説明

溶接トーチのクリーニング装置

【課題】迅速で自動化が可能なクリーニングを促進し、溶接ロボット応用に特に好適である、溶接トーチのクリーニング装置を提供する。
【解決手段】溶接トーチ(11)のクリーニング装置は、溶接トーチ(11)の先端にクリーニング液を塗布する装置と、前記溶接トーチを電磁的クリーニングにかけるために、溶接トーチ(11)の挿入のための開口(4)を有するコイル(3)と、前記コイル(3)に接続された供給装置(7)とを含み、クリーニング液を塗布する装置およびコイル(3)は、電磁的に除去された異物を受けるためにコイル(3)の下方に配置された廃棄物容器(6)とともに、共通のハウジング(1)に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチのクリーニング装置に関するもので、クリーニング液を溶接トーチの先端に塗布するための装置と、溶接トーチを電磁界クリーニングに曝すために、溶接トーチ挿入用の開口を有するコイルと、前記コイルに接続された電力供給装置とを含む。
【背景技術】
【0002】
溶接手順の間、溶接トーチは溶融した金属スパッタ(spatter)によって汚染する。金属スパッタは、溶接トーチのガスノズル内に堆積し、そこで固体になる。すると、ガスノズルに流れる保護ガスが、堆積した金属スパッタによって攪乱されて、大気エアが溶接場所に到達すると、溶接プロセスに悪影響を与える。従って、完全に動作し、極めて清浄な溶接トーチは、高品質の溶接生産にとって重要である。
【0003】
その結果、溶接トーチは、付着した金属スパッタが定期的に除去される。クリーニングの間、溶接トーチは溶接プロセスに利用できない。従って、こうしたクリーニングを出来る限り速やかに実施する努力がなされる。溶接トーチをクリーニングするための機械的な方法では、ブラシ、ナイフなどの補助によって、堆積物が溶接トーチの先端から除去される。しかしながら、こうした機械的なクリーニング方法は、溶接トーチのガスノズル内部の完全なクリーニングを一定の限度までしか実施できない。さらに、溶接トーチの構成部品は、機械的な動きによって損傷を受け、これらの使用寿命が減少することになる。溶接トーチ部品の表面への損傷は溶接スパッタの付着を促進し、より急速にガスノズルの障害物をもたらし、溶接トーチの頻繁なクリーニングが必要になる。さらに、溶接トーチは、クリーニング前に冷却しなければならず、このことはクリーニング時間を延ばすことになろう。
【0004】
米国特許公報US4838287Aでは、溶接トーチのクリーニング方法が記載されており、電流が流れるコイルを使用することによって、溶接トーチの非接触クリーニングを実現している。このために溶接トーチの先端がコイルの開口の中に導入され、適当な電流パルスが印加される。その結果、電磁界が適当な磁力を発生し、溶接トーチ上の堆積物に作用して、これを除去する。堆積物の除去中は、機械的な動きが溶接トーチの部分に対して作用せず、傷付けるつけることもなく、これらの使用寿命を増加させる。
【0005】
一方では、電磁クリーニングの前に溶接トーチを冷却し、他方では、適当なクリーニング剤によって異物の除去を促進させるために、溶接トーチは、通常、液体中に浸漬される。その液体は、水または水と特殊な溶媒との混合から成る。効率的な電磁クリーニングのために、溶接トーチ上の金属スパッタが、クリーニング液への浸漬によって急速に冷却されれば、好都合となろう。金属スパッタと、通常は銅製であるガスノズルとの異なる熱膨張に起因して、こうした急速冷却は溶接トーチへの金属スパッタの付着を低減させる。
【0006】
溶接トーチをクリーニングするための構成は、溶接トーチを浸漬するための液体充填の浴槽と、溶接トーチの電磁クリーニングのためのコイルを備え、これは、例えば、国際特許公報WO01/56730A2に記載されている。そこには、液浴とコイルを含む支柱が溶接すべきワークピースの側方に直接配置され、特にロボットアームに搭載された溶接トーチは、溶接プロセス中でも自動的に清掃される。しかしながら、例えば、支柱にはコイル電源装置の場所が無く、これは適当なワイヤで接続しなければならず、この点が不利である。電源装置とクリーニングユニットとの間に設けられるこうしたワイヤは、高い電流パルスから誘導される電磁界を伝送するかもしれず、これが他の装置や制御システムの故障をもたらす可能性がある。
【0007】
