説明

溶存酸素濃度管理システム

【課題】 密閉配管流路の溶存酸素濃度を連続的に検出することである。
【解決手段】密閉配管流路1と、密閉配管流路1に両端が接続され給水ポンプ2および脱気装置3を設けた脱気処理流路4とを備える溶存酸素濃度管理システムにおいて、脱気処理流路4の被脱気水の溶存酸素濃度を検出するセンサ22と、脱気装置3と並列に接続されるバイパス流路5と、脱気装置3およびバイパス流路5への被脱気水の流れを制御する流れ制御弁手段6,8と、脱気装置3の運転を制御するとともに、脱気装置3の運転停止時にバイパス流路5へ被脱気水を流すように流れ制御弁手段6,8を制御する制御器9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、密閉配管流路の溶存酸素濃度を管理する溶存酸素濃度管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
密閉配管流路と、この密閉配管流路に両端が接続され給水ポンプおよび脱気装置を設けた脱気処理流路とを備える脱気システムは、特許文献1により公知である。
【0003】
この従来の脱気システムにおいて、脱気処理流路に溶存酸素濃度を検出するセンサを設けて、密閉配管流路の溶存酸素濃度を検出することが考えられる。その場合、脱気装置を連続運転するときは、問題無く、溶存酸素濃度を連続的に検出することができるが、省エネを目的として脱気装置の運転を停止する場合には、溶存酸素濃度を連続的に検出することは、困難である。また、溶存酸素濃度を連続的に検出することが困難であるが故に、密閉配管流路の溶存酸素濃度に基づき脱気装置の運転を制御することも困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2921422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる課題は、密閉配管流路の溶存酸素濃度を連続的に検出することであり、副課題は、密閉配管流路の溶存酸素濃度を連続的に報知することであり、密閉配管流路の溶存酸素濃度に基づき脱気装置の運転を制御可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、密閉配管流路と、この密閉配管流路に両端が接続され給水ポンプおよび脱気装置を設けた脱気処理流路とを備える溶存酸素濃度管理システムにおいて、前記脱気処理流路の被脱気水の溶存酸素濃度を検出するセンサと、前記脱気装置と並列に接続されるバイパス流路と、前記脱気装置および前記バイパス流路への被脱気水の流れを制御する流れ制御弁手段と、前記脱気装置の運転を制御するとともに、前記脱気装置の運転停止時に前記バイパス流路へ被脱気水を流すように前記流れ制御弁手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記脱気装置の運転停止時にも前記センサへ被脱気水を流すことができ、前記センサにより前記密閉配管流路の溶存酸素濃度を連続的に検出することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記センサの出力を報知する報知手段を備え、前記制御手段は、前記センサの検出値を入力して、前記検出値に基づく溶存酸素濃度を前記報知手段にて報知することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、前記密閉配管流路の溶存酸素濃度を連続的に報知することができるという効果を奏する。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記制御手段は
、前記センサの検出値が第一設定値以上か、または前記脱気装置の運転停止時から設定時間が経過すると前記脱気装置を運転し、前記検出値が前記第一設定値より低い第二設定値以下となると前記脱気装置の運転を停止することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加えて、前記密閉配管流路の溶存酸素濃度を適確に検出して、前記脱気装置の運転を制御し、前記密閉配管流路の溶存酸素濃度を適確に管理することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、前記密閉配管流路の溶存酸素濃度を連続的に検出することが可