湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法
【課題】本発明の目的は、集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器を提供することにある。
【解決手段】本発明の湿式電気集塵器100は、筐体1の内部で洗浄水を噴霧するノズル5を有し該洗浄水を前記筐体に供給する洗浄水の供給配管22と、この洗浄水の供給配管22に設置された第1のバルブ15と、放電極2に面した集塵極3の表面に形成される洗浄水の水膜7の電気伝導度を検出するセンサ6と、このセンサ6で検出した水膜の電気伝導度を測定する測定装置19と、前記測定装置19で測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第1のバルブ15を開閉操作する指令信号を出力して洗浄水を筐体1の内部に噴霧させる制御装置20を備えて構成した。
【解決手段】本発明の湿式電気集塵器100は、筐体1の内部で洗浄水を噴霧するノズル5を有し該洗浄水を前記筐体に供給する洗浄水の供給配管22と、この洗浄水の供給配管22に設置された第1のバルブ15と、放電極2に面した集塵極3の表面に形成される洗浄水の水膜7の電気伝導度を検出するセンサ6と、このセンサ6で検出した水膜の電気伝導度を測定する測定装置19と、前記測定装置19で測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第1のバルブ15を開閉操作する指令信号を出力して洗浄水を筐体1の内部に噴霧させる制御装置20を備えて構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法に関し、集塵極表面の水膜の電気伝導度を測定値に基づいて洗浄水の噴霧を制御する湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿式電気集塵器は火力発電プラントに備えられたボイラから排出される排ガスを浄化する装置として使用されている。この湿式電気集塵器の機構は、排ガスを放電極から集塵極へ直流高電圧を印加した状態で連続的に通すように構成されている。
【0003】
この時、湿式電気集塵器の放電極から集塵極にはコロナ放電が発生しており、排ガス中に含まれているSO3やミストは負に帯電し、クーロン力により集塵極へ強制的に付着させることができる。
【0004】
湿式電気集塵器はその後、集塵極表面の付着したSO3やミストを水で洗浄し、その排水を処理することで排ガスを浄化するように構成している。
【0005】
湿式電気集塵器に流入する排ガスにはSO3が多く含まれ、水と反応して直ちに硫酸が生成される。
【0006】
そのため、湿式電気集塵器内の水のpHは低く、湿式電気集塵器の集塵極に金属材料を適用するに際しては高耐食材料のステンレス鋼やニッケル基合金が使用されている。
【0007】
また、湿式電気集塵器の集塵極に金属材料を適用しない場合は、金属材料へのコーティングの適用、樹脂材料の使用等の対応があるが、メンテナンスの問題やスパークによって樹脂材料に火災が発生する可能性がある。
【0008】
さらに、湿式電気集塵器の集塵極の表面に付着したSO3やミストを水で洗浄する洗浄水の噴霧には、連続して洗浄水を吹きかける方法と、一定間隔毎に洗浄水を噴霧する方法に別けることができる。
【0009】
洗浄水を集塵極に連続で噴霧する方法は硫酸等の濃縮を抑制して集塵極を構成する金属材料の腐食を回避できるが、洗浄水の使用量や排水処理費用も多くなり、また洗浄水を連続して供給させるポンプの駆動費用も増加する。
【0010】
それに対して、一定間隔毎に洗浄水を集塵極に噴霧する方法は、洗浄水の噴霧を停止した時に集塵極表面の水膜で硫酸等が濃縮するので、集塵極の金属材料が腐食し易く高耐食性材料の適用が避けられないが、洗浄水の使用量、排水処理費用、ポンプの駆動費も少なくて済み経済的である。
【0011】
また、火力発電プラントが運転停止中は湿式電気集塵器は外気と接触しているため、湿式電気集塵器の内部は乾燥しやすい。湿式電気集塵器の内部に不揮発性の硫酸が付着したまま火力発電プラントの運転が停止すると水分が蒸発して硫酸濃度が上昇し、集塵極を構成する金属材料の耐えうるpHよりも低下すると金属材料は腐食することになる。
【0012】
この対策としては、火力発電プラントの運転が停止する前に洗浄水による集塵極の十分な洗浄を行うことによって集塵極を構成する金属材料の腐食はある程度防ぐことは可能となるが、単純に洗浄水を噴霧する洗浄だけでは硫酸を完全に除去できないため、火力発電プラントの運転停止中に集塵極を構成する金属材料の腐食を完全に防ぐことは不可能である。
【0013】
ところで、特開平8−108094号公報に記載された湿式電気集塵器の技術では、電極間の漏れ電流と排ガスの湿度及び温度から算出する電極に付着した粉塵の厚みに基づいて洗浄水による洗浄時期を算定して湿式電気集塵器の集塵極を洗浄する技術が開示されている。
【0014】
また、特開平8−222353号公報に記載された電気集塵器の技術では、放電用電極間の静電容量を測定して放電用電極の劣化度合い、若しくは運転状況を判定する技術が開示されている。
【0015】
【特許文献1】特開平8−108094号公報
【特許文献2】特開平8−222353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特開平8−108094号公報に記載された湿式電気集塵器の技術では、電極に付着した粉塵の厚みを算出するために測定すべき検出対象が多いために電極の洗浄を行う洗浄システムが非常に複雑な構成となり、湿式電気集塵器の設備が大型化して設備コストを要するという問題がある。
【0017】
また、特開平8−222353号公報に記載された電気集塵器の技術では、放電用電極の劣化度合いを判定することは可能であるが、しかしながら集塵極の劣化状況を測定することが出来ない。
【0018】
本発明の目的は、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の湿式電気集塵器は、排ガスを流下させる筐体と、この筐体の内部に設置された放電極及び集塵極と、これらの放電極及び集塵極に直流電圧を印加する電源とを備え、火力発電プラントから排出される排ガスを浄化する湿式電気集塵器において、前記湿式電気集塵器は、この筐体の内部で洗浄水を噴霧するノズルを有しており該洗浄水を前記筐体に供給する洗浄水の供給配管と、この洗浄水の供給配管に設置された第1のバルブと、放電極に面した前記集塵極の表面に形成される洗浄水の水膜の電気伝導度を検出するセンサと、このセンサで検出した水膜の電気伝導度を測定する測定装置と、前記測定装置で測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第1のバルブを開閉操作する指令信号を出力して洗浄水を筐体の内部に噴霧させる制御装置とを備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明の湿式電気集塵器の運転方法は、排ガスを流下させる筐体と、この筐体の内部に設置された放電極及び集塵極と、これらの放電極及び集塵極に直流電圧を印加する電源とを備え、火力発電プラントから排出される排ガスを浄化する湿式電気集塵器の運転方法において、放電極に面した前記集塵極の表面に形成される洗浄水の水膜の電気伝導度をセンサによって測定し、この測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記筐体に洗浄水を供給する配管に設置した第1のバルブの開閉を操作して前記筐体の内部に洗浄水を噴霧させるように制御することにより、前記水膜のpHを所望の値に調節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施例である湿式電気集塵器について図面を引用して以下に説明する。
【実施例1】
【0023】
次に本発明の第1実施例である湿式電気集塵器について図5を用いて説明する。
【0024】
図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100は、該湿式電気集塵器100の容器を構成して排ガスを流下させる筐体1と、この筐体1の内部に配設された複数の放電極2と、これらの放電極2に面して該筐体1の中央部に配設された集塵極3と、前記筐体1の外側に配設されて前記放電極2をマイナスに、前記集塵極3をプラスになるように直流電圧を数10kV印加する電源4とを備えている。
【0025】
また、これらの放電極2に面した筐体1の内壁は、前記集塵極3と電気的に繋がっておりアースにも接続されていることから、前記集塵極3と同じ機能を有している。
【0026】
そして放電極2と集塵極3とに直流電圧を印加して前記放電極2と集塵極3との間に発生させたコロナ放電作用によって、火力発電プラント50のボイラ(図示せず)から排出され、この筐体1に取り付けられた配管39を通じて該筐体1の内部に導かれた排ガス9に含まれたSO3や微粒子を集塵極3(集塵極3と同じ機能を有する筐体1の内壁も含む)に付着させる。
【0027】
このSO3や微粒子を集塵極3に付着させて除去し浄化された排ガス10は前記筐体1から煙突(図示せず)を通じて大気に排出される。
【0028】
湿式電気集塵器100の筐体1には、外部から筐体1を貫通して洗浄水6を筐体1の内部に供給するバルブ15を備えた配管22が配設されており、筐体1の内部に配設された配管22にはバルブ15を開操作して供給された洗浄水6を噴霧する複数のノズル5が設置されている。
【0029】
そして前記したコロナ放電作用によって放電極に面した集塵極3に付着した排ガス9中のSO3は、ノズル5から噴霧した洗浄水6と反応して直ちに硫酸を生成し、排ガス9中の微粒子とともに集塵極3の外面(放電極に面した筐体1の内壁面も集塵極3として以後説明してある)に付着して水膜7を形成する。
【0030】
集塵極3の外面に形成された水膜7は筐体1の下方へ流れて前記筐体1の底部に廃液8として集められる。
【0031】
筐体1の底部には廃液8を外部に排出する配管12と、この配管12に設置されたバルブ11が配設されており、前記筐体1の底部に溜まった廃液8は後述する制御装置20からの指令信号によってバルブ11を開弁操作することで、この廃液8は配管12を通じて外部の廃水処理装置(図示せず)に排出して処理する。
【0032】
前記筐体1の胴部を構成する内壁面には集塵曲である筐体1の内壁面に形成される水膜7の電気伝導度を計測するセンサ16が設置されている。
【0033】
電気伝導度の測定に際しては、集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度を測定するために放電極に面した筐体1の胴部壁の位置に電気伝導度を計測するセンサ16を設置する構造とする。
【0034】
尚、筐体1の胴部壁に取り付ける電気伝導度を計測するセンサ16は、メンテナンスを考慮してこの電気伝導度を計測するセンサ16が筐体1の胴部壁の外部から容易に取り外し可能な構造とする。
【0035】
即ち、電気伝導度を計測する前記センサ16は、固定手段であるボルト21aとナット21bによって筐体1の胴部壁にセンサ16が着脱自在に取り付けられる構造を採用することによって、必要に応じてセンサ16を筐体1の胴部壁から取り外してメンテナンスすることが容易となる。
【0036】
そして筐体1の胴部壁に取り付けられたセンサ16は、その先端に形成された複数のセンサ先端部17が筐体1の内壁面(集塵極3)に面するように配置されており、この集塵極3の表面に形成される水膜7と前記センサ先端部17とが接するように構成して、この集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度を前記センサ先端部17で計測する。
【0037】
そして火力発電プラントの運転時には、センサ16のセンサ先端部17に接している前記集塵極3に形成された水膜7の電気伝導度をこのセンサ16によって測定する。
【0038】
また、湿式電気集塵器100には、センサ先端部17で水膜7の電気伝導度を検出するセンサ16と、このセンサ16で検出した水膜7の電気伝導度を測定する測定装置19との間に保安器18が接続されており、この保安器18を経由してセンサ16から伝達された水膜7の電気伝導度が前記測定装置19で測定されて制御装置20に入力される。
【0039】
そして前記制御装置20では、測定装置19から入力した電気伝導度の測定値とその設定値との比較に基づいて配管22のバルブ15の開閉を制御する指令信号を出力するように構成されている。
【0040】
