説明

湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料及び有機EL素子

【課題】湿式製膜可能であって発光効率や低電圧駆動性が顕著に改善された有機EL素子製造用材料、及びこれを用いて製造された有機EL素子の提供。
【解決手段】溶剤中に共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)とを所定の割合で溶解して得られた湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料であり、有機金属錯体(MOX)が高分子配位子(polyQ)と低分子配位子(K)とを有する一般式polyQ・M・Kn-1で表される高分子金属錯体(HM-C)及び/又は低分子配位子(K)のみを有する一般式M・Knで表される低分子金属錯体(LM-C)であり、高分子配位子(polyQ)が繰返し単位(Y)を有する高分子重合体の側鎖に必要によりスペーサ基(X)を介して8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)が導入された配位子であり、低分子配位子(K)が所定の8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)からなる配位子であり、Mが2〜4価の金属イオンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機エレクトロルミネッセンス(電界発光)素子(以下、「有機EL素子」という。)を製造するための材料として有用な有機EL素子製造用材料及び有機EL素子に係り、特に湿式製膜可能であって発光効率や低電圧駆動性に優れた有機EL素子製造用材料及びこれを用いて製造された有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、面発光が可能で大面積の発光素子を製造できる可能性があることから、テレビ、パーソナルコンピュータ、ファミリーコンピュータ等のディスプレイや、屋内灯、液晶表示装置のバックライト、各種の広告塔や表示灯等、多くの用途への応用が期待されている。
【0003】
ところで、有機EL素子といえば、事実上は薄膜型有機EL素子のことを指している。これは、有機EL素子がホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料といった材料からなる1層ないしは複数層の薄膜有機層を透明又は半透明な薄膜電極で挟み込んだ構造をしており、有機層全体の厚みが約0.1μm前後と極めて薄いからである。そして、このような薄膜からなる有機EL素子を製造するための方法については、現在のところ、基板上に低分子有機化合物であるホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料を順次真空蒸着することにより作製する真空蒸着法が主流であるが、この方法には大掛かりな装置が必要であり、また、大面積化への対応が困難である。
【0004】
これに対し、有機EL素子製造用材料として、π電子共役系を持つ所定の繰返し単位を有して単層でも電界発光を示し、しかも、溶剤溶解性を有して溶液にすることができ、これによって基板上に塗布することにより薄膜化が可能であり、有機EL素子の作製プロセスが簡便であって大面積化への対応が容易であるという特長を有するポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)類等の共役系有機EL高分子が知られている。しかしながら、この共役系有機EL高分子は、一般に、発光効率や低電圧駆動性等の点で低分子蒸着型の有機EL素子よりも劣るとされている。
【0005】
そこで、近年、このような共役系有機EL高分子の問題点、特に発光効率や低電圧駆動性等を改善する目的で、この共役系有機EL高分子中に、例えばオキサジアゾール系化合物、ベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、テトラシアノアントラキノジメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、ジフェノキノン系化合物等の電子輸送性化合物を分子レベルで分散させることが提案されている(特開平6-73,374号公報、特開2003-92,184号公報、Appl. Phys. Lett., Vol.85, No.7, pp1283-1285(16 August 2004)、J. Mater. Chem., 2005, 15, pp194-203参照)。
【0006】
これは、元来陰極からの電子の注入が起こり難い共役系有機EL高分子に電子輸送材料を介在させることにより電子の注入効率を改善しようとするものであるが、ここで用いられている電子輸送性化合物はそのほとんどがオキサジアゾール系化合物又はベンゾキノン系化合物であり、実際に素子として使用する場合の堅牢性が低下するという別の問題がある。
【0007】
また、発光性能と電子輸送性能とを併せ持ち、安価で熱的・化学的安定性に優れた材料として古くからトリス(8-ヒドロキシキノリノール)アルミニウム(Alq3)が知られているが、このAlq3を共役系有機EL高分子であるポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)類中に分散させてその発光挙動を調べた結果、Alq3とPPVとがそれぞれに発光したことが報告されている(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.32, pp.L921-L924 (1993))。しかしながら、この文献にはAlq3とPPV類とを併用したことによる発光効率の改善等については記載されておらず、また、Alq3とPPV類との混合系においてAlq3を単に電子輸送材料として用いた報告例もない。
