説明

湿式画像形成装置

【課題】簡易な構成でクリーニング液を像担持体に均等に塗布することが可能な湿式画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体110の周囲には、現像装置107、感光体110から一次転写される像担持体である中間転写体103、クリーニング液を供給するクリーニング液給液部112、液溜まり部材114、感光体110のクリーニングローラ108、感光体110に残留したトナーを除去するためのクリーニング部材であるクリーニングブレード104、帯電装置116および露光装置118がそれぞれ配設される。液溜まり部材114は、クリーニングブレード104よりも感光体110の表面の移動方向上流側の位置で感光体110との間でクリーニング液の液溜まりを形成するように感光体110の表面に接触または近接して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関し、キャリア液中にトナーを分散させてなる液体現像剤を用いて画像形成を行なう湿式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体上に形成された静電潜像がトナーにより現像されてそのトナー像が記録用紙に転写されて、画像が形成される。また、中間転写体を備えている場合は、トナー像が、一旦感光体から中間転写体へ一次転写されて、さらに中間転写体から記録用紙へ二次転写されて、画像が形成されることになる。このような画像形成装置の転写プロセスでは、一般に静電転写方式が採用されている。
【0003】
たとえば、感光体上のトナー像を被転写体である中間転写体へ一次転写する場合は、感光体と対向するように配置された中間転写体に電圧を印加し、感光体と中間転写体との間に電界を形成してこの電界によりトナー像を中間転写体に静電吸着させている。
【0004】
このような転写プロセスにおいて、電界に乱れが生じたり、トナーの感光体への付着力が強過ぎたりすると一部のトナーが転写されずに感光体上に残留し、転写効率が低下することになる。
【0005】
したがって、残留したトナーを転写の都度充分にクリーニングする必要があり、そのためにクリーニング液を均等に塗布することが求められる。
【0006】
この点で、特開2002−202669号公報においてはクリーニングローラの下方にクリーニング補助液を溜めるタンクが設けられ、クリーニング液をローラで汲み上げ、像担持体に塗布する技術が開示されている。当該技術によれば、感光体にクリーニング液を塗布することが可能であるが、感光体にクリーニング液を均等に塗布するためには、クリーニングローラの位置の精度が必要となるとともに、クリーニング液を十分に供給するためのタンクを設ける必要があり、構成が複雑になる可能性がある。
【0007】
また、特開平11−65287号公報においては、現像前に感光体にプリウェット液を塗布するプリウェット装置が開示されている。当該技術によれば、互いに接する一対のプリウェットローラのニップ部にプリウェット液の溜まりを形成し、一方のプリウェットローラの回転に伴ってニップ部を通過したプリウェット液を感光体に塗布する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2002−202669号公報
【特許文献2】特開平11−65287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、当該プリウェット装置が感光体に塗布するプリウェット液の薄層は、画像形成に影響を与えるためその厚さを適切な厚さに調整することが求められ、当該技術をクリーニング液を供給して塗布するクリーニング装置に適用するには構成が非常に複雑になるためコストアップにもつながり適切ではない。
【0009】
また、プリウェットローラの位置の精度が必要であるとともに、液溜まりを形成するためのローラを別に設ける必要があり、構成が複雑になる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、簡易な構成でクリーニング液を像担持体に均等に塗布することが可能な湿式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る湿式画像形成装置は、キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いて形成されたトナー像を担持する像担持体を有し、像担持体上のトナー像を被転写体に転写する湿式画像形成装置であって、被転写体へのトナー像の転写後に像担持体に残留したトナーをクリーニングするためのクリーニング装置を備える。クリーニング装置は、像担持体に圧接され、像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング部材と、クリーニング液を供給する給液機構と、給液機構により供給されたクリーニング液の液溜まりを像担持体との間で形成するように、クリーニング部材よりも像担持体の表面の移動方向上流側の位置で像担持体の表面に接触又は近接して配置された第1の液溜まり部材とを含む。