最後に、ジェットノズルの補助によって、溶接トーチをクリーニングすることも可能であり、圧縮エア流により、冷たい媒体が清掃すべき表面に直接向けられる。このタイプの溶接トーチのクリーニング方法および装置は、例えば、ドイツ特許公報DE10063572A1により知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、迅速で自動化が可能なクリーニングを促進し、溶接ロボット応用に特に好適である、上述したタイプのクリーニング装置を提供することである。さらに、該装置は、可及的に簡単で費用効率に優れ、可及的に迅速な取り付けおよび取り外しが可能なように構成される。クリーニング中に除去された異物の廃棄は、可及的に容易なものになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、溶接トーチがクリーニング液または湿潤液の塗布中に実質的に同じ位置にあって、続いて電磁界に曝されることにより、達成される。従って、溶接トーチのクリーニング中に、溶接トーチを、クリーニング液が入った容器から電磁的スパッタ除去用のコイルへ移動させる工程を省くことができ、これにより必要なクリーニング時間の実質的な低減化が図られることになる。クリーニング手順中に溶接トーチが実質的に同じ位置にあることは、例えば、溶接トーチの長手方向での僅かな位置変化は許容されることを意味する。しかしながら、こうした僅かな位置変化は、ほとんど時間を必要としない。それは、クリーニング方法が極めて迅速に実行可能だからである。これに対して、従来のクリーニング方法では、クリーニング手順中に、溶接トーチをクリーニング液が入った容器からコイルへ新たに位置決めしなければならず、こうした位置変化は必要に応じて何回も繰り返す必要がある。これらの動作工程は、追加の時間を必要とし、溶接トーチの全体クリーニング時間を増加させ、この間、溶接トーチは溶接プロセスに利用することができなくなる。これらの方法では、溶接ロボットを動作させる場合、位置を2回定義しなければならない。
【0010】
溶接トーチ先端へのクリーニング液の塗布は、溶接トーチをクリーニング液中に浸漬させることによって行ってもよい。この際、溶接トーチは、クリーニング液が入った浴槽の中で移動したり、あるいは溶接トーチはその位置を維持した状態で、浴槽が溶接トーチに対して移動してもよい。
【0011】
溶接トーチ先端にクリーニング液で噴霧することによって、クリーニング液を塗布することも可能である。噴霧は、一方では、クリーニング液の消費を少なくするという利点があり、他方では、溶接トーチ内部へのクリーニング液の直接塗布を可能にする。さらに、溶接トーチ先端へのクリーニング液の噴霧は、クリーニング液が入った容器への浸漬よりも、金属スパッタの分離に対して、液体により作用する抵抗が無いという利点をもたらす。
【0012】
クリーニング液または湿潤液は、溶接トーチを冷却し、続いて異物の電磁的除去をも容易にする。
【0013】
溶接トーチでの汚れ蓄積が多くなると、クリーニング液の塗布工程および電磁的な異物除去工程を繰り返し行ってもよい。本発明に係る方法では、溶接トーチの位置を変えることは、全くあるいは実質的に必要でなく、幾つかのスパッタ除去を伴うクリーニングプロセスを迅速に実施することを可能とし、これにより溶接トーチの使用寿命を最大化させる。
【0014】
クリーニング液を塗布する装置が、電磁クリーニング用のコイルの下方にある適切な構成では、本発明の更なる特徴に係る溶接トーチは、前記クリーニング液の塗布のために、電磁的スパッタ除去中に想定される位置に比べて降下させてもよい。
【0015】
本発明に係る目的は、溶接トーチを清浄化するための上述した装置によっても達成され、クリーニング液を塗布する装置およびコイルは、電磁的に除去された異物を受けるためにコイルの下方に配置された廃棄物容器とともに、共通のハウジングに配置される。よって、個々の使用場所へ極めて素早く移動できる、格別にコンパクトなユニットが得られる。使用場所では、ユニットはたった少しの動作ステップ後に、作動状態に設定可能になる。こうした廃棄物容器の統合化によって、周囲エリアは、除去された金属スパッタなどによって影響を受けなくなる。廃棄物容器は、規則的な周期で収納される異物を容易に無くすことができる。
【0016】
クリーニング液を塗布する装置は、溶接トーチ浸漬のためのクリーニング液を収納する浴槽を備えてもよく、溶接トーチは、電磁的スパッタ除去の前に浸漬される。
【0017】
クリーニング液を塗布する装置は、同様に、少なくとも1つのノズルを備えてもよい。少なくとも1つのノズルを用いて、クリーニング液は、溶接トーチの最も汚染した領域に選択的に方向付けできる。例えば、ノズルを用いて、溶接スパッタが頻繁に集まる溶接トーチの内部や溶接トーチのガスノズルへクリーニング液を注入することも可能である。
【0018】
好都合には、コイルの供給装置も前記ハウジング内に配置される。こうして共通ハウジングは、適切な電力をコイルに供給するために、電源に接続する必要がある。この配置は、供給ユニットとコイルの間において、高い電流パルスによって他の装置や制御システムの故障をもたらす可能性がある、延長した接続ケーブルを必要としない。
【0019】
