溶接のためのルミネッセンス検知システム
方法及び装置は、パルス化電力のアーク溶接プロセスを適応制御できる。訓練可能なシステムは、アーク溶接パルスの間の放出される信号から実験移行モードを認識し、かつ電源パラメータ・セットを制御することによって、後続パルスに修正された移行モードを作るためにパルス化電力パラメータ・セットを決定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2002年3月27日に出願された米国仮出願第60/368052号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ガス金属アーク溶接(Gas Metal Arc Welding、GMAW)は、例えば、自動的な製造などのロボット溶接機を用いるアセンブリ・ラインにおける高いスループット製造での金属片を接合するために一般に使用される。1つ以上のワークピースと消費可能な電極との間の電気アークは、アルゴンなどの不活性ガスによって遮蔽される金属滴に電極を液化する。これらの滴は、固化する前にワークピースの金属を貫通することによって溶接部を形成する。
【0003】
溶接電源の電流及び/若しくは電流をパルス化することによって制御されるパルス化されたGMAWと呼ばれる変形例は、低いスパッタリング及び良好なビード仕上げを作るが、わずかな熱しか生成しないので、特に高いスループット製造に好ましい。これらの特徴は、比較的薄いワークピースへの熱歪み及び残留応力を避けるために不可欠である。
【0004】
パルス化GMAWの重要な制限は、材料及びプロセス変数の変化に対応して、実時間で電源パラメータの最適化の複雑性である。この制限を扱おうとする試みで、市販で入手可能なGMAWシステムは、材料に関する記録された情報及び理想的なプロセス条件と組み合わされたコンピュータ化されたパラメータ制御を用いる。しかしながら、これらの努力は、2つの理由で制限される。
【0005】
一般に、そのような簡単なアルゴリズムの制御スキームは、すべてのプロセス変数と、実時間でこれらの変数を測定しかつ解析する能力との間の基本的な関係を理解することを含む。GMAWプロセスに関して、これらの基本的な関係は、未だ十分には理解されていない。さらに、これらの関係が理解されているとしても、すべて実時間で、重要な変数を測定しかつ適切な制御動作を計算することは、まだ高価でありかつ複雑であろう。
【0006】
いくつかのスキームに関して、理解のレベル及び測定される変数の数は、最適化された制御パラメータに相関された、観察された変数のデータベースを編集することによって低減されることができる。しかしながら、多数の市販の重要なGMAWプロセスに関して、独立プロセス変数の数が、これを難しい時間のかかる作業にする。さらに、特定の適用は、開発の間に考慮されないプロセス変数を導入することがあり、スキームをその適用で不十分に若しくは使用不能にする。
【0007】
パラメータ複雑性問題を解決するための試みは、単一の観察される可変のアーク光強度に基づく、単一の制御変数であるパルス期間を変えることを提案した。一般に、強度は、アークでの液状金属滴の形成に関して時間とともに変化する。高い溶接品質は、制御された滴移行に直接関係するので、この方法は、アーク光強度カット・オフに応答してパルス期間を短く切断することによって、溶接品質を改善することを提案する。しかしながら、この方法は、多数の欠陥のために成功しなかった。第1に、アーク光強度の変化は、必ずしも滴移行の明確な表示を与えるとは限らない。第2に、商業的に関心がある多くの溶接条件は、例えば5%より少ない二酸化炭素を有するアルゴン・ベースの混合物で遮蔽された炭素鋼溶接のカット・オフを、信頼性良く誘発するためのアーク光強度における十分な変化を生じない。第3に、実時間で各瞬間パルスを変えることによるGMAWプロセスの制御は、制御範囲を超える電流変化を引き起こすことがあり、結果として制御の発振、不安定な金属移行、及び低下した溶接品質を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パルス化GMAWシステムにおける電力パラメータ制御の複雑性を低減する技術の必要がある。特に、溶接材料及びプロセス条件とは無関係な、GMAWプロセスにおける安定した金属移行を作る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例は、パルス化電力アーク溶接プロセスの適応制御の方法である。この方法は、アーク溶接パルスの間に放出される信号を検知するステップを含む。訓練可能なシステムは、信号から実験的な移行モードを認識し、かつ後続のパルスで修正された移行モードを作るようにパルス化電力パラメータ・セットを決定するために用いられる。他のステップは、パラメータ・セットを使用して電源を制御する。
【0010】
本発明の他の実施例は、パルス化電力のアーク溶接プロセスを制御するためのニューラル・ネットワークを訓練する方法である。複数のパルス例に関する訓練データ及び認証データを作るステップを含み、各例は、少なくとも1つのアーク溶接パルスの間に放出される信号の表示、及びパルスに関する実験移行モードを含む。他のステップは、制御フラグのセットを作ることであり、各フラグは、目標移行モードに対する実験移行モードの分類、及びパルス化電力パラメータ・セットにおける少なくとも1つの値に関する制御動作を含む。さらに他のステップは、訓練データ、認証データ、及びフラグを使用するニューラル・ネットワークを訓練することであり、それによって、ネットワークは、1つ以上のアーク溶接パルスの実験移行モードを認識し、制御動作を適用し、それによって後続のパルスで修正された移行モードを作る。
【0011】
本発明の他の実施例は、アーク溶接のためのパルス化電源を制御するための装置であり、センサ及びコントローラを含む。コントローラは、さらに、センサからの信号が獲得される信号獲得モジュールと、ニューラル・ネットワークとを含む。ニューラル・ネットワークは、信号からの実験移行モードを認識し、かつパルス化電源に関するパラメータ・セットを制御するように訓練し、それによって修正された移行モードが、後続のパルスで作られる。コントローラは、また、パラメータ・セットを使用して電源を制御するための制御インターフェースを含む。
【0012】
本発明の他の実施例は、コンピュータ可読媒体、及び媒体によって伝えられる命令を含むコンピュータ・プログラム製品である。命令は、コンピュータが、アーク溶接プロセスの間に放出される信号から実験移行モードを認識し、かつ修正された移行モードを作るためにアーク溶接パルス化電源に関するパラメータ・セットを決定させるものである。
【0013】
開示された実施例は、自動化されたGMAW溶接プロセスにおける著しい改善を提供する。実施例は、溶接パルス毎に所望の単一の金属滴移行モードを維持若しくは達成するために、溶接プロセスによって放出される簡単な信号を使用する。実施例は、雑音が多く、若しくは滴移行の不明瞭な指示を与える信号と両立する。実施例は、また、5%より少ない二酸化炭素を有するアルゴン・ベースの混合物で遮蔽された炭素鋼溶接を含む、様々な溶接条件と両立する。さらに、実施例は、改善された溶接品質及び均一性を与える、発振なしの安定な金属移行条件を導く。
【0014】
本発明の前述の及び他の対象、特徴、及び利点は、類似する参照符号が、異なる図を通して同じ部品を参照する添付の図面で示されるように、本発明の特定の実施例の以下のより詳細な記載から明らかであろう。図面は、必ずしも同一の縮尺ではなく、本発明の原理を示すときに代わりに強調される。
【実施例】
【0015】
開示される実施例は、一般に、溶接材料及びプロセス条件にかかわらず安定した金属移行条件を作るために、アーク溶接プロセスを制御することに関連する。本発明の特定の実施例は、単一のプロセス変数、すなわち溶接プロセスによって放出される信号を認識することによって、GMAWプロセスを制御するために訓練可能なシステムを使用する方法及び装置を含む。
【0016】
パルス化GMAWプロセスは、ワークピース及び溶接されるべきワークピースの領域近くに配置される消費可能な電極に、時間に依存する電力を供給するために電源を使用する。電気アークは、ワークピースと消費可能な電極との間に作られ、金属滴を作らせかつ消費可能な電極の端部からワークピースへ移行させる。
【0017】
図1A〜1Cは、消費可能な電極の先端での金属滴形成の順次の略図であり、図1Aにおいて電極先端の液化を示し、図1Bにおいて滴形成を示し、かつ図1Cにおいて滴の分離を示す。
【0018】
図2は、パルス化GMAWプロセスを制御する特定の装置110の概略ブロック図である。溶接電源112は、消費可能な金属電極114及び1つ以上のワークピース116に接続される。電気アークは、電極114とワークピース116との間に作られ、ワークピース116に移行される電極114の先端で金属滴115を形成させる。センサ118は、溶接プロセスによって放出される信号からアナログ電気信号を生成する。コントローラ120は、信号獲得モジュール122、汎用コンピュータ124、ディスプレイ126、訓練可能なシステム128、及び制御インターフェース130を含む。信号獲得モジュール122は、センサからのアナログ信号を読み、任意にフィルタリングし、信号をコンピュータ124へ送る前にアナログ信号をデジタル化する。訓練可能なシステム128は、スタンドアロン・モジュールであることができ、若しくはハードウェア又はソフトウェア・コンポーネントとして、汎用コンピュータ124で実装されることができる。訓練可能なシステム128は、信号を認識し、かつ対応する実験移行モードに応じて信号を分類する。訓練可能なシステム128は、次に、後続のパルスにおいて修正された移行モードを作るために、電源112へ制御インターフェース130を介して制御動作を出力し、例えば後続のパルスのパルス期間を変更する。
【0019】
他の実施例において、コントローラ120は、訓練可能なシステム128なしに構成されることができる。この場合、訓練されたオペレータが、信号を評価し、かつ修正された移行モードを作るために手動で電源パラメータを変更するように、コンピュータ124及びディスプレイ126は、構成されることができる。
【0020】
電源112は、例えば方形波、正弦波、のこぎり波、前述の線形の組合せなどである電気波形を作る。好ましくは、波形はほぼ方形波である。
【0021】
例えば、図3は、電源112によって作られる方形波のパルス波形の概略である。図3において、電流は、時間の関数としてグラフ化される。波形は、周波数、パルス電流210(最大電流)、ベース電流212(最小電流)、パルス期間214、及びベース期間216を有する。電源の出力128は、また関連するパルス電圧(示されていない)を有する。これらのパラメータは、独立して若しくは従属して変わることがある。例えば、パルス期間及びベース期間は、変わることができ、一方周波数は一定のままである。電源は、パルスの間若しくは後続のパルスのいずれかで、1つ以上のこれらのパラメータを変えることによって制御されることができる。例えば、溶接プロセスは、将来のパルスに関してパルス期間を変更することによって制御されることができる。
【0022】
溶接材料、溶接環境、及び電源に応じて、任意の数の滴が、1つのパルス波形全体の間に分離することができ、それらの滴は、波形の任意の点の間で分離することができる。溶接品質は、一般に、一貫した移行モードに応じる。目標移行モードは、パルスの約数パーセントに関して、1つの滴が、パルス期間のほぼ中央の間にパルス毎に移行されるときに、発生するように規定されることができる。パルスのパーセントは、約50%から約100%の間、90%が特に適切なパーセントである任意の適切なパーセントであるように選択されることができる。
【0023】
実験移行モードは、アーク溶接プロセスから放出される信号によって示される明らかな移行モードである。修正された移行モードは、1つ以上の電源パラメータを変更することによって作られる移行モードである。例えば、修正された移行モードは、目標移行モードに近づき、すなわち、修正された移行モードは、電源パラメータを変更する前に観察される実験モードより目標移行モードに類似する。より詳細には、修正された移行モードは、目標移行モードである。