【0008】
【特許文献1】特開平6-73,374号公報
【特許文献2】特開2003-92,184号公報
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett., Vol.85, No.7, pp1283-1285 (16 August 2004)
【非特許文献2】J. Mater. Chem., 2005, 15, pp194-203
【非特許文献3】Jpn. J. Appl. Phys., Vol.32, pp.L921-L924 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、湿式製膜可能であって単層でも電界発光を示すポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)類等の共役系有機EL高分子における発光効率や低電圧駆動性等の性能を、堅牢性等の他の性能を低下させることなく有意に改善させることについて鋭意検討した結果、先に本発明者らが提案した高分子配位子と低分子配位子とを有して種々の溶剤に可溶なAlq3型の高分子金属錯体(polyQ・M・Kn-1)及び/又は低分子配位子のみを有して種々の溶剤に可溶なAlq3型の低分子金属錯体(M・Kn)からなる有機金属錯体(特開2005-15,752号公報)を共役系有機EL高分子中に添加することにより、高分子金属錯体及び/又は低分子金属錯体のAlq3部位はほとんど発光することなく優れた電子輸送性能を発揮し、共役系有機EL高分子の発光効率や低電圧駆動性を顕著に改善することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、溶剤中に共役系有機EL高分子と高分子金属錯体及び/又は低分子金属錯体からなる有機金属錯体とを所定の割合で溶解して得られ、湿式製膜可能であって発光効率や低電圧駆動性が顕著に改善された有機EL素子製造用材料を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このような有機EL素子製造用材料を用いて製造された有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、溶剤中に共役系有機EL高分子(CPEL)と高分子金属錯体(HM-C)及び/又は低分子金属錯体(LM-C)からなる有機金属錯体(MOX)とを所定の割合で溶解して得られた湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料であり、上記高分子金属錯体(HM-C)が、繰返し単位(Y)を有する高分子重合体の側鎖に必要によりスペーサ基(X)を介して8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)が導入された高分子配位子(polyQ)と、8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)からなる低分子配位子(K)と、2〜4価の金属イオン(Mn+)とを反応させて得られた下記一般式(1)
polyQ・M・Kn-1 (1)
で表される高分子の有機金属錯体であって、上記低分子金属錯体(LM-C)が、8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)からなる低分子配位子(K)のみが2〜4価の金属イオン(Mn+)に配位した下記一般式(3)
M・Kn (3)
で表される低分子の有機金属錯体であり、上記8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)が、下記一般式(2)
【化1】

(但し、式中、R1〜R6は、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20であって直鎖状、枝分れ状、環状又はこれらの組合せからなる飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数2〜20のアルキルオキシアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基、アロイル基、炭素数2〜20のモノアルキルアミノアルキル基、炭素数3〜20のジアルキルアミノアルキル基、官能基が置換又は非置換のフェニルアゾ基、、官能基が置換又は非置換のアニリノアルキル基、及び、−SO3Naから選ばれた置換基であって、置換基R1、R3、R4及びR6のうち少なくとも1つは水素、ハロゲン基及び−SO3Na以外の置換基である。)で表される8-ヒドロキシキノリン誘導体であることを特徴とする湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料である。
【0012】
また、本発明は、このような湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料を用いて製造された有機EL素子である。
【0013】
〔共役系有機EL高分子(CPEL)について〕
