説明

溶接機用ナットフィーダ

【課題】ナットのような部品を供給ホースを通して部品消費装置まで確実、かつ安定して搬送することができる溶接機用ナットフィーダを提供する。
【解決手段】ナットの供給源であるパーツフィーダ2と、溶接機側に設けられたナット供給ヘッド3を中空チューブからなる供給ホース14で連結し、この供給ホースを通してパーツフィーダ側に設けたエスケープ5によりナットを供給ヘッドに供給するようにした溶接機用ナットフィーダであって、前記パーツフィーダ2と、ナット供給ヘッド3と、エスケープ5には、それぞれの部位におけるナットの有無を検出するためのセンサ21、22、23を設け、一方、前記供給ホース内には所定時間だけ供給ヘッドに向かうエア流を形成して、前記エスケープ5によりナットをこのエア流内に案内し、このエア流に乗せてナットを供給ヘッド3まで搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットのような比較的小型の部品を供給ホースを通して部品消費装置まで確実、かつ安定して搬送することができる溶接機用ナットフィーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の組立工場等においては、例えば特許文献1に示されるように、ドア鋼板の溶接箇所に順次ナットのような比較的小型の部品を自動供給する溶接機用ナットフィーダといわれる部品の供給装置が多数使用されている。
このような溶接機用ナットフィーダは、パーツフィーダとナット供給装置に設けた供給ヘッドとを中空チューブからなる供給ホースで連結し、パーツフィーダ側に設けたエスケープからナットを1個ずつ圧縮エアにより吹き飛ばすとともに、前記供給ホースを通してナットを供給ヘッドに順次補充・供給するよう構成されているのが普通である。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に示されるような溶接機用ナットフィーダは、使用したナットの個数と供給するナットの個数を完全に一致させるよう制御する構造であり、そのために多数のセンサを設置する必要があるうえに、各センサの信号を連動させて複雑な制御をする必要があるというものであった。この結果、故障が発生しやすく、またその修理にも時間を要するという問題点があった。また、前記供給ホース内において角部を有するナットが途中で引っ掛かったりして供給ヘッドまでスムーズに到達しないという問題点もあった。一方、溶接工程の自動化ラインにおいては、供給ホースはできるだけ長くして溶接装置の周辺スペースを広くとり安全性の向上を図りたいのであるが、ナットをスムーズに搬送するには供給ホースの長さが現状では約3mと限界があり、スペース確保にも限界があるという問題点があった。
更に、エスケープはパーツフィーダから供給されたナットを供給ホース内へ圧縮エアにより1個ずつ吹き飛ばす形式であり、エスケープの構造上圧縮エアが分散したり、あるいは圧縮エアが壁に当たって逆流状態になってしまい、ナットを供給ホース内へ確実に送り込めない場合もあった。
【特許文献1】特開平3−124622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような問題点を解決して、少ない個数のセンサにより複雑な制御をすることなく、ナットのような小型部品を供給ホースを通して部品消費装置までスムーズにかつ確実に安定して搬送することができ、また10〜20m程度の長いホースであっても詰まり不良等を発生させることがなく、これにより溶接装置の周辺スペースも広くすることができる溶接機用ナットフィーダを提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明の溶接機用ナットフィーダは、ナットの供給源であるパーツフィーダと、溶接機側に設けられたナット供給ヘッドを中空チューブからなる供給ホースで連結し、この供給ホースを通してパーツフィーダ側に設けたエスケープによりナットを供給ヘッドに供給するようにした溶接機用ナットフィーダであって、前記パーツフィーダと、ナット供給ヘッドと、エスケープには、それぞれの部位におけるナットの有無を検出するためのセンサを設け、一方、前記供給ホース内には所定時間だけ供給ヘッドに向かうエア流を形成して、前記エスケープによりナットをこのエア流内に案内し、このエア流に乗せてナットを供給ヘッドまで搬送する構造としたことを特徴とするものである。
【0006】
また、前記のパーツフィーダと、ナット供給ヘッドと、エスケープに設けたセンサは、ナットの有無を検出するよう各々単独で作動するものとすることができる。
【0007】
更に、溶接機側に設けられたナット供給ヘッドには、作業者の操作によりナットを溶接機側へ供給するための指示器を接続しておくのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、パーツフィーダと、ナット供給ヘッドと、エスケープに、それぞれの部位におけるナットの有無を検出するための各々単独で個別に作動するセンサを設けた単純な構造であり、確実にナットの補充を行えるうえに、複雑な制御も必要なくなる。また、供給ホース内には所定時間だけ供給ヘッドに向かうエア流が形成されており、エスケープによりナットを前記エア流内に案内し、該エア流に乗せてナットを供給ヘッドまで搬送するようにしたので、ナットが供給ホース内の抵抗が小さくて途中で引っ掛かって止まることがなく、供給ヘッドまでスムーズにかつ確実に安定して搬送できることとなる。更に供給ホースの長さも従来より大幅に延ばすことができ、溶接装置の周辺スペースが広くとれて安全性の向上も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図面は、自動車等の組立工場等において溶接機に順次ナットを供給する場合に適用した場合を示すもので、図1は、溶接機用ナットパーツフィーダ装置の全体を示す概略側面図、図2は図1の正面図である。