廃棄物容器が旋回自在に配置された場合、不使用のときコイル下方の領域から外へ旋回させることができる。こうして、例えば、クリーニング液を収納した浴槽のため、あるいはクリーニング液を塗布するノズルのための空間を設けることができる。クリーニング液の塗布後、廃棄物容器は、電磁的スパッタ除去の際に落下する異物を回収できるように、コイル開口下方の領域へ向けて再び旋回させることができる。廃棄物容器は、落下したり流れ出たクリーニング液を受けるためにも使用してもよい。この場合、全体のクリーニング手順の際に、廃棄物容器はコイル開口の下方に配置することが好ましい。廃棄物容器は、固体物セパレータに装着してもよい。
【0020】
廃棄物容器を空にするのを容易にするため、廃棄物容器は、ハウジングから除去可能なように設けられる。これは、例えば、引き出しなどの形態で構成することで実現できる。
【0021】
クリーニング液を塗布する装置にクリーニング液を供給するために、必要であれば、本発明の更なる特徴に従って、クリーニング液を塗布する装置に接続された補充容器が、ハウジング内に配置される。この場合、充分な量の液体をクリーニング液を塗布する装置に供給するのを自動的に行う。これは、例えば、クリーニング液を塗布する装置に対して反対の関係で補充容器を適切に配置したり、あるいは適切なセンサおよびポンプの設置によって達成してもよい。
【0022】
クリーニング液を塗布する装置に接続された液体接続部を同様に設けてもよく、これによりクリーニング液を塗布する装置を空にしたり、クリーニング液を供給したりできる。
【0023】
クリーニング装置が使用場所へ容易に移送して、その位置を変位できるようにするために、本発明の更なる特徴に従って、ハウジングは車輪などを備える。クリーニング装置が使用場所で安定して、その位置を固定できるようにするために、前記車輪などには、適切な固定手段を設けたり、例えば、出し入れ可能または折り畳み可能に設計される。
【0024】
溶接トーチのクリーニングをできる限り自動的に行うために、コイル内での溶接トーチの浸漬深さを検出する装置をコイル開口に配置してもよい。これは、クリーニング手順の際、それぞれの最適な浸漬深さに到達することを可能にする。
【0025】
浸漬深さを検出する装置は、例えば、光源または、溶接トーチに適切に配置された反射要素、好ましくは、反射リングによって反射した光線を検出する光学センサを備えてもよい。こうして、個々の光学センサが信号を受けるまで、溶接トーチをコイル内に挿入することが可能になる。信号を受けると、コイル開口への溶接トーチの前進運動は停止する。このために、ちょうど1つの反射要素または反射リングは、溶接トーチ自体に配置する必要がある。同様に、コイルでの溶接トーチの侵入深さは、機械的な手段、例えば、溶接トーチに設けられ、コイルに設けられたスイッチを起動するリング、あるいは別の構成によって、表示してもよい。
【0026】
溶接トーチのクリーニングに加えて、任意に存在する溶接ワイヤに関する最適な状態を作成するために、溶接トーチに供給される溶接ワイヤを切断する装置が、共通ハウジングに配置される。クリーニング装置に配置された該装置によって、溶接ワイヤの最適な調整が、溶接トーチの電磁的クリーニングの後、同様に可能になる。溶接トーチの最適な機能のため、溶接ワイヤは、溶接トーチから所定長さ(いわゆる突出(stick-out)長さ)だけ突出することが必要になる。
【0027】
この場合、切断装置は、コイルの下方に配置することが好ましい。これは、電磁的クリーニングの前、最中またはその後に、溶接ワイヤが、適切に偏向するのを可能にする。こうして溶接トーチを、溶接ワイヤを切断するための別個のステーションに運搬する必要がなくなる。こうして溶接トーチのクリーニングに必要な時間は小さく維持できるため、溶接トーチは、再び溶接動作のために迅速に使用できるようになる。
【0028】
本発明の更なる特徴によれば、ストッププレートがコイルの下方に配置され、これに対して溶接ワイヤが前進して、溶接ワイヤが溶接トーチから突出する長さを調整する。こうして上述の突出長さは最適な値に設定可能になる。
【0029】
ストッププレートは、導電性材料で製作してもよく、溶接ワイヤの衝撃が電気的接触によって検出可能になる。こうした構成は、突出長さを検出するための光学センサで置き換えてもよい。
【0030】
クリーニング液の最適温度を得るために、クリーニング液の温度を制御する装置を設けることが好ましい。これは、クリーニング液を所定の温度に一定に維持する閉ループ、または外部影響可能な制御ループで構成でき、例えば、別々の溶接トーチについて最適な状態をそれぞれ作成するために、異なる温度レベルを設定することができる。
【0031】
クリーニング装置での溶接トーチの存在を検出するために、適切なセンサを設けてもよい。これらは、光学的、誘導性、容量性あるいは機械的なセンサを備えてもよい。
【0032】