運転中の湿式電気集塵器100では、筐体1の内部に設置した放電極2から集塵極3にスパーク現象が起こるため、電気伝導度を測定するセンサ16と測定装置19との中間には異常な過電圧が入力した場合にこの過電圧を外部に逃がす保安器18を設置して、電気伝導度のセンサ16と測定装置19との間に過電圧が入らない機能を持たせている。
【0041】
本実施例の保安器18は、図11に示すようにセンサ16と測定装置19との間に設置されているので、通常時はアース回路33にアース電流は流れるが、センサ16にスパークのような異常な電流が流れた時には発生した過電流を保安器18からアース回路34に流れるように構成されているので、測定装置19の破損が防止され、センサ16で検知する水膜7の電気伝導度の測定を安定して測定することが可能となる。
【0042】
電気伝導度の測定は、センサ16と測定装置19との間に保安器18を設置してセンサ16のセンサ先端部17で検出した水膜7の電気伝導度を測定装置19に送ることによって測定され、この電気伝導度の測定信号を前記測定装置19から制御装置20に入力させる。
【0043】
本実施例の湿式電気集塵器100に設置されている制御装置20は、図12にこの制御装置20の詳細な構成を示したように、制御装置20に演算装置20aと設定装置20bとを備えた構成であり、センサ16によって検出され測定装置19を経由して制御装置20に送られてくる水膜7の電気伝導度の測定信号は、前記制御装置20に備えられた演算装置20aに入力する。
【0044】
また前記制御装置20に備えられた前記設定装置20bには、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3や放電極2、或いは筐体1の壁面に使用する金属材料について腐食を抑制することができる電気伝導度の値を電気伝導度の基準値としている。
【0045】
ここで、金属材料の腐食に関係する水の電気伝導度について説明すると、図1に25℃における硫酸のpHと電気伝導度との関係を特性カーブとして示したように、例えば高耐食ステンレス鋼については水のpHが腐食が問題になるpH1以下になると水の電気伝導度は急激に増加する。これは、水素イオンの電導度が他のイオンに比較して非常に大きいという性質を有しているからである。
【0046】
この理由は水溶液中では水素イオン自体は動くこと無しに水素結合とO−Hの共有結合の交代、即ち電子の移動のみによって達成できるためである。したがって、pH1以下においては電気伝導度を指標として水の大まかなpHを推定することができることになる。
【0047】
この原理を利用することで、火力発電プラント50から排出されて湿式電気集塵器100の筐体1の内部に流入する排ガスに含まれたSO3が水膜7に溶け込んで硫酸となる水のpHの状況について、この湿式電気集塵器100の筐体1の内部の放電極2に面して配設された集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度をpHに置き換えてセンサ16のセンサ先端部17を水膜7と接触させて測定することができる。
【0048】
そして、このセンサ16で検出した水膜7の電気伝導度の測定値が予め設定した基準値を超えた場合に、制御装置20から指令信号を出力して配管22のノズル5から筐体1の内部に洗浄水6を噴霧し、前記筐体1の内部に設置した集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁を洗浄してこれらを形成する金属材料の腐食が抑制される電気伝導度の値となるように制御するものである。
【0049】
図2に湿式電気集塵器100の筐体1の内部の湿度と水膜の電気伝導度との関係を実線で示したように、湿式電気集塵器100の筐体1の内部が乾燥して湿度が低下すると水膜の電気伝導度は低下し、水膜のpHの値も低下して低くなり、そして筐体1の内部が完全に乾燥状態になると水膜の電気伝導度は殆ど零になる。
【0050】
したがって、集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度を火力発電プラント50の運転が停止中にも測定し、電気伝導度が一定値以下に低下したら洗浄水6をノズル5から筐体1の内部に噴霧させる。
【0051】
よって上記したように洗浄水6を筐体1の内部に噴霧することにより、図2に実線で示したように筐体1の内部の湿度が増加して水膜のpHの値も上昇することになる。
【0052】
この結果、湿式電気集塵器100の運転が停止中における水膜7の乾燥によるpHの値の低下が防止され、火力発電プラント50の運転停止中における湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属の腐食を抑制することが可能になる。
【0053】
水膜7の電気伝導度の測定に際しては、放電極2に面した集塵極3(筐体1の内壁)の表面に形成した水膜7の電気伝導度を測定するために、電気集塵器100の筐体1の胴部壁に電気伝導度を検出するセンサ16を取り付ける。
【0054】
筐体1の胴部壁に取り付ける前記センサ16は、センサ16をメンテナンスすることを考慮してこのセンサ16を筐体1の外部側から容易に取り外し可能なように後述する着脱自在の構造として筐体1の胴部に取り付けておく。
【0055】
また、湿式電気集塵器100の運転中は、放電極2から集塵極3にスパーク現象が起こるため、電気伝導度を検出する前記センサ16と測定装置19との中間に、異常な過電圧が入力した場合にこの過電圧を外部に逃がす保安器18を設置するようにして、電気伝導度のセンサ16と測定装置19との間に過電圧が入らない機能を持たせることが必要である。
【0056】
また、火力発電プラントの運転が停止中は、水膜7の電気伝導度をセンサ16によって測定し、その電気伝導度の測定値が前記したように予め定めた電気伝導度の基準値を超えた場合には制御装置20から出力される指令信号によって配管22のノズル5から筐体1の内部に洗浄水6を噴霧して前記筐体1の内部に設置した集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁を洗浄して水膜7のpHを金属材料の腐食が抑制される低い値となるように制御する。
【0057】
次に前記した制御装置20について更に詳細に説明すると、図12に前記制御装置20の詳細構成を示したように、この制御装置20に設けた演算装置20aによってセンサ16から測定装置19に送られた水膜7の電気伝導度の測定信号の値と、制御装置20に設けた設定装置20bが予め設定している電気伝導度の所定の基準値とを比較して、電気伝導度の測定値が前記電気伝導度の所定の基準値を超えた場合に、この制御装置20の演算装置20aから配管22に設けたバルブ15に対して一定の時間だけ開弁する指令信号を出力し、前記配管22を通じて洗浄水6を供給して該配管22に設けたノズル5から筐体1の内部に噴霧する。
【0058】
そして筐体1の内部に洗浄水6を噴霧することによって、前記筐体1の内部に設置した集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁は洗浄されるので、集塵極3の表面に形成された水膜7のpHは金属材料の腐食が抑制される低い値にまで低減される。
【0059】
また、火力発電プラント50の運転状態の信号は、前記制御装置20の演算装置20aに入力されている。
【0060】
ここで前記制御装置20に設けた前記設定装置20bに予め設定されている電気伝導度の基準値とは、筐体1の内部に設置された集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料について腐食を抑制することができる電気伝導度の値であって、使用する金属材料に応じて前記基準値の設定値を相違させて設定している。
【0061】
即ち、使用する前記金属材料がスーパーステンレス鋼の場合は、集塵極3の表面に形成された水膜7のpHが約0.5以上の値に保持できるようにするため、図1に示したpHと水の電気伝導度の特性カーブでpH0.5に対応する電気伝導度が約800(ms/m)以下となるように、前記設定装置20bで電気伝導度の基準値を設定する。
【0062】
また、使用する前記金属材料が二層テンレス鋼の場合は、集塵極3の表面に形成された水膜7のpHが約1以上の値に保持できるようにするため、図1に示したpHと水の電気伝導度の特性カーブでpH1に対応する電気伝導度が約300(ms/m)以下となるように、前記設定装置20bで電気伝導度の基準値を設定する。
【0063】
同様に、使用する前記金属材料がオーステナイトステンレス鋼の場合は、集塵極3の表面に形成された水膜7のpHが約2以上の値に保持できるようにするため、図1に示したpHと水の電気伝導度の特性カーブでpH2に対応する電気伝導度が約100(ms/m)以下となるように、前記設定装置20bで電気伝導度の基準値を設定する。
【0064】
そしてセンサ16から測定装置19を経由して入力した水膜7の電気伝導度の測定信号と前記電気伝導度の基準値との比較に基づいて、前記制御装置20の演算装置20aから出力した指令信号によって配管22に設けたバルブ15を一定時間だけ開弁し、配管22に設けたノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に噴霧する。
【0065】
そして筐体1の内部の集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁面を噴霧した洗浄水6で洗浄した結果、集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁面に形成される水膜7の電気伝導度は前記の金属材料の腐食が抑制できる基準値よりも低くなり、水膜7のpHの値を上昇させることができるので、集塵極3や放電極2、及び筐体1に使用されている金属材料の腐食を抑制することが可能となる。
【0066】
更に詳細に説明すると、火力発電プラント50が運転中は、火力発電プラント50から排出された比較的温度が高い排ガス9が湿式電気集塵器100の筐体1の内部を流下するために、湿式集塵器100の筐体1の内部は水分が蒸発して乾燥し、湿度が低下することになる。
【0067】
筐体1の内部が乾燥して湿度が低下すると、集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度は図2に実線で示したように急激に低くなり、それに伴なって水膜7のpHも低下してしまうので、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁に使用されている金属材料の腐食は加速される状態となる。
【0068】
そこで本実施例の湿式電気集塵器100では、火力発電プラント50の運転中に湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置した集塵極3の表面に形成された水膜7の電気伝導度をセンサ16を介して測定装置19で測定し、この測定した前記電気伝導度の測定信号と、火力発電プラント50の運転状態(この場合、運転中の信号が入力)の信号と、前述した集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料に応じて設定装置20bで予め設定した電気伝導度の各基準値とを制御装置20に設けた演算装置20aによって比較演算する。
【0069】
そして測定装置19で測定されて前記制御装置20の演算装置20aに入力する水膜7の電気伝導度の測定値が、図3に示したように火力発電プラント50の運転時間の経過に従って排ガスに含まれたSO3が水に溶け込んで水の硫酸濃度が上がるので水膜7の電気伝導度が上昇し、又は前回の洗浄水6の噴霧によって回復した水膜7の電気伝導度が同様に再度上昇して設定装置20bで設定した前述した集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料毎に設定した電気伝導度の前記基準値に達した際に、前記演算装置20aでの演算に基づいて配管22に設けたバルブ15に対して一定の時間だけ開弁する指令信号を出力し、該配管22に設けたノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に噴霧させる制御操作を繰り返す。
【0070】
そして図3に洗浄水噴霧期間として示したように筐体1の内部でノズル5から洗浄水6を一定の時間だけ噴射することによって前記筐体1の内部に設置した集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁は洗浄水6で洗浄され、集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7のpHは金属材料の腐食が抑制される低い値に低減され、火力発電プラント50の運転中における湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁等に使用されている金属の腐食を抑制することができる。
