説明

溶存酸素センサ等の液センサ用フローセル及び水質分析装置

【課題】DOセンサに供給される測定対象液の流量を大きくすることによって、DOセンサのセンサ面近傍にある測定対象液の置換速度を大きくして、液センサにおける流量影響を低減する
【解決手段】DOセンサに測定対象液を供給するDOセンサ用フローセル3であって、DOセンサを収容し、内部に測定対象液を供給するための供給ポートP1を有するフローセル本体31と、フローセル本体31に設けられ、DOセンサに対向する開口を形成し、供給ポートP1に連通する絞り構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶存酸素センサ等の液センサに測定対象液を供給する液センサ用フローセル及び例えば海洋、河川・湖沼、ダム、井戸水・地下水、都市下水、工場下水、農業用水、養殖場などの水質を分析するための水質分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水質分析装置は、特許文献1に示すように、溶存酸素センサとして、隔膜形ガルバニ電池式又は隔膜形ポーラログラフ式の隔膜電極法のものが用いられている。
【0003】
この溶存酸素センサは、筒状をなすケーシングの先端部に酸素を透過させる酸素透過膜を設け、当該酸素透過膜によって外部と区画された室を形成し、当該室内に内部液(電解液)を収容するとともに、この内部液中に正極(作用極)及び負極(対極)を配置することにより構成されている。そして、測定対象液中に溶存する酸素が、外部に露出する酸素透過膜(以下、センサ面ともいう。)を通過し、正極と反応して還元される。このとき、溶存酸素濃度に比例した還元電流が生じ、当該還元電流を測定することにより、測定対象液中の溶存酸素濃度を測定する。
【0004】
しかしながら、隔膜電極法の溶存酸素センサは、センサ面近傍(測定領域)を通過する測定対象液の流量によって、そのセンサ感度が影響されるという問題がある。具体的には、測定対象液の流量が小さければ小さいほどセンサ感度が悪くなり、測定対象液の流量が所定値以上となると、センサ感度がほぼ一定となるという特性がある。
【0005】
つまり、測定対象液の流量が小さく、酸素透過膜により溶存酸素が取り除かれた測定対象液が新しい測定対象液に置換されないまま滞留すると、正極への溶存酸素の供給スピードが、正極における溶存酸素の反応スピードに追いつかなくなり、正極において生じる還元電流が小さくなり、溶存酸素センサのセンサ感度が悪くなるという問題がある。これは、溶存酸素センサが大きくなればなるほど、センサ面近傍の測定対象液の置換に時間がかかることから、一層顕著な問題となる。
【0006】
このようにセンサ面近傍における測定対象液の置換だけを考えると、単純に溶存酸素センサのセンサ面(酸素交換膜)の面積を小さくすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、センサ面の面積を小さくしてしまうと、内部液によって生じる例えば塩化銀等の不溶性物質が作用極及び酸素透過膜との間に入り込んで、酸素透過膜を通過した酸素が正極に移動することを妨げてしまうという問題がある。そうすると、正極において生じる還元電流が小さくなってしまい、溶存酸素センサの出力が小さくなってしまい、さらにはSN比が悪くなってしまうという問題がある。また、測定対象液が汚水等の場合には、センサ面に異物が付着してセンサ面の面積を狭めてしまい、測定対象液からの溶存酸素の透過を妨げてしまうという問題がある。
【0008】
また、溶存酸素センサを収容する専用のフローセルを設けて、フローセル内に一定流量の測定対象液を供給して、溶存酸素センサにより測定対象液中の溶存酸素を測定するものが考えられている。このフローセルは、有底筒状のフローセル本体と、当該フローセル本体の側壁における底壁側に設けられた供給ポートと、フローセル本体の側壁における開口側に設けられた排出ポートとからなる。供給ポートには、先端部が例えば湖沼などに浸漬された供給ホースが接続され、当該供給ホース上には、ポンプが設けられている。
【0009】
