説明

溝蓋及び排水溝装置

【課題】排水溝の開放上面を覆う蓋本体と、その蓋本体の左右両側縁に沿設されて排水溝開口縁部上面にゴムパッキンを介して載置される左右一対の側壁部とを備える溝蓋において、ゴムパッキンを幅狭、小型に形成できて材料コストを節減し、また掃除中にゴムパッキンが傷付いたり剥がれたりするのを防止する。
【解決手段】側壁部Tsが、それの長手方向に沿う方向を押出し方向又は引抜き方向としたアルミ材に対する押出し成形又は引抜き成形により成形され、側壁部Tsには、側壁部Tsの下面に開口し且つその開口部Goが内部空間Gcよりも幅狭であるパッキン溝Gが、押出し成形又は引抜き成形により形成され、ゴムパッキンSは、パッキン溝Gに挿着されるパッキン基部Saと、そのパッキン基部Saの下端に連設されて側壁部Tsよりも下方に張出すパッキン先部Sbとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝蓋、特に排水溝の開放上面を覆う蓋本体と、その蓋本体の左右両側縁にそれぞれ沿設されて排水溝の幅方向両側の開口縁部上面にゴムパッキンを介してそれぞれ載置される左右一対の側壁部とを備え、排水溝の開放上面を開閉可能である溝蓋、並びにその溝蓋を用いた排水溝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水溝の開放上面を塞ぐ溝蓋において、該蓋の左右側壁部と排水溝の開口縁部との間に介在させるゴムパッキンをシート状に形成して、排水溝の開口縁部(例えばその開口縁部に設けた蓋載せ段部上面)に係止、固定させるものが知られており(例えば、特許文献1を参照)、このようなゴムパッキンは、溝蓋を弾性支持できるため、溝蓋をガタつかせずに安定支持できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−300700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが上記ゴムパッキンが固定される排水溝の開口縁部には塵埃等が滞留し易いため、その開口縁部に設けられる蓋載せ段部の上面(蓋載せ面)をゴムパッキンで覆う場合には、その蓋載せ面に塵埃が溜まり易い段差ができないように、蓋載せ面全面をゴムパッキンで覆う必要がある。このため、そのゴムパッキンを比較的幅広、大型のシート状に形成しなければならず、それだけゴムパッキンが幅広となって材料コストが嵩み、また交換作業も面倒なものとなる等の不都合がある。また、溝蓋を開けた状態では、上記蓋載せ段部の上面にゴムパッキンが剥き出しとなるため、ゴムパッキンが汚れ易く、また溝掃除の際にゴムパッキンが傷付いたり外れたりし易い問題もある。
【0005】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、従来の上記問題を解決した構造簡単な溝蓋及び排水溝装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、排水溝の開放上面を覆う蓋本体と、その蓋本体の左右両側縁にそれぞれ沿設されて排水溝の幅方向両側の開口縁部上面にゴムパッキンを介してそれぞれ載置される左右一対の側壁部とを備え、排水溝の開放上面を開閉可能である溝蓋において、少なくとも前記側壁部が、該側壁部の長手方向に沿う方向を押出し方向又は引抜き方向とした押出し成形又は引抜き成形により成形され、前記側壁部には、該側壁部の下面に開口し且つその開口部が内部空間よりも幅狭であるパッキン溝が、前記押出し成形又は引抜き成形により形成され、前記ゴムパッキンは、前記パッキン溝に挿着されるパッキン基部と、そのパッキン基部の下端に連設されて前記側壁部よりも下方に張出すパッキン先部とを備え、そのパッキン先部が前記排水溝の開口縁部上面に載置可能であることを特徴とする。
【0007】