【0012】
好ましくは、クリーニング装置は、第1の液溜まり部材とクリーニング部材との間に、像担持体上に残留したトナーを撹拌するための撹拌部材をさらに含む。
【0013】
特に、クリーニング装置は、撹拌部材とクリーニング部材との間の位置で、クリーニング液の液溜まりを像担持体との間で形成するように、像担持体の表面に接触又は近接して配置された第2の液溜まり部材をさらに含む。
【0014】
好ましくは、第1の液溜まり部材は、薄膜状のフィルム、像担持体の回転に従って回転する従動ローラおよび金属薄板のいずれかで構成される。
【0015】
特に、薄膜状のフィルムは、離型性の高いフッ素系あるいはシリコン系材料で形成される。
【0016】
特に、薄膜状のフィルムは、液溜まりができる領域において切り込みが設けられる。
好ましくは、第1の液溜まり部材は、薄膜状の導電性フィルムで構成され、クリーニング装置は、導電性フィルムと、像担持体との間に電位差を生じさせる電位設定部をさらに含む。
【0017】
好ましくは、第1の液溜まり部材は、薄膜状の導電性フィルムで構成され、クリーニング装置は、導電性フィルムの電位を像担持体に残留しているトナーと逆極性の電位に設定するための電位設定部をさらに含む。
【0018】
好ましくは、像担持体は、その表面に静電潜像が形成され、その静電潜像が液体現像剤によって現像されることによりトナー像を担持する感光体である。
【0019】
好ましくは、像担持体は、液体現像剤によって現像されたトナー像を感光体から転写されて担持する中間転写体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る湿式画像形成装置は、給液機構により供給されたクリーニング液の液溜まりを像担持体との間で形成するように、クリーニング部材よりも像担持体の表面の移動方向上流側の位置で像担持体の表面に接触又は近接して配置された液溜まり部材とを含む。
【0021】
当該構成により、像担持体と液溜まり部材との間でクリーニング液により液溜まりが形成され、像担持体の長手方向にクリーニング液が均等に均された状態で流出する。したがって、簡易な構成でクリーニング液を像担持体に均等に塗布することが可能となり、クリーニング性を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一であるものとする。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【0024】
図1を参照して、本発明の実施の形態に従う湿式画像形成装置にはドラム状の像担持体である感光体110の周囲には矢印で示す回転方向の順に、現像装置107、感光体110から一次転写される像担持体である中間転写体103、クリーニング液を供給するクリーニング液給液部(給液機構)112、液溜まり部材114、感光体110のクリーニングローラ(撹拌部材)108、感光体110に残留したトナーを除去するためのクリーニング部材であるクリーニングブレード104、帯電装置116および露光装置118がそれぞれ配設される。
【0025】
また、中間転写体103の周囲には矢印で示す回転方向の順に二次転写ローラ102、クリーニング液を供給するクリーニング液給液部204、液溜まり部材203、中間転写体103のクリーニングローラ201(撹拌部材)、中間転写体103に残留したトナーを除去するためのクリーニング部材である中間転写体103のクリーニングブレード202がそれぞれ配設される。
【0026】
現像装置107は、トナーおよびキャリア液を含む液体現像剤(現像液とも称する)を貯蔵した現像槽105と、現像ローラ106とを含む。
【0027】
ここで、現像液は、キャリア液である絶縁性液体と、静電潜像を現像するトナーと、トナーを分散させる分散剤とを主要成分としている。
【0028】
キャリア液としては、一般に電子写真用現像液に用いるものであれば特に制限することなく使用することができるが、中でも不揮発性の液体は好ましい。不揮発性液体としてはたとえば、シリコンオイル、ミネラルオイル、パラフィンオイル、鉱物油等を挙げることができる。
【0029】
トナーとしては、一般に電子写真用現像液に用いるものであれば、特に制限することなく使用することができる。トナー用結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。またこれらの樹脂を複数、混合して用いることも可能である。また、トナーの着色に用いられる顔料および染料も一般に市販されているものを用いることができる。たとえば、顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、レーキレッドD等を用いることができる。染料としてはソルベントレッド27やアシッドブルー9等を用いることができる。
