説明

溶接装置

【課題】2本の金属線条物の端面同士を安全かつ短時間で容易に溶接することができる溶接装置を提供する。
【解決手段】2本の金属線条物21、22の端面同士を溶接する溶接装置を、金属線条物21、22が載置可能な断面半円状の溝16が一端から他端まで貫通する下型1と、その溝1と対向する位置に同一形状の溝17を形成した上型2とを備え、上型2の溝17の内面に溶接ワイヤ9と不活性ガスとを供給すると共に、その溶接ワイヤ9と下型1の溝16の内面との間に所定の電圧を印加することから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接装置に関し、更に詳しくは、2本の金属線条物の端面同士を安全かつ短時間で容易に溶接することができる溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スチールコードを心体(補強層)とするコンベヤベルトの製造工程においては、スチールコードをドラムから巻き出して使用するが、1つのドラムからの巻き出しが終了すると、その巻き出されたスチールコードの後端を、次のドラムから巻き出されるスチールコードの先端と接合して、コンベヤベルトの生産工程に連続的に供給することが行われている。
【0003】
この接合作業は、通常は手動による溶接で行われるが、溶接作業は作業者にとって潜在的に危険を伴うと共に、溶接作業が終了するまで製造ラインを停止しなければならないという問題があった。特に、スチールコードの本数が非常に多くなると、製造ラインを長時間停止しなければならなくなるため、コンベヤベルトが加硫プレスに滞在する時間が延びてカバーゴムの加硫時間が超過してしまい、品質低下の原因となってしまう。
【0004】
このような問題を解決するには、特許文献1が提案するような溶接装置を用いて、溶接作業の半自動化を図ることが考えられる。
【0005】
しかし、上記の特許文献1の溶接装置では、構造及び操作が複雑であるため、溶接作業が困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−28572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、2本の金属線条物の端面同士を安全かつ短時間で容易に溶接することができる溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の溶接装置は、2本の金属線条物の端面同士を溶接する溶接装置であって、前記金属線条物が載置可能な断面半円状の溝が一端から他端まで貫通する下型と、前記溝と対向する位置に該溝と同一形状の溝を形成した上型とを備え、前記上型の溝の内面に溶接ワイヤと不活性ガスとを供給すると共に、前記溶接ワイヤと前記下型の溝の内面との間に所定の電圧を印加するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
上記の上型及び下型の溝の内面には銅を被覆することが望ましい。また、少なくとも下型の溝内には、金属線条物を径方向に弾性力で押圧する保持具を設置するのがよい。
【0010】
本発明の溶接装置は、コンベヤベルトの心体を構成するスチールコードの端面同士の溶接に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の溶接装置によれば、金属線条物が載置可能な断面半円状の溝が一端から他端まで貫通する下型と、その溝と対向する位置に同一形状の溝を形成した上型とを備え、上型の溝の内面に溶接ワイヤと不活性ガスとを供給すると共に、溶接ワイヤと下型の溝の内面との間に所定の電圧を印加するようにし、下型及び上型の内部でアーク溶接を行うので、溶接作業を安全かつ短時間で行うことができる。また、作業者は2本の金属線条物を下型に載置してから上型を被せた後に、不活性ガス、溶接ワイヤ及び電力を供給するだけでよいため、溶接作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態からなる溶接装置の構成図である。
【図2】図1の溶接装置の上型及び下型の構造を示す斜視図である。
【図3】図2に示すA−A矢視における断面図である。
【図4】溶接作業の手順を説明する斜視図であって、(a)は準備作業を、(b)は溶接作業を、それぞれ示す。
【図5】保持具の構造を示す下型の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態からなる溶接装置の構成を示す。
【0015】
この溶接装置は、金属線条物が載置される下型1と、その下型1に対向するように配置され、上下に昇降可能な上型2とを備えている。上型2には上面3から下面4に通じる供給管5が設けられ、その供給管5には不活性ガスのボンベ6につながるガス管7、送給装置8から送り出される溶接ワイヤ9、及び電力供給装置10のプラス端子に接続する導線11とが収納されている。また、下型1には下面12から上面13に貫通する貫通孔14が形成され、電力供給装置10のマイナス端子に接続する導線15が収納されている。なお、溶接ワイヤ9は金属線条物と同じ材料を主成分とすることが好ましく、また不活性ガスとしてはアルゴンガスやヘリウムガスが例示される。