【0071】
そして前述した湿式電気集塵器100の実施例で説明したように、測定装置19で検出した水膜7の電気伝導度の測定値が制御装置20の演算装置20aにて、設定装置20bで前述した金属材料毎に設定した前記基準値に達したと判断された際に、この演算装置20aから出力される指令信号によって配管22のバルブ15を開弁操作して洗浄水6をノズル5から筐体1の内部に噴霧して洗浄して集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度を低く値に保持し、それによって水膜7のpHを所望の値に制御することができる。
【0072】
つまり、制御装置20によって水膜7の電気伝導度の値が所定の前記基準値を超えないように制御することで、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3等に使用されている金属材料の腐食を抑制する運用が可能となる。
【0073】
また、火力発電プラント50が運転停止中は、湿式電気集塵器100は煙突と接続されている構造を採用しているため、火力発電プラント50の運転が停止中に湿式集塵器100の筐体1の内部は水分が蒸発して乾燥し、湿度が低下することになる。
【0074】
このように筐体1の内部の湿度が低下すると、図2に実線で示したように集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7の電気伝導度は急激に低くなり、それに伴なって水膜7のpHも低下してしまうので、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁等に使用されている金属材料の腐食は加速される状態となる。
【0075】
そこで本実施例の湿式電気集塵器100では、火力発電プラント50の運転が停止中においても、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置した集塵極3の表面に形成された水膜7の電気伝導度をセンサ16を介して測定装置19で測定し、制御装置20に設けた演算装置20aにて測定した電気伝導度の測定信号と前述した集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料に応じて設定装置20bで予め設定した電気伝導度の各基準値とを比較演算する。
【0076】
そして測定装置19で測定されて前記制御装置20の演算装置20aに入力する水膜7の電気伝導度の測定値が、図4に示したように火力発電プラント50の運転が停止した停止時間の経過に従って筐体1の内部が乾燥して水膜7の電気伝導度が上昇した後に急激に低下し、又は前回の洗浄水6の噴霧によって回復した水膜7の電気伝導度が筐体1の内部の乾燥によって再度急激に低下して、設定装置20bで設定した前述した集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料毎に設定した電気伝導度の前記基準値に達した際に、前記演算装置20aでの演算に基づいて配管22に設けたバルブ15に対して一定の時間だけ開弁する指令信号を出力し、該配管22に設けたノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に噴霧させる制御操作を繰り返す。
【0077】
そして図4に洗浄水噴霧期間として示したように洗浄水6を筐体1の内部でノズル5から一定の時間だけ噴射することによって、前記筐体1の内部に設置した集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁は洗浄水6で洗浄されるので、集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7のpHは金属材料の腐食が抑制され、集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7のpHは金属材料の腐食が抑制される低い値に低減され、火力発電プラント50の運転停止における湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁等に使用されている金属の腐食を抑制することができる。
【0078】
また、火力発電プラント50の運転状態は前記制御装置20の演算装置20aに入力されるように構成されているので、火力発電プラント50が運転停止した直後に、制御装置20の演算装置20aから配管12のバルブ11に対して一定時間だけ開弁操作する指令信号を出力して、筐体1の内部に噴霧された洗浄水6がこの筐体1の底部に溜まった廃液8を配管12を通じて湿式電気集塵器100の筐体1の外部に排出するように操作する。
【0079】
そして前記バルブ11及バルブ15を開弁する前記一定時間が経過した後は、制御装置20の演算装置20aから指令信号を出力し、配管12のバルブ11を閉弁操作して前記筐体1の底部に溜まった廃液8を配管12を通じて外部に排出する操作を停止し、その後さらに一定時間が経過した後に制御装置20の演算装置20aから別の指令信号を出力して配管22のバルブ15を閉弁操作して、ノズル5から噴霧された洗浄水6が溜まった廃液8を前記筐体1の底部に一定量溜めた状態にする。
【0080】
このように前記筐体1の底部に廃液8を一定量溜めることによって、溜まった廃液8は湿式電気集塵器100の筐体1の内部の水分の供給源としての役割を持つことができ、湿式電気集塵器100の筐体1の内部の乾燥を防ぐことが可能となる。
【0081】
そして前記筐体1の底部に廃液8を一定量溜めた後に、筐体1の内部の集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7の電気伝導度をセンサ16及び測定装置19によって測定し、この電気伝導度の測定信号を測定装置19から制御装置20に入力する。
【0082】
そして火力発電プラント50が運転停止中にセンサ16で検出され測定装置19によって測定された水膜7の電気伝導度が基準値よりも低下した場合には、湿式電気集塵器100の筐体1の内部が乾燥状態に入ったものと制御装置20の演算装置20aで判断することによって、前述したように制御装置20の演算装置20aから出力される指令信号に基づいてバルブ15を開弁操作して洗浄水6を配管22を通じて供給し、ノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に一定時間だけ噴霧して筐体1の内部に配設された集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁面を洗浄する。
【0083】
そしてノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に噴霧することにより、筐体1の内部に設置された集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁面を形成する金属材料の表面は再び濡れた状態となるので前記金属材料の表面の乾燥を防ぐことができ、火力発電プラントが運転停止中に集塵極3や筐体1の内壁面に形成される水膜7のpHが低下することによる前記金属材料の腐食を抑制することが可能となる。
【0084】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【実施例2】
【0085】
次に本発明の第2実施例である湿式電気集塵器について図6を用いて説明する。
【0086】
図6に示した本発明の第2実施例の湿式電気集塵器100は、図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100と基本的な構成は共通しているので、共通した構成及び操作方法の説明は省略し、両者が相違する構成及び操作方法についてのみ以下に説明する。
【0087】
図6に示した本発明の第2実施例の湿式電気集塵器100において、先に説明した第1実施例の湿式電気集塵器100と異なる構成は、筐体1の底部に溜まった洗浄水6の廃液8を筐体1の底部から排出するバルブ11の上流側の配管12から分岐して前記廃液8を洗浄水8として導く配管41と、この配管41に設置された洗浄水6を供給するポンプ13と、このポンプ13から供給された洗浄水6を前記配管22に導く配管42と、この配管42に設置されたバルブ14とが設置されていることである。
【0088】
そして本実施例の湿式電気集塵器100においては、火力発電プラント50の運転が停止した直後に、制御装置20から筐体1の内部の底部から廃液8を外部に排出するバルブ11及び洗浄水6を筐体1の内部に供給するバルブ15を一定時間開弁する指令信号をそれぞれ出力し、筐体1の内部を洗浄水6によって洗浄する。
【0089】
更に一定時間が経過した後に、制御装置20からの指令信号でバルブ11を閉弁し、さらに一定時間が経過した後にバルブ15を閉弁して筐体1の内部の底部に洗浄水6を廃液8として一定量溜めた状態にする。
【0090】
このようにすることによって、筐体1の内部の底部に溜められた廃液8は筐体1の内部に噴霧される洗浄水6の供給源としての役割を持つことができるので、火力発電プラント50の運転が停止中でも湿式電気集塵器100の内部の乾燥を防ぐことができる。
【0091】
次に筐体1の内部の底部に洗浄水6を一定量溜めた後に、センサ16で検出され測定装置19によって測定された筐体1の内部に設置した放電極2や筐体1の内壁に形成される水膜7の電気伝導度を測定し、この電気伝導度の測定信号を制御装置20に入力する。
【0092】
そして火力発電プラント50の運転が停止中は、制御装置20の演算装置20aでは測定装置19で測定した筐体1の内部に設置した集塵極3、又は筐体1の内部壁面の表面に形成された水膜7の電気伝導度の測定信号と設定装置20bで設定した電気伝導度の基準値とを比較し、筐体1の内部が乾燥して前記電気伝導度の測定信号がこの基準値よりも低下した場合に、前記筐体1の内部が乾燥状態に入ったと判断して前記演算装置20aから指令信号を出力してバルブ14及びバルブ15に開弁し、ポンプ13を稼動させて、筐体1の内部の底部に廃水8として一定量溜めた洗浄水6をノズル5から筐体1の内部に一定時間噴霧する。
【0093】
上記のように洗浄水6を再利用することによって火力発電プラント50の運転停止中に外部から供給される新たな洗浄水6の使用量を減らすことが可能となる。
【0094】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【実施例3】
【0095】
次に本発明の第3実施例である湿式電気集塵器について図7を用いて説明する。
【0096】
図7に示した本発明の第2実施例の湿式電気集塵器100は、図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100と基本的な構成は共通しているので、共通した構成及び操作方法の説明は省略し、両者が相違する構成及び操作方法についてのみ以下に説明する。
【0097】
図7に示した本発明の第3実施例の湿式電気集塵器100において、先に説明した第2実施例の湿式電気集塵器100と異なる構成は、筐体1の内部の底部に溜まった廃液8を中和するタンク23が設置されており、このタンク23で廃水8を中和させた水を洗浄水6として再利用するようにしたことにある。
【0098】
火力発電プラント50が運転時において制御装置20からの指令信号によってバルブ11は閉弁し、バルブ15は開弁されるので、配管22から供給された洗浄水6は筐体1の内部でノズル5から一定時間噴霧されて筐体1の内部を洗浄した洗浄水6は、筐体1の内部の底部から配管11及び配管43を通じてタンク23に供給されて貯蔵される。
【0099】
タンク23にはpHを検知するセンサ24とバルブ27を備えた配管28が設けられており、更に前記センサ25で検知した廃液8のpHを測定する測定装置25と、この測定装置25で測定した廃液8のpHの測定値に基づいて該配管28を通じて前記タンク23に供給する中和用のアルカリ液の供給を調節するバルブ27を制御する制御装置26が設置されている。
【0100】
また、タンク23の底部には廃液8を外部に排出する配管30が配設され、この配管30にはバルブ29が設けられている。また、バルブ11の上流側の配管29から分岐した配管41が配設されており、この配管41が前記ポンプ13に接続されている。
【0101】
タンク23内に貯蔵された廃水8のpHはこのセンサ24で検知され、測定装置25によって測定されたpHの測定信号は制御装置26に入力される。
【0102】