【0030】
現像液の調製方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調製することができる。たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ローラミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末をたとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナーを得ることができる。そして、得られたトナーをキャリア液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、現像液を得ることができる。
【0031】
なお、クリーニング液は、キャリア液と同等のオイルを用いることができる。たとえば、シリコンオイル、ミネラルオイル、アイソパー等を挙げることができる。
【0032】
現像ローラ106には、一定量の現像液が供給され、図示しない現像前チャージャにより現像ローラ106上の現像液中に含まれるトナーに電荷が与えられる。その後、現像ローラ106により感光体110に搬送された荷電トナーは感光体110上において画像部を現像する。
【0033】
感光体110の表面は、帯電装置116により所定の表面電位に一様に帯電される。そして、その後、露光装置118により画像情報の露光を行ない、感光体110の表面に静電潜像を形成する。次いで、感光体110上の静電潜像は、上述したように現像装置107によりトナーおよびキャリア液を含む現像液で現像され、感光体110の表面にトナー像が形成される。このとき、トナーだけでなくキャリア液も感光体110の表面に付着する。
【0034】
次に、感光体110上に形成されたトナー像は、所定の電圧が印加された中間転写体103に一次転写される。そして、中間転写体103から記録用紙300へ二次転写ローラ102により二次転写されて記録用紙300上にトナー像が形成される。
【0035】
なお、二次転写ローラ102は、内部にヒータを内蔵した転写同時定着用のローラとすることも可能である。また、転写後の記録用紙300を図示していない定着ローラで定着するようにすることも可能である。
【0036】
一方、一次転写後の感光体110に残留したトナーについては、クリーニング装置によりクリーニングされる。感光体110のクリーニング装置は、クリーニング液給液部112と、液溜まり部材114と、クリーニングローラ(撹拌部材)108と、感光体110に残留したトナーを除去するためのクリーニング部材であるクリーニングブレード104とを含む。なお、本例においては、クリーニングローラを含む構成について説明するが、クリーニングローラを設けない構成とすることも可能である。
【0037】
具体的には、クリーニング液給液部112は、クリーニング液を感光体110に対して長手方向に沿って設けられた管から滴下して給液を行なう。クリーニング液給液部112から供給されるクリーニング液は、感光体110上の残留したトナーと混合されてトナー像を浮き上がらせる。
【0038】
そして、液溜まり部材114は、クリーニングブレード104よりも感光体110の表面の移動方向上流側の位置で感光体110との間でクリーニング液の液溜まりを形成するように感光体110の表面に接触または近接して配置する。
【0039】
ここで、液溜まりを形成するように液溜まり部材114を感光体110の表面に接触して配置する状態とは、クリーニング液が給液されると液溜まりが形成される程度、接触していれば足り、少なくとも感光体110の回転に伴ってある程度のクリーニング液の流出が可能である状態を意味するものとする。なお、クリーニング液の流出の程度は、液溜まり部材114の柔軟性と液溜まりの液量および感光体110の回転力に応じて調整される。
【0040】
クリーニングブレード104よりも感光体110の表面の移動方向上流側の位置で液溜まり部材114を感光体110との間で感光体110の表面に接触することにより、上述したようにクリーニング液給液部112からクリーニング液が給液されると、給液されたクリーニング液は一旦、液溜まり部材114に溜まることになる。そして、感光体110の回転に伴って液溜まり部材114の感光体110との接触端部から感光体長手方向にクリーニング液が均等に均された状態で流出する。そして、流出したクリーニング液は、クリーニングローラ108を均等に濡らすことになる。したがって、クリーニングローラ108での良好なクリーニング前処理が可能となる。
【0041】
一方、液溜まり部材114を液溜まりを形成するように感光体110の表面に近接して配置する状態とは、両者間にわずかに間隙がある状態であり、感光体110と液溜まり部材114との間でクリーニング液により液体架橋が形成される状態を意味するものとする。なお、液溜まり部材114と感光体110との間の間隙は、液体架橋が形成される状態であれば、感光体110からの間隙の間隔について厳密に設計する必要はない。