また請求項2の発明は、前記請求項1に記載の溝蓋と、その溝蓋により開放上面が開閉可能に閉じられる排水溝とよりなる排水溝装置であって、前記溝蓋は全体がアルミ製又はアルミ合金製であり、前記溝が、横断面U字状に形成されて床面に埋設されるステンレス製の溝本体で構成され、その溝本体の幅方向両側の開口縁部には、前記溝蓋の前記左右一対の側壁部の下面を前記パッキン先部を介して載置させる蓋載せ段部がそれぞれ形成され、該パッキン先部により前記蓋載せ段部と溝蓋との直接接触が阻止されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溝蓋の少なくとも左右の側壁部が、その長手方向に沿う方向を押出し方向又は引抜き方向とした押出し成形又は引抜き成形により成形され、この側壁部には、該側壁部の下面に開口し且つその開口部が内部空間よりも幅狭であるパッキン溝が、前記押出し成形又は引抜き成形により形成され、排水溝の開口縁部上面と溝蓋との間に介装するゴムパッキンが、パッキン溝に挿着されるパッキン基部と、そのパッキン基部の下端に連設されて側壁部より下方に張出すパッキン先部とを備え、そのパッキン先部が排水溝の開口縁部上面に載置可能であるので、ゴムパッキンは、溝蓋側に装着されることとなり、従って、蓋載せ面となる排水溝の開口縁部上面をゴムパッキンで全面被覆する必要もなく、それだけゴムパッキンを幅狭、小型に形成できて、取り扱いが簡便となるばかりか材料コストも節減できる。また溝蓋を開けた状態では、排水溝の開口縁部上面を全部露出させて掃除を行い易くし、しかも掃除中にゴムパッキンが傷付いたり剥がれたりする心配はなくなる。
【0009】
また特に請求項2の発明によれば、溝蓋全体がアルミ製又はアルミ合金製であり、また排水溝が、横断面U字状に形成されて床面に埋設されるステンレス製の溝本体で構成され、その溝本体の幅方向両側の開口縁部には、前記溝蓋の前記左右一対の側壁部の下面を前記パッキン先部を介して載置させる蓋載せ段部がそれぞれ形成され、該パッキン先部により前記蓋載せ段部と溝蓋との直接接触が阻止されるので、溝蓋はその全体がアルミ製又はアルミ合金製となって大幅な軽量化が図られ、開閉作業が頗る容易となる。また溝本体はステンレス製として排水溝の耐久性を高めることができ、また異種金属となる溝本体と溝蓋との直接接触を、小型のゴムパッキンで回避できるため、電位差による腐食(即ち電食)を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例に係る排水溝装置を示す全体平面図
【図2】前記排水溝装置の横断面図(図1の2−2線拡大断面図)
【図3】溝蓋へのゴムパッキンの取付状態を示す要部拡大断面図(図2の3矢視部拡大断面図)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0012】
先ず、図1,2において、設置面としての建物の厨房等の床面Fには、直線状に延びる排水溝Pが凹設されており、その排水溝Pと、その排水溝Pの開放上面Oを開閉可能に塞ぐ溝蓋Tとにより排水溝装置が構成される。
【0013】
前記排水溝Pは、横断面U字状に形成されて床面Fに一体的に埋設されるステンレス製の溝本体1で構成されており、その溝本体1の幅方向両側の開口縁部1eには、床面Fより一段(即ち溝蓋Tの厚み分だけ)凹ませて蓋載せ段部Dがそれぞれ形成され、その蓋載せ段部Dの水平な上面が蓋載せ面Dfとなる。
【0014】
前記溝蓋Tは、排水溝Pの開放上面Oを覆う蓋本体Tmと、その蓋本体Tmの左右両側縁にそれぞれ沿設される左右一対の側壁部Tsとより構成され、それら蓋本体Tmおよび側壁部Tsは何れもアルミ製である。左右の側壁部Tsの下面は、排水溝Pの開口縁部1eの蓋載せ面DfにゴムパッキンSを介してそれぞれ載置、支持される。このように蓋載せ面Dfに溝蓋Tを載せた状態で、溝蓋Tの上面は、床面Fと面一となっていて床面の一部を構成する。
【0015】