前記制御装置26ではこのpHの測定信号は予め設定されたpHの基準値と比較され、pHの測定信号がpHの基準値を下回った場合にこの制御装置26から指令信号を出力してバルブ27を開弁し、配管28を通じて中和用のアルカリ液をタンク23内に供給して前記タンク23内の廃水8を中和する処理を行う。
【0103】
そしてタンク23内の廃水8を中和した後に、制御装置26からの指令信号によってポンプ13を稼動すると共に、バルブ14及びバルブ15を開弁して、タンク23内で中和された廃水8を配管29、配管41、ポンプ23、配管42、バルブ14をそれぞれ経由して配管22に供給し、ノズル5から筐体1の内部に一定時間噴霧する。
【0104】
また、火力発電プラント50の運転が停止中は、タンク23内で中和した後の廃水8を筐体1の内部を洗浄する洗浄水6として使用する。
【0105】
この場合、制御装置20の演算装置20aでは測定装置19で測定した筐体1の内部に設置した集塵極3、又は筐体1の内部壁面の表面に形成された水膜7の電気伝導度の測定信号と設定装置20bで設定した電気伝導度の基準値とを比較して前記電気伝導度の測定信号がこの基準値よりも低下した場合に、前記筐体1の内部が乾燥状態に入ったと判断して、前記演算装置20aから指令信号を出力してバルブ14及びバルブ15に開弁し、ポンプ13を稼動させて、タンク23内で中和した後の廃水8を洗浄水6としてノズル5から筐体1の内部に一定時間噴霧する。
【0106】
このように制御することによって前記筐体1の内部に配設された集塵極3、放電極2、又は筐体1の内壁を形成する金属材料の表面は再び濡れた状態となり金属表面の乾燥が防止されるので、水膜7のpH低下による火力発電プラント50の運転停止中における前記筐体1の内部の集塵極3、放電極2、又は筐体1の内壁を形成する金属材料の腐食を抑制することができる。
【0107】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【実施例4】
【0108】
次に本発明の第4実施例である湿式電気集塵器について図8を用いて説明する。
【0109】
図8に示した本発明の第4実施例の湿式電気集塵器100は、図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100と基本的な構成は共通しているので、共通した構成及び操作方法の説明は省略し、両者が相違する構成及び操作方法についてのみ以下に説明する。
【0110】
図8に示した本発明の第4実施例の湿式電気集塵器100において、先に説明した第1実施例の湿式電気集塵器100と異なる構成は、水膜7の電気伝導度を検知するセンサ16の取り付け位置にある。
【0111】
運転中の湿式電気集塵器100は電源から放電極2を負極とし集塵極3を正極として電圧をかけているので、電子は放電極2から集塵極3にまれにスパークが起こる。
【0112】
そこで、センサ16と測定装置19の中間に異常な過電圧が入力された場合にこの加電圧を外部に逃がす安定器18がセンサ16と測定装置19との間に設置されている。
この安定器18の設置によって仮にスパークがセンサ16のセンサ先端部17に落ちたとしても支障をきたさないように構成されている。
【0113】
しかしながら、仮にスパークがセンサ16のセンサ先端部17に落ちた場合にはセンサ先端部17の金属が損傷する懸念があるため、センサ16のセンサ先端部17は放電極2から遠い方が影響を受けなくてすむように丁度、図8に示したように前記センサ16のセンサ先端部17が筐体1の胴部壁面に取り付けられる位置は、筐体1の内部に配設された放電極2の下端部よりも下方となる筐体1の胴部壁面の下部に着脱自在に設置されている。
【0114】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【実施例5】
【0115】
次に本発明の第5実施例である湿式電気集塵器について図9を用いて説明する。
【0116】
図9に示した本発明の第2実施例の湿式電気集塵器100は、図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100と基本的な構成は共通しているので、共通した構成及び操作方法の説明は省略し、両者が相違する構成及び操作方法についてのみ以下に説明する。
【0117】
図9に示した本発明の第5実施例の湿式電気集塵器100において、先に説明した第1実施例の湿式電気集塵器100と異なる構成は、水膜7の電気伝導度を検知するセンサ16の構造とこのセンサ16の取り付け構造にある。
【0118】
水膜7の電気伝導度を検知するセンサ16のセンサ先端部17は集塵極3の表面に形成される水膜7に接する必要がある。しかし、第1から第5実施例では集塵極3が筐体1と兼用な場合の取り付けを想定した形状である。
【0119】
この第5実施例の湿式電気集塵器100では、筐体1の内部に設置された集塵極3の内側に放電極2を配設した構造を採用していることから、集塵極3の内側にしか放電極2が存在しないので、硫酸濃度の高い水膜は放電極2がその内側に設置されている集塵極3の内側に形成される水膜7の電気伝導度を測定する必要がある。
【0120】
そこで、本実施例では、図9に示すようにセンサ16のセンサ先端部17が放電極2に面した集塵極3の内面側まで届くような長さに形成し、集塵極3には前記センサ16のセンサ先端部17が挿入できるように該センサ先端部17の外径に相当する穴を開けた構造としたものである。
【0121】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【0122】
図10は本発明の各実施例である湿式電気集塵器100を構成する水膜7の電気伝導度を検知するセンサ16の詳細構成を示すものである。センサ16を構成する材質は金属でも非金属でもかまわないが、センサ16に設けたセンサ先端部17の埋め込み部分は樹脂製で絶縁性を有している必要がある。
【0123】
さらにセンサ16のセンサ先端部17を構成する金属材料は高耐食性を有する必要があるため、白金を用いることが望ましい。
【0124】
また、前記センサ16の筐体1への取り付けは、図5に示したようにセンサ16が筐体1の外壁面に面した位置にボルト21b及びナット21aを装着する4個の取り付け穴31を形成することによって、このセンサ16を筐体1の胴部の壁面に対して取り付け、取り外しを可能にしてセンサ16のメンテナンスが出来るように構成している。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、湿式電気集塵器、特に火力発電プラントの燃料に硫黄分が存在する排ガスを浄化する湿式電気集塵器、及び湿式電気集塵器の運転方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】25℃における硫酸のpHと電気伝導度の関係を示す特性図。
【図2】湿式電気集塵器の筐体の内部における湿度と水膜の電気伝導度及び水膜のpHとの関係を示す特性図。
【図3】本発明の実施例における火力発電プラントの運転時の水膜の電気伝導度と洗浄水噴霧期間との関係を示す説明図。
【図4】本発明の実施例における火力発電プラントの運転停止時の水膜の電気伝導度と洗浄水噴霧期間との関係を示す説明図。
【図5】本発明の第1実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図6】本発明の第2実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図7】本発明の第3実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図8】本発明の第4実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図9】本発明の第5実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図10】本発明の実施例である湿式電気集塵器を構成する電気伝導度を検知するセンサの詳細構造図。
【図11】本発明の実施例である湿式電気集塵器を構成する保安器のアース回路を示した説明図。
【図12】本発明の第1実施例である湿式電気集塵器に設置された制御装置の詳細構成を示す制御ブロック図。
【符号の説明】
【0127】
1:筐体、2:放電極、3:集塵極、4:電源、5:ノズル、6:洗浄水、7:水膜、8:廃液、9:排ガス、10:排ガス、11:バルブ、12:配管、13:ポンプ、14:バルブ、15:バルブ、16:センサ、17:センサ先端部、18:保安器、19:測定装置、20:制御装置、20a:演算装置、20b:設定装置、21a:ボルト、21b:ナット、22:配管、23:タンク、24:センサ、25:測定装置、26:制御装置、27:バルブ、28:配管、29:バルブ、30:配管、31:取り付け穴、33〜34:アース回路、39:配管、41〜43:配管、50:火力発電プラント、100:湿式電気集塵器。
【技術分野】
【0001】
本発明は湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法に関し、集塵極表面の水膜の電気伝導度を測定値に基づいて洗浄水の噴霧を制御する湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湿式電気集塵器は火力発電プラントに備えられたボイラから排出される排ガスを浄化する装置として使用されている。この湿式電気集塵器の機構は、排ガスを放電極から集塵極へ直流高電圧を印加した状態で連続的に通すように構成されている。
【0003】
この時、湿式電気集塵器の放電極から集塵極にはコロナ放電が発生しており、排ガス中に含まれているSO3やミストは負に帯電し、クーロン力により集塵極へ強制的に付着させることができる。
【0004】
湿式電気集塵器はその後、集塵極表面の付着したSO3やミストを水で洗浄し、その排水を処理することで排ガスを浄化するように構成している。
【0005】
湿式電気集塵器に流入する排ガスにはSO3が多く含まれ、水と反応して直ちに硫酸が生成される。
【0006】
そのため、湿式電気集塵器内の水のpHは低く、湿式電気集塵器の集塵極に金属材料を適用するに際しては高耐食材料のステンレス鋼やニッケル基合金が使用されている。
【0007】
また、湿式電気集塵器の集塵極に金属材料を適用しない場合は、金属材料へのコーティングの適用、樹脂材料の使用等の対応があるが、メンテナンスの問題やスパークによって樹脂材料に火災が発生する可能性がある。
【0008】
さらに、湿式電気集塵器の集塵極の表面に付着したSO3やミストを水で洗浄する洗浄水の噴霧には、連続して洗浄水を吹きかける方法と、一定間隔毎に洗浄水を噴霧する方法に別けることができる。
【0009】
洗浄水を集塵極に連続で噴霧する方法は硫酸等の濃縮を抑制して集塵極を構成する金属材料の腐食を回避できるが、洗浄水の使用量や排水処理費用も多くなり、また洗浄水を連続して供給させるポンプの駆動費用も増加する。
【0010】
それに対して、一定間隔毎に洗浄水を集塵極に噴霧する方法は、洗浄水の噴霧を停止した時に集塵極表面の水膜で硫酸等が濃縮するので、集塵極の金属材料が腐食し易く高耐食性材料の適用が避けられないが、洗浄水の使用量、排水処理費用、ポンプの駆動費も少なくて済み経済的である。
【0011】
また、火力発電プラントが運転停止中は湿式電気集塵器は外気と接触しているため、湿式電気集塵器の内部は乾燥しやすい。湿式電気集塵器の内部に不揮発性の硫酸が付着したまま火力発電プラントの運転が停止すると水分が蒸発して硫酸濃度が上昇し、集塵極を構成する金属材料の耐えうるpHよりも低下すると金属材料は腐食することになる。
【0012】
この対策としては、火力発電プラントの運転が停止する前に洗浄水による集塵極の十分な洗浄を行うことによって集塵極を構成する金属材料の腐食はある程度防ぐことは可能となるが、単純に洗浄水を噴霧する洗浄だけでは硫酸を完全に除去できないため、火力発電プラントの運転停止中に集塵極を構成する金属材料の腐食を完全に防ぐことは不可能である。
【0013】
ところで、特開平8−108094号公報に記載された湿式電気集塵器の技術では、電極間の漏れ電流と排ガスの湿度及び温度から算出する電極に付着した粉塵の厚みに基づいて洗浄水による洗浄時期を算定して湿式電気集塵器の集塵極を洗浄する技術が開示されている。
【0014】
また、特開平8−222353号公報に記載された電気集塵器の技術では、放電用電極間の静電容量を測定して放電用電極の劣化度合い、若しくは運転状況を判定する技術が開示されている。
【0015】
【特許文献1】特開平8−108094号公報
【特許文献2】特開平8−222353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特開平8−108094号公報に記載された湿式電気集塵器の技術では、電極に付着した粉塵の厚みを算出するために測定すべき検出対象が多いために電極の洗浄を行う洗浄システムが非常に複雑な構成となり、湿式電気集塵器の設備が大型化して設備コストを要するという問題がある。