クリーニング手順をできる限り自動化できるようにするため、浴槽及び/又は補充容器での充填レベルを検出するために、適切なセンサを設けてもよい。こうして浴槽での液体レベルの不足は自動的な補充を生じさせたり、あるいは補充容器での所定値の不足は、例えば、補充容器の望ましい交換についての作業者への自動通知を生じさせることができる。
【0033】
この場合、クリーニング手順を制御する制御装置は、ハウジング内に配置することが好都合である。こうした制御装置は、例えば、コンピュータやマイクロプロセッサで構成でき、全体のクリーニング手順を自動的に実行することになる。
【0034】
ハウジング内に配置された制御装置の代わりに、ハウジングでのクリーニング手順を制御する制御装置に接続するためのインタフェースを設けることも可能である。これは、例えば、溶接ロボットの制御のために設けられたコンピュータを、同様に、クリーニング手順を制御するために使用するのを可能にする。
【0035】
前記制御装置または制御装置のためのインタフェースは、コイル供給装置のコイル、溶接トーチの浸漬深さを検出するための任意の装置、任意の切断装置、任意の温度制御装置、および任意のセンサにそれぞれ接続される。このようにしてクリーニング手順の最適な自動制御が可能になる。このためにハウジング内に存在する構成部品の全てが、バスシステムを介して相互接続されていてもよい。
【0036】
さらに、少なくとも1つのディスプレイがハウジングに配置され、作業者に動作状態を知らせるのが適切である。前記ディスプレイは、単にランプやスクリーンを備えてもよい。
【0037】
補充容器を収納するのに好ましく役立つ自由空間は、ハウジングの下方または内部に設けてもよい。補充容器は、自由空間内に格納してもよく、あるいはクリーニング液を塗布する装置へのクリーニング液の供給を特に長期間に渡って確保するように、ポンプを介して液体浴槽やノズルに接続してもよい。よって、例えば、自動車産業で使用されるような、自動化溶接工場に特に適合するクリーニング装置について極めて長期のサービス寿命が得られる。
【0038】
本発明に係る目的は、上述したクリーニング装置によっても達成され、クリーニング液を塗布する装置は、コイル開口の内部または下方に配置され、実質的に溶接トーチと同じ位置でクリーニング液の塗布および前記電磁的クリーニングを可能にする。こうしてクリーニング液の塗布後、溶接トーチを再位置決めする必要がなく、時間を節約し、溶接プロセスにとって利用できない、溶接トーチのクリーニング時間を低減する。
【0039】
クリーニング液を塗布する装置は、前記クリーニング液を収容する浴槽で構成してもよく、そこには、電磁的スパッタ除去の前に、溶接トーチが浸漬される。こうして上で既述したように、溶接トーチは、浴槽の方向に移動してもよい。
【0040】
その代わりに、浴槽は、移動、好ましくは垂直な移動のための装置と接続してもよく、クリーニング液を塗布するために、溶接トーチの方向に移動する。垂直移動可能である上に、浴槽は、例えば、コイル開口の下方に旋回的に配置して、溶接トーチの浸漬後に、再びこの位置から遠ざかってもよい。
【0041】
クリーニング液を塗布する装置は、同様に、少なくとも1つのノズルを備えてもよい。前記少なくとも1つのノズルを用いて、クリーニング液は、溶接トーチの最も汚染した領域に選択的に方向付けできる。例えば、ノズルを用いて、溶接スパッタが頻繁に集まる溶接トーチの内部や溶接トーチのガスノズルへクリーニング液を注入することも可能である。
【0042】
この場合、幾つかのノズルをコイル開口の内部に、例えば、環状に配置して、溶接トーチに対して異なる角度で方向付けしてもよい。
【0043】
溶接トーチの内部をクリーニング液で選択的に供給可能にするため、少なくとも1つのノズルが、コイル開口の下方に配置され、溶接トーチの先端に向けて方向付けされる。
【0044】
本発明の更なる特徴によれば、少なくとも1つのノズルが移動可能に配置される。こうした移動可能性は、一方では、クリーニング液の噴射方向を左右し、他方では、電磁的スパッタ除去のときにノズル全体または全てのノズルの逃げを可能にする。
【0045】
クリーニング液を塗布する装置にクリーニング液を供給可能にするためには、必要に応じて、クリーニング液を塗布する装置に、好ましくはポンプやホースなどを介して接続された補充容器が、本発明の更なる特徴に従って設けられる。この場合、新鮮なクリーニング液の供給が自動的に生ずることが好ましい。浴槽にクリーニング液を補充するために、適切な量のクリーニング液が、前記ポンプを経由して補充容器から浴槽へ運搬される。クリーニング液を塗布するノズルを使用する場合、クリーニング液は、圧縮空気の助けによって、気密に密閉された貯蔵器からノズルを介して溶接トーチへ理想的に吹き付けられる。こうして調整可能な量のクリーニング液が、圧縮空気を用いたパワー注入によって、小型の中間容器から可撓性のある導管を通じてノズルへ供給可能になる。圧縮空気がオフになるとすぐに、前記中間容器において低圧が一時的に形成され、液体は、より大きな貯蔵器からより小さな中間容器へ自動的に引き戻される。圧縮空気を用いた次回のパワー注入のとき、この小さな中間容器は再び空になることになる。