しかしながら、フローセル本体内に一定流量の測定対象液を供給するだけであり、溶存酸素センサのセンサ面における測定対象液の流量を考慮したものではなく、溶存酸素センサの近傍において測定対象液が滞留して流量影響を受けてしまい、精度良く測定対象液の溶存酸素を測定することができないという問題がある。
【特許文献1】特開2000−97930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、液センサの測定領域にある測定対象液の置換を早く行い、液センサにおける流量影響を低減することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明の液センサ用フローセルは、液センサに対して測定対象液を供給する液センサ用フローセルであって、前記液センサを収容し、内部に測定対象液を供給するための供給ポートを有するフローセル本体と、前記フローセル本体内に設けられ、前記液センサに対向する開口を形成し、前記供給ポートに連通する絞り構造と、を具備することを特徴とする。ここで「供給ポートに連通する」とは、供給ポートに直接接続されて連通するだけでなく、例えば配管等の他の部材を介して接続されて連通すること又は空間を介して連通することを含む。
【0012】
このようなものであれば、液センサに対向して設けられた開口から測定対象液が液センサに流入するので、液センサの測定領域にある測定対象液の置換を早く行うことができ、液センサの測定対象液の流量影響を低減することができる。したがって、液センサにより精度良く測定対象液を測定することができる。
【0013】
既存のフローセル本体を有効に活用し、また製造コストを安価にするとともに、絞り構造を簡単に構成できるようにするためには、前記絞り構造が、前記フローセル本体内に設けられ、前記液センサに対向する絞り孔を有する仕切り板から形成されることが望ましい。このとき、絞り孔が液センサに対向して設けられる開口を形成する。
【0014】
液センサの具体的な実施の態様としては、溶存酸素センサであることが望ましい。溶存酸素センサは、酸素透過膜により当該膜の近傍にある測定対象液中の溶存酸素を測定するものであり、測定対象液の流量が小さければ小さいほどセンサ感度が悪くなり、測定対象液の流量が所定値以上となると、センサ感度がほぼ一定となるという特性がある。
【0015】
本発明の効果を顕著にする絞り孔の配置の具体的な実施の態様としては、液センサの測定対象液の測定を行う測定領域に対向して設けられることが望ましく、溶存酸素センサの場合には、センサ面としての酸素透過膜に対向して設けられることが望ましい。
【0016】
また、本発明に係る水質分析装置は、溶存酸素センサを有するセンサ本体と、当該センサ本体に設けられ、前記溶存酸素センサに一定流量の測定対象液を供給するフローセルとを備える水質分析装置であって、前記フローセルが、前記溶存酸素センサを収容するように前記センサ本体に取り付けられ、測定対象液を供給するための供給ポート及び測定対象液を排出するための排出ポートを有するフローセル本体と、前記フローセル本体に設けられ、前記供給ポート及び排出ポートを仕切るとともに、前記溶存酸素センサのセンサ面に対向する絞り孔を有する仕切り板と、を具備することを特徴とする。
【0017】
フローセルの装着時における溶存酸素センサ及び絞り孔との位置決めを簡単且つ確実にして、溶存酸素センサのセンサ面に確実に測定対象液が流入するようにするためには、前記フローセルを前記センサ本体に取り付けるとともに、取り付けられた状態において、前記溶存酸素センサと前記絞り孔との位置決めを行う固定位置決め機構を備えていることが望ましい。
【0018】
また、センサ本体がさらに少なくとも導電率センサ又は濁度センサを有する場合には、当該センサの構造上、測定対象液が循環しにくい場合がある。このとき、導電率センサ又は濁度センサに測定対象液を循環させるためには、前記仕切り板が、前記導電率センサに対向する導電率センサ用絞り孔又は前記濁度センサに対向する濁度センサ用絞り孔を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明によれば、液センサの測定領域にある測定対象液の置換速度を大きくし、液センサにおける流量影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図1は本実施形態の水質分析装置100の構成を示す模式的断面図である。
