説明

溶接裏当て用鋼板

【課題】突き合わせ溶接において、コラム等部材と溶接用裏当て金との高い密着性を容易に実現でき、良好な溶接結果を得ることのできる溶接裏当て金を提供する。
【解決手段】コラムを用いた突き合わせ溶接に用いられる裏当て金であって、コラムの隅コーナー部の内曲面に沿って湾曲されるべき部分に並列に配置された一群の溝10が形成されており、かつ裏当て金の外面にはルートギャップ確保のための一群の突起12を有しており、当該突起の高さが裏当て金使用時に直線となるべき部分では1.0〜1.1mmに形成され、湾曲されるべき部分では1.5〜1.6mmに形成されていることにより目的を達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角コラムの溶接裏当て用鋼板に関し、更に詳細には、角コラムの突き合わせ溶接のための、真直な状態で提供され角コラムの内寸に合わせて曲げて用いられる溶接裏当て用鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨建築の柱によく使用される角コラムは、梁との接合方法として角コラムを鋼板(ダイヤフラムと呼ばれる)に溶接接合し、そのダイヤフラム鋼板に梁溶接接合する、いわゆる通しダイヤフラム接合形式と呼ばれる方法が多用される。この接合形式を採用する場合、柱である角コラムとダイヤフラム鋼板の溶接は一般に突き合わせ溶接が用いられ、溶接に際して裏当て金が用いられる。角コラムの4つの角部はある曲率をもった断面形状をなしており、このため裏当て金もその曲率に沿った形状のものが用いられる。
この時、角コラムとダイヤフラム鋼板の間に溶接ルートギャップを確保している。
【0003】
ここでルートギャップとは、溶接溶込みにより溶接強度や耐久性を高めるために、溶接部材間に設けられる所定幅の溶接用間隙のことである。ルートギャップは、当接する溶接部材間での溶接溶け込みを実現するのに適した数ミリメートルの幅をとって設けられる。
【0004】
従前は、溶接作業に先立って、シャコ万等の治具を用いて裏当て金を溶接部材に仮組み立てをし、それからルートギャップを計測し、適切なルートギャップ長に調整する作業工程が必要であった。
【0005】
そこで近年では技術改良がされ、裏当て金の外面に突起部または突起條をあらかじめ設けることで、所望のルートギャップを簡単に確保できる裏当て金が提供されている。
【0006】
例えば、実開平1−172493号公報に記載の角型コラム溶接用突起付裏当て金は、L字形をした裏当て金の外周側面に沿って工具を押し当てて窪みを形成し、窪みの体積分を盛り上げて突起を形成したものである。
【0007】
また、特公平7−110434号公報では、前述の実開平1−172493号公報記載の裏当て金の突起は、母材間の間隙内に収まり、突起のある部分で溶接肉が減少して固定強度を低下させるおそれがあるので、角型コラムにダイヤフラムを溶接する際に用いる裏当て金の幅方向一側縁面の表面コーナー部を幅方向他側へ向かって進行するポンチでプレスしてコーナーを展延することにより、母材相互間の隙間よりも薄い舌片状の突起を形成しており、この突起の展延加工と同時に裏当て金のコーナー部にできる凹部が裏当て金の幅方向一側縁面から突起の根元まで伸びて形成されている裏当て金が記載されている。前述の特公平7−110434号公報に記載されている突起は、裏当て金の幅方向一側縁面の表面コーナー部を幅方向他側へ向かって進行するポンチでプレスしてコーナーを展延して突起を形成するため、裏当て金の断面形状が長方形のものの場合と、コーナーにテーパーを有する断面形状が5角形のものの場合とでは、プレスにより盛り上がる金属量が異なるため、一定の突起が形成されず、また、裏当て金の種類が異なる場合、あるいは突起を設ける位置が異なる場合には、裏当て金の種類毎にプレス装置を用意するか、あるいは上型及び下型を交換したりして調整する必要があるという欠点がある。さらに、裏当て金の幅方向一側縁面の表面コーナー部を幅方向他側へ向かってプレスするため、薄い裏当て金については、金属の盛り上げ量が少ないため、所定の位置に突起を形成することが難しくなる。