【0046】
クリーニング液を塗布する装置は、同様に、液体接続部で接続してもよい。
【0047】
溶接トーチのクリーニングをできる限り自動的に行うために、上述のように、コイル内での溶接トーチの浸漬深さを検出する装置をコイル開口に配置してもよく、これは、例えば、光学センサで構成できる。
【0048】
さらに、上述したようなセパレーション装置を設けてもよく、好ましくはコイル下方にに配置される。
【0049】
最後に、クリーニング液の最適な温度に到達するために、クリーニング液の温度を制御する装置を設けてもよい。
【0050】
クリーニング装置において溶接トーチの存在を検出するために、適切なセンサを設けてもよい。
【0051】
さらに、できる限り自動化されたクリーニング手順を実現するために、浴槽及び/又は補充容器での充填レベルを検出するための適切なセンサを設けてもよい。
【0052】
最後に、制御装置、あるいは制御装置との接続のためのインタフェースを設けてもよく、これは好ましくは、コイル、コイル用の供給装置、および任意の更なるクリーニング装置の構成部品と接続される。
【0053】
この場合、クリーニング装置に存在する全ての構成部品は、バスシステムを介して相互接続してもよい。
【0054】
本発明は、本発明の例示的な実施形態を示す添付図面を用いて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るクリーニング装置の斜視図である。
【図2】溶接トーチが配置されたコイルの断面図であり、溶接トーチの浸漬深さを検出する装置を含む。
【図3】溶接トーチが配置されたコイルの断面図であり、溶接ワイヤを所定の長さで切断する装置を含む。
【図4】クリーニング装置に配置された構成部品のブロック図である。
【図5】本発明に係るクリーニング装置の他の実施形態の斜視図である。
【図6】溶接トーチが配置されたコイルの断面図であり、クリーニング液の浴槽が下方に配置されている。
【図7】図6に対して変更した実施形態である。
【図8】溶接トーチが配置されたコイルの断面図であり、切断装置が下方に配置され、クリーニング液を収納する浴槽と廃棄物容器が移動可能に配置されている。
【図9】クリーニング液を噴射するノズルを含むクリーニング装置である。
【図10】クリーニング装置に配置された構成部品の更なるブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、食器棚(cupboard)のように配置され、溶接トーチのクリーニングのために設けられた構成部品の全てを収容するハウジング1を備えるクリーニング装置の斜視図である。そして、液体、例えば、クリーニング液のための浴槽2がハウジング1に設けられ、そこに溶接トーチが浸漬されて、付着している金属スパッタを冷却する。液体浴槽2とは別に、浴槽2に液体を供給するために、補充容器6を配置してもよい。浴槽2の後方には、開口4を含むコイル3が配置される。浴槽2での浸漬後、溶接トーチは、コイル3の開口4に挿入される。コイル3への電力供給後、溶接トーチ上の金属スパッタが非接触で除去される。異物は、コイル3の下方に設けられた廃棄物容器6(不図示)の中に落下する。ハウジング1の一部の開放のとき、前記廃棄物容器6は、容易に除去して空にすることができる。コイル3用の供給装置7(不図示)は、同様に、ハウジング1の内部に配置することが好ましい。さらに、供給装置7を外部に配置して、適切な接続ソケット8を介してコイル3と接続することも可能である。同様に、適切な液体接続部9をハウジング1に配置することも可能であり、これを通じて、浴槽2は、例えば、空にしたり、クリーニング液を供給したりできる。ハウジング1を使用場所へ容易に移動できるために、車輪10などを設けることが可能である。こうした車輪10などは、適切な固定手段(不図示)とともに装備してもよく、クリーニング装置を充分に固定して、個々の使用場所で位置を安定化させることができる。自由空間28は、ハウジング1の下方または内部に設けることができ、補充容器5やクリーニング手順の際に生ずる他の消耗材料などのための格納室として機能する。さらに、前記自由空間28には相応に大きな補充容器5を配置して、これを導管およびポンプを介して浴槽2と接続することが可能である。このことは、クリーニング装置の格別に長期のサービス寿命を達成するのに役立つものであり、これはロボット溶接工場を持つ自動車産業にとって特に適合している。浴槽2の液体補充は、完全自動化した手法で行うことが好ましい。
【0057】