【0042】
クリーニングブレード104よりも感光体110の表面の移動方向上流側の位置で液溜まり部材114を感光体110との間で感光体110の表面に近接して配置することにより、上述したようにクリーニング液給液部112からクリーニング液が給液されると、給液されたクリーニング液は一旦、液溜まり部材114に溜まることになる。そして、感光体110と液溜まり部材114との間でクリーニング液により液体架橋が形成される状態となる。一方、液体架橋が形成された状態であるため液溜まり部材114では一定量の液しか溜められない。したがって、一定量を越えた液は、液溜まり部材114と感光体110との間から下流側に溢れて感光体長手方向にクリーニング液が均等に均された状態で流出する。そして、流出したクリーニング液は、クリーニングローラ108を均等に濡らすことになる。したがって、クリーニングローラ108での良好なクリーニング前処理が可能となる。
【0043】
なお、湿式画像形成装置の動作時において、液溜まり部材114と感光体110との間でクリーニング液により液溜まりが形成される状態であれば足り、湿式画像形成装置の停止時において、液溜まりが形成されている必要はなく、湿式画像形成装置の動作時において、液溜まりを形成するように感光体110の表面に接触または近接して配置すればよい。
【0044】
クリーニングローラ108は、回転して感光体110と圧接され、感光体110に残留したトナー像を液体現像剤中で乱すことでトナー粒子とキャリアとを撹拌させる。
【0045】
これにより、感光体110に圧接されたクリーニングブレード104において残留したトナーを感光体110から掻き取るクリーニング力を向上させることが可能である。
【0046】
本例においては、一例として感光体110の表面移動方向下流側において、クリーニングブレード104を感光体110の回転方向に対してカウンタ当接した構成としており、クリーニングブレード104の先端部(エッジ)により感光体110の表面に残留したトナーをクリーニング液とともに掻き取る構成としている。
【0047】
当該構成により、感光体110の表面から残留したトナーを含んだクリーニング液が除去されてクリーニング工程が終了する。
【0048】
したがって、液溜まり部材114を感光体110に対して設ける簡易な構成により、感光体110の長手方向に均等にクリーニング液を供給することが可能であり、その後の下流方向のクリーニングローラ108も均等に濡らすことができ、クリーニングブレード104によるクリーニング性を向上させることが可能である。
【0049】
なお、本例においては、残留したトナーを掻き取る構成としてクリーニングブレード104を感光体110の回転方向に対してカウンタ当接した構成を一例として図示しているが、残留したトナーを掻き取ることが可能な構成であれば特にその当接の方向等には限定されない。また、本例においては、クリーニングブレード104を用いて残留したトナーを除去する構成について説明しているが、ウェブロール状の紙,布等を感光体に圧接し、巻き取り移動させながら感光体上の残留したトナーを除去するいわゆるウェブクリーニングを採用することも可能である。
【0050】
また、同様に、中間転写体103においても、二次転写後の中間転写体103に残留したトナーについて、中間転写体103のクリーニング装置によりクリーニングされる。中間転写体103のクリーニング装置は、クリーニング液給液部204と、液溜まり部材203と、クリーニングローラ(撹拌部材)201と、中間転写体103に残留したトナーを除去するためのクリーニング部材であるクリーニングブレード202とを含む。なお、本例においては、クリーニングローラを含む構成について説明するが、クリーニングローラを設けない構成とすることも可能である。
【0051】
具体的には、クリーニング液給液部204は、クリーニング液を中間転写体103の長手方向に沿って設けられた管から滴下して給液を行なう。クリーニング液給液部204から供給されるクリーニング液は、中間転写体103上の残留したトナーと混合されてトナー像を浮き上がらせる。
【0052】
そして、液溜まり部材203は、液溜まり部材114と同様に、クリーニングブレード202よりも中間転写体103の表面の移動方向上流側の位置で中間転写体103との間でクリーニング液の液溜まりを形成するように中間転写体103の表面に接触または近接して配置する。
【0053】
クリーニングブレード202よりも中間転写体103の表面の移動方向上流側の位置で液溜まり部材203を中間転写体103との間で中間転写体103の表面に接触することにより、上述したようにクリーニング液給液部204からクリーニング液が給液されると、給液されたクリーニング液は一旦、液溜まり部材203に溜まることになる。そして、中間転写体103の回転に伴って液溜まり部材203の中間転写体103との接触端部から中間転写体長手方向にクリーニング液が均等に均された状態で流出する。そして、流出したクリーニング液は、クリーニングローラ201を均等に濡らすことになる。したがって、クリーニングローラ201での良好なクリーニング前処理が可能となる。