図1、2において、1はナットのホッパ、2はパーツフィーダ、3は溶接機側に設けられたナット供給ヘッド、4はこのナット供給ヘッド3に取り付けられる供給ロッドである。このパーツフィーダ1と供給ヘッド3とは、中空チューブからなる供給ホース14で連結されており、エスケープ5より排出されたナットが該供給ホース14を通して供給ヘッド4に順次供給されるように構成されている。
【0010】
なお、図示のものでは、溶接機側に設けられたナット供給ヘッド3に、作業者の操作によりナットを溶接機側へ供給するための例えば、ペダルやプッシュ式ボタンのような指示器15が接続してあり、この指示器15からの信号の入力によりナットが供給ヘッド3に供給されるように構成されている。
【0011】
本発明では、前記パーツフィーダ2と、ナット供給ヘッド3と、エスケープ5には、それぞれの部位におけるナットの有無を検出するための近接スイッチ等のセンサ21、22、23が設けられている。
センサ21は、パーツフィーダ2の中にナットが所定量補充されているか否かを検出するためのものであり、単純にナットの補充量が不足するとホッパ1から補充するように信号を出力する。
センサ22は、ナット供給ヘッド3の中にナットが所定量補充されているか否かを検出するためのものであり、単純にナットのストック量が不足すると供給ホース14を通して補充するように信号を出力する。
センサ23は、エスケープ5の中にナットが所定量補充されているか否かを検出するためのものであり、単純にナットの補充量が不足するとパーツフィーダ2から補充するように信号を出力する。
そして、前記センサ21、22、23は互いに連動することなく、単にそれぞれの部位におけるナットの有無を検出するだけであり、ナットがない場合にその旨の信号を出力するのみである。
そして、これらセンサ21、22、23は制御盤24に連結されているが、各々のセンサは単独で作動するものであって何ら連動することなく個別に作動する。なお、図示のものでは、スペース上の理由から同一の制御盤24に連結
してあるが、個別の3個の制御盤に連結するのを基本とする。
【0012】
溶接機側に設けられたナット供給ヘッドには、作業者の操作によりナットを溶接機側へ供給するための指示器15が接続してあり、溶接を行っているナットが消費され、センサ22がナットのストック量の不足を検出すると自動的にナットの補充を行うよう構成されている。
【0013】
また、本発明では、前記供給ホース4内には所定時間だけ供給ヘッド3に向かうエア流が形成されており、パーツフィーダ側に設けたエスケープ5によりナットを前記エア流内に案内し、該エア流に乗せてナットを供給ヘッド3まで搬送する構造とした点に特徴を有している。
なお、ここでいう所定時間とは、エスケープ内にナットを供給するという信号が入った時点から、エスケープからナットの排出をやめたという信号が入った時点までの時間を意味し、要はナットが該エア流に乗って搬送されるように所定時間だけエア流が形成されるのである。
【0014】
図3に前記エスケープ5の一例を示す。
図中、6はエスケープ本体、7はエスケープ本体内に設けられた水平な孔部、8はシリンダ等(図示せず)によってこの孔部内を左右方向に摺動する押しバー、9は押しバーに形成されたナット受け用のポケットである。また、10はパーツフィーダ1に連結されてエスケープ5内にナット30を供給するホースである。
このエスケープ5の前方部には、圧縮エアの供給管11が接続されていて、これにより供給ホース4内には所定時間だけ供給ヘッド3に向かうエア流が形成されている。
【0015】
このようなエスケープ5では、図3に示されるように、先ず押しバー8が右方向に引っ込んでいる。
次に、図5に示されるように、押しバー8が左方向に移動してポケット9がホース10の下方にくると、ナット30がナット受け用のポケット9内へ1個落ちる。
更に、図6に示されるように、押しバー8が左方向に押し出されて、ポケット9が圧縮エアの供給管11の下部までくると、ナット30は圧縮エアにより下方へ押し出されて、供給ホース4内に落ちる。その後、供給ホース4内に形成されているエア流に乗ってナット30は、供給ホース4内を供給ヘッド3に向けてスムーズにかつ確実に安定して搬送されることとなる。
その後は、図6に示されるように、押しバー8が再び右方向に移動して初期位置に戻り、以後同様の手順に従ってナット30は、供給ホース4内に投入され、エア流に乗って供給ヘッド3に向けてスムーズにかつ確実に安定して搬送されることとなる。
【0016】
このような溶接機用ナットパーツフィーダでは、ナットの搬送時間は供給ホース4が5mで約1秒、10mで約2秒、15mで約4秒、20mで約6秒と極めて短時間で且つスムーズに安定して搬送できることが確認できた。また、ナット30が途中で引っかかって止まることもまったくなかった。
【0017】