【0024】
滴移行モードは、滴移行に関連するアーク溶接パルスの間に放出される信号を検知することによって観察されることができる。信号は、例えば、放射フラックス、電位フラックス、音響放射、機械振動、磁気フラックスなどでありえる。センサは、例えば、フォトダイオード、電荷結合デバイス(CCD)、検流計、マイクロホン、圧電振動センサ、容量センサ、磁力計などの信号を検知するデバイスである。センサは、受動センサ、すなわち溶接プロセスから自然に放出される信号を検知するセンサ、若しくは能動センサ、すなわちレーザに結合されたフォトダイオードなどの溶接プロセスを問い合わせるデバイスに結合されたセンサでありえる。好ましくは、検知された信号は、放射フラックスであり、すなわちアーク溶接パルスの間に自然に放出されたルミネッセンスであり、かつセンサはフォトダイオードである。
【0025】
溶接材料、溶接環境条件、及び電源パラメータに応じて、放出される信号は、明らかな滴移行の表示から滴移行の不明瞭な表示の範囲を含むことができる。すなわち、1つの極値において、信号は、滴移行に相関された明らかな単一の特徴を示すことができ、他の極値において、信号は不明瞭な滴移行作用を示すことがある。「不明瞭な滴移行」は、プロセス若しくは検知システムにおける雑音のために雑音が多い若しくは不連続な信号を含むことがあり、また滴移行イベント自体が不連続ではないときに生じることがある。したがって、以下に記載されるように、本発明の1つの態様は、信号の移行モードが、簡単な閾値若しくはカット・オフによって単に決定されるより、むしろ認識される。閾値システムは頑強ではなく、すなわち、不明瞭な作用に余裕はなく、一般に調整なしに異なる条件に適用されることはできない。
【0026】
図4A〜図4Eは、様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。図4Aにおいて、1つの滴が、パルスのほぼ中央で移行され、図4Bにおいて、1つの滴が、パルスの始めで移行され、図4Cにおいて、パルス毎に1つの滴が、パルスの終わりで移行され、図4Dにおいて、1つの滴が、パルス期間の代わりにベース期間の間で移行され、図4Eにおいて、1つ以上の滴が、パルス期間毎に移行される。
【0027】
図5〜7は、ミリ秒(ms)単位の時間の関数として電圧(V)単位の出力としてグラフ化された典型的な放出されたルミネッセンス信号を、対応する滴移行の実際の高速ビデオ・フレームと比較することによって、実際の実験移行モードを示し、各フレームの時間は、各インセット・フレームから信号の対応する時点までの矢印によってほぼ示される。
【0028】
図5は、センサ信号とパルス期間毎の1つの金属滴に近接するビデオ画像との比較である。図5に使用される条件は、ワークピースから約20mmの距離で1.2ミリメートル(mm)普通の炭素鋼の消費可能な電極、バランス・アルゴンを有する約5%のO2の遮蔽ガス、パルス電流250A、パルス期間5ms、ベース電流100A、ベース期間10ms、及び1分間毎に3.5メートル(m)のワイヤ送り速度を含む。
【0029】
図6は、センサ信号とパルス期間毎の1つ以上の金属滴に近接するビデオ画像との比較である。図6に使用される条件は、ワークピースから約18mmの距離で1.2mmのステンレス鋼の消費可能な電極、バランス・アルゴンを有する約3%のCO2及び2%のN2の遮蔽ガス、パルス電流240A、パルス期間2ms、ベース電流40A、ベース期間10ms、及び2.1m/minのワイヤ送り速度を含む。
【0030】
図7は、センサ信号とパルス期間毎の1つ以下の金属滴に近接するビデオ画像との比較である。図7に使用される条件は、ワークピースから約18mmの距離で1.0mmのアルミニウムの消費可能な電極、アルゴンの遮蔽ガス、パルス電流155A、パルス期間2.5ms、ベース電流20A、ベース期間6ms、及び4.1m/minのワイヤ送り速度を含む。
【0031】
本明細書で使用されるように、訓練可能なシステムが、プログラム、アルゴリズム、若しくは他の解析方法であり、それらにおいて、データは、システムがパターンを決定するために「学習」することができる訓練セットの形態で入力され、訓練セットの結果に類似する未知のものの解析時に結果の予測を可能にする。訓練可能なシステムは、ソフトウェア・プログラム、フィールド・プラグラム可能なゲート・アレイ、カスタム・マイクロプロセッサなどのハードウェア・アルゴリズム、それらの組合せなどのハードウェアに符号化されたアルゴリズムであることができる。知られていないサンプルの「学習」及び分析は、サポート・ベクトル・マシン(SVM)、人工ニューラル・ネットワーク、分類及び回帰分析(CART)、ベイズ・ネットワーク、若しくは他のアルゴリズム、ソフトウェア・プログラム、又はそれらの組合せを含む多数の方法のうちの任意の方法によって実行されることができる。
【0032】
人工のニューラル・ネットワークは、訓練可能なシステムであり、この訓練可能なシステムは、その機能性が、生物学的なニューロンの機能性に緩く基づく簡単な処理要素、ユニット、若しくはノードの相互接続である。各処理要素(「ニューロン」)は、いくつかの重み付けられた入力(「シナプス」)の合計を、非線形伝達機能(S字状機能など)を使用して出力に変換する。結果として、ニューラル・ネットワークは、また並列分散プロセッサとして記載される。
【0033】
本発明において、多数の異なるニューラル・ネットワーク・アーキテクチャが、使用されることができ、例えば、Adalineネットワーク、後方伝播ネットワーク、Hopfieldモデル、両方向結合性メモリ・ネットワーク、Boltzmannマシン、カウンタ伝播ネットワーク、自己構成マップ、適応共振理論ネットワーク、蓋然性ニューラル・ネットワークなどを含む。例えば、参照によってその開示全体が本明細書に組み込まれる、John WileyによるMasters,T、「Practical Neural Network Recipes」、ニューヨーク、1993年を参照されたい。より詳細には、蓋然論的ニューラル・ネットワークが使用される。蓋然性ニューラル・ネットワークは、高速訓練速度、さらなる例に対する訓練の容易性、雑音の多い若しくは不連続的なデータに対する頑強性、及びパターンなどの分類データにおける良好な性能を含む、いくつかの利点を提供する。例えば、参照によってその開示全体が本明細書に組み込まれる、Specht,D.F.「Neural Networks」、第3巻、1990年、頁109−118、米国特許第6442536号、米国特許第5554273号、及び米国特許第5327357号を参照されたい。
【0034】
蓋然論的ニューラル・ネットワークは、入力及び出力層に加えて2つの隠れた層を含み、訓練データに対して入力データを分類するために使用されるニューラル・ネットワークである。
【0035】
例えば、図8は、蓋然論的ニューラル・ネットワークの特定の数学的スキームを示す。一般に、ベクトルa(すなわち、a={a1,a2,...ai,...am})として表されるm個の入力が、入力重みマトリクスWを介して、第1の隠れた層若しくはパターン層におけるn個のニューロンに接続される。
【0036】
【数1】
【0037】
Wのn×m重み要素は、訓練データから展開される。第1の層は、層に関してネット入力ベクトルt(すなわち、t={t1,t2,...tj,...tn})を作るために、例えばt=‖Wj−a‖b={t1,t2,...tj,...tn}、入力と訓練データとの間の分離を計算する。
【0038】
示されるように、各要素tjの計算は、各ニューロンの感度を調整するために、バイアス調整bj(すなわち、バイアス・ベクトルb={b1,b2,...bj,...bn}の要素)で乗算することを含むことができる。
【0039】
各ネット訓練入力tjは、次に、伝達関数f、好ましくはS字状若しくは径方向基本関数などの非線形関数によって動作される。最も好ましくは、伝達関数は、例えば径方向基本関数である。
【0040】
【数2】
【0041】
伝達関数の作用は、入力データが訓練データに近い蓋然性を表す各ニューロンに関する出力rjを計算することである。第1の層に関する出力のセットは、このように、出力ベクトルr、すなわちr={r1,r2,...rj,...rn}によって表される。訓練データに近い入力は、伝達関数の最大値に近い出力を生成し、訓練データから遠い入力は、ゼロに近い出力を生成する。いくつかの訓練入力に近い入力は、いくつかのニューロンから大きな出力を有する。パラメータσは、基本関数の広がりであり、より大きな広がり値は、より多くのニューロンを入力に応答させ、より狭い広がりは、よりわずかなニューロンからのより多くの特定の応答をさせる。
【0042】
第2の若しくは加算層におけるp個のニューロンは、p個のクラスすなわち入力データが分類されるべきである実験モードに対応する。第1の層は、層重みマトリクスW’を介して加算層に接続される。
【0043】
【数3】
【0044】
マトリクスW’は、p個の要素のn個の列からなり、各ベクトルは、p個のクラスの1つに対応する要素に関して1であり、他ではゼロである。加算層に対するネットの入力ベクトルt’は、マトリクスW’と先行する層の出力rとの積によって作られる。t’=W’r={t1’,t2’,...tk’,...tp’}
【0045】
したがって、各第2の層ニューロンに関するネット入力tk’は、入力データが、p個のクラスの特定のk個のクラスを表す蓋然性を表す。
【0046】
第2の層での伝達関数は、どのようにこの分類情報を出力するかを決定する。例えば、第2の層の伝達関数は、蓋然性をランク付けし、かつ最も高い蓋然性値に1を割り当てて他の値に0を割り当てる関数に匹敵する。次に出力は、クラス、すなわち蓋然論的ニューラル・ネットワークが入力データに関して決定される実験モードを表す。したがって、PNNは、入力データをとり、訓練データとそれを比較し、データが任意の特定のクラスすなわち実験モードである蓋然性を計算し、その後、蓋然性に基づいてそれにクラスを割り当てる。
【0047】
当業者は、ニューラル・ネットワークなどの訓練可能なシステムに含まれる方法は、コンピュータで使用可能な媒体を含むコンピュータ・プログラム製品で実現されることができることを認識すべきである。例えば、そのようなコンピュータで使用可能な媒体は、記憶されたコンピュータ可読プログラム・コード・セグメントを有する、固体メモリ・デバイス、ハード・ドライブ・デバイス、CD−ROM、DVD−ROM、若しくはコンピュータ・ディスケットなどの可読メモリ・デバイスを含むことができる。コンピュータ可読媒体は、また、デジタル若しくはアナログデータ信号としてプログラム・コード・セグメントを伝える、光学、有線、若しくは無線のいずれかの、バス若しくは通信リンクなどの通信若しくは伝送媒体を含むことができる。
【0048】
ネットワークの有効な訓練に関する1つの態様は、ネットワークの一般化を確実にするために、データをオーバ・フィッティングすることなくデータにおける一般的な傾向を獲得する。このために、訓練されるデータは、一般に訓練セットと確認セットとに分割される。ネットワークは、その性能が訓練セットに関する最小基準に達するまで、連続して重みを調整しかつ処理要素を追加することによって構築され、一般化は、次に確認セットを使用してネットワークの性能によって評価される。
【0049】
システムにおいて、訓練セットは、実験移行の滴移行モードと相関される信号の例を含む。各例は、パルスに対応する信号の表示、及びそのパルスの高速ビデオを検査することによって決定される例えばパルス毎に1つの滴の実験移行モードを含む。信号の表示は、単一のパルス、複数のパルスのウインドウを有するサンプル、複数のパルスのサンプルから代表的なパルス、複数のパルスの平均である単一のパルスなどでありえる。信号の表示は、一般に別個の形態である。例えば、パルスは、等しいセグメントに分割されることができ、各セグメントは、平均信号パラメータ及び傾斜パラメータなどのアブストラクト・パラメータに低減されることができる。確認セットは、訓練セットと同じ形態であるが、同じ条件下で収集された異なる実験データから形成される。