【0054】
また、クリーニングブレード202よりも中間転写体103の表面の移動方向上流側の位置で液溜まり部材203を中間転写体103との間で中間転写体103の表面に近接して配置することにより、上述したようにクリーニング液給液部204からクリーニング液が給液されると、給液されたクリーニング液は一旦、液溜まり部材203に溜まることになる。そして、中間転写体103と液溜まり部材203との間でクリーニング液により液体架橋が形成される状態となる。一方、液体架橋が形成された状態であるため液溜まり部材203では一定量の液しか溜められない。したがって、一定量を越えた液は、液溜まり部材203と中間転写体103との間から下流側に溢れて中間転写体長手方向にクリーニング液が均等に均された状態で流出する。そして、流出したクリーニング液は、クリーニングローラ201を均等に濡らすことになる。したがって、クリーニングローラ201での良好なクリーニング前処理が可能となる。
【0055】
なお、湿式画像形成装置の動作時において、液溜まり部材203と中間転写体103との間でクリーニング液により液溜まりが形成される状態であれば足り、湿式画像形成装置の停止時において、液溜まりが形成されている必要はなく、湿式画像形成装置の動作時において、液溜まりを形成するように中間転写体103の表面に接触または近接して配置すればよい。
【0056】
したがって、上述したのと同様に、液溜まり部材203を中間転写体103に対して設ける簡易な構成により、中間転写体103の長手方向に均等にクリーニング液を供給することが可能であり、その後の中間転写体103の表面の進行方向の下流側に位置するクリーニングローラ201も均等に濡らすことができ、クリーニングブレード202によるクリーニング性を向上させることができる。
【0057】
(実施の形態の変形例1)
図2は、本発明の実施の形態の変形例1に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【0058】
図2を参照して、本発明の実施の形態の変形例1に従う湿式画像形成装置は、図1で説明した湿式画像形成装置と比較して、中間転写体103に設けられたクリーニングローラ201および液溜まり部材203の代わりに、従動ローラ205を設けた点が異なる。その他の点については同様であるのでその詳細な説明は繰返さない。
【0059】
従動ローラ205は、中間転写体103の回転に従って回転するものであり中間転写体103と当接した状態で配設されている。したがって、クリーニング液給液部204からクリーニング液が供給されることにより中間転写体103と従動ローラ205との間で液溜まり状態が形成される。そして、中間転写体103の回転に伴って従動ローラ205が回転して従動ローラ205と感光体110との進行方向の下流側の接触端部から中間転写体長手方向にクリーニング液が均等に均された状態で流出する。すなわち、流出したクリーニング液は、中間転写体103を均等に濡らすことになる。
【0060】
当該構成、すなわち従動ローラを設けた簡易な構成により、中間転写体103の長手方向に対して均等にクリーニング液を供給することが可能であるため中間転写体103の表面の進行方向の下流側に位置するクリーニングブレード202によるクリーニング性を向上させることができる。また、部品点数も削減されるため図1の構成よりもさらに簡易な構成であり、コスト的にも有利である。
【0061】
なお、本構成においては、図1において中間転写体103に対して設けられたクリーニングローラ201および液溜まり部材203の代わりに、従動ローラ205を設けた構成について説明したが、感光体110に対しても、クリーニングローラ108および液溜まり部材114の代わりに、従動ローラを設けた構成とすることも当然に可能である。
【0062】
また、本構成において、従動ローラ205とクリーニングブレード202との間にクリーニングローラ201を設ける構成とすることも可能である。
【0063】
(実施の形態の変形例2)
図3は、本発明の実施の形態の変形例2に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【0064】
図3を参照して、本発明の実施の形態の変形例2に従う湿式画像形成装置は、図1で説明した湿式画像形成装置と比較して、中間転写体103のクリーニングローラ201とクリーニングブレード202との間にさらに液溜まり部材207と、クリーニング液給液部206とを設けた点が異なる。その他の点については同様であるのでその詳細な説明は繰返さない。なお、本例においては、クリーニング液給液部206をさらに設けた構成について説明するが、クリーニング液給液部206を設けない構成とすることも可能である。