【0017】
また、特開平8−222353号公報に記載された電気集塵器の技術では、放電用電極の劣化度合いを判定することは可能であるが、しかしながら集塵極の劣化状況を測定することが出来ない。
【0018】
本発明の目的は、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の湿式電気集塵器は、排ガスを流下させる筐体と、この筐体の内部に設置された放電極及び集塵極と、これらの放電極及び集塵極に直流電圧を印加する電源とを備え、火力発電プラントから排出される排ガスを浄化する湿式電気集塵器において、前記湿式電気集塵器は、この筐体の内部で洗浄水を噴霧するノズルを有しており該洗浄水を前記筐体に供給する洗浄水の供給配管と、この洗浄水の供給配管に設置された第1のバルブと、放電極に面した前記集塵極の表面に形成される洗浄水の水膜の電気伝導度を検出するセンサと、このセンサで検出した水膜の電気伝導度を測定する測定装置と、前記測定装置で測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第1のバルブを開閉操作する指令信号を出力して洗浄水を筐体の内部に噴霧させる制御装置とを備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明の湿式電気集塵器の運転方法は、排ガスを流下させる筐体と、この筐体の内部に設置された放電極及び集塵極と、これらの放電極及び集塵極に直流電圧を印加する電源とを備え、火力発電プラントから排出される排ガスを浄化する湿式電気集塵器の運転方法において、放電極に面した前記集塵極の表面に形成される洗浄水の水膜の電気伝導度をセンサによって測定し、この測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記筐体に洗浄水を供給する配管に設置した第1のバルブの開閉を操作して前記筐体の内部に洗浄水を噴霧させるように制御することにより、前記水膜のpHを所望の値に調節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施例である湿式電気集塵器について図面を引用して以下に説明する。
【実施例1】
【0023】
次に本発明の第1実施例である湿式電気集塵器について図5を用いて説明する。
【0024】
図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100は、該湿式電気集塵器100の容器を構成して排ガスを流下させる筐体1と、この筐体1の内部に配設された複数の放電極2と、これらの放電極2に面して該筐体1の中央部に配設された集塵極3と、前記筐体1の外側に配設されて前記放電極2をマイナスに、前記集塵極3をプラスになるように直流電圧を数10kV印加する電源4とを備えている。
【0025】
また、これらの放電極2に面した筐体1の内壁は、前記集塵極3と電気的に繋がっておりアースにも接続されていることから、前記集塵極3と同じ機能を有している。
【0026】
そして放電極2と集塵極3とに直流電圧を印加して前記放電極2と集塵極3との間に発生させたコロナ放電作用によって、火力発電プラント50のボイラ(図示せず)から排出され、この筐体1に取り付けられた配管39を通じて該筐体1の内部に導かれた排ガス9に含まれたSO3や微粒子を集塵極3(集塵極3と同じ機能を有する筐体1の内壁も含む)に付着させる。
【0027】
このSO3や微粒子を集塵極3に付着させて除去し浄化された排ガス10は前記筐体1から煙突(図示せず)を通じて大気に排出される。
【0028】
湿式電気集塵器100の筐体1には、外部から筐体1を貫通して洗浄水6を筐体1の内部に供給するバルブ15を備えた配管22が配設されており、筐体1の内部に配設された配管22にはバルブ15を開操作して供給された洗浄水6を噴霧する複数のノズル5が設置されている。
【0029】
そして前記したコロナ放電作用によって放電極に面した集塵極3に付着した排ガス9中のSO3は、ノズル5から噴霧した洗浄水6と反応して直ちに硫酸を生成し、排ガス9中の微粒子とともに集塵極3の外面(放電極に面した筐体1の内壁面も集塵極3として以後説明してある)に付着して水膜7を形成する。
【0030】
集塵極3の外面に形成された水膜7は筐体1の下方へ流れて前記筐体1の底部に廃液8として集められる。
【0031】
筐体1の底部には廃液8を外部に排出する配管12と、この配管12に設置されたバルブ11が配設されており、前記筐体1の底部に溜まった廃液8は後述する制御装置20からの指令信号によってバルブ11を開弁操作することで、この廃液8は配管12を通じて外部の廃水処理装置(図示せず)に排出して処理する。
【0032】
前記筐体1の胴部を構成する内壁面には集塵曲である筐体1の内壁面に形成される水膜7の電気伝導度を計測するセンサ16が設置されている。
【0033】
電気伝導度の測定に際しては、集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度を測定するために放電極に面した筐体1の胴部壁の位置に電気伝導度を計測するセンサ16を設置する構造とする。
【0034】
尚、筐体1の胴部壁に取り付ける電気伝導度を計測するセンサ16は、メンテナンスを考慮してこの電気伝導度を計測するセンサ16が筐体1の胴部壁の外部から容易に取り外し可能な構造とする。
【0035】
即ち、電気伝導度を計測する前記センサ16は、固定手段であるボルト21aとナット21bによって筐体1の胴部壁にセンサ16が着脱自在に取り付けられる構造を採用することによって、必要に応じてセンサ16を筐体1の胴部壁から取り外してメンテナンスすることが容易となる。
【0036】
そして筐体1の胴部壁に取り付けられたセンサ16は、その先端に形成された複数のセンサ先端部17が筐体1の内壁面(集塵極3)に面するように配置されており、この集塵極3の表面に形成される水膜7と前記センサ先端部17とが接するように構成して、この集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度を前記センサ先端部17で計測する。
【0037】
そして火力発電プラントの運転時には、センサ16のセンサ先端部17に接している前記集塵極3に形成された水膜7の電気伝導度をこのセンサ16によって測定する。
【0038】
また、湿式電気集塵器100には、センサ先端部17で水膜7の電気伝導度を検出するセンサ16と、このセンサ16で検出した水膜7の電気伝導度を測定する測定装置19との間に保安器18が接続されており、この保安器18を経由してセンサ16から伝達された水膜7の電気伝導度が前記測定装置19で測定されて制御装置20に入力される。
【0039】
そして前記制御装置20では、測定装置19から入力した電気伝導度の測定値とその設定値との比較に基づいて配管22のバルブ15の開閉を制御する指令信号を出力するように構成されている。
【0040】
運転中の湿式電気集塵器100では、筐体1の内部に設置した放電極2から集塵極3にスパーク現象が起こるため、電気伝導度を測定するセンサ16と測定装置19との中間には異常な過電圧が入力した場合にこの過電圧を外部に逃がす保安器18を設置して、電気伝導度のセンサ16と測定装置19との間に過電圧が入らない機能を持たせている。
【0041】
本実施例の保安器18は、図11に示すようにセンサ16と測定装置19との間に設置されているので、通常時はアース回路33にアース電流は流れるが、センサ16にスパークのような異常な電流が流れた時には発生した過電流を保安器18からアース回路34に流れるように構成されているので、測定装置19の破損が防止され、センサ16で検知する水膜7の電気伝導度の測定を安定して測定することが可能となる。
【0042】
電気伝導度の測定は、センサ16と測定装置19との間に保安器18を設置してセンサ16のセンサ先端部17で検出した水膜7の電気伝導度を測定装置19に送ることによって測定され、この電気伝導度の測定信号を前記測定装置19から制御装置20に入力させる。
【0043】
本実施例の湿式電気集塵器100に設置されている制御装置20は、図12にこの制御装置20の詳細な構成を示したように、制御装置20に演算装置20aと設定装置20bとを備えた構成であり、センサ16によって検出され測定装置19を経由して制御装置20に送られてくる水膜7の電気伝導度の測定信号は、前記制御装置20に備えられた演算装置20aに入力する。
【0044】
また前記制御装置20に備えられた前記設定装置20bには、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3や放電極2、或いは筐体1の壁面に使用する金属材料について腐食を抑制することができる電気伝導度の値を電気伝導度の基準値としている。
【0045】
ここで、金属材料の腐食に関係する水の電気伝導度について説明すると、図1に25℃における硫酸のpHと電気伝導度との関係を特性カーブとして示したように、例えば高耐食ステンレス鋼については水のpHが腐食が問題になるpH1以下になると水の電気伝導度は急激に増加する。これは、水素イオンの電導度が他のイオンに比較して非常に大きいという性質を有しているからである。
【0046】
この理由は水溶液中では水素イオン自体は動くこと無しに水素結合とO−Hの共有結合の交代、即ち電子の移動のみによって達成できるためである。したがって、pH1以下においては電気伝導度を指標として水の大まかなpHを推定することができることになる。
【0047】
この原理を利用することで、火力発電プラント50から排出されて湿式電気集塵器100の筐体1の内部に流入する排ガスに含まれたSO3が水膜7に溶け込んで硫酸となる水のpHの状況について、この湿式電気集塵器100の筐体1の内部の放電極2に面して配設された集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度をpHに置き換えてセンサ16のセンサ先端部17を水膜7と接触させて測定することができる。
【0048】
そして、このセンサ16で検出した水膜7の電気伝導度の測定値が予め設定した基準値を超えた場合に、制御装置20から指令信号を出力して配管22のノズル5から筐体1の内部に洗浄水6を噴霧し、前記筐体1の内部に設置した集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁を洗浄してこれらを形成する金属材料の腐食が抑制される電気伝導度の値となるように制御するものである。
【0049】
図2に湿式電気集塵器100の筐体1の内部の湿度と水膜の電気伝導度との関係を実線で示したように、湿式電気集塵器100の筐体1の内部が乾燥して湿度が低下すると水膜の電気伝導度は低下し、水膜のpHの値も低下して低くなり、そして筐体1の内部が完全に乾燥状態になると水膜の電気伝導度は殆ど零になる。
【0050】
したがって、集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度を火力発電プラント50の運転が停止中にも測定し、電気伝導度が一定値以下に低下したら洗浄水6をノズル5から筐体1の内部に噴霧させる。
【0051】
よって上記したように洗浄水6を筐体1の内部に噴霧することにより、図2に実線で示したように筐体1の内部の湿度が増加して水膜のpHの値も上昇することになる。
【0052】
この結果、湿式電気集塵器100の運転が停止中における水膜7の乾燥によるpHの値の低下が防止され、火力発電プラント50の運転停止中における湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属の腐食を抑制することが可能になる。
【0053】
水膜7の電気伝導度の測定に際しては、放電極2に面した集塵極3(筐体1の内壁)の表面に形成した水膜7の電気伝導度を測定するために、電気集塵器100の筐体1の胴部壁に電気伝導度を検出するセンサ16を取り付ける。
【0054】
筐体1の胴部壁に取り付ける前記センサ16は、センサ16をメンテナンスすることを考慮してこのセンサ16を筐体1の外部側から容易に取り外し可能なように後述する着脱自在の構造として筐体1の胴部に取り付けておく。
【0055】
また、湿式電気集塵器100の運転中は、放電極2から集塵極3にスパーク現象が起こるため、電気伝導度を検出する前記センサ16と測定装置19との中間に、異常な過電圧が入力した場合にこの過電圧を外部に逃がす保安器18を設置するようにして、電気伝導度のセンサ16と測定装置19との間に過電圧が入らない機能を持たせることが必要である。
【0056】