【0008】
そこで、特開平10−156444号公報は、裏当て金の断面形状、厚みあるいは種類にかかわりなく突起を所定の位置に簡単に形成することができる角型コラム溶接用突起付裏当て金及びその製造方法を提案している。この製造方法は、裏当て金の外側面に、上金型及び下金型を裏当て金へ向かって斜め方向に移動させて裏当て金を押し込み、押し込みにより上部凹み及び下部凹みを形成するとともに、金属を金型と下金型との間に盛り上げ、上金型と下金型との間で盛り上がった金属をプレスして突起を形成するものである。
【0009】
しかしながら、いずれも裏当て金の突起の形成は、特殊な金型を用いるプレス加工であるため、加工に時間がかかり、量産向きではない。また、角型コラムの寸法によって、裏当て金の突起の位置をその都度変更しなければならないので、プレス加工時の段取り時間が必要であり、角型コラムの寸法に応じた金型も数多く必要となり、コストアップとなっている。
【0010】
そこで、特許第3436873号公報では、加工時間が短く量産が可能で、また裏当て金の寸法に関係なく同一鋼材で対応できる角型コラム溶接用突起付裏当て金の製造方法及び装置を提示している。
【0011】
この角型コラム溶接用突起付裏当て金の製造方法は、表面に円周方向に連続した溝が形成された荒加工用上圧延ロールと前記荒加工用上圧延ロールに対向して設けられた表面が平面形状の下圧延ロールとからなる荒加工用圧延機により長尺の鋼板を圧延して鋼板上に長手方向に連続した凸条を形成した後、表面に円周方向に所定ピッチで前記凸条に対応する位置に複数の突起形成用凹部が形成された仕上用上圧延ロールと仕上用上圧延ロールに対向して設けられた表面が平面形状の仕上用下圧延ロールとからなる仕上用圧延機により前記長手方向に連続した凸条を形成した鋼板を圧延して所定ピッチの突起を形成し、所定ピッチの突起が形成された鋼板を角型コラム溶接用突起付裏当て金に成形するものである。
【0012】
しかしながら、この製造方法によって形成された角型コラム溶接用突起付裏当て金は、
その厚さが薄くなるため、所定の厚さを確保できているか分からないという問題がある。
また、所定のピッチの突起が形成された鋼板の形で保管・運搬されるが、上記の突起のために重ねにくく、また重ねられたとしても、突起の幅が小さいと、保管や運搬中につぶれてしまうので大きなものとなってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開平1−172493号
【0014】
【特許文献2】特公平7−110434
【0015】
【特許文献3】特願平8−316416号
【0016】
【特許文献4】特許第3868955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで本発明は、裏当て用鋼板自体の厚さを変えることなく、輸送等における取扱いも容易な溶接裏当て用鋼板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は、下記(1)〜(13)の構成の本発明の溶接裏当て用鋼板によって解消される。
(1)
真っ直ぐな状態で提供され、コラムの内寸に合わせて曲げられて、コラム端部にダイヤフラムを付き合わせ溶接等により溶接する際に、コラムに嵌合されて用いられるものであり、ルートギャップを設定するために用いられる突起が設けられた溶接裏当て用鋼板において、前記突起は、縦断面が先端に向かって先細りとなる台形のプレスヘッドを有するサーボプレス機によって形成されたものであり、縦断面が先端に向かって先細りとなる台形形状をなしており、内部に空間を有することを特徴とする溶接裏当て用鋼板。
(2)
前記突起の台形の斜面と底辺に垂直な線とのなす角の角度が、0.02度以上である上記(1)の溶接裏当て用鋼板。
(3)
前記突起の水平断面形状が、円形、楕円形、4角形または三角形である上記(1)または(2)の溶接裏当て用鋼板。
(4)
前記突起の形成により形成された孔の溶接裏当て用鋼板の幅方向の幅は、溶接裏当て用鋼板の幅の0.05〜0.4%である上記(1)〜(3)のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