【0050】
ネットワークの出力は、電源に関する制御パラメータを示す1つ以上の制御フラグのセットである。例えば、システムは3つのフラグを使用することができる。第1のフラグは、デフォルト条件であり、すなわち実験移行モードが目標移行モードに一致し、制御パラメータにおいて変更がなされない。第2のフラグは、目標モードがパルス毎の1つの滴であるとき、例えばパルス毎に1つ未満の滴の目標モードに合わない実験モードに対応する。この例において、制御動作は、パルス期間における増分の増加である。第3のフラグは、パルス毎の1つより多い滴に対応し、パルス期間における増分の低減の制御動作を有する。さらなるフラグは、制御出力に関するより小さい増分を提供し、若しくは異なるパラメータに関する別個の制御出力を提供するために使用されることができる。
【0051】
本発明の特定の実施例は、まったく限定するものではない以下の実施例によって示される。
【0052】
図9は、センサを有する特定の溶接装置410を図示する。センサ・ハウジング412は、溶接ガン414に対して搭載される。ハウジングは、示されるように溶接ガン上に若しくは溶接ガンの近くに搭載される。適切な搭載ハードウェアは、センサ−アーク軸距離416、センサ−金属ベース高さ418、及び作動角度420などの位置調整を与える。ハウジングの位置は、センサが十分な信号を得ることを確実にするために、実際の実行において調整される。
【0053】
図10は、特定のセンサ・ハウジング412の断面を図示する。センサ・ダイオード510は、アルミナ・ハウジング512内に搭載される。溶接ゴーグルに使用されるなどのニュートラル密度フィルタ514(シェード部材10)が、センサの前面に取り付けられる。このフィルタは、過剰な光及び熱からセンサを保護し、かつセンサ・キャビティを溶接プロセスによってスパッタリングされた金属を排除する。
【0054】
溶接プロセスによって放出されるルミネッセンスを測定するために使用されるフォトダイオード・センサは、それが、その応答曲線の直線領域で動作するように、すなわちその最大利得が、当該溶接プロセスによって放出される信号と重なるように選択される。この例において、センサは、以下の技術的仕様を有する高速シリコンPINフォトダイオードであるTIL78である。すなわち、ピーク波長=890nm、光電流(最大)=28.5μA、暗電流(最大)=60nA、上昇/降下時間=5ns、電力散逸=100mW、受容角度=120°、容量(VR=20V)=4pF、及び動作温度=−40℃〜+100℃である。
【0055】
センサからの電流は、信号インターフェースによって増幅されかつデジタル化されることができ、カスタム信号インターフェース、ソフトウェア・パッケージ、PCのためのソフトウェアで構成可能なアナログ/デジタル・データ獲得カードなど、当業者に知られている多数の獲得システムの任意のものであることができる。例えば、使用されることができる市販で利用可能な解決方法は、例えば、Neural Network Toolbox 4.0.2を有するMATLAB(登録商標)(The MathWorks,Inc.、Natick、MA)などのソフトウェア・パッケージ、若しくは、例えば、LabVIEWソフトウェアと組み合わせられたNIPCI−6071Eアナログ/デジタル・データ獲得カード(両方ともNational Instrumens Corporation、Austin、TXから)などの組み合わせられたハードウェア/ソフトウェア・システムを含む。
【0056】
図11は、特定の信号獲得モジュールの一部の電気的略図である。この回路610は、フォトダイオード・センサ510からの電流信号を、INA114などの演算増幅器612によって、増幅しかつ電圧信号に変換する。この演算増幅器の利得は、出力信号の飽和を避けるために、可変抵抗器614によって調整されることができる。この例において、演算増幅器612の出力信号に関する適切な出力レベルは、増幅器電源(10−12V)の約10%(ほぼ1V)である。
【0057】
第2の演算増幅器616、この場合にはLM741は、利得を減らす。再び、可変抵抗器618は、入力電圧信号と出力電圧信号との間の利得を調整する。ルーチンの実験を通じて、2つの可変抵抗器は、ベース電流及びパルス電流に対応するフォトダイオード信号の極値は、各演算増幅器の直線範囲内であるように調整されることができる。回路は、5Vから9Vの電源620、984オームの固定抵抗器622、63Vで47マイクロファラッドのコンデンサ624、559オームの固定抵抗器626、63Vで47マイクロファラッドのコンデンサ628、及び630での信号出力をさらに備える。
【0058】
図12は、特定の信号獲得モジュールのアナログ・デジタル処理回路のブロック図である。獲得モジュール710において、A/Dコンバータ714(±10ボルト)の性能範囲に合うように増幅された出力630は、低域通過フィルタ712(2kHzのカット・オフ)によって調整される。これは、獲得性能より高い入力信号周波数によって引き起こされるエイリアシングを防ぐ。この例では、A/Dコンバータ714は、12ビットA/DコンバータであるADS7806である。この例に関して、12ビットの解像度は、関連する情報を収集するには十分であるが、より高いサンプリング速度が使用されることができる。デジタル出力信号は、ディスプレイのためのPC並列ポート716若しくはニューラル・ネットワークに向けられることができる。
【0059】
データがPCへ送られるなら、従来技術で知られている多数のデータ表示プログラムの任意のもの、例えば、上述のMATLAB(登録商標)ソフトウェアが、データをグラフ化しかつ解析するために使用されることができる。代わりに、専用プログラムが、データを可視化するために書かれることができる。これらの場合、目標移行モードに対する実験移行モードの認識は、訓練されたユーザによって実行されることができる。ユーザは、実験移行モード信号が、目標移行モード信号に合うように見えるまで、パルス化電源のパラメータを修正することができる。
【0060】
しかしながら、この例において、パルス電力パラメータの自動制御は、上述のMATLAB(登録商標)ソフトウェアを使用して作られた、2層の蓋然論的人工ニューラル・ネットワークによって提供される。
【0061】
ニューラル・ネットワークの開発の間、訓練データ・セット及び確認データ・セットである2つのデータ・セットが作られる。各セットは、700個パルスに関する情報を含む。未加工の信号データは、以下のような1つ以上のパラメータを使用して、いくつかの実験のバッチを使用して獲得される。すなわち、ガスのタイプ(純粋なAr、Ar+2%O2、Ar+4%CO2、Ar+8%CO2、Ar+5%O2、Ar+3%CO2+2%N2)、消費可能電極組成(普通の炭素鋼、ステンレス鋼、及びアルミニウム)及び消費可能な電極サイズ(1.0mm及び1.2mmの直径)、溶接位置(フラット及びオーバヘッド)、及び接合構成(ビード・オン・プレート及び溝付)である。電源パラメータは、パルス期間が、パルス毎の1つ未満の滴からパルス毎の1つより多い滴まで、パルス毎の1つの滴の目標移行モードを中心に移行モードの範囲を通じて変化されることができる。
【0062】
実験条件は、実験中で各データ・セット内で変更し、センサ信号は、以下のような異なるパターンの識別を導くパラメータ値に基づき、ニューラル・ネットワークによって調整される。各期間は、5つの等しいセグメントに分けられる。2つの値が、各セグメント、期間の最大電流に対する区間の平均電流の比であるパルス電流分散D、及び傾斜或いは時間に対する信号の変化レートに関して計算される。未加工のセンサ信号データは、各データ・セットに含まれる前に準備される。遷移信号及び雑音で問題を避けるために、センサ信号データは、サンプル・ウインドウ、この例では10個のパルスを含むウインドウ内で獲得される。ウインドウ内の各パルス期間は、別個に取り扱われ、すなわちデータは、別個のパルス期間に分離される。この例では、したがって、各パルス期間は、ともにパターンを構成する5×2=10個の値を生成する。各サンプル・ウインドウ内の10個の期間に関するパターンは、ランク付けされ、最も一般的なパターンは、サンプル・ウインドウ全体の表示として選択される。
【0063】
実際の滴分離作用は、高速ビデオによって記録される。ビデオは、センサ・データと画像を自動的に相関する、専用のコンピュータで制御されたシステムによって実行される。システムは、溶接領域を照明するためにヘリウム・ネオン・レーザを含み、結果としての画像は、1秒毎に2000個のフレームのビデオ・カメラによって獲得される。このビデオ・システムの詳細は、その教示全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Balsamo,PSS;Vilarinho,LO;Vilela,M;Scotti,Aの「International Journal of Joining Materials」、第12巻、2000年、1〜12頁に記載される。
【0064】
一連の制御フラグは、ネットワークに関して決定される。この例において、実験滴移行モードは、目標移行モードに中心合わせされた7個の制御フラグに分類される。目標モードは、パルス期間の中心のまわりで移行されるパルス毎の1つの滴である。後続のパルスに関するパルス期間の制御に関して、フラグは、あれば変更が行われるべきシステムを表す。図1−3は、パルス期間がより長くあるべきであることを示し、一方、図5−7は、パルス期間がより短くあるべきであることを示す。フラグ4は、デフォルト条件であり、すなわち実験モードは、目標モードに合う。これらのフラグ及び上述の高速ビデオ画像を使用して、訓練及び確認データ・セットにおける、各パルスの滴移行モード及び各パルス毎の実験移行モードが分類される。
【0065】
【表1】
【0066】
訓練セット及び確認セットの2つのデータ・セットは、特徴付けられた未加工データ及び割り当てられた制御フラグから作られる。表2は、この例で使用されるセットの構造を示す。各記録は、上述の10個のパルス・サンプル・ウインドウから選択された代表的なパルス・パターンすなわち分散(D)、及び各セグメントに関するデータから計算された傾斜値(S)を含む。したがって、セットにおける各記録は、割り当てられた制御フラグに加えて10個の特徴数を含む。十分なデータは、各データ・セットに関するパルス記録の実質的な数、この例ではセット毎に700パルス記録を提供するために収集される。条件は、実験中では各データ・セット内で変更するが、データ・セット間の条件の範囲は同一である。
【0067】
【表2】
【0068】
図13は、この例で使用される特定のPNNのトポロジの概略である。PNN810において、入力層812は、10個のデータ点に対応するm=10入力のセット、すなわち5個のD値及び5個のS値を、n=10ニューロンを含むパターン層814へ送る。パターン層816は、データを記載する7個の実験モードに対応するp=7のニューロンの加算層816に接続される。出力層818は、加算伝達機能からの分類を収集し、かつ出力820へ分類された実験モードに対応する制御フラグを送る。
【0069】
PNNは、訓練データ・セットを使用して訓練される。その後、確認データ・セットは、訓練されたネットワークが、過剰に訓練されることなく、許容可能な精度で新規な信号を認識することができることを確実にするために使用される。この例に関する確認段階において、ニューラル・ネットワークによる予測されるフラグと確認データに割り当てられた実際のフラグとの間のマッチングのレベルは、90%より大きく、しばしば98%より大きい。
【0070】
次に、訓練されたシステムは、実際の試験における溶接電源を動作するために使用される。システムは、パルス毎に1つの滴の目標移行モードを結局維持して、実験移行モードを修正されたモードに変更するために、パルス期間パラメータを容易に変更する。性能は、溶接プロセスの高速ビデオと時間にわたるセンサ信号と比較することによって確認され、任意の実験モードから目標移行モードへの移行モードにおける変更が、容易に見られる。
