
3 鉄板またはステンレス板
4 重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを10〜40mm厚さに積載し、その上下を金属製平板で挟み、荷重を掛けながら所定温度まで加熱、保持し、次いでその上に更に過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを10〜40mm厚さに積載し、金属製平板で挟み、荷重を掛けながら所定温度まで加熱、保持する操作を繰り返して行い、その後、繰り返して積載した過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートを一度に略所定温度に保持してアニールした後、放冷することを特徴とする湾曲形状シートの加工方法。
【請求項2】
所定温度が、熱可塑性樹脂シートの熱変形温度から50℃〜10℃低い温度であることを特徴とする請求項1記載の加工方法。
【請求項3】
金属製平板の間に挟み込んだ5〜15枚の過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートの積層段数が5〜15段であることを特徴とする請求項1記載の加工方法。
【請求項4】
所定温度まで加熱し、保持する時間が20〜120分間であることを特徴とする請求項1記載の加工方法。
【請求項5】
アニール時間が5〜10時間であることを特徴とする請求項1記載の加工方法。
【請求項6】
過剰に湾曲形状が付与された熱可塑性樹脂を主体とするシートが表面処理防眩板であることを特徴とする請求項1記載のシートの加工方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−238533(P2008−238533A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81170(P2007−81170)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】