また、火力発電プラントの運転が停止中は、水膜7の電気伝導度をセンサ16によって測定し、その電気伝導度の測定値が前記したように予め定めた電気伝導度の基準値を超えた場合には制御装置20から出力される指令信号によって配管22のノズル5から筐体1の内部に洗浄水6を噴霧して前記筐体1の内部に設置した集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁を洗浄して水膜7のpHを金属材料の腐食が抑制される低い値となるように制御する。
【0057】
次に前記した制御装置20について更に詳細に説明すると、図12に前記制御装置20の詳細構成を示したように、この制御装置20に設けた演算装置20aによってセンサ16から測定装置19に送られた水膜7の電気伝導度の測定信号の値と、制御装置20に設けた設定装置20bが予め設定している電気伝導度の所定の基準値とを比較して、電気伝導度の測定値が前記電気伝導度の所定の基準値を超えた場合に、この制御装置20の演算装置20aから配管22に設けたバルブ15に対して一定の時間だけ開弁する指令信号を出力し、前記配管22を通じて洗浄水6を供給して該配管22に設けたノズル5から筐体1の内部に噴霧する。
【0058】
そして筐体1の内部に洗浄水6を噴霧することによって、前記筐体1の内部に設置した集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁は洗浄されるので、集塵極3の表面に形成された水膜7のpHは金属材料の腐食が抑制される低い値にまで低減される。
【0059】
また、火力発電プラント50の運転状態の信号は、前記制御装置20の演算装置20aに入力されている。
【0060】
ここで前記制御装置20に設けた前記設定装置20bに予め設定されている電気伝導度の基準値とは、筐体1の内部に設置された集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料について腐食を抑制することができる電気伝導度の値であって、使用する金属材料に応じて前記基準値の設定値を相違させて設定している。
【0061】
即ち、使用する前記金属材料がスーパーステンレス鋼の場合は、集塵極3の表面に形成された水膜7のpHが約0.5以上の値に保持できるようにするため、図1に示したpHと水の電気伝導度の特性カーブでpH0.5に対応する電気伝導度が約800(ms/m)以下となるように、前記設定装置20bで電気伝導度の基準値を設定する。
【0062】
また、使用する前記金属材料が二層テンレス鋼の場合は、集塵極3の表面に形成された水膜7のpHが約1以上の値に保持できるようにするため、図1に示したpHと水の電気伝導度の特性カーブでpH1に対応する電気伝導度が約300(ms/m)以下となるように、前記設定装置20bで電気伝導度の基準値を設定する。
【0063】
同様に、使用する前記金属材料がオーステナイトステンレス鋼の場合は、集塵極3の表面に形成された水膜7のpHが約2以上の値に保持できるようにするため、図1に示したpHと水の電気伝導度の特性カーブでpH2に対応する電気伝導度が約100(ms/m)以下となるように、前記設定装置20bで電気伝導度の基準値を設定する。
【0064】
そしてセンサ16から測定装置19を経由して入力した水膜7の電気伝導度の測定信号と前記電気伝導度の基準値との比較に基づいて、前記制御装置20の演算装置20aから出力した指令信号によって配管22に設けたバルブ15を一定時間だけ開弁し、配管22に設けたノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に噴霧する。
【0065】
そして筐体1の内部の集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁面を噴霧した洗浄水6で洗浄した結果、集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁面に形成される水膜7の電気伝導度は前記の金属材料の腐食が抑制できる基準値よりも低くなり、水膜7のpHの値を上昇させることができるので、集塵極3や放電極2、及び筐体1に使用されている金属材料の腐食を抑制することが可能となる。
【0066】
更に詳細に説明すると、火力発電プラント50が運転中は、火力発電プラント50から排出された比較的温度が高い排ガス9が湿式電気集塵器100の筐体1の内部を流下するために、湿式集塵器100の筐体1の内部は水分が蒸発して乾燥し、湿度が低下することになる。
【0067】
筐体1の内部が乾燥して湿度が低下すると、集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度は図2に実線で示したように急激に低くなり、それに伴なって水膜7のpHも低下してしまうので、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁に使用されている金属材料の腐食は加速される状態となる。
【0068】
そこで本実施例の湿式電気集塵器100では、火力発電プラント50の運転中に湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置した集塵極3の表面に形成された水膜7の電気伝導度をセンサ16を介して測定装置19で測定し、この測定した前記電気伝導度の測定信号と、火力発電プラント50の運転状態(この場合、運転中の信号が入力)の信号と、前述した集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料に応じて設定装置20bで予め設定した電気伝導度の各基準値とを制御装置20に設けた演算装置20aによって比較演算する。
【0069】
そして測定装置19で測定されて前記制御装置20の演算装置20aに入力する水膜7の電気伝導度の測定値が、図3に示したように火力発電プラント50の運転時間の経過に従って排ガスに含まれたSO3が水に溶け込んで水の硫酸濃度が上がるので水膜7の電気伝導度が上昇し、又は前回の洗浄水6の噴霧によって回復した水膜7の電気伝導度が同様に再度上昇して設定装置20bで設定した前述した集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料毎に設定した電気伝導度の前記基準値に達した際に、前記演算装置20aでの演算に基づいて配管22に設けたバルブ15に対して一定の時間だけ開弁する指令信号を出力し、該配管22に設けたノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に噴霧させる制御操作を繰り返す。
【0070】
そして図3に洗浄水噴霧期間として示したように筐体1の内部でノズル5から洗浄水6を一定の時間だけ噴射することによって前記筐体1の内部に設置した集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁は洗浄水6で洗浄され、集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7のpHは金属材料の腐食が抑制される低い値に低減され、火力発電プラント50の運転中における湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁等に使用されている金属の腐食を抑制することができる。
【0071】
そして前述した湿式電気集塵器100の実施例で説明したように、測定装置19で検出した水膜7の電気伝導度の測定値が制御装置20の演算装置20aにて、設定装置20bで前述した金属材料毎に設定した前記基準値に達したと判断された際に、この演算装置20aから出力される指令信号によって配管22のバルブ15を開弁操作して洗浄水6をノズル5から筐体1の内部に噴霧して洗浄して集塵極3の表面に形成される水膜7の電気伝導度を低く値に保持し、それによって水膜7のpHを所望の値に制御することができる。
【0072】
つまり、制御装置20によって水膜7の電気伝導度の値が所定の前記基準値を超えないように制御することで、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3等に使用されている金属材料の腐食を抑制する運用が可能となる。
【0073】
また、火力発電プラント50が運転停止中は、湿式電気集塵器100は煙突と接続されている構造を採用しているため、火力発電プラント50の運転が停止中に湿式集塵器100の筐体1の内部は水分が蒸発して乾燥し、湿度が低下することになる。
【0074】
このように筐体1の内部の湿度が低下すると、図2に実線で示したように集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7の電気伝導度は急激に低くなり、それに伴なって水膜7のpHも低下してしまうので、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁等に使用されている金属材料の腐食は加速される状態となる。
【0075】
そこで本実施例の湿式電気集塵器100では、火力発電プラント50の運転が停止中においても、湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置した集塵極3の表面に形成された水膜7の電気伝導度をセンサ16を介して測定装置19で測定し、制御装置20に設けた演算装置20aにて測定した電気伝導度の測定信号と前述した集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料に応じて設定装置20bで予め設定した電気伝導度の各基準値とを比較演算する。
【0076】
そして測定装置19で測定されて前記制御装置20の演算装置20aに入力する水膜7の電気伝導度の測定値が、図4に示したように火力発電プラント50の運転が停止した停止時間の経過に従って筐体1の内部が乾燥して水膜7の電気伝導度が上昇した後に急激に低下し、又は前回の洗浄水6の噴霧によって回復した水膜7の電気伝導度が筐体1の内部の乾燥によって再度急激に低下して、設定装置20bで設定した前述した集塵極3や放電極2、或いは筐体1に使用する金属材料毎に設定した電気伝導度の前記基準値に達した際に、前記演算装置20aでの演算に基づいて配管22に設けたバルブ15に対して一定の時間だけ開弁する指令信号を出力し、該配管22に設けたノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に噴霧させる制御操作を繰り返す。
【0077】
そして図4に洗浄水噴霧期間として示したように洗浄水6を筐体1の内部でノズル5から一定の時間だけ噴射することによって、前記筐体1の内部に設置した集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁は洗浄水6で洗浄されるので、集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7のpHは金属材料の腐食が抑制され、集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7のpHは金属材料の腐食が抑制される低い値に低減され、火力発電プラント50の運転停止における湿式電気集塵器100の筐体1の内部に設置された集塵極3、放電極2、及び筐体1の内壁等に使用されている金属の腐食を抑制することができる。
【0078】
また、火力発電プラント50の運転状態は前記制御装置20の演算装置20aに入力されるように構成されているので、火力発電プラント50が運転停止した直後に、制御装置20の演算装置20aから配管12のバルブ11に対して一定時間だけ開弁操作する指令信号を出力して、筐体1の内部に噴霧された洗浄水6がこの筐体1の底部に溜まった廃液8を配管12を通じて湿式電気集塵器100の筐体1の外部に排出するように操作する。
【0079】
そして前記バルブ11及バルブ15を開弁する前記一定時間が経過した後は、制御装置20の演算装置20aから指令信号を出力し、配管12のバルブ11を閉弁操作して前記筐体1の底部に溜まった廃液8を配管12を通じて外部に排出する操作を停止し、その後さらに一定時間が経過した後に制御装置20の演算装置20aから別の指令信号を出力して配管22のバルブ15を閉弁操作して、ノズル5から噴霧された洗浄水6が溜まった廃液8を前記筐体1の底部に一定量溜めた状態にする。
【0080】
このように前記筐体1の底部に廃液8を一定量溜めることによって、溜まった廃液8は湿式電気集塵器100の筐体1の内部の水分の供給源としての役割を持つことができ、湿式電気集塵器100の筐体1の内部の乾燥を防ぐことが可能となる。
【0081】