【0071】
実験は、ニューラル・ネットワークの代わりに若しくはニューラル・ネットワークに加えて、信号を直接ディスプレイに送ることによって変更されることができ、訓練されたオペレータは、信号と図4A−Eに示される信号の概略とを比較することができる。オペレータは、パルス毎に1つの滴の目標移行モードを結局マッチングして、実験(表示された)移行モードを修正されたモードに変更するために、電源のパルス期間を変更する。再び、性能は、溶接プロセスの高速ビデオと時間にわたるセンサ信号とを比較することによって容易に確認される。
【0072】
変形例において、ただ3つのフラグが使用され、すなわち、例えば上述のようなフラグ3、4、及び5などの、増大動作、低減動作、及び動作なしである。フラグのより多い数は、より細かい制御を与えるが、頑強性が弱く、すなわち新たなシステムに一般化することがより難しい。
【0073】
他の変形例において、ただ2つだけのフラグが使用され、すなわち、動作なし、若しくは増大動作若しくは低減動作のいずれかである調整である。例えば、実験移行モードが目標モードであるなら、動作は行われない。実験モードが目標モードではないなら、システムは、増大若しくは低減のいずれかの調整に関する方向を「推測」する。目標モードが、タイムアウト期間内に到達しないなら、調整は、反対の方向に進む。
【0074】
他の変形例において、サンプル・ウインドウのサイズは、ウインドウ毎に1から40パルスに選択して変更される。より少ない数のパルスは、制御のより少ない頑強性を導き、すなわちシステムは、遷移若しくは雑音をより受け易く、一方、より多い数のパルスは、制御のより大きな頑強性を導くが、制御動作をより遅くすることが見出された。数が、40より有意に多くなると、制御不安定性の結果になる。
【0075】
他の変形例は、抵抗値R1及びR2を手動で調整することによって、インターフェース利得を変更することである。代わりに、自動利得回路は、アークによって放出される全体光に基づいて自動的に抵抗器を調整するために、第2の光センサと組み合わされることができる。
【0076】
さらに他の代わりの例は、より多くの一般的なシステムを有することである。一度にいくつかの選択条件(所定の電極サイズ、材料、及びガス組成)に関して訓練されたニューラル・ネットワークを有する代わりに、同時に考慮される条件の広い範囲に関して訓練されることができる。これは、一般的に、より多くの実験、より多くの訓練及び確認セット、及びより長い訓練時間を伴うが、非常に広い範囲の条件下で溶接プロセスを制御することができる訓練されたシステムを結果として生じることができる。
【0077】
システムが、特に、特定の実施例を参照して示されかつ記載されたが、形態及び詳細における様々な変更は、添付の請求項に包含される本発明の範囲から逸脱することなくなされることができることは、当業者には理解されるであろう。例えば、本発明の方法は、様々な環境に適用されることができ、記載された環境に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】消費可能な電極での金属滴形成の順次の略図である。
【図1B】消費可能な電極での金属滴形成の順次の略図である。
【図1C】消費可能な電極での金属滴形成の順次の略図である。
【図2】パルス化GMAWプロセスを制御するための特定の装置の概略ブロック図である。
【図3】電源によって作られる方形波パルス波形の概略である。
【図4A】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図4B】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図4C】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図4D】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図4E】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図5】センサ信号とパルス期間毎の1つの金属滴に近接するビデオ画像との比較である。
【図6】センサ信号とパルス期間毎の1つ以上の金属滴に近接するビデオ画像との比較である。
【図7】センサ信号とパルス期間毎の1つ以下の金属滴に近接するビデオ画像との比較である。
【図8】蓋然論的ニューラル・ネットワーク(PNN)の特定の数学的スキームを示す。
【図9】センサを有する特定の溶接装置を図示する。
【図10】特定のセンサ・ハウジングの断面を図示する。
【図11】特定の信号獲得モジュールの一部の電気的略図である。
【図12】特定の信号獲得モジュールのアナログ・デジタル処理回路のブロック図である。
【図13】特定のPNNのトポロジの概略である。
【図1】
【技術分野】
【0001】
本願は、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2002年3月27日に出願された米国仮出願第60/368052号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ガス金属アーク溶接(Gas Metal Arc Welding、GMAW)は、例えば、自動的な製造などのロボット溶接機を用いるアセンブリ・ラインにおける高いスループット製造での金属片を接合するために一般に使用される。1つ以上のワークピースと消費可能な電極との間の電気アークは、アルゴンなどの不活性ガスによって遮蔽される金属滴に電極を液化する。これらの滴は、固化する前にワークピースの金属を貫通することによって溶接部を形成する。
【0003】
溶接電源の電流及び/若しくは電流をパルス化することによって制御されるパルス化されたGMAWと呼ばれる変形例は、低いスパッタリング及び良好なビード仕上げを作るが、わずかな熱しか生成しないので、特に高いスループット製造に好ましい。これらの特徴は、比較的薄いワークピースへの熱歪み及び残留応力を避けるために不可欠である。
【0004】
パルス化GMAWの重要な制限は、材料及びプロセス変数の変化に対応して、実時間で電源パラメータの最適化の複雑性である。この制限を扱おうとする試みで、市販で入手可能なGMAWシステムは、材料に関する記録された情報及び理想的なプロセス条件と組み合わされたコンピュータ化されたパラメータ制御を用いる。しかしながら、これらの努力は、2つの理由で制限される。
【0005】
一般に、そのような簡単なアルゴリズムの制御スキームは、すべてのプロセス変数と、実時間でこれらの変数を測定しかつ解析する能力との間の基本的な関係を理解することを含む。GMAWプロセスに関して、これらの基本的な関係は、未だ十分には理解されていない。さらに、これらの関係が理解されているとしても、すべて実時間で、重要な変数を測定しかつ適切な制御動作を計算することは、まだ高価でありかつ複雑であろう。
【0006】
いくつかのスキームに関して、理解のレベル及び測定される変数の数は、最適化された制御パラメータに相関された、観察された変数のデータベースを編集することによって低減されることができる。しかしながら、多数の市販の重要なGMAWプロセスに関して、独立プロセス変数の数が、これを難しい時間のかかる作業にする。さらに、特定の適用は、開発の間に考慮されないプロセス変数を導入することがあり、スキームをその適用で不十分に若しくは使用不能にする。
【0007】
パラメータ複雑性問題を解決するための試みは、単一の観察される可変のアーク光強度に基づく、単一の制御変数であるパルス期間を変えることを提案した。一般に、強度は、アークでの液状金属滴の形成に関して時間とともに変化する。高い溶接品質は、制御された滴移行に直接関係するので、この方法は、アーク光強度カット・オフに応答してパルス期間を短く切断することによって、溶接品質を改善することを提案する。しかしながら、この方法は、多数の欠陥のために成功しなかった。第1に、アーク光強度の変化は、必ずしも滴移行の明確な表示を与えるとは限らない。第2に、商業的に関心がある多くの溶接条件は、例えば5%より少ない二酸化炭素を有するアルゴン・ベースの混合物で遮蔽された炭素鋼溶接のカット・オフを、信頼性良く誘発するためのアーク光強度における十分な変化を生じない。第3に、実時間で各瞬間パルスを変えることによるGMAWプロセスの制御は、制御範囲を超える電流変化を引き起こすことがあり、結果として制御の発振、不安定な金属移行、及び低下した溶接品質を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パルス化GMAWシステムにおける電力パラメータ制御の複雑性を低減する技術の必要がある。特に、溶接材料及びプロセス条件とは無関係な、GMAWプロセスにおける安定した金属移行を作る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例は、パルス化電力アーク溶接プロセスの適応制御の方法である。この方法は、アーク溶接パルスの間に放出される信号を検知するステップを含む。訓練可能なシステムは、信号から実験的な移行モードを認識し、かつ後続のパルスで修正された移行モードを作るようにパルス化電力パラメータ・セットを決定するために用いられる。他のステップは、パラメータ・セットを使用して電源を制御する。
【0010】
本発明の他の実施例は、パルス化電力のアーク溶接プロセスを制御するためのニューラル・ネットワークを訓練する方法である。複数のパルス例に関する訓練データ及び認証データを作るステップを含み、各例は、少なくとも1つのアーク溶接パルスの間に放出される信号の表示、及びパルスに関する実験移行モードを含む。他のステップは、制御フラグのセットを作ることであり、各フラグは、目標移行モードに対する実験移行モードの分類、及びパルス化電力パラメータ・セットにおける少なくとも1つの値に関する制御動作を含む。さらに他のステップは、訓練データ、認証データ、及びフラグを使用するニューラル・ネットワークを訓練することであり、それによって、ネットワークは、1つ以上のアーク溶接パルスの実験移行モードを認識し、制御動作を適用し、それによって後続のパルスで修正された移行モードを作る。
【0011】
本発明の他の実施例は、アーク溶接のためのパルス化電源を制御するための装置であり、センサ及びコントローラを含む。コントローラは、さらに、センサからの信号が獲得される信号獲得モジュールと、ニューラル・ネットワークとを含む。ニューラル・ネットワークは、信号からの実験移行モードを認識し、かつパルス化電源に関するパラメータ・セットを制御するように訓練し、それによって修正された移行モードが、後続のパルスで作られる。コントローラは、また、パラメータ・セットを使用して電源を制御するための制御インターフェースを含む。
【0012】
本発明の他の実施例は、コンピュータ可読媒体、及び媒体によって伝えられる命令を含むコンピュータ・プログラム製品である。命令は、コンピュータが、アーク溶接プロセスの間に放出される信号から実験移行モードを認識し、かつ修正された移行モードを作るためにアーク溶接パルス化電源に関するパラメータ・セットを決定させるものである。
【0013】
開示された実施例は、自動化されたGMAW溶接プロセスにおける著しい改善を提供する。実施例は、溶接パルス毎に所望の単一の金属滴移行モードを維持若しくは達成するために、溶接プロセスによって放出される簡単な信号を使用する。実施例は、雑音が多く、若しくは滴移行の不明瞭な指示を与える信号と両立する。実施例は、また、5%より少ない二酸化炭素を有するアルゴン・ベースの混合物で遮蔽された炭素鋼溶接を含む、様々な溶接条件と両立する。さらに、実施例は、改善された溶接品質及び均一性を与える、発振なしの安定な金属移行条件を導く。
【0014】
本発明の前述の及び他の対象、特徴、及び利点は、類似する参照符号が、異なる図を通して同じ部品を参照する添付の図面で示されるように、本発明の特定の実施例の以下のより詳細な記載から明らかであろう。図面は、必ずしも同一の縮尺ではなく、本発明の原理を示すときに代わりに強調される。
【実施例】