能な溶存酸素濃度管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係る溶存酸素濃度管理システムの実施例1の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】同実施例1の制御手順の要部を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、この発明の溶存酸素濃度管理システムの実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、密閉配管流路の溶存酸素濃度を管理する溶存酸素濃度管理システムに好適に実施される。
【0015】
この実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態は、密閉配管流路と、この密閉配管流路に両端が接続され、給水ポンプ(循環ポンプと称することもできる。)および脱気装置を設けた脱気処理流路とを備える溶存酸素濃度管理システムである。
【0016】
この実施の形態においては、さらに、前記脱気処理流路の被脱気水の溶存酸素濃度(以下、DOと称する。)を検出するセンサと、前記脱気装置と並列に接続されるバイパス流路と、前記脱気装置および前記バイパス流路への被脱気水の流れを制御する流れ制御弁手段と、前記脱気装置の運転を制御するとともに、前記脱気装置の運転時に前記脱気装置へ被脱気水を流すとともに、前記脱気装置の運転停止時に前記バイパス流路へ被脱気水を流すように前記流れ制御弁手段を制御する制御手段とを備えている。
【0017】
この実施の形態の溶存酸素濃度管理システムにおいては、前記脱気装置の運転中は、前記密閉配管流路からの被脱気水が前記脱気装置に供給され、前記脱気装置の運転停止(以下、単に停止という。)中は、前記脱気装置への被脱気水の供給が停止され、前記バイパス流路へ被脱気水が供給される。このバイパス流路への被脱気水の流れを形成するのは、前記脱気装置停止時においても前記密閉配管流路から前記センサのDO検出部への被脱気水の流れを形成するためである。こうして、前記センサは、被脱気水のDOを連続的に検出する。なお、前記脱気装置停止時にバイパス流路に被脱気水を流さなくても前記センサによりDOの検出は可能であるが、被脱気水の流れが停止した状態での検出であるので、前記密閉配管流路の水のDOを測定していることにならない。なお、前記脱気装置の運転中にバイパス流路に僅かな量の被脱気水を流すように構成することもできる。
【0018】
前記センサのDOの連続検出値は、この実施の形態おいては、好ましくは、つぎの3つの態様で利用される。第一の態様は、前記センサの出力を報知する報知手段を備え、前記制御手段は、前記センサの検出値を入力して、前記検出値に基づく溶存酸素濃度を前記報知手段にて報知する態様である。この第一の態様では、前記検出値は、前記制御手段により、溶存酸素濃度に変換して、前記報知手段にて報知する。
【0019】
この第一の態様によれば、システムの管理者やメンテナンス員は、前記密閉配管流路を流れる水のDO値を前記脱気装置の運転、停止に関係なく前記報知手段により正確に知ることができ、システムの管理やメンテナンスに活用することができる。
【0020】
第二の態様は、前記制御手段により、前記センサの検出値が第一設定値以上か、または、前記脱気装置の運転停止時から設定時間が経過すると前記脱気装置を運転し、前記検出値が前記第一設定値より低い第二設定値以下となると前記脱気装置の運転を停止する態様である。
【0021】
この第二の態様おいては、前記制御手段は、前記センサの検出値が第一設定値以上となると、前記密閉配管流路内の水のDOが高くなった(悪化した)と判定して、前記脱気装置の運転をする。そして、前記検出値が前記第一設定値より低い第二設定値以下となると前記脱気装置の運転を停止する。こうして、前記センサの検出値に基づき、自動的に、かつ前記密閉配管流路内の水のDOが所定値に収まるように、前記脱気装置の運転を制御することができる。
【0022】
また、前記制御手段は、前記脱気装置の運転停止時から設定時間が経過すると前記脱気装置を運転する。長期に亘り、前記脱気装置が停止されると、前記脱気装置内で酸素の再溶存が発生し、DOが上昇するが、前記設定時間経過ごとに前記脱気装置が運転されるので、DOの過度の上昇を防止できる。この脱気装置の運転は、前記検出値が前記第一設定値より低い第二設定値以下となると停止される。
