説明

湿潤材料乾燥装置及び方法

【課題】例えばバイオマス原料等の水分が多い湿潤材料を効率的に乾燥させることができる簡易な構成の湿潤材料乾燥装置を提供する。
【解決手段】湿潤材料11を流動床装置12内に供給する湿潤材料供給装置13と、前記流動床装置12の流動床14内に配設され、内部に加熱媒体15を供給し、外部からの流動化ガスGにより、前記流動床装置12内の流動材17と共に前記湿潤材料11が流動物18として流動されつつ前記湿潤材料11を乾燥する加熱装置(伝熱管)19と、前記流動床14から流動物18の一部を抜き出し、流動材17と乾燥材料20とを分離する分離装置21と、分離した流動材17を流動床装置12内に供給する流動材供給装置22とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば湿潤材料であるバイオマスを効率よく乾燥させることができる湿潤材料乾燥装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水分を含有する石炭等の湿潤材料を乾燥するには、従来流動層乾燥装置を用いている(特許文献1乃至3参照)。
従来の流動層乾燥装置は、流動層を形成する装置本体内に湿潤材料である例えば石炭を供給し、流動及び加熱用ガスとして例えば加熱空気を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−197854号公報
【特許文献2】特開2003−130545号公報
【特許文献3】特開2008−128524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、湿潤原料の大きさが数mm以上となると、流動化ガス流速を大きくとる必要があり、従来の熱風乾燥式の流動層乾燥装置の場合、大量の乾燥熱ガスを使用するので、そのエネルギーコストが増大すると共に加熱用の熱風発生装置及び送風装置が大がかりとなる、という問題がある。
【0005】
また、湿潤原料として、水分が多いバイオマス原料、特に棒状のバイオマス原料(わら、木くず滓等)である棒状湿潤材料を乾燥させる場合には、流動ガスとして、加熱空気を用いるだけでは、棒状湿潤材料の流動化がなされない、という問題もある。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑み、例えばバイオマス原料等の水分が多い湿潤材料を効率的に乾燥させることができる簡易な構成の湿潤材料乾燥装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、湿潤材料を流動床装置内に供給する湿潤材料供給装置と、前記流動床装置の流動床内に配設され、内部に加熱媒体を供給し、外部からの流動化ガスにより、前記流動床装置内の流動材と共に前記湿潤材料が流動物として流動されつつ前記湿潤材料を乾燥する加熱装置と、を具備することを特徴とする湿潤材料乾燥装置にある。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、更に、前記流動床から流動物の一部を抜き出し、流動材と乾燥材料とを分離する分離装置と、分離した流動材を流動床装置内に供給する流動材供給装置とを具備することを特徴とする湿潤材料乾燥装置にある。
【0009】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記流動材が平均粒径100〜1000μmの粒状流動材であることを特徴とする湿潤材料乾燥装置にある。
【0010】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記湿潤材料が棒状のバイオマス原料であることを特徴とする湿潤材料乾燥装置にある。
【0011】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、湿潤材料の重量に対して、流動材を5〜15重量倍添加することを特徴とする湿潤材料乾燥装置にある。
【0012】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記加熱装置の加熱が高温水蒸気であることを特徴とする湿潤材料乾燥装置にある。
【0013】
第7の発明は、流動床装置内で湿潤材料と流動材により流動床を形成し、該流動床内に配設された加熱装置により湿潤材料を乾燥させることを特徴とする湿潤材料乾燥方法にある。
【0014】
第8の発明は、第7の発明において、乾燥後に、流動床から流動物の一部を抜き出し、流動材と乾燥材料とを分離し、分離した流動材を流動床装置内に供給して再利用することを特徴とする湿潤材料乾燥方法にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流動床装置の流動床内に配設され、内部に加熱媒体を供給し、外部からの流動化ガスにより、前記流動床装置内の流動材と共に前記湿潤材料が流動物として流動されつつ前記湿潤材料を乾燥する加熱装置により湿潤材料を乾燥するので、湿潤材料を効率的に流動化させつつ乾燥することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施例に係る湿潤材料乾燥装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0018】