【0065】
液溜まり部材207は、液溜まり部材203と同様に、クリーニングブレード202よりも中間転写体103の表面の移動方向上流側の位置で中間転写体103との間でクリーニング液の液溜まりを形成するように中間転写体103の表面に接触または近接して配置する。本例においては、クリーニングブレード202とクリーニングローラ201との間に配置する。
【0066】
したがって、クリーニングローラ201よりも中間転写体103の表面の移動方向上流側の位置で液溜まり部材203が設けられ、クリーニングブレード202よりも中間転写体103の表面の移動方向上流側の位置で液溜まり部材207が設けられる構成となる。
【0067】
したがって、それぞれの部材に長手方向に均等に均されたクリーニング液を供給することが可能となり、クリーニング性をさらに向上させることが可能となる。
【0068】
また、クリーニング液給液部206から新たなクリーニング液が滴下されることにより、クリーニングローラ201を通過したクリーニング液のクリーニング力の低下を抑制することができる。
【0069】
上記の実施の形態に基づき本発明を実施した例を以下に説明する。
まず、中間転写体103に対して設けられたクリーニングローラ201の濡れ方を測定した。
【0070】
(実施例1)
使用した画像形成装置は、図1に示す湿式画像形成装置である。液溜まり部材203としてフィルム状のものを用いた。具体的には、形成される画像の幅に合わせて長手方向の長さが290mm、フィルムの厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用いた。液溜まり部材であるフィルムと中間転写体103との間にクリーニング液を溜め、長手方向の長さ300mmのクリーニングローラ201に対して給液したところ、クリーニングローラ201の濡れ方に不均衡が生じることはなく、長手方向に対して均等に供給することができた。
【0071】
なお、液溜まり部材を構成するフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに限らずポリプロピレン(PP)フィルムやポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等、フィルムとして市販されているものであるならば特に材料の制限はない。なお、フィルムの厚みは耐久性等を考慮すると25μm以上であることが望ましく、中間転写体クリーニングローラ201の長手方向に対して均等にクリーニング液を供給することが可能である。
【0072】
(実施例2)
実施例1で用いた湿式画像形成装置に対して、液溜まり部材203のフィルム材料にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン))等のフッ素樹脂を用いて同様の測定を行なった。具体的には、形成される画像の幅に合わせて長手方向の長さが290mm、フィルム厚さ70μmのフッ素樹脂フィルム(PTFEフィルム)を用いた。液溜まり部材であるフィルムと中間転写体103との間にクリーニング液を溜め、中間転写体クリーニングローラ201に対して給液したところ、中間転写体201の濡れ方に不均衡が生じることなく、長手方向に対して均等に供給することができた。
【0073】
また、液溜まり部材203として、離型性の高いフッ素樹脂フィルムを用いたため、液溜まり部材203へのトナー付着が減少し、液溜まり部材203の耐久性を向上させることができた。
【0074】
なお、本実施例に用いるフィルムは離型性の高いフッ素系やシリコン系で作製することが可能であり特にその種類に制限はない。
【0075】
(実施例3)
次に、実施例1の湿式画像形成装置に対して、中間転写体103と液溜まり部材203との間に電位差を設ける構成とした。なお、液溜まり部材203として108Ωの抵抗値を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。
【0076】
具体的には、図4に示すように液溜まり部材203の電位を設定する電位設定部209を設けた構成とした。なお、電位設定部209は、中間転写体103の電位についても設定可能であり、中間転写体103と液溜まり部材203との間の電位差を50Vに設定した。また、液溜まり部材203の電位は、トナーと逆極性の電位となるように設定した。
【0077】
これにより、液溜まり部材203にトナーが付着することを抑制することができ、実施例2よりもさらに液溜まり部材の耐久性が向上した。
【0078】
なお、電位設定部209により液溜まり部材203と中間転写体103との間に生じる電位差は放電が生じない範囲に設定されるのが望ましい。また、本例においては、一例として50Vに設定したが、特にこれに限られず、液溜まり部材203の抵抗値に合わせて適切な値に設計すればよい。
【0079】
(実施例4)