(5)
前記コラムが角コラムであり、前記溶接裏当て用鋼板は、角コラムの各コーナー部の内曲面部に当てるべき部分に、一群の溝が並列に配置されて形成されており、前記溝の形状は、その深さにおける50%以上の部分の両側面が平行な形状であり、その溝位置における残存板厚が1.5〜2.5mmであり、一群の溝の数が4以上であり、各溝の幅が4mm以下で、かつ溝のピッチが2.55mm以上であり、作業者が治具を用いずに曲げることができ、かつロボット溶接を行ったとき抜けが起こらないように構成されており、前記突起が溶接裏当て用鋼板の少なくとも溝が設けられていない部分に形成されている(1)〜(4)のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
(6)
前記溝の数が12以下である上記(5)の溶接裏当て用鋼板。
(7)
前記溝の数が、曲げたときの外周長と内周長の差を、溝の幅で除した値である上記(5)または(6)の溶接裏当て用鋼板。
(8)
前記溝の数が、曲げたときの外周長と内周長の差を、溝の幅で除した値に1〜4を加えた値である(6)または(7)の溶接裏当て用鋼板。
(9)
突起が溶接裏当て用鋼板の溝形成部にも設けられている(5)〜(8)のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
(10)
突起が溝形成部の中央に設けられている上記(9)の溶接裏当て用鋼板。
(11)
曲げられたときの形状が「L」字形、「ロ」字形、または「コ」字形、円形または楕円形である上記(1)〜(10)のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
(12)
前記溶接裏当て用鋼板の曲げられない直線のままの部分に設けられた突起の高さが、1.0〜1.1である上記(1)〜(11)のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
(13)
前記サーボプレス機がデジタル電動サーボプレス機である上記(1)〜(12)のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
【発明の効果】
【0019】
本発明の溶接裏当て用鋼板においては、サーボプレスで突起を形成することで、突起の高さを正確にすることができ、従って肌すきが許容範囲内にない場合には、それを確実に確認できる。
【0020】
また、本発明の溶接裏当て用鋼板においては、デジタル電動サーボプレス機により成型されることで突起が中空構造であるから、保管や運搬において突起を上の突起の内部に嵌合した状態で重ねて扱うことができる便利さがある。また重ねて扱っても突起が変形しにくいという利点がある。
【0021】
また、曲げやすくするための溝を設けた実施態様では、シャコ万等の治具を使用せずに手作業で容易にまたコラムのコーナー湾曲に沿って正確に変形させることができるので、このコーナー部における肌すきを許容値以内に納めることができ、該コーナー部の突起を省略することができるようになり、製造コストをおさえることができるという利点もある。
【0022】
本発明は以上の利点より、最終的には製品欠陥を減少させ、また作業時間の短縮を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、複数の切り欠き溝を有する裏当て用鋼板の外側となるべき面を上面として示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の裏当て用鋼板の長辺方向の平面図である。
【図3】図3は、図1の裏当て用鋼板の内側となるべき面を上面として示す斜視図である。
【図4】図4は、図1の裏当て用鋼板を裏当て金として使用した使用状態を示す平面図である。
【図5】図5は、裏当金の嵌合時における肌すきを図示した概念図である。
【図6】図6は、切り欠き溝のない裏当て用鋼板の外側となるべき面を上面として示す斜視図である。
【図7】図7は、図6の裏当て用鋼板の長辺方向の平面図である。