図2は、挿入された溶接トーチ11を伴うコイル3の概略断面図であり、コイル3の開口4内で溶接トーチ11の浸漬深さを検出するために、反射リング12が溶接トーチ11に配置されている。このため、浸漬深さを検出する装置は、光源13と、反射リング12によって反射した光線を検出する光学センサ14とを備える。光学センサ14によって光を検出すると、溶接トーチ11をコイル3の開口4に導入する前進運動が停止することができる。当然ながら、溶接トーチ11の浸漬深さを検出する装置は、例えば、他の機械的要素で形成してもよい。
【0058】
図3は、溶接トーチ11が挿入された状態のコイル3の断面図であり、溶接トーチ11に供給された溶接ワイヤ16を切断する装置15がコイル3の下方に配置されている。溶接ワイヤ16を切断するように機能するナイフ17が、コイル3の下方に配置されている。好ましくは導電性材料で製作されたストッププレート18が、溶接ワイヤ16が溶接トーチ11から突出する最適長さLを調整するように機能する。その長さLは、いわゆる突出(stick-out)長さであり、これは溶接トーチ11の最適動作にとって重要である。最適長さLを調整するために、溶接ワイヤ16は、ストッププレート18に接触するまで変位する。溶接ワイヤ16とストッププレート18の接触は、溶接ワイヤ16とストッププレート18との間の電気抵抗を計測したり、電流を印加することによって、特別に簡単な手法で決定することができる。
【0059】
図4は、クリーニング装置の構成部品を示す概略ブロック図である。浴槽2、コイル3および供給装置7さらには任意の補充容器5が、共通のハウジング1の内部に都合良く配置される。浴槽2には、浴槽2での充填レベルを検出するためにセンサ19を設けてもよい。同様に、補充容器5での充填レベルを検出するために、センサ20を配置してもよい。コイル3の上方には、溶接トーチ11の浸漬深さを検出するための装置を設けてもよく、これは、例えば、溶接トーチ11に配置された反射リング12とともに、上述した光学センサ14および光源13で構成できる。廃棄物容器6は、異物の量を検出するためのセンサ21が装着可能であり、コイル3の下方に配置される。コイル3の下方には、溶接ワイヤ16のための切断装置15を配置してもよい。浴槽2の下方には、浴槽2に収納される液体の温度を制御するための装置24を配置してもよい。クリーニング手順の自動制御を確保するために、コイル3と、コイル3のための供給装置7と、コイル3内で溶接トーチ11の浸漬深さを検出する任意の装置と、任意の切断装置15と、任意の温度制御装置24と、さらには任意の光学センサ19,20,21は、バスシステム25によって相互接続され、例えば、コンピュータによって形成される適切な制御装置22に接続することが好ましい。ハウジング1の内部に統合された制御装置22の代わりに、バスシステム25を適切なインタフェース23を介して外部の制御装置22と接続してもよい。溶接トーチ11、溶接工場全体、あるいは溶接ロボット26は、前記制御装置22とそれぞれ接続される。ディスプレイ27は、バスシステム25と接続してもよく、所定の動作状態を表示するようにハウジング1に配置してもよい。
【0060】
図5は、クリーニング装置の他の実施形態の斜視図であり、図1の変形例に対して、クリーニング液を塗布する装置が、ハウジング1の内部でコイル3の下方に配置されている(不図示)。クリーニング液または湿潤液を塗布する装置をコイル3の開口4の下方に配置することによって、溶接トーチの実質的に一定の位置でクリーニング手順を実施することができる。
【0061】
図6は、コイル3の開口4に配置された溶接トーチ11を含むコイル3の概略断面図である。コイル3の開口4において溶接トーチ11の浸漬深さを検出するための装置は、図2に従って設けることができる。本発明によれば、クリーニング液を塗布する装置は、浴槽2によって実現され、コイル3の下方に配置される。浴槽2は、好ましくは垂直な運動のための装置29と接続してもよい。こうして浴槽2を上昇させることによって、溶接トーチ11の先端をクリーニング液に浸漬することができ、そしてすぐに浴槽2は再び下降して、必要に応じて旋回する。浴槽2は、補充容器5に接続してもよい。浴槽2の補充は、補充容器5が浴槽2より高いレベルに配置されることで実現でき、弁30の開放のとき、クリーニング液は補充容器5から浴槽2に流れるようになる。弁30の代替または追加として、当然ながら、クリーニング液を補充容器5から浴槽2へ輸送するために、ポンプ31を設けてもよい。溶接トーチ11の電磁的クリーニング後に浴槽2を下降させることによって、分離した金属スパッタは、浴槽2においてクリーニング液の表面張力によって除去され、そしてすぐに浴槽2内に降下することになる。
【0062】
図7は、クリーニング装置の変形例を示すもので、クリーニング液を塗布する装置は、浴槽2によって実現され、装置29によって垂直方向に任意に移動可能なように、コイル3の開口4の内部に配置されている。溶接トーチ11の電磁的クリーニングは、溶接トーチ11が、浴槽2に収納されたクリーニング液に浸漬されると同時に、開始することができる。そして、除去された金属スパッタは、浴槽2の底に降下することになる。