本発明において、使用する共役系有機EL高分子(CPEL)としては、溶剤溶解性であれば特に制限はなく、例えば、ポリ(2,5-ジオクチロキシ-1,4-フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2'-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン]等の如きポリ(2,5-ジアルコキシ-1,4-フェニレンビニレン)類、ポリ[[2,5-ビス(ヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン](1-シアノ-1,2-エチレンジイル)[2,5-ビス(ヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン](2-シアノ-1,2-エチレンジイル)]、ポリ[[2-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-5-メトキシ-1,4-フェニレン](1-シアノ-1,2-エチレンジイル)[2-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-5-メトキシ-1,4-フェニレン](2-シアノ-1,2-エチレンジイル)]等の如きシアノ基を有するポリ(p-フェニレンビニレン)類や、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-n-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-n-オクチルチオフェン)、ポリ(3-n-ノニルチオフェン)、ポリ(3-n-デシルチオフェン)、ポリ(3-n-ウンデシルチオフェン)、ポリ(3-n-ドデシルチオフェン)等のポリチオフェン類や、ポリ(2,5-ジアルコキシ-1,4-フェニレン)等のポリ(p-フェニレン)類や、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)等のポリフルオレン類等を挙げることができる。これらのうち、特に好ましいのは、ポリ(2,5-ジアルコキシ-1,4-フェニレンビニレン)類である。
【0014】
〔有機金属錯体(MOX)について〕
また、本発明で用いる有機金属錯体(MOX)は高分子金属錯体(HM-C)及び/又は低分子金属錯体(LM-C)である。ここで、有機金属錯体(MOX)としては、高分子金属錯体(HM-C)を単独で、また、低分子金属錯体(LM-C)を単独でそれぞれ用いることができるほか、これら高分子金属錯体(HM-C)及び低分子金属錯体(LM-C)を組み合わせて用いることもでき、また、上記の高分子金属錯体(HM-C)又は低分子金属錯体(LM-C)については、その1種のみを単独で用いることができるほか、2種以上の混合物としても用いることができる。
【0015】
〔高分子金属錯体(HM-C)について〕
本発明で用いる高分子金属錯体(HM-C)において、一般式(1)の高分子金属錯体(HM-C)を製造するための高分子配位子(polyQ)は、必要によりスペーサ基(X)を介して高分子重合体の繰返し単位(Y)中に錯体を形成する8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)を導入したものである。この高分子配位子(polyQ)は、その高分子重合体が単一種の繰返し単位(Y)からなる重合体であってもよく、また、2種以上の繰返し単位(Y)を有する共重合体であってもよい。
【0016】
そして、この高分子金属錯体(HM-C)の高分子重合体を形成する繰返し単位(Y)としては、必要によりスペーサ基(X)を介して8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)を導入することができれば特に制限はなく、例えば付加重合、重縮合、開環メタセシス重合等より製造されるものを挙げることができ、具体的には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル酸化合物類や、酢酸ビニル等のビニルエステル類や、N-ビニルピロリドン等のN-ビニルラクタム類や、ビニルエーテル類や、アリルエステル類や、アリルエーテル類や、スチレン等のビニル芳香族化合物類等の種々のオレフィン類から誘導されるポリマーの繰返し単位(エチレン結合)や、ブタジエンやイソプレン等の種々のジエン類から誘導される繰返し単位や、アミド、イミド、エステル、エーテルスルホン、ビニルシクロペンタン等を例示することができ、好ましくはメタクリル酸エステル、スチレン、ビニルシクロペンタン等である。
【0017】
また、上記高分子配位子(polyQ)を形成する際に必要により設けられるスペーサ基(X)は、繰返し単位(Y)からなる高分子重合体の主鎖と8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)のキノリン核との間を結合する結合基であり、重合反応により高分子重合体の繰返し単位(Y)を形成する単量体側に8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)側と結合する置換基を導入して設けてもよく、反対に、8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)側に上記単量体側と結合する置換基を導入して設けてもよく、また、上記単量体側と8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)側とにそれぞれ互いに反応して結合する置換基を導入して設けてもよく、具体的には、炭素、水素、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、珪素、リン等の原子からなり、互いに直鎖状に結合する原子の数が0〜15、好ましくは5〜10の結合基であるのがよく、エチレングリコール等のジオール類、エチレンジアミン等のジアミン類、アルキル/アリール鎖等であってもよい。
【0018】
更に、上記高分子配位子(polyQ)を構成する8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)としては、8-ヒドロキシキノリンや、その2〜7位のいずれか1つの又は2つ以上の位置に、ハロゲン基、炭素数1〜20であって直鎖状、枝分れ状、環状又はこれらの組合せからなる飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数2〜20のアルキルオキシアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基、アロイル基、炭素数2〜20のモノアルキルアミノアルキル基、炭素数3〜20のジアルキルアミノアルキル基、官能基が置換又は非置換のフェニルアゾ基、官能基が置換又は非置換のアニリノアルキル基、及び、−SO3Naから選ばれた1つの又は互いに同じあるいは異なる2つ以上の置換基を有する誘導体を挙げることができる。