【0015】
開示される実施例は、一般に、溶接材料及びプロセス条件にかかわらず安定した金属移行条件を作るために、アーク溶接プロセスを制御することに関連する。本発明の特定の実施例は、単一のプロセス変数、すなわち溶接プロセスによって放出される信号を認識することによって、GMAWプロセスを制御するために訓練可能なシステムを使用する方法及び装置を含む。
【0016】
パルス化GMAWプロセスは、ワークピース及び溶接されるべきワークピースの領域近くに配置される消費可能な電極に、時間に依存する電力を供給するために電源を使用する。電気アークは、ワークピースと消費可能な電極との間に作られ、金属滴を作らせかつ消費可能な電極の端部からワークピースへ移行させる。
【0017】
図1A〜1Cは、消費可能な電極の先端での金属滴形成の順次の略図であり、図1Aにおいて電極先端の液化を示し、図1Bにおいて滴形成を示し、かつ図1Cにおいて滴の分離を示す。
【0018】
図2は、パルス化GMAWプロセスを制御する特定の装置110の概略ブロック図である。溶接電源112は、消費可能な金属電極114及び1つ以上のワークピース116に接続される。電気アークは、電極114とワークピース116との間に作られ、ワークピース116に移行される電極114の先端で金属滴115を形成させる。センサ118は、溶接プロセスによって放出される信号からアナログ電気信号を生成する。コントローラ120は、信号獲得モジュール122、汎用コンピュータ124、ディスプレイ126、訓練可能なシステム128、及び制御インターフェース130を含む。信号獲得モジュール122は、センサからのアナログ信号を読み、任意にフィルタリングし、信号をコンピュータ124へ送る前にアナログ信号をデジタル化する。訓練可能なシステム128は、スタンドアロン・モジュールであることができ、若しくはハードウェア又はソフトウェア・コンポーネントとして、汎用コンピュータ124で実装されることができる。訓練可能なシステム128は、信号を認識し、かつ対応する実験移行モードに応じて信号を分類する。訓練可能なシステム128は、次に、後続のパルスにおいて修正された移行モードを作るために、電源112へ制御インターフェース130を介して制御動作を出力し、例えば後続のパルスのパルス期間を変更する。
【0019】
他の実施例において、コントローラ120は、訓練可能なシステム128なしに構成されることができる。この場合、訓練されたオペレータが、信号を評価し、かつ修正された移行モードを作るために手動で電源パラメータを変更するように、コンピュータ124及びディスプレイ126は、構成されることができる。
【0020】
電源112は、例えば方形波、正弦波、のこぎり波、前述の線形の組合せなどである電気波形を作る。好ましくは、波形はほぼ方形波である。
【0021】
例えば、図3は、電源112によって作られる方形波のパルス波形の概略である。図3において、電流は、時間の関数としてグラフ化される。波形は、周波数、パルス電流210(最大電流)、ベース電流212(最小電流)、パルス期間214、及びベース期間216を有する。電源の出力128は、また関連するパルス電圧(示されていない)を有する。これらのパラメータは、独立して若しくは従属して変わることがある。例えば、パルス期間及びベース期間は、変わることができ、一方周波数は一定のままである。電源は、パルスの間若しくは後続のパルスのいずれかで、1つ以上のこれらのパラメータを変えることによって制御されることができる。例えば、溶接プロセスは、将来のパルスに関してパルス期間を変更することによって制御されることができる。
【0022】
溶接材料、溶接環境、及び電源に応じて、任意の数の滴が、1つのパルス波形全体の間に分離することができ、それらの滴は、波形の任意の点の間で分離することができる。溶接品質は、一般に、一貫した移行モードに応じる。目標移行モードは、パルスの約数パーセントに関して、1つの滴が、パルス期間のほぼ中央の間にパルス毎に移行されるときに、発生するように規定されることができる。パルスのパーセントは、約50%から約100%の間、90%が特に適切なパーセントである任意の適切なパーセントであるように選択されることができる。
【0023】
実験移行モードは、アーク溶接プロセスから放出される信号によって示される明らかな移行モードである。修正された移行モードは、1つ以上の電源パラメータを変更することによって作られる移行モードである。例えば、修正された移行モードは、目標移行モードに近づき、すなわち、修正された移行モードは、電源パラメータを変更する前に観察される実験モードより目標移行モードに類似する。より詳細には、修正された移行モードは、目標移行モードである。
【0024】
滴移行モードは、滴移行に関連するアーク溶接パルスの間に放出される信号を検知することによって観察されることができる。信号は、例えば、放射フラックス、電位フラックス、音響放射、機械振動、磁気フラックスなどでありえる。センサは、例えば、フォトダイオード、電荷結合デバイス(CCD)、検流計、マイクロホン、圧電振動センサ、容量センサ、磁力計などの信号を検知するデバイスである。センサは、受動センサ、すなわち溶接プロセスから自然に放出される信号を検知するセンサ、若しくは能動センサ、すなわちレーザに結合されたフォトダイオードなどの溶接プロセスを問い合わせるデバイスに結合されたセンサでありえる。好ましくは、検知された信号は、放射フラックスであり、すなわちアーク溶接パルスの間に自然に放出されたルミネッセンスであり、かつセンサはフォトダイオードである。
【0025】
溶接材料、溶接環境条件、及び電源パラメータに応じて、放出される信号は、明らかな滴移行の表示から滴移行の不明瞭な表示の範囲を含むことができる。すなわち、1つの極値において、信号は、滴移行に相関された明らかな単一の特徴を示すことができ、他の極値において、信号は不明瞭な滴移行作用を示すことがある。「不明瞭な滴移行」は、プロセス若しくは検知システムにおける雑音のために雑音が多い若しくは不連続な信号を含むことがあり、また滴移行イベント自体が不連続ではないときに生じることがある。したがって、以下に記載されるように、本発明の1つの態様は、信号の移行モードが、簡単な閾値若しくはカット・オフによって単に決定されるより、むしろ認識される。閾値システムは頑強ではなく、すなわち、不明瞭な作用に余裕はなく、一般に調整なしに異なる条件に適用されることはできない。
【0026】
図4A〜図4Eは、様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。図4Aにおいて、1つの滴が、パルスのほぼ中央で移行され、図4Bにおいて、1つの滴が、パルスの始めで移行され、図4Cにおいて、パルス毎に1つの滴が、パルスの終わりで移行され、図4Dにおいて、1つの滴が、パルス期間の代わりにベース期間の間で移行され、図4Eにおいて、1つ以上の滴が、パルス期間毎に移行される。
【0027】
図5〜7は、ミリ秒(ms)単位の時間の関数として電圧(V)単位の出力としてグラフ化された典型的な放出されたルミネッセンス信号を、対応する滴移行の実際の高速ビデオ・フレームと比較することによって、実際の実験移行モードを示し、各フレームの時間は、各インセット・フレームから信号の対応する時点までの矢印によってほぼ示される。
【0028】
図5は、センサ信号とパルス期間毎の1つの金属滴に近接するビデオ画像との比較である。図5に使用される条件は、ワークピースから約20mmの距離で1.2ミリメートル(mm)普通の炭素鋼の消費可能な電極、バランス・アルゴンを有する約5%のO2の遮蔽ガス、パルス電流250A、パルス期間5ms、ベース電流100A、ベース期間10ms、及び1分間毎に3.5メートル(m)のワイヤ送り速度を含む。
【0029】
図6は、センサ信号とパルス期間毎の1つ以上の金属滴に近接するビデオ画像との比較である。図6に使用される条件は、ワークピースから約18mmの距離で1.2mmのステンレス鋼の消費可能な電極、バランス・アルゴンを有する約3%のCO2及び2%のN2の遮蔽ガス、パルス電流240A、パルス期間2ms、ベース電流40A、ベース期間10ms、及び2.1m/minのワイヤ送り速度を含む。
【0030】
図7は、センサ信号とパルス期間毎の1つ以下の金属滴に近接するビデオ画像との比較である。図7に使用される条件は、ワークピースから約18mmの距離で1.0mmのアルミニウムの消費可能な電極、アルゴンの遮蔽ガス、パルス電流155A、パルス期間2.5ms、ベース電流20A、ベース期間6ms、及び4.1m/minのワイヤ送り速度を含む。
【0031】
本明細書で使用されるように、訓練可能なシステムが、プログラム、アルゴリズム、若しくは他の解析方法であり、それらにおいて、データは、システムがパターンを決定するために「学習」することができる訓練セットの形態で入力され、訓練セットの結果に類似する未知のものの解析時に結果の予測を可能にする。訓練可能なシステムは、ソフトウェア・プログラム、フィールド・プラグラム可能なゲート・アレイ、カスタム・マイクロプロセッサなどのハードウェア・アルゴリズム、それらの組合せなどのハードウェアに符号化されたアルゴリズムであることができる。知られていないサンプルの「学習」及び分析は、サポート・ベクトル・マシン(SVM)、人工ニューラル・ネットワーク、分類及び回帰分析(CART)、ベイズ・ネットワーク、若しくは他のアルゴリズム、ソフトウェア・プログラム、又はそれらの組合せを含む多数の方法のうちの任意の方法によって実行されることができる。
【0032】
人工のニューラル・ネットワークは、訓練可能なシステムであり、この訓練可能なシステムは、その機能性が、生物学的なニューロンの機能性に緩く基づく簡単な処理要素、ユニット、若しくはノードの相互接続である。各処理要素(「ニューロン」)は、いくつかの重み付けられた入力(「シナプス」)の合計を、非線形伝達機能(S字状機能など)を使用して出力に変換する。結果として、ニューラル・ネットワークは、また並列分散プロセッサとして記載される。
【0033】
本発明において、多数の異なるニューラル・ネットワーク・アーキテクチャが、使用されることができ、例えば、Adalineネットワーク、後方伝播ネットワーク、Hopfieldモデル、両方向結合性メモリ・ネットワーク、Boltzmannマシン、カウンタ伝播ネットワーク、自己構成マップ、適応共振理論ネットワーク、蓋然性ニューラル・ネットワークなどを含む。例えば、参照によってその開示全体が本明細書に組み込まれる、John WileyによるMasters,T、「Practical Neural Network Recipes」、ニューヨーク、1993年を参照されたい。より詳細には、蓋然論的ニューラル・ネットワークが使用される。蓋然性ニューラル・ネットワークは、高速訓練速度、さらなる例に対する訓練の容易性、雑音の多い若しくは不連続的なデータに対する頑強性、及びパターンなどの分類データにおける良好な性能を含む、いくつかの利点を提供する。例えば、参照によってその開示全体が本明細書に組み込まれる、Specht,D.F.「Neural Networks」、第3巻、1990年、頁109−118、米国特許第6442536号、米国特許第5554273号、及び米国特許第5327357号を参照されたい。
【0034】
蓋然論的ニューラル・ネットワークは、入力及び出力層に加えて2つの隠れた層を含み、訓練データに対して入力データを分類するために使用されるニューラル・ネットワークである。
【0035】
例えば、図8は、蓋然論的ニューラル・ネットワークの特定の数学的スキームを示す。一般に、ベクトルa(すなわち、a={a1,a2,...ai,...am})として表されるm個の入力が、入力重みマトリクスWを介して、第1の隠れた層若しくはパターン層におけるn個のニューロンに接続される。
【0036】
【数1】
【0037】
Wのn×m重み要素は、訓練データから展開される。第1の層は、層に関してネット入力ベクトルt(すなわち、t={t1,t2,...tj,...tn})を作るために、例えばt=‖Wj−a‖b={t1,t2,...tj,...tn}、入力と訓練データとの間の分離を計算する。