【0021】
<装置構成>
本実施形態に係る水質分析装置100は、pH、導電率(Conductivity)、溶存酸素(Dissolved Oxygen)濃度、濁度(Turbidity)及び水温などの測定項目を同時に連続測定するものであり、図1に示すように、水質測定用の複数の液センサ(液体用センサ)を備えたセンサ本体2と、当該センサ本体2に固定され、前記液センサに所定値以上の流量の測定対象液を供給するフローセル3と、センサ本体2に防水タイプの電気ケーブルCAを介して電気的に接続された計器本体4と、を備えている。そして、例えば海水の水質分析を行う場合には、海から吸い上げた海水をフローセル3内に循環させて行う。
【0022】
まず、センサ本体2及び計器本体4について説明する。
【0023】
センサ本体2は、図1に示すように、概略回転体形状をなし、複数種類の液センサが取り付けられる取付ブロック体21と、電源、メモリ機能部を有する演算部、演算された水質の測定データ等を時系列的に記録するデータロガーを内蔵する演算機器等収容体22とを備える。なお、取付ブロック体21と演算機器等収容体22とは水密ケースを構成する。
【0024】
具体的に取付ブロック体21の下端部には、図1に示すように、隔膜形ポーラログラフ法を用いた溶存酸素センサ5、透過散乱法を用いた濁度センサ6、例えば交流4極法を用いた導電率センサ7及び温度センサ(図示しない)等が同一方向を向くように設けられている。つまり各センサは、その中心軸方向が略一致する方向に下端部に設けられている。その他、図示しないが、pH測定用のpHガラス電極及び高濃度(3.3mol/L)のKClの内部液を用いた比較電極で構成されるpHセンサ、前記比較電極を用いて酸化還元電位を測定するための酸化還元電極等を設けても良い。
【0025】
なお、各センサの測定原理は上記に限られず、他の測定原理を用いたものであっても良い。また、溶存酸素センサ5等取付ブロック体21に設けられたセンサ又は電極は、一般に使用に連れて劣化又は不測の破損を伴うことを考慮して、取付ブロック体21に対して交換可能なカードリッジ式になっており、交換が容易である。
【0026】
計器本体4は、前記センサ本体2からの測定データ等を表示する表示部、電源キー、機能キー、測定の開始・終了キー、校正キー、セレクトキー、アップダウンキー等を備えている。そして、フローセル3内に測定対象液を循環させると、各測定センサのからの出力に基づく測定データが前記メモリ機能部に記録され、且つ、その測定値が表示部に表示される。
【0027】
次にフローセル3について詳細に説明する。
【0028】
フローセル3は、図1及び図2に示すように、センサ本体2に着脱可能に取り付けられて溶存酸素センサ5、濁度センサ6及び導電率センサ7に一定流量の測定対象液を供給するものであり、センサ本体2に取り付けられるフローセル本体31と、当該フローセル本体31内に設けられる絞り構造とを備える。また、センサ本体2に取りつけられた状態のフローセル3の内容積は例えば400mlである。
【0029】
フローセル本体31は、有底筒状でありセンサ本体2(具体的には取付ブロック体21)の外面と略同一の開口を有する概略回転体形状を成すものである。具体的な構成としては、両端が開放された円筒部材311と、当該円筒部材311の一端部を閉塞する下部材312と、当該円筒部材311の他端部に設けられ、センサ本体2に取り付けるための上部材313と、を備える。円筒部材311、下部材312及び上部材313はいずれも、塩化ビニル等の合成樹脂により形成されており、円筒部材311は、センサ5、6、7及び後述する絞り孔321、322、323の位置関係を確認等するために透明であり、下部材312及び上部材313は、外部からの光を遮光可能な材料を用いて形成され、あるいは、黒色に着色される等、外部からの光を遮光するための遮光処理が施されている。そして、フローセル本体31の開口部、具体的には上部材313により形成される開口部が、センサ本体2(具体的には取付ブロック体21)の外面に固定されることにより、取付ブロック体21に設けられた溶存酸素センサ5、濁度センサ6及び導電率センサ7を含む測定センサを内部に収容する。