【図8】図8は、図6の裏当て用鋼板の内側となるべき面を上面として示す斜視図である。
【図9】図9は、図6の裏当て用鋼板を裏当て金として使用した使用状態を示す平面図である。
【図10】図10は、デジタル電動サーボプレス機の全体を示した図である。
【図11】図11は、デジタル電動サーボプレス機の金型部を開いた状態で示した図である。
【図12】図12は、デジタル電動サーボプレス機の金型部を閉じた状態で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の態様による角コラムの溶接裏当て用鋼板について説明する。
図1は、本発明の実施の態様による角コラムの溶接裏当て用鋼板を示す斜視図、図2は図1の裏当て用鋼板の正面図、図3は、図1の裏当て用鋼板を下から見た斜視図、および図4は、図1の裏当て用鋼板を角コラムのコーナー部に沿って曲げて形成された裏当て金を、角コラムに取り付けた状態で表した平面図である。
【0025】
この裏当て用鋼板1は、図1の斜視図に示すようにその曲げるべき部分にそれぞれ複数の一群の溝10を設けたものである。このとき裏当て用鋼板のそれぞれの溝の群の中央部間の距離と角コラムの隣り合うコーナー部内面の曲面部の中央部間距離とをほぼ一致させることが好ましい。図示した例では、2箇所に溝の群があるが、4箇所に溝を設けたものを使用して角コラム内周全部を1本の裏当て金で溶接を行うこともできる。
【0026】
上記溝10の形状は、図2によく示したように両側面が互いに平行な角形の溝であることが特に好ましいが、その深さの少なくとも50%の部分の両側面が互いに平行な形状であればよい。これにより、溝の50%以上を鋸刃で加工することができるようになり、従来実施されていたものより大幅に加工コストを下げることができる。
各溝10の幅は、4mm以下、好ましくは2mm以下、特に少なくとも溝の下半分(溝の入り口から遠い方の)の最大幅が1.75mm以下であることが好ましい。この幅は、上記した溶接の抜けを考えると、狭ければ狭いほど望ましいが、狭くなると後に説明する理由により、溝の個数が多くなり加工に時間とコストがかかるようになるので、また現在の所の鋸刃の関係から下限は0.9mm程度である。
【0027】
本発明において溝は各群において4個以上、好ましくは12個以下、特に8〜10個とする。すなわち裏当て用鋼板を曲げたときに角コラム内側の曲面部に当たるべき部分の長さの範囲において4個以上10個以下の溝を設けることが好ましい。
また、各群において溝を等間隔に配置する場合には、ピッチは2.55mm以上とすることが好ましい。このピッチが上記の値未満であると、溝形成部における鉄残存量が足りなくなり、溶接の際に上記の抜けが生じやすくなる。なお、この上限は、ピッチが大きくなりすぎると、裏当て用鋼板の曲げた部分が実質的に円弧状にならず、多角形となってしまい、この多角形の辺とコラムの円弧との間隙が大きくなってしまうので、この間隙が0.4mm以下となるような、ピッチとすることが望ましい。
【0028】
上記のように溝10を角形にした場合、裏当て用鋼板を角コラムのコーナー部に沿って曲げたときに、溝の両側壁同士が互いに干渉し合わないようにすることが好ましい(接触する程度であるならよい)。これを考えると、裏当て用鋼板における外周円の半径をr(mm)、裏当て用鋼板の厚さをt(mm)、溝の数をn、そして溝の幅をw(mm)とすると、次の式を満足することが好ましい。
n・w=2・r/4(角部における外周長)−2・(r−t)/4(内周長)
例えば、rを23mm、tを9mmとすると、外周長は36.11mm、内周長は21.98mmとなるので、n・wの値は、14.13となる。ここで、wの値を1.75mmとすると、nは8.0個となる。なお、小数点1の位が1以上である場合には、繰り上げた値による個数とすることが望ましい。
【0029】
さらに角コラムの各辺の長さや曲率の誤差に対処するため、すなわち調節代として1個ないし4個の溝を追加してもよい。本考案による裏当て用鋼板は後に説明するように容易に曲げることができるので、曲げた後に角コラムの角部に合わせたとき、合わない場合には、少し曲げ戻して再度曲げ直すことが可能であるので、この調節代が特に有用である。