蓋本体Tmは、従来周知のグレーチングと呼ばれる溝蓋と同様、所定間隔をおいて並列する複数の横バー2と、同じく所定間隔をおいて並列する複数の縦バー3とをカシメ手段或いは溶接手段等の結合手段を適宜用いて格子状に枠組みした平面視で矩形の枠体より構成される。そして横バー2相互間のスリットや、縦バー3相互間のスリットを通して水の通過が可能であり、また排水溝P内が溝蓋Tの上方より覗けるようになっている。
【0016】
また溝蓋Tの左右の側壁部Tsは、該側壁部Tsの長手方向に沿う方向を押出し方向又は引抜き方向としたアルミ材に対する押出し成形又は引抜き成形により横断面矩形状に成形される。そして、この側壁部Tsの底壁には、その底壁下面に開口し且つ開口部Goが内部空間Gcよりも幅狭であるパッキン溝Gが、前記押出し成形又は引抜き成形と同時に該側壁部Tsの長手方向に沿って直線状に形成される。
【0017】
また、前記側壁部TSの内側壁と蓋本体Tmの外側部との間は、溶接、カシメ又はネジ止め等の適宜の固着手段により結合される。図示例では、蓋本体Tm(特に横バー2)の外側部に一体に連設した係止鉤部2aを側壁部TSの内側壁に形成した係止孔10に係止させた後、該係止鉤部2aの自由端側をかしめることで側壁部TSが蓋本体Tmに固着される。
【0018】
前記ゴムパッキンSは、パッキン溝Gに挿着されるパッキン基部Saと、そのパッキン基部Saの下端に一体に連設されて側壁部Tsの下面よりも下方に若干張出すパッキン先部Sbとを備える。そのパッキン基部Saとパッキン先部Sbとの接続部には、パッキン溝Gの幅狭の前記開口部Goに対応した括れ部Skが形成される。
【0019】
前記パッキン先部Sbは、パッキン溝Gの開口部Goよりも幅広のシート状に形成されており、そのパッキン先部Sbのフラットな下面が排水溝Pの開口縁部1e上面、即ち蓋載せ面Dfに載置され、このようにして蓋載せ面Dfと側壁部1eの下面との間にパッキン先部Sbを挟むことにより、溝本体1と溝蓋Tとの直接接触が阻止されるようになっている。
【0020】
次の前記実施例の作用について説明する。床面Fを伝って排水溝Pの開口縁部1eまで流れてきた排水は、溝蓋Tにおける蓋本体Tmの各バー2…,3…間の隙間を通して排水溝P内に流れ混み、排水溝Pを経て他の適当な排出場所に向かって流動排出される。
【0021】
ところで溝蓋Tは、その全体がアルミ製であるため、鉄製或いはステンレス製のグレーチングと比べ大幅な軽量化が図られ、開閉作業が頗る容易となっている。一方、排水が流動する排水溝Pの溝本体1はステンレス製であるため、錆や腐食に強く、排水溝Pの耐久性が高められる。しかも溝蓋Tの左右の側壁部Tsの下面は、排水溝Pの開口縁部1eの蓋載せ面DfにゴムパッキンSを介してそれぞれ載置されているため、溝蓋TをゴムパッキンSを介して弾性支持できて溝蓋Tをガタつかせずに安定よく支持可能となるばかりか、異種金属となる溝本体1と溝蓋Tとの直接接触を、その間にゴムパッキンSを介在させることで確実に回避でき、従って、電位差による腐食(即ち電食)を防止可能である。
【0022】
また図示例では、溝蓋Tの左右の側壁部Tsが、その長手方向に沿う方向を押出し方向又は引抜き方向とした押出し成形又は引抜き成形により成形され、この側壁部Tsには、該側壁部Tsの下面に開口し且つその開口部Goが内部空間Gcよりも幅狭であるパッキン溝Gが、前記押出し成形又は引抜き成形と同時に形成されているため、このパッキン溝Gを精度よく容易に成形可能となる。
【0023】