【0023】
第三の態様は、前記第一の態様の制御と前記第二の態様の制御とを組合せて行うものである。
【0024】
この発明の実施の形態は、前記第一〜第三の実施の形態に限定されるものではなく、前記センサの検出値データを記憶手段に記憶しておき、必要なときに他の管理装置へ前記検出値データを送信して前記管理装置で利用する形態のものを含む。
【0025】
ここで、この発明の実施の形態の溶存酸素濃度管理システムを構成する構成要素を説明する。前記密閉配管流路は、例えば半導体製造装置の冷却水循環回路とするが、これに限定されるものではない。
【0026】
前記給水ポンプは、前記密閉配管流路を循環する水の一部を吸引して、前記脱気装置へおよび前記バイパス流路へ供給し、前記密閉配管流路へ戻すことができるポンプであれば良く、種類を問わない。
【0027】
前記脱気装置は、好ましくは、低DO(たとえば、20μg/L程度)の脱気水を生成する膜脱気装置とするが、これに限定されるものではなく、脱気膜を用いた膜脱気装置以外の脱気装置とすることができる。前記低DO脱気装置としては、特開平5−103908号公報に示される脱気装置を採用することができる。膜脱気装置を用いる場合、真空脱気のための水封式真空ポンプとこの水封式真空ポンプの封水を冷却するためのチラーを備えて前記脱気装置を構成することができる。前記脱気装置は、1台だけでなく、互いに並列接続される複数台の脱気装置により構成することができる。
【0028】
前記センサは、特定の種類のセンサに限定されないが、前記のような低DO値を検出でき、好ましくは、センサの通水量を小流量(200〜300cc/min)でDOが検出可能なものとする。そして、好ましくは、前記センサのサンプリング水を前記脱気処理流路外へ排水しないように前記給水ポンプと並列に検出流路を構成する。
【0029】
前記流れ制御弁手段(切換手段と称することもできる。)は、好ましくは、前記密閉配管流路の被脱気水を前記脱気装置側と前記バイパス流路側とに選択的に切換える弁によって構成する。この弁としては、複数の弁により構成してもよいし、単一の三方切換弁によって構成してもよい。なお、前記脱気装置の運転時に前記バイパス流路に被脱気水の一部を流す場合は、前記バイパス流路に設ける弁を開度が調整可能な弁とすることができる。
【0030】
前記報知手段は、好ましくは、表示器とするが、前記検出DO値を紙などにプリントアウトする印刷手段や音声による報知手段とすることができる。
【実施例1】
【0031】
つぎに、この発明の実施1の溶存酸素濃度管理システムについて図面に基づいて詳細に説明する。図1は、同実施例1の構成を示す概略的な説明図であり、図2は、同実施例1の制御手順の要部を説明するフローチャート図である。
【0032】
この実施の実施1の溶存酸素濃度管理システムは、密閉配管流路(流路は、ラインと称することができる。)1と、給水ポンプ2および脱気装置3を設けた脱気処理流路4と、前記脱気装置3と並列接続されるバイパス流路5とを主要部として備えている。前記脱気処理流路4は、その両端が前記密閉配管流路1と接続されている。前記密閉配管流路1には、半導体製造装置(図示省略)の冷却水が循環されている。
【0033】
前記脱気処理流路4には、被脱気水の溶存酸素濃度(以下、DOと称する。)を検出するセンサ5と、被脱気水の流れを、前記脱気装置3と前記バイパス流路5とに選択的に切換える流れ制御弁手段としての入口側第一電磁開閉弁(以下、単に入口側第一電磁弁という。)6,出口側第一電磁開閉弁(以下、単に出口側第一電磁弁という。)7および第二電磁開閉弁(以下、単に第二電磁弁という。)8とを備えている。そして、前記脱気装置3の運転を制御するとともに、前記脱気装置3の運転時に前記脱気装置3へ被脱気水を流し、前記脱気装置3の停止時に前記バイパス流路5へ被脱気水を流すように前記各開閉弁7,8,9等を制御する制御手段としての制御器9を備えている。
【0034】
前記脱気処理流路4は、被脱気水の入口10から入口側前記第一電磁弁6までの間の流路を往管11と称し、脱気水または被脱気水および脱気水の出口12から出口側第一電磁弁7までの間を復管14と称する。また、前記入口側第一電磁弁6と前記出口側第一電磁弁7との間の脱気装置側の流路を脱気側管15と称する。
【0035】