また溝形成部における残存板厚は、1.5〜2.5mm、好ましくは、1.7〜2.3mmとする。これらの条件は理論的考案と実験による検証によって定めたものであり、以下にその理由を述べる。
【0030】
上記したように、溝の深さは人力で容易に曲げるためには裏当て用鋼板の溝部分の残存板厚が2.5mm以下になるようにする必要がある。この曲げに必要とする力は以下のようにして計算することができる。すなわち図8に示すように溝部の残存板厚をt、鋼板の板幅(図示せず)をw1、引張り強さを・とすれば応力分布Sは図示したようになるから合力Tはt・w1・・となり、曲げモーメントMは曲げの支点が溝の底、力点が残存板厚の半分の位置として下式のようになる。
M=T・t/2=w1・t・・/2
【0031】
たとえば・=50kg/mm、w1=25mm、t=2mmなら250kg・cmとなり、曲げ位置から10cmずつ離れた位置を持って25kgの力で曲げられることとなり人力で容易に曲げられる。これがt=4mmとなると1000kg・cmとなり万力などの工具を用いても限界となる。このため本発明においては残存板厚の上限を2.5mmとした。一方下限は残存板厚があまりにも小さいと溶接の際に抜けが生ずるので1.5mmとした。
【0032】
本発明の実施の形態による裏当て用鋼板1には、溝が形成された部位(曲げられるべき部位)2の反対側に突出して設けられた突起12、および使用時において直線である部位4には突起12より高さが低い突起14が形成されている。これらの突起は、先に説明したように角コラムの先端とダイヤフラムの間のルートギャップを正確に確保するためのものである。
【0033】
本例においては、突起12,14は先端に向かって先細となる円錐台形として形成され、いずれも頂面幅は4mm程度とする。またその高さは突起12では1.5〜1.6mm、突起14では1.0〜1.1mmに形成される。冷間形成角形鋼管の設計・施工について建設業界で広く用いられている(財)日本建築センター編「冷間形成角形鋼管設計・施工マニュアル」では、溶接部材の内面と裏当て金との肌すきの許容値について、溶接部材の直線部では1.0mm以下、隅コーナー部等の湾曲部では1.5mm以下とすべきことが規定されており、上記高さの値は、この「冷間形成角形鋼管設計・施工マニュアル」の規定によるコーナー部および直線部の肌すき許容値に対応し、若干の遊びをもたせた値である。
【0034】
上記突起12,14は、縦断面が先端に向かって先細りとなる台形のプレスヘッドを有するデジタル電動サーボプレス機によって形成されることにより、縦断面が先端に向かって先細りとなる台形形状をなしており、内部に空間すなわち孔を有するものとする。なお、図においては、突起が円錐台形であることを強調するため、斜面をなだらかな斜面としたが、実際にはもっと急な斜面である。前記突起の形成により形成された空間すなわち孔の溶接裏当て用鋼板の幅方向の幅は、溶接裏当て用鋼板の幅の0.05〜0.4%であることがこのましい。
上の例では、突起の形状を円錐台形状、すなわち水平断面形状が円形のものを挙げたが、楕円形、4角形または三角形等であってもよい。
前記突起の台形の斜面と底辺に垂直な線とのなす角の角度が、0.02度以上であることが好ましい。この範囲未満であると、プレスヘッドの抜けが困難になったり、重ね合わせが良好でなくなる。
【0035】
図4は、当該裏当て用鋼板1を用いて形成された裏当て金20の使用状態を示す平面図である。また、図5は、該使用状態におけるコラム22、ダイヤフラム24および裏当て金20の位置関係を示す図である。図5に示したように、突起14(12)にコラム22の下端が引きかかるために、常に正しいルートギャップRGを用意に確保できる。また、作業者は、裏当て金をコラム20に取り付ける際に、裏当て用鋼板1を人力で図4の様に曲げて裏当て金20とし、この上の突起14(12)がコラム22の端部に引っかかるか否かで、裏当て金との肌すきSが許容値以下であるかを容易に判断することができる。これは、突起形成の高さを予め設計することで、初めて得られる効果である。なお、サーボプレスと金型の調整により、所望の突起の形状及び高さを形成することにより得ることができる。