【0030】
また、フローセル本体31の側壁における底部側(具体的には下部材312の側壁)には、内部に測定対象液を供給する供給ポートP1が、その側壁における開口部側(具体的には上部材313の側壁)には、内部から測定対象液を排出する排出ポートP2が設けられている。これら供給ポートP1及び排出ポートP2は、フローセル本体31の側壁に略垂直に設けられるとともに、互いに同一方向を向いて設けられている。供給ポートP1には、先端部が例えば湖沼など水中に浸漬された供給ホースH1が接続される。当該供給ホースH1上には、ポンプが設けられおり、水中から吸い上げられた測定対象液が供給ポートP1を介してフローセル本体31内に供給する。排出ポートP2は、先端部が湖沼など水中に浸漬された排出ホースH2が設けられている。
【0031】
このような構成により、ポンプにより水中から吸い上げられた測定対象液は、供給ポートP1を介してフローセル本体31内に供給され、溶存酸素センサ5等により各成分が測定され、測定後、排出ポートP2を介して排出ホースH2により湖沼に排出される。
【0032】
絞り構造は、仕切り板32により構成され、当該仕切り板32は、フローセル本体31の内部に設けられ、当該フローセル本体31内において、供給ポートP1及び排出ポートP2を仕切る平板状をなすものである。つまり、仕切り板32は、フローセル3がセンサ本体2に取り付けられた状態において、フローセル3及びセンサ本体2により形成される空間を、供給ポートP1に連通する空間と、排出ポートP2に連通する空間に分ける。より詳細には、センサ本体2及びフローセル本体31により形成される空間を、供給ポートP1側の空間であって測定センサが含まれない空間と、排出ポートP2側の空間であって測定センサ(少なくとも溶存酸素センサ5、濁度センサ6及び導電率センサ7)を含む空間に二分する。また、仕切り板32は、前記フローセル本体31同様、塩化ビニル等の合成樹脂により形成されており、遮光処理が施され、あるいは遮光可能な材料から形成されている。本実施形態の仕切り板32は、円筒部材311及び下部材312の間に設けられ、具体的には、円筒部材311に下部材312を固定する際に円筒部材311及び下部材312に挟持される。
【0033】
そして仕切り板32には、複数の絞り孔321、322、323が形成されている。特に図1に示すように、それぞれ溶存酸素センサ5、濁度センサ6及び導電率センサ7に対向して設けられている。この絞り孔321、322、323は、溶存酸素センサ5、濁度センサ6及び導電率センサ7の各測定領域における測定対象液の置換速度を大きくするものである。
【0034】
溶存酸素センサ用絞り孔321は、溶存酸素センサ5のセンサ面51(具体的には酸素透過膜)に対向して形成されている。具体的には、当該絞り孔321の開口方向が溶存酸素センサ5のセンサ面51を向くように形成され、絞り孔321の中心軸が溶存酸素センサ5の中心軸と略一致するように形成されている。これにより、溶存酸素センサ用絞り孔321を通過した測定対象液は、溶存酸素センサ5のセンサ面51に対して略垂直に流入することになる。つまり、溶存酸素センサ用絞り孔321を通過した測定対象液は、溶存酸素センサ5により溶存酸素が測定される測定領域も対して略垂直に流入することになる。
【0035】
濁度センサ用絞り孔322は、濁度センサ6の測定セル61の内部空間に対向して形成されている。より詳細には、絞り孔322の中心軸が測定セル61の中心軸と略一致するように形成されている。これにより、濁度センサ用絞り孔322を通過した測定対象液は、測定領域である測定セル61内に流入しやすくなる。なお、測定セル61の側周には、光源62及び透過光検出器63及び図示しない散乱光検出器が設けられている。
【0036】
また、導電率センサ用絞り孔323は、導電率センサ7の電圧印加極71及び電圧検出極72に対向して形成されている。より詳細には、それら電圧印加極71及び電圧検出極72を収容するケーシング73の内部空間に対向して形成されている。これにより、導電率センサ用絞り孔323を通過した測定対象液は、測定領域であるケーシング73内に流入しやすくなる。なお、濁度センサ6の測定セル及び導電率センサ7のケーシングはいずれも、フローセル本体31の底部側を向いて開口している。