前記往管11の前記入口10の近傍には、第一手動開閉弁(以下、単に第一手動弁という。)16と第三電磁開閉弁(以下、単に第三電磁弁という。)17とを被脱気水の流れ方向に沿ってこの順に設けている。前記復管14の前記出口12の近傍には、第二手動開閉弁(以下、単に第二手動弁という。)18と第四電磁開閉弁(以下、単に第四電磁弁という。)19とを被脱気水の反流れ方向に沿ってこの順に設けている。前記第一手動弁16および前記第二手動弁18は、前記脱気装置3などの点検、修理時に、前記脱気処理流路4を前記密閉配管流路1から切り離すための弁である。
【0036】
そして、前記給水ポンプ2と並列に被脱気水のDOを検出(測定)するための第一検出流路21を設けている。この第一検出流路21には、被脱気水のDOを検出する第一DOセンサ22と、流量調整機能を備えた第一流量センサ23と、前記給水ポンプ2の上流側からの被脱気水の流れを阻止する第一逆止弁24とを設けている。前記第一DOセンサ22は、小流量(200〜300cc/min)でDOが検出可能なものを用いており、前記第一流量センサ23の流量調整機能により、DO検出を可能としている。この流量調整機能は、流量センサの機能によらず、センサとは別の流量調整手段によって行うことできる。
【0037】
前記脱気側管15の前記脱気装置3の上流側には、流入する被脱気水の圧力を減圧するための第一減圧弁25を設け、下流側には、流量調整機能を有する第二流量センサ26と、前記バイパス流路5を流通した被脱気水の流入を阻止する第二逆止弁27とを設けている。
【0038】
前記脱気装置3は、20μg/L程度の低DOの脱気水を生成する膜脱気装置とし、膜脱気部(図示省略)と、水封式真空ポンプ28と、水封式真空ポンプ28の封水を冷却するチラー29とを備えている。
【0039】
前記バイパス流路5には、第二減圧弁30と、前記脱気装置3側からの脱気水の流入を阻止する第三逆止弁31とを備えている。
【0040】
さらに、この実施例1では、前記脱気装置3にて脱気処理された脱気水のDOを検出するための第二検出流路32を、前記復管14と前記往管11の前記ポンプ2の上流側とを接続するように設けている。この第二検出流路32には、脱気水のDOを検出する第二DOセンサ33と、流量調整機能を備えた第三流量センサ34と、前記往管11側からの被脱気水の流れを阻止する第四逆止弁35とを設けている。前記第二DOセンサ33は、前記第一DOセンサ22と同様の小流量でDOを検出するセンサである。前記第二検出流路32を流れる脱気水により、前記第一DOセンサ22の被脱気水のDO検出に影響を与えないように構成している。
【0041】
前記制御器9は、マイクロプロセッサ,記憶手段等を含んで構成され、前記第一DOセンサ22,前記第二DOセンサ33,第一〜第三流量センサ23,26,34等の信号を入力して、予め記憶した制御手順に基づき、前記脱気装置3,前記給水ポンプ2,前記第一〜第四電磁弁6,8,9,17,19および表示器36を制御する。
【0042】
前記制御器9の制御手順は、被脱気水のDOを連続的に報知するDO連続報知手順と、前記密閉配管流路1内の水のDO値が所定値に自動的に収まるように、前記脱気装置3の運転を制御する自動DO制御手順とを含んでいる。
【0043】
前記DO連続報知手順は、この実施例1では、前記第一DOセンサ22および前記第二DOセンサ33の検出値に基づいて、被脱気水のDO,脱気水のDOをそれぞれ前記報知器36にて報知する手順として構成されている。
【0044】
また、自動DO制御手順は、前記第一センサ22の検出値が第一設定値DO1を超える(以上でもよい)か、または、前記脱気装置3の運転停止時から設定時間T1が経過すると前記脱気装置3を運転し、前記検出値が前記第一設定値DO1より低い第二設定値DO2未満(以下でもよい)となると前記脱気装置の運転を停止するように構成されている。この実施例1の制御手順は、図2に示される。
【0045】
ここで、この実施例1の溶存酸素濃度管理システムの動作を図2に基づき説明する。予め、前記第一手動弁16および前記第二手動弁18を開いておく。図2を参照して、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)では、自動運転スイッチ(図示省略)の操作を受付け、前記制御器9の内臓タイマの第一設定時間T1および第二設定時間T2の計時を開始する。
【0046】