また、エスケープ5としては、図7に示されるように、押しバー8を幅広いタイプのものとして、2個のナットを同時に押し出して供給ホース4内に形成されているエア流に乗せるようにすることもでき、この場合にはより迅速にナットの供給を行えることとなる。
なお、図8はこのエスケープの作動状態を示す断面図である。
【0018】
以上の説明からも明らかなように、本発明はパーツフィーダと、ナット供給ヘッドと、エスケープに、それぞれの部位におけるナットの有無を検出するための各々単独で個別に作動するセンサを設けた単純な構造であり、確実にナットの補充を行えるうえに、複雑な制御も必要なくなる。
また、本発明はパーツフィーダと、ナット供給装置に取り付けられた供給ヘッドとを中空チューブからなる供給ホースで連結するとともに、該供給ホースを通してナットを供給ヘッドに供給するようにした溶接機用ナットパーツフィーダであって、前記供給ホース内には所定時間だけ供給ヘッドに向かうエア流が形成されており、パーツフィーダ側に設けたエスケープによりナットを前記エア流内に案内し、該エア流に乗せてナットを供給ヘッドまで搬送する構造としたので、ナットが供給ホースの途中で引っ掛かって止まることがなく、供給ヘッドまでスムーズにかつ確実に安定して搬送できることとなる。また供給ホースの長さも20m程度までは延ばすことができ、溶接装置の周辺スペースが広くとれて安全性の向上も図ることができる。
【0019】
以上のように構成した本発明では、溶接を行ってナットが消費されても、ナット供給信号は作業者の溶接信号とは関係なく、単純に各センサの指示信号に従って補充されるものである。
本発明では、前記パーツフィーダ2と、ナット供給ヘッド3と、エスケープ5には、それぞれの部位におけるナットの有無を検出するための近接スイッチ等のセンサ21、22、23が設けられており、センサ21が、パーツフィーダ2の中にナットが所定量補充されているか否かを検出する。否という信号が発信されると、単純にナットをホッパ1から補充するように信号を出力する。
同様に、センサ22が、ナット供給ヘッド3の中にナットが所定量補充されているか否かを検出する。否という信号が発信されると、単純にナットのストック量が所定レベルになるまで供給ホース14を通してナットを補充するように信号を出力する。
また、センサ23が、エ角チューブ11の中にナットが所定量補充されているか否かを検出する。否という信号が発信されると、単純にナットの補充量が所定レベルになるまでナットを補充するように信号を出力する。
以上の動作により、ナットは不足することなく確実に補充が行われることとなる。
【0020】
なお、以上の説明は搬送部品としてナットの場合について説明したが、これに限定されることなく、例えばコンタクトチップやボルト等のナットようなすべての小型部品に適用できるものであることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】エスケープを示す断面図である。
【図4】エスケープの作動状態を示す断面図である。
【図5】エスケープの作動状態を示す断面図である。
【図6】エスケープの作動状態を示す断面図である。
【図7】その他のエスケープを示す断面図である。
【図8】図7の作動状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ホッパ
2 パーツフィーダ
3 ナット供給ヘッド
4 供給ロッド
5 エスケープ
6 エスケープ本体
15 指示器
7 孔部
8 押しバー
9 ナット受け用のポケット
10 ホース
14 供給ホース
15 指示器
21 センサ
22 センサ
23 センサ
24 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットの供給源であるパーツフィーダと、溶接機側に設けられたナット供給ヘッドを中空チューブからなる供給ホースで連結し、この供給ホースを通してパーツフィーダ側に設けたエスケープによりナットを供給ヘッドに供給するようにした溶接機用ナットフィーダであって、前記パーツフィーダと、ナット供給ヘッドと、エスケープには、それぞれの部位におけるナットの有無を検出するためのセンサを設け、一方、前記供給ホース内には所定時間だけ供給ヘッドに向かうエア流を形成して、前記エスケープによりナットをこのエア流内に案内し、このエア流に乗せてナットを供給ヘッドまで搬送する構造としたことを特徴とする溶接機用ナットフィーダ。
【請求項2】
パーツフィーダと、ナット供給ヘッドと、エスケープに設けたセンサは、ナットの有無を検出するように各々単独で作動するものである請求項1に記載の溶接機用ナットフィーダ。
【請求項3】
溶接機側に設けられたナット供給ヘッドには、作業者の操作によりナットを溶接機側へ供給するための指示器が接続してある請求項1または2に記載の溶接機用ナットフィーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−105058(P2008−105058A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290664(P2006−290664)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(392014760)新光機器株式会社 (50)
【出願人】(506332937)株式会社フィーダシステム (10)
【Fターム(参考)】