本発明による実施例に係る湿潤材料乾燥装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る湿潤材料乾燥装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る湿潤材料乾燥装置10は、湿潤材料11を流動床装置12内に供給する湿潤材料供給装置13と、前記流動床装置12の流動床14内に配設され、内部に加熱媒体15を供給し、外部からの流動化ガスGにより、前記流動床装置12内の流動材17と共に前記湿潤材料11が流動物18として流動されつつ前記湿潤材料11を乾燥する加熱装置(伝熱管)19と、前記流動床14から流動物18の一部を抜き出し、流動材17と乾燥材料20とを分離する分離装置21と、分離した流動材17を流動床装置12内に供給する流動材供給装置22とを具備するものである。
なお、図1中、符号23は抜き出し装置、24は流動化目皿、24aはガス供給孔、25は乾燥排ガス、26は凝縮水を各々図示する。
【0019】
流動床装置12内に、湿潤材料11を湿潤材料供給装置13から供給し、別途投入された流動材17と流動床14を形成している。
この流動床14には、外部から流動化ガスGが風箱16を介して、内部に供給され、流動材17を流動化させて湿潤材料11の流動化を促進させるようにしている。
よって、良好な流動状態とするために、湿潤材料の重量に対して、流動材を5〜15重量倍添加するようにすればよい。なお、流動材17の添加量は、湿潤材料11の湿潤の度合いと形状により左右されるので、適宜変更するようにすればよい。
【0020】
流動材17は、例えばケイ砂、石灰石、ガラスビーズ等の難反応性で平均粒径100〜1000μmの粒状流動材とするのが好ましい。
【0021】
本発明で湿潤材料11とは、例えばもみ殻、藁、木片、木材チップ等の水分含有量が多いバイオマス原料や、水分含量が多い褐炭や亜瀝青炭や泥炭の化石燃料等を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、棒状の湿潤材料の場合は、例えば数mm×10〜50mmのバイオマス原料が一部でも混合した原料である。
【0022】
また、湿潤材料11の水分含有量は、水分が30%以上の高い水分含有量のものである。
【0023】
流動床14内部に配設される加熱装置19である伝熱管内には、外部から高温蒸気(例えば150℃蒸気)を加熱媒体15として用い、高温蒸気の潜熱を利用して湿潤材料11を乾燥させるようにしている。乾燥に利用された高温蒸気は、例えば150℃の凝縮水26として、外部に排出されている。
すなわち、加熱装置(伝熱管)19内面では、高温蒸気が凝縮して液体(水分)になるので、この際に放熱される凝縮潜熱を、湿潤材料11の乾燥の加熱に有効利用することができる。加熱媒体は相変化を伴う熱媒であれば何れでも良く、例えばフロンやペンタンやアンモニア等を例示することができる。また、伝熱管の替わりに電気ヒータを設置しても良い。
【0024】
流動床14を流動化させる流動化ガスGは、装置内部で結露しない物性のガスを使用する必要がある。尚、発火しにくい湿潤材料を乾燥させる場合には、空気の使用が好ましい。また、発火し易い湿潤材料を乾燥させる場合には、例えば窒素、二酸化炭素又はこれらのガスを含む低酸素濃度の空気の使用が好ましい。
【0025】
流動床装置12内の流動床14の上部空間に形成されるフリーボード部Fから排出される乾燥排ガス25は、湿潤材料が乾燥し微粉化したものが含まれているので、別途集塵装置等により固体成分を分離し、後述する乾燥材料20に混合するようにすればよい。
【0026】
所定時間流動床14内で多量の流動材17により撹拌混合された湿潤材料11は流動床14を形成し、流動化ガスGの供給により撹拌され、加熱装置19により乾燥されて乾燥材料20となり、流動物18の一部は抜き出し装置23により、抜き出され、篩い等の分離装置21に送られる。
【0027】
分離装置21では、流動材17と乾燥材料20とに分級され、両者を分離する。
流動材17は流動材供給装置22により、再利用される。
一方、乾燥材料20は、乾燥バイオマス原料として、例えばボイラ、ガス化炉、発酵装置等の原料として利用に供される。
【0028】
この湿潤材料乾燥装置10を用いて、湿潤材料11を乾燥するには、湿潤材料11を流動床装置12内に供給して、ケイ砂等の流動材17を投入し、流動床14を形成する。次いで、風箱16から供給される流動化ガスGを流動化目皿24のガス供給孔24aを介して流動床14内に供給し、内部を流動化させつつ、配設された加熱装置19である伝熱管からの加熱により湿潤材料11を乾燥させる。