【0063】
図8は、クリーニング装置の他の変形例を示すもので、廃棄物容器6が、好ましくは旋回または変位可能なように、コイル3の開口4の下方に配置される。これにより浴槽2を溶接トーチ11の先端へ移動させることによって、溶接トーチ11の位置を変化させることなく、クリーニング液を塗布することが可能になる。溶接トーチ11の先端の浸漬後、浴槽2は遠ざかって、電磁的に除去された異物を廃棄物容器6に回収することができる。さらに、溶接トーチ11に供給された溶接ワイヤ16を切断するための装置15を設けてもよい。切断装置15もまた、必要なときだけコイル3の下方に配置できるように、移動可能に配置してもよい。
【0064】
図9は、本発明の変形例を示すものであり、クリーニング液を塗布する装置は、幾つかのノズル32で構成されている。ノズル32は、コイル3の開口4の内部、及び/又はコイル3の開口4の下方に配置してもよく、大部分の異物が付着した溶接トーチ場所にクリーニング液を噴射するように、溶接トーチ11に向けて配向している。コイル3の開口4の下方に配置されたノズル32は、溶接スパッタがガスノズル開口を頻繁に閉塞するであろう溶接トーチ11のガスノズル内部にも、クリーニング液を塗布できるように、溶接トーチ11に向けて配向している。ノズル32は、例えば、中間容器33を経由してクリーニング液用の補充容器5に接続され、調整可能な量のクリーニング液が、圧縮空気源34から由来する圧縮空気の補助によってノズル32に供給される。圧縮空気が再びオフになるとすぐに、低圧が前記中間容器33に一時的に形成され、クリーニング液が補充容器5から中間容器33に自動的に引き戻される。圧縮空気源34からの次の圧縮空気パルスにおいて、クリーニング液は再びノズル32に供給される。
【0065】
図10は、図4と比べて変更した形態でのクリーニング装置の構成部品の概略ブロック図である。浴槽2と、コイル3と、供給装置7と、任意の補充容器5とが、共通のハウジング1の内部に都合良く配置できる。図4で既に説明した構成部品の他に、ノズル32及び/又は浴槽2を垂直に移動するための装置29が、バスシステム25を介して制御装置22と接続することができる。さらに、他の構成部品、例えば、弁30、ポンプ31、中間容器33での充填レベルを検出するためのセンサ、および圧縮空気源34などが、好ましくはバスシステム25を介して、制御装置22と接続することができる(図示していない)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチ(11)の先端にクリーニング液を塗布する装置と、前記溶接トーチを電磁的クリーニングにかけるために、溶接トーチ(11)の挿入のための開口(4)を有するコイル(3)と、前記コイル(3)に接続された供給装置(7)とを含み、
クリーニング液を塗布する装置およびコイル(3)は、電磁的に除去された異物を受けるためにコイル(3)の下方に配置された廃棄物容器(6)とともに、共通のハウジング(1)に配置されていることを特徴とする溶接トーチ(11)のクリーニング装置。
【請求項2】
クリーニング液を塗布する装置は、溶接トーチ(11)の浸漬のためのクリーニング液を収納する浴槽(2)で構成されることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
クリーニング液を塗布する装置は、少なくとも1つのノズル(32)で構成されることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項4】
コイル(3)のための供給装置(7)は、ハウジング(1)に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項5】
廃棄物容器(6)は、旋回可能に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項6】
廃棄物容器(6)は、ハウジング(1)から除去可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項7】
クリーニング液を塗布する装置に接続された補充容器(5)が、ハウジング(1)に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項8】
クリーニング液を塗布する装置に接続された液体接続部(9)が、ハウジング(1)に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項9】
ハウジング(1)は、車輪(10)などを備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項10】