S2では、前記第三電磁弁17および前記第四電磁弁19を開くとともに、前記第二電磁弁8,を開き、前記第一電磁弁6,7を閉じることによる前記バイパス流路5への通水処理(以下、第一バイパス通水処理という。)を行う。
【0047】
この第一バイパス通水処理により、前記密閉配管流路1の冷却水は、前記給水ポンプ2により吸引され、前記入口10から前記往管11内へ流入した後、前記バイパス流路5を流れて前記出口12から前記密閉配管流路1へ流出する。前記給水ポンプ2により吸引された冷却水(被脱気水)の一部が、サンプル水として前記第一検出流路21へ供給され、被脱気水が前記第一DOセンサ22に流れるとともに、前記第二検出流路32へも被脱気水の一部が供給され、前記第二DOセンサ33にも被脱気水が流れる。
【0048】
ついで、S3において、前記第二設定時間T2の計時が終了したかどうかを判定する。この第二設定時間T2は、前記第一DOセンサ22および前記第二DOセンサ33の作動が安定するに要する時間に設定されている。時間T2が経過すると、S3でYESが判定され、S4へ移行して、前記第一DOセンサ22および前記第二DOセンサ33による検出DOを前記表示器36にて表示する。
【0049】
こうして、前記脱気装置3の運転停止中は、前記バイパス流路5を被脱気水が流れることで、前記第一DOセンサ22において被脱気水の流れが形成される。こうして、被脱気水,すなわち前記密閉配管流路1の冷却水のDOを前記第一DOセンサ22により前記脱気装置3の運転停止中も検出して、管理者等へ知らせることができる。
【0050】
S5では、前記第一センサ22の検出値が第一設定値DO1を超えた状態が第三設定時間T3継続したという第一条件と、前記第一設定時間T1の計時が終了という第二条件のいずれかが満たされたかどうかを判定する。第一条件および第二条件のいずれも満たされない場合は、NOが判定されて、S4へ戻る。
【0051】
S5で、第一条件および第二条件のいずれかが満たされ、YESが判定されると、S6へ移行して前記脱気装置3の運転(前記水封式真空ポンプ28および前記チラー29の運転を含む)を開始する。同時に第四設定時間T4の計時を開始する。この第四設定時間T4は、前記脱気装置3の運転開始から前記脱気装置3内の真空度が所定の値に低下し、封水温度が所定の値に低下するに要する時間に設定されている。
【0052】
第一条件が満たされるとは、前記密閉配管流路1の冷却水の水質の劣化,すなわちDOが上昇したことを意味し、第二条件が満たされるとは、前記第一設定時間T1の間、一度も前記脱気装置3が運転されなかったことを意味する。
【0053】
S7で、時間T4の計時が終了すると、S8へ移行して、脱気通水処理を行う。この脱気通水処理は、まず、前記第一電磁弁6,7を開き、第五設定時間T5の計時を開始する。ついで、第五設定時間T5の計時終了後、前記第二電磁弁8を閉じ、前記第一設定時間T1をリセットする。このように、脱気通水処理に先立って前記脱気装置3の運転を行うようにしているので、DOの高い処理水が前記密閉配管流路1へ供給されることが防止される。
【0054】
このS8の脱気通水処理により、前記密閉配管流路1の冷却水は、前記給水ポンプ2により吸引され、前記入口10から前記往管11内へ流入した後、前記脱気側管15を通して前記脱気装置3へ供給されて脱気が行われる。
【0055】
この脱気通水処理時、前記給水ポンプ2により吸引された冷却水(被脱気水)の一部が、サンプル水として前記第一検出流路21へ供給され、被脱気水が前記第一DOセンサ22に流れる。こうして、前記脱気装置3の運転時においても被脱気水が前記第一DOセンサ22に流れるので、被脱気水のDOが正確に検出され、前記表示器36にて報知される。前記第二検出流路32へは、脱気処理された脱気水の一部が供給され、前記第二DOセ
ンサ33に脱気水が流れれて、脱気水のDOが検出され、前記表示器36にて報知される。この脱気通水処理において、前記第一センサ22の検出値に基づきDO<DO1が判定されると、第三設定時間T3がリセットされる。
【0056】
ついで、S9へ移行して、S8の脱気通水処理により、前記第一センサ22の検出値に基づきDO<DO2が第六設定時間T6継続して満たされるかどうかを判定する。YESが判定,すなわち脱気処理が不要と判定して、脱気通水処理を終了して、S10の第二バイパス通水処理を行う。
【0057】