【0038】
示されるように、各要素tjの計算は、各ニューロンの感度を調整するために、バイアス調整bj(すなわち、バイアス・ベクトルb={b1,b2,...bj,...bn}の要素)で乗算することを含むことができる。
【0039】
各ネット訓練入力tjは、次に、伝達関数f、好ましくはS字状若しくは径方向基本関数などの非線形関数によって動作される。最も好ましくは、伝達関数は、例えば径方向基本関数である。
【0040】
【数2】
【0041】
伝達関数の作用は、入力データが訓練データに近い蓋然性を表す各ニューロンに関する出力rjを計算することである。第1の層に関する出力のセットは、このように、出力ベクトルr、すなわちr={r1,r2,...rj,...rn}によって表される。訓練データに近い入力は、伝達関数の最大値に近い出力を生成し、訓練データから遠い入力は、ゼロに近い出力を生成する。いくつかの訓練入力に近い入力は、いくつかのニューロンから大きな出力を有する。パラメータσは、基本関数の広がりであり、より大きな広がり値は、より多くのニューロンを入力に応答させ、より狭い広がりは、よりわずかなニューロンからのより多くの特定の応答をさせる。
【0042】
第2の若しくは加算層におけるp個のニューロンは、p個のクラスすなわち入力データが分類されるべきである実験モードに対応する。第1の層は、層重みマトリクスW’を介して加算層に接続される。
【0043】
【数3】
【0044】
マトリクスW’は、p個の要素のn個の列からなり、各ベクトルは、p個のクラスの1つに対応する要素に関して1であり、他ではゼロである。加算層に対するネットの入力ベクトルt’は、マトリクスW’と先行する層の出力rとの積によって作られる。t’=W’r={t1’,t2’,...tk’,...tp’}
【0045】
したがって、各第2の層ニューロンに関するネット入力tk’は、入力データが、p個のクラスの特定のk個のクラスを表す蓋然性を表す。
【0046】
第2の層での伝達関数は、どのようにこの分類情報を出力するかを決定する。例えば、第2の層の伝達関数は、蓋然性をランク付けし、かつ最も高い蓋然性値に1を割り当てて他の値に0を割り当てる関数に匹敵する。次に出力は、クラス、すなわち蓋然論的ニューラル・ネットワークが入力データに関して決定される実験モードを表す。したがって、PNNは、入力データをとり、訓練データとそれを比較し、データが任意の特定のクラスすなわち実験モードである蓋然性を計算し、その後、蓋然性に基づいてそれにクラスを割り当てる。
【0047】
当業者は、ニューラル・ネットワークなどの訓練可能なシステムに含まれる方法は、コンピュータで使用可能な媒体を含むコンピュータ・プログラム製品で実現されることができることを認識すべきである。例えば、そのようなコンピュータで使用可能な媒体は、記憶されたコンピュータ可読プログラム・コード・セグメントを有する、固体メモリ・デバイス、ハード・ドライブ・デバイス、CD−ROM、DVD−ROM、若しくはコンピュータ・ディスケットなどの可読メモリ・デバイスを含むことができる。コンピュータ可読媒体は、また、デジタル若しくはアナログデータ信号としてプログラム・コード・セグメントを伝える、光学、有線、若しくは無線のいずれかの、バス若しくは通信リンクなどの通信若しくは伝送媒体を含むことができる。
【0048】
ネットワークの有効な訓練に関する1つの態様は、ネットワークの一般化を確実にするために、データをオーバ・フィッティングすることなくデータにおける一般的な傾向を獲得する。このために、訓練されるデータは、一般に訓練セットと確認セットとに分割される。ネットワークは、その性能が訓練セットに関する最小基準に達するまで、連続して重みを調整しかつ処理要素を追加することによって構築され、一般化は、次に確認セットを使用してネットワークの性能によって評価される。
【0049】
システムにおいて、訓練セットは、実験移行の滴移行モードと相関される信号の例を含む。各例は、パルスに対応する信号の表示、及びそのパルスの高速ビデオを検査することによって決定される例えばパルス毎に1つの滴の実験移行モードを含む。信号の表示は、単一のパルス、複数のパルスのウインドウを有するサンプル、複数のパルスのサンプルから代表的なパルス、複数のパルスの平均である単一のパルスなどでありえる。信号の表示は、一般に別個の形態である。例えば、パルスは、等しいセグメントに分割されることができ、各セグメントは、平均信号パラメータ及び傾斜パラメータなどのアブストラクト・パラメータに低減されることができる。確認セットは、訓練セットと同じ形態であるが、同じ条件下で収集された異なる実験データから形成される。
【0050】
ネットワークの出力は、電源に関する制御パラメータを示す1つ以上の制御フラグのセットである。例えば、システムは3つのフラグを使用することができる。第1のフラグは、デフォルト条件であり、すなわち実験移行モードが目標移行モードに一致し、制御パラメータにおいて変更がなされない。第2のフラグは、目標モードがパルス毎の1つの滴であるとき、例えばパルス毎に1つ未満の滴の目標モードに合わない実験モードに対応する。この例において、制御動作は、パルス期間における増分の増加である。第3のフラグは、パルス毎の1つより多い滴に対応し、パルス期間における増分の低減の制御動作を有する。さらなるフラグは、制御出力に関するより小さい増分を提供し、若しくは異なるパラメータに関する別個の制御出力を提供するために使用されることができる。
【0051】
本発明の特定の実施例は、まったく限定するものではない以下の実施例によって示される。
【0052】
図9は、センサを有する特定の溶接装置410を図示する。センサ・ハウジング412は、溶接ガン414に対して搭載される。ハウジングは、示されるように溶接ガン上に若しくは溶接ガンの近くに搭載される。適切な搭載ハードウェアは、センサ−アーク軸距離416、センサ−金属ベース高さ418、及び作動角度420などの位置調整を与える。ハウジングの位置は、センサが十分な信号を得ることを確実にするために、実際の実行において調整される。
【0053】
図10は、特定のセンサ・ハウジング412の断面を図示する。センサ・ダイオード510は、アルミナ・ハウジング512内に搭載される。溶接ゴーグルに使用されるなどのニュートラル密度フィルタ514(シェード部材10)が、センサの前面に取り付けられる。このフィルタは、過剰な光及び熱からセンサを保護し、かつセンサ・キャビティを溶接プロセスによってスパッタリングされた金属を排除する。
【0054】
溶接プロセスによって放出されるルミネッセンスを測定するために使用されるフォトダイオード・センサは、それが、その応答曲線の直線領域で動作するように、すなわちその最大利得が、当該溶接プロセスによって放出される信号と重なるように選択される。この例において、センサは、以下の技術的仕様を有する高速シリコンPINフォトダイオードであるTIL78である。すなわち、ピーク波長=890nm、光電流(最大)=28.5μA、暗電流(最大)=60nA、上昇/降下時間=5ns、電力散逸=100mW、受容角度=120°、容量(VR=20V)=4pF、及び動作温度=−40℃〜+100℃である。
【0055】
センサからの電流は、信号インターフェースによって増幅されかつデジタル化されることができ、カスタム信号インターフェース、ソフトウェア・パッケージ、PCのためのソフトウェアで構成可能なアナログ/デジタル・データ獲得カードなど、当業者に知られている多数の獲得システムの任意のものであることができる。例えば、使用されることができる市販で利用可能な解決方法は、例えば、Neural Network Toolbox 4.0.2を有するMATLAB(登録商標)(The MathWorks,Inc.、Natick、MA)などのソフトウェア・パッケージ、若しくは、例えば、LabVIEWソフトウェアと組み合わせられたNIPCI−6071Eアナログ/デジタル・データ獲得カード(両方ともNational Instrumens Corporation、Austin、TXから)などの組み合わせられたハードウェア/ソフトウェア・システムを含む。
【0056】
図11は、特定の信号獲得モジュールの一部の電気的略図である。この回路610は、フォトダイオード・センサ510からの電流信号を、INA114などの演算増幅器612によって、増幅しかつ電圧信号に変換する。この演算増幅器の利得は、出力信号の飽和を避けるために、可変抵抗器614によって調整されることができる。この例において、演算増幅器612の出力信号に関する適切な出力レベルは、増幅器電源(10−12V)の約10%(ほぼ1V)である。
【0057】
第2の演算増幅器616、この場合にはLM741は、利得を減らす。再び、可変抵抗器618は、入力電圧信号と出力電圧信号との間の利得を調整する。ルーチンの実験を通じて、2つの可変抵抗器は、ベース電流及びパルス電流に対応するフォトダイオード信号の極値は、各演算増幅器の直線範囲内であるように調整されることができる。回路は、5Vから9Vの電源620、984オームの固定抵抗器622、63Vで47マイクロファラッドのコンデンサ624、559オームの固定抵抗器626、63Vで47マイクロファラッドのコンデンサ628、及び630での信号出力をさらに備える。
【0058】
図12は、特定の信号獲得モジュールのアナログ・デジタル処理回路のブロック図である。獲得モジュール710において、A/Dコンバータ714(±10ボルト)の性能範囲に合うように増幅された出力630は、低域通過フィルタ712(2kHzのカット・オフ)によって調整される。これは、獲得性能より高い入力信号周波数によって引き起こされるエイリアシングを防ぐ。この例では、A/Dコンバータ714は、12ビットA/DコンバータであるADS7806である。この例に関して、12ビットの解像度は、関連する情報を収集するには十分であるが、より高いサンプリング速度が使用されることができる。デジタル出力信号は、ディスプレイのためのPC並列ポート716若しくはニューラル・ネットワークに向けられることができる。
【0059】
データがPCへ送られるなら、従来技術で知られている多数のデータ表示プログラムの任意のもの、例えば、上述のMATLAB(登録商標)ソフトウェアが、データをグラフ化しかつ解析するために使用されることができる。代わりに、専用プログラムが、データを可視化するために書かれることができる。これらの場合、目標移行モードに対する実験移行モードの認識は、訓練されたユーザによって実行されることができる。ユーザは、実験移行モード信号が、目標移行モード信号に合うように見えるまで、パルス化電源のパラメータを修正することができる。
【0060】
しかしながら、この例において、パルス電力パラメータの自動制御は、上述のMATLAB(登録商標)ソフトウェアを使用して作られた、2層の蓋然論的人工ニューラル・ネットワークによって提供される。
【0061】
ニューラル・ネットワークの開発の間、訓練データ・セット及び確認データ・セットである2つのデータ・セットが作られる。各セットは、700個パルスに関する情報を含む。未加工の信号データは、以下のような1つ以上のパラメータを使用して、いくつかの実験のバッチを使用して獲得される。すなわち、ガスのタイプ(純粋なAr、Ar+2%O2、Ar+4%CO2、Ar+8%CO2、Ar+5%O2、Ar+3%CO2+2%N2)、消費可能電極組成(普通の炭素鋼、ステンレス鋼、及びアルミニウム)及び消費可能な電極サイズ(1.0mm及び1.2mmの直径)、溶接位置(フラット及びオーバヘッド)、及び接合構成(ビード・オン・プレート及び溝付)である。電源パラメータは、パルス期間が、パルス毎の1つ未満の滴からパルス毎の1つより多い滴まで、パルス毎の1つの滴の目標移行モードを中心に移行モードの範囲を通じて変化されることができる。
【0062】