【0019】
そして、この高分子配位子(polyQ)を製造する方法についても、特に制限はないが、例えば、8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)をクロロメチル化し、次いでヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させて重合性のアルコキシ(メタ)アクリレート基を導入し、得られた重合性置換基含有8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)をAIBN等のラジカル反応開始剤の存在下に重合させることにより製造することができ(特許文献1参照)、また、8-ヒドロキシキノリン部位を持つジアミンを用いて重縮合によりポリアミドやポリイミドを合成する方法や、8-ヒドロキシキノリン部位を持つノルボルネン誘導体をルテニウム触媒により開環メタセシス重合する方法等によっても容易に製造することができる。
【0020】
ここで、上記の重合性置換基含有8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)をラジカル反応開始剤の存在下に重合して高分子配位子(polyQ)を製造するに際し、例えば、8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)がラジカル捕捉能のあるフェノール性化合物であって、その8位水酸基を剥き出しにしたままで重合させた際にラジカルの捕捉により重合反応が阻害されるような場合には、好ましくは、重合性置換基含有8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)の8位水酸基にトリアルキルシリルハライドを反応させてトリアルキルシリル基を導入し、次いでAIBN等のラジカル反応開始剤の存在下にアルコキシ(メタ)アクリレート基部分を重合せしめ、得られた重合物からトリアルキルシリル基を脱離する方法により製造するのがよい。
【0021】
また、上記一般式(1)で表される高分子金属錯体(HM-C)を形成するための低分子配位子(K)となる8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)については、上記一般式(2)において、その置換基R1〜R6が、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20であって直鎖状、枝分れ状、環状又はこれらの組合せからなる飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数2〜20のアルキルオキシアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基、アロイル基、炭素数2〜20のモノアルキルアミノアルキル基、炭素数3〜20のジアルキルアミノアルキル基、官能基が置換又は非置換のフェニルアゾ基、官能基が置換又は非置換のアニリノアルキル基、及び、−SO3Naから選ばれた置換基であって、置換基R1、R3、R4及びR6のうち少なくとも1つは水素、ハロゲン基及び−SO3Na以外の嵩高い置換基である8-ヒドロキシキノリン誘導体であり、好ましくは、上記の置換基R1、R4及びR6のうち少なくとも1つの置換基が炭素数6〜20であって直鎖状、枝分れ状、環状又はこれらの組合せからなる飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数2〜20のアルキルオキシアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基、炭素数2〜20のジアルキルアミノアルキル基、官能基が置換又は非置換のフェニルアゾ基、及び、官能基が置換又は非置換のアニリノアルキル基から選ばれた嵩高い置換基である8-ヒドロキシキノリン誘導体であり、特に好ましいものとしては、7-イソプロピル-8-ヒドロキシキノリン、7-(3-ペンチル)-8-ヒドロキシキノリン等を挙げることができる。
【0022】
更に、上記高分子金属錯体(HM-C)を形成する2〜4価の金属イオン(Mn+)としては、これまでこの種の有機金属錯体に用いられてきた2〜4価の金属イオン(Mn+)を制限なく用いることができ、具体的には、アルミニウムイオン(Al3+)、ベリリウムイオン(Be2+)、カドミウムイオン(Cd2+)、セリウムイオン(Ce3+)、コバルトイオン(Co3+)、クロムイオン(Cr3+)、銅イオン(Cu2+)、鉄イオン(Fe3+)、ガリウムイオン(Ga3+)、ゲルマニウムイオン(Ge4+)、インジウムイオン(In2+)、マンガンイオン(Mn2+)、ニッケルイオン(Ni2+)、ルテニウムイオン(Ru3+)、オスミウムイオン(Os3+)、チタニウムイオン(Ti4+)等を挙げることができ、好ましくはアルミニウムイオン(Al3+)、ガリウムイオン(Ga3+)、ベリリウムイオン(Be2+)等を挙げることができる。そして、2〜4価の金属イオン(Mn+)がアルミニウムイオン(Al3+)である場合、上記高分子金属錯体(HM-C)を合成するために用いるアルミニウム化合物としては、特に好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムや、トリイソプロポキシアルミニウム等のトリアルコキシアルミニウムを挙げることができる。
【0023】
本発明で用いる高分子金属錯体(HM-C)については、上記2〜4価の金属イオン(Mn+)を生成する金属化合物1当量に対して、0.1当量以上1当量以下の高分子配位子(polyQ)と、1当量以上3.9当量以下の低分子配位子(8-ヒドロキシキノリン誘導体)(K)とを所定の溶剤中で反応させることにより、容易に製造することができる。