この第二バイパス通水処理は、前記脱気装置3側への通水を遮断して、前記バイパス流路5への通水を行う点で共通しているが、具体的な制御において、若干異なる。S10では、まず前記第二電磁弁8を開き、第五設定時間T5をリセットする。ついで、第七設定時間T7遅れで、前記第一電磁弁6,7を閉じるとともに、前記脱気装置3を停止する。この第二バイパス通水処理において、前記第一センサ22の検出値に基づきDO>DO2が判定されると、第六設定時間T6,第七設定時間T7がリセットされる。
【0058】
そして、S11において、自動運転OFFが判定されると、S12へ移行して、自動運転の終了処理を行う。S12では、前記第三電磁弁17および前記第四電磁弁19を閉じ、前記給水ポンプ2を停止し、前記脱気装置3を停止するなどの処理を行う。S11で、自動運転OFFが判定されないと、S4へ戻り、前述のDOの連続報知処理と自動DO制御処理が継続して行われる。
【0059】
この実施例1によれば、システムの管理者やメンテナンス員は、前記密閉配管流路1を流れる水のDO値を前記脱気装置3の運転、停止に関係なく前記表示器36により正確に知ることができ、システムの管理やメンテナンスに活用することができる。
【0060】
また、この実施例1によれば、前記第一DOセンサ22により、被脱気水のDOを連続的に検出することができるので、前記第一DOセンサ22の検出値に基づき、前記脱気装置3の運転を適確に制御して、前記密閉配管流路1内の水のDOを所定範囲の値に収めることができる。
【0061】
さらに、長期に亘り、前記脱気装置3の運転が停止されると、前記脱気装置3内のDOが上昇するが、この実施例1によれば、前記第一設定時間T1経過ごとに前記脱気装置3が運転されるので、DO値の過度の上昇を防止できる。
【0062】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではない。例えば、前記実施例1では、前記第二検出流路32を設けているが、必要に応じて前記第二検出流路32を設けない構成の溶存酸素濃度管理システムとすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 密閉配管流路
2 給水ポンプ
3 脱気装置
4 脱気処理流路
5 バイパス流路
6 入口側第一電磁弁(流れ制御弁手段)
8 第二電磁弁(流れ制御弁手段)
9 制御器(制御手段)
22 第一DOセンサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉配管流路と、この密閉配管流路に両端が接続され給水ポンプおよび脱気装置を設けた脱気処理流路とを備える溶存酸素濃度管理システムにおいて、
前記脱気処理流路の被脱気水の溶存酸素濃度を検出するセンサと、
前記脱気装置と並列に接続されるバイパス流路と、
前記脱気装置および前記バイパス流路への被脱気水の流れを制御する流れ制御弁手段と、
前記脱気装置の運転を制御するとともに、前記脱気装置の運転停止時に前記バイパス流路へ被脱気水を流すように前記流れ制御弁手段を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする溶存酸素濃度管理システム。
【請求項2】
前記センサの出力を報知する報知手段を備え、
前記制御手段は、前記センサの検出値を入力して、前記検出値に基づく溶存酸素濃度を前記報知手段にて報知することを特徴とする請求項1に記載の溶存酸素濃度管理システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記センサの検出値が第一設定値以上か、または前記脱気装置の運転停止時から設定時間が経過すると前記脱気装置を運転し、前記検出値が前記第一設定値より低い第二設定値以下となると前記脱気装置の運転を停止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶存酸素濃度管理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−25125(P2011−25125A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171847(P2009−171847)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】