コイル(3)内での溶接トーチ(11)の浸漬深さを検出する装置が、コイル(3)の開口(4)に配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項11】
浸漬深さを検出する装置は、光源(13)と、溶接トーチ(11)に適切に配置された反射要素、好ましくは反射リング(12)によって反射した光線を検出する光学センサ(14)とで構成されることを特徴とする請求項10記載のクリーニング装置。
【請求項12】
溶接トーチ(11)に供給される溶接ワイヤ(16)を切断する装置(15)が、ハウジング(1)に配置されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項13】
切断装置(15)は、コイル(3)の下方に配置されることを特徴とする請求項12記載のクリーニング装置。
【請求項14】
ストッププレート(18)がコイル(3)の下方に配置され、ストッププレート(18)に対して溶接ワイヤ(16)が前進して、溶接ワイヤ(16)が溶接トーチ(11)から突出する長さ(L)を調整することを特徴とする請求項13記載のクリーニング装置。
【請求項15】
ストッププレート(18)は、導電性材料からなり、溶接ワイヤの衝撃が電気的接触によって検出可能であることを特徴とする請求項14記載のクリーニング装置。
【請求項16】
クリーニング液の温度を制御する装置が設けられることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項17】
溶接トーチ(11)を検出するために、センサ(19,20)が設けられることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項18】
浴槽(2)及び/又は補充容器(5)での充填レベルを検出するために、センサ(19,20)が設けられることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項19】
クリーニング手順を制御するための制御装置(22)が、ハウジング(1)に配置されることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項20】
クリーニング手順を制御する制御装置(22)に接続するためのインタフェース(23)がハウジング(1)に配置されることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項21】
前記制御装置(22)または制御装置(22)のためのインタフェース(23)は、それぞれコイル(3)と、コイル(3)のための供給装置(7)と、溶接トーチ(11)の浸漬深さを検出するための任意の装置と、任意の切断装置(15)と、任意の温度制御装置(24)と、任意のセンサ(19,20)にそれぞれ接続されることを特徴とする請求項19または20記載のクリーニング装置。
【請求項22】
ハウジング(1)に設けられた構成部品は、バスシステム(25)を介して相互接続されていることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項23】
少なくとも1つのディスプレイ(27)が、ハウジング(1)に配置されていることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項24】
自由空間(28)が、特に補充容器(5)を収納するために、ハウジング(1)の下方または内部に設けられることを特徴とする請求項1〜23のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項25】
自由空間(28)に配置された少なくとも1つの補充容器(5)は、ポンプなどを介してクリーニング液を塗布する装置に接続されていることを特徴とする請求項24記載のクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−160660(P2009−160660A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104844(P2009−104844)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【分割の表示】特願2004−547265(P2004−547265)の分割
【原出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願人】(504380611)フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (65)
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
【Fターム(参考)】