そして前記筐体1の底部に廃液8を一定量溜めた後に、筐体1の内部の集塵極3や筐体1の内壁の表面に形成される水膜7の電気伝導度をセンサ16及び測定装置19によって測定し、この電気伝導度の測定信号を測定装置19から制御装置20に入力する。
【0082】
そして火力発電プラント50が運転停止中にセンサ16で検出され測定装置19によって測定された水膜7の電気伝導度が基準値よりも低下した場合には、湿式電気集塵器100の筐体1の内部が乾燥状態に入ったものと制御装置20の演算装置20aで判断することによって、前述したように制御装置20の演算装置20aから出力される指令信号に基づいてバルブ15を開弁操作して洗浄水6を配管22を通じて供給し、ノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に一定時間だけ噴霧して筐体1の内部に配設された集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁面を洗浄する。
【0083】
そしてノズル5から洗浄水6を筐体1の内部に噴霧することにより、筐体1の内部に設置された集塵極3や放電極2、及び筐体1の内壁面を形成する金属材料の表面は再び濡れた状態となるので前記金属材料の表面の乾燥を防ぐことができ、火力発電プラントが運転停止中に集塵極3や筐体1の内壁面に形成される水膜7のpHが低下することによる前記金属材料の腐食を抑制することが可能となる。
【0084】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【実施例2】
【0085】
次に本発明の第2実施例である湿式電気集塵器について図6を用いて説明する。
【0086】
図6に示した本発明の第2実施例の湿式電気集塵器100は、図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100と基本的な構成は共通しているので、共通した構成及び操作方法の説明は省略し、両者が相違する構成及び操作方法についてのみ以下に説明する。
【0087】
図6に示した本発明の第2実施例の湿式電気集塵器100において、先に説明した第1実施例の湿式電気集塵器100と異なる構成は、筐体1の底部に溜まった洗浄水6の廃液8を筐体1の底部から排出するバルブ11の上流側の配管12から分岐して前記廃液8を洗浄水8として導く配管41と、この配管41に設置された洗浄水6を供給するポンプ13と、このポンプ13から供給された洗浄水6を前記配管22に導く配管42と、この配管42に設置されたバルブ14とが設置されていることである。
【0088】
そして本実施例の湿式電気集塵器100においては、火力発電プラント50の運転が停止した直後に、制御装置20から筐体1の内部の底部から廃液8を外部に排出するバルブ11及び洗浄水6を筐体1の内部に供給するバルブ15を一定時間開弁する指令信号をそれぞれ出力し、筐体1の内部を洗浄水6によって洗浄する。
【0089】
更に一定時間が経過した後に、制御装置20からの指令信号でバルブ11を閉弁し、さらに一定時間が経過した後にバルブ15を閉弁して筐体1の内部の底部に洗浄水6を廃液8として一定量溜めた状態にする。
【0090】
このようにすることによって、筐体1の内部の底部に溜められた廃液8は筐体1の内部に噴霧される洗浄水6の供給源としての役割を持つことができるので、火力発電プラント50の運転が停止中でも湿式電気集塵器100の内部の乾燥を防ぐことができる。
【0091】
次に筐体1の内部の底部に洗浄水6を一定量溜めた後に、センサ16で検出され測定装置19によって測定された筐体1の内部に設置した放電極2や筐体1の内壁に形成される水膜7の電気伝導度を測定し、この電気伝導度の測定信号を制御装置20に入力する。
【0092】
そして火力発電プラント50の運転が停止中は、制御装置20の演算装置20aでは測定装置19で測定した筐体1の内部に設置した集塵極3、又は筐体1の内部壁面の表面に形成された水膜7の電気伝導度の測定信号と設定装置20bで設定した電気伝導度の基準値とを比較し、筐体1の内部が乾燥して前記電気伝導度の測定信号がこの基準値よりも低下した場合に、前記筐体1の内部が乾燥状態に入ったと判断して前記演算装置20aから指令信号を出力してバルブ14及びバルブ15に開弁し、ポンプ13を稼動させて、筐体1の内部の底部に廃水8として一定量溜めた洗浄水6をノズル5から筐体1の内部に一定時間噴霧する。
【0093】
上記のように洗浄水6を再利用することによって火力発電プラント50の運転停止中に外部から供給される新たな洗浄水6の使用量を減らすことが可能となる。
【0094】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【実施例3】
【0095】
次に本発明の第3実施例である湿式電気集塵器について図7を用いて説明する。
【0096】
図7に示した本発明の第2実施例の湿式電気集塵器100は、図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100と基本的な構成は共通しているので、共通した構成及び操作方法の説明は省略し、両者が相違する構成及び操作方法についてのみ以下に説明する。
【0097】
図7に示した本発明の第3実施例の湿式電気集塵器100において、先に説明した第2実施例の湿式電気集塵器100と異なる構成は、筐体1の内部の底部に溜まった廃液8を中和するタンク23が設置されており、このタンク23で廃水8を中和させた水を洗浄水6として再利用するようにしたことにある。
【0098】
火力発電プラント50が運転時において制御装置20からの指令信号によってバルブ11は閉弁し、バルブ15は開弁されるので、配管22から供給された洗浄水6は筐体1の内部でノズル5から一定時間噴霧されて筐体1の内部を洗浄した洗浄水6は、筐体1の内部の底部から配管11及び配管43を通じてタンク23に供給されて貯蔵される。
【0099】
タンク23にはpHを検知するセンサ24とバルブ27を備えた配管28が設けられており、更に前記センサ25で検知した廃液8のpHを測定する測定装置25と、この測定装置25で測定した廃液8のpHの測定値に基づいて該配管28を通じて前記タンク23に供給する中和用のアルカリ液の供給を調節するバルブ27を制御する制御装置26が設置されている。
【0100】
また、タンク23の底部には廃液8を外部に排出する配管30が配設され、この配管30にはバルブ29が設けられている。また、バルブ11の上流側の配管29から分岐した配管41が配設されており、この配管41が前記ポンプ13に接続されている。
【0101】
タンク23内に貯蔵された廃水8のpHはこのセンサ24で検知され、測定装置25によって測定されたpHの測定信号は制御装置26に入力される。
【0102】
前記制御装置26ではこのpHの測定信号は予め設定されたpHの基準値と比較され、pHの測定信号がpHの基準値を下回った場合にこの制御装置26から指令信号を出力してバルブ27を開弁し、配管28を通じて中和用のアルカリ液をタンク23内に供給して前記タンク23内の廃水8を中和する処理を行う。
【0103】
そしてタンク23内の廃水8を中和した後に、制御装置26からの指令信号によってポンプ13を稼動すると共に、バルブ14及びバルブ15を開弁して、タンク23内で中和された廃水8を配管29、配管41、ポンプ23、配管42、バルブ14をそれぞれ経由して配管22に供給し、ノズル5から筐体1の内部に一定時間噴霧する。
【0104】
また、火力発電プラント50の運転が停止中は、タンク23内で中和した後の廃水8を筐体1の内部を洗浄する洗浄水6として使用する。
【0105】
この場合、制御装置20の演算装置20aでは測定装置19で測定した筐体1の内部に設置した集塵極3、又は筐体1の内部壁面の表面に形成された水膜7の電気伝導度の測定信号と設定装置20bで設定した電気伝導度の基準値とを比較して前記電気伝導度の測定信号がこの基準値よりも低下した場合に、前記筐体1の内部が乾燥状態に入ったと判断して、前記演算装置20aから指令信号を出力してバルブ14及びバルブ15に開弁し、ポンプ13を稼動させて、タンク23内で中和した後の廃水8を洗浄水6としてノズル5から筐体1の内部に一定時間噴霧する。
【0106】
このように制御することによって前記筐体1の内部に配設された集塵極3、放電極2、又は筐体1の内壁を形成する金属材料の表面は再び濡れた状態となり金属表面の乾燥が防止されるので、水膜7のpH低下による火力発電プラント50の運転停止中における前記筐体1の内部の集塵極3、放電極2、又は筐体1の内壁を形成する金属材料の腐食を抑制することができる。
【0107】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【実施例4】
【0108】
次に本発明の第4実施例である湿式電気集塵器について図8を用いて説明する。
【0109】
図8に示した本発明の第4実施例の湿式電気集塵器100は、図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100と基本的な構成は共通しているので、共通した構成及び操作方法の説明は省略し、両者が相違する構成及び操作方法についてのみ以下に説明する。
【0110】
図8に示した本発明の第4実施例の湿式電気集塵器100において、先に説明した第1実施例の湿式電気集塵器100と異なる構成は、水膜7の電気伝導度を検知するセンサ16の取り付け位置にある。
【0111】
運転中の湿式電気集塵器100は電源から放電極2を負極とし集塵極3を正極として電圧をかけているので、電子は放電極2から集塵極3にまれにスパークが起こる。
【0112】
そこで、センサ16と測定装置19の中間に異常な過電圧が入力された場合にこの加電圧を外部に逃がす安定器18がセンサ16と測定装置19との間に設置されている。
この安定器18の設置によって仮にスパークがセンサ16のセンサ先端部17に落ちたとしても支障をきたさないように構成されている。
【0113】
しかしながら、仮にスパークがセンサ16のセンサ先端部17に落ちた場合にはセンサ先端部17の金属が損傷する懸念があるため、センサ16のセンサ先端部17は放電極2から遠い方が影響を受けなくてすむように丁度、図8に示したように前記センサ16のセンサ先端部17が筐体1の胴部壁面に取り付けられる位置は、筐体1の内部に配設された放電極2の下端部よりも下方となる筐体1の胴部壁面の下部に着脱自在に設置されている。
【0114】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【実施例5】
【0115】
次に本発明の第5実施例である湿式電気集塵器について図9を用いて説明する。
【0116】
図9に示した本発明の第2実施例の湿式電気集塵器100は、図5に示した本発明の第1実施例の湿式電気集塵器100と基本的な構成は共通しているので、共通した構成及び操作方法の説明は省略し、両者が相違する構成及び操作方法についてのみ以下に説明する。
【0117】
図9に示した本発明の第5実施例の湿式電気集塵器100において、先に説明した第1実施例の湿式電気集塵器100と異なる構成は、水膜7の電気伝導度を検知するセンサ16の構造とこのセンサ16の取り付け構造にある。
【0118】
水膜7の電気伝導度を検知するセンサ16のセンサ先端部17は集塵極3の表面に形成される水膜7に接する必要がある。しかし、第1から第5実施例では集塵極3が筐体1と兼用な場合の取り付けを想定した形状である。
【0119】
この第5実施例の湿式電気集塵器100では、筐体1の内部に設置された集塵極3の内側に放電極2を配設した構造を採用していることから、集塵極3の内側にしか放電極2が存在しないので、硫酸濃度の高い水膜は放電極2がその内側に設置されている集塵極3の内側に形成される水膜7の電気伝導度を測定する必要がある。
【0120】
そこで、本実施例では、図9に示すようにセンサ16のセンサ先端部17が放電極2に面した集塵極3の内面側まで届くような長さに形成し、集塵極3には前記センサ16のセンサ先端部17が挿入できるように該センサ先端部17の外径に相当する穴を開けた構造としたものである。
【0121】
本実施例によれば、湿式電気集塵器に設置された集塵極の表面に形成される水膜が火力発電プラントの運転状況に係わらずに所望のpHの範囲内となるように洗浄して、集塵極を構成する金属材料の腐食を防止する簡単な構成の湿式電気集塵器及び湿式電気集塵器の運転方法が実現できる。
【0122】
図10は本発明の各実施例である湿式電気集塵器100を構成する水膜7の電気伝導度を検知するセンサ16の詳細構成を示すものである。センサ16を構成する材質は金属でも非金属でもかまわないが、センサ16に設けたセンサ先端部17の埋め込み部分は樹脂製で絶縁性を有している必要がある。
【0123】
さらにセンサ16のセンサ先端部17を構成する金属材料は高耐食性を有する必要があるため、白金を用いることが望ましい。