そして、前記ゴムパッキンSが、パッキン溝Gに挿着されるパッキン基部Saと、そのパッキン基部Saの下端に一体に連設されて側壁部Tsより下方に張出すパッキン先部Sbとを備え、そのパッキン先部Sbが排水溝Pの開口縁部1eの蓋載せ面Df上に載置可能となっている。このため、ゴムパッキンえSは、溝蓋側に一体的に装着されることとなるから、従来のように排水溝Pの上記蓋載せ面DfをゴムパッキンSで全面被覆する必要はなくなり、それだけゴムパッキンSは幅狭、小型に形成可能となって、取り扱いが簡便となると共に材料コストも節減できる。その上、溝蓋Tを開けた状態では、排水溝Pの開口縁部1eの蓋載せ面Dfを全部露出させて掃除を行い易くでき、また溝蓋Tを開けて行われる掃除作業中にゴムパッキンSが傷付いたり剥がれたりする心配はなくなる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0025】
例えば、前記実施例では、溝蓋Tの左右の各側壁部Tsをアルミ材に対する押出し成形又は引抜き成形で成形するようにしたが、本発明では、各側壁部Tsを含む溝蓋の全体又は主要部分をアルミ材に対する押出し成形又は引抜き成形で成形するようにしてもよい。また請求項1の発明では、側壁部Tsの構成材料はアルミ材に限定されず、押出し成形又は引抜き成形が可能なアルミ合金、或いは強化合成樹脂材であってもよい。
【0026】
また前記実施例では、排水溝Pを建物の厨房等の床面Fに凹設したものを示したが、本発明では、排水溝を屋外の歩行面や路面に凹設してもよい。
【符号の説明】
【0027】
D・・・・蓋載せ段部
F・・・・設置面としての床面
G・・・・パッキン溝
Gc・・・パッキン溝の内部空間
Go・・・パッキン溝の開口部
O・・・・開放上面
P・・・・排水溝
S・・・・ゴムパッキン
Sa・・・パッキン基部
Sb・・・パッキン先部
T・・・・溝蓋
Tm・・・蓋本体
Ts・・・側壁部
1・・・・溝本体
1e・・・開口縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水溝(P)の開放上面(O)を覆う蓋本体(Tm)と、その蓋本体(Tm)の左右両側縁にそれぞれ沿設されて排水溝(P)の幅方向両側の開口縁部(1e)上面にゴムパッキン(S)を介してそれぞれ載置される左右一対の側壁部(Ts)とを備え、排水溝(P)の開放上面(O)を開閉可能である溝蓋において、
少なくとも前記側壁部(Ts)が、該側壁部(Ts)の長手方向に沿う方向を押出し方向又は引抜き方向とした押出し成形又は引抜き成形により成形され、
前記側壁部(Ts)には、該側壁部(Ts)の下面に開口し且つその開口部(Go)が内部空間(Gc)よりも幅狭であるパッキン溝(G)が、前記押出し成形又は引抜き成形により形成され、
前記ゴムパッキン(S)は、前記パッキン溝(G)に挿着されるパッキン基部(Sa)と、そのパッキン基部(Sa)の下端に連設されて前記側壁部(Ts)よりも下方に張出すパッキン先部(Sb)とを備え、
そのパッキン先部(Sb)が前記排水溝(P)の開口縁部(1e)上面に載置可能であることを特徴とする溝蓋。
【請求項2】
請求項1に記載の溝蓋(T)と、その溝蓋(T)により開放上面(O)が開閉可能に閉じられる排水溝(P)とよりなる排水溝装置であって、
前記溝蓋(T)は全体がアルミ製又はアルミ合金製であり、前記排水溝(P)が、横断面U字状に形成されて設置面(F)に埋設されるステンレス製の溝本体(1)で構成され、その溝本体(1)の幅方向両側の開口縁部(1e)には、前記溝蓋(T)の前記左右一対の側壁部(Ts)の下面を前記パッキン先部(Sb)を介して載置させる蓋載せ段部(D)がそれぞれ形成され、該パッキン先部(Sb)により前記蓋載せ段部(D)と溝蓋(T)との直接接触が阻止されるようにしたことを特徴とする、排水溝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−157756(P2011−157756A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21320(P2010−21320)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(390017813)株式会社日本ピット (17)
【Fターム(参考)】