【0036】
他の実施の形態による裏当て用鋼板2は、図6〜8に示すように切り欠き溝を設けない場合の裏当て用鋼板である。図示した例では、裏当て金は角コラムの一辺およびこれに接する二つのコーナー部の内面を覆うが、コラム内周全部を1本の裏当て金で溶接を行うこともできる。
【0037】
本発明の実施の形態による裏当て用鋼板30には、使用時に外面となる面であって角コラムのコーナー部に面する部位に突出して設けられた突起32が形成されている。また使用時において直線である部位には突起32より高さが低い突起34が形成されている。これらの突起は、先に説明したようにコラムの先端とダイヤフラムの間のルートギャップを正確に確保するためのものである。
【0038】
突起32,34自体は、先に示した実施の形態のものと同じであってよいのでこれ以上の説明は省略する。
【0039】
図9は、当該裏当て用鋼板30の使用状態を示す平面図である。作業者は、裏当て金をコラム22に取り付ける際に、裏当て用鋼板30を人力で図9の様に曲げて裏当て金40とするが、この例の場合には、上記の実施形態のようには、溝10がないので、人力では曲がらず、治具が必要である点で不利である。また、曲げにくいことから、コラムのコーナーの曲率と合わせることがむずかしいことから、コーナーの突起が必須のものとなってしまう。
【0040】
次に、上記突起を形成するためのサーボプレス機について図10以降を参照して説明する。なお、サーボプレス機としては、種々の制御が正確かつ容易にできることからデジタル電動サーボプレス機を用いることが好ましい。
【0041】
図10は、デジタル電動サーボプレス機100の全体を示した図であり、符号102はフレーム、103はボルスター、104はサーボモーター、106はブレーキ、108はピニオンギア、110はメインギア、112はエンコーダ、114はコンデンサー、116はクランクである。
【0042】
次に、上記デジタル電動サーボプレス機の主要部を示した図11および図12を参照して、上記デジタル電動サーボプレス機の主要部の構造および作動について説明する。なお、図11および図12においては、突起を4つ形成するものとして押し込みピンの数を4つのものを図示した。
【0043】
上記デジタル電動サーボプレス機10は、第1上金型120、第2上金型122および下金型124を備えている。上記第1上金型120および第2上金型122は、上下動可能であり、第1上金型120の下面には、溶接裏当て用鋼板1に設けられる突起12,14の数だけの押し込みピン126、128が第1上金型120と共に上下動可能に取り付けられている。押し込みピン126は、突起12が突起14より高い分だけ押し込みピン128長くされている。
【0044】
第2上金型122には、図示していないが、押し込みピン126、128が挿通され、該押し込みピン126、128の上下動の案内を行うための案内孔が設けられている。第1上金型120と第2上金型122の間には、第1上金型120を上方に付勢するためのスプリング130が設けられている。
【0045】
上記第2上金型122の下面には、該第2上金型122が下降位置にあるとき、溶接裏当て用鋼板となるワークW(下金型124上に配置されている)が横にずれるのを防止するためのワーク横押さえ治具132が設けられている。
【0046】
下金型124上には、ワークWの位置決め(紙面横方向の)を行うワーク位置決めストッパー134が設けられている。なお、ワークWの紙面前後方向の位置決めは、ワークWの搬送手段(図示せず)によって行う。下金型124には、また溶接裏当て用鋼板の突起となる部分が押し込まれるキャビティ136が設けられている。
【0047】
デジタル電動サーボプレス機100は、第1上金型120を上下動させる作動手段(図示せず)を有しており、この作動手段により第1上金型120を下降することにより、押し込みピン126、128を下降させて突起を形成する。
【0048】