次に、実施例1の湿式画像形成装置に対して、液溜まり部材203としてPETフィルムを用いるとともに、PETフィルムの片面(中間転写体側)にITO(酸化インジウムスズ)を蒸着して表面に付着する構成として用いた。すなわち、ITOを蒸着することによりPETフィルムを導電性フィルムとして用いることができる。
【0080】
そして、さらに、図4に示す電位設定部209を設けて、当該インジウムスズ酸化物を蒸着したフィルムと中間転写体103との間に20Vの電位差を生じさせ、液溜まり部材203をトナーと逆極性の電位に設定した。
【0081】
これにより、液溜まり部材203にトナーが付着することを抑制することができ、実施例1よりもさらに液溜まり部材の耐久性が向上した。
【0082】
(実施例5)
次に、実施例1の湿式画像形成装置に対して、液溜まり部材203として金属薄板を用いた。具体的には、液溜まり部材203にステンレス(SUS)製のシムテープを用いた。シムテープの厚さは0.1mm厚とした。また、長手方向の長さは、形成される画像の幅に合わせて290mmとした。
【0083】
実施例1と同様の測定を行なったところ、中間転写体クリーニングローラ201の濡れ方に不均衡が生じることはなく、長手方向に対して均等に供給することができた。
【0084】
なお、液溜まり部材に用いる金属薄板はアルミやステンレスなど金属材料であるならばその種類は問わない。なお、厚みは耐久性等を考慮すると20μm以上であることが望ましく、中間転写体クリーニングローラ201の長手方向に対して均等にクリーニング液を供給することが可能である。
【0085】
(実施例6)
次に、図5のように液溜まり部材203として用いたフィルムに対して、1mm程度の切り込みを設けた櫛歯状のフィルム203♯として、実施例1と同様の測定を行ったところ、中間転写体クリーニングローラ201の濡れ方に不均衡が生じることはなく、長手方向に対して均等に供給することができた。また、図6のようにさらに大きな切り込みを設けた櫛歯状のフィルム203aを設けて、実施例1と同様の測定を行なったところ、中間転写体クリーニングローラ201の濡れ方に不均衡が生じることはなく、長手方向に対して均等に供給することができた。液溜まりが生じる液溜まり部材の端部に切り込みを入れることにより、その程度によりクリーニング液の流出量を調整することが可能である。
【0086】
(実施例7)
使用した画像形成装置は、図2に示す湿式画像形成装置である。液溜まり部材203として従動ローラ205を用いた。液溜まり部材である従動ローラ205と中間転写体103との間にクリーニング液を溜め、従動により中間転写体クリーニングブレード202の長手方向に対して均等に供給することができた。
【0087】
次に、クリーニング性について評価した。
(比較例)
使用した画像形成装置は、図7のように液溜まり部材114,203および中間転写体クリーニングローラ201を設けなかった構成とした。その他の構成については、実施例1と同様に測定した。
【0088】
クリーニング液給液部206から供給された液は、中間転写体ブレード202の先端に直接付与される。クリーニング液は、中間転写体クリーニングブレード202の先端に若干溜めることが可能であった。
【0089】
本比較例においては、クリーニング不良として中間転写体103の残存トナーによる縦筋などの画像ノイズであるいわゆる背景かぶりを確認した。10枚印字後は、背景かぶりに問題のないレベルであったが、500枚印字後には、中間転写体クリーニングブレード202の先端部(エッジ)にトナーが蓄積し、中間転写体クリーニングブレード202の先端にクリーニング液を溜めることができなくなった。その結果、クリーニング不良による背景かぶりが生じた。
【0090】
(実施例8)
使用した画像形成装置は、実施例7と同様の図2に示す湿式画像形成装置である。液溜まり部材203として従動ローラ205を用いた。
【0091】
中間転写体クリーニングブレードの長手方向に対して均等にクリーニング液が供給されることを確認後、クリーニング性について評価した。
【0092】
本実施例においては、500枚印字後においてもクリーニング不良による背景かぶりは生じず、クリーニング性に問題はなかった。
【0093】
したがって、実施例に示されるように、液溜まり部材を中間転写体に設ける簡易な構成でクリーニング液を中間転写体に均等に塗布することが可能であり、良好なクリーニング性が得られることを確認した。
【0094】
なお、本実施例においては、中間転写体に対して設けられる液溜まり部材について説明したが、感光体に対しても同様に適用可能である。
【0095】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施の形態に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態の変形例1に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態の変形例2に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【図4】液溜まり部材203の電位を設定する電位設定部209を設けた湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【図5】櫛歯状のフィルム203♯を説明する図である。