【0024】
〔低分子金属錯体(LM-C)について〕
また、本発明で用いる低分子金属錯体(LM-C)は、上記高分子金属錯体(HM-C)の場合と同様の8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)からなる低分子配位子(K)のみが上記高分子金属錯体(HM-C)の場合と同様の2〜4価の金属イオン(Mn+)に配位したものである。
【0025】
そして、この低分子金属錯体(LM-C)は、2〜4価の金属イオン(Mn+)を生成する金属化合物1当量に対して、1.5当量以上5当量以下、好ましくは2当量以上4当量以下の低分子配位子(8-ヒドロキシキノリン誘導体)(K)所定の溶剤中で反応させることにより、容易に製造することができる。
【0026】
〔高分子金属錯体(HM-C)と低分子金属錯体(LM-C)の混合物について〕
本発明において、上記有機高分子金属錯体(HM-C)と低分子金属錯体(LM-C)は、それら自体で種々の溶剤に対して優れた溶解性を示し、それぞれ個別に使用できるものであるが、両者の混合物ととして使用してもよい。このような混合物として使用する場合、高分子金属錯体(HM-C)と低分子金属錯体(LM-C)とをそれぞれ個別に製造し、得られた高分子金属錯体(HM-C)と低分子金属錯体(LM-C)とを所定の溶剤中に所定の割合で溶解することにより、互いに同じ又は異なる金属イオン(Mn+)や互いに同じ又は異なる低分子配位子(K)を有する高分子金属錯体(HM-C)と低分子金属錯体(LM-C)からなる混合物を製造することができるが、高分子金属錯体(HM-C)及び低分子金属錯体(LM-C)における金属イオン(Mn+)及び低分子配位子(K)が互いに同じである混合物については、2〜4価の金属の金属化合物1当量に対して、0.1〜1当量、好ましくは0.2〜0.5当量の高分子配位子(polyQ)と1〜3.9当量、好ましくは1.5〜2.8当量の低分子配位子(K)とを所定の溶媒中で反応させることにより容易に製造することができる。
【0027】
〔溶剤について〕
更に、上記共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)とを溶解する溶剤としては、これら共役系有機EL高分子(CPEL)と高分子金属錯体(HM-C)及び/又は低分子金属錯体(LM-C)とに対して反応性がなく、また、これら共役系有機EL高分子(CPEL)と高分子金属錯体(HM-C)及び/又は低分子金属錯体(LM-C)とを溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶剤や、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤や、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤や、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶剤等を例示することができる。
【0028】
〔有機EL素子製造用材料の調製と共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)との混合比(MOX/CPEL)について〕
上記共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)とを含む有機EL素子製造用材料の調製方法については、これら共役系有機EL高分子(CPEL)及び有機金属錯体(MOX)が所定量づつ溶解した溶剤溶液を調製できれば、特に制限されるものではなく、所定の溶剤中に共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)とを所定量づつ順次、若しくは、同時に添加して溶解させてもよく、また、共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)とをそれぞれ別個に溶剤中に溶解した後、得られた溶液を混合して調製してもよい。
【0029】
ここで、上記共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)との混合比(MOX/CPEL)については、使用する共役系有機EL高分子(CPEL)及び有機金属錯体(MOX)の種類によっても異なるが、通常0.05以上20以下、好ましくは0.1以上10以下の範囲内であるのがよい。この混合比(MOX/CPEL)が0.05より低いと添加の効果が見られないという問題があり、反対に、20より大きくなると薄膜が熱的に不安定になるという問題が生じる。
【0030】
〔第三成分について〕
本発明の共役系有機EL高分子(CPEL)及び有機金属錯体(MOX)〔高分子金属錯体(HM-C)及び/又は低分子金属錯体(LM-C)〕を含む有機EL素子製造用材料については、必要により、低分子の色素や低分子の正電荷輸送性化合物を添加してもよい。この目的で添加される色素としては、例えば、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等を例示することができ、また、正電荷輸送性化合物としては、例えば、1,1-ビス[4-[N,N'-ジ-(p-トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサンやN,N'-ジフェニル-N,N'-ジ-(m-トリル)ベンジジン等を例示することができる。
【0031】
〔製膜方法について〕
本発明の有機EL素子製造用材料を用いて基板上に発光層を製膜し、有機EL素子を製造する方法としては、目的に応じて従来公知の方法を採用することができ、例えば、スピンコート法、キャスティング法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ワイアーバーコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。