【0037】
また、溶存酸素センサ用絞り孔321、濁度センサ用絞り孔322及び導電率センサ用絞り孔323は、同一形状としても良いし、異なる形状としても良い。
【0038】
さらに本実施形態の水質分析装置100は、図1に示すように、フローセル3をセンサ本体2に取り付けるとともに、取り付けられた状態において、溶存酸素センサ5と溶存酸素センサ用絞り孔321との位置決めを行う位置決め機構8を備えている。この位置決め機構8は、センサ本体2又はフローセル3の一方に設けられた係合部81と、センサ本体2又はフローセル3の他方に設けられた被係合部82とからなる。
【0039】
本実施形態の被係合部82は、センサ本体2の取付ブロック体21の外側周面に設けられた複数の係合ピンであり、係合部81は、図2に示すように、フローセル本体31(具体的には上部材313)の内側周面に設けられた複数の概略L字形状をなす係合溝である。このような構成により、各係合ピン82に対して各係合溝81が嵌るようにして、係合溝81に沿ってセンサ本体2にフローセル本体31を挿入し、フローセル本体31を所定位置まで挿入した後、係合溝81に沿って回転させることにより、係合溝81と係合ピン82とが係止して、センサ本体2に対してフローセル本体31が固定されるとともに、溶存酸素センサ5、濁度センサ6及び導電率センサ7それぞれに対して絞り孔321、322、323が位置決めされる。また、係合溝81が概略L字形状をなすことにより、フローセル本体31内に測定対象液を供給した際の内部圧力の増大により取付ブロック21からフローセル本体31が抜脱してしまうことを防止することができる。
【0040】
また、フローセル本体31の開口部内周面には、取り付けられた状態において、センサ本体2及びフローセル本体31を液密にシールするOリング等のシール部材が設けられている。
【0041】
次に、フローセルへの流量に対する、本実施形態のフローセルを用いた場合の溶存酸素センサのセンサ感度(DO指示値)と、従来のフローセルを用いた場合の溶存酸素センサのセンサ感度(DO指示値)とを、図3に示す。なお、図3は、溶存酸素センサのセンサ感度が実質的に同一となる500ml/minを基準にした、流量100〜500ml/minの指示値の変化量を示している。この図から分かるように、従来のフローセルを用いた溶存酸素センサの指示値変化量に比べて、本実施形態のフローセルを用いた溶存酸素センサの指示値変化量が格段に小さくなっていることが分かる。つまり、本実施形態のフローセルにおいては、溶存酸素用絞り孔によって測定対象液を溶存酸素センサに向かって流れるようにし、測定領域における測定対象液の置換速度を大きくすることにより、溶存酸素センサにおいて、測定領域への流量が大きい場合のセンサ感度と同等のセンサ感度を実現することができる。例えば供給ポートからフローセル本体内に供給される流量が100ml/minであっても、溶存酸素センサは、溶存酸素用絞り孔により、流量が約380ml/minの場合と同等のセンサ感度により測定することが可能である。
【0042】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る水質分析装置100によれば、供給ポートP1から供給された測定対象液が溶存酸素用絞り孔321によって流量を増大させることができるとともに、溶存酸素センサ用絞り孔321から溶存酸素センサ5に向かって流入する測定対象液がセンサ面に略垂直に流入することになり、センサ面近傍にある測定対象液の置換速度を大きくすることができ、溶存酸素センサ5のセンサ感度が一定となる領域において、測定対象液を測定することができる。したがって、溶存酸素センサ5により精度良く測定対象液を測定することができる。
【0043】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0044】
例えば、センサ本体は、フローセル3を取り付けること無く、それ単体を浸漬させて用いることができる。このとき、測定センサを保護するために保護カバーを装着しても良い。
【0045】
また、前記実施形態では、溶存酸素センサ用絞り孔、導電率センサ用絞り孔及び濁度センサ用絞り孔を形成したものであったが、溶存酸素センサ用絞り孔のみを形成しても良いし、その他のセンサ用に絞り孔を形成するようにしても良い。