実験条件は、実験中で各データ・セット内で変更し、センサ信号は、以下のような異なるパターンの識別を導くパラメータ値に基づき、ニューラル・ネットワークによって調整される。各期間は、5つの等しいセグメントに分けられる。2つの値が、各セグメント、期間の最大電流に対する区間の平均電流の比であるパルス電流分散D、及び傾斜或いは時間に対する信号の変化レートに関して計算される。未加工のセンサ信号データは、各データ・セットに含まれる前に準備される。遷移信号及び雑音で問題を避けるために、センサ信号データは、サンプル・ウインドウ、この例では10個のパルスを含むウインドウ内で獲得される。ウインドウ内の各パルス期間は、別個に取り扱われ、すなわちデータは、別個のパルス期間に分離される。この例では、したがって、各パルス期間は、ともにパターンを構成する5×2=10個の値を生成する。各サンプル・ウインドウ内の10個の期間に関するパターンは、ランク付けされ、最も一般的なパターンは、サンプル・ウインドウ全体の表示として選択される。
【0063】
実際の滴分離作用は、高速ビデオによって記録される。ビデオは、センサ・データと画像を自動的に相関する、専用のコンピュータで制御されたシステムによって実行される。システムは、溶接領域を照明するためにヘリウム・ネオン・レーザを含み、結果としての画像は、1秒毎に2000個のフレームのビデオ・カメラによって獲得される。このビデオ・システムの詳細は、その教示全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Balsamo,PSS;Vilarinho,LO;Vilela,M;Scotti,Aの「International Journal of Joining Materials」、第12巻、2000年、1〜12頁に記載される。
【0064】
一連の制御フラグは、ネットワークに関して決定される。この例において、実験滴移行モードは、目標移行モードに中心合わせされた7個の制御フラグに分類される。目標モードは、パルス期間の中心のまわりで移行されるパルス毎の1つの滴である。後続のパルスに関するパルス期間の制御に関して、フラグは、あれば変更が行われるべきシステムを表す。図1−3は、パルス期間がより長くあるべきであることを示し、一方、図5−7は、パルス期間がより短くあるべきであることを示す。フラグ4は、デフォルト条件であり、すなわち実験モードは、目標モードに合う。これらのフラグ及び上述の高速ビデオ画像を使用して、訓練及び確認データ・セットにおける、各パルスの滴移行モード及び各パルス毎の実験移行モードが分類される。
【0065】
【表1】
【0066】
訓練セット及び確認セットの2つのデータ・セットは、特徴付けられた未加工データ及び割り当てられた制御フラグから作られる。表2は、この例で使用されるセットの構造を示す。各記録は、上述の10個のパルス・サンプル・ウインドウから選択された代表的なパルス・パターンすなわち分散(D)、及び各セグメントに関するデータから計算された傾斜値(S)を含む。したがって、セットにおける各記録は、割り当てられた制御フラグに加えて10個の特徴数を含む。十分なデータは、各データ・セットに関するパルス記録の実質的な数、この例ではセット毎に700パルス記録を提供するために収集される。条件は、実験中では各データ・セット内で変更するが、データ・セット間の条件の範囲は同一である。
【0067】
【表2】
【0068】
図13は、この例で使用される特定のPNNのトポロジの概略である。PNN810において、入力層812は、10個のデータ点に対応するm=10入力のセット、すなわち5個のD値及び5個のS値を、n=10ニューロンを含むパターン層814へ送る。パターン層816は、データを記載する7個の実験モードに対応するp=7のニューロンの加算層816に接続される。出力層818は、加算伝達機能からの分類を収集し、かつ出力820へ分類された実験モードに対応する制御フラグを送る。
【0069】
PNNは、訓練データ・セットを使用して訓練される。その後、確認データ・セットは、訓練されたネットワークが、過剰に訓練されることなく、許容可能な精度で新規な信号を認識することができることを確実にするために使用される。この例に関する確認段階において、ニューラル・ネットワークによる予測されるフラグと確認データに割り当てられた実際のフラグとの間のマッチングのレベルは、90%より大きく、しばしば98%より大きい。
【0070】
次に、訓練されたシステムは、実際の試験における溶接電源を動作するために使用される。システムは、パルス毎に1つの滴の目標移行モードを結局維持して、実験移行モードを修正されたモードに変更するために、パルス期間パラメータを容易に変更する。性能は、溶接プロセスの高速ビデオと時間にわたるセンサ信号と比較することによって確認され、任意の実験モードから目標移行モードへの移行モードにおける変更が、容易に見られる。
【0071】
実験は、ニューラル・ネットワークの代わりに若しくはニューラル・ネットワークに加えて、信号を直接ディスプレイに送ることによって変更されることができ、訓練されたオペレータは、信号と図4A−Eに示される信号の概略とを比較することができる。オペレータは、パルス毎に1つの滴の目標移行モードを結局マッチングして、実験(表示された)移行モードを修正されたモードに変更するために、電源のパルス期間を変更する。再び、性能は、溶接プロセスの高速ビデオと時間にわたるセンサ信号とを比較することによって容易に確認される。
【0072】
変形例において、ただ3つのフラグが使用され、すなわち、例えば上述のようなフラグ3、4、及び5などの、増大動作、低減動作、及び動作なしである。フラグのより多い数は、より細かい制御を与えるが、頑強性が弱く、すなわち新たなシステムに一般化することがより難しい。
【0073】
他の変形例において、ただ2つだけのフラグが使用され、すなわち、動作なし、若しくは増大動作若しくは低減動作のいずれかである調整である。例えば、実験移行モードが目標モードであるなら、動作は行われない。実験モードが目標モードではないなら、システムは、増大若しくは低減のいずれかの調整に関する方向を「推測」する。目標モードが、タイムアウト期間内に到達しないなら、調整は、反対の方向に進む。
【0074】
他の変形例において、サンプル・ウインドウのサイズは、ウインドウ毎に1から40パルスに選択して変更される。より少ない数のパルスは、制御のより少ない頑強性を導き、すなわちシステムは、遷移若しくは雑音をより受け易く、一方、より多い数のパルスは、制御のより大きな頑強性を導くが、制御動作をより遅くすることが見出された。数が、40より有意に多くなると、制御不安定性の結果になる。
【0075】
他の変形例は、抵抗値R1及びR2を手動で調整することによって、インターフェース利得を変更することである。代わりに、自動利得回路は、アークによって放出される全体光に基づいて自動的に抵抗器を調整するために、第2の光センサと組み合わされることができる。
【0076】
さらに他の代わりの例は、より多くの一般的なシステムを有することである。一度にいくつかの選択条件(所定の電極サイズ、材料、及びガス組成)に関して訓練されたニューラル・ネットワークを有する代わりに、同時に考慮される条件の広い範囲に関して訓練されることができる。これは、一般的に、より多くの実験、より多くの訓練及び確認セット、及びより長い訓練時間を伴うが、非常に広い範囲の条件下で溶接プロセスを制御することができる訓練されたシステムを結果として生じることができる。
【0077】
システムが、特に、特定の実施例を参照して示されかつ記載されたが、形態及び詳細における様々な変更は、添付の請求項に包含される本発明の範囲から逸脱することなくなされることができることは、当業者には理解されるであろう。例えば、本発明の方法は、様々な環境に適用されることができ、記載された環境に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】消費可能な電極での金属滴形成の順次の略図である。
【図1B】消費可能な電極での金属滴形成の順次の略図である。
【図1C】消費可能な電極での金属滴形成の順次の略図である。
【図2】パルス化GMAWプロセスを制御するための特定の装置の概略ブロック図である。
【図3】電源によって作られる方形波パルス波形の概略である。
【図4A】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図4B】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図4C】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図4D】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図4E】様々な移行モードを表す理想的な略図を示す。
【図5】センサ信号とパルス期間毎の1つの金属滴に近接するビデオ画像との比較である。
【図6】センサ信号とパルス期間毎の1つ以上の金属滴に近接するビデオ画像との比較である。
【図7】センサ信号とパルス期間毎の1つ以下の金属滴に近接するビデオ画像との比較である。
【図8】蓋然論的ニューラル・ネットワーク(PNN)の特定の数学的スキームを示す。
【図9】センサを有する特定の溶接装置を図示する。
【図10】特定のセンサ・ハウジングの断面を図示する。
【図11】特定の信号獲得モジュールの一部の電気的略図である。
【図12】特定の信号獲得モジュールのアナログ・デジタル処理回路のブロック図である。
【図13】特定のPNNのトポロジの概略である。
【図1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス化電力のアーク溶接プロセスを適応制御する方法であって、
アーク溶接パルスの間に放出される信号を検知することと、
前記信号から実験移行モードを認識し、かつ後続のパルスで修正された移行モードを作るためにパルス化電力のパラメータ・セットを決定するように、訓練可能なシステムを用いることと、
前記パラメータ・セットを使用して電源を制御することとを含む方法。
【請求項2】
前記信号が、放射フラックス信号である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単一の金属滴だけが、前記パルスの約90%に関して各パルスの間に移行される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータ・セットが、パルス電流、パルス電圧、ベース電流、パルス期間、周波数、及びベース期間からなる群から選択された少なくとも1つの値を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記修正された移行モードが、前記パルス期間を制御することによって作られる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記実験移行モードが、不明瞭な滴移行作用を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記訓練可能なシステムが、人工ニューラル・ネットワークである請求項5に記載の方法。
【請求項8】
パルス化電力のアーク溶接プロセスを制御する方法であって、
アーク溶接パルスの間に放出される放射フラックス信号を検知することと、
前記信号から実験移行モードを認識し、かつ後続のパルスで修正された移行モードを作るためにパルス期間増分を決定するように、ニューラル・ネットワークを用いることと、
パルス期間増分を使用して電源を制御することとを含み、それによって単一の金属滴だけが、前記パルスの少なくとも約90%に関して各パルスの間に移行される方法。
【請求項9】
パルス化電力のアーク溶接プロセスを制御するために、ニューラル・ネットワークを訓練する方法であって、
少なくとも1つのアーク溶接パルスの間に放出される信号の表示、及び前記パルスに関する実験移行モードをそれぞれ含む、複数のパルス例に関する訓練データ及び確認データを作ることと、
目標移行モードに対する実験移行モードの分類、及びパルス化電力のパラメータ・セットにおける少なくとも1つの値に関する制御動作をそれぞれ含む、制御フラグのセットを作ることと、