【0032】
また、本発明の有機EL素子製造用材料を用いて基板上に発光層を製膜し、有機EL素子を製造するに際し、基板上に予めホール注入層を形成し、このホール注入層の上に本発明の有機EL素子製造用材料を用いて発光層を形成してもよく、これによって発光効率や低電圧駆動性をより一層向上せしめることもできる。この目的で用いられるホール注入層形成物質としては、特に制限はなく、従来公知の有機ホール注入層又は無機ホール注入層を形成し得る種々のホール注入層形成物質を用いることができるが、好適なものとして、例えば、酸化鉄やp-トルエンスルホン酸鉄等の酸化剤がドープされたポリチオフェン類、ポリアニリン類及びポリピロール類等やこれらの混合物等を挙げることができ、更には、これらに対して対イオンを供給するポリスチレンスルホン酸等の対イオン供給物質との混合物等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の有機EL素子製造用材料は、溶剤中に共役系有機EL高分子と高分子金属錯体及び/又は低分子金属錯体からなる有機金属錯体とを所定の割合で溶解して得られたものであり、湿式製膜可能であって、しかも、優れた発光効率や低電圧駆動性を示すものである。
また、本発明によれば、このような有機EL素子製造用材料を用いて、安価にかつ容易に有機EL素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
合成例1:高分子金属錯体(polyQ-Al-K2)の合成
〔高分子配位子(polyQ)の合成〕
反応容器中に7-(4-エチル-1-メチルオクチル)-8-ヒドロキシキノリン(Q)45.0g(0.15mol)、濃塩酸75mL、及び28wt%-ホルマリン25mL(0.23mol)を仕込み、得られた混合液中に65〜75℃で17時間乾燥塩化水素ガスを導入した。得られた反応物は水層と暗黄土色固体の混合物であった。
【0035】
反応終了後、予め安定剤を除去したクロロホルム100mLで4回抽出し、得られた抽出液を4Lのエーテルにより再沈殿せしめ、無定形黄色固体の生成物23gを得た。この生成物は、1H-NMR及び13C-NMRの結果から、5位がクロロメチル化された生成物(Q-CH2Cl・HCl)(収率57%)であることが確認された。
【0036】
次に、反応容器中に上記のクロルメチル化生成物(Q-CH2Cl・HCl)10.0g(0.026mol)と過剰の2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HMA)25mL(0.21mol)とを仕込み、アルゴン雰囲気下に60〜65℃で約60時間反応させた。
【0037】
反応終了後、攪拌下に水400mLを加え、次いで5wt%-アンモニア水を加えてpH10前後に調整して静置し、水層をデカンテーションで除去して残った白色粘性個体をクロロホルムで抽出し、シリカゲルクロマトグラフィ(ベンゼン−シクロヘキサン)で淡緑色粘性液体の生成物6.2g(収率54%)を単離した。得られた生成物は、1H-NMR及び13C-NMRの結果から、2-エトキシメタクリレート基が導入された生成物(Q-CH2-HMA)であることが確認された。
【0038】
このようにして調製した生成物(Q2-CH2-HMA)6.2g(14mmol)とAIBN155mg(1mmol)とをベンゼン35mLに溶解し、アルゴン雰囲気下にアンプル中に仕込んで封管し、65〜75℃で10時間加熱して反応させた。
【0039】
反応終了後、開封した後にベンゼン100mLを加えて希釈し、よく攪拌しながらメタノール1L中に滴下し、生成物を再沈殿させた。デカンテーションでメタノールを除去し、沈殿物をベンゼンで抽出し、抽出液の溶媒を留去して60℃で12時間真空乾燥し、樹脂状淡緑色固体の重合物(高分子配位子;polyQ)2.9g(収率47%)を得た。
【0040】
〔高分子金属錯体(polyQ-Al-K2)の合成〕
反応容器中に上で得られた高分子配位子(polyQ)1.12g(2.5mmol)と、7-(4-エチル-1-メチルオクチル)-8-ヒドロキシキノリンからなる低分子配位子(K)4.48g(15.1mmol)と、乾燥したTHF20mLとを仕込んで全体を溶解し、アルゴン雰囲気下にドライアイス−アセトン冷浴中で冷却し、攪拌下にトリメチルアルミニウム(AlMe3)のヘキサン溶液(濃度1.00mol/L)8.4mL(8.4mmol)を少量づつ添加し、添加終了後30分間攪拌を続けて反応させた。この間、反応液は次第に黄色に着色した。
【0041】
この反応終了後、冷浴を外して室温に戻し、そのまま室温下に3日間反応を継続したが、微量の固体が析出したのみで外見上は反応系に変化は見られなかった。その後、少量のメタノールを加えて反応を停止せしめ、性状が黄色均一溶液である反応混合物を得た。
【0042】
得られた反応混合物は、アルミニウムイオン(Al3+)に1当量の高分子配位子(polyQ)と2当量の低分子配位子(K)とが配位した高分子金属錯体(HM-C:polyQ-Al-K2)2.11g(1.98mmol)とアルミニウムイオン(Al3+)に3当量の低分子配位子(K)が配位した低分子金属錯体(LM-C:Al-K3)1.56g(1.70mmol)とが溶媒(THF:20mL+C6H14:6mL+MeOH:0.1mL)中に溶解した混合物〔モル比(HM-C/LM-C):1.16〕であった。
【0043】
上で得られた混合物をメタノール500mL中に滴下して混合し、この混合物中の低分子金属錯体(LM-C)を溶媒中に溶解させると共に、高分子金属錯体(HM-C)を沈殿せしめ、ろ過して黄色固体2.87gを回収し、更に再沈澱により精製して、黄色固体状の高分子金属錯体(polyQ-Al-K2)2.11g(収率79%)を得た。この高分子金属錯体(polyQ-Al-K2)は、下記の構造式(4)を有し、メタノール、エタノール、ヘキサン等の溶剤に難溶であって、THF、ベンゼン、クロロホルム等の溶剤に良好な溶解性を示した。