【0016】
下型1の上面13及び上型2の下面4には、図2に示すように、金属線条物が載置可能な断面半円状であって長手方向に貫通する溝16、17が、互いに対向する位置に複数形成されている。下型1の貫通孔14及び上型2の供給管5はそれぞれ溝16、17毎に設けられ、図3に示すように、上下に重なる位置においてそれぞれ溝16、17の内面に開口している。
【0017】
溶接ワイヤ9は絶縁材18が封入されたノズル管20内に摺動可能に収納されており、開口部の近傍においてコンタクトチップ19を通じて導線11に接触している。また、ガス管7は不活性ガスを溶接ワイヤ9の先端部付近へ吹き付けることができるように、先端の出口の向きが調整されている。
【0018】
このような溶接装置による2本の金属線条物の溶接作業を、図4を用いて以下に説明する。
【0019】
まず、図4(a)に示すように、下型1の溝16に2本の金属線条物21、22を直列に載置し、互いの端面23、24が貫通孔14の直上で突き合うようにする。次に、図4(b)に示すように、上型2を下型1及び金属線条物21、22に被せた後に、導線11、15に電力を供給すると共に、ガス管7から不活性ガスを噴き出させつつ溶接ワイヤ9を送り出す。これにより、溶接ワイヤ9の先端には不活性ガスにシールドされたアークが発生し、そのアークの熱により金属線条物21、22の端面23、24及び溶接ワイヤ9が溶融する。その後、不活性ガスと電力の供給を停止し、一定時間冷却することにより、金属線条物21、22の端面23、24同士を溶融接合することができる。
【0020】
このように、下型1及び上型2の内部でアーク溶接を行うので、溶接作業を安全かつ短時間で行うことができる。また、作業者は2本の金属線条物21、22を下型1に載置してから上型2を被せた後に、不活性ガス、溶接ワイヤ9及び電力を供給するだけなので、溶接作業を容易に行うことができる。
【0021】
上記の溶接装置においては、下型1及び上型2の溝16、17の内面に銅を被覆することが望ましい。そのようにすることで、溶接後における金属線条物21、22の溝16、17内面への固着を防止し、かつ冷却時間を短縮することができる。
【0022】
また、下型1の溝16の内面に、金属線条物21、22を径方向に向けて弾性的に押圧する保持具25を設けることが望ましい。保持具25としては、図5に示すような、溝16の底面に形成した凹部26内に収納されたバネ27の一端に球状体28を固定したものなどが例示される。このような保持具25を設けることにより、ドラムに巻かれて巻き癖がついた金属線条物21、22を、上型2と下型1の間で確実に保持して、溶接を安定的に行うことができる。なお、この保持具25は、溝16の周方向に複数配置したり、上型2の溝17内に設けるようにしてもよい。
【0023】
本発明の溶接装置は、特に用途を限定するものではないが、金属線条物21、22がコンベヤベルトの心体となるスチールコードであって、そのスチールコードを連続的に供給するために、一方のスチールコードの後端に他方のスチールコードの先端を接合する溶接作業に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0024】
1 下型
2 上型
3 (上型の)上面
4 (上型の)下面
5 供給管
6 ボンベ
7 ガス管
8 送給装置
9 溶接ワイヤ
10 電力供給装置
11 (上型への)導線
12 (下型の)下面
13 (下型の)上面
14 貫通孔
15 (下型への)導線
16 (下型の)溝
17 (上型の)溝
18 絶縁材
19 コンタクトチップ
20 ノズル管
21、22 金属線条物
23、24 端面
25 保持具
26 凹部
27 バネ
28 球状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の金属線条物の端面同士を溶接する溶接装置であって、
前記金属線条物が載置可能な断面半円状の溝が一端から他端まで貫通する下型と、
前記溝と対向する位置に該溝と同一形状の溝を形成した上型とを備え、
前記上型の溝の内面に溶接ワイヤと不活性ガスとを供給すると共に、前記溶接ワイヤと前記下型の溝の内面との間に所定の電圧を印加する溶接装置。
【請求項2】
前記上型及び下型の溝の内面に銅を被覆した請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
少なくとも前記下型の溝内に、前記金属線条物を径方向に弾性力で押圧する保持具を設置した請求項1又は2に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記金属線条物が、コンベヤベルトの心体を構成するスチールコードである請求項1〜3のいずれかに記載の溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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