【0124】
また、前記センサ16の筐体1への取り付けは、図5に示したようにセンサ16が筐体1の外壁面に面した位置にボルト21b及びナット21aを装着する4個の取り付け穴31を形成することによって、このセンサ16を筐体1の胴部の壁面に対して取り付け、取り外しを可能にしてセンサ16のメンテナンスが出来るように構成している。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、湿式電気集塵器、特に火力発電プラントの燃料に硫黄分が存在する排ガスを浄化する湿式電気集塵器、及び湿式電気集塵器の運転方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】25℃における硫酸のpHと電気伝導度の関係を示す特性図。
【図2】湿式電気集塵器の筐体の内部における湿度と水膜の電気伝導度及び水膜のpHとの関係を示す特性図。
【図3】本発明の実施例における火力発電プラントの運転時の水膜の電気伝導度と洗浄水噴霧期間との関係を示す説明図。
【図4】本発明の実施例における火力発電プラントの運転停止時の水膜の電気伝導度と洗浄水噴霧期間との関係を示す説明図。
【図5】本発明の第1実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図6】本発明の第2実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図7】本発明の第3実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図8】本発明の第4実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図9】本発明の第5実施例である湿式電気集塵器を示す概略構造図。
【図10】本発明の実施例である湿式電気集塵器を構成する電気伝導度を検知するセンサの詳細構造図。
【図11】本発明の実施例である湿式電気集塵器を構成する保安器のアース回路を示した説明図。
【図12】本発明の第1実施例である湿式電気集塵器に設置された制御装置の詳細構成を示す制御ブロック図。
【符号の説明】
【0127】
1:筐体、2:放電極、3:集塵極、4:電源、5:ノズル、6:洗浄水、7:水膜、8:廃液、9:排ガス、10:排ガス、11:バルブ、12:配管、13:ポンプ、14:バルブ、15:バルブ、16:センサ、17:センサ先端部、18:保安器、19:測定装置、20:制御装置、20a:演算装置、20b:設定装置、21a:ボルト、21b:ナット、22:配管、23:タンク、24:センサ、25:測定装置、26:制御装置、27:バルブ、28:配管、29:バルブ、30:配管、31:取り付け穴、33〜34:アース回路、39:配管、41〜43:配管、50:火力発電プラント、100:湿式電気集塵器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを流下させる筐体と、この筐体の内部に設置された放電極及び集塵極と、これらの放電極及び集塵極に直流電圧を印加する電源とを備え、火力発電プラントから排出される排ガスを浄化する湿式電気集塵器において、
前記湿式電気集塵器は、この筐体の内部で洗浄水を噴霧するノズルを有しており該洗浄水を前記筐体に供給する洗浄水の供給配管と、この洗浄水の供給配管に設置された第1のバルブと、前記筐体に設置されて放電極に面した前記集塵極の表面に形成される洗浄水の水膜の電気伝導度を検出するセンサと、このセンサで検出した水膜の電気伝導度を測定する測定装置と、前記測定装置で測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第1のバルブを開閉操作する指令信号を出力して洗浄水を筐体の内部に噴霧させる制御装置とを備えていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項2】
請求項1に記載の湿式電気集塵器において、
前記集塵極は筐体の内部の軸心に配設され、前記放電極はこの集塵極と筐体の内壁との間に配設されていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項3】
請求項1に記載の湿式電気集塵器において、
前記集塵極は筐体の内部の軸心に円筒状に配設され、前記放電極はこの円筒状の集塵極の内部に配設されていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項4】
請求項1に記載の湿式電気集塵器において、
放電極に面した前記筐体の内壁は前記集塵極の機能を有していることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項5】
請求項1に記載の湿式電気集塵器において、
前記湿式電気集塵器は、前記筐体の底部に溜まった洗浄水の廃液を該筐体の外部に排出する廃液の排出配管と、この廃液の排出配管に設置された第2のバルブが設置されており、前記制御装置は前記測定装置で測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第2のバルブを開閉操作する指令信号を演算して出力し廃液を筐体の外部に排出させるように構成されていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項6】
請求項1又は請求項5に記載の湿式電気集塵器において、
前記制御装置は、電気伝導度の基準値を設定する設定装置と、前記測定装置で測定された水膜の電気伝導度の測定値と前記設定装置で設定された電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第1のバルブ又は前記第2のバルブを開閉操作する指令信号を演算して出力する演算器と、を備えていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項7】
請求項1又は請求項5に記載の湿式電気集塵器において、
前記湿式電気集塵器は、センサと測定装置との間に保安器を設置していることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項8】
請求項1又は請求項5に記載の湿式電気集塵器において、
前記湿式電気集塵器は、前記センサを前記筐体に着脱自在に設置していることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項9】
排ガスを流下させる筐体と、この筐体の内部に設置された放電極及び集塵極と、これらの放電極及び集塵極に直流電圧を印加する電源とを備え、火力発電プラントから排出される排ガスを浄化する湿式電気集塵器の運転方法において、
放電極に面した前記集塵極の表面に形成される洗浄水の水膜の電気伝導度をセンサによって測定し、この測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記筐体に洗浄水を供給する配管に設置した第1のバルブの開閉を操作して前記筐体の内部に洗浄水を噴霧させるように制御することにより、前記水膜のpHを所望の値に調節することを特徴とする湿式電気集塵器の運転方法。
【請求項10】
請求項9に記載の湿式電気集塵器の運転方法において、
前記筐体の内部に洗浄水を噴霧させるようにした制御では、この測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記筐体の内部の底部に溜まった洗浄水の廃液を該筐体の外部に排出する廃液の配管に設置した第2のバルブの開閉を操作して廃液を外部に排出させることを特徴とする湿式電気集塵器の運転方法。
【請求項1】
排ガスを流下させる筐体と、この筐体の内部に設置された放電極及び集塵極と、これらの放電極及び集塵極に直流電圧を印加する電源とを備え、火力発電プラントから排出される排ガスを浄化する湿式電気集塵器において、
前記湿式電気集塵器は、この筐体の内部で洗浄水を噴霧するノズルを有しており該洗浄水を前記筐体に供給する洗浄水の供給配管と、この洗浄水の供給配管に設置された第1のバルブと、前記筐体に設置されて放電極に面した前記集塵極の表面に形成される洗浄水の水膜の電気伝導度を検出するセンサと、このセンサで検出した水膜の電気伝導度を測定する測定装置と、前記測定装置で測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第1のバルブを開閉操作する指令信号を出力して洗浄水を筐体の内部に噴霧させる制御装置とを備えていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項2】
請求項1に記載の湿式電気集塵器において、
前記集塵極は筐体の内部の軸心に配設され、前記放電極はこの集塵極と筐体の内壁との間に配設されていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項3】
請求項1に記載の湿式電気集塵器において、
前記集塵極は筐体の内部の軸心に円筒状に配設され、前記放電極はこの円筒状の集塵極の内部に配設されていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項4】
請求項1に記載の湿式電気集塵器において、
放電極に面した前記筐体の内壁は前記集塵極の機能を有していることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項5】
請求項1に記載の湿式電気集塵器において、
前記湿式電気集塵器は、前記筐体の底部に溜まった洗浄水の廃液を該筐体の外部に排出する廃液の排出配管と、この廃液の排出配管に設置された第2のバルブが設置されており、前記制御装置は前記測定装置で測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第2のバルブを開閉操作する指令信号を演算して出力し廃液を筐体の外部に排出させるように構成されていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項6】
請求項1又は請求項5に記載の湿式電気集塵器において、
前記制御装置は、電気伝導度の基準値を設定する設定装置と、前記測定装置で測定された水膜の電気伝導度の測定値と前記設定装置で設定された電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記第1のバルブ又は前記第2のバルブを開閉操作する指令信号を演算して出力する演算器と、を備えていることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項7】
請求項1又は請求項5に記載の湿式電気集塵器において、
前記湿式電気集塵器は、センサと測定装置との間に保安器を設置していることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項8】
請求項1又は請求項5に記載の湿式電気集塵器において、
前記湿式電気集塵器は、前記センサを前記筐体に着脱自在に設置していることを特徴とする湿式電気集塵器。
【請求項9】
排ガスを流下させる筐体と、この筐体の内部に設置された放電極及び集塵極と、これらの放電極及び集塵極に直流電圧を印加する電源とを備え、火力発電プラントから排出される排ガスを浄化する湿式電気集塵器の運転方法において、
放電極に面した前記集塵極の表面に形成される洗浄水の水膜の電気伝導度をセンサによって測定し、この測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記筐体に洗浄水を供給する配管に設置した第1のバルブの開閉を操作して前記筐体の内部に洗浄水を噴霧させるように制御することにより、前記水膜のpHを所望の値に調節することを特徴とする湿式電気集塵器の運転方法。
【請求項10】
請求項9に記載の湿式電気集塵器の運転方法において、
前記筐体の内部に洗浄水を噴霧させるようにした制御では、この測定された水膜の電気伝導度の測定値と予め設定した電気伝導度の基準値との比較に基づいて前記筐体の内部の底部に溜まった洗浄水の廃液を該筐体の外部に排出する廃液の配管に設置した第2のバルブの開閉を操作して廃液を外部に排出させることを特徴とする湿式電気集塵器の運転方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−220066(P2009−220066A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69519(P2008−69519)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]