【0044】
【化2】

【0045】
合成例2:低分子金属錯体(Al-K3)の合成
反応容器中に7-イソプロピル-8-ヒドロキシキノリンからなる低分子配位子(K)1.01g(5.34mmol)と乾燥したTHF10mLとを仕込んで溶解し、アルゴン雰囲気下にドライアイス−アセトン冷浴中で冷却し、攪拌下にトリメチルアルミニウム(AlMe3)のヘキサン溶液(濃度1.00mol/L)1.78mL(1.78mmol)を少量づつ添加し、添加終了後30分間攪拌を続けて反応させた。この間、反応液は次第に黄色に着色した。
【0046】
この反応終了後、冷浴を外して室温に戻し、そのまま室温下に3時間反応を継続したところ,黄色沈殿が生じて系が不均一になった。これを減圧下で濾過した後、濾物を真空乾燥して黄色粉末状の反応生成物0.53gを得た。プロトンNMRよりこの反応生成物はほぼ純粋な低分子金属錯体Al-K3であることが分かった。
【0047】
上記の濾液より溶媒を留去したところ、黄色の粘性の高い油状物が得られた。これをクロロホルムに溶かして微量の不溶物をろ別した後に再度溶媒を留去すると黄色粉末が0.50g得られ、プロトンNMRによる分析の結果、ほぼ純粋な低分子金属錯体Al-K3であり、上記と合わせた収量は1.03gで収率は98%であった。この低分子金属錯体(Al-K3)は、下記の構造式(5)を有し、THF、ベンゼン、クロロホルム等の溶剤に良好な溶解性を示した。
【0048】
【化3】

【0049】
〔実施例1〜4及び比較例1〜2〕
共役系有機EL高分子(CPEL)として下記の構造式(6)を有するポリ[2-メトキシ-5-(2'-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン]を用い、また、有機金属錯体(MOX)として上で合成した合成例1の高分子金属錯体(polyQ-Al-K2)と合成例2の低分子金属錯体(Al-K3)を用い、これら共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)とを表1に示す割合(CPEL:MOX)でクロロホルムに溶解し、濃度5〜8mg/mLの混合溶液(実施例1〜4及び比較例1〜2の有機EL素子製造用材料)を調製した。
【0050】
【化4】

【0051】
ITO電極(150nm)を予め蒸着したガラス基板上に、500回転で10秒、次に2000回転で40〜60秒の条件で、上記実施例1〜4及び比較例1〜2の材料溶液をスピンコートし、次いで窒素雰囲気下常温で1時間風乾した後、更に10-4Paの減圧下常温で1時間乾燥して溶媒を除去し、製膜した。得られた発光層の膜厚は100nm前後であった。
【0052】
次に、得られた発光層の上にフッ化リチウムを0.5nmの厚さに、次いでアルミニウムを150nmの厚さにそれぞれ蒸着し、全体をガラスで覆ってエポキシ樹脂で封止し、有機EL素子を調製し、その電界発光挙動(発光効率と駆動電圧)を測定した。
結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
また、上記実施例1及び2並びに比較例1の材料溶液を用いて得られた有機EL素子の電界発光スペクトルを調べた。
結果を図1に示す。
【0055】
〔実施例5〜7及び比較例3〕
共役系有機EL高分子(CPEL)として上記構造式(6)のポリ[2-メトキシ-5-(2'-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン]を用い、また、有機金属錯体(MOX)として上で合成した合成例2の低分子金属錯体(Al-K3)を用い、これら共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)とを表2に示す割合(CPEL:MOX)でクロロホルムに溶解し、濃度5〜8mg/mLの混合溶液(実施例5〜7及び比較例3の有機EL素子製造用材料)を調製した。
【0056】
ITO電極(150nm)を予め蒸着したガラス基板上に、500回転で10秒、次に4000回転で40秒の条件で、下記の構造式(7)を有するPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシ)チオフェン)-PSS(ポリスチレンスルホン酸)混合物(PEDOT:PSS=1:20)の1wt%水溶液をスピンコートし、これを窒素雰囲気下に130℃で1時間加熱し、ホール注入層として厚さ30nmのPEDOT-PSS薄膜を形成した。
【0057】
【化5】

【0058】
次に、ガラス基板上にホール注入層として形成したPEDOT-PSS薄膜の上に、2000回転で40〜60秒の条件で、上記実施例5〜7及び比較例3の材料溶液をスピンコートし、次いで窒素雰囲気下常温で1時間風乾した後、更に10-4Paの減圧下常温で1時間乾燥して溶媒を除去し、製膜した。得られた発光層の膜厚は100nm前後であった。
【0059】
更に、得られた発光層の上にフッ化リチウムを0.5nmの厚さに、次いでアルミニウムを150nmの厚さにそれぞれ蒸着し、全体をガラスで覆ってエポキシ樹脂で封止し、有機EL素子を調製し、その電界発光挙動(発光効率と駆動電圧)を測定した。