【0046】
さらに、前記実施形態の溶存酸素センサ用絞り孔は、溶存酸素センサ5のセンサ面に対して略垂直に流入するように形成されているが、その他、測定対象液が直接センサ面に当たれば、その設置場所は特に限定されない。
【0047】
さらに、前記実施形態においては、既存のフローセル3を有効活用して、構成を簡単にするとともに、製造コストを安くするために、既存のフローセルの構成に仕切り板32を付加して絞り構造を構成しているが、その他、供給ポートP1から供給される測定対象液をフローセル本体の底面部に形成した内部流路から、当該底面部上面に形成した開口により溶存酸素センサに供給するようにしても良い。このとき、開口は、溶存酸素センサに対向して形成されている。
【0048】
その上、前記実施形態の仕切り板は平板状をなすものであったが、フローセル本体の底部に対するセンサ先端部の高さが異なることから、それぞれのセンサ先端部に応じて絞り孔が位置するように、段部を有する凹凸状をなすものであっても良い。
【0049】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る水質分析装置の構成を示す模式的断面図。
【図2】同実施形態のフローセルの模式的断面図。
【図3】同実施形態のフローセルを用いた場合と従来のフローセルを用いた場合とのセンサ感度の比較結果を示す図。
【符号の説明】
【0051】
100・・・水質分析装置
2 ・・・センサ本体
3 ・・・フローセル
31 ・・・フローセル本体
P1 ・・・供給ポート
P2 ・・・排出ポート
32 ・・・仕切り板(絞り構造)
321・・・溶存酸素センサ用絞り孔
322・・・導電率センサ用絞り孔
323・・・濁度センサ用絞り孔
5 ・・・溶存酸素センサ(液センサ)
51 ・・・センサ面
6 ・・・濁度センサ
7 ・・・導電率センサ
8 ・・・固定位置決め機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液センサに対して測定対象液を供給する液センサ用フローセルであって、
前記液センサを収容し、内部に測定対象液を供給するための供給ポートを有するフローセル本体と、
前記フローセル本体内に設けられ、前記液センサに対向する開口を形成し、前記供給ポートに連通する絞り構造と、を具備する液センサ用フローセル。
【請求項2】
前記絞り構造が、前記フローセル本体内に設けられ、前記液センサに対向する絞り孔を有する仕切り板から形成される請求項1記載の液センサ用フローセル。
【請求項3】
前記液センサが、溶存酸素センサである請求項1又は2記載の液センサ用フローセル。
【請求項4】
溶存酸素センサを有するセンサ本体と、当該センサ本体に設けられ、前記溶存酸素センサに測定対象液を供給するフローセルとを備える水質分析装置であって、
前記フローセルが、
前記溶存酸素センサを収容するように前記センサ本体に取り付けられ、測定対象液を供給するための供給ポート及び測定対象液を排出するための排出ポートを有するフローセル本体と、
前記フローセル本体に設けられ、前記供給ポート及び排出ポートを仕切るとともに、前記溶存酸素センサに対向する絞り孔を有する仕切り板と、を具備する水質分析装置。
【請求項5】
前記フローセルを前記センサ本体に取り付けるとともに、取り付けられた状態において、前記溶存酸素センサと前記絞り孔位置決めを行う固定位置決め機構を備えている請求項4記載の水質分析装置。
【請求項6】
前記センサ本体が、少なくとも導電率センサ又は濁度センサをさらに有し、
前記仕切り板が、前記導電率センサに対向する導電率センサ用絞り孔及び前記濁度センサに対向する濁度センサ用絞り孔を有する請求項4又は5記載の水質分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−60395(P2010−60395A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225354(P2008−225354)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】