その後、所定時間乾燥に供された湿潤材料11はその水分が除去されて、乾燥材料20となり、流動物18としてその一部が抜き出し装置23から抜き出されて、分離装置21に送られる。この分離装置21で流動材17と乾燥材料20とを分離させて、乾燥製品とする。
【0029】
このように、本発明によれば、流動材17として湿潤材料11よりも最小流動化速度が小さいケイ砂等の物質を混合することにより、低い流動化ガス流速で流動化を行うことが可能となり、伝熱効率を向上することが出来、乾燥効率が向上する。
【0030】
この結果、従来のように、流動化ガスのみで、乾燥を行う場合のような、湿潤材料の流動の不具合を解消すると共に、大がかりな加熱装置を必要とせず、少ないエネルギーのみで湿潤材料の良好な乾燥が可能となる。
【0031】
本実施例では、抜き出し装置23を用いて連続して流動物18を排出するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、湿潤材料11を流動床装置12内に供給して、ケイ砂等の流動材17を投入し、流動床14を形成して、流動化ガスGで流動化させる際に、流動床14内に配設された伝熱管である加熱装置19を用いて、湿潤材料11を加熱乾燥させるバッチ式の乾燥形態であってもよい。加熱完納後は、乾燥材料20と流動材17からなる流動物18を全て抜き出し、分離装置21により流動材17と乾燥材料20とを分離するようにし、分離された流動材17は再度、流動床装置12内に投入して、次の湿潤材料11の乾燥に用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明に係る湿潤材料乾燥装置によれば、例えば棒状のバイオマス原料等の湿潤材料を効率よく乾燥させることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 湿潤材料乾燥装置
11 湿潤材料
12 流動床装置
13 湿潤材料供給装置
14 流動床
15 加熱媒体
16 風箱
17 流動材
18 流動物
19 加熱装置(伝熱管)
20 乾燥材料
21 分離装置
22 流動材供給装置
F フリーボード部
G 流動化ガス



【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤材料を流動床装置内に供給する湿潤材料供給装置と、
前記流動床装置の流動床内に配設され、内部に加熱媒体を供給し、外部からの流動化ガスにより、前記流動床装置内の流動材と共に前記湿潤材料が流動物として流動されつつ前記湿潤材料を乾燥する加熱装置と、
を具備することを特徴とする湿潤材料乾燥装置。
【請求項2】
請求項1において、
更に、前記流動床から流動物の一部を抜き出し、流動材と乾燥材料とを分離する分離装置と、
分離した流動材を流動床装置内に供給する流動材供給装置とを具備することを特徴とする湿潤材料乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記流動材が平均粒径100〜1000μmの粒状流動材であることを特徴とする湿潤材料乾燥装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記湿潤材料が棒状のバイオマス原料であることを特徴とする湿潤材料乾燥装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
湿潤材料の重量に対して、流動材を5〜15重量倍添加することを特徴とする湿潤材料乾燥装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記加熱装置の加熱が高温水蒸気であることを特徴とする湿潤材料乾燥装置。
【請求項7】
流動床装置内で湿潤材料と流動材により流動床を形成し、該流動床内に配設された加熱装置により湿潤材料を乾燥させることを特徴とする湿潤材料乾燥方法。
【請求項8】
請求項7において、
乾燥後に、流動床から流動物の一部を抜き出し、流動材と乾燥材料とを分離し、分離した流動材を流動床装置内に供給して再利用することを特徴とする湿潤材料乾燥方法。



【図1】
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【公開番号】特開2011−163628(P2011−163628A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25903(P2010−25903)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(転換要素技術開発)/自己熱再生方式による革新的バイオマス乾燥技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】