結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の有機EL素子製造用材料は、湿式製膜が可能であって発光効率や低電圧駆動性に優れており、有機EL素子の作製プロセスが簡便であって大面積化への対応が容易であり、安価にかつ容易に有機EL素子を製造することができるため、工業的価値が極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、実施例1及び2並びに比較例1の材料溶液を用いて得られた有機EL素子の電界発光スペクトルを示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤中に共役系有機EL高分子(CPEL)と高分子金属錯体(HM-C)及び/又は低分子金属錯体(LM-C)からなる有機金属錯体(MOX)とを所定の割合で溶解して得られた湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料であり、
上記高分子金属錯体(HM-C)が、繰返し単位(Y)を有する高分子重合体の側鎖に必要によりスペーサ基(X)を介して8-ヒドロキシキノリン誘導体(Q)が導入された高分子配位子(polyQ)と、8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)からなる低分子配位子(K)と、2〜4価の金属イオン(Mn+)とを反応させて得られた下記一般式(1)
polyQ・M・Kn-1 (1)
で表される高分子の有機金属錯体であって、
上記低分子金属錯体(LM-C)が、8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)からなる低分子配位子(K)のみが2〜4価の金属イオン(Mn+)に配位した下記一般式(3)
M・Kn (3)
で表される低分子の有機金属錯体であり、
上記8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)が、下記一般式(2)
【化1】


(但し、式中、R1〜R6は、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20であって直鎖状、枝分れ状、環状又はこれらの組合せからなる飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数2〜20のアルキルオキシアルキル基、炭素数2〜20のアルキルチオアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基、アロイル基、炭素数2〜20のモノアルキルアミノアルキル基、炭素数3〜20のジアルキルアミノアルキル基、官能基が置換又は非置換のフェニルアゾ基、、官能基が置換又は非置換のアニリノアルキル基、及び、−SO3Naから選ばれた置換基であって、置換基R1、R3、R4及びR6のうち少なくとも1つは水素、ハロゲン基及び−SO3Na以外の置換基である。)で表される8-ヒドロキシキノリン誘導体であることを特徴とする湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料。
【請求項2】
一般式(2)で表される8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)は、その置換基R1、R4及びR6のうち少なくとも1つの置換基が炭素数1〜20であって直鎖状、枝分れ状、環状又はこれらの組合せからなる飽和又は不飽和の炭化水素基、炭素数2〜20のアルキルオキシアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基、炭素数2〜20のジアルキルアミノアルキル基、官能基が置換又は非置換のフェニルアゾ基、及び、官能基が置換又は非置換のアニリノアルキル基から選ばれた置換基である請求項1に記載の湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料。
【請求項3】
8-ヒドロキシキノリン誘導体(K)が、7-(4-エチル-1-メチルオクチル)-8-ヒドロキシキノリン又は7-イソプロピル-8-ヒドロキシキノリンである請求項1に記載の湿式製膜可能な有機EL素子用材料。
【請求項4】
2〜4価の金属イオン(Mn+)が、Al3+、Ga3+、又はBe2+である請求項1〜3のいずれかに記載の湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料。
【請求項5】
共役系有機EL高分子が、ポリ(p-フェニレンビニレン)類、ポリチオフェン類、ポリ(p-フェニレン)類、ポリアニリン類、又はポリチエニレンビニレン類である請求項1〜4のいずれかに記載の湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料。
【請求項6】
共役系有機EL高分子が、ポリ(p-フェニレンビニレン)類である請求項5に記載の湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料。
【請求項7】
共役系有機EL高分子(CPEL)と有機金属錯体(MOX)との混合比(MOX/CPEL)が、0.05〜20の範囲内である請求項1〜6のいずれかに記載の湿式製膜可能な有機EL素子製造用材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製膜可能な有機EL素子製造用材料を用いて基板上に発光層を製膜してなる有機EL素子。
【請求項9】
発光層が、ホール注入層を介して基板上に製膜されている請求項8に記載の有機EL素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−63489(P2007−63489A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254268(P2005−254268)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年9月7日から11日 社団法人応用物理学会主催の「2005年(平成17年)秋季 第66回 応用物理学会学術講演会」において文書をもって発表
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】