前記訓練データ、前記確認データ、及び前記フラグを使用してニューラル・ネットワークを訓練することとを含み、それによって、前記ネットワークが、1つ以上のアーク溶接パルスの前記実験移行モードを認識し、かつ前記制御動作を適用し、それによって後続のパルスに修正された移行モードを作る方法。
【請求項10】
前記信号が、放射フラックス信号である請求項11に記載の方法。
【請求項11】
前記目標移行モードが、前記パルスの約90%に関して各パルスの間に移行される単一の金属滴から本質的になる請求項12に記載の方法。
【請求項12】
前記パラメータ・セットが、パルス電流、パルス電圧、ベース電流、パルス期間、周波数、及びベース期間からなる群から選択された値を含む請求項13に記載の方法。
【請求項13】
前記ニューラル・ネットワークが、前記パルス期間を制御することによって前記修正された移行モードを作る請求項14に記載の方法。
【請求項14】
前記実験移行モードが、不明瞭な滴移行作用を含む請求項15に記載の方法。
【請求項15】
アーク溶接のためのパルス化電源を制御する装置であって、
センサと、
前記センサからの信号が獲得される信号獲得モジュールと、訓練可能なシステムとを含み、前記訓練可能なシステムは、前記信号から実験移行モードを認識し、かつパルス化された電源に関してパラメータ・セットを制御し、それによって修正された移行モードが、後続のパルスに作られるように訓練される、コントローラと、
前記パラメータ・セットを使用して前記電源を制御するための制御インターフェースとを備える装置。
【請求項16】
前記センサが、フォトダイオードを備える請求項17に記載の装置。
【請求項17】
前記訓練可能なシステムが、ニューラル・ネットワークである請求項18に記載の装置。
【請求項18】
前記信号獲得モジュールが、増幅器及びアナログ・デジタル・コンバータを備える請求項19に記載の装置。
【請求項19】
前記パラメータ・セットが、パルス電流、パルス電圧、ベース電流、パルス期間、周波数、及びベース期間からなる群から選択された値を含む請求項20に記載の装置。
【請求項20】
アーク溶接のためのパルス化電源を制御する装置であって、
アーク溶接プロセスの間に放出された信号から実験移行モードを認識し、かつ
修正された移行モードを作るために、アーク溶接のパルス化電源に関するパラメータ・セットを決定するように訓練されるニューラル・ネットワークを備える装置。
【請求項21】
アーク溶接のためのパルス化電源を手動で制御する装置であって、
センサと、
コントローラとを備え、
前記コントローラが、
前記センサからの信号が獲得される信号インターフェースと、
前記信号が表示され、
参照信号が表示され、かつ
パルス化電源に関するパラメータ・セットが表示される、連続して更新されるディスプレイ・インターフェースと、
前記パラメータ・セットを変更するための入力インターフェースと、
前記電源に前記パラメータ・セットを適用するための制御インターフェースとを備える装置。
【請求項22】
コンピュータ・プログラム製品であって、
コンピュータ可読媒体と、
コンピュータに、アーク溶接プロセスの間に放出される信号から実験移行モードを認識させ、かつ
修正された移行モードを作るためにアーク溶接のパルス化電源に関するパラメータ・セットを決定させるために、前記媒体によって伝えられる命令とを含むコンピュータ・プログラム製品。
【請求項23】
パルス化電源のアーク溶接プロセスを適応制御するシステムであって、
アーク溶接パルスの間に放出される信号を検知する手段と、
前記信号から実験移行モードを認識する手段と、後続のパルスに修正された移行モードを作るようにパルス化電力パラメータ・セットを決定する手段とを備える訓練可能なシステムと、
前記パラメータ・セットを使用して電源を制御するための手段とを備えるシステム。
【請求項24】
パルス化電源のアーク溶接プロセスを制御するシステムであって、
アーク溶接パルスの間に放出される放射フラックス信号を検知する手段と、
前記信号から実験移行モードを認識する手段と、後続のパルスに修正された移行モードを作るようにパルス化電力パラメータ・セットを決定する手段とを備えるニューラル・ネットワークと、
単一の金属滴だけが、前記パルスの少なくとも約90%に関して各パルスの間に移行されるように、前記パルス期間増分を使用して電源を制御する手段とを備えるシステム。
【請求項1】
パルス化電力のアーク溶接プロセスを適応制御する方法であって、
アーク溶接パルスの間に放出される信号を検知することと、
前記信号から実験移行モードを認識し、かつ後続のパルスで修正された移行モードを作るためにパルス化電力のパラメータ・セットを決定するように、訓練可能なシステムを用いることと、
前記パラメータ・セットを使用して電源を制御することとを含む方法。
【請求項2】
前記信号が、放射フラックス信号である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単一の金属滴だけが、前記パルスの約90%に関して各パルスの間に移行される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータ・セットが、パルス電流、パルス電圧、ベース電流、パルス期間、周波数、及びベース期間からなる群から選択された少なくとも1つの値を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記修正された移行モードが、前記パルス期間を制御することによって作られる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記実験移行モードが、不明瞭な滴移行作用を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記訓練可能なシステムが、人工ニューラル・ネットワークである請求項5に記載の方法。
【請求項8】
パルス化電力のアーク溶接プロセスを制御する方法であって、
アーク溶接パルスの間に放出される放射フラックス信号を検知することと、
前記信号から実験移行モードを認識し、かつ後続のパルスで修正された移行モードを作るためにパルス期間増分を決定するように、ニューラル・ネットワークを用いることと、
パルス期間増分を使用して電源を制御することとを含み、それによって単一の金属滴だけが、前記パルスの少なくとも約90%に関して各パルスの間に移行される方法。
【請求項9】
パルス化電力のアーク溶接プロセスを制御するために、ニューラル・ネットワークを訓練する方法であって、
少なくとも1つのアーク溶接パルスの間に放出される信号の表示、及び前記パルスに関する実験移行モードをそれぞれ含む、複数のパルス例に関する訓練データ及び確認データを作ることと、
目標移行モードに対する実験移行モードの分類、及びパルス化電力のパラメータ・セットにおける少なくとも1つの値に関する制御動作をそれぞれ含む、制御フラグのセットを作ることと、
前記訓練データ、前記確認データ、及び前記フラグを使用してニューラル・ネットワークを訓練することとを含み、それによって、前記ネットワークが、1つ以上のアーク溶接パルスの前記実験移行モードを認識し、かつ前記制御動作を適用し、それによって後続のパルスに修正された移行モードを作る方法。
【請求項10】
前記信号が、放射フラックス信号である請求項11に記載の方法。
【請求項11】
前記目標移行モードが、前記パルスの約90%に関して各パルスの間に移行される単一の金属滴から本質的になる請求項12に記載の方法。
【請求項12】
前記パラメータ・セットが、パルス電流、パルス電圧、ベース電流、パルス期間、周波数、及びベース期間からなる群から選択された値を含む請求項13に記載の方法。
【請求項13】
前記ニューラル・ネットワークが、前記パルス期間を制御することによって前記修正された移行モードを作る請求項14に記載の方法。
【請求項14】
前記実験移行モードが、不明瞭な滴移行作用を含む請求項15に記載の方法。
【請求項15】
アーク溶接のためのパルス化電源を制御する装置であって、
センサと、
前記センサからの信号が獲得される信号獲得モジュールと、訓練可能なシステムとを含み、前記訓練可能なシステムは、前記信号から実験移行モードを認識し、かつパルス化された電源に関してパラメータ・セットを制御し、それによって修正された移行モードが、後続のパルスに作られるように訓練される、コントローラと、
前記パラメータ・セットを使用して前記電源を制御するための制御インターフェースとを備える装置。
【請求項16】
前記センサが、フォトダイオードを備える請求項17に記載の装置。
【請求項17】
前記訓練可能なシステムが、ニューラル・ネットワークである請求項18に記載の装置。
【請求項18】
前記信号獲得モジュールが、増幅器及びアナログ・デジタル・コンバータを備える請求項19に記載の装置。
【請求項19】
前記パラメータ・セットが、パルス電流、パルス電圧、ベース電流、パルス期間、周波数、及びベース期間からなる群から選択された値を含む請求項20に記載の装置。
【請求項20】
アーク溶接のためのパルス化電源を制御する装置であって、
アーク溶接プロセスの間に放出された信号から実験移行モードを認識し、かつ
修正された移行モードを作るために、アーク溶接のパルス化電源に関するパラメータ・セットを決定するように訓練されるニューラル・ネットワークを備える装置。
【請求項21】
アーク溶接のためのパルス化電源を手動で制御する装置であって、
センサと、
コントローラとを備え、
前記コントローラが、
前記センサからの信号が獲得される信号インターフェースと、
前記信号が表示され、
参照信号が表示され、かつ
パルス化電源に関するパラメータ・セットが表示される、連続して更新されるディスプレイ・インターフェースと、
前記パラメータ・セットを変更するための入力インターフェースと、
前記電源に前記パラメータ・セットを適用するための制御インターフェースとを備える装置。
【請求項22】
コンピュータ・プログラム製品であって、
コンピュータ可読媒体と、
コンピュータに、アーク溶接プロセスの間に放出される信号から実験移行モードを認識させ、かつ
修正された移行モードを作るためにアーク溶接のパルス化電源に関するパラメータ・セットを決定させるために、前記媒体によって伝えられる命令とを含むコンピュータ・プログラム製品。
【請求項23】
パルス化電源のアーク溶接プロセスを適応制御するシステムであって、
アーク溶接パルスの間に放出される信号を検知する手段と、
前記信号から実験移行モードを認識する手段と、後続のパルスに修正された移行モードを作るようにパルス化電力パラメータ・セットを決定する手段とを備える訓練可能なシステムと、
前記パラメータ・セットを使用して電源を制御するための手段とを備えるシステム。
【請求項24】
パルス化電源のアーク溶接プロセスを制御するシステムであって、
アーク溶接パルスの間に放出される放射フラックス信号を検知する手段と、
前記信号から実験移行モードを認識する手段と、後続のパルスに修正された移行モードを作るようにパルス化電力パラメータ・セットを決定する手段とを備えるニューラル・ネットワークと、
単一の金属滴だけが、前記パルスの少なくとも約90%に関して各パルスの間に移行されるように、前記パルス期間増分を使用して電源を制御する手段とを備えるシステム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−502001(P2006−502001A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−580025(P2003−580025)
【出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/009762
【国際公開番号】WO2003/082508
【国際公開日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/009762
【国際公開番号】WO2003/082508
【国際公開日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】
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