【図6】櫛歯状のフィルム203aを説明する図である。
【図7】比較例に従う湿式画像形成装置の一例を説明する概略構成図である。
【符号の説明】
【0097】
102 二次転写ローラ、103 中間転写体、104,202 クリーニングブレード、105 現像層、106 現像ローラ、107 現像装置、108,201 クリーニングローラ、110 感光体、112,204,206 クリーニング液給液部、114,203,207 液溜まり部材、116 帯電装置、118 露光装置、205 従動ローラ、209 電位設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア液にトナーが分散された液体現像剤を用いて形成されたトナー像を担持する像担持体を有し、前記像担持体上のトナー像を被転写体に転写する湿式画像形成装置であって、
前記被転写体へのトナー像の転写後に前記像担持体に残留したトナーをクリーニングするためのクリーニング装置を備え、
前記クリーニング装置は、
前記像担持体に圧接され、前記像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング部材と、
クリーニング液を供給する給液機構と、
前記給液機構により供給された前記クリーニング液の液溜まりを前記像担持体との間で形成するように、前記クリーニング部材よりも前記像担持体の表面の移動方向上流側の位置で前記像担持体の表面に接触又は近接して配置された第1の液溜まり部材とを含む、湿式画像形成装置。
【請求項2】
前記クリーニング装置は、前記第1の液溜まり部材と前記クリーニング部材との間に、前記像担持体上に残留したトナーを撹拌するための撹拌部材をさらに含む、請求項1記載の湿式画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニング装置は、前記撹拌部材と前記クリーニング部材との間の位置で、前記クリーニング液の液溜まりを前記像担持体との間で形成するように、前記像担持体の表面に接触又は近接して配置された第2の液溜まり部材をさらに含む、請求項2記載の湿式画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の液溜まり部材は、薄膜状のフィルム、前記像担持体の回転に従って回転する従動ローラおよび金属薄板のいずれかで構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の湿式画像形成装置。
【請求項5】
前記薄膜状のフィルムは、離型性の高いフッ素系あるいはシリコン系材料で形成される、請求項4記載の湿式画像形成装置。
【請求項6】
前記薄膜状のフィルムは、前記液溜まりができる領域において切り込みが設けられる、請求項4記載の湿式画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の液溜まり部材は、薄膜状の導電性フィルムで構成され、
前記クリーニング装置は、前記導電性フィルムと、前記像担持体との間に電位差を生じさせる電位設定部をさらに含む、請求項1に記載の湿式画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の液溜まり部材は、薄膜状の導電性フィルムで構成され、
前記クリーニング装置は、前記導電性フィルムの電位を前記像担持体に残留しているトナーと逆極性の電位に設定するための電位設定部をさらに含む、請求項1に記載の湿式画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体は、その表面に静電潜像が形成され、その静電潜像が前記液体現像剤によって現像されることによりトナー像を担持する感光体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の湿式画像形成装置。
【請求項10】
前記像担持体は、前記液体現像剤によって現像されたトナー像を感光体から転写されて担持する中間転写体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の湿式画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−145411(P2009−145411A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319851(P2007−319851)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】