第1上金型120を第2上金型122を伴って下降させると、第2上金型122のワーク押さえ治具132がワークWを押さえ付けて固定し、さらに第1上金型120を下降させると、今度はスプリング130に抗して第1上金型120単独で下降する。この下降に伴って押し込みピン126、128を下降させて、突起の加工を行う。突起の高さは、デジタル電動サーボプレス機の機能によって自由に変えることができ、しかも正確である。
【符号の説明】
【0049】
1:裏当て用鋼板
2:使用時に曲げられる部位
4:使用時に直線である部位
10:切り欠き溝
12:突起
14:突起
20:裏当て金
22:コラム
24:ダイヤフラム
30:裏当て用鋼板
32:突起
34:突起
40:裏当て金


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真っ直ぐな状態で提供され、コラムの内寸に合わせて曲げられて、コラム端部にダイヤフラムを付き合わせ溶接等により溶接する際に、コラムに嵌合されて用いられるものであり、ルートギャップを設定するために用いられる突起が設けられた溶接裏当て用鋼板において、前記突起は、縦断面が先端に向かって先細りとなる台形のプレスヘッドを有するデジタル電動サーボプレス機によって形成されたものであり、縦断面が先端に向かって先細りとなる台形形状をなしており、内部に空間を有することを特徴とする溶接裏当て用鋼板。
【請求項2】
前記突起の台形の斜面と底辺に垂直な線とのなす角の角度が、0.02度以上である請求項1の溶接裏当て用鋼板。
【請求項3】
前記突起の水平断面形状が、円形、楕円形、4角形または三角形である請求項1または2の溶接裏当て用鋼板。
【請求項4】
前記突起の形成により形成された孔の溶接裏当て用鋼板の幅方向の幅は、溶接裏当て用鋼板の幅の0.05〜0.4%である請求項1〜3のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
【請求項5】
前記コラムが角コラムであり、前記溶接裏当て用鋼板は、角コラムの各コーナー部の内曲面部に当てるべき部分に、一群の溝が並列に配置されて形成されており、前記溝の形状は、その深さにおける50%以上の部分の両側面が平行な形状であり、その溝位置における残存板厚が1.5〜2.5mmであり、一群の溝の数が4以上であり、各溝の幅が4mm以下で、かつ溝のピッチが2.55mm以上であり、作業者が治具を用いずに曲げることができ、かつロボット溶接を行ったとき抜けが起こらないように構成されており、前記突起が溶接裏当て用鋼板の少なくとも溝が設けられていない部分に形成されている請求項1〜4のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
【請求項6】
前記溝の数が12以下である請求項5の溶接裏当て用鋼板。
【請求項7】
前記溝の数が、曲げたときの外周長と内周長の差を、溝の幅で除した値である請求項5または6の溶接裏当て用鋼板。
【請求項8】
前記溝の数が、曲げたときの外周長と内周長の差を、溝の幅で除した値に1〜4を加えた値である請求項6または7の溶接裏当て用鋼板。
【請求項9】
突起が溶接裏当て用鋼板の溝形成部にも設けられている請求項5〜8のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
【請求項10】
突起が溝形成部の中央に設けられている請求項9の溶接裏当て用鋼板。
【請求項11】
曲げられたときの形状が「L」字形、「ロ」字形、または「コ」字形、円形または楕円形である請求項1〜10のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
【請求項12】
前記溶接裏当て用鋼板の曲げられない直線のままの部分に設けられた突起の高さが、1.0〜1.1である請求項1〜11のいずれかの溶接裏当て用鋼板。
【請求項13】
前記サーボプレス機がデジタル電動サーボプレス機である上記(1)〜(12)のいずれかの溶